説明

パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計

【課題】基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができるパッケージの製造方法と、この製造方法により製造された低コストな圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計を提供する。
【解決手段】平板状の土台部と、土台部の表面から法線方向に沿って立設される芯材部と、を有する導電性の鋲体7の芯材部を貫通孔30,31(凹部)に挿入する鋲体配置工程S33を有し、鋲体配置工程S33は、ベース基板用ウエハ40(第1基板)の第1面U(上面)に鋲体7を載置した後、ベース基板用ウエハ40の第2面L側(下面側)に配置した磁石部63(磁石)とベース基板用ウエハ40とを相対的に走査することにより行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子として、圧電振動片が形成された圧電基板を第1基板と第2基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。
この場合、圧電振動片は、第1基板と第2基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収納されている。
【0003】
また近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。このタイプの圧電振動子は、第1基板と第2基板とが直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収納されている。このパッケージ化された2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができるなどの点において優れており、好適に使用されている。このような2層構造タイプの圧電振動子の1つとして、ベース基板に形成された貫通電極により、圧電振動片とベース基板に形成された外部電極とを導通させた圧電振動子が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、金属からなるピン部材(本発明の鋲体に相当)を導電材料として用いることにより、貫通電極を形成することが記載されている。貫通電極を形成する具体的な方法としては、後にベース基板となるベース基板用ウエハを加熱した後、熱軟化状態にあるうちに、貫通孔に前記ピン部材を打ち込むことが記載されている。なお、特許文献1に記載されているように、貫通電極は、多数個取りガラス板(本願のベース基板用ウエハに相当)の状態で形成される。
【0006】
しかしながら、ベース基板用ウエハは多数の貫通孔を有している。したがって、全ての貫通孔に前記ピン部材を打ち込むのに多大な工数を要する。また、前記ピン部材を打ち込んでいる途中にベース基板用ウエハが硬化してしまった場合には、再度加熱して熱軟化状態にする必要があるため、より多大な工数を要する。さらに、貫通孔に前記ピン部材を打ち込むことにより貫通電極を形成する方法では、ピン部材と貫通孔との間隙を完全に塞ぐのが困難であり、キャビティ内の気密性を確保できない虞がある。
【0007】
図13は、鋲体配置工程の説明図であり、図13(a)は挿入途中の説明図であり、図13(b)は挿入後の説明図である。
このような問題を解消するために、図13に示すように、貫通孔30内に鋲体7を挿入し、貫通孔30と鋲体7との間にペースト材を充填する技術が開発されている。具体的には、平板状の土台部7aと、土台部7aの表面から法線方向に沿って立設される芯材部7bとを有する鋲体7を、貫通孔30内に挿入した状態で、貫通孔30と芯材部7bとの間隙にガラスフリットを充填する。そして、充填したガラスフリットを焼成して貫通孔30と芯材部7bとガラスフリットとを一体化させた後、鋲体7の土台部7aを研磨して除去することにより貫通電極を形成する。これにより、貫通孔30および芯材部7bとガラスフリットとが強固に密着するのでキャビティ内の気密が損なわれるのを防止する。
【0008】
ところで、上述の貫通電極を形成する貫通電極形成工程は、鋲体の芯材部をベース基板用ウエハの第1面側から挿入し、貫通孔の内部に鋲体の芯材部を配置する鋲体配置工程を有している。
【0009】
図17は従来技術の鋲体配置工程の説明図であり、図17(a)は平面図であり、図17(b)は図17(a)のF−F線における断面図である。なお、図17において、ベース基板用ウエハ40の厚さ、貫通孔30の大きさおよび鋲体7の大きさを誇張して表現している。
【0010】
具体的な鋲体配置工程の内容としては、まず、ベース基板用ウエハ40の第1面U側を上面して、ウエハ支持治具261にベース基板用ウエハ40をセットする。なお、ウエハ支持治具261には、ベース基板用ウエハ40の外周面を押さえる固定部261aと、ベース基板用ウエハ40をウエハ支持治具261にセットしたときに、貫通孔30,31と連通する複数の吸引孔261bとが形成されている。次に、挿入する鋲体7の鋲体群70を第1面Uに載置する。続いて、ベース基板用ウエハ40に対してF−F線に沿った方向に振動を加えながら、ウエハ支持治具261にベース基板用ウエハ40を設置した際の中心軸Kを軸にして、ベース基板用ウエハ40を周方向に揺動させる。そして、ウエハ支持治具261の吸引孔261bおよび貫通孔30,31を介して鋲体7をエアで吸引することにより、芯材部7bが貫通孔30,31に挿入される。このようにして、第1面Uに載置した鋲体群70が第1面U上で拡散させて、すべての貫通孔30,31の内部に鋲体7の芯材部7bを配置することができる。
【0011】
