パッケージの製造方法、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計
【課題】パッケージを効率良く製造すること。
【解決手段】第1基板40を厚さ方向に貫通し、キャビティの内側とパッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、貫通電極形成工程は、第1基板40に貫通孔30、31を形成する貫通孔形成工程と、平板状の土台部8と、土台部8の表面に立設された芯材部7と、を備える導電性の鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する鋲体配置工程と、を有し、貫通孔形成工程の際、第1基板40の第1面40a側から、第1面40aとは反対の第2面40b側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に貫通孔30、31を形成し、鋲体配置工程の際、第1基板40の第1面40aを上方に向けて第1面40a上で鋲体9を移動させつつ、貫通孔30、31を通して第2面40b側から鋲体9を吸引することで、芯材部7を貫通孔30、31内に挿入するパッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板40を厚さ方向に貫通し、キャビティの内側とパッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、貫通電極形成工程は、第1基板40に貫通孔30、31を形成する貫通孔形成工程と、平板状の土台部8と、土台部8の表面に立設された芯材部7と、を備える導電性の鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する鋲体配置工程と、を有し、貫通孔形成工程の際、第1基板40の第1面40a側から、第1面40aとは反対の第2面40b側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に貫通孔30、31を形成し、鋲体配置工程の際、第1基板40の第1面40aを上方に向けて第1面40a上で鋲体9を移動させつつ、貫通孔30、31を通して第2面40b側から鋲体9を吸引することで、芯材部7を貫通孔30、31内に挿入するパッケージの製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子として、一般的に圧電振動片が形成された圧電基板を、ベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。この場合、圧電振動片は、ベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収容されている。
【0003】
また、近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることで2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収容されている。この2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができる等の点において優れており、好適に使用されている。
このような2層構造タイプの圧電振動子として、ベース基板に形成された貫通電極により、圧電振動片とベース基板に形成された外部電極とを導通させた圧電振動子が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1には、金属からなるピン部材を導電材料として用いることにより貫通電極を形成することが記載されている。そして、貫通電極を形成する具体的な方法としては、後にベース基板となるベース基板用ウエハに断面ストレート形状の貫通孔を形成した後に加熱して、熱軟化状態にあるうちに貫通孔にピン部材を打ち込むことが記載されている。
【0006】
しかしながら、ベース基板用ウエハから多数個のベース基板を形成する場合、ベース基板用ウエハにベース基板の取り個数に比例した多数の貫通孔が形成されることとなる。そのため、全ての貫通孔に前記ピン部材を打ち込むために多大な工数が必要となるという問題がある。また、前記ピン部材を打ち込んでいる途中にベース基板用ウエハが硬化してしまった場合には、再度加熱して熱軟化状態にする必要があるため、より多大な工数を要する。
【0007】
そこで、このような問題を解決するために、平板状の土台部と、土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体を用いる以下に示すような貫通電極の形成方法が考えられる。すなわち、まず、ベース基板用ウエハの貫通孔に、ベース基板用ウエハの第1面側から鋲体の芯材部を挿入し、ベース基板用ウエハの第1面と鋲体の土台部の表面とを当接させて貫通孔を第1面側から閉塞する。次いで、ベース基板用ウエハの第1面とは反対の第2面側から貫通孔にペースト状の充填材(例えば、ガラスフリットなど)を充填し、その後、充填材を焼成する。
これにより、ピン部材を貫通孔に打ち込まずに貫通電極を形成することが可能になり、製造工数の低減を図ることができる。
【0008】
ここで図18〜図23に示すように、ベース基板用ウエハ200の貫通孔201への芯材部202の挿入方法としては、以下に示すような2つの治具を用いるいわゆる間接方式が考えられる。
すなわち、図18に示すように、まず、鋲体203の芯材部202が挿入される挿入孔204が形成された第1治具205の挿入孔204に、鋲体203の芯材部202を挿入して第1治具205に鋲体203を整列させる(鋲体整列工程)。次いで図19に示すように、第1治具205と、鋲体203が土台部206側から収納される収納孔207が形成された第2治具208と、を位置合わせしながら重ね合わせる(治具合わせ工程)。その後、図20に示すように、第1治具205と第2治具208とを反転させて第2治具208の収納孔207内に鋲体203を収納し(治具反転工程)た後、図21に示すように、第1治具205を第2治具208から取り外し、第2治具208における収納孔207の底部側から、例えば磁石209などで鋲体203を吸着して収納孔207内で保持する(吸着工程)。そして図22に示すように、第2治具208をベース基板用ウエハ200上で反転させ、鋲体203の吸着を解除する(吸着解除工程)ことで、図23に示すように、貫通孔201内に鋲体203の芯材部202を挿入する。
【0009】
しかしながら、前記間接方式では、第1治具205および第2治具208を用いており、やはり多大な工数が必要となる。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、パッケージを効率良く製造することができるパッケージの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、平板状の土台部と、前記土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体の前記芯材部を前記貫通孔内に挿入する鋲体配置工程と、を有し、前記貫通孔形成工程の際、前記第1基板の第1面側から、前記第1面とは反対の第2面側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に前記貫通孔を形成し、前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面を上方に向けて前記第1面上で前記鋲体を移動させつつ、前記貫通孔を通して前記第2面側から前記鋲体を吸引することで、前記芯材部を前記貫通孔内に挿入することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、鋲体の芯材部が土台部の表面に立設されており、鋲体配置工程の際、鋲体を倒した状態、つまり土台部の側面および芯材部の先端が第1面に当接し、芯材部が第1面に対して傾いた状態で第1面上を移動させることができる。このように鋲体が倒れた状態で第1面上を移動させると、鋲体が貫通孔上を通過したときに、芯材部の先端が貫通孔の第1面側の開口部から貫通孔内に振り込まれるようにして挿入される。
ここで、貫通孔が逆テーパ状となっていることから、芯材部が貫通孔内に挿入される際に芯材部の先端が貫通孔の内周面に引っ掛かり難くなっている。したがって、鋲体の芯材部が貫通孔内に円滑に挿入される。しかもこのとき、貫通孔を通して第2面側から鋲体が吸引されているので、吸引力によって鋲体の芯材部が貫通孔内に引き込まれ、芯材部が貫通孔内に更に円滑に挿入される。
以上より、鋲体配置工程の際、第1基板の第1面上で鋲体を移動させつつ、第2面側から貫通孔を通して鋲体を吸引するだけで、鋲体の芯材部を貫通孔内に円滑に挿入することができるので、パッケージを効率良く製造することができる。
【0013】
また、前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面に平行な揺動軸回りに前記第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に前記第1基板を振動させることで、前記第1基板の前記第1面上で前記鋲体を移動させても良い。
【0014】
この場合、鋲体配置工程の際、前記揺動軸回りに第1基板を揺動させることで、第1基板の第1面が水平面に対して傾斜することとなる。これにより、第1面に沿った下側に鋲体を移動させることができる。
【0015】
また、このように前記揺動軸回りに第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に第1基板を振動させるので、鋲体が第1基板上に多数個配置されている場合であっても、第1面に沿った下側に各鋲体を移動させつつ、第1面の前記揺動軸方向の全域にわたって多数個の鋲体を拡散させることができる。
また、第1面に沿った下側に鋲体を移動させる過程で、鋲体の芯材部が貫通孔に挿入されずに、第1基板の下側の端部まで鋲体が移動したとしても、第1基板を揺動させて第1基板の傾斜を反転させることで、前記端部を上側に位置させることができる。これにより、貫通孔に芯材部が挿入されていない鋲体を、第1基板の傾斜を反転させる前とは逆方向に第1面上で移動させ、第1面において貫通孔が形成された領域上を往復移動させることができる。
以上より、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
【0016】
また、前記鋲体配置工程の際、前記第2面側からの前記鋲体の吸引を間欠的に繰り返しても良い。
【0017】
この場合、鋲体配置工程の際、第2面側からの鋲体の吸引を間欠的に繰り返すので、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
すなわち、鋲体配置工程の際、土台部の裏面が第1面に当接して鋲体が起立した状態で第1面上を移動することがある。そして、貫通孔内に鋲体の芯材部が挿入される前に、起立した状態の鋲体の土台部によって貫通孔が第1面側から覆われると、貫通孔を通した第2面側からの吸引力により鋲体が貫通孔上で保持され続け、芯材部が貫通孔内に挿入されないおそれがある。しかしながら、第2面側からの鋲体の吸引を間欠的に繰り返すことで、仮に起立した状態の鋲体の土台部によって貫通孔が第1面側から覆われたとしても、鋲体が貫通孔上で保持され続けることがない。したがって、貫通孔を覆う鋲体を貫通孔上から移動させ貫通孔を開放することが可能になり、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記パッケージの製造方法を実施する工程と、前記電子部品としての圧電振動片を前記貫通電極に実装しつつ前記キャビティの内部に配置する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、パッケージを効率良く製造することができるパッケージの製造方法を採用しているので、低コストな圧電振動子を提供することができる。
【0020】
