説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】ハイブリッド車において、バッテリの充放電効率を早期に高める。
【解決手段】エンジン6と、エンジン6によって駆動されて発電を行うジェネレータ7と、ジェネレータ7での発電電力を蓄電するバッテリ9と、バッテリ9とジェネレータ7との少なくとも一方から電力を受けて駆動される走行用モータ4とを備えている。バッテリ9の温度が低いときは、ジェネレータ7によってエンジン回転数が一定回転範囲内となるように調整しつつエンジン6の出力を周期的に変化させることにより、バッテリの充電と放電とを繰り返させて、バッテリ温度をすみやかに上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンとして、水素やLPG等の気体燃料が供給される気体燃料エンジンが実用化されている。また、エンジンと走行用モータとを備えたハイブリッド車が増加する傾向にある。特許文献1には、ハイブリッド車用のエンジンとして。気体燃料エンジンを用いるものが開示されている。特許文献2には、ハイブリッド車において、エンジン回転を高効率の範囲内でもって稼働させることが開示されている。
【0003】
一方、最近のエンジンでは、エンジンの停止と起動とが自動的に行われるものが増加している。例えば、エンジンがアイドリングストップを行う車両やハイブリッド車に搭載されたときに、エンジンの停止と起動とが自動的に行われることになる。このような自動的なエンジン停止と起動とを行うものにあっては、自動起動がかなり頻繁に行われることになるので、エンジンのクランキングのために必要なバッテリの消費電力が多くなる(バッテリの負担大)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−250024号公報
【特許文献2】特開2007−195334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド車においては、バッテリの重要性が極めて高いものであり、特に充電と放電とを効率よく行うことが強く望まれることになる。この一方、バッテリの充放電効率は、バッテリ温度が低い状態では大きく低下してしまうことになる。すなわち、、例えば外気温が低い環境で長時間放置されている等によりバッテリ温度が低下している状態から走行を開始した際、かなりの長時間走行しないとバッテリの温度が十分に上昇しないことになり、それまでの間は、充放電効率の悪い状態で充電あるいは放電が行われることになり、この充放電効率が悪い分だけ燃費悪化等になってしまうことになる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、バッテリ温度をすみやかに上昇させることのできるようにしたハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のようの解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
エンジンと、該エンジンによって駆動されて発電を行うジェネレータと、該ジェネレータでの発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリと該ジェネレータとの少なくとも一方から電力を受けて駆動される走行用モータと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出される温度があらかじめ設定された所定温度以下のとき、前記ジェネレータによってエンジン回転数を一定回転範囲としつつエンジンの出力を周期的に変化させて、前記バッテリの放電と充電を周期的に繰り返させる制御手段と、
を備えているようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、バッテリの充電と放電とが繰り返し行われるので、バッテリ温度がすみやかに上昇されて、バッテリの充放電効率が早期に高められることになる。また、エンジン出力の変動に伴なうエンジン回転数の変化はジェネレータによって抑制されるので、乗員が違和感を感じることも防止される。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記エンジン出力の周期的な変化が、空燃比を周期的に変化させることにより行われる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、空燃比の変動によってエンジン出力を大きく変動させることができ、特にエンジン負荷(アクセル開度)が大きいときのエンジン出力の周期的な変動を行う上で好ましいものとなる。
