説明

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤

本発明はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害物質であるヒドロキサム酸誘導体に関する。本発明の化合物は癌を含む細胞増殖疾患を治療するのに有用である。さらに、本発明の化合物は疾患の中でも特に、神経変性疾患、統合失調症および脳卒中の治療に有用である。さらに、本発明の化合物は抗原虫性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞の核内のDNAは緻密なクロマチン構造のヒエラルキーとして存在する。クロマチン内の基本的な繰り返し単位がヌクレオソームである。ヌクレオソームはDNAが二重に巻かれた細胞の核内にあるタンパク質ヒストン八量体から構成されている。DNAが核内に規則的に入っていることは、遺伝子調節の機能的な特徴において重要な役割を果たす。ヒストンの共有結合修飾はクロマチン高次構造および機能、ならびに究極的には遺伝子発現を変える際に重要な役割を果たす。アセチル化などのヒストンの共有結合修飾は、酵素で媒介された過程によって生じる。
【背景技術】
【0002】
核酵素ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害を介した遺伝子発現の調節は、クロマチン活性に影響を及ぼすことのできるいくつかの起こり得る調節機序の1つである。ヒストンの核アセチル化の動的恒常性は、酵素であるヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の対抗する活性によって調製され得る。転写において沈黙しているクロマチンは、アセチル化ヒストンのレベルが低いヌクレオソームによって特徴付けることができる。アセチル化はヒストンの正電荷を低減させ、これによってヌクレオソームの構造が拡張され、転写因子のDNAとの相互作用が促進される。アセチル基の除去は正電荷を復元し、ヌクレオソームの構造を凝集させる。ヒストンアセチル化は、遺伝子発現を増強しながらDNA転写を活性化させることができる。ヒストン脱アセチル化酵素はこの過程の逆に働き、遺伝子発現を抑制するように働き得る。例えば、Grunstein、Nature 389、349〜352頁(1997年);Pazinら、Cell 89、325〜328頁(1997年);Wadeら、Trends Biochem.Sci.22、128〜132頁(1997年);およびWolffe、Science 272、371〜372頁(1996年)を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害物質であるヒドロキサム酸誘導体に関する。本発明の化合物は癌を含む細胞増殖疾患を治療するのに有用である。本発明の化合物は疾患の中でも特に、神経変性疾患、統合失調症および脳卒中の治療にも有用である。さらに、本発明の化合物は抗原虫性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の化合物はヒストン脱アセチル化酵素の阻害に有用である。本発明の第1の実施形態は、式I:
【0005】
【化6】

【0006】
(式中、aは0または1であり;bは0または1であり;mは0、1または2であり;nは0、1、2、3、4または5であり;pは0、1、2または3であり;
【0007】
【化7】

はシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたは
【0008】
【化8】

であり;
【0009】
XはC=OまたはS(O)であり;
はHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
はオキソ、OH、(C=O)(C〜C10)アルケニル、(C=O)(C〜C10)アルキニル、NO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C=O)(C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)m−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択され;
はHおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
はオキソ、NO、N(R、OH、CN、ハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択される。)
による化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0010】
本発明の第2の実施形態は、
【0011】
【化9】

がフェニル、ヘテロシクリルまたは
【0012】
【化10】

であり;
pは0または1であり;
はCHであり;
すべての置換基および可変因子がは第1の実施形態に定義した通りである、式Iによる化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0013】
本発明の第3の実施形態は、
がNO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択され;
がHおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
がハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
すべての置換基および可変因子が第2の実施形態に定義した通りである、式Iによる化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0014】
本発明の化合物は、(E.L.ElielおよびS.H.Wilen、Stereochemistry of Carbon Compounds、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1994年、1119〜1190頁に記載のような)不斉中心、不斉軸および不斉面を有することがあり、また、ラセミ体、ラセミ混合物として、および個々のジアステレオマーとして発生することがあり、光学異性体、すべてのこのような立体異性体を含む可能なすべての異性体およびそれらの混合物は、本発明に包含される。また、本明細書に開示する化合物は、互変異性体として存在することがあり、片方の互変異性構造しか示されていない場合であっても、両方の互変異性形が本発明の範囲に包含されることを意図する。
【0015】
いずれかの可変因子(例えば、RおよびR等)がいずれかの構成要素に1回を超えて存在するとき、各出現時の定義は出現毎に独立したものである。置換基および可変因子の組合せは、このような組合せにより結果として安定な化合物が得られる場合に限り許容され得る。置換基から環構造の中へと描かれた線は、この示されている結合が、置換可能な環原子のいずれにも結合可能であることを表している。この環系が多環式である場合、結合は近隣環上のみの適した炭素原子に結合されているものと意図される。
【0016】
本発明の化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定な化合物であって、容易に入手可能な出発原料から当該技術分野において知られた技術ならびに以下に記載する方法により容易に合成することができる化合物が生じるように、通常の当業者によって選択され得るものと理解される。置換基がそれ自体で1個または複数の基で置換されている場合、これらの複数の基は、結果的に構造が安定であれば、同じ炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよいと理解されたい。「1個または複数の置換基で場合によって置換されている」という句は、「少なくとも1個の置換基で場合によって置換されている」という句と同等であると考えるべきであり、このような場合、好ましい一実施形態は、0から3個の置換基を有する。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」とは、炭素原子の指定された数を有する分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基と直鎖飽和脂肪族炭化水素基の両方を包含するものと意図される。例えば、「C〜C10アルキル」の場合のようなC〜C10は、直鎖または分枝鎖配列で炭素原子を1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個有する基を包含するものと定義される。例えば、「C〜C10アルキル」には、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。「シクロアルキル」という用語は、炭素原子の指定された数を有する単環式、二環式または多環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本発明の一実施形態では、「シクロアルキル」という用語は、直ぐ上に記載した基を含み、単環式不飽和脂肪族炭化水素基をさらに含む。例えば、この実施形態において定義される「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプチル等が挙げられる。
【0018】
「アルキレン」という用語は炭素原子の指定された数を有する炭化水素二端遊離基を意味する。例えば、「アルキレン」には、−CH−、−CHCH−等が挙げられる。
【0019】
「アルコキシ」とは、酸素架橋によって結合されている指定された炭素原子数の環状または非環状アルキル基を表す。したがって、「アルコキシ」とは、上記アルキルおよびシクロアルキルの定義を包含する。
【0020】
炭素原子数が指定されていない場合、「アルケニル」という用語は、炭素原子を2から10個と炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ含む、直鎖、分枝鎖または環状の非芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、最大で4つの非芳香族性炭素−炭素二重結合が存在し得る。故に、「C〜Cアルケニル」は、炭素原子を2から6個有するアルケニル基を意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。アルケニル基の直鎖、分枝鎖または環状部分は、二重結合を有していてもよく、置換アルケニル基が示されている場合には置換されていてもよい。
【0021】
「アルキニル」という用語は、炭素原子を2〜10個と炭素−炭素三重結合を少なくとも1つ含む、直鎖、分枝鎖または環状の炭化水素基を指す。最大で3つの炭素−炭素三重結合が存在し得る。したがって、「C〜Cアルキニル」は、炭素原子を2から6個有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどが挙げられる。アルキニル基の直鎖、分枝鎖または環状部分は三重結合を含有していてもよく、置換アルキニル基が示されている場合には置換されていてもよい。
【0022】
ある特定の場合、置換基は(C〜C)アルキレン−アリールなど、ゼロを含む炭素数範囲を伴って定義することができる。アリールがフェニルであるとする場合、この定義は、フェニルそれ自体の他、−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Ph等を包含する。
【0023】
本明細書で用いられる場合「アリール」とは、少なくとも一方の環が芳香族である、各環の原子数が最大7個であるあらゆる安定した単環式または二環式炭素環を意味することを意図する。このようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニルが挙げられる。アリール置換基が二環式であり、一方の環が非芳香族である場合、結合は芳香族環を介すると理解されたい。
【0024】
本明細書で用いられる場合「複素環」または「ヘテロシクリル」は、O、NおよびSからなる群より選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する4〜10員の芳香族または非芳香族複素環を意味することを意図し、二環式の基を包含する。したがって、「ヘテロシクリル」は、上述のヘテロアリールの他、それらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、これに限定するものではないが、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロチエニル、ならびにこれらのN−オキシドが挙げられる。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介し、またはヘテロ原子を介して発生し得る。
【0025】
当業者には理解されるように、ここで用いる「ハロ」または「ハロゲン」は、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)およびヨード(I)を包含することを意図する。
【0026】
一実施形態では、
【0027】
【化11】