また、本発明に係る発振器は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る発振器、電子機器および電波時計によれば、低コストな圧電振動子を用いているため、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パッケージを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線における断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図11】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図12】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図13】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図14】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図15】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図16】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図17】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図18】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図19】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図20】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図21】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図22】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図23】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。
(圧電振動子)
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、互いに接合された複数の基板2、3の間に形成されたキャビティC内に、電子部品としての圧電振動片4が封入されたパッケージ5を備える表面実装型の構成とされている。パッケージ5は、ベース基板(第1基板)2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されている。なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0025】
図5から図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0026】
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0027】
励振電極13、14は、図5および図6に示すように、一対の振動腕部10、11の主面上に形成される。励振電極13、14は、例えば、クロム(Cr)等の単層の導電性膜により形成される。第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近または離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0028】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えばクロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。
【0029】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0030】
このように構成された圧電振動片4は、図3および図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の内面(上面)にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の内面にパターニングされた後述する引き回し電極36、37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極16、17がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。
【0031】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1、図3および図4に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。
【0032】
また、図3に示すように、リッド基板3のベース基板2との接合面には、陽極接合用の接合膜35が形成されている。接合膜35は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなり、スパッタやCVD等の成膜方法により形成される。なお、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で、接合膜35を介してベース基板2に陽極接合されている。
【0033】
ベース基板2は、リッド基板3と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1から図4に示すように、板状に形成されている。
このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対の貫通孔30、31が形成されている。貫通孔30は、ベース基板2の内面から外面(下面)に向けて漸次拡径する逆テーパ状に形成されている。本実施形態の貫通孔30、31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方の貫通孔30が形成され、振動腕部10、11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔31が形成されている。
【0034】
そして、これら一対の貫通孔30、31には、これら貫通孔30、31を埋めるように形成された一対の貫通電極32、33が形成されている。これら貫通電極32、33は、図3に示すように、焼成によって貫通孔30、31に対して一体的に固定された筒体6及び芯材部7によって形成されたものであり、貫通孔30、31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38、39と引き回し電極36、37とを導通させる役割を担っている。
【0035】
筒体6は、後述するペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。筒体6および芯材部7は、貫通孔30、31内に埋め込まれた状態で焼成されており、貫通孔30、31に対して強固に固着されている。
【0036】
芯材部7は、ステンレスや銀、アルミ等の金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、且つベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。この芯材部7は、筒体6の略中心6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着されている。なお、貫通電極32、33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0037】
また、一対の引き回し電極36、37は、一対の貫通電極32、33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。
【0038】
より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10、11に沿って前記振動腕部10、11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0039】
そして、これら一対の引き回し電極36、37上にそれぞれバンプBが形成されており、バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0040】
また、ベース基板2の外面には、図1、図3および図4に示すように、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38、39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0041】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38、39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電圧を印加することで、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0042】
(圧電振動子の製造方法)
次に、本実施形態における圧電振動子1の製造方法(パッケージの製造方法)について、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
初めに、圧電振動片作製工程S10を行って図5から図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0043】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0044】
次に図9に示すように、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にリッド基板3(図3参照)となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程S20を行う。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程S22を行う。次に、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する接合面研磨工程S23を行う。
【0045】
次に、ベース基板用ウエハ40との接合面に接合膜35を形成する接合膜形成工程S24を行う。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0046】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2(図3参照)となるベース基板用ウエハ(第1基板)40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程S30を行う。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。このベース基板用ウエハ40の厚さは、例えば500μmとなっている。
【0047】
次に、図3に示すように、ベース基板2を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極32、33を形成する貫通電極形成工程S32を行う。以下に、貫通電極形成工程S32について詳細を説明する。
【0048】
貫通電極形成工程S32では、まず図10に示すように、ベース基板用ウエハ40の中央部に位置する孔形成領域R1に、ベース基板用ウエハ40の厚さ方向に貫通する貫通孔30、31を、例えばサンドブラスト法等により形成する貫通孔形成工程S32Aを行う。このとき本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の内面(第1面)40a側から、内面40aとは反対の外面(第2面)40b側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に貫通孔30、31を形成する。なお、ベース基板用ウエハ40の外面40bおよび内面40aはそれぞれ、後のベース基板2の外面および内面となる。
【0049】
ここで、ベース基板用ウエハ40の内面40a側における貫通孔30、31の開口部の内径は、例えば200μmとなっている。また、貫通孔30、31のテーパ角θ(図12参照)は、例えば20度となっている。
