説明

ディーゼルエンジン用始動補助装置

【課題】始動時の低温条件下においてもディーゼルエンジンを容易に始動させ得るディーゼルエンジン用始動補助装置を提供することを目的とする。
【解決手段】排気系から排気ガスの一部を吸気系に再循環するためのEGRパイプ14と、前記EGRパイプ14に設けられてEGRガス還流量を調節するEGRバルブ9と、吸気管3a内に設けられて吸気流量を調節するための吸気絞り8と、前記EGRバルブ9と吸気絞り8とを開閉制御する制御手段となるECU6と、シリンダ内の温度を検出する手段となる温度センサ16、を備えるエンジン1において、前記エンジン1始動時に前記温度センサ16によって検出された温度が予め設定した設定温度より低い場合に、前記吸気絞り8を閉勝手に制御し、前記EGRバルブ9を開勝手に制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン用の始動補助装置に関する。より詳細には、低温始動時において、シリンダ内温度(吸気温度)を上昇させて始動性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低温条件下(例えば、マイナス20度以下)にてディーゼルエンジンを始動させる際の始動性向上のために、グロープラグを用いて点火性を向上させたり、吸気系統に吸気ヒータを設けて吸気温度を上昇させたりする技術が広く知られている。また、始動時に吸気スロットルを絞り、始動トルクを下げて始動性を向上することとした技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
また、近年の排気ガス規制の要請に応えるべく、窒素酸化物(NOx)対策となるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を備えるディーゼルエンジンでは、EGRガスによる副作用(不完全燃焼の誘発等)を回避するためにEGRクーラを装着する等の技術が、PM(Particulate Matter)対策となるDPF(Diesel Particulate Filter)を備えるディーゼルエンジンでは、DPFの目詰まりを回避するため、ヒータにてDPFを燃焼再生させる等の技術が広く知られている。
【特許文献1】特許第2704650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に開示された構成では、始動用のスタータモータの容量を小さくでき、軽量コンパクト化及び低コスト化を図ることができる。しかし、始動時のシリンダ内温度が低い場合には対応しきれず、燃焼が不完全となり、エンジンを始動できない可能性があった。
また、従来は低温条件下における始動性向上のためにグロープラグや吸気ヒータといった装置を補う必要があった。
【0004】
本発明は係る課題を鑑みてなされたもので、始動時の低温条件下においてもディーゼルエンジンを容易に始動させ得るディーゼルエンジン用始動補助装置を提供することを目的とする。
【0005】
さらには、近年の排ガス規制にも対応すべく、排気ガスに含まれるPMを除去するDPFにおいて、該DPFの燃焼再生を促進する構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、排気系から排気ガスの一部を吸気系に再循環するためのEGRガス還流路と、前記EGRガス還流路に設けられてEGRガス還流量を調節するEGRバルブと、吸気通路内に設けられて吸気流量を調節するための吸気絞りと、前記EGRバルブと吸気絞りとを開閉制御する制御手段と、シリンダ内の温度を検出する手段と、を備えるディーゼルエンジンにおいて、前記ディーゼルエンジン始動時に前記シリンダ温度検出手段によって検出された温度が予め設定した設定温度より低い場合に、前記吸気絞りを閉勝手に制御し、前記EGRバルブを開勝手に制御したものである。
【0008】
請求項2においては、排気ガス温度を上昇させる手段を備え、前記シリンダ温度検出手段によって検出された温度が前記設定温度より低い場合に、排気ガス温度を上昇させたものである。
【0009】
請求項3においては、前記EGRガス取出部を前記排気ガス温度上昇手段の直前に配置したものである。
【0010】
請求項4においては、前記EGRガス取出部を前記排気ガス温度上昇手段の直前と直後との二箇所に配置し、前取出部と後取出部との間に切換弁を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1の如く構成したので、低温始動時においてディーゼルエンジン内で燃料を噴射させることなく排気を吸気へ再循環させることにより、シリンダ内温度を上昇させ、始動性が向上する。また、吸気を絞ることにより、シリンダ内に吸入する空気量が少なくなり、次の圧縮工程においてピストンを上昇させるのに必要な力、すなわち始動トルクが小さくなって、始動性が良くなる従来効果も期待できる。さらには、グロープラグや吸気ヒータ等の始動補助装置が不要となる。