【0010】
前記エンジン出力の周期的な変化が、吸気行程中に燃料噴射する第1燃料噴射態様と吸気行程終期から圧縮行程の範囲において燃料噴射する第2燃料噴射態様との割合を周期的に変化させることにより行われる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、燃料噴射態様の変更によってエンジン出力を変化させることができる。特に、エンジン負荷が小さいときのエンジン出力の周期的な変動を行う上で好ましいものとなる。さらに、エンジンが気体燃料が供給される場合に、燃料噴射量が同じであっても第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様との間で大きく出力を変化させることができ、気体燃料エンジンを搭載した場合に好適ともなる。
【0011】
前記空燃比の周期的な変化が、スロットル弁の前後差圧が殆ど無いスロットル全開状態としつつ燃料噴射量を増減することにより行われる、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、ポンピングロスを低減した上で出力の変動を行って、燃費悪化の防止あるいは抑制の上で好ましいものとなる。
【0012】
吸気ポートに向けて燃料噴射する第1燃料噴射弁と、筒内に直接燃料噴射する第2燃料噴射弁と、を備え、
前記第1燃料噴射態様は前記第1燃料噴射弁から燃料噴射することにより行われる一方、前記第2燃料噴射態様は前記第2燃料噴射弁から燃料噴射することにより行われる、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様を得るための燃料噴射弁の具体的な設定の仕方が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バッテリの温度をすみやかに上昇させて、バッテリの充放電効率が高くなる状態をすみやかに確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明をハイブリッド車に適用した場合の一例を示す簡略平面図。
【図2】気体燃料エンジンの一例を示す系統図。
【図3】バッテリ電力のみを利用した走行とエンジンにより発電を行いつつ走行するときの一例を示す図。
【図4】本発明の制御系統例をブロック図的に示す図。
【図5】燃料噴射態様の変更によりエンジン出力を周期的に変化させるときの様子を示すタイムチャート。
【図6】空燃比の変更によりエンジン出力を周期的に変化させるときの様子を示すタイムチャート。
【図7】本発明の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、車両としての自動車Vは、そのボディ(車体)が符合1で示され、左右前輪が符合2で示され、左右後輪が符合3で示される。4は、走行用モータで、この走行用モータ4が、デファレンシャルギア5A、ドライブシャフト5Bを介して左右の前輪2に連結されている。すなわち、実施形態では、左右前輪2のみが駆動される前輪駆動車とされている。
【0016】
ボディ1の前部には、走行用モータ4の他に、エンジン6,ジェネレータ7、インバータ8が配設されている。また、ボディ1の前後方向中間部から後部に渡っての床面下には、バッテリ9,燃料タンク10が配設されている。エンジン6は、火花点火式気体燃料エンジンとされて、燃料タンク10内に貯溜された気体燃料としての例えば水素が供給されるようになっている。
【0017】
ジェネレータ7は、エンジン6によって駆動されて発電を行うと共に、バッテリ9からの電力を受けてエンジン6を始動するための始動用モータとしても機能される。バッテリ9は、例えばリチウムイオン電池によって構成されて、高電圧(例えば300〜500V)かつ大容量となっている。バッテリ9の蓄電電力が走行用モータ4に供給されて走行され、最大蓄電量状態にあるバッテリ9のみの蓄電電力によって数十km(例えば30〜60km)走行可能とされている。さらに、ボディ1の後端部には、低電圧(例えば12V)のバッテリ11が搭載され、このバッテリ11によって、点火プラグ、燃料噴射弁、ヘッドライト、ワイパ、オーディオ等の各種車載電気機器類に給電されるようになっている。
【0018】