なお図10、並びに以下に示す図11および図14では、図面を見易くするために、貫通孔30、31の数を省略するとともに、大きさ等を誇張して図示しており、貫通孔30、31の数や大きさ等は図示の例に限られない。
【0050】
次いで、貫通電極32、33の一部を構成する芯材部7と、表面に芯材部7が立設された土台部8と、を備える導電性の鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する鋲体配置工程S32Bを行う。
なお図示の例では、鋲体9の芯材部7は、円柱状に形成されるとともに、土台部8は円盤状に形成されている。また芯材部7の長さは、例えば480μmであり、芯材部7の直径は150μmであり、土台部8の直径は300μmである。さらに芯材部7は、土台部8の表面の中央部に土台部8の法線D方向(図12参照)に沿って立設されている。
【0051】
ここで、鋲体配置工程S32Bの詳細な説明の前に、鋲体配置工程S32Bに用いる挿入装置70について説明する。図10に示すように、挿入装置70は、ベース基板用ウエハ40を保持する皿状の保持部材71と、保持部材71が組み付けられ、かつ保持部材71の底壁部71aとともに吸引室72を画成する基台部材73と、吸引室72内を真空吸引する吸引ポンプ74と、基台部材73を揺動させる揺動手段75と、基台部材73を振動させる振動手段76と、を備えている。
【0052】
保持部材71の底壁部71aの表面71cは、平坦であるとともに上方を向いており、前記表面71cの中央部には、ベース基板用ウエハ40を保持する保持凹部77が形成されている。この保持凹部77内に、ベース基板用ウエハ40が内面40aを上方に向けて保持されたウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aと、保持部材71の底壁部71aの表面71cと、は面一になる。なお図示の例では、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の側面と、保持凹部77の内周面と、の間には隙間があいているが、この隙間はなくても良い。
【0053】
保持凹部77の底面には、保持部材71の底壁部71aの裏面71d側に向けて開口し、保持凹部77と吸引室72とを連通する吸引孔78が複数形成されている。これらの吸引孔78は、ベース基板用ウエハ40の貫通孔30、31に対応して形成されており、前記ウエハ保持状態で、全ての貫通孔30、31は、互いに異なる吸引孔78に連通する。これにより、吸引室72は、ベース基板用ウエハ40の外面40b側から吸引孔78を通して貫通孔30、31に連通することとなる。
【0054】
揺動手段75は、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aに平行な揺動軸O回りに基台部材73を揺動させ、ベース基板用ウエハ40を揺動軸O回りに揺動させる。ここで図示の例では、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aと、保持部材71の底壁部71aの表面71cと、が面一なので、揺動軸Oは、保持部材71の底壁部71aの表面71cに平行となっている。
また振動手段76は、基台部材73を揺動軸O方向に揺動(往復動)させる。
【0055】
以上に示した挿入装置70を用いた鋲体配置工程S32Bでは、ベース基板用ウエハ40の内面40aを上方に向けて内面40a上で鋲体9を移動させつつ、貫通孔30、31を通して外面40b側から鋲体9を吸引することで、芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する。このとき本実施形態では、ベース基板用ウエハ40を揺動軸O回りに揺動させるとともに、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させることで、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させる。
【0056】
詳しく説明すると、まず、内面40aを上方に向けたベース基板用ウエハ40を挿入装置70の保持凹部77に保持させる。また、鋲体9を多数個まとめた鋲体群90を、保持部材71の底壁部71aにおいて、保持凹部77が形成された中央部よりも周壁部71b側の外周部に配置する。このとき、底壁部71aの外周部のうち、底壁部71aの表面71cに平行で、かつ揺動軸O方向に直交する方向に延びる仮想軸と交差する部分に、鋲体群90を配置する。なお鋲体群90における鋲体9の総数は、ベース基板用ウエハ40の貫通孔30、31の総数より多くても良い。
【0057】
次いで図11に示すように、底壁部71aの外周部のうち、鋲体群90が配置された部分が上方に向けて移動するように、揺動手段75によって基台部材73を揺動軸O回りに揺動させる。このとき、ベース基板用ウエハ40の内面40aが、例えば水平面に対して4度傾斜するようにベース基板用ウエハ40を揺動させることが好ましい。これにより、保持部材71の底壁部71aの表面71c、およびベース基板用ウエハ40の内面40aに沿った下側に、鋲体9を移動させることができる。
【0058】
またこのとき、振動手段76によって基台部材73を揺動軸O方向に振動させ、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させる。なお、振動手段76によるベース基板用ウエハ40の振動は、例えば振幅が約3mm、振動数が5〜20Hzであることが好ましい。これにより、本実施形態のように、鋲体9がベース基板用ウエハ40上に鋲体群90として多数個配置されている場合であっても、内面40aに沿った下側に各鋲体9を移動させつつ、内面40aの揺動軸O方向の全域にわたって多数個の鋲体9を拡散させることができる。
【0059】
さらにこのとき、図12に示すように、鋲体9を倒した状態、つまり土台部8の側面8aおよび芯材部7の先端7aがベース基板用ウエハ40の内面40aに当接し、芯材部7が内面40aに対して傾いた状態で内面40a上を移動させることができる。このように鋲体9が倒れた状態で内面40a上を移動させると、図13に示すように、鋲体9が貫通孔30、31上を通過したときに、芯材部7の先端7aが貫通孔30、31の内面40a側の開口部から貫通孔30、31内に振り込まれるようにして挿入される。
【0060】
ここで、貫通孔30、31が逆テーパ状となっていることから、芯材部7が貫通孔30、31内に挿入される際に、芯材部7の先端7aが貫通孔30、31の内周面に引っ掛かり難くなっている。したがって、鋲体9の芯材部7が貫通孔30、31内に円滑に挿入される。
【0061】
ところで、図11に示す2点鎖線のように、ベース基板用ウエハ40の内面40aに沿った下側に鋲体9を移動させる過程で、鋲体9の芯材部7が貫通孔30、31に挿入されずに、鋲体9がベース基板用ウエハ40の孔形成領域R1上を通過し、ベース基板用ウエハ40の下側の端部まで移動することが考えられる。
【0062】
この場合には、図14に示すように、揺動軸O回りの反対側にベース基板用ウエハ40を揺動させてベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させることで、前記端部を上側に位置させる。これにより、貫通孔30、31に芯材部7が挿入されていない鋲体9を、ベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させる前とは逆方向に内面40a上で移動させ、内面40aにおける孔形成領域R1上を往復移動させることができる。なお、このようにベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させる際には、ベース基板用ウエハ40の内面40aが、例えば水平面に対して2度傾斜するようにベース基板用ウエハ40を揺動させることが好ましい。
【0063】
ところで図11に示すように、本実施形態では、前述のようなベース基板用ウエハ40の揺動、振動とあわせて、吸引ポンプ74によって吸引室72内を真空吸引する。ここで吸引室72は、吸引孔78を通して貫通孔30、31にベース基板用ウエハ40の外面40b側から連通しているので、ベース基板用ウエハ40の内面40a上の鋲体9は、吸引ポンプ74の真空吸引によって貫通孔30、31を通してベース基板用ウエハ40の外面40b側から吸引されることとなる。
【0064】
すると、前述のようにベース基板用ウエハ40の内面40a上を移動する鋲体9の芯材部7が、吸引力によって貫通孔30、31内に引き込まれ、芯材部7が貫通孔30、31内に更に円滑に挿入される。
なお本実施形態では、吸引ポンプ74による吸引を間欠的に繰り返す。このとき例えば、吸引ポンプ74を作動させ吸引室72の内圧を0.8秒間0.5MPaにした後、吸引ポンプ74の作動を停止し吸引室72の内圧を0.4秒間、大気圧に戻し、その後これらを繰り返す。
【0065】
以上に示したベース基板用ウエハ40の揺動、振動、並びに貫通孔30、31を通した鋲体9の吸引を、芯材部7が全ての貫通孔30、31内に挿入されるまで行う。なお、ベース基板用ウエハ40の内面40aから鋲体9の芯材部7が挿入されることで、ベース基板用ウエハ40の内面40aと鋲体9の土台部8の表面とが当接し、貫通孔30、31が内面40a側から閉塞される。
【0066】
次いで、貫通電極32、33の一部を構成するペースト状の図示しないガラスフリットを貫通孔30、31内に充填する充填工程S32Dを行う。このとき、ベース基板用ウエハ40の外面40b側から貫通孔30、31に前記ガラスフリットを充填する。ここで、貫通孔30、31がベース基板用ウエハ40の内面40a側から閉塞されているので、前記ガラスフリットが貫通孔30、31の内面40a側から漏出するのが抑制される。
【0067】
なおガラスフリット充填工程S32Dを終えた後、ベース基板用ウエハ40の外面40b上に前記ガラスフリットが残存することがある。この場合、外面40b上の前記ガラスフリットは後述する焼成後の研磨工程S32Iによって除去されるため、別途前記ガラスフリットを除去する工程を行なう必要はない。但し、別途前記ガラスフリットを除去する工程を追加することで、後述する焼成工程S32Hにおいて、前記ガラスフリットの焼成時間を短縮できるとともに、研磨工程S32Iの研磨に要する時間も短縮することができる。
【0068】
続いて、貫通孔30、31内に充填された前記ガラスフリットを焼成して硬化させる焼成工程S32Hを行う。焼成工程S32Hでは、貫通孔30、31に充填した前記ガラスフリットを所定の温度で焼成して硬化させる。この焼成工程S32Hを行うことで、貫通孔30、31および芯材部7に前記ガラスフリットが強固に固着して筒体6となり、貫通電極32、33が形成される。
【0069】
最後に、ベース基板用ウエハ40および鋲体9の土台部8を研磨する研磨工程S32Iを行う。具体的には、ベース基板用ウエハ40の外面40b側を研磨し、芯材部7の先端7aを露出させるとともに、鋲体9の土台部8を研磨して除去する。その結果、図3に示すように、筒体6と芯材部7とが一体的に固定された貫通電極32、33を複数得ることができる。
以上で貫通電極形成工程S32が終了する。
【0070】
次に図9に示すように、引き回し電極形成工程S33として、貫通電極にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36、37を複数形成する。そして、引き回し電極36、37上に、それぞれ金等からなる尖塔形状のバンプを形成する。なお、図9では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0071】
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36、37上に、バンプBを介して圧電振動片4を接合する実装工程S40を行い、その後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S50を行う。
【0072】
