説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】モータ/ジェネレータと駆動輪との間に設けられた第2クラッチの固着状態を安価に検出可能なハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】統合コントローラ10が、第2クラッチCL2を、解放を含む滑り状態としたときに、第2クラッチCL2が滑り状態か固着状態かを判定する滑り判定手段を備え、滑り判定手段が、モータ/ジェネレータMGを駆動させたときの第2クラッチCL2の入力軸回転の振動波形に基づいて、前記判定を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてエンジンとモータとを備えたハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、モータと駆動輪側との間に第2クラッチが設けられたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータ/ジェネレータとを備えたハイブリッド車両において、モータ/ジェネレータとの間に、第2クラッチが介在されたものが知られている。
【0003】
このようなハイブリッド車両では、モータ/ジェネレータを駆動させてエンジンを始動させる際に、第2クラッチをスリップさせることが、例えば、特許文献1などにより知られている。
【特許文献1】特開2001−88588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなハイブリッド車両では、停車中に、第2クラッチを解放させてモータを駆動させてエンジンを始動させたり、停車中や極低速で、第2クラッチをスリップさせながら、モータを駆動させたりする場合がある。
【0005】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置では、第2クラッチのスリップ状態を、第2クラッチの入力側と出力側との回転数差に基づいて検出するようにしている。そして、このような第2クラッチの出力側の回転数を、駆動輪側に設けられた車速センサを用いて行なう場合、上述の停車中や極低速時などでは、第2クラッチの出力軸側の回転数を精度高く検出できないため、第2クラッチのスリップ状態、特に、固着を検出できなかった。
【0006】
よって、第2クラッチを解放する指令を与えているのに第2クラッチが固着した場合、モータを駆動させると、駆動輪に駆動が伝達されて、車両にショックが生じるおそれがあった。
【0007】
また、第2クラッチに圧力センサを設けることで、第2クラッチへの入力時に、第2クラッチが固着しているかどうかを検出することが可能になるが、この場合、専用の圧力センサが必要でコストアップを招く。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、モータと駆動輪との間に設けられた第2クラッチの固着状態を安価に検出可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置では、モータと駆動輪との間に設けられた第2クラッチの滑り状態を判定する滑り判定手段は、モータを駆動させたときの第2クラッチの入力軸回転数の振動波形に基づいて、滑り状態判定を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、滑り判定手段の滑り判定時には、モータを駆動させて第2クラッチの入力側にトルクを入力した際の、第2クラッチの入力回転数振動波形に基づいて、第2クラッチが滑り状態か固着状態かの判定を行うようにした。
【0011】
すなわち、第2クラッチが滑り状態では、モータを駆動させると、モータ回転数は漸次上昇する。
【0012】
これに対し、第2クラッチが固着状態では、モータ回転数は、漸次上昇することなく、2次振動系の変化が生じることを本願発明者は見出した。
【0013】
そこで、モータ回転数が漸次上昇しない状態を検出することにより、第2クラッチの固着を早期に検出することができる。
【0014】
そして、この滑り判定を、第2クラッチの入力回転に基づいて行なうため、第2クラッチの出力側に新規に圧力センサなどを追加することなく判定可能であり、コスト的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明実施の形態のハイブリッド車両の制御装置は、エンジン(Eng)とモータ/ジェネレータ(MG)が直結あるいは第1クラッチ(CL1)を介して連結され、前記モータ/ジェネレータ(MG)と駆動輪(RL,RR)の間に第2クラッチ(CL2)が介装され、前記第2クラッチ(CL2)を、解放を含む滑り状態としたときに、前記第2クラッチ(CL2)が滑り状態か固着状態かを判定する滑り判定手段(105)を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記滑り判定手段(105)は、前記モータ/ジェネレータ(MG)を駆動させたときの前記第2クラッチ(CL2)の入力軸回転数の振動波形に基づいて、前記判定を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置である。
【実施例1】
【0017】
図1〜図10に基づき、この発明の最良の実施の形態の実施例1のハイブリッド車両の制御装置について説明する。
【0018】