図2は、エンジン6とその吸・排気系の一例を示す。実施形態では、エンジン6は、バンケル式のロータリピストンエンジンとされて、直列に第1気筒RAと第2気筒RBとの2つの気筒を有する。各気筒RA、RBの吸気ポートに個々独立して連なる分岐吸気通路21A、21Bが1本の共通吸気通路22に連なっている。この共通吸気通路22には、スロットル弁23が配設されている。また、各分岐吸気通路21A、21Bには、ポート噴射用の第1燃料噴射弁24A、24Bが配設されている。この第1燃料噴射弁24A、24Bは、吸気行程中に燃料噴射する第1燃料噴射態様を得るためのものとなっている。燃料噴射弁としては、さらに、気筒(作動室)内に直接燃料噴射を行う第2燃料噴射弁25A、25Bが設けられている。この第2燃料噴射弁25A、25Bは、吸気行程終期から圧縮行程の範囲でもって燃料噴射を行うもので(実施形態では圧縮行程中に燃料噴射を実行)、第2燃料噴射態様を得るためのものとなっている。
【0019】
各気筒RA、RBの排気ポートに個々独立して連なる分岐排気通路26A、26Bが、1本の共通排気通路27に連なっている。この共通排気通路27には、空燃比センサ28が配設されると共に、空燃比センサ28の下流側において、排気ガス浄化触媒(実施形態ではNOx触媒)29が配設されている。
【0020】
共通吸気通路22と共通排気通路27とが、EGR通路30によって接続され、このEGR通路30には、EGR弁31が接続されている。なお、EGR通路30は、スロットル弁23の下流側において共通吸気通路22に開口され、空燃比センサ28の上流側において共通排気通路27に開口されている。
【0021】
各気筒RA、RBは、2つの点火プラグ33A、33Bを有している。エンジン始動後において、第1燃料噴射弁24A、24Bからの燃料噴射は、相対的に低回転・低負荷時に実行される一方、第2燃料噴射弁25A、25Bからの燃料噴射は、相対的に高回転または高負荷時において行われる。空気と燃料噴射弁から噴射される燃料としての水素との混合気が、点火プラグ33A、33Bによって着火される。混合気への着火によって燃焼が行われる。
【0022】
図3は、バッテリ9の蓄電量に応じて車両Vの走行状況が変化される様子を示す。すなわち、バッテリ9の蓄電量が大きいとき(例えば蓄電量が40%に低下するまで)は、エンジン6は停止(自動停止)されていて、バッテリ9からの電力供給のみによって走行用モータ4が駆動される(いわゆるプラグイン走行)。一方、バッテリ9の蓄電量が小さくなると(例えば蓄電量が40%未満となったとき)は、エンジン6が起動されて(自動起動)、ジェネレータ7での発電が行われ、このジェネレータ7の発電電力が走行用モータ4に供給されると共に、余剰電力がバッテリ9へ供給される。ジェネレータ7の発電電力によってバッテリ9の蓄電量が増大されたとき(例えば蓄電量が70%となったとき)は、エンジン4が自動停止される(プラグイン走行の再開)。このように、バッテリ9の蓄電量に応じて、エンジン6が自動的に停止と起動とを繰り返して、エンジン6が起動されているときには、ジェネレータ7によって発電しつつ、走行とバッテリ9への蓄電が行われる。なお、車両Vの減速時には、走行用モータ4による回生が行われて、回生による電力がバッテリ9に蓄電される。
【0023】
図4は、本発明の制御系統例をブロック図的に示すものである。図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラUは、走行用モータ4,エンジン6(特に燃料噴射弁)、ジェネレータ7、インバータ8を制御する。インバータ8を介して、バッテリ9と走行用モータ4との間での電力授受、ジェネレータ7とバッテリ9との間での電力授受、ジェネレータ7から走行用モータ4への電力供給、バッテリ9からバッテリ11への電力供給等が行われる。
【0024】
コントローラUは、燃料噴射制御や点火時期制御等のエンジン制御を行う他、エンジン6の自動的な停止と起動の制御を行ない、さらに後述するバッテリ9のすみやかな温度上昇制御をも行う。このコントローラUには、空燃比センサ28からの信号が入力されるが、空燃比センサ28はリニアセンサとされて、空燃比としての空気過剰率λを検出するためのものとなる。コントローラUには、この他、各種センサあるいはスイッチS1〜S6からの信号が入力される。センサS1は、車速を検出するものである。センサS2は、アクセル開度を検出するものである。センサS3は、バッテリ9の温度を検出するものである。センサS4は、エンジン回転数を検出するものである。スイッチS5は、ブレーキペダルが踏み込み操作されたことを検出するものである。センサS6は、バッテリ9の充電量を検出するものである。なお、バッテリ9の温度を検出するセンサS3は、直接的にバッテリ9の温度を検出するものであってもよいが、例えばあらかじめ設定されたある条件下でのバッテリ9に流れる電流の大きさをみることによって、間接的にバッテリ温度を検出するものであってもよい。