そして、重ね合わせ工程S50の後、重ね合わせた2枚のウエハを図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合し、ウエハ体60を形成する接合工程S60を行う。ところで、陽極接合を行う際、図3に示すように、ベース基板用ウエハ40に形成された貫通孔30、31は、貫通電極32、33によって完全に塞がれているため、キャビティC内の真空状態が貫通孔30、31を通じて損なわれることがない。しかも、焼成によって筒体6と芯材部7とが一体的に固定されているとともに、これらが貫通孔30、31に対して強固に固着されているため、キャビティC内の真空状態を確実に維持することができる。
【0073】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の外面40bに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38、39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S70を行う。
【0074】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S80)。
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S90)。
その後、内部の電気特性検査(S100)を行うことで、圧電振動子1の製造が終了する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、鋲体配置工程S32Bの際、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させつつ、外面40b側から貫通孔30、31を通して鋲体9を吸引するだけで、鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に円滑に挿入することができるので、パッケージ5を効率良く製造し、圧電振動子1の低コスト化を図ることができる。
【0076】
また、鋲体配置工程S32Bの際、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すので、芯材部7を貫通孔30、31内に確実に挿入することができる。
すなわち、鋲体配置工程S32Bの際、図14に示す2点鎖線のように、土台部8の裏面が内面40aに当接して鋲体9が起立した状態で内面40a上を移動することがある。そして、貫通孔30、31内に鋲体9の芯材部7が挿入される前に、起立した状態の鋲体9の土台部8によって貫通孔30、31が内面40a側から覆われると、貫通孔30、31を通した外面40b側からの吸引力により鋲体9が貫通孔30、31上で保持され続け、芯材部7が貫通孔30、31内に挿入されないおそれがある。しかしながら、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すことで、仮に起立した状態の鋲体9の土台部8によって貫通孔30、31が内面40a側から覆われたとしても、鋲体9が貫通孔30、31上で保持され続けることがない。したがって、貫通孔30、31を覆う鋲体9を貫通孔30、31上から移動させ貫通孔30、31を開放することが可能になり、芯材部7を貫通孔30、31内に確実に挿入することができる。
【0077】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図15を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図15に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0078】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0079】
このような本実施形態の発振器110によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0080】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図16を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0081】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図16に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0082】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0083】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付、カレンダー情報等が表示される。
【0084】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0085】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0086】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0087】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0088】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0089】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図17を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図17に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0090】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0091】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0092】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0093】
本実施形態の電波時計140によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0094】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、リッド基板用ウエハ50に接合膜35を形成したが、これとは逆に、ベース基板用ウエハ40の内面40aに接合膜35を形成してもよい。この場合は、引き回し電極36、37と接合膜35とが接触しないように、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50との接合面のみに形成することが好ましい。
【0095】
また前記実施形態では、鋲体配置工程S32Bの際、ベース基板用ウエハ40の内面40aに平行な揺動軸O回りにベース基板用ウエハ40を揺動させるとともに、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させることで、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させるものとしたが、これに限られない。
また前記実施形態では、鋲体配置工程S32Bの際、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すものとしたが、これに限られない。
【0096】
また前記実施形態では、貫通孔30、31内に充填される充填材がペースト状の前記ガラスフリットであるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、導電性のペースト(例えば銀ペーストなど)であっても良い。
【0097】
また前記実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージ5の内部に圧電振動片4を封入して圧電振動子1を製造したが、パッケージ5の内部に圧電振動片4以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
さらに前記実施形態では、ベース基板2とリッド基板3との間にキャビティCを形成した2層構造タイプの圧電振動子1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、圧電基板をベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプの圧電振動子に適用しても構わない。
【0098】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 圧電振動子
2 ベース基板(第1基板)
3 リッド基板(基板)
4 圧電振動片(電子部品)
7 芯材部
8 土台部
9 鋲体
30、31 貫通孔
32、33 貫通電極
40 ベース基板用ウエハ(第1基板)
40a 内面(第1面)
40b 外面(第2面)
110 発振器
120 携帯情報機器(電子機器)
140 電波時計
C キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子の製造方法、発振器、電子機器および電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子として、一般的に圧電振動片が形成された圧電基板を、ベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプのものが知られている。この場合、圧電振動片は、ベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ(密閉室)内に収容されている。
【0003】
また、近年では、上述した3層構造タイプのものではなく、2層構造タイプのものも開発されている。このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることで2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収容されている。この2層構造タイプの圧電振動子は、3層構造のものに比べて薄型化を図ることができる等の点において優れており、好適に使用されている。
このような2層構造タイプの圧電振動子として、ベース基板に形成された貫通電極により、圧電振動片とベース基板に形成された外部電極とを導通させた圧電振動子が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1には、金属からなるピン部材を導電材料として用いることにより貫通電極を形成することが記載されている。そして、貫通電極を形成する具体的な方法としては、後にベース基板となるベース基板用ウエハに断面ストレート形状の貫通孔を形成した後に加熱して、熱軟化状態にあるうちに貫通孔にピン部材を打ち込むことが記載されている。
【0006】
しかしながら、ベース基板用ウエハから多数個のベース基板を形成する場合、ベース基板用ウエハにベース基板の取り個数に比例した多数の貫通孔が形成されることとなる。そのため、全ての貫通孔に前記ピン部材を打ち込むために多大な工数が必要となるという問題がある。また、前記ピン部材を打ち込んでいる途中にベース基板用ウエハが硬化してしまった場合には、再度加熱して熱軟化状態にする必要があるため、より多大な工数を要する。
【0007】
そこで、このような問題を解決するために、平板状の土台部と、土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体を用いる以下に示すような貫通電極の形成方法が考えられる。すなわち、まず、ベース基板用ウエハの貫通孔に、ベース基板用ウエハの第1面側から鋲体の芯材部を挿入し、ベース基板用ウエハの第1面と鋲体の土台部の表面とを当接させて貫通孔を第1面側から閉塞する。次いで、ベース基板用ウエハの第1面とは反対の第2面側から貫通孔にペースト状の充填材(例えば、ガラスフリットなど)を充填し、その後、充填材を焼成する。
これにより、ピン部材を貫通孔に打ち込まずに貫通電極を形成することが可能になり、製造工数の低減を図ることができる。
