説明

ナビゲーション装置、方法及びプログラム

【課題】精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができるナビゲーション装置、方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する画像情報受信部5(信号表示情報検出手段)と、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する条件記録手段(ステップS3)と、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する信号機通過率計算手段(ステップS5)と、信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する通過予測判断手段(ステップS6)と、予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する運転支援情報提示手段(ステップS7,8)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機の動作予測による走行支援機能を付加したナビゲーション装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次の信号を通過可能かどうかの情報を与えて無駄な加減速を低減できるようにした情報提供システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この情報提供システムは、各信号を走行する毎にその信号の赤から青及び青から赤への切り換わりの時刻を検知して検知結果を蓄積する蓄積部を有する。
具体的に蓄積部では、特定の信号を通過する毎に、止まることなく通過したなら青であると推定して通過時刻を検知し、停止したなら赤であると推定して停止時刻を検知し、また、停止から発進した場合は赤から青に切り替わったと推定して切り替わり時刻を検知し、これらの時刻データからなる停止/通過マップを作成して蓄積している。
【特許文献1】特開2000−268294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の情報提供システムにあっては、信号機が実際に青・赤・黄のいずれであるかという信号表示情報を検知することなく、信号機が設定されている位置で車両が通過したか止まったかで信号機の色を推定し、時刻データに基づいて停止/通過マップを作成するものであるため、青・赤・黄の切り替わり動作間隔を正確に把握することができず、停止/通過マップの精度が低く曖昧なものとなる。
そして、この精度の低い停止/通過マップを、自車が信号機に近づいたときに与える運転支援情報を何にするかの判断基準として用いるため、適切な運転支援情報をドライバに与えることができない、という問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができるナビゲーション装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、
自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する信号表示情報検出手段と、
信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する条件記録手段と、
前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する信号機通過率計算手段と、
前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する通過予測判断手段と、
前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する運転支援情報提示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明のナビゲーション装置にあっては、信号表示情報検出手段において、自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報が検出され、条件記録手段において、信号表示情報を検出した信号機が道路地図情報と自車位置により特定され、信号表示情報とともに自車位置や平均速度が記録される。そして、条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、信号機通過率計算手段において、記録された複数回の条件が読み出され、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率が計算され、通過予測判断手段において、計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かが予測判断され、運転支援情報提示手段において、予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報がドライバに提示される。
すなわち、信号機の信号表示情報(赤・青等)そのものを検知するものであるため、信号表示情報の切り替わり動作間隔が正確に把握され、この信号表示情報に基づいて得られる学習情報は、時刻データに基づいて停止/通過マップを作成する場合に比べ、精度の高い信号機動作の学習情報となる。
この結果、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のナビゲーション装置、方法及びプログラムを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のナビゲーション装置、方法及びプログラムが採用されたナビゲーションシステムを示すシステムブロック図である。
【0009】
実施例1におけるナビゲーションシステムは、図1に示すように、入力情報を得る手段として、絶対位置・方位検出部1と、相対方位検出部2と、車速検出部3と、VICS情報受信部4と、画像情報受信部5(信号表示情報検出手段)と、を備えている。
【0010】