【0013】
請求項2の如く構成したので、排気ガス温度を上昇させることで、ディーゼルエンジン全体の温度を上昇させることができ、始動性がさらに向上する。
【0014】
請求項3の如く構成したので、低温始動時には吸気絞りを閉勝手にしているため、吸排気ガスは脈動しており、EGRガス取出部でも脈動が起こるため、該EGRガス取出部の直後にある排気ガス温度上昇手段と一部熱交換して吸気へ再循環させることができ、シリンダ内の温度を上昇させることができる。さらに、通常運転時は、EGRガス取出部が該排気ガス温度上昇手段の直前にあるためEGRガス温度を低くでき、シリンダ内での燃焼温度の上昇を抑制してNOxの排出量を抑制できる。
【0015】
請求項4の如く構成したので、低温始動時には後取出部から排気ガス温度上昇手段によって暖められたEGRガスを取り出して吸気へ再循環させることで、シリンダ内の温度を確実に上げることができる。また、通常運転時には、前取出部からEGRガスを取り出すことで、より温度の低いEGRガスを吸気に再循環させることができて、シリンダ内の燃焼温度の上昇を抑制し、NOxの排出量を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る始動補助装置を備えるディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という)について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例に係るエンジンの吸排気系を示す模式図、図2は制御シーケンスを示す制御マップ、図3は本発明の第二実施例を示すエンジンの吸排気系を示す模式図である。図4は本発明の第三実施例を示すエンジンの吸排気系を示す模式図、図5は本実施例における制御シーケンスを示す制御マップである。
【実施例1】
【0017】
まず、図1を参照して本発明の一実施例に係るエンジン1の吸排気系について説明する。
【0018】
エンジン1に吸入される空気は、空気の取り入れ口となるエアクリーナ2より吸引され、該エアクリーナ2より吸気管3aを介して接続される吸気マニホールド3に送り込まれる。そして、該吸気マニホールド3がエンジン1のシリンダヘッドの吸気ポートと接続され、シリンダ内に空気が吸入される。
また、前記吸気管3a内に吸気流量を調節する吸気絞り8が設けられている。該吸気絞り8はその内部に備わるモータ等のアクチュエータ(図示なし)によってその開度が変更されるバタフライ弁であり、該アクチュエータが後述する制御手段となるECU6と接続されて、該ECU6により開閉制御されている。
なお、この吸気絞り8の構成については本実施例に限られるものではなく、ECU6からの電気的信号によって開閉動作を制御できる構成であれば適用可能である。
【0019】
シリンダ内において燃料噴射装置によって供給される燃料と適宜混合されて燃焼された後の排気ガスは、シリンダからの排出口であるシリンダヘッドに備わる排気ポートを介して排気マニホールド4に送り込まれる。該排気マニホールド4の下流側には排気ガスを大気中に排気するための排ガスフィルタ5が装着され、排ガスフィルタ5の下流側に図示しない消音器が接続される。該排ガスフィルタ5の内部には排気上流側から排気ヒータ11、酸化触媒12、スートフィルター13の順番に内装されている。該排気ヒータ11は、ヒータリレー15を介してバッテリ7と接続され、該ヒータリレー15が後述するECU6と接続されて、該ECU6によりON/OFF通電制御されている。
該排気ヒータ11は、排気ガスの温度を上昇させることにより、その下流側に配置される酸化触媒12、及びスートフィルター13の作用を助長させる働きがある。なお、該排気ヒータ11を作動させるヒータリレー15の構成については、本実施例のものに限らず、ディレイ回路を組み込んで、ECU6からのONからOFFへの切換信号を受けた場合に、徐々に該排気ヒータ11に流れる電流量を減らす構成としてもよい。
【0020】
前記排ガスフィルタ5に内装されるスートフィルター13の下流側にEGRガス取出口20が設けられ、該EGRガス取出口20にはEGRパイプ14の一端が接続されている。該スートフィルター13は、排気ガスに含まれるPMを捕集して除去する構造を備え、その下流側からEGRガスを取り出すことで、EGRガスに含まれていたスス等によるシリンダ内部の金属疲労等の不具合を回避することが可能となる。