ここで、上記の鋲体配置工程において第1面U上で鋲体7を拡散させると、ベース基板用ウエハの外周面とウエハ支持治具261の固定部261aとの間隙280に鋲体7が入り込む可能性がある。そして、鋲体7が間隙280に入り込んだ状態で、ベース基板用ウエハ40に振動を加えながら揺動させると、鋲体7がベース基板用ウエハ40の外周面に繰り返し衝突して衝撃を加える。これにより、ベース基板用ウエハ40にマイクロクラックが発生する虞がある。そして、貫通孔30,31内に充填したガラスフリットを焼成する焼成工程では、温度変化によりベース基板用ウエハ40に熱衝撃が加わる。これにより、マイクロクラックが起因となってベース基板用ウエハ40が割れる等、ベース基板用ウエハ40を損傷してしまう虞がある。
【0012】
さらに、ベース基板用ウエハ40に振動を加えながら揺動させて鋲体7を拡散させるため、鋲体7の動きの応答性が悪い。そのため、ベース基板用ウエハ40の第1面U上を隈なく移動させて、すべての貫通孔30,31に鋲体7を配置するには、長時間にわたりベース基板用ウエハ40に振動を加えながら揺動させる必要がある。したがって、貫通孔30,31の内部に鋲体7の芯材部7bを配置するのに多大な時間を要する。
【0013】
そこで本発明は、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができるパッケージの製造方法と、この製造方法により製造された低コストな圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を備え、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板に凹部を形成する凹部形成工程と、平板状の土台部と、前記土台部の表面から法線方向に沿って立設される芯材部と、を有する導電性の鋲体の前記芯材部を前記凹部に挿入する鋲体配置工程と、を有し、前記鋲体配置工程は、前記第1基板の上面に鋲体を載置した後、前記第1基板の下面側に配置した磁石と前記第1基板とを相対的に走査することにより行うことを特徴とする。
本発明によれば、第1基板の下面側に配置した磁石と前記第1基板とを相対的に走査することにより、鋲体は磁石に吸引されながら磁石と共に移動する。そして、鋲体が凹部の開口部を通過するときに、鋲体の芯材部は凹部を介して磁石に吸引され、凹部の内部に芯材部が挿入される。したがって、従来の、第1基板に振動を加えながら揺動させつつ凹部に鋲体を挿入する方法と比較して、迅速かつ確実に凹部に鋲体を挿入することができる。また、本発明の鋲体配置工程では、第1基板に振動を加えながら揺動させることがないので、治具で第1基板の外周面を保持する必要がなくなる。このため、治具と第1基板の外周面との間隙をなくすか、もしくは、前記間隙を大きくすることができる。したがって、鋲体が前記間隙に入り込む事象がなくなるか、もしくは、鋲体が前記間隙に入り込んでも第1基板に繰り返し衝突して衝撃を加えることがない。したがって、鋲体が基板を損傷することがなく、第1基板の歩留まりを向上することができる。
【0015】
また、前記凹部は、貫通孔であり、前記鋲体配置工程の後に、前記貫通孔の内周面と前記芯材部の外周面との間隙にペースト材を充填して、前記間隙を封止するペースト材充填工程を有することが望ましい。
本発明によれば、凹部を貫通孔としたので、貫通孔の一方側の開口部から鋲体を挿入し、他方側の開口部からペースト材を充填することができる。また、ペースト材を充填して貫通孔を塞ぐので、貫通孔の直径を比較的大きくすることが可能になり、貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる。また、充填したペースト材を焼成して硬化させることにより、貫通孔、第1基板および鋲体の芯材部が一体化するので、気密不良のない貫通電極を形成することができる。
【0016】
また、本発明の圧電振動子は、上述したパッケージの製造方法により製造した前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる製造方法で製造されたパッケージの内部に圧電振動子を封入しているので、低コストな圧電振動子を提供することができる。
【0017】
本発明の発振器は、上述した圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述した圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述した圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる発振器、電子機器および電波時計によれば、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる製造方法で製造された低コストな圧電振動子を備えているので、低コストな発振器、電子機器および電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1基板の下面側に配置した磁石と前記第1基板とを相対的に走査することにより、鋲体は磁石に吸引されながら磁石と共に移動する。そして、鋲体が凹部の開口部を通過するときに、鋲体の芯材部は凹部を介して磁石に吸引され、凹部の内部に芯材部が挿入される。したがって、従来の、第1基板に振動を加えながら揺動させつつ凹部に鋲体を挿入する方法と比較して、迅速かつ確実に凹部に鋲体を挿入することができる。また、本発明の鋲体配置工程では、第1基板に振動を加えながら揺動させることがないので、治具で第1基板の外周面を保持する必要がなくなる。このため、治具と第1基板の外周面との間隙をなくすか、もしくは、前記間隙を大きくすることができる。したがって、鋲体が前記間隙に入り込む事象がなくなるか、もしくは、鋲体が前記間隙に入り込んでも第1基板に繰り返し衝突して衝撃を加えることがない。したがって、鋲体が基板を損傷することがなく、第1基板の歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線における断面図である。
【図8】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】貫通孔の説明図である。