はフェニル、ヘテロシクリル、または
【0028】
【化12】

である。
【0029】
一実施形態では、pは0または1である。
【0030】
別の実施形態では、pは0である。
【0031】
一実施形態では、XはC=Oである。
【0032】
別の実施形態では、XはS(O)である。
【0033】
一実施形態では、RはHである。
【0034】
別の実施形態では、RはCHである。
【0035】
一実施形態では、Rはオキソ、OH、(C=O)(C〜C10)アルケニル、(C=O)(C〜C10)アルキニル、NO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C=O)(C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)m−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択される。
【0036】
別の実施形態では、RはNO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択される。
【0037】
さらに別の実施形態では、Rがアリールの場合、前記アリールはフェニルである。
【0038】
さらに別の実施形態では、Rがヘテロシクリルの場合、前記ヘテロシクリルは
【0039】
【化13】

から選択される。
【0040】
一実施形態では、Rはオキソ、NO、N(R、OH、CN、ハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択される。
【0041】
別の実施形態では、Rはハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択される。
【0042】
式Iの化合物の遊離形態ならびにその薬学的に許容される塩および立体異性体も、本発明に包含される。本明細書に示されている特定の化合物のいくつかは、アミン化合物のプロトン化塩である。用語「遊離形態」は、塩でない形のアミン化合物を指す。包含される薬学的に許容される塩には、ここに記載する特定の化合物について示す塩だけでなく、式Iの化合物の遊離形態の一般的な薬学的に許容される塩すべてを含む。記載する特定の塩化合物の遊離形態は、当該技術分野において知られている技術を使用して単離することができる。例えば、前記遊離形態は、NaOH、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウム希薄水溶液などの適する塩基希薄水溶液で前記塩を処理することにより、再生することができる。遊離形態は、極性溶媒への溶解度などの一定の物理的性質においては多少これらのそれぞれの塩の形態と異なることがあるが、本発明のために、これらの酸性および塩基性の塩は、他の点で、それぞれの遊離形態と薬学的に同等である。
【0043】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む本発明化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーによるかまたは遊離塩基を化学量論量もしくは過剰量の所望の塩形成性無機、あるいは有機酸を用いて適当な溶媒または種々の溶媒混合物中で反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は適した無機もしくは有機塩基との反応により形成される。
【0044】
故に、本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、塩基性の本化合物と無機酸または有機酸を反応させることによって形成されるような本発明の化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。例えば、従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されたもの、ならびに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から調製された塩が挙げられる。
【0045】
本発明の化合物が酸性である場合、適した「薬学的に許容される塩」は、無機塩基および有機塩基を含む薬学的に許容され非毒性の塩基から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩が、特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、第一、第二および第三アミンの塩、天然置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミンの塩および塩基性イオン交換樹脂が挙げられる。
【0046】
上記薬学的に許容される塩および他の典型的な薬学的に許容される塩の調製方法は、Bergらの「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.、1977年:66:1〜19にさらに十分に記載されている。
【0047】
本発明の化合物は、生理学的条件下ではカルボキシル基などの本化合物中の脱プロトン化酸性部分がアニオン性であり得るため、分子内塩または両性イオンである可能性があること、および、この電子電荷が、第四級窒素原子などのプロトン化またはアルキル化塩基性部分のカチオン電荷に対して分子内でバランスを失うことがあることにも留意されたい。
【0048】
本発明の化合物は、文献において知られているか、それらの実験手順に示されている他の標準的な操作に加えて、以下のスキームに示すような反応を利用することによって調製することができる。したがって、以下の例示的スキームは、挙げられている化合物による制限を受けず、また説明のために用いられているあらゆる特定の置換基による制限を受けない。これらのスキームに示されているような置換基の番号付けは、特許請求の範囲で使用されているものとは必ずしも相関せず、多くの場合、分かりやすいように、上記の式Iの定義のもとで複数の置換基が許される場合でもこの化合物に単一の置換基を結合させて示す。
【0049】
反応スキーム
スキーム1に示すように、本発明のスルホンアミド化合物は、概説された一般化学を用いて、適したパラアミノ安息香酸誘導体1から容易に調製可能である。これらのパラアミノ安息香酸誘導体は、市販の供給源から購入することができるか、または標準化学を用いて当業者が調製することができる。
【0050】
【化14】