該EGRパイプ14の他端は吸気マニホールド3と接続されてEGR通路を形成している。該EGRパイプ14中途部にはEGRガスを冷却するためのEGRクーラ10が装着されており、EGRパイプ14におけるEGRクーラ10下流側にEGRガスの流量を調節するためのEGRバルブ9が装着されている。該EGRバルブ9には、その弁を開閉するアクチュエータ(図示なし)が備わっており、該アクチュエータが後述するECU6と接続されて、該ECU6により開閉制御されている。
排気ヒータ11の下流側からEGRガスを取り出すことにより、シリンダ内の温度が低い時にでも、吸気温度を上げることができ、不完全燃焼を防ぐことができる。さらには、後述する低温始動時においても、エンジン全体の温度を上昇させることができ、始動をさらに容易にすることが可能となる。また、シリンダの温度が所定温度に上昇すると排気ヒータ11を停止させ、更に温度が上昇してNOxを低減させる場合には、排ガスの一部をEGRパイプ14を介して吸気マニホールド3に還元させる。
【0021】
また、エンジン1の運転を制御するためのECU6がエンジン1近傍の適宜箇所に配置されている。ECU6は図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを含んで構成される。
該ECU6にはシリンダ内の温度を検出する手段となる温度センサ16と、前記吸気管3aを通過する吸気流量を検出する手段となる吸気流量センサ17と、前記バッテリ7と排気ヒータ11との間に配置されて該排気ヒータ11のON/OFFの通電制御手段となるヒータリレー15と、が接続されている。
また、ECU6は、前記吸気絞り8に備わるアクチュエータの動作を制御して該吸気絞り8の開度を調節する開閉制御と、前記EGRバルブ9に備わるアクチュエータの動作を制御して該EGRバルブ9の開度を調節する開閉制御とを行ない、エンジン1のEGR率を調節している。
なお、ECU6には、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ18や、燃料噴射量を調量するラックアクチュエータ19や、エンジン1の始動を補助するセルモータ(図示なし)や、その他のセンサ、アクチュエータ類が適宜接続されており、該ECU6はエンジン1の運転を最適な状態にするべくこれらを制御している。
【0022】
次に、図2は、オペレータがキースイッチをONにすると同時に、ECU6が前記温度センサ16により検出されるシリンダ内温度を読み込んで、その温度が低温(例えば、マイナス20度以下)であると判断した場合の制御シーケンスである。他方、低温ではないと判断した場合は、通常の始動制御を行なうことになっている。なお、この低温時以外の始動制御に関しては、広く知られているので、本発明においては説明を省略する。
【0023】
以下、図2を参照して、低温始動時におけるECU6によるエンジン1の制御シーケンスについて説明する。
【0024】
キースイッチをONにした直後の予熱時間帯においては、排気ヒータ11をONにし排気温度を上昇させる。また、吸気絞り8を閉勝手(閉じ方向に作動させる)にし、エンジン1に吸引される空気の量を少なくすることで始動トルクを下げるように制御する。そして、EGRバルブ9を開勝手(開方向に作動させる)にし、排気ヒータ11によって暖められたEGRガスをエンジン1に吸引させることでエンジン1全体の温度を上げる。
また、始動を補助するセルモータはONにして、燃料噴射量を調量するラックアクチュエータ19は無噴射に制御して、エンジン1を暖める時間帯を設けている。
つまり、ピストンの往復動でシリンダ内の空気が圧縮されて高温となった空気が燃焼されず、排気系から排気ヒータ11によって更に暖められてEGRパイプ14を介して吸気系に還流することによってエンジン1に吸引される空気を暖めてシリンダ内温度を上昇させ、始動を容易にしているのである。
【0025】
前記予熱時間帯に係る所定の時間経過後の始動時間帯においては、排気ヒータ11はONのままにして排気温度を上昇させ続ける。また、吸気絞り8、EGRバルブ9は前記予熱時間帯と同様の制御を行ない、エンジン1の始動性の向上を試みる。
また、セルモータもONのままにしてフライホイルを回転させ回転数が上昇してから、ラックアクチュエータ19は通常始動運転時と同様の制御を行ない、ラックを所定の始動時噴射量に合わせ燃焼させ、始動させる。
【0026】