【図11】鋲体の説明図であり、図11(a)は斜視図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
【図12】鋲体配置工程の説明図であり、図12(a)は側面図であり、図12(b)は平面図である。
【図13】鋲体配置工程の説明図であり、図13(a)は挿入途中の説明図であり、図13(b)は挿入後の説明図である。
【図14】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図16】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図17】従来技術の鋲体配置工程の説明図であり、図17(a)は平面図であり、図17(b)は図17(a)のF−F線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(圧電振動子)
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。
なお、以下において、第1基板をベース基板とし、第2基板をリッド基板として説明する。さらに、ベース基板におけるリッド基板との接合面を第1面Uとし、その反対面を第2面Lとして説明する。
図1は本実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
図3は図2のA−A線における断面図である。
図4は図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21の図示を省略している。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0022】
(圧電振動片)
図5は圧電振動片の平面図である。
図6は圧電振動片の底面図である。
図7は図5のB−B線における断面図である。
図5から図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、前記一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、該振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0023】
この圧電振動片4は、一対の振動腕部10,11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10,11を振動させる第1の励振電極13および第2の励振電極14からなる励振電極15と、第1の励振電極13および第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16,17とを有している。励振電極15、マウント電極16,17および引き出し電極19,20は、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの導電性材料の被膜により形成されている。
【0024】
励振電極15は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。励振電極15を構成する第1の励振電極13および第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。また、第1の励振電極13および第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極16,17に電気的に接続されている。
【0025】
また、一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21aおよび微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0026】
(パッケージ)
図1、図3および図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティC用の凹部3aが形成されている。
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35が形成されている。すなわち接合膜35は、凹部3aの内面全体に加えて、凹部3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はSi膜で形成されているが、接合膜35をAlで形成することも可能である。そして後述するように、この接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0027】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、図1から図4に示すように、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
このベース基板2には、ベース基板2を厚さ方向に貫通する一対の貫通孔30,31と、貫通電極32,33とが形成されている。
【0028】
図2および図3に示すように、貫通孔30,31は、圧電振動子1を形成したときにキャビティC内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、本実施形態の貫通孔30,31は、後述するマウント工程で実装される圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方の貫通孔30が形成され、振動腕部10,11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔31が形成される。図3に示すように、本実施形態では、第2面L側の開口部は第1面U側の開口部よりも大きく形成されており、貫通孔30,31の中心軸Oを含む断面形状がテーパ状となるように形成されている。また、貫通孔30,31の中心軸Oに垂直な方向の断面形状は、円形状となるように形成されている。