【0051】
上記のようにそのような1つのアプローチにおいては、BoCOなどの適した保護基(適した保護基はProtecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Greene,T.W.およびWuts,P.G.M.;Wiley Interscience、1999年およびKocienski,P.J.Protecting Groups、Thieme、1994年に記載されている。)と反応させ、次いで、塩基加水分解反応によって対応するカルボン酸を得、次いで、DCCまたはEDCなどのカップリング剤存在下でこのカルボン酸を(ベンジル、t−ブチル、THPまたはt−ブチルジメチルシリルのいずれかを用いたように)適したO保護化されたヒドロキシルアミン誘導体と反応させて対応するヒドロキサメートを形成して誘導体1をN保護化することができる。カルボン酸(および酸誘導体)をアミノ成分とカップリングさせてカルボキサミドを形成する方法は当業界でよく知られており、適した方法は、例えば、March,J.Advanced Organic Chemistry、第3版、John Wiley & Sons、1985年、370〜376頁に記載されている。次いで、トリフルオロ酢酸などの強酸を用いた酸条件下でN−保護基を除去してヒドロキサム酸誘導体2を得、この誘導体2を適した塩基存在下で適した塩化スルホニルと反応させてスルホンアミド3を得ることができる。最終的に、O−保護基を除去して本発明の表題化合物4を得ることができる。あるいは、1を適した塩化スルホニルと反応させてスルホンアミド誘導体5を形成することができる。次いで、(5から得られた)カルボン酸誘導体6を概説したような4に転換することができる。
【0052】
【化15】

【0053】
スキーム2に概説したように、適した塩基存在下でスルホンアミド5を適したアルキル化剤と反応させてエステル7を得ることができる。該エステル7から得られた酸8を所望のヒドロキサメート9に転換することができる。ある場合には、この完全体である分子上でさらに合成操作を行えば、他の類似対を得ることが可能である。芳香族塩化スルホニルは市販の供給源から得ることができるか、または[Org.Proc.Res.Development(2003年)、7(6)、921〜924頁;Tett.Lett.(2003年)、44(21)、4153〜4256頁;J.Org.Chem.(2003年)、68(14)、5525〜5573頁;Bioorg.Med.Chem.(2002年)、10(11)、3529〜3544頁;Tetrahedron(2003年)、59(8)、1317−1325頁;J.Heterocyclic Chem.(2002年)、39(5)、1055〜1059頁;J.Med.Chem.(2002年)、45(5)、1086〜1097頁に記載のように]当業者が使用可能な種々の方法を用いて容易に調製することができる。
【0054】
【化16】

【0055】
スキーム3に示すように、2を適した酸クロライドまたは概説したようなカルボン酸と反応させて10を得ることによって本発明のアミド化合物を合成し、保護基を除去して表題のヒドロキサメート11を得ることができる。このヒドロキサメート11はスキーム3において上で概説したような1から調製することも可能である。スキーム4に概説したように、これに対応するN置換アミド化合物16は12から調製することができる。
【0056】
【化17】