【0025】
コントローラUによるエンジン6の自動停止と自動起動は、例えば次のような条件にしたがって行われる。まず、前述したように、バッテリ9の蓄電量に応じた自動停止と自動起動とが行われる。また、バッテリ9の蓄電量に応じてエンジンが自動起動されている条件下でも、アイドルストップによる自動停止と自動起動が行われる。すなわち、例えばアクセル開度が0、車速が0でしかもブレーキスイッチS5がONのとき(ブレーキペダルが踏み込み操作されているとき)に、エンジン6が自動停止される。そして、自動停止状態からブレーキスイッチS5がOFFになると、エンジン6が自動起動される。
【0026】
次に、図5を参照しつつ、バッテリ9の温度が低いとき(例えば10度C以下)のバッテリ9のすみやかな温度上昇の制御例について説明するが、図5は、エンジン負荷が小さいとき(例えばアクセル開度が50%未満)を前提としている。この図5の例では、燃料噴射態様を周期的に変更するようにしてある。すなわち、吸気行程中に第1燃料噴射弁24A、24Bから燃料噴射(ポート噴射)を行う態様を第1燃料噴射態様とし、吸気行程終期から圧縮行程の範囲における第2燃料噴射弁25A、25Bからの燃料噴射(直噴)を第2燃料噴射態様としたとき、第1燃料噴射態様での燃料噴射と第2燃料噴射態様での燃料噴射とが周期的に切換えられる。そして、エンジン出力の変動に起因するエンジン回転数の変動は、エンジン回転数が一定回転数範囲(例えば±50rpmの範囲内での変動)となるようにジェネレータ7を制御してバッテリ9を充放電させることによって抑制される。
【0027】
具体的には、通常時では、第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様との燃料噴射割合が例えば50%づつとされる。エンジン出力を大きくするときは、第1燃料噴射態様での燃料噴射割合が通常時の50%から減少される一方、第2燃料噴射態様の割合が通常時の50%から増大される(例えば第1燃料噴射態様での燃料噴射割合が30%で、第2燃料噴射態様での燃料噴射割合が70%)。第1燃料噴射態様では、第2燃料噴射態様に比して充填効率が低下する。したがって、第1燃料噴射態様での燃料噴射割合を減少させて、その分第2燃料噴射態様での燃料噴射割合を増大させることにより、充填効率が向上されて、エンジン出力が増大されることになる。特に、気体燃料の場合は、液体燃料の場合に比して、第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様との間での充填効率の差が大きくなる。
【0028】
エンジン出力を小さくするときは、上記とは逆に、第1燃料噴射態様での燃料噴射割合が通常時の50%から増大される一方、第2燃料噴射態様の割合が通常時の50%から減少される(例えば第1燃料噴射態様での燃料噴射割合が70%で、第2燃料噴射態様での燃料噴射割合が30%)。2つの燃料噴射態様での燃料噴射割合の変更に際して、いずれ一方の燃料噴射割合が0%(他方が100%)となるような設定とすることもできる。
【0029】
2つの燃料噴射態様での燃料噴射割合の変更によるエンジン出力の変動に起因して生じようとするエンジン回転数の変動は、ジェネレータ7によって防止あるいは抑制されて、エンジン回転数が一定回転数範囲となるように制御される。つまり、エンジン出力が増大されたときは、一定回転数の維持に必要な出力に対する余剰出力が、ジェネレータ7の発電用として消費されて、このときバッテリ9の充電が行われる。逆に、エンジン出力が低下するときは、エンジン回転数の維持に必要な不足出力分だけバッテリ9から放電されることになる。このようなバッテリ9の充電と放電との繰り返しによって、バッテリ9の温度がすみやかに上昇されることになる。図5では、t1時点まで、およびt2時点からt3時点の間はエンジン出力が大きくされて、バッテリ9の充電が行われる。また、t1時点からt2時点の間およびt3時点からt4時点の間はエンジン出力が小さくされて、バッテリ9の放電が行われる。
【0030】