【0029】
貫通電極32,33は、図3に示すように、貫通孔30,31の内部に配置された筒体6および鋲体の芯材部7bによって形成されたものである。
本実施形態では、筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みに形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7bが筒体6を貫通するように配されている。芯材部7bは、後述する鋲体の土台部を研磨することにより形成される。そして、筒体6は、芯材部7bおよび貫通孔30,31に対して強固に固着している。
筒体6および芯材部7bは、貫通孔30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する引き回し電極36,37と外部電極38,39とを導通させる役割を担っている。
【0030】
図2から図4に示すように、ベース基板2の第1面U側には、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。一対の引き回し電極36,37のうち、一方の引き回し電極36は、一方の貫通電極32の真上に位置するように形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10,11に沿って前記振動腕部10,11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0031】
そして、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれバンプBが形成されており、前記バンプBを利用して圧電振動片4の一対のマウント電極が実装されている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0032】
またベース基板2の第2面Lには、図1、図3および図4に示すように、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0033】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13および第2の励振電極14からなる励振電極15に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0034】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図8は本実施形態の圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図9は、ウエハ体の分解斜視図である。ここで、図9に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。また、図9に示す破線で囲まれた領域は、後に形成する貫通孔が形成される貫通孔形成領域Sを図示している。
【0035】
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。なお、パッケージの製造方法は、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程のうち接合工程S70とを少なくとも有している。
【0036】
(圧電振動片作製工程)
圧電振動片作製工程S10では、図5から図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜およびパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。次に、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、振動腕部10,11の重量を変化させることで行う。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、図9に示すように、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ用の凹部3aを複数形成する。凹部3aの形成は、加熱プレス成型やエッチング加工などによって行う。次に、接合面研磨工程S23では、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する。
【0038】
次に、接合膜形成工程S24では、ベース基板用ウエハ40との接合面に、図1、図2および図4に示す接合膜35を形成する。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0039】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図9に示すように、後にベース基板となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0040】
(貫通電極形成工程)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程S30Aを行う。以下に、この貫通電極形成工程S30Aについて、詳細に説明する。なお、以下には貫通電極32の形成工程を例にして説明するが、貫通電極33の形成工程についても同様である。また、請求項の「凹部」には貫通孔および窪み穴が含まれるが、本実施形態では凹部として貫通孔を形成する。
【0041】
貫通電極形成工程S30Aは、ベース基板用ウエハに貫通電極を配するための貫通孔(凹部)を形成する貫通孔(凹部)形成工程S32と、貫通孔内に鋲体を挿入する鋲体配置工程S33とを有している。また、貫通孔と芯材部との間隙にペースト材を充填するペースト材充填工程S35と、ペースト材を焼成して硬化させる焼成工程S37とを有している。さらに、ベース基板用ウエハの第1面Uを研磨して土台部を除去するとともに、第2面Lを研磨して芯材部を露出させる研磨工程S39を有している。