【0057】
有用性
本発明の化合物には種々の用途がある。本発明の化合物は疾患の中でも特に癌の治療に有用であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤である。HDACはヒストンを含むタンパク質上のリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素であり、HDAC阻害剤は遺伝子発現、細胞分化、細胞周期の進行、成長停止、および/またはアポトーシスに影響を及ぼすことなどの種々の生物学的機能を示す。J.Med.Chem.2003年、46:5097およびCurr.Med.Chem.2003年、10:2343を参照されたい。
【0058】
本発明の化合物は細胞増殖疾患の治療に用いられる。本明細書に提供した方法および組成物によって治療することのできる疾患状態には、これに限定するものではないが、癌(以下でさらに考察する。)、神経変性疾患、統合失調症および脳卒中が挙げられる。
【0059】
本明細書に提供した化合物、組成物および方法は、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、精巣癌等の固形腫瘍を含む癌の治療に有用であると特にみなされる。特に、本発明の化合物、組成物および方法によって治療することのできる癌には、これに限定するものではないが、次のものが挙げられる。心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性肺癌(扁平上皮細胞癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器管:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎石灰沈着症]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性グリア芽細胞腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科系:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌腫]、顆粒膜−包膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫[胎児性横紋筋肉腫])、ファロピウス管(癌腫);血液系:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、脊髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性メラノーマ、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、色素性形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫。このように、本明細書で使用される場合「癌性細胞」は、上で特定した状態のいずれか1つに罹患している細胞を包含する。
【0060】
本発明の化合物は、上記細胞増殖疾患、特に癌の治療に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0061】
本発明の化合物は、これに限定するものではないが、ポリグルタミン伸長に関連する神経変性、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、タンパク質凝集に関連する神経変性、マシャドジョセフ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、海綿状脳症、プリオン関連疾患および多発性硬化症(MS)などの神経変性疾患の治療または予防にも有用であり得る。国際公開公報WO02/090534およびWO03/083067を参照されたい。
【0062】
本発明の化合物は神経変性疾患の治療または予防に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0063】
本発明の化合物は統合失調症治療または予防にも有用であり得る。国際公開公報WO02/090534を参照されたい。
【0064】
本発明の化合物は統合失調症の治療または予防に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0065】
本発明の化合物は、脳卒中を含むが、これに限定するものではないが、炎症性疾患の治療または予防にも有用であり得る。Leoniら、PNAS、99(5):2995〜3000頁(2002年)およびSuuronenら、J.Neurochem.87:407〜416頁(2003年)。
【0066】
本発明の化合物は、脳卒中などの炎症性疾患の治療または予防に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0067】
本発明の化合物は平滑筋細胞増殖および/または遊走の阻害にも有用であり、したがって、例えば、血管形成術および/またはステント植え込み後の再狭窄の予防および/または治療に有用である。
【0068】
本発明の化合物は再狭窄の治療または予防に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0069】
一実施形態では、平滑筋細胞増殖および/または遊走が阻害され、本発明の化合物の1つまたは複数をステント装置の中または上に有する、例えばステント装置の上にコーティングしたステント装置を提供することによって、再狭窄が予防および/または治療される。該ステント装置は制御可能に本発明の化合物を放出し、これによって平滑筋細胞増殖および/または遊走を阻害し、再狭窄を予防および/または治療するように設計されている。
【0070】
狭窄および再狭窄とは血管の狭窄を伴う状態である。血管の狭窄は一般に経時的に徐々に発生する。対照的に、再狭窄は、バルーン血管形成および/またはステント植え込みなどの血管内処置または血管損傷後の血管の狭窄に関連する。
【0071】
バルーン血管形成は一般に狭窄状態の血管を広げるように実施される;ステント術は通常、バルーン血管形成後の血管の開通性を維持するように実施されるか、またはバルーン血管形成と併用して実施される。狭窄状態の血管はバルーンが先端に付いたカテーテルを狭窄部位まで誘導し、このバルーン先端を効果的に膨張させて閉塞した血管を拡張することによって、バルーン血管形成により広げられる。拡張血管の開通性を維持しようとする場合、血管にステントを植え込んで、血管の広げられた断面まで血管内を支持し、これによってバルーンカテーテルを解放後に血管がその閉塞した状態に戻る程度を制限することができる。再狭窄は典型的には血管形成中に負わされた外傷によって生じる、例えば、動脈のバルーン拡張、アテローム切除術またはレーザアブレーション治療によってもたらされる。これらの手順では、再狭窄は血管の場所、病変長および多数の他の変数に応じて約30%〜約60%の割合で生じる。これは比較的低侵襲のバルーン血管形成およびステント処置の全体的成功率を低減させる。
【0072】
再狭窄は平滑筋細胞(SMC)の増殖を含む多くの因子に起因する。SMC増殖はバルーン血管形成術およびステント植え込み時に支持される内膜への初期の機械的損傷によって惹起される。この過程の特徴は、早期には血小板活性化および塞栓形成を生じ、次にSMC動員および遊走が起こり、最終的に細胞増殖および細胞外基質蓄積が生じることにある。傷付いた内皮細胞、SMC、血小板、およびマクロファージは再狭窄を促進するサイトカインおよび成長因子を分泌する。SMC増殖は、新生内膜過形成に至る最終的な共通の経路を表す。したがって、細胞周期における特定の調節事象を阻害することを狙いとする抗増殖療法は、血管形成術後の再狭窄に対する最も妥当なアプローチを構成し得る。
【0073】
別の態様では、本発明は、原虫感染症に罹患している宿主にヒストン脱アセチル化酵素を阻害する式(I)による化合物の治療有効量を投与する工程を含む、原虫感染症のための治療方法を提供する。治療有効量とは、原因原虫のヒストン脱アセチル化酵素を阻害するのに有効な量のことである。
【0074】
本発明の化合物は原虫感染症の治療または予防に有用な薬剤を調製するのにも有用である。
【0075】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は抗原虫剤として有用である。したがって、本発明の化合物は、ヒトおよび家禽を含む動物の原虫感染症の治療および予防に用いることが可能である。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を用いることができる原虫感染症の例および各々の原因病原体には、1)アメーバ症(双核アメーバ属、Entamoeba histolytica);2)鞭毛虫症(ランブル鞭毛虫);3)マラリア(P.vivax、P.falciparum、P.malariaeおよびP.ovaleを含むプラスモジウム属);4)リーシュマニア症(L.donovani、L.tropica、L.mexicanaおよびL.braziliensisを含むリーシュマニア属);5)トリパノソーマ病およびシャガス病(T.brucei、T.theileri、T.rhodesiense、T.gambiense、T.evansi、T.equiperdum、T.equinum、T.congolense、T.vivaxおよびT.cruziを含むトリパノソーマ属);6)トキソプラズマ症(Toxoplasma gondii);7)新胞子虫症(Neospora caninum);8)バベシア症(バベシア属);9)クリプトスポリジア症(クリプトスポリジウム属);10)赤痢(大腸バランチジウム);11)膣炎(T.vaginitisおよびT.foetusを含むトリコモナス属);12)コクシジウム症(E.tenella、E.necatrix.E.acervulina、E.maximaおよびE.brunetti、E.mitis、E.bovis、E.melagramatisを含むアイメリア属、ならびにイソスポラ属);13)腸肝炎(Histomonas gallinarum);および14)アナプラズマ属、Besnoitia属、リューコサイトゾーン属、微胞子虫類、サルコシスチス属、タイレリア属およびニューモシスチスカリニにより引き起こされる感染症が含まれる。
【0076】
本発明のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、アピコンプレクサ亜門のメンバーによって引き起こされる原虫感染症の治療または予防に用いるのが好ましい。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、ヒトおよび動物のマラリア、トキソプラズマ症、およびクリプトスポリジア症の治療または予防、ならびにコクシジウム感染症の治療や予防、特に家禽のコクシジウム症の防除処置に用いるのがさらに好ましい。また、アピコンプレクサによって引き起こされるものではないが、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によってトリパノソーマ症を治療することもできる。
【0077】
家禽のコクシジウム症の予防など、本発明のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の持続的な投与が考えられる場合、該ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は宿主のヒストン脱アセチル化酵素よりも原虫の該酵素に対して選択的であるのが好ましい。そのような選択的阻害剤を長期間投与することにより、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害による宿主への有害作用が最小限になると考えられる。
【0078】
本発明の化合物は、標準的な製薬学的実践に従って、単独で、または医薬組成物中で薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。本化合物は、経口投与、または静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、皮下経路、直腸内経路および局所経路の投与を含む非経口投与で投与することができる。
【0079】