【0008】
ここで図18〜図23に示すように、ベース基板用ウエハ200の貫通孔201への芯材部202の挿入方法としては、以下に示すような2つの治具を用いるいわゆる間接方式が考えられる。
すなわち、図18に示すように、まず、鋲体203の芯材部202が挿入される挿入孔204が形成された第1治具205の挿入孔204に、鋲体203の芯材部202を挿入して第1治具205に鋲体203を整列させる(鋲体整列工程)。次いで図19に示すように、第1治具205と、鋲体203が土台部206側から収納される収納孔207が形成された第2治具208と、を位置合わせしながら重ね合わせる(治具合わせ工程)。その後、図20に示すように、第1治具205と第2治具208とを反転させて第2治具208の収納孔207内に鋲体203を収納し(治具反転工程)た後、図21に示すように、第1治具205を第2治具208から取り外し、第2治具208における収納孔207の底部側から、例えば磁石209などで鋲体203を吸着して収納孔207内で保持する(吸着工程)。そして図22に示すように、第2治具208をベース基板用ウエハ200上で反転させ、鋲体203の吸着を解除する(吸着解除工程)ことで、図23に示すように、貫通孔201内に鋲体203の芯材部202を挿入する。
【0009】
しかしながら、前記間接方式では、第1治具205および第2治具208を用いており、やはり多大な工数が必要となる。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、パッケージを効率良く製造することができるパッケージの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、平板状の土台部と、前記土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体の前記芯材部を前記貫通孔内に挿入する鋲体配置工程と、を有し、前記貫通孔形成工程の際、前記第1基板の第1面側から、前記第1面とは反対の第2面側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に前記貫通孔を形成し、前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面を上方に向けて前記第1面上で前記鋲体を移動させつつ、前記貫通孔を通して前記第2面側から前記鋲体を吸引することで、前記芯材部を前記貫通孔内に挿入することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、鋲体の芯材部が土台部の表面に立設されており、鋲体配置工程の際、鋲体を倒した状態、つまり土台部の側面および芯材部の先端が第1面に当接し、芯材部が第1面に対して傾いた状態で第1面上を移動させることができる。このように鋲体が倒れた状態で第1面上を移動させると、鋲体が貫通孔上を通過したときに、芯材部の先端が貫通孔の第1面側の開口部から貫通孔内に振り込まれるようにして挿入される。
ここで、貫通孔が逆テーパ状となっていることから、芯材部が貫通孔内に挿入される際に芯材部の先端が貫通孔の内周面に引っ掛かり難くなっている。したがって、鋲体の芯材部が貫通孔内に円滑に挿入される。しかもこのとき、貫通孔を通して第2面側から鋲体が吸引されているので、吸引力によって鋲体の芯材部が貫通孔内に引き込まれ、芯材部が貫通孔内に更に円滑に挿入される。
以上より、鋲体配置工程の際、第1基板の第1面上で鋲体を移動させつつ、第2面側から貫通孔を通して鋲体を吸引するだけで、鋲体の芯材部を貫通孔内に円滑に挿入することができるので、パッケージを効率良く製造することができる。
【0013】
また、前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面に平行な揺動軸回りに前記第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に前記第1基板を振動させることで、前記第1基板の前記第1面上で前記鋲体を移動させても良い。
【0014】
この場合、鋲体配置工程の際、前記揺動軸回りに第1基板を揺動させることで、第1基板の第1面が水平面に対して傾斜することとなる。これにより、第1面に沿った下側に鋲体を移動させることができる。
【0015】
また、このように前記揺動軸回りに第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に第1基板を振動させるので、鋲体が第1基板上に多数個配置されている場合であっても、第1面に沿った下側に各鋲体を移動させつつ、第1面の前記揺動軸方向の全域にわたって多数個の鋲体を拡散させることができる。
また、第1面に沿った下側に鋲体を移動させる過程で、鋲体の芯材部が貫通孔に挿入されずに、第1基板の下側の端部まで鋲体が移動したとしても、第1基板を揺動させて第1基板の傾斜を反転させることで、前記端部を上側に位置させることができる。これにより、貫通孔に芯材部が挿入されていない鋲体を、第1基板の傾斜を反転させる前とは逆方向に第1面上で移動させ、第1面において貫通孔が形成された領域上を往復移動させることができる。
以上より、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
【0016】
また、前記鋲体配置工程の際、前記第2面側からの前記鋲体の吸引を間欠的に繰り返しても良い。
【0017】
この場合、鋲体配置工程の際、第2面側からの鋲体の吸引を間欠的に繰り返すので、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
すなわち、鋲体配置工程の際、土台部の裏面が第1面に当接して鋲体が起立した状態で第1面上を移動することがある。そして、貫通孔内に鋲体の芯材部が挿入される前に、起立した状態の鋲体の土台部によって貫通孔が第1面側から覆われると、貫通孔を通した第2面側からの吸引力により鋲体が貫通孔上で保持され続け、芯材部が貫通孔内に挿入されないおそれがある。しかしながら、第2面側からの鋲体の吸引を間欠的に繰り返すことで、仮に起立した状態の鋲体の土台部によって貫通孔が第1面側から覆われたとしても、鋲体が貫通孔上で保持され続けることがない。したがって、貫通孔を覆う鋲体を貫通孔上から移動させ貫通孔を開放することが可能になり、芯材部を貫通孔内に確実に挿入することができる。
【0018】
また、本発明に係る圧電振動子の製造方法は、前記パッケージの製造方法を実施する工程と、前記電子部品としての圧電振動片を前記貫通電極に実装しつつ前記キャビティの内部に配置する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、パッケージを効率良く製造することができるパッケージの製造方法を採用しているので、低コストな圧電振動子を提供することができる。
【0020】
また、本発明に係る発振器は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
また、本発明に係る電波時計は、前記圧電振動子の製造方法で製造された圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る発振器、電子機器および電波時計によれば、低コストな圧電振動子を用いているため、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パッケージを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】図5のB−B線における断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図11】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図12】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図13】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図14】鋲体配置工程を表す説明図である。
【図15】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図16】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図17】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図18】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図19】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図20】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図21】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図22】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【図23】従来のベース基板用ウエハの貫通孔への芯材部の挿入方法の一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。
(圧電振動子)
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、互いに接合された複数の基板2、3の間に形成されたキャビティC内に、電子部品としての圧電振動片4が封入されたパッケージ5を備える表面実装型の構成とされている。パッケージ5は、ベース基板(第1基板)2とリッド基板3とで2層に積層された箱状に形成されている。なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0025】
図5から図7に示すように、圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
【0026】
この圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10、11と、一対の振動腕部10、11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10、11の外表面上に形成されて一対の振動腕部10、11を振動させる第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15と、第1の励振電極13及び第2の励振電極14に電気的に接続されたマウント電極16、17とを有している。
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部10、11の両主面上に、振動腕部10、11の長手方向に沿ってそれぞれ形成された溝部18を備えている。この溝部18は、振動腕部10、11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0027】
励振電極13、14は、図5および図6に示すように、一対の振動腕部10、11の主面上に形成される。励振電極13、14は、例えば、クロム(Cr)等の単層の導電性膜により形成される。第1の励振電極13と第2の励振電極14とからなる励振電極15は、一対の振動腕部10、11を互いに接近または離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部10、11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極13が、一方の振動腕部10の溝部18上と他方の振動腕部11の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極14が、一方の振動腕部10の両側面上と他方の振動腕部11の溝部18上とに主に形成されている。
【0028】
また、第1の励振電極13及び第2の励振電極14は、基部12の両主面上において、それぞれ引き出し電極19、20を介してマウント電極16、17に電気的に接続されている。そして圧電振動片4は、このマウント電極16、17を介して電圧が印加されるようになっている。