前記絶対位置・方位検出部1は、本システムが搭載された自車の現在地、すなわち、自車位置について、地表での絶対位置座標や方位を計算するために、GPS衛星から送られてくる電波を、アンテナやレシーバなどで受信するための部分である。
なお、GPS(Global Positioning Systemの略称)とは、全世界測位システムのことであり、GPS衛星が、高度約21000kmの円軌道で地球を周回しながら電波を発信している。
【0011】
前記相対方位検出部2は、ジャイロセンサーや角速度センサなどを使って自車位置の相対的な方位を検出するための部分である。
【0012】
前記車速検出部3は、自車位置の速度を計算するために、自車の車速センサにより得られる車速パルスを処理するための部分である。
【0013】
前記VICS情報受信部4は、様々な交通情報を集約し、道路上に設置されたビーコンやFM多重放送によって最新の道路情報を受信するための部分である。
なお、VICS(Vehicle Information and Communication Systemの略称)とは、道路交通情報通信システムのことであり、各都道府県の警察署が収集した一般道路の情報と、道路公団が収集した高速道路の情報がVICSセンターに集約され、発信されている。
【0014】
前記画像情報受信部5は、車両の前方に向けて自車に設定したカメラにより撮影した車両前方の画像情報を受信するための部分である。
この画像情報受信部5には、カメラからの画像情報を解析し、信号機の表示枠内で光っている位置を感知し、赤・青・黄あるいは赤・青(点滅動作も含む。)による信号表示情報を検出する画像処理部を有する。
【0015】
具体的なカメラからの画像情報を解析は、自車が信号機まで所定の距離範囲内に近づいた場合、車両前方を映し出すカメラ画面において、自車のゴー・ストップを左右する信号機がカメラ画面の上部位置に表示されることを利用する。つまり、自車が信号機まで所定範囲内に近づくと、カメラ画面の上部範囲を切り取る。そして、カメラ画面の色の濃淡を明瞭に判別できるように、切り取った信号機存在範囲の画像信号を、濃淡を明瞭とする画像信号に変換し、変換した濃淡画像にて信号機の形状に合致する形状を有する画像部分を切り取って信号機画像とする。さらに、信号機の場合には、道路中央側が赤、道路端側が青、赤と青との間が黄、というように、色の位置が決まっている。このため、信号機画像において、点灯(白っぽい部分)と消灯(黒っぽい部分)の位置関係を識別する、あるいは、点灯部分の位置変化を識別することにより、赤・青・黄の信号表示情報を検出する。
【0016】
また、自車の前方に複数の信号機が存在する場合には、車両前方を映し出すカメラ画面において、カメラ画面の端部(左側通行の場合には左端部)に映し出されるのに対し、遠い信号機であるほどカメラ画面の中央部に寄った位置に映し出されるという、いわゆる遠近法を利用する。つまり、自車の前方に複数の信号機が存在し、1つのカメラ画面により複数の信号機画像が取得された場合、複数の信号機画像のカメラ画面での横幅方向の位置関係を検出する。この横幅方向の位置検出情報に基づき、複数の信号機画像のうち、どの画像が自車から一番近い信号機画像であり、どの画像が次に近い信号機画像であるというように自車との距離の遠近関係を判断し、判断結果に基づき、各信号機画像に対し、それぞれの画像がどの信号機に対応するのかを、例えば、近い方から順番に識別番号を付す等により特定する。そして、特定された信号機画像のそれぞれについて、上記手法を用いて赤・青・黄の信号表示情報を検出する。これにより、自車の前方に存在する複数の信号機の信号表示情報を、同時もしくはほぼ同時に検出することができる。
尚、自車の前方に複数の信号機が存在する場合、自車から最も近い信号機の画像サイズが一番大きく、自車から離れた位置にある信号機ほど画像サイズが小さくなる点を考慮し、信号機画像の左右や上下のエッジから各信号機画像の大きさを検出し、上記複数の信号機画像のカメラ画面での横幅方向の位置関係に、各信号機画像のサイズの大小関係を加えて、各信号機画像と実際の信号機との対応を判断するようにしても良い。
【0017】
実施例1におけるナビゲーションシステムは、図1に示すように、演算処理や記憶処理を行う手段として、メインCPU及びその周辺回路6と、記憶部7と、ディスク制御部8と、を備えている。
【0018】
前記メインCPU及びその周辺回路6は、本ナビゲーションシステム全体を制御する制御回路の役割を果たす部分である。
【0019】
前記記憶部7は、システム作業領域やプログラム収納などを行う部分であり、ROM7aと、DRAM7bと、SRAM7cと、VRAM7dと、を有する。
【0020】
前記ROM7aは、BIOS(Basic Input/Output Systemの略称)やブートプログラムなどを予め格納し、本システムの起動時にメインCPU及びその周辺回路6によってアクセスされる。また、前記DRAM7bは、ワークエリアなどに使用される。また、前記SRAM7cは、不揮発性のメモリであり、自車のアクセサリ電源など本システムのメイン電源がオフになっている間も、電池などでバックアップされることでメモリ内容を保持するものである。また、前記VRAM7dは、後述する表示部10でビデオ表示を行うためのメモリである。
【0021】
前記ディスク制御部8は、地図データなどを記憶するための手段であり、例えば、CD−ROMやDVD−ROMやハードディスクなどがある。
【0022】
実施例1におけるナビゲーションシステムは、図1に示すように、画面表示や入力操作を行う手段として、ユーザインターフェース部9と、表示部10と、入力部11と、を備えている。
【0023】
前記ユーザインターフェース部9は、I/O制御回路や駆動回路などを使って、表示部10及び入力部11と、前記メインCPU及びその周辺回路6とを結ぶインターフェースである。
【0024】
前記表示部10は、ドライバから視認しやすいインストパネル位置などに設置され、道路地図や操作メニューなどの各種情報を液晶画面などにより表示するディスプレイ部分である。
【0025】
前記入力部11は、ドライバがリモコンやタッチパネルなどを使って命令を本システムに入力するための部分である。