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【0019】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0020】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0021】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、半クラッチ状態を含み締結・解放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14により締結・解放が制御される乾式単板クラッチが用いられる。
【0022】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの変速機入力軸に連結されている。
【0023】
前記第2クラッチCL2は、自動変速機AT内に設けられ、入力軸側が前記モータ/ジェネレータMGに連結され、出力軸側が、左右後輪RL,RRに連結されて、両者の間に介装されたクラッチである。この第2クラッチCL2は、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ解放を含み締結・解放が制御される。第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。
【0024】
なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵されている。
【0025】
自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。この第2クラッチCL2の出力軸側である前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0026】
このように、第2クラッチCL2は、自動変速機ATにおいて、変速段に応じて最適な締結要素が使用されるため、第2クラッチCL2のクラッチ慣性モーメント、クラッチ減衰係数、クラッチばね係数は、変速段により異なる。
【0027】
実施例1のハイブリッド駆動系は、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール走行モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
【0028】
「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。
【0029】
「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの駆動力で走行するモードである。なお、本実施例1では、このHEVモードにおいて、エンジン走行モード、モータアシスト走行モード、走行発電モード、HEV減速走行モードを形成可能としている。
【0030】
エンジン走行モードは、モータ/ジェネレータMGのトルクを0として、エンジンEngの正トルクで走行するモードである。
【0031】
モータアシスト走行モードは、エンジンEngのトルクならびにモータ/ジェネレータMGのトルクを両方正として走行するモードである。
【0032】
走行発電モードは、エンジンEngのトルクを正とする一方、モータ/ジェネレータMGのトルクを負とした回生動作状態として、モータ/ジェネレータMGにより発電を行ないながら走行するモードである。
【0033】
HEV減速走行モードは、走行発電モードとは逆に、モータ/ジェネレータMGのトルクを正とした力行動作状態としながら、エンジンEngのトルクはフリクションによりモータ/ジェネレータMGのトルクよりも絶対値の大きな負の値として、減速走行するモードである。
【0034】
前記「WSCモード」は、例えば、「EVモード」からの発進時、または、「HEVモード」からの発進時、第2クラッチCL2をスリップ締結状態とし、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start clutch」の略である。
【0035】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
【0036】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0037】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0038】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリ充電量SOCを監視していて、このバッテリ充電量SOC情報は、モータ/ジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0039】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標第1クラッチトルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・解放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0040】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18(変速機入力回転数センサ、インヒビタースイッチ等)からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力して、図示を省略した各摩擦締結要素の締結および解放を制御する。なお、シフトマップとは、アクセル開度APと車速VSPに応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。ATコントローラ7は、上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標第2クラッチトルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結・解放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行なう。