なお、マウント電極16、17及び引き出し電極19、20は、例えばクロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。
【0029】
また、一対の振動腕部10、11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。なお、この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10、11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0030】
このように構成された圧電振動片4は、図3および図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の内面(上面)にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の内面にパターニングされた後述する引き回し電極36、37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極16、17がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。
【0031】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、図1、図3および図4に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2、3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。
【0032】
また、図3に示すように、リッド基板3のベース基板2との接合面には、陽極接合用の接合膜35が形成されている。接合膜35は、例えばアルミニウム等の導電性材料からなり、スパッタやCVD等の成膜方法により形成される。なお、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で、接合膜35を介してベース基板2に陽極接合されている。
【0033】
ベース基板2は、リッド基板3と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、図1から図4に示すように、板状に形成されている。
このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対の貫通孔30、31が形成されている。貫通孔30は、ベース基板2の内面から外面(下面)に向けて漸次拡径する逆テーパ状に形成されている。本実施形態の貫通孔30、31は、マウントされた圧電振動片4の基部12側に対応した位置に一方の貫通孔30が形成され、振動腕部10、11の先端側に対応した位置に他方の貫通孔31が形成されている。
【0034】
そして、これら一対の貫通孔30、31には、これら貫通孔30、31を埋めるように形成された一対の貫通電極32、33が形成されている。これら貫通電極32、33は、図3に示すように、焼成によって貫通孔30、31に対して一体的に固定された筒体6及び芯材部7によって形成されたものであり、貫通孔30、31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38、39と引き回し電極36、37とを導通させる役割を担っている。
【0035】
筒体6は、後述するペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。筒体6および芯材部7は、貫通孔30、31内に埋め込まれた状態で焼成されており、貫通孔30、31に対して強固に固着されている。
【0036】
芯材部7は、ステンレスや銀、アルミ等の金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、且つベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。この芯材部7は、筒体6の略中心6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着されている。なお、貫通電極32、33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0037】
また、一対の引き回し電極36、37は、一対の貫通電極32、33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極16とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極17とを電気的に接続するようにパターニングされている。
【0038】
より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部12の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部10、11に沿って前記振動腕部10、11の先端側に引き回しされた後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0039】
そして、これら一対の引き回し電極36、37上にそれぞれバンプBが形成されており、バンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0040】
また、ベース基板2の外面には、図1、図3および図4に示すように、一対の貫通電極32、33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38、39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極13に電気的に接続されている。また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極14に電気的に接続されている。
【0041】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38、39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13及び第2の励振電極14からなる励振電極15に電圧を印加することで、一対の振動腕部10、11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10、11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0042】
(圧電振動子の製造方法)
次に、本実施形態における圧電振動子1の製造方法(パッケージの製造方法)について、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
初めに、圧電振動片作製工程S10を行って図5から図7に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状でパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極15、引き出し電極19、20、マウント電極16、17、重り金属膜21を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製することができる。
【0043】
また、圧電振動片4を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0044】
次に図9に示すように、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にリッド基板3(図3参照)となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程S20を行う。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチング等により行列方向にキャビティ用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程S22を行う。次に、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する接合面研磨工程S23を行う。
【0045】
次に、ベース基板用ウエハ40との接合面に接合膜35を形成する接合膜形成工程S24を行う。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、凹部3aの内面全体に形成してもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0046】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2(図3参照)となるベース基板用ウエハ(第1基板)40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程S30を行う。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。このベース基板用ウエハ40の厚さは、例えば500μmとなっている。
【0047】
次に、図3に示すように、ベース基板2を厚さ方向に貫通し、キャビティCの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極32、33を形成する貫通電極形成工程S32を行う。以下に、貫通電極形成工程S32について詳細を説明する。
【0048】
貫通電極形成工程S32では、まず図10に示すように、ベース基板用ウエハ40の中央部に位置する孔形成領域R1に、ベース基板用ウエハ40の厚さ方向に貫通する貫通孔30、31を、例えばサンドブラスト法等により形成する貫通孔形成工程S32Aを行う。このとき本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の内面(第1面)40a側から、内面40aとは反対の外面(第2面)40b側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に貫通孔30、31を形成する。なお、ベース基板用ウエハ40の外面40bおよび内面40aはそれぞれ、後のベース基板2の外面および内面となる。
【0049】
ここで、ベース基板用ウエハ40の内面40a側における貫通孔30、31の開口部の内径は、例えば200μmとなっている。また、貫通孔30、31のテーパ角θ(図12参照)は、例えば20度となっている。
なお図10、並びに以下に示す図11および図14では、図面を見易くするために、貫通孔30、31の数を省略するとともに、大きさ等を誇張して図示しており、貫通孔30、31の数や大きさ等は図示の例に限られない。
【0050】
次いで、貫通電極32、33の一部を構成する芯材部7と、表面に芯材部7が立設された土台部8と、を備える導電性の鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する鋲体配置工程S32Bを行う。
なお図示の例では、鋲体9の芯材部7は、円柱状に形成されるとともに、土台部8は円盤状に形成されている。また芯材部7の長さは、例えば480μmであり、芯材部7の直径は150μmであり、土台部8の直径は300μmである。さらに芯材部7は、土台部8の表面の中央部に土台部8の法線D方向(図12参照)に沿って立設されている。
【0051】
ここで、鋲体配置工程S32Bの詳細な説明の前に、鋲体配置工程S32Bに用いる挿入装置70について説明する。図10に示すように、挿入装置70は、ベース基板用ウエハ40を保持する皿状の保持部材71と、保持部材71が組み付けられ、かつ保持部材71の底壁部71aとともに吸引室72を画成する基台部材73と、吸引室72内を真空吸引する吸引ポンプ74と、基台部材73を揺動させる揺動手段75と、基台部材73を振動させる振動手段76と、を備えている。
【0052】