【0026】
実施例1におけるナビゲーションシステムは、図1に示すように、音声案内手段として、音声合成部12と、AMP部13と、スピーカ14と、を備えている。
【0027】
前記音声合成部12は、音声案内を行うための音声を合成する部分である。
【0028】
前記AMP部13は、音声案内用のスピーカ14を駆動するために合成された音声を増幅する部分である。
【0029】
前記スピーカ14は、車室内に向けて配置され、AMP部13からの駆動信号により音声を発する部分である。
【0030】
図2は実施例1のナビゲーションシステムにて実行される信号動作に対する運転支援制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0031】
ステップS1では、信号機からの情報ありか否か、つまり、走行している自車の前方位置に信号機がある場合、その信号機の信号表示情報を検出したか否かを判断し、Yesの場合はステップS2へ移行し、Noの場合はステップS1での判断を繰り返す。
ここでは、上記のように、画像情報受信部5によるカメラからの画像情報を解析し、1つの信号機から、あるいは、2つ以上の複数の信号機から、信号表示情報(赤・青・黄あるいは赤・青)を検出した場合、信号機の信号表示情報を検出したと判断する。
【0032】
ステップS2では、ステップS1での信号機からの情報ありとの判断に続き、チェックの入っている道路であるか否か、つまり、過去に3回以上同じ経路で通った道路の信号機からの信号表示情報を検出したか否かを判断し、Yesの場合はステップS4へ移行し、Noの場合はステップS3へ移行する。
【0033】
ステップS3では、ステップS2でのチェックの入っていない道路であるとの判断に続き、信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置、平均速度、時間帯、曜日などの条件を記録し、リターンへ移行する(条件記録手段)。
このステップS3では、自車の走行経路に複数の同期作動による信号機が存在する場合、画像情報受信部5により少なくとも最初の信号機が表示している信号表示情報を検出すると、同期作動する複数の信号機について信号間の条件を記録する。
例えば、図3に示すように、信号機(1)と信号機(2)とが同期作動する場合、自車により信号機(1)の信号機が表示している信号表示情報を検出すると、信号表示情報を検出可能であるか不可能であるかにかかわらず、同期作動する信号機(2)について信号間の条件を記録する。すなわち、同期作動することが分かっていれば、1つ先や2つ先の信号機の表示状態や歩行者用信号機の表示状態なども同時に記録する。
【0034】
ステップS4では、ステップS2でのチェックの入っている道路であるとの判断に続き、記録された3回以上の条件を読み出し、ステップS5へ移行する。
【0035】
ステップS5では、ステップS4での条件の記録読み出しに続き、3回以上の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算し、ステップS6へ移行する(信号機通過率計算手段)。
このステップS5では、GPSによる自車の現在位置と、自車の車速と、3回以上記録された条件による学習情報と、に基づき、統計により次の信号機で通過できる確率をパーセンテージで計算する。なお、次の信号機で止まる確率(=100%−信号機通過率%)を求めても良い。
【0036】
ステップS6では、ステップS5での信号通過率の計算に続き、計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断し、通過可能である場合はステップS7へ移行し、通過不可能である場合はステップS8へ移行する(通過予測判断手段)。
このステップS6では、通過可能か不可能かの確率判断しきい値としてパーセンテージによる設定値を予め定めておき、ステップS5にて計算された信号機通過率が設定値以上の場合に通過可能であると判断し、信号機通過率が設定値未満の場合に通過不可能であると判断する。
【0037】
ステップS7では、ステップS6での次の信号機を通過可能であるとの判断に続き、条件を提示して信号機を「青」で通行可能であることを通知し、リターンへ移行する(運転支援情報提示手段)。
このステップS7では、例えば、「車速をこのまま維持すれば次の信号機を青で通行可能です。」というように、音声にてドライバに通知しても良いし、音声と表示部10への画面表示とを併用してドライバに通知しても良い。
【0038】
ステップS8では、ステップS6での次の信号機を通過不可能であるとの判断に続き、止まることを通知、あるいは、アクセルを緩めるように支援し、リターンへ移行する(運転支援情報提示手段)。
このステップS8では、例えば、「時速Akm/hまで減速すれば次の信号機を青で通行可能です。」というように、音声にてドライバに通知しても良いし、音声と表示部10への画面表示とを併用してドライバに通知しても良い。また、信号機通過率のパーセンテージに応じて減速の度合い(減速小〜減速大〜停止)をきめ細かく通知して運転支援するようにしても良い。
【0039】
次に、作用を説明する。
現在、ナビゲーション装置を搭載した車両では、信号機の位置が画面上に表示されているだけで、次の信号機で止まるか止まらないかの判断は、それぞれドライバの感覚にて判断するか、目の前の信号機をドライバが自ら確認している。
したがって、例えば、毎回通っている道や普段使い慣れている道では、経路案内してもらう必要がないため、ナビゲーション装置はあまり必要とされていなかった。
しかし、使い慣れている道であっても、信号機の表示切り替わりタイミングをうまくつかむことができず、信号停止から発進したら次の信号機につかまってしまい、ストレスを感じるという経験をするし、発進と停止の繰り返しにより燃費も悪くなる。
【0040】
このような問題に対し、信号機の動作予測による走行支援機能を付加したナビゲーション装置として、従来、特開2000−268294号公報に記載された情報提供システムが提案されている。