【0042】
(貫通孔形成工程)
図10は貫通孔の説明図である。
貫通電極形成工程S30Aにおいて、ベース基板用ウエハ40に、貫通電極32(図3参照)を配するための貫通孔を形成する貫通孔形成工程S32を行う。本実施形態では、図10に示すように、ベース基板用ウエハ40の第2面Lから第1面Uにかけて開口部の外形が小さくなるように貫通孔30を形成している。
【0043】
具体的なプレス加工による貫通孔形成工程S32としては、プレス型を加熱しながらベース基板用ウエハ40の第2面Lに押圧する。そして、プレス型に形成された円錐台状の凸部により、ベース基板用ウエハ40にすり鉢状の凹部が形成される。
【0044】
続いて、ベース基板用ウエハ40に凹部を形成した後、第1面Uを研磨して凹部の底面を除去し、貫通孔30とする。このようにして、第2開口部30Lの外形が第1開口部30Uの外形よりも大きく、テーパ状の内周面を有する貫通孔30が形成される。本実施形態の貫通孔30は、中心軸Oに垂直な方向の断面において、貫通孔30の形状が円形状となるように形成している。しかし、プレス型の凸部の形状を変更することにより、例えば断面形状が矩形状となるように形成することもできる。
【0045】
なお、貫通孔30とせずに凹部の状態のままであっても、後述の鋲体配置工程S33で鋲体の芯材部を凹部内に配置することもできる。しかし、上述のように貫通孔30とすることにより、後述のペースト材充填工程で、貫通孔30の第2開口部30Lから、芯材部と貫通孔30との間隙にペースト材を容易に充填することができる。
【0046】
(鋲体配置工程、鋲体)
図11は鋲体の説明図であり、図11(a)は斜視図であり、図11(b)は図11(a)のC−C線における断面図である。
図11に示す鋲体7は、ステンレスや銀(Ag)、Ni合金、Al等の金属材料により形成された導電性の部材であり、特に、鉄(Fe)を58重量パーセント、Niを42重量パーセント含有する合金(42アロイ)で形成することが望ましい。
【0047】
鋲体7を形成するには、まず、芯材部7bと略同径の棒状部材を切断する。その後、棒状部材の一端側をプレス加工や鍛造等により成型して土台部7aを形成し、他端側を切断することにより芯材部7bを形成する。本実施形態では、土台部7aは略円盤状に形成されている。このようにして、土台部7aおよび芯材部7bを有する鋲体7を形成する。
【0048】
土台部7aの平面視における外形は、芯材部7bの平面視における外形よりも大きく、なおかつ第1開口部30Uの平面視における外形よりも大きく形成されている。そして、後述する鋲体配置工程では、土台部7aがベース基板用ウエハ40の第1面Uと当接した状態で鋲体7が配置される。
【0049】
(鋲体配置工程、鋲体配置装置)
図12は鋲体配置工程S33の説明図であり、図12(a)は側面図であり、図12(b)は平面図である。
図12に示すように、本実施形態の鋲体配置工程S33で使用する鋲体配置装置5は、ウエハ支持治具61と、磁石部63およびアーム部64を備えた可動磁石65と、可動磁石65をベース基板用ウエハ40の第2面L側で移動させる移動手段(不図示)とを主に備えている。
【0050】
ウエハ支持治具61は、例えば断面U字形状をしており、ベース基板用ウエハ40を上方で支持できるように、少なくとも2箇所以上のウエハ支持部61aを有している。ウエハ支持部61aの上面には、ベース基板用ウエハ40の水平方向の移動を規制できるように、ベース基板用ウエハ40の外周面に沿った側面を有する位置決め凹部61bが形成されている。そして、ベース基板用ウエハ40の第1面Uを上にし、第2面Lを下にしてウエハ支持治具61にベース基板用ウエハ40を配置する。なお、このとき、ウエハ支持部61aは、上述した貫通孔形成領域Sの外側を支持している。これにより、後述する可動磁石65の磁石部63は貫通孔形成領域S内を走査することができる。
【0051】
可動磁石65は、磁石部63およびアーム部64を備えている。
磁石部63は、例えば電磁石によって構成されており、電源(不図示)から磁石部63内のコイル(不図示)に電流を流して励磁することにより機能する。磁石部63は、ベース基板用ウエハ40の第2面Lから所定の距離(本実施形態では数ミリ程度)離間した状態で配置される。
アーム部64は、磁石部63を支持しつつ、不図示の移動手段と接続されている。これにより、ベース基板用ウエハ40の第2面Lから前記所定の距離を確保しつつ、第2面Lに沿って水平方向に自在に磁石部63を走査することができる。
【0052】
(鋲体配置工程、鋲体の配置手順)
鋲体配置工程S33では、貫通孔30に鋲体7の芯材部を配置する。なお、後述するペースト材充填工程において、大径の第2開口部からペースト材を充填できるようにするため、本実施形態の鋲体配置工程S33では、小径の第1開口部から芯材部7bを挿入し、第1開口部を土台部で塞いで鋲体7を配置している。
【0053】
鋲体配置工程S33では、ベース基板用ウエハ40の第1面Uに鋲体7を載置した後、ベース基板用ウエハ40の第1面Uに鋲体7を載置する。そして、ベース基板用ウエハ40の第2面L側に配置した磁石とベース基板用ウエハ40とを相対的に走査することにより、鋲体7の芯材部7bを貫通孔30内に挿入して配置する。以下に、鋲体7の芯材部7bを貫通孔30内に配置する手順について詳述する。
【0054】
まず、図12(a)に示すように、ベース基板用ウエハ40をウエハ支持治具61にセットした後、鋲体群70を第1面U上に載置する。鋲体群70に含まれる鋲体7の個数は、貫通孔30に挿入する鋲体7の数の2倍程度が望ましい。
【0055】
次に、磁石部63の内部に配置されたコイルに電流を流して励磁し、鋲体群70ごと鋲体7を第1面Uに吸着する。そして、ベース基板用ウエハ40の第2面Lから所定の距離を確保しつつ、第2面Lに沿って水平方向に磁石部63を走査する。