【0041】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行なう。
【0042】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標第1クラッチトルク指令、ATコントローラ7へ目標第2クラッチトルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0043】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理のうち、特に、目標MGトルクを演算する部分を示す制御ブロック図である。図3は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行なう際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でバッテリ充電制御を行なう際に用いられる目標充放電量マップを示す図である。以下、図2〜図4に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
【0044】
前記統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動トルク演算手段101、目標発電量演算手段102、トルク配分演算手段103、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104、第2クラッチスリップ判定手段(滑り判定手段)105、車両状態管理演算手段106、目標MGトルク演算手段107を備えている。そして、目標MGトルク演算手段107から、モータコントローラ2へ、目標MGトルク指令が出力される。
【0045】
目標駆動トルク演算手段101は、アクセル開度センサ16および車速センサ17から得られるアクセル開度APおよび車速VSPに基づいて、モータ/ジェネレータMGの目標MGトルクを演算する。
【0046】
目標発電量演算手段102は、モータコントローラ2に含まれるSOC検出手段201から得られるバッテリ充電量SOC、エンジン回転数センサ12から得られるエンジン回転数Em、モータ回転数センサ21から得られるモータ回転数Nmに基づいて目標発電量を演算する。
【0047】
トルク配分演算手段103は、目標MGトルクおよび目標発電量に基づいて、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGとのトルク配分を演算する。
【0048】
推定第2クラッチ入力回転数演算手段104は、第2クラッチCL2への入力トルク(推定MGトルク)に基づいて、第2クラッチCL2が固着状態の推定入力回転数である推定第2クラッチ入力回転数を求める。
【0049】
すなわち、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104は、ATコントローラ7に含まれギア位置(変速段)を検出するギア位置検出手段202が検出する自動変速機ATのギア位置、モータコントローラ2に含まれる推定MGトルク検出手段203から得られる推定MGトルク、第2クラッチ入力回転数検出手段204が検出する第2クラッチ入力回転数に基づいて、第2クラッチCL2が固着していると想定したときの第2クラッチCL2の推定入力回転数である推定第2クラッチ入力回転数を求める。
【0050】
そこで、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104は、下記の数式1に示すラプラス変換式に基づき、推定モータトルクから推定第2クラッチ入力回転数を算出する。
【0051】
【数1】

【0052】
なお、上記ラプラス変換式において、Jは第2クラッチ慣性モーメント(入力軸換算)、Cは第2クラッチ減衰係数(入力軸換算)、Kは第2クラッチばね係数(入力軸換算)、sは変数である。また、第2クラッチ慣性モーメント、第2クラッチ減衰係数、第2クラッチばね係数は、それぞれ、変速段により異なるため、J,C,Kの各定数は、変速段に応じて設定されている。
【0053】
図2に戻り、第2クラッチスリップ判定手段105は、第2クラッチCL2がスリップ状態であるか固着状態であるかを判定する。すなわち、第2クラッチスリップ判定手段105は、第2クラッチ出力回転数検出手段205が検出する第2クラッチ出力回転数、第2クラッチ入力回転数検出手段204が検出する第2クラッチ入力回転数、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104から得られた推定第2クラッチ回転数に基づいて、第2クラッチCL2がスリップ状態か固着状態かの判定を行う。この判定の詳細については後述する。
【0054】
なお、第2クラッチ入力回転数検出手段204として、本実施例1では、モータ回転数センサ21が用いられ、第2クラッチ出力回転数検出手段205として、自動変速機ATの出力軸の回転数を検出する車速センサ17が用いられている。
【0055】
また、車速センサ17は、プロペラシャフトPSの回転に伴って磁力変化をパルス出力し、そのパルスのカウントにより回転数を検出するものを用いており、回転数がある値(これを分解能下限値と称する)未満になるとパルスの間隔が開いて、高い精度で回転数を検出することができない周知の構造のものを用いている。
【0056】