しかし、従来の情報提供システムにあっては、信号機が実際に青・赤・黄のいずれであるかという信号表示情報を検知することなく、信号機が設定されている位置で車両が通過したか止まったかで信号機の色を推定し、時刻データに基づいて停止/通過マップを作成するものであるため、青・赤・黄の切り替わり動作間隔を正確に把握することができず、停止/通過マップの精度が低く曖昧なものとなる。
例えば、車両が信号機の位置を止まることなく通過した場合、青に変わってすぐのタイミングであるのか、青の終了直前のタイミングであるのかを判別することができず、いずれの場合も同じ青での通過時刻として検知されるというように、停止/通過マップを作成するための時刻データに大幅なバラツキを持つ。
また、車両が赤で停止した場合、信号機が赤から青に変わっても、信号停止車両が自車の前に多数存在する場合、青でも停止状態が続き、直前の先行車が動き出してから自車を発進させることになるため、自車の発進時刻を信号機が赤から青に切り替わる時刻として推定すると、時刻データは信号切り替えタイミングからは大幅に遅れたものとなる。
そして、この精度の低い停止/通過マップを、自車が信号機に近づいたときに与える運転支援情報を何にするかの判断基準として用いるため、適切な運転支援情報をドライバに与えることができない。
【0041】
これに対し、実施例1のナビゲーション装置では、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができるようにした。
すなわち、信号機が実際に青・赤・黄のいずれであるかという信号表示情報を検知することにより、精度良く信号機動作を予測判断できる点に着目し、自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報(青・赤・黄)を検出する画像情報受信部5を用いて信号表示情報を検出し、この信号機から取れる情報を、信号機通過率の計算や運転支援情報の提示を行うために最大限に活用する手段を採用した。
【0042】
したがって、画像情報受信部5により信号表示情報の切り替わり動作間隔が正確に把握され、画像情報受信部5による信号表示情報に基づいて得られる学習情報は、時刻データに基づいて停止/通過マップを作成する場合に比べ、精度の高い信号機動作の学習情報となる。この結果、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができる。
【0043】
[信号動作に対する運転支援制御作動]
まず、ナビゲーション装置を使いながら走行するときであって、その道路を走行する経験が3回に満たない場合には、ステップS2でのチェックの入っている道路に該当しないため、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→リターンへと進む流れが繰り返され、同じ道路を走行する毎に、ステップS3において、特定した信号機にコード番号などを付け、コード番号のメモリ領域内に、信号表示情報とともに自車位置、平均速度、時間帯、曜日などの条件が記録される。
【0044】
そして、ナビゲーション装置を使いながら同じ道路を走行する経験が3回を超えると、ステップS2でのチェックの入っている道路に該当するため、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS4→ステップS5へと進む流れとなり、ステップS4では、記録された3回以上の条件が読み出され、ステップS5では、3回以上の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合に次の信号機を通過する信号機通過率が計算される。
【0045】
そして、ステップS5に続いてステップS6へ進むと、ステップS6では、計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かが予測判断され、通過可能である場合はステップS7に進み、ステップS7では、条件を提示して信号機を「青」で通行可能であることが通知される。
一方、ステップS6において通過不可能であると判断された場合には、ステップS8へ進み、ステップS8では、止まることを通知、あるいは、アクセルを緩めるように支援される。
【0046】
[信号動作に対する運転支援制御作用]
実施例1のナビゲーション装置を搭載した車両では、上記のように、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、通過可能であると予測判断されると、条件を提示して通行可能であることを通知し、通過不可能であると予測判断されると、なるべく信号停止することなく通過できるように、ブレーキ操作やアクセル緩め操作による減速運転を通知するという信号動作に対する運転支援制御作用が実行されることになる。
【0047】
このように、信号動作に対する運転支援機能が、追加機能としてナビゲーション装置に付加されることになるため、下記に列挙するようなメリットを得ることができる。
・いつものように走ってゆくと止まってしまう信号機でも、前もって予測できればゆっくり進むことで信号待ちを回避する確率が上がり、信号待ちのイライラ時間が減少する。
・信号機に近づいたときに無駄な加減速操作をすることが無くなり、燃費効率の高い運転が可能になる。
・毎日の通勤や通学における到着時間の平均化と短縮により、毎度ほぼ同じペースで走ることができる。
・普段使い慣れている道でもナビゲーション装置が有効となり、あまり遠出をしない人でもナビゲーション装置があった方が便利であると感じるし、また、ナビゲーション装置の必要性も増す。
【0048】
次に、効果を説明する。
実施例1のナビゲーション装置、方法及びプログラムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0049】