具体的な走査方法としては、図12(b)に示すように、ベース基板用ウエハ40の外側から内側に向かって、矢印Tのように軌跡を描きながら同心円状に磁石部63を走査する。このとき、全ての貫通孔に鋲体が挿入されるまで繰り返し磁石部63を走査する。
【0056】
図13は鋲体配置工程S33の説明図であり、図13(a)は挿入途中の説明図であり、図13(b)は挿入後の説明図である。
前述のように磁石部を走査することにより、鋲体7は電磁石に吸引されながら磁石部と共に移動する。そして、図13(a)に示すように、鋲体7が貫通孔30の第1開口部30Uを通過するときに、鋲体7の芯材部7bは貫通孔30を介して磁石部に吸引され、貫通孔30の内部に芯材部7bが挿入される。そして、図13(b)に示すように、鋲体7の土台部7aがベース基板用ウエハ40の第1面Uに当接して配置される。
【0057】
続いて、貫通孔30に配置されることなく第1面U上に余った鋲体7を除去する。具体的には、ベース基板用ウエハ40を持ち上げて傾けることにより、余った鋲体7を除去する。また、磁石や吸引ポンプ等を用いて、貫通孔30に挿入された鋲体7が抜け出ない程度の吸引力で余った鋲体7を吸引することにより、余った鋲体7を除去してもよい。
【0058】
最後に、全ての貫通孔30に鋲体7が挿入されたことの確認を行う。具体的には、カメラ等を使った画像解析や目視等により確認を行う。このように、鋲体7の鋲体群を磁石部で吸引しつつ、貫通孔形成領域S内の全域に渡って磁石部63を繰り返し走査することにより、すべての貫通孔30に鋲体7を配置することができる。
【0059】
なお、鋲体配置工程S33の後、例えば紙テープのラミネート材72を第1面U側に貼付する。これにより、次に述べるペースト材充填工程での鋲体7の脱落やペースト材の漏洩を防止することができる。そして、ベース基板用ウエハ40を表裏反転し、第2面L側を上面にして、次に述べるペースト材充填工程を行う。
【0060】
(ペースト材充填工程)
次に、貫通孔30と鋲体7との間にペースト材を充填するペースト材充填工程S35を行う。本実施形態では、ペースト材はガラスフリットである。
ペースト材充填工程S35では、ベース基板用ウエハ40の第2面L側からガラスフリットを塗布することにより充填している。前述の通り、貫通孔30はテーパ状の内周面を有しており、第2面L側の第2開口部30Lの外形は、第1面U側の第1開口部30Uの外形よりも大きく形成されている。したがって、芯材部7bと貫通孔30との間隙にガラスフリットを容易に充填することができる。
【0061】
(焼成工程)
続いて、貫通孔30に充填したガラスフリットを焼成する焼成工程S37を行う。これにより、ガラスフリットが固化し、貫通孔30、ガラスフリットおよびガラスフリット内に配置された鋲体7が互いに固着し合う。
【0062】
(研磨工程)
続いて、ベース基板用ウエハ40の第1面Uと第2面Lとを研磨する研磨工程S39を行う。第1面Uを研磨することにより、土台部7aを除去することができ、芯材部7bを筒体6の内部に取り残すことができる。また、第2面Lを研磨することにより、第2面Lを平坦面にすることができ、芯材部7bの先端が露出する。その結果、ベース基板用ウエハ40の表面と鋲体7の両端とを略面一な状態とすることができ、図3に示す貫通電極32を複数得ることができる。なお、研磨工程S39を行った時点で、貫通電極形成工程S30Aが終了する。
【0063】
次に、図9に戻り、貫通電極にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36,37を複数形成する引き回し電極形成工程S40を行う。そして、引き回し電極36,37上に、それぞれ金等からなる先細り形状のバンプを形成する。なお、図9では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0064】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37上に、バンプBを介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプBに押し付ける。これにより、図3に示すように、圧電振動片4の振動腕部10,11がベース基板用ウエハ40の第1面Uから浮いた状態で、基部12がバンプBに機械的に固着される。また、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。
【0065】
圧電振動片4の実装が終了した後、図9に示すように、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50の凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収容された状態となる。
【0066】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜35とベース基板用ウエハ40との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜35とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した、図9に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図9においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、リッド基板用ウエハ50から接合膜35の図示を省略している。
【0067】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S80を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極32,33を介して外部電極38,39と導通する。