本活性成分を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセルまたはシロップあるいはエリキシルのような経口使用に適した形態であり得る。経口用途の組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野において知られたあらゆる方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬的に洗練された、味のよい製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤および保存薬からなる群より選択された1つまたは複数の薬剤を含有してよい。錠剤は、錠剤の製造に適する非毒性で薬学的に許容される賦形剤との混合物で活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、微結晶性セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドンまたはアラビアゴム;および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。これらの錠剤は、被覆しなくてもよいし、または薬剤の不快な味を遮蔽するために、あるいは胃腸管の中での崩壊および吸収を遅らせ、その結果、長期にわたる持続作用を提供するために、知られた技法によって被覆してもよい。例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性味遮蔽材料、またはエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延材料を利用することができる。
【0080】
経口用の配合物は、活性成分を不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合する硬質ゼラチンカプセルとして、あるいは活性成分をポリエチレングリコールなどの水溶性担体または油性媒体、例えば、ラッカセイ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟質ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0081】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物で活性材料を含有する。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり、分散または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなど)、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液は、1つまたは複数の保存薬、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の着香剤、およびスクロース、サッカリンまたはアスパルテームなどの1つまたは複数の甘味剤を含有してもよい。
【0082】
油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油に、または液体パラフィンなどの鉱物油に活性成分を懸濁させることにより調製することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。上に記載したものなどの甘味剤および着香剤を添加して、味のよい経口製剤を生成することができる。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはα−トコフェロールなどの酸化防止剤を添加することにより保存することができる。
【0083】
水の添加による水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つまたは複数の保存薬との混合物で活性成分を提供する。適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤の例は、既に上で述べたものである。付加的な賦形剤、例えば甘味剤、着香剤および着色剤が存在してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加することにより保存することができる。
【0084】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。この油性相は、植物油、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油であってもよいし、鉱物油、例えば、液体パラフィン、またはこれらの混合物であってもよい。適した乳化剤は、天然ホスファチド、例えば、大豆レシチン、ならびに脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。前記エマルジョンは、甘味剤、着香剤、保存薬および酸化防止剤も含有することができる。
【0085】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて配合することができる。このような配合物は粘滑剤、保存薬、着香剤、着色剤および酸化防止剤も含有することができる。
【0086】
本医薬組成物は無菌注射用水溶液の形態であってもよい。利用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および等張食塩液がある。
【0087】
無菌注射用製剤は、活性成分が油性相に溶解している無菌注射用水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を、最初に大豆油とレシチンの混合物に溶解してもよい。次いで、この油性溶液を水とグリセロールの混合物に導入し、処理して、マイクロエマルジョンを形成する。
【0088】
前記注射用溶液またはマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができる。あるいは、本化合物の循環濃度を一定に保つような方法で前記溶液またはマイクロエマルジョンを投与することが有利である。このような一定濃度を保つために、持続性静脈送達装置を利用することができる。こういった装置の一例は、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈ポンプである。
【0089】
本医薬組成物は、筋肉内投与および皮下投与のための無菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、前述した適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用し、知られた技術に従って配合することができる。無菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性で非経口投与に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であり得る。加えて、無菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として従来では利用されている。この目的には、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むあらゆる無菌固定油を利用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用することができる。
【0090】
式Iの化合物は薬物を直腸内投与するための坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であるため、直腸内で溶融して薬物を放出する適切な無刺激性賦形剤と薬物を混合物することにより調製することができる。このような材料には、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0091】
局所使用には、式Iの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などが利用される(この適用のために、局所適用は口内洗浄およびうがいを包含するものとする。)。
【0092】
本発明の化合物は、適する鼻腔内ビヒクルおよび送達装置の局所使用により、または当業者にはよく知られた経皮パッチの形態を使用する経皮経路により、鼻腔内形態で投与することができる。経皮送達システムの形態で投与するために、この投薬量の投与は当然ながら、この薬剤投与計画を通して間欠的ではなく継続的である。本発明の化合物は、カカオ脂、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの基剤を使用して坐剤として送達することもできる。
【0093】
本発明の化合物をヒト対象に投与する場合、この1日量は通常、処方する医師によって決定され、この1日量は一般に、個々の患者の年齢、体重、性別および応答、ならびにその患者の症状の重症度に従って変化する。
【0094】
例示的な一適用では、化合物の適量を、癌の治療を受けている哺乳動物に投与する。投与は、1日に体重1kgあたり約0.1mgから約60mgの間、好ましくは1日に体重1kgあたり0.5mgから約40mgの間の量で行われる。
【0095】
本化合物は知られている治療薬および抗癌剤との併用でも有用である。例えば、本化合物は、知られている抗癌剤との併用で有用である。本開示化合物と他の抗癌剤または化学療法薬との併用は、本発明の範囲内である。このような薬剤の例は、Cancer Principles and Practice of Oncology、V.T.DevitaとS.Hellman編集、第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出すことができる。当業者であれば、薬物の個々の性質および関係する癌に基づいて、どの薬物の併用が有用であるかを識別することができる。このような抗癌剤には、これに限定するものではないが、次のものが挙げられる。エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤および他の血管形成抑制剤、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、アポトーシス誘発剤、ならびに細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤。本化合物は、放射線療法と共に施すときに特に有用である。
【0096】
一実施形態では、本化合物は、以下のものを含む知られた抗癌剤との併用でも有用である:エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤、増殖抑制剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、および他の血管形成抑制剤。
【0097】
「エストロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、エストロゲンの受容体への結合に干渉するか、このような結合を阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレータの例には、これに限定するものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、およびSH646が挙げられる。
【0098】
「アンドロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、アンドロゲンの受容体への結合に干渉するか、このような結合を阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレータの例には、フィナステリドおよび他の5α−還元酵素阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0099】
「レチノイド受容体モジュレータ」は、機序にかかわらず、レチノイドの受容体への結合に干渉するか、このような結合を阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体モジュレータの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられる。
【0100】