(1) 目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する画像情報受信部5(信号表示情報検出手段)と、信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する条件記録手段(ステップS3)と、前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する信号機通過率計算手段(ステップS5)と、前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する通過予測判断手段(ステップS6)と、前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する運転支援情報提示手段(ステップS7,8)と、を備えたため、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えるナビゲーション装置を提供することができる。
【0050】
(2) 前記画像情報受信部5は、自車に設定されたカメラからの画像情報を解析し、信号機の表示枠内で光っている位置を感知し、赤・青・黄あるいは赤・青による信号表示情報を検出するため、自車の前方の車線や先行車等を撮像するカメラを備えた走行制御システムを搭載した車両では、既に搭載されているカメラを利用し、低コストにて信号表示情報を取得することができる。
【0051】
(3) 前記条件記録手段(ステップS3)は、自車の走行経路に複数の同期作動による信号機が存在する場合、前記画像情報受信部5により少なくとも最初の信号機が表示している信号表示情報を検出すると、同期作動する複数の信号機について信号間の条件を記録するため、複数の同期作動による信号機が存在する場合に精度良く信号表示情報を記録することができる。
【0052】
(4) 前記信号機通過率計算手段(ステップS5)は、前記条件記録手段により3回以上の条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された3回以上の条件を読み出し、3回以上の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算するため、同じ道路を走行する経験を3回行えば、4回目からは精度の高い信号機通過率を得ることができるし、その後、同じ道路の走行経験が増えるほど学習により信号機通過率の精度が高くなるというように、信頼性の高い信号機通過率を得ることができる。
【0053】
(5) 前記通過予測判断手段(ステップS6)は、信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率が設定値以上の場合に通過可能と予測判断し、信号機通過率が設定値未満の場合に通過不可能と予測判断し、前記運転支援情報提示手段(ステップS7,8)は、通過可能と予測判断した場合、走行条件を提示して通行可能なことをドライバに通知し、通過不可能と予測判断した場合、減速することをドライバに通知するため、信号機通過率に基づく簡単な2段階の通過可能性の判断により、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えることができる。
【0054】
(6) 目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーション方法において、自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する手順と、信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する手順と、前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する手順と、前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する手順と、前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する手順と、を備えたため、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えるナビゲーション方法を提供することができる。
【0055】
(7) 目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーションコンピュータのプログラムに、自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する機能と、信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する機能と、前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する機能と、前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する機能と、前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する機能と、を持たせたため、精度の高い信号機動作の学習情報に基づき、信号待ちを低く抑える適切な運転支援情報をドライバに与えるナビゲーションプログラムを提供することができる。
【0056】
以上、本発明のナビゲーション装置、方法及びプログラムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0057】
実施例1では、信号表示情報検出手段として、カメラからの画像情報を処理することで信号表示情報を読み取る画像情報受信部5とする例を示したが、信号機の光から可視光情報を取り出し、可視光通信により信号表示情報を読み取るようにしても良い。この場合、画像情報受信部5に比べ、信号表示情報の読み取り精度を高めることが可能である。
【0058】
実施例1では、通過予測判断手段として、通過可能と通過不可能の2パターンを予測判断する例を示したが、例えば、信号機通過率に応じて3パターン以上や無段階に通過確率を予測するような手段としても良いし、条件記録の数が多いほど、つまり、信号機通過率の信頼性が高くなるほど、通過予測の判断パターンを多くするような例としても良い。
【0059】