【0068】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程S90を行う。具体的には、図4に示す外部電極38,39から所定電圧を継続的に印加して、圧電振動片4を振動させつつ周波数を計測する。この状態で、ベース基板用ウエハ40の外部からレーザ光を照射し、図5および図6に示す重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部10,11の先端側の重量が低下するため、圧電振動片4の周波数が上昇する。これにより、圧電振動子の周波数を微調整して、公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0069】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を図9に示す切断線Mに沿って切断する切断工程S100を行う。具体的には、まずウエハ体60のベース基板用ウエハ40の表面にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザを照射する(スクライブ)。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ体60を複数の圧電振動子に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ体60を切断してもよい。
【0070】
なお、切断工程S100を行って個々の圧電振動子にした後に、微調工程S90を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程S90を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるため、複数の圧電振動子をより効率良く微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるため好ましい。
【0071】
その後、内部の電気特性検査S110を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数および共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子の製造が終了する。
【0072】
本実施形態によれば、ベース基板用ウエハ40の第2面L側に配置した磁石とベース基板用ウエハ40とを相対的に走査することにより、鋲体7は磁石部63に吸引されながら磁石部63と共に移動する。そして、鋲体7が貫通孔30,31の開口部を通過するときに、鋲体7の芯材部7bは貫通孔30,31を介して磁石部63に吸引され、貫通孔30,31の内部に芯材部7bが挿入される。したがって、従来の、ベース基板用ウエハ40に振動を加えながら揺動させつつ貫通孔30,31に鋲体7を挿入する方法と比較して、迅速かつ確実に貫通孔30,31に鋲体7を挿入することができる。また、本実施形態の鋲体配置工程S33では、ベース基板用ウエハ40に振動を加えながら揺動させることがないので、ウエハ支持治具61でベース基板用ウエハ40の外周面を保持する必要がなくなる。このため、ウエハ支持治具61とベース基板用ウエハ40の外周面との間隙をなくすか、もしくは、前記間隙を大きくすることができる。したがって、鋲体7が前記間隙に入り込む事象がなくなるか、もしくは、鋲体7が前記間隙に入り込んでもベース基板用ウエハ40に繰り返し衝突して衝撃を加えることがない。したがって、鋲体7がベース基板用ウエハ40を損傷することがなく、ベース基板用ウエハ40の歩留まりを向上することができる。
【0073】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図14を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図14に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0074】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0075】
このような本実施形態の発振器110によれば、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる製造方法で製造された低コストな圧電振動子1を備えているので、低コストな発振器110を提供することができる。
【0076】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図15を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0077】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図15に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0078】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0079】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0080】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133および呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0081】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0082】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129および着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0083】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0084】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる製造方法で製造された低コストな圧電振動子1を備えているので、低コストな携帯情報機器120を提供することができる。