「細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤」とは、主として細胞の機能化に直接干渉することによって細胞死を生じさせるか、または増殖を抑制するか、あるいは細胞有糸分裂を抑制するか、またはそれに干渉する化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレータ、低酸素状態活性化化合物、微小管抑制剤/微小管安定剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗物質、生物学的反応修飾物質、ホルモン性/抗ホルモン性治療薬、造血成長因子、モノクローナル抗体を標的にした治療薬、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤およびユビキチンリガーゼ阻害剤のどのようなものも含む。
【0101】
細胞毒性剤の例には、これに限定するものではないが、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラミムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、四塩化(トランス、トランス、トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]、ジアリジジニルスペルミン、三酸化砒素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アンルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO00/50032を参照のこと)が挙げられる。
【0102】
低酸素状態活性化化合物の一例は、チラパザミンである。
【0103】
プロテアソーム阻害剤の例には、ラクタシスチンおよびボルテゾミブが挙げられるが、これに限定されない。
【0104】
微小管抑制剤/微小管安定剤の例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロピル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン類(例えば、米国特許第6284781号および第6288237号を参照のこと)およびBMS188797が挙げられる。
【0105】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例には、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−シャールトルーシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’;6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナがある。
【0106】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT国際公開公報WO01/30768、WO01/98278、WO03/050064、WO03/050122、WO03/049527、WO03/049679、WO03/049678およびWO03/39460、ならびに係属中のPCT出願番号US03/06403(2003年3月4日出願)、US03/15861(2003年5月19日出願)、US03/15810(2003年5月19日出願)、US03/18482(2003年6月12日出願)およびUS03/18694(2003年6月12日出願)に記載されている。一実施形態では、有糸分裂キネシンの阻害剤には、これに限定するものではないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤、およびRab6−KIFLの阻害剤が挙げられる。
【0107】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤」には、これに限定するものではないが、オーロラキナーゼの阻害剤、(PLK−1の特定の阻害剤の中では)Polo様キナーゼ(PLK)の阻害剤、bub−1の阻害剤およびbub−R1の阻害剤が挙げられる。
【0108】
「増殖抑制剤」には、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231およびINX3001などのアンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、ならびにエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナスシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アナノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デキサロゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、および3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどの代謝拮抗物質が挙げられる。
【0109】
モノクローナル抗体を標的にした治療薬の例には、癌細胞特異的または標的細胞特異的なモノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤または放射性同位元素を有する治療薬が挙げられる。例には、Bexxarが挙げられる。
【0110】
「HMG−CoA還元酵素阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA還元酵素の阻害剤を指す。HMG−CoA還元酵素阻害剤の例には、これに限定するものではないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4231938号、第4294926号および第4319039号を参照のこと)、シムバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4444784号、第4820850号および第4916239号を参照のこと)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4346227号、第4537859号、第4410629号、第5030447号および第5180589号を参照のこと)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許5354772号、第4911165号、第4929437号、第5189164号、第5118853号、第5290946号および第5356896号を参照のこと)、およびアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5273995号、第4681893号、第5489691号および第5342952号を参照のこと)を挙げられる。本方法に使用することができるこれらおよび追加のHMG−CoA還元酵素阻害剤の構造式は、M.Yalpani、「Cholesterol Lowering Drugs」、Chemistry & Industry、85〜89頁(1996年2月5日)の87頁ならびに米国特許第4782084号および第4885314号に記載されている。本明細書で使用される「HMG−CoA還元酵素阻害剤」という用語は、すべての薬学的に許容されるラクトン型および開環酸型(すなわち、ラクトン環が開環されて遊離酸を形成している場合)の他、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の塩およびエステルを含み、したがって、このような塩、エステルおよび開環酸型を使用することは本発明の範囲にある。
【0111】
「プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤」とは、ファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素I型(GGPTアーゼ−I)およびゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素II型(GGPTアーゼ−II、Rab GGPTアーゼとも呼ばれる。)を含むプレニル−タンパク質転移酵素のいずれか1つまたはあらゆる組合せを阻害する化合物を指す。
【0112】
プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の例は、以下の公報および特許において見ることができる:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5420245号、第5523430号、第5532359号、第5510510号、第5589485号、第5602098号、欧州特許第0618221号、第0675112号、第0604181号、第0696593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5661152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5571792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、および米国特許第5532359号。血管形成におけるプレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の役割の例については、European J.of Cancer、35巻、9号、1394〜1401頁(1999年)を参照されたい。
【0113】
「血管形成抑制剤」とは、機序にかかわらず、新しい血管の形成を抑制する化合物を指す。血管形成抑制剤の例には、これに限定するものではないが、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)およびFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤などのチロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来、線維芽細胞由来または血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(アスピリンおよびイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)ならびにセレコキシブおよびロフェコキシブのような選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(PNAS、89巻、7384頁(1992年);JNCI、69巻、475頁(1982年);Arch.Opthalmol.、108巻、573頁(1990年);Anat.Rec.、238巻、68頁(1994年);FEBS Letters、372巻、83頁(1995年);Clin、Orthop.、313巻、76頁(1995年);J.Mol.Endocrinol.、16巻、107頁(1996年);Jpn.J.Pharmacol.、75巻、105頁(1997年);Cancer Res.、57巻、1625頁(1997年);Cell、93巻、705頁(1998年);Intl.J.Mol.Med.、2巻、715頁(1998年);J.Biol.Chem.、274巻、9116頁(1999年))を含む。)、ステロイド性抗炎症薬(コルチコステロイド、鉱質コルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾンなど)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンII拮抗薬(Fernandezら、J.Lab.Clin.Med.105:141〜145頁(1985年)を参照)、およびVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology、17巻、963〜968頁(1999年10月);Kimら、Nature、362、841〜844頁(1993年);WO00/44777およびWO00/61186を参照のこと)が挙げられる。
【0114】
血管形成を調節または阻害し、本発明の化合物と併用することもできる他の治療薬には、凝固およびフィブリン溶解系を調節または阻害する薬剤が挙げられる(Clin.Chem.La.Med.38:679〜692頁(2000年)における総説を参照)。凝固およびフィブリン溶解経路を調節または阻害するこのような薬剤の例には、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10〜23頁(1998年)を参照のこと)、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化性フィブリン溶解阻害剤[TAFIa]の阻害剤としても知られている。)(Thrombosis.Res.101:329〜354頁(2001年)を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。TAFIa阻害剤は、PCT国際公開公報WO03/013526および米国特許出願第60/349925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0115】