実施例1では、運転支援情報提示手段として、通過可能と通過不可能の2つの通過予測判断パターンに応じて運転支援情報を与える例を示したが、通過予測判断が3パターン以上である場合には、よりきめ細かな運転支援情報を提示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1のナビゲーション装置、方法及びプログラムが採用されたナビゲーションシステムを示すシステムブロック図である。
【図2】実施例1のナビゲーションシステムにて実行される信号動作に対する運転支援制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1のナビゲーションシステムにて実行される条件記録において複数の信号機が存在する場合の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1 絶対位置・方位検出部
2 相対方位検出部
3 車速検出部
4 VICS情報受信部
5 画像情報受信部(信号表示情報検出手段)
6 メインCPU及びその周辺回路
7 記憶部
8 ディスク制御部
9 ユーザインターフェース部
10 表示部
11 入力部
12 音声合成部
13 AMP部
14 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、
自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する信号表示情報検出手段と、
信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する条件記録手段と、
前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する信号機通過率計算手段と、
前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する通過予測判断手段と、
前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する運転支援情報提示手段と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたナビゲーション装置において、
前記信号表示情報検出手段は、自車に設定されたカメラからの画像情報を解析し、信号機の表示枠内で光っている位置を感知し、赤・青・黄あるいは赤・青による信号表示情報を検出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたナビゲーション装置において、
前記条件記録手段は、自車の走行経路に複数の同期作動による信号機が存在する場合、前記信号表示情報検出手段により少なくとも最初の信号機が表示している信号表示情報を検出すると、同期作動する複数の信号機について信号間の条件を記録することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1項に記載されたナビゲーション装置において、
前記信号機通過率計算手段は、前記条件記録手段により3回以上の条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された3回以上の条件を読み出し、3回以上の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載されたナビゲーション装置において、
前記通過予測判断手段は、信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率が設定値以上の場合に通過可能と予測判断し、信号機通過率が設定値未満の場合に通過不可能と予測判断し、
前記運転支援情報提示手段は、通過可能と予測判断した場合、走行条件を提示して通行可能なことをドライバに通知し、通過不可能と予測判断した場合、減速することをドライバに通知することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーション方法において、
自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する手順と、
信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する手順と、
前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する手順と、
前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する手順と、
前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する手順と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項7】
目的地を設定すると、表示部に道路地図を表示するとともに、表示された道路地図上に自車の位置を表示し、道路地図と自車位置との位置関係を移動させながら目的地までの経路を案内するナビゲーションコンピュータのプログラムに、
自車の走行経路に存在する信号機が表示している信号表示情報を検出する機能と、
信号表示情報を検出した信号機を道路地図情報と自車位置により特定し、信号表示情報とともに自車位置や平均速度を記録する機能と、
前記条件記録手段により複数回条件記録された信号機が存在する道路を走行するとき、記録された複数回の条件を読み出し、複数回の学習情報に基づき自車がそのまま走行した場合の信号機通過率を計算する機能と、
前記信号機通過率計算手段により計算された信号機通過率に基づいて、通過可能か不可能かを予測判断する機能と、
前記通過予測判断手段による予測判断結果に基づいて、信号待ちを抑える運転支援情報をドライバに提示する機能と、
を持たせたことを特徴とするナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−51623(P2008−51623A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227447(P2006−227447)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】