続いて、前記始動時間帯に係る所定の時間経過後には、エンジン1の始動が完了し、燃焼室内における燃焼が完全なものになるまでの完爆時間帯においては、排気ヒータ11を適宜OFFにし、排気温度の上昇を助長しないようにする。但し、触媒による還元作用を行える温度に達していない場合には、その温度に達するまで排気ヒータ11を作動させる。また、吸気絞り8を時間経過とともに徐々に全開状態へ制御し、一方、EGRバルブ9は開勝手のままに制御し続ける。これは、エンジン1始動直後のシリンダ内の急激な温度上昇に対応するためである。
そして、ここで、セルモータをOFFにする。また、ラックアクチュエータ19は通常運転時と同様の制御を行ない、エンジン1の目標回転数に合わせた最適な制御(通常ガバニング制御)を行なうようにする。
【0027】
前記完爆時間帯において、エンジン1の運転が安定した後は、排気ヒータ11及びセルモータはOFFにする。また、吸気絞り8は全開状態に維持し、EGRバルブ9は全閉状態に維持する。そして、ラックアクチュエータ19は通常運転時の制御を行なう。
【0028】
以上のように、排気系から排気ガスの一部を吸気系に再循環するためのEGRパイプ14と、前記EGRパイプ14に設けられてEGRガス還流量を調節するEGRバルブ9と、吸気管3a内に設けられて吸気流量を調節するための吸気絞り8と、前記EGRバルブ9と吸気絞り8とを開閉制御する制御手段となるECU6と、シリンダ内の温度を検出する手段となる温度センサ16、を備えるエンジン1において、前記エンジン1始動時に前記温度センサ16によって検出された温度が予め設定した設定温度より低い場合に、前記吸気絞り8を閉勝手に制御し、前記EGRバルブ9を開勝手に制御したので、低温始動時においてECU6の制御によって、エンジン1内で燃料を噴射させることなく排気を吸気へ再循環させることにより、シリンダ内温度を上昇させ、始動性が向上する。また同時に、吸気絞り8を制御して吸気を絞ることにより、シリンダ内に吸入する空気量が少なくなり、次の圧縮工程においてピストンを上昇させるのに必要な力、すなわち始動トルクが小さくなって、始動性が良くなる。
また、エンジン1の構成に含まれる排ガスフィルタ5内の排気ヒータ11を用いることで、別個にグロープラグや吸気ヒータ等の始動補助装置が不要となり、部品点数削減や低コスト化が可能となる。
さらに、排気ガス温度を上昇させる手段となる排気ヒータ11を備え、前記温度センサによって検出された温度が前記設定温度より低い場合に、ECU6の制御によって排気ヒータ11を作動させて排気ガス温度を上昇させたので、エンジン1全体の温度を上昇させることができ、始動性がさらに向上する。
【実施例2】
【0029】
次に、図3を参照して、本発明に係る第二実施例について説明する。
全体的な構成は前記実施例1と略同じであるので、本実施例においては主に実施例1との違いについて説明する。
すなわち、本実施例では、EGRガス取出口20が排気ヒータ11の直前(上流側)に配置され、該EGRガス取出口20とEGRパイプ14の一端が接続されて、該EGRパイプ14の他端は吸気マニホールド3に接続されて吸気へ再循環している。
【0030】
以上のように、前記EGRガス取出部20を前記排気ヒータ11の直前に配置したので、低温始動時には吸気絞り8を閉勝手にしているため、吸排気ガスは脈動しており、EGRガス取出部20でも脈動が起こるため、該EGRガス取出部20の直後にある排気ヒータ11と一部熱交換して吸気へ再循環させることができ、シリンダ内の温度を上昇させることができる。また、始動後の通常運転時は、前記EGRバルブ9を閉勝手に制御してEGRガス取出部20が該排気ヒータ11の直前にあるため排気ヒータ11の影響を受けない温度の低いEGRガスを還流させて、一般に燃焼温度の高い高負荷域においてもシリンダ内温度上昇を抑制してNOxの排出量を低減できる。
【実施例3】
【0031】
図4及び図5を参照して、本発明に係る第三実施例について説明する。
全体的な構成は前記実施例1と略同じであるので、本実施例においては主に実施例1との違いについて説明する。
すなわち、本実施例では、第一EGRガス取出口(以下、単に「第一取出口」という)20aを前記排気ヒータ11の直前(上流側)に配置して該第一取出口20aを第一配管21aの一端と接続し、第二EGRガス取出口(以下、単に「第二取出口」という)20bを排気ヒータ11の直後(下流側)に配置して該第二取出口20bの一端を第二配管21bと接続する。そして、該第一配管21aと第二配管21bのそれぞれの他端を三方弁で構成した切換バルブ22の一端に接続し、該切換バルブ22の他端をEGRパイプ14に接続する。電磁弁である該切換バルブ22はECU6と接続されて制御され、その弁を切り換えることによって前記第一配管21aと第二配管21bとのいずれかをEGRパイプ14に連通する構成となっている。