車両状態管理演算手段106は、アクセル開度APと車速VSP、バッテリ充電量SOC、目標MGトルクに基づいて、EVモード、HEVモード、WSCモードのいずれのモードで駆動させるかを算出する手段である。すなわち、車両状態管理演算手段106は、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリ充電量SOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。また、「EVモード」または「HEVモード」からの発進時、車速VSPが第1設定車速VSP1になるまで「WSCモード」を目標走行モードとして選択する。
【0057】
目標MGトルク演算手段107は、車両状態と目標駆動トルクとに基づいて、目標MGトルクを演算する。さらに、後述するスリップ判定時には、図5に示すように、第2クラッチCL2の締結解除時点taから、あらかじめ設定された油圧低下待ち遅延時間twが経過した時点tbで、スリップ判定用に、スリップ判定用MGトルクを出力する処理を実行する。なお、このスリップ判定用MGトルクは、自動変速機ATの変速段ごとに、その変速段の慣性モーメント、減衰係数、ばね係数などに応じて設定されている。
【0058】
なお、統合コントローラ10では、図4に示す、目標充放電量マップを用いて、バッテリ充電量SOCから目標充放電電力tPを演算している。さらに、統合コントローラ10では、目標エンジントルクと目標MGトルクと目標MG回転数とに基づいて、目標第1クラッチトルクと目標第2クラッチトルクを演算し、目標第1クラッチトルク指令と目標第2クラッチトルク指令を、CAN通信線11を介して各コントローラ1,2,5,7に出力する。
【0059】
次に、統合コントローラ10において、目標MGトルクを算出してモータコントローラ2に目標MGトルク指令を出力する処理の流れを図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
ステップS1では、各コントローラ1,2,5,7,9からデータを受信し、ステップS2に進む。
【0061】
ステップS2では、各センサ16〜22および各検出手段201〜205の検出値を読み込み、ステップS3に進む。
【0062】
ステップS3では、目標駆動トルク演算手段101により目標駆動トルクを演算し、ステップS4に進む。
【0063】
ステップS4では、目標発電量演算手段102により目標発電量を演算し、ステップS5に進む。
【0064】
ステップS5では、トルク配分演算手段103によりエンジンEngとモータ/ジェネレータMGへのトルク配分を演算し、ステップS6に進む。
【0065】
ステップS6では、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104により推定第2クラッチ入力回転数を演算し、ステップS7に進む。
【0066】
ステップS7では、第2クラッチスリップ判定手段105により第2クラッチスリップ判定を行い、ステップS8に進む。
【0067】
ステップS8では、車両状態管理演算手段106により車両の走行モード、すなわち、EVモード、HEVモード、WSCモードのいずれのモードを選択するかを演算し、ステップS9に進む。
【0068】
ステップS9では、目標MGトルク演算手段107により目標MGトルクを演算し、ステップS10に進む。
【0069】
ステップS10では、目標MGトルクをモータコントローラ2へ出力する。同時に、各コントローラ1,5,7,9に、各指令値を出力する。
【0070】
次に、ステップS7の第2クラッチスリップ判定の処理の流れを、図7のフローチャートに基づいて説明する。このスリップ判定は、例えば、EVモードからHEVモードに移行する際のエンジンEngの始動時に実行される。すなわち、このようなエンジンEngの始動時には、第2クラッチCL2のスリップ量があらかじめ設定されたスリップ量を超えると、第1クラッチCL1を締結させ、モータ/ジェネレータMGの回転をエンジンEngに伝達して、エンジンEngの始動を行なう。
【0071】
まず、ステップS81では、第2クラッチ出力回転数が、第2クラッチ出力回転数検出手段205(車速センサ17)分解能下限値よりも大きいか否か判定し、分解能下限値よりも大きい場合はステップS82に進み、分解能下限値以下の場合は、ステップS83に進む。
【0072】
ステップS82では、通常モードでの第2クラッチCL2のスリップ判定を行う。すなわち、通常モードでは、第2クラッチ入力回転数と第2クラッチ出力回転数との差に基づいて、第2クラッチCL2のスリップ判定を行なう。
【0073】
一方、ステップS83では、車両停車時モードでの第2クラッチスリップ判定を行なう。すなわち、上述したように、第2クラッチ出力回転数検出手段205(車速センサ17)は、分解能下限値以下では、プロペラシャフトPSの回転数を精度高く検出することができない。したがって、ステップS82のように、第2クラッチ入力回転数と第2クラッチ出力回転数との差に基づいてスリップ判定を行なうことができない。
【0074】
そこで、本実施例1では、この車両停車時モードでの第2クラッチスリップ判定は、第2クラッチ入力回転数と、推定MGトルクに基づいて得られた推定第2クラッチ入力回転数とに基づいて行なう。
【0075】
ここで、本願発明者は、第2クラッチCL2のスリップ状態と固着状態とで第2クラッチ入力回転数が異なる性質を有していることを見出した。
【0076】
すなわち、図8に示すように、第2クラッチCL2がスリップ状態では、第2クラッチ入力回転数は、スリップ時特性S1に示すように、推定MGトルクの立ち上がり時点t1から漸次上昇する。それに対し、第2クラッチCL2が固着している場合、第2クラッチ入力回転数は、固着時特性S2で示すように、2次振動系の応答を示す。