図6は、エンジン負荷が大きいとき(例えばアクセル開度が50%以上)を前提として、空燃比を周期的に変動させることより、バッテリ9の充放電を繰り返し行うようにした例を示す。すなわち、第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様とでの燃料噴射割合を変化させることなく(例えば50%づつ)、空燃比を周期的に変化させることによりエンジン出力を周期的に変化させるようにしてある。勿論、エンジン回転数が一定回転数範囲となるように、ジェネレータ7が制御されて、バッテリ9の充放電が繰り返し行われる。図6の場合、通常時の空燃比は例えば空気過剰率λが2.2とされ、エンジン出力を増大させるときは空燃比がリッチ(例えばλが2.0)にされ、出力出力を減少させるときは空燃比がリーン(例えばλが2.4)にされる。なお、空気過剰率λは、1.0以上の範囲でもって、適宜設定できる。
【0031】
図6において、t11時点まで、およびt12時点からt13時点の間は空燃比がリッチとされて、バッテリ9の充電が行われる。また、t11時点からt12時点の間、およびt13時点からt14時点の間は空燃比がリーンとされて、バッテリ9の放電が行われる。このようなバッテリ9の充放電の繰り返しによって、エンジン回転数が一定回転数範囲とされつつ、バッテリ9の温度がすみやかに上昇されることになる。
【0032】
図7は、コントローラUによるバッテリ温度上昇の制御例を示すフローチャートであり、以下このフローチャートについて説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。まず、Q1において各種センサあるいはスイッチS1〜S6の信号が読み込まれる。次いで、Q2において、センサS3で検出されたバッテリ9の温度が所定温度(実施形態では10度C)以下であるか否かが判別される。このQ12の判別でNOのときは、バッテリ9の温度を積極的に上昇させる制御は不要であるとして、Q12に移行して、通常運転が行われる(例えば、第1燃料噴射態様と内2燃料噴射態様の燃料噴射割合が50%づつで、空燃比はλ=2.2の運転)。
【0033】
Q2の判別でYESのときは、Q3において、アクセル開度が50%未満の低負荷時であるか否かが判別される。このQ3の判別でYESのときは、Q5以下の処理によって、第1燃料噴射態様と第2燃料噴射態様との間での燃料噴射割合を周期的に変更することによるエンジン出力の周期的な変動を行って、バッテリ9の充電と放電とが繰り返し行われる。すなわち、Q4において、上記燃料噴射割合の変更制御が選択されて、当初はQ5において、第1燃料噴射態様のみとされて(吸気行程噴射)、バッテリ9の放電が行われる。この後、Q6において、バッテリ9の放電電流が読み込まれる。この後、Q7において、第1燃料噴射態様のみでの燃料噴射開始から所定時間(例えば10秒〜20秒)経過したか否かが判別される。このQ7の判別でNOのときは、Q5に戻る。
【0034】
上記Q7の判別でYESのときは、Q8において、第2燃料噴射態様のみ(吸気行程終期から圧縮行程の範囲での直噴のみ)で燃料噴射が行われて、バッテリ9の充電が行われる。この後、Q9で充電電流の大きさが読み込まれた後、Q10において、第2燃料噴射態様のみでの燃料噴射が開始されてから所定時間(例えば10秒〜20秒)が経過したか否かが判別される。このQ10の判別でNOのときは、Q8に戻る。
【0035】
上記Q10での判別でYESのときは、Q11において、バッテリ9の温度が所定温度を超えたか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、Q3に戻る。また、Q11の判別でYESのときは、Q12に移行される(通常運転へ復帰)。なお、Q6,Q9での充放電電流の読み込みは、例えば、充放電電流があらかじめ設定された所定範囲内となるように、2つの燃料噴射態様の間での燃料噴射割合をフィードバック制御する等のために用いられる。
【0036】
前記Q3の判別でNOのとき、つまりエンジン負荷が大きいときは、Q13以下の空燃比変動の制御によって、バッテリ9の温度上昇制御が行われる。すなわち、Q13において空燃比変動制御を実行することが選択されて、この後Q14において、空燃比がリーンとされる(バッテリ9の放電)。この後、Q15において、バッテリ9の放電電流が読み込まれた後、Q16において、空燃比をリーンにしたときから所定時間(例えば10秒〜20秒)経過したか否かが判別される。このQ16の判別でNOのときは、Q14に戻る。
【0037】