なお、前記第二取出口20bの配置箇所は本実施例に限らず、EGRガス温度を上昇させる排気ヒータ11の下流側ならばどこでもよい。
【0032】
そして、図5の制御シーケンスに示すように低温始動時において、予熱時間帯、及び始動時間帯には、排気ヒータ11直後に配置される第二取出口20bに接続される第二配管21bからEGRガスを取り出して吸気系に還流することで、確実にシリンダ内の温度を上昇させることができ、始動性を向上させることができる。
他方、完爆時間帯、及び通常運転時間帯は、前記切換バルブ22を切り換えて、排気ヒータ11直前に配置される第一取出口20aに接続される第一配管21aからEGRガスを取り出して吸気系に還流することで、シリンダ内の燃焼温度の上昇を抑制してNOxの排出量を抑制することが可能となる。つまり、この時、吸気絞り8は全開状態となっているため、吸排気において脈動は発生し難く、第一取出口20a近傍において排気ヒータ11の影響を受けにくくなっているため、比較的温度の低いEGRガスの還流が可能となっているのである。
また、エンジン1への負荷が高くなりシリンダ内での燃焼が完全燃焼に近づき、NOx発生量が増加傾向に来ると、EGRバルブ9を適宜開けてEGRガスを第一取出口20aから取り出して第一配管21aより還流することで、NOxの発生を抑制することも可能である。
【0033】
以上のように、前記EGRガス取出部を前記排気ガス温度上昇手段の前と後との二箇所に配置し、第一取出口20aと第二取出口20bとの間に切換バルブ22を設けたので、低温始動時には第二取出口20bから排気ガスヒータ11によって暖められたEGRガスを取り出して吸気へ再循環させることで、シリンダ内の温度を確実に上げることができる。また、通常運転時には、第一取出口20aからEGRガスを取り出すことで、より温度の低いEGRガスを吸気に再循環させることができて、シリンダ内の燃焼温度の上昇を抑制し、NOxの排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例に係るエンジンの吸排気系を示す模式図。
【図2】制御シーケンスを示す制御マップ。
【図3】本発明の第二実施例を示すエンジンの吸排気系を示す模式図。
【図4】本発明の第三実施例を示すエンジンの吸排気系を示す模式図。
【図5】本実施例における制御シーケンスを示す制御マップ。
【符号の説明】
【0035】
1 エンジン(ディーゼルエンジン)
6 ECU(Electronic Control Unit)(制御手段)
8 吸気絞り
9 EGRバルブ
11 排気ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系から排気ガスの一部を吸気系に再循環するためのEGRガス還流路と、
前記EGRガス還流路に設けられてEGRガス還流量を調節するEGRバルブと、
吸気通路内に設けられて吸気流量を調節するための吸気絞りと、
前記EGRバルブと吸気絞りとを開閉制御する制御手段と、
シリンダ内の温度を検出する手段と、
を備えるディーゼルエンジンにおいて、
前記ディーゼルエンジン始動時に前記シリンダ温度検出手段によって検出された温度が予め設定した設定温度より低い場合に、
前記吸気絞りを閉勝手に制御し、前記EGRバルブを開勝手に制御する
ことを特徴とするディーゼルエンジン用始動補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディーゼルエンジン用始動補助装置において、
排気ガス温度を上昇させる手段を備え、
前記シリンダ温度検出手段によって検出された温度が前記設定温度より低い場合に、
排気ガス温度を上昇させる
ことを特徴とするディーゼルエンジン用始動補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載のディーゼルエンジン用始動補助装置において、
前記EGRガス取出部を前記排気ガス温度上昇手段の直前に配置する
ことを特徴とするディーゼルエンジン用始動補助装置。
【請求項4】
請求項2に記載のディーゼルエンジン用始動補助装置において、
前記EGRガス取出部を前記排気ガス温度上昇手段の直前と直後との二箇所に配置し、前取出部と後取出部との間に切換弁を設ける
ことを特徴とするディーゼルエンジン用始動補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−196325(P2008−196325A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29762(P2007−29762)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】