「細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを変換し、これによって癌細胞をDNA損傷薬に感作させるプロテインキナーゼを阻害する化合物を指す。このような薬剤には、ATR、ATM、Chk1およびChk2キナーゼならびにcdkおよびcdcキナーゼ阻害剤が挙げられ、具体的な例は、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel社)およびBMS−387032である。
【0116】
「細胞増殖および生存シグナリング経路の阻害剤」は、細胞表面受容体、およびそれら表面受容体の下流側のシグナル変換カスケードを阻害する薬剤を指す。こうした薬剤には、EGFRの阻害剤(例えば、ゲフィチニブおよびエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140およびWO02/083138に記載されているようなAktの阻害剤などの阻害剤が挙げられるが、これに限定しない)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040およびPD−098059)、およびmTORの阻害剤(例えば、Wyeth CCI−779およびAriad AP23573)が挙げられる。このような薬剤には、小分子阻害剤化合物および抗体拮抗薬も挙げられる。
【0117】
「アポトーシス誘発剤」には、TNF受容体ファミリーのメンバー(TRAIL受容体を含む。)のアクチベータが挙げられる。
【0118】
本発明は、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの併用も包含する。本明細書の目的として、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞またはミクロソームアッセイにより評価されるCOX−1についてのIC50に対するCOX−2についてのIC50の比率により判断したとき、少なくとも100倍、COX−1よりCOX−2を阻害する特異性を有するものと定義する。このような化合物には、これに限定するものではないが、米国特許第5474995号、米国特許第5861419号、米国特許第6001843号、米国特許第6020343号、米国特許第5409944号、米国特許第5436265号、米国特許第5536752号、米国特許第5550142号、米国特許第5604260号、米国特許第5698584号、米国特許第5710140号、WO94/15932、米国特許第5344991号、米国特許第5134142号、米国特許第5380738号、米国特許第5393790号、米国特許第5466823号、米国特許第5633272号および米国特許第5932598号に開示されているものが挙げられる。これらはすべて本明細書に援用される。
【0119】
本発明の治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;および5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン:またはこれらの薬学的に許容される塩である。
【0120】
特異的COX−2阻害剤として記載されており、したがって本発明に有用である化合物には、これに限定するものではないが、パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)およびBEXTRA(登録商標)、またはこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0121】
血管形成抑制剤の他の例には、これに限定するものではないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル]−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、および3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられる。
【0122】
上記で用いたような「インテグリン遮断薬」とはαvβ3インテグリンへの生理的リガンドの結合に選択的に拮抗する、前記結合を選択的に抑制するかまたは妨げる化合物、αvβ5インテグリンへの生理的リガンドの結合に選択的に拮抗する、前記結合を選択的に抑制するかまたは妨げる化合物、αvβ3インテグリンとαvβ5インテグリン両方への生理的リガンドの結合に拮抗する、前記結合を抑制するかまたは妨げる化合物、および毛細血管内皮細胞で発現した特定のインテグリン(複数のインテグリン)の活性に拮抗する、前記活性を抑制するかまたは妨げる化合物を指す。この用語は、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンの拮抗薬も指す。この用語は、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンのどのような組合せの拮抗薬も指す。
【0123】
チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの具体的な例には、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、スルホン酸4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタン、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミンおよびEMD121974が挙げられる。
【0124】
抗癌化合物以外の化合物との併用も本方法に包含される。例えば、本特許請求化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)作動薬およびPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)作動薬との併用は、ある種の悪性疾患の治療に有用である。PPAR−γおよびPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびδである。内皮細胞におけるPPAR−γの発現および血管形成への関与は、文献で報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998年;31:909〜913頁;J.Biol.Chem.1999年;274:9116〜9121頁;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000年;41:2309〜2317頁)。さらに最近では、PPAR−γ作動薬がインビトロでVEGFに対する血管形成性応答を阻害することが証明された。マウスでは、マレイン酸トログリタゾンとマレイン酸ロシグリタゾン両方が、網膜新生血管形成の発現を阻害する(Arch.Ophthamol.2001年;119:709〜717頁)。PPAR−γ作動薬およびPPAR−γ/α作動薬の例には、これに限定するものではないが、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなど)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(米国特許出願第09/782856号に開示されているもの)、および2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(米国特許出願第60/235708号および同第60/244697号に開示されているもの)が挙げられる。
【0125】
本発明の別の実施形態は、本開示の化合物と(癌治療のためのガンシクロビルを含むヌクレオシド類似体などの)抗ウイルス剤との併用である。WO98/04290参照。
【0126】
本発明の別の実施形態は、癌を治療するための本開示の化合物と遺伝子療法との併用である。癌の治療に対する遺伝学的戦略の概要については、Hallら(Am J Hum Genet 61:785〜789頁、1997年)およびKufeら(Cancer Medicine、第5版、876〜889頁、BC Decker,Hamilton、2000年)を参照のこと。遺伝子療法は、いずれの腫瘍抑制遺伝子を送達するためにも使用することができる。このような遺伝子の例には、これに限定するものではないが、組換えウイルス媒介遺伝子伝達により送達することができる、p53(例えば、米国特許第6069134号を参照のこと)、uPA/uPAR拮抗薬(「uPA/uPAR拮抗薬のアデノウイルス媒介送達は、マウスにおける血管形成依存性腫瘍成長および播種を抑制する(Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice)」、Gene Therapy、1998年8月;5(8):1105〜1113頁)、およびインターフェロンガンマ(J Immunol、2000:164:217〜222頁)が挙げられる。
【0127】
本発明の化合物は、固有の多剤耐性(MDR)、特に、高レベルのトランスポータータンパク質の発現を伴うMDRの阻害剤と併用して投与することもできる。このようなMDR阻害剤には、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853およびPSC833(バルスポダール)などのp−糖蛋白(P−gp)が挙げられる。
【0128】
本発明の化合物は、本発明の化合物の単独での使用または放射線療法との併用の結果として生じ得る急性、遅発性、晩期および先行の嘔吐を含む悪心または嘔吐を治療するために制吐薬と併用することができる。嘔吐の予防または治療のために、本発明の化合物は、他の制吐薬、特に、ニューロキニン−1受容体拮抗薬;オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロンおよびザチセトロンなどの5HT3受容体拮抗薬;バクロフェンなどのGABAB受容体作動薬;Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecorten、または米国特許第2789118号、第2990401号、第3048581号、第3126375号、第3929768号、第3996359号、第3928326号および第3749712号に開示されているような他のものなどのコルチコステロイド;フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン)、メトクロプラミドまたはドロナビノールなどの抗ドーパミン作動薬と併用することができる。一実施形態では、ニューロキニン−1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬およびコルチコステロイドから選択される制吐薬が、本化合物の投与の結果生じ得る嘔吐の治療または予防のために、アジュバントとして投与される。
【0129】