上記Q16の判別でYESのときは、Q17において、空燃比がリッチにされて、バッテリ9への充電が行われる。この後、Q18において、充電電流の大きさが読み込まれた後、Q19において、空燃比をリッチにしたときから所定時間(例えば10秒〜20秒)経過したか否かが判別される。このQ19の判別でNOのときは、Q17に戻る。
【0038】
上記Q19の判別でYESのときは、Q11において、バッテリ9の温度が所定温度を超えたか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、Q3に戻る。そして、Q11の判別でYESのときに、Q12へ移行される(通常運転へ復帰)。なお、Q15,Q18での電流の読み込みは、充放電電流があらかじめ設定された所定範囲内となるように、空燃比のリーン化度合やリッチ化度合をフィードバック制御する等のために用いられる。
【0039】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。エンジン6によって車輪駆動を行うものであってもよく、この場合、エンジン6のみによる車輪駆動と、走行用モータ4のみによる車輪駆動と、エンジン6と走行用モータ4の両方による車輪駆動との態様を適宜切換えるものであってもよい。エンジン6は、往復動型エンジンであってもよく、またガソリンあるいは軽油等の液体燃料が供給されるものであってもよい。2つの燃料噴射態での燃料噴射割合の変更と空燃比の変更とを同時に行うようにしてもよい(より大きく出力変動を行うことができる)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ハイブリッド車に適用して好適である。
【符号の説明】
【0041】
V:車両
4:走行用モータ
6:エンジン
7:ジェネレータ
9:バッテリ
10:燃料タンク
24A、24B:第1燃料噴射弁(第1燃料噴射態様)
25A、25B:第2燃料噴射弁(第2燃料噴射態様)
28:空燃比センサ
33A、33B:点火プラグ
U:コントローラ
S3:センサ(バッテリ温度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンによって駆動されて発電を行うジェネレータと、該ジェネレータでの発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリと該ジェネレータとの少なくとも一方から電力を受けて駆動される走行用モータと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記バッテリの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出される温度があらかじめ設定された所定温度以下のとき、前記ジェネレータによってエンジン回転数を一定回転範囲としつつエンジンの出力を周期的に変化させて、前記バッテリの放電と充電を周期的に繰り返させる制御手段と、
を備えていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記エンジン出力の周期的な変化が、空燃比を周期的に変化させることにより行われる、ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記エンジン出力の周期的な変化が、吸気行程中に燃料噴射する第1燃料噴射態様と吸気行程終期から圧縮行程の範囲において燃料噴射する第2燃料噴射態様との割合を周期的に変化させることにより行われる、ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記空燃比の周期的な変化が、スロットル弁の前後差圧が殆ど無いスロットル全開状態としつつ燃料噴射量を増減することにより行われる、ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項3において、
吸気ポートに向けて燃料噴射する第1燃料噴射弁と、筒内に直接燃料噴射する第2燃料噴射弁と、を備え、
前記第1燃料噴射態様は前記第1燃料噴射弁から燃料噴射することにより行われる一方、前記第2燃料噴射態様は前記第2燃料噴射弁から燃料噴射することにより行われる、
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218536(P2012−218536A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85103(P2011−85103)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】