【0077】
そこで、本実施例1では、この2次振動系の波形に基づいて、固着状態かスリップ状態かの判定を行なう。
【0078】
具体的には、本実施例1では、第2クラッチ入力回転数検出手段204(モータ回転数センサ21)が検出する実第2クラッチ入力回転数と、推定第2クラッチ入力回転数と、を比較し、実第2クラッチ入力回転数が、推定第2クラッチ入力回転数を上回ると、スリップ状態と判定し、上回らない場合は、固着状態と判定する。したがって、図8に示すタイムチャートにおいて、固着時特性S2が、推定第2クラッチ入力回転数に相当し、実第2クラッチ入力回転数が、スリップ時特性S1のように上昇して、固着時特性S2を上回った時点t2あるいは、両者の差が、あらかじめ設定された設定値以上となった時点で、スリップ状態と判定し、それ以外では、固着と判定する。
【0079】
次に、ステップS9の目標MGトルク演算処理において、EVモードからエンジンを始動させる際の処理の流れを図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0080】
ステップS101では、EVモードであるか否か判定し、EVモードの場合は、ステップS102に進み、EVモード以外ではスタートに戻る。
【0081】
ステップS102では、エンジン始動要求があるか否か判定し、エンジン始動要求があった場合には、ステップS103に進み、エンジン始動要求が無い場合は、スタートに戻る。
【0082】
ステップS103では、第1クラッチCL1を締結させる一方で、第2クラッチCL2の締結を解除する処理を実行し、ステップS104に進む。
【0083】
ステップS104では、油圧低下待ち遅延時間twを待った後、スリップ判定用MGトルクを出力した後、ステップS105に進む。このスリップ判定用MGトルクは、例えば、図10に示すように目標駆動トルクに加算値MGKを加えて形成する。この加算値MGKは、変速段ごとに、第2クラッチ慣性モーメント、第2クラッチ減衰係数、第2クラッチばね係数に応じて設定されている。さらに、このスリップ判定用MGトルクには、上限値(この上限値は、エンジン始動時に必要なトルクよりも小さな値に設定されている)が設定されており、目標駆動トルクに加算値MGKを加算した値が上限値を超えた場合には、上限値に設定される。
【0084】
ステップS105では、前述のステップS7によるスリップ判定結果を読み込み、スリップ判定結果が固着状態であるか否か判定し、固着判定の場合はステップS106に進み、スリップ判定の場合はステップS108に進む。
【0085】
ステップS106では、目標MGトルクが、変速段ごとに設定された低駆動トルク閾値tqs未満であるか否か判定し、低駆動トルク閾値tqs未満の場合はステップS107に進み、低駆動トルク閾値tqs以上の場合は、ステップS108に進む。
【0086】
なお、低駆動トルク閾値tqsは、第2クラッチCL2の特性に基づいて、第2クラッチCL2が固着していても、この固着状態を解消して、第2クラッチCL2をスリップ状態に移行させることのできるMGトルクに相当する。また、変速段により第2クラッチCL2として締結されるものが異なる場合があり、かつ、前述のように変速段により第2クラッチCL2の慣性モーメント、減衰係数、ばね係数が異なることから、低駆動トルク閾値tqsも変速段ごとに設定されている。
【0087】
そして、ステップS107では、目標MGトルクが低駆動トルク閾値tqsを越えるように、低駆動トルク閾値tqsとの差に基づいて算出された加算値を加えて目標MGトルク(加算目標MGトルク)を算出する。
【0088】
したがって、スリップ判定時には、目標MGトルクが、そのままモータコントローラ2へ出力される。また、固着判定時でも、目標MGトルクが、低駆動トルク閾値tqsを越えている場合には、目標MGトルクがそのままモータコントローラ2へ出力される。
【0089】
一方、固着判定時に、目標MGトルクが低駆動トルク閾値tqs未満である場合、目標MGトルクに、加算値を加算した目標MGトルク(加算目標MGトルク)をモータコントローラ2へ出力する。なお、加算値は、目標MGトルクを、低駆動トルク閾値tqsよりも大きな値にすることができる値を用いるもので、例えば、目標MGトルクと低駆動トルク閾値tqsとの差に基づいて設定する。また、加算値も、第2クラッチCL2の特性に応じ、変速段ごとに異なる値が用いられる。
【0090】
次に、EVモードで停車中に、エンジンEngを始動させる場合の動作を、図10のタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0091】
エンジン始動要求が成されると(t11)、第2クラッチCL2が締結状態から解放状態へ切り換えられ、第2クラッチトルク指令値が、最大(MAX)から解放駆動状態に応じた値に低下される(ステップS101→S102→S103の処理の流れに基づく)。
【0092】
そして、第2クラッチCL2において、油圧応答性を考慮して、締結が解除されるのに必要な時間である油圧低下待ち遅延時間twが経過した時点(t12)で、スリップ判定用MGトルクに応じた目標MGトルクが指令される(ステップS104)。
【0093】
このとき、推定第2クラッチ入力回転数演算手段104では、推定MGトルクに基づいて推定第2クラッチ入力回転数を算出し、さらに、第2クラッチスリップ判定手段105では、実第2クラッチ入力回転数(モータ回転数)と推定第2クラッチ入力回転数との差に基づいて、スリップ判定を行う。
【0094】