【0085】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図16を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図16に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0086】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0087】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0088】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0089】
本実施形態の電波時計140によれば、基板を損傷することなく、基板の貫通孔に対して鋲体を迅速かつ確実に挿入することができる製造方法で製造された低コストな圧電振動子1を備えているので、低コストな電波時計140を提供することができる。
【0090】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、音叉型の圧電振動片を封入した圧電振動子を例に挙げて本発明のパッケージの製造方法を説明した。しかし、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子に、上述した本発明のパッケージの製造方法を採用しても構わない。
【0091】
本実施形態において、貫通孔の形状は、貫通孔の中心軸を含む断面において、テーパ状の内周面を有している。しかし、テーパ状ではなくストレート形状としてもよい。ただし、本実施形態の方が、貫通孔と芯材部との間隙にペースト材を充填するときに充填しやすい点で優位性がある。
【0092】
本実施形態において、貫通電極は、貫通孔に鋲体を配置した後に貫通孔30に充填したガラスフリットを焼成して形成している。しかし、貫通孔に鋲体を挿入した後、ガラス基板を加熱して芯材部とガラス基板とを直接溶着することにより、貫通電極を形成してもよい。ただし、本実施形態の方が、貫通孔の直径を大きく形成でき、鋲体を挿入しやすい点で優位性がある。
【0093】
本実施形態では、鋲体の土台部および芯材部の軸直角断面形状を円形状に形成している。しかし、鋲体の土台部および芯材部のうち、いずれかまたは全部の軸直角断面形状を非円形状に形成してもよい。
【0094】
本実施形態では、磁石に電磁石を使用しているが、例えばフェライト等からなる永久磁石を使用してもよい。ただし、本実施形態の方が、電源をオン・オフすることにより励磁状態の切り換えができる点で優位性がある。
【0095】
本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の外側から内側に向かって同心円状に複数回、磁石部を走査させているが、例えば直線的に磁石部を走査させてもよい。いずれにしても、貫通孔形成領域内の全域に渡って磁石部を走査させればよい。
【0096】
本実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の物を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することもできる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・圧電振動子 2・・・ベース基板(第1基板) 4・・・圧電振動片 7・・・鋲体 7a・・・土台部 7b・・・芯材部 9・・・パッケージ 30,31・・・貫通孔 32,33・・・貫通電極 63・・・磁石部(磁石) 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 123・・・計時部 140・・・電波時計 141・・・フィルタ部 C・・・キャビティ L・・・第2面 S30A・・・貫通電極形成工程 S32・・・凹部形成工程 S33・・・鋲体配置工程 S35・・・ペースト材充填工程 U・・・第1面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を備え、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板に凹部を形成する凹部形成工程と、
平板状の土台部と、前記土台部の表面から法線方向に沿って立設される芯材部と、を 有する導電性の鋲体の前記芯材部を前記凹部に挿入する鋲体配置工程と、
を有し、
前記鋲体配置工程は、前記第1基板の第1面に鋲体を載置した後、前記第1基板の第2面側に配置した磁石と前記第1基板とを相対的に走査することにより行うことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージの製造方法であって、
前記凹部は、貫通孔であり、
前記鋲体配置工程の後に、前記貫通孔の内周面と前記芯材部の外周面との間隙にペースト材を充填して、前記間隙を封止するペースト材充填工程を有することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項3に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項3に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−193289(P2011−193289A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58431(P2010−58431)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】