保持部材71の底壁部71aの表面71cは、平坦であるとともに上方を向いており、前記表面71cの中央部には、ベース基板用ウエハ40を保持する保持凹部77が形成されている。この保持凹部77内に、ベース基板用ウエハ40が内面40aを上方に向けて保持されたウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aと、保持部材71の底壁部71aの表面71cと、は面一になる。なお図示の例では、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の側面と、保持凹部77の内周面と、の間には隙間があいているが、この隙間はなくても良い。
【0053】
保持凹部77の底面には、保持部材71の底壁部71aの裏面71d側に向けて開口し、保持凹部77と吸引室72とを連通する吸引孔78が複数形成されている。これらの吸引孔78は、ベース基板用ウエハ40の貫通孔30、31に対応して形成されており、前記ウエハ保持状態で、全ての貫通孔30、31は、互いに異なる吸引孔78に連通する。これにより、吸引室72は、ベース基板用ウエハ40の外面40b側から吸引孔78を通して貫通孔30、31に連通することとなる。
【0054】
揺動手段75は、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aに平行な揺動軸O回りに基台部材73を揺動させ、ベース基板用ウエハ40を揺動軸O回りに揺動させる。ここで図示の例では、前記ウエハ保持状態で、ベース基板用ウエハ40の内面40aと、保持部材71の底壁部71aの表面71cと、が面一なので、揺動軸Oは、保持部材71の底壁部71aの表面71cに平行となっている。
また振動手段76は、基台部材73を揺動軸O方向に揺動(往復動)させる。
【0055】
以上に示した挿入装置70を用いた鋲体配置工程S32Bでは、ベース基板用ウエハ40の内面40aを上方に向けて内面40a上で鋲体9を移動させつつ、貫通孔30、31を通して外面40b側から鋲体9を吸引することで、芯材部7を貫通孔30、31内に挿入する。このとき本実施形態では、ベース基板用ウエハ40を揺動軸O回りに揺動させるとともに、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させることで、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させる。
【0056】
詳しく説明すると、まず、内面40aを上方に向けたベース基板用ウエハ40を挿入装置70の保持凹部77に保持させる。また、鋲体9を多数個まとめた鋲体群90を、保持部材71の底壁部71aにおいて、保持凹部77が形成された中央部よりも周壁部71b側の外周部に配置する。このとき、底壁部71aの外周部のうち、底壁部71aの表面71cに平行で、かつ揺動軸O方向に直交する方向に延びる仮想軸と交差する部分に、鋲体群90を配置する。なお鋲体群90における鋲体9の総数は、ベース基板用ウエハ40の貫通孔30、31の総数より多くても良い。
【0057】
次いで図11に示すように、底壁部71aの外周部のうち、鋲体群90が配置された部分が上方に向けて移動するように、揺動手段75によって基台部材73を揺動軸O回りに揺動させる。このとき、ベース基板用ウエハ40の内面40aが、例えば水平面に対して4度傾斜するようにベース基板用ウエハ40を揺動させることが好ましい。これにより、保持部材71の底壁部71aの表面71c、およびベース基板用ウエハ40の内面40aに沿った下側に、鋲体9を移動させることができる。
【0058】
またこのとき、振動手段76によって基台部材73を揺動軸O方向に振動させ、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させる。なお、振動手段76によるベース基板用ウエハ40の振動は、例えば振幅が約3mm、振動数が5〜20Hzであることが好ましい。これにより、本実施形態のように、鋲体9がベース基板用ウエハ40上に鋲体群90として多数個配置されている場合であっても、内面40aに沿った下側に各鋲体9を移動させつつ、内面40aの揺動軸O方向の全域にわたって多数個の鋲体9を拡散させることができる。
【0059】
さらにこのとき、図12に示すように、鋲体9を倒した状態、つまり土台部8の側面8aおよび芯材部7の先端7aがベース基板用ウエハ40の内面40aに当接し、芯材部7が内面40aに対して傾いた状態で内面40a上を移動させることができる。このように鋲体9が倒れた状態で内面40a上を移動させると、図13に示すように、鋲体9が貫通孔30、31上を通過したときに、芯材部7の先端7aが貫通孔30、31の内面40a側の開口部から貫通孔30、31内に振り込まれるようにして挿入される。
【0060】
ここで、貫通孔30、31が逆テーパ状となっていることから、芯材部7が貫通孔30、31内に挿入される際に、芯材部7の先端7aが貫通孔30、31の内周面に引っ掛かり難くなっている。したがって、鋲体9の芯材部7が貫通孔30、31内に円滑に挿入される。
【0061】
ところで、図11に示す2点鎖線のように、ベース基板用ウエハ40の内面40aに沿った下側に鋲体9を移動させる過程で、鋲体9の芯材部7が貫通孔30、31に挿入されずに、鋲体9がベース基板用ウエハ40の孔形成領域R1上を通過し、ベース基板用ウエハ40の下側の端部まで移動することが考えられる。
【0062】
この場合には、図14に示すように、揺動軸O回りの反対側にベース基板用ウエハ40を揺動させてベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させることで、前記端部を上側に位置させる。これにより、貫通孔30、31に芯材部7が挿入されていない鋲体9を、ベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させる前とは逆方向に内面40a上で移動させ、内面40aにおける孔形成領域R1上を往復移動させることができる。なお、このようにベース基板用ウエハ40の傾斜を反転させる際には、ベース基板用ウエハ40の内面40aが、例えば水平面に対して2度傾斜するようにベース基板用ウエハ40を揺動させることが好ましい。
【0063】
ところで図11に示すように、本実施形態では、前述のようなベース基板用ウエハ40の揺動、振動とあわせて、吸引ポンプ74によって吸引室72内を真空吸引する。ここで吸引室72は、吸引孔78を通して貫通孔30、31にベース基板用ウエハ40の外面40b側から連通しているので、ベース基板用ウエハ40の内面40a上の鋲体9は、吸引ポンプ74の真空吸引によって貫通孔30、31を通してベース基板用ウエハ40の外面40b側から吸引されることとなる。
【0064】
すると、前述のようにベース基板用ウエハ40の内面40a上を移動する鋲体9の芯材部7が、吸引力によって貫通孔30、31内に引き込まれ、芯材部7が貫通孔30、31内に更に円滑に挿入される。
なお本実施形態では、吸引ポンプ74による吸引を間欠的に繰り返す。このとき例えば、吸引ポンプ74を作動させ吸引室72の内圧を0.8秒間0.5MPaにした後、吸引ポンプ74の作動を停止し吸引室72の内圧を0.4秒間、大気圧に戻し、その後これらを繰り返す。
【0065】
以上に示したベース基板用ウエハ40の揺動、振動、並びに貫通孔30、31を通した鋲体9の吸引を、芯材部7が全ての貫通孔30、31内に挿入されるまで行う。なお、ベース基板用ウエハ40の内面40aから鋲体9の芯材部7が挿入されることで、ベース基板用ウエハ40の内面40aと鋲体9の土台部8の表面とが当接し、貫通孔30、31が内面40a側から閉塞される。
【0066】
次いで、貫通電極32、33の一部を構成するペースト状の図示しないガラスフリットを貫通孔30、31内に充填する充填工程S32Dを行う。このとき、ベース基板用ウエハ40の外面40b側から貫通孔30、31に前記ガラスフリットを充填する。ここで、貫通孔30、31がベース基板用ウエハ40の内面40a側から閉塞されているので、前記ガラスフリットが貫通孔30、31の内面40a側から漏出するのが抑制される。
【0067】
なおガラスフリット充填工程S32Dを終えた後、ベース基板用ウエハ40の外面40b上に前記ガラスフリットが残存することがある。この場合、外面40b上の前記ガラスフリットは後述する焼成後の研磨工程S32Iによって除去されるため、別途前記ガラスフリットを除去する工程を行なう必要はない。但し、別途前記ガラスフリットを除去する工程を追加することで、後述する焼成工程S32Hにおいて、前記ガラスフリットの焼成時間を短縮できるとともに、研磨工程S32Iの研磨に要する時間も短縮することができる。
【0068】
続いて、貫通孔30、31内に充填された前記ガラスフリットを焼成して硬化させる焼成工程S32Hを行う。焼成工程S32Hでは、貫通孔30、31に充填した前記ガラスフリットを所定の温度で焼成して硬化させる。この焼成工程S32Hを行うことで、貫通孔30、31および芯材部7に前記ガラスフリットが強固に固着して筒体6となり、貫通電極32、33が形成される。
【0069】
最後に、ベース基板用ウエハ40および鋲体9の土台部8を研磨する研磨工程S32Iを行う。具体的には、ベース基板用ウエハ40の外面40b側を研磨し、芯材部7の先端7aを露出させるとともに、鋲体9の土台部8を研磨して除去する。その結果、図3に示すように、筒体6と芯材部7とが一体的に固定された貫通電極32、33を複数得ることができる。
以上で貫通電極形成工程S32が終了する。
【0070】
次に図9に示すように、引き回し電極形成工程S33として、貫通電極にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36、37を複数形成する。そして、引き回し電極36、37上に、それぞれ金等からなる尖塔形状のバンプを形成する。なお、図9では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0071】
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36、37上に、バンプBを介して圧電振動片4を接合する実装工程S40を行い、その後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S50を行う。
【0072】
そして、重ね合わせ工程S50の後、重ね合わせた2枚のウエハを図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合し、ウエハ体60を形成する接合工程S60を行う。ところで、陽極接合を行う際、図3に示すように、ベース基板用ウエハ40に形成された貫通孔30、31は、貫通電極32、33によって完全に塞がれているため、キャビティC内の真空状態が貫通孔30、31を通じて損なわれることがない。しかも、焼成によって筒体6と芯材部7とが一体的に固定されているとともに、これらが貫通孔30、31に対して強固に固着されているため、キャビティC内の真空状態を確実に維持することができる。
【0073】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の外面40bに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32、33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38、39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S70を行う。
【0074】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティC内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程を行う(S80)。
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S90)。
その後、内部の電気特性検査(S100)を行うことで、圧電振動子1の製造が終了する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法によれば、鋲体配置工程S32Bの際、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させつつ、外面40b側から貫通孔30、31を通して鋲体9を吸引するだけで、鋲体9の芯材部7を貫通孔30、31内に円滑に挿入することができるので、パッケージ5を効率良く製造し、圧電振動子1の低コスト化を図ることができる。