すなわち、推定MG回転数がスリップ時特性に示すように漸次上昇する場合は、実第2クラッチ入力回転数が、推定第2クラッチ入力回転数を上回り(t12の時点)、スリップと判定される。一方、第2クラッチCL2の固着時には、駆動輪RL,RRは停止したままであり、実第2クラッチ入力回転数は、上昇せず、推定第2クラッチ入力回転数を上回ることは無い。そこで、固着判定が成される。
【0095】
その後、第2クラッチCL2が、通常、スリップ状態に移行するのに要する時間が経過した時点t14で、目標MGトルクとして、エンジンEngを始動させるのに必要な目標MGトルクを出力する。
【0096】
なお、t13の時点で固着判定が成された場合、目標MGトルクが、低駆動トルク閾値tqs未満の場合は、加算値を加えて、低駆動トルク閾値tqsよりも大きな目標MGトルク(加算目標MGトルク)を算出する(ステップS105→S106→S107の処理に基づく)。
【0097】
したがって、モータ/ジェネレータMGの出力トルクで、エンジンEngの始動が開始されるとともに、第2クラッチCL2の固着が解除され、モータ/ジェネレータMGのトルクが、駆動輪側に伝達されるのを防止できる。
【0098】
以上説明したように、本実施例1では、以下に列挙する効果が得られる。
【0099】
a)第2クラッチスリップ判定手段105は、第2クラッチCL2に解放指令を与えた際に、スリップ状態か固着状態かの判定を、推定第2クラッチ入力軸回転数の振動波形に基づいて、判定を行うようにした。
【0100】
したがって、第2クラッチ出力回転数検出手段205の不感領域において、第2クラッチCL2の入出力回転数差に基づいてスリップ判定を行うことができない状況でも、第2クラッチCL2がスリップ状態か、固着状態かを判定することが可能となった。
【0101】
そして、このスリップ判定を、モータ回転数および推定MGトルクにより行うようにしたため、第2クラッチCL2の状態を検出する専用のセンサ、例えば、油圧センサやストロークセンサなどを追加することなく判定可能であり、コスト的に有利である。
【0102】
b)推定第2クラッチ入力回転数演算手段104は、推定第2クラッチ回転数を算出するのにあたり、変速段ごとに、第2クラッチ慣性モーメント、第2クラッチ減衰係数、第2クラッチばね係数を設定した。
【0103】
したがって、これらの値として一定の値を用いるものと比較して、高い精度で第2クラッチ入力回転数を推定することができる。これにより、第2クラッチCL2のスリップ判定も、高い精度で行うことができる。
【0104】
c)エンジン始動開始時点((図7のt14の時点)よりも前のt12の時点で、スリップ判定用MGトルクを出力するようにしたため、エンジンEngの始動開始よりも前の時点で、第2クラッチCL2のスリップ判定を行うことができる。
【0105】
したがって、早期のスリップ判定が可能となる。
【0106】
加えて、エンジン始動前に、このスリップ判定用MGトルクを第2クラッチCL2に入力するため、固着が軽度の場合は、このトルク入力で固着が解除される可能性があるとともに、エンジン始動開始時点での、早期の固着解除が可能となる。よって、スリップ判定用MGトルクを入力しないものと比較して、駆動輪RL,RRにトルク伝達されることによるショックの発生を抑制できる。
【0107】
d)スリップ判定用MGトルクは、変速段ごとに、第2クラッチ慣性モーメント、第2クラッチ減衰係数、第2クラッチばね係数に応じて設定した。したがって、変速段ごとに設定しないものと比較して、いっそう乗員に与える違和感を抑えることができる。
【0108】
e)スリップ判定用MGトルクは、第2クラッチCL2の応答性を考慮して、第2クラッチCL2の油圧低下待ち遅延時間twが経過してから出力するようにした。このため、第2クラッチCL2に油圧が残っている状態でスリップ判定用MGトルクが出力されて、駆動輪RL,RR側に伝達されて車両にショックが生じるのを抑えることができる。よって、乗員に対し、車両にショックが生じることで違和感を与えることを抑制できる。
【0109】
f)スリップ判定用MGトルクは、目標駆動トルクに、加算値MGKを加算して与えるようにし、かつ、エンジン始動時に必要な目標MGトルクよりも低い上限値を設定し、この上限値を超えない値とした。
【0110】
したがって、モータ/ジェネレータMGの目標MGトルクが生じていない状況で、モータ/ジェネレータMGを駆動させて、第2クラッチCL2にトルクを入力させることができるとともに、このトルクを低く抑えることで、第2クラッチCL2が固着していても、乗員に与える違和感を抑えることができる。
【0111】
g)目標MGトルクが、低駆動トルク閾値tqsよりも低い場合には、あらかじめ設定された加算値を加えた目標MGトルク(加算目標MGトルク)を出力するため、第2クラッチCL2の固着解除が、加算値を加えないものよりも、いっそう早期に実行される。
【0112】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施の形態および実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これら実施の形態および実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0113】
実施例1では、第2クラッチCL2として、自動変速機ATの締結要素として設けられたものを用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、単独で、モータ/ジェネレータと駆動輪との間に設けてもよい。また、モータ/ジェネレータMGと駆動輪RR,RLとの間に自動変速機ATを介在させたものを示したが、自動変速機ATを設けずに、第2クラッチCL2の出力側を駆動輪に直結してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
実施例1では、エンジンとモータ/ジェネレータの間に第1クラッチを介装したFRハイブリッド車両への適用例を示したが、第1クラッチを省略し、エンジンとモータ/ジェネレータを直結する構成としたFRハイブリッド車両やFFハイブリッド車両や四輪駆動車両へ適用することもできる。また、モータ/ジェネレータに限らず、力行のみが可能なモータを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1のハイブリッド車両の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理のうち、目標MGトルクを演算する部分を示す制御ブロック図である。
【図3】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でモード選択処理を行なう際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。
【図4】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でバッテリ充放電処理を行なう際に用いられる目標充放電量マップを示す図である。
【図5】実施例1における統合コントローラ10にて実行されるスリップ判定時のスリップ判定用MGトルクを出力する処理を実行したときのタイムチャートである。
【図6】実施例1の制御装置により目標MGトルクを算出してモータコントローラ2に目標MGトルク指令を出力する処理の流れをフローチャートである。
【図7】実施例1の制御装置による第2クラッチスリップ判定の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例1における第2クラッチCL2のスリップ状態と固着状態とで第2クラッチ入力回転数を示すタイムチャートである。
【図9】実施例1の制御装置における目標MGトルク演算処理において、EVモードからエンジンを始動させる際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例1の制御装置によりEVモードで停車中に、エンジンEngを始動させる場合の動作を一例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0116】
10 統合コントローラ
104 推定第2クラッチ入力回転数演算手段
105 第2クラッチスリップ判定手段(滑り判定手段)
AT 自動変速機(変速機)
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
MG モータ/ジェネレータ
PS プロペラシャフト
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
SOC バッテリ充電量
tw 遅延時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータが直結あるいは第1クラッチを介して連結され、前記モータと駆動輪の間に第2クラッチが介装され、
前記第2クラッチを、解放を含む滑り状態としたときに、前記第2クラッチが滑り状態か固着状態かを判定する滑り判定手段を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記滑り判定手段は、前記モータを駆動させたときの前記第2クラッチの入力軸回転数の振動波形に基づいて、前記判定を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記モータの推定モータトルクから、前記第2クラッチの入力回転数を推定する推定第2クラッチ入力回転数演算手段を備え、
前記滑り判定手段は、前記モータの回転数と、前記推定第2クラッチ入力回転数演算手段が算出した前記第2クラッチ固着時相当の推定第2クラッチ入力回転数とに基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記モータと前記駆動輪との間に変速機が介在され、
前記推定第2クラッチ入力回転数演算手段は、変速段に応じて演算に使用する値を変更することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記滑り判定手段は、前記滑り判定時に、前記モータに、判定用トルクを出力させる判定用出力処理を実行することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記モータと前記駆動輪との間に変速機が介在され、
前記判定用トルクが、前記変速機の変速段に応じて設定されていることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記滑り判定手段は、前記判定用トルクの出力を、前記第2クラッチの締結解除指令から、予め設定された応答遅れ時間を考慮した遅延時間が経過した後に実行することを特徴とする請求項2または請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記判定用トルクは、目標モータトルクに、前記変速段に応じた加算値を加えて設定されるとともに、あらかじめ上限値が設定されていることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−149556(P2010−149556A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327134(P2008−327134)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】