【0076】
また、鋲体配置工程S32Bの際、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すので、芯材部7を貫通孔30、31内に確実に挿入することができる。
すなわち、鋲体配置工程S32Bの際、図14に示す2点鎖線のように、土台部8の裏面が内面40aに当接して鋲体9が起立した状態で内面40a上を移動することがある。そして、貫通孔30、31内に鋲体9の芯材部7が挿入される前に、起立した状態の鋲体9の土台部8によって貫通孔30、31が内面40a側から覆われると、貫通孔30、31を通した外面40b側からの吸引力により鋲体9が貫通孔30、31上で保持され続け、芯材部7が貫通孔30、31内に挿入されないおそれがある。しかしながら、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すことで、仮に起立した状態の鋲体9の土台部8によって貫通孔30、31が内面40a側から覆われたとしても、鋲体9が貫通孔30、31上で保持され続けることがない。したがって、貫通孔30、31を覆う鋲体9を貫通孔30、31上から移動させ貫通孔30、31を開放することが可能になり、芯材部7を貫通孔30、31内に確実に挿入することができる。
【0077】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図15を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器110は、図15に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0078】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0079】
このような本実施形態の発振器110によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0080】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図16を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0081】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図16に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0082】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0083】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付、カレンダー情報等が表示される。
【0084】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133及び呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0085】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0086】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129及び着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0087】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0088】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0089】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図17を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図17に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0090】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0091】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0092】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0093】
本実施形態の電波時計140によれば、低コストな圧電振動子1を備えているので、低コスト化を図ることができる。
【0094】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、リッド基板用ウエハ50に接合膜35を形成したが、これとは逆に、ベース基板用ウエハ40の内面40aに接合膜35を形成してもよい。この場合は、引き回し電極36、37と接合膜35とが接触しないように、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50との接合面のみに形成することが好ましい。
【0095】
また前記実施形態では、鋲体配置工程S32Bの際、ベース基板用ウエハ40の内面40aに平行な揺動軸O回りにベース基板用ウエハ40を揺動させるとともに、揺動軸O方向にベース基板用ウエハ40を振動させることで、ベース基板用ウエハ40の内面40a上で鋲体9を移動させるものとしたが、これに限られない。
また前記実施形態では、鋲体配置工程S32Bの際、外面40b側からの鋲体9の吸引を間欠的に繰り返すものとしたが、これに限られない。
【0096】
また前記実施形態では、貫通孔30、31内に充填される充填材がペースト状の前記ガラスフリットであるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、導電性のペースト(例えば銀ペーストなど)であっても良い。
【0097】
また前記実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージ5の内部に圧電振動片4を封入して圧電振動子1を製造したが、パッケージ5の内部に圧電振動片4以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
さらに前記実施形態では、ベース基板2とリッド基板3との間にキャビティCを形成した2層構造タイプの圧電振動子1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、圧電基板をベース基板とリッド基板とで上下から挟み込むように接合した3層構造タイプの圧電振動子に適用しても構わない。
【0098】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 圧電振動子
2 ベース基板(第1基板)
3 リッド基板(基板)
4 圧電振動片(電子部品)
7 芯材部
8 土台部
9 鋲体
30、31 貫通孔
32、33 貫通電極
40 ベース基板用ウエハ(第1基板)
40a 内面(第1面)
40b 外面(第2面)
110 発振器
120 携帯情報機器(電子機器)
140 電波時計
C キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
平板状の土台部と、前記土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体の前記芯材部を前記貫通孔内に挿入する鋲体配置工程と、
を有し、
前記貫通孔形成工程の際、前記第1基板の第1面側から、前記第1面とは反対の第2面側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に前記貫通孔を形成し、
前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面を上方に向けて前記第1面上で前記鋲体を移動させつつ、前記貫通孔を通して前記第2面側から前記鋲体を吸引することで、前記芯材部を前記貫通孔内に挿入することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のパッケージの製造方法であって、
前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面に平行な揺動軸回りに前記第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に前記第1基板を振動させることで、前記第1基板の前記第1面上で前記鋲体を移動させることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパッケージの製造方法であって、
前記鋲体配置工程の際、前記第2面側からの前記鋲体の吸引を間欠的に繰り返すことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法を実施する工程と、前記電子部品としての圧電振動片を前記貫通電極に実装しつつ前記キャビティの内部に配置する工程とを有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記第1基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
平板状の土台部と、前記土台部の表面に立設された芯材部と、を備える導電性の鋲体の前記芯材部を前記貫通孔内に挿入する鋲体配置工程と、
を有し、
前記貫通孔形成工程の際、前記第1基板の第1面側から、前記第1面とは反対の第2面側に向けて漸次拡径する逆テーパ状に前記貫通孔を形成し、
前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面を上方に向けて前記第1面上で前記鋲体を移動させつつ、前記貫通孔を通して前記第2面側から前記鋲体を吸引することで、前記芯材部を前記貫通孔内に挿入することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のパッケージの製造方法であって、
前記鋲体配置工程の際、前記第1基板の前記第1面に平行な揺動軸回りに前記第1基板を揺動させるとともに、前記揺動軸方向に前記第1基板を振動させることで、前記第1基板の前記第1面上で前記鋲体を移動させることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパッケージの製造方法であって、
前記鋲体配置工程の際、前記第2面側からの前記鋲体の吸引を間欠的に繰り返すことを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法を実施する工程と、前記電子部品としての圧電振動片を前記貫通電極に実装しつつ前記キャビティの内部に配置する工程とを有することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項4に記載の方法で製造された圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−205247(P2011−205247A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68759(P2010−68759)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(500520994)東栄産業株式会社 (1)
【出願人】(392026671)株式会社ウエステック (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(500520994)東栄産業株式会社 (1)
【出願人】(392026671)株式会社ウエステック (2)
【Fターム(参考)】
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