本発明の化合物と併用されるニューロキニン−1受容体拮抗薬は、例えば、米国特許第5162339号、第5232929号、第5242930号、第5373003号、第5387595号、第5459270号、第5494926号、第5496833号、第5637699号、第5719147号;欧州特許第0360390号、第0394989号、第0428434号、第0429366号、第0430771号、第0436334号、第0443132号、第0482539号、第0498069号、第0499313号、第0512901号、第0512902号、第0514273号、第0514274号、第0514275号、第0514276号、第0515681号、第0517589号、第0520555号、第0522808号、第0528495号、第0532456号、第0533280号、第0536817号、第0545478号、第0558156号、第0577394号、第0585913号、第0590152号、第0599538号、第0610793号、第0634402号、第0686629号、第0693489号、第0694535号、第0699655号、第0699674号、第0707006号、第0708101号、第0709375号、第0709376号、第0714891号、第0723959号、第0733632号および第0776893号;PCT国際公開公報WO90/05525、WO90/05729、WO91/09844、WO91/18899、WO92/01688、WO92/06079、WO92/12151、WO92/15585、WO92/17449、WO92/20661、WO92/20676、WO92/21677、WO92/22569、WO93/00330、WO93/00331、WO93/01159、WO93/01165、WO93/01169、WO93/01170、WO93/06099、WO93/09116、WO93/10073、WO93/14084、WO93/14113、WO93/18023、WO93/19064、WO93/21155、WO93/21181、WO93/23380、WO93/24465、WO94/00440、WO94/01402、WO94/02461、WO94/02595、WO94/03429、WO94/03445、WO94/04494、WO94/04496、WO94/05625、WO94/07843、WO94/08997、WO94/10165、WO94/10167、WO94/10168、WO94/10170、WO94/11368、WO94/13639、WO94/13663、WO94/14767、WO94/15903、WO94/19320、WO94/19323、WO94/20500、WO94/26735、WO94/26740、WO94/29309、WO95/02595、WO95/04040、WO95/04042、WO95/06645、WO95/07886、WO95/07908、WO95/08549、WO95/11880、WO95/14017、WO95/15311、WO95/16679、WO95/17382、WO95/18124、WO95/18129、WO95/19344、WO95/20575、WO95/21819、WO95/22525、WO95/23798、WO95/26338、WO95/28418、WO95/30674、WO95/30687、WO95/33744、WO96/05181、WO96/05193、WO96/05203、WO96/06094、WO96/07649、WO96/10562、WO96/16939、WO96/18643、WO96/20197、WO96/21661、WO96/29304、WO96/29317、WO96/29326、WO96/29328、WO96/31214、WO96/32385、WO96/37489、WO97/01553、WO97/01554、WO97/03066、WO97/08144、WO97/14671、WO97/17362、WO97/18206、WO97/19084、WO97/19942およびWO97/21702;および英国特許第2266529号、第2268931号、2269170号、第2269590号、第2271774号、第2292144号、第2293168号、第2293169号、および第2302689号に十分に記載されている。このような化合物の調製は上記特許および公報に十分に記載されている。これらの特許および公報は本明細書に援用される。
【0130】
一実施形態では、本発明の化合物と併用するためのニューロキニン−1受容体拮抗薬は、米国特許第5719147号に記載されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンまたはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0131】
本発明の化合物は、貧血の治療に有用な薬剤と共に投与することもできる。このような貧血治療薬は、例えば、赤血球生産受容体持続刺激薬(エポエチンアルファなど)である。
【0132】
本発明の化合物は、好中球減少症の治療に有用な薬剤と共に投与することもできる。こうした好中球減少症治療薬は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生および機能を調節する造血細胞成長因子である。G−CSFの例には、フィルグラスチムがある。
【0133】
本発明の化合物は、レバミソール、イソプリノシンおよびZadaxinなどの免疫強化薬と共に投与することもできる。
【0134】
本発明の化合物は、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホン酸塩、ビスホスホン酸およびジホスホン酸を含むことを理解されたい)と併用して、骨癌を含む癌の治療または予防にも有用であり得る。ビスホスホネートの例には、これに限定するものではないが、エチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネートまたはシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ノミドロネート、ネリドロネート、ピリドロネートおよびチルドロネートが挙げられ、これらのあらゆる薬学的に許容される塩、誘導体、水和物および混合物を含む。
【0135】
したがって、本発明の範囲は、エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成抑制剤、PPAR−γ作動薬、PPAR−δ作動薬、抗ウイルス剤、固有多剤耐性の抑制剤、制吐薬、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫強化薬、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘導剤およびビスホスホネートから選択される第二化合物と本特許請求化合物との併用を包含する。
【0136】
本発明の化合物に関して、用語「投与」およびその変形例(例えば、化合物を「投与すること」)は、この必要がある動物の系に本化合物または本化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物またはそのプロドラッグを1つまたは複数の他の活性薬剤(例えば、細胞毒性剤等)と併用して与えるとき、「投与」およびその変形例は、各々本化合物またはそのプロドラッグおよび他の薬剤の同時および逐次的導入を包含するものと理解されたい。
【0137】
本明細書で用いる場合「組成物」は、指定された成分を指定された量で含む製品の他、指定された成分を指定された量で組み合わせることによって直接的または間接的に得られるあらゆる製品を包含することを意図する。
【0138】
本明細書で用いる「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床家によって研究される、組織、系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を惹起する活性化合物または製剤の量を意味する。
【0139】
「癌を治療すること」または「癌の治療」という用語は、癌性状態に罹患している哺乳動物への投与を指し、癌性細胞を殺すことによりこの癌性状態を軽減する作用を指すが、結果的に癌の成長および/または転移を阻害する作用も指す。
【0140】
一実施形態では、前記第二化合物として使用される血管形成抑制剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来成長因子の阻害剤、線維芽細胞由来成長因子の阻害剤、血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、またはVEGFに対する抗体から選択される。一実施形態では、前記エストロゲン受容体モジュレータは、タモキシフェンまたはラロキシフェンである。
【0141】
放射線療法と併用で、および/またはエストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成抑制剤、PPAR−γ作動薬、PPAR−δ作動薬、抗ウイルス剤、固有多剤耐性の抑制剤、制吐薬、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫強化薬、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘導剤およびビスホスホネートから選択される化合物と併用で、式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む癌の治療方法も、本特許請求の範囲に包含される。
【0142】
また、本発明のさらに別の実施形態は、式Iの化合物の治療有効量をパクリタキセルまたはトラスツズマブと併用で投与することを含む癌の治療方法である。
【0143】
本発明は、式Iの化合物の治療有効量をCOX−2阻害剤と併用で投与することを含む癌の治療または予防方法をさらに包含する。
【0144】
本発明は、式Iの化合物の治療有効量と、エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤/細胞増殖抑制剤、増殖抑制剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成抑制剤、PPAR−γ作動薬、PPAR−δ作動薬、抗ウイルス剤、細胞増殖および生存シグナリングの阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、アポトーシス誘導剤およびビスホスホネートから選択される化合物とを含む、癌の治療または予防に有用な医薬組成物も包含する。
【0145】
本発明のこれらおよび他の局面は、本明細書に含まれた教示から明らかである。
【0146】
特定されているすべての特許、公報および係属出願を本願に援用する。
【0147】
以下の化学の説明および実施例において用いられている略記は次の通りである:AcOH(酢酸);DCE(ジクロロメタン);DIBAL−H(水素化ジイソブチルアルミニウム);DIEA(ジイソプロピルエチルアミン);DME(エチレングリコールジメチルエーテル);DMAP(4,4−ジメチルアミノピリジン);DMF(ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオトレイトール);EDC(エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド);EtOAc(酢酸エチル);FACS(蛍光活性化細胞選別装置);FITC(フルオレセインイソチオシアネート);IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド);LDA(リチウムジイソプロピルアミド);LHMDS(リチウムヘキサメチルジシリルアジド);mCPBA(メタクロロ過安息香酸);MS(質量分析計);NaHMDS(ビストリメチルシリルアミドナトリウム);NMR(核磁気共鳴);PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオライド);PyBop(1H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ);(トリピロリジン−1−イル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート);SiO(シリカゲル);TBAI(ヨウ化テトラ−n−アンモニウム);TEA(トリエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);TMSCN(トリメチルシリルシアニド);およびTsCl(塩化p−トルエンスルホニル)。
【実施例1】
【0148】
化合物番号1を参照。
【0149】
【化18】

【0150】
工程1:
【0151】
【化19】

【0152】
CHCl(10mL)中のパラアミノ安息香酸メチルエステル(0.72g、4.75ミリモル)の溶液に、N−メチルモルホリン(0.079mL、7.12ミリモル)を0℃で添加した。15分間攪拌後、塩化p−ニトロフェニルスルホニル(0.96g、4.33ミリモル)を0℃で添加し、その温度で1時間攪拌し、次いで、室温で一晩攪拌した。この反応物をCHClで希釈し、1NのHClおよび水で洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒除去後、得られた粗生成物を、40%EtOAc/石油エーテルを溶離剤として用いたシリカクロマトグラフィーによって精製して所望のスルホンアミドを得た。MS(ES)C1412S 計算値:336、実測値:337(M+H)。
【0153】
工程2:
【0154】
【化20】

【0155】
MeOH(2mL)中の工程1からのエステル(0.08g、0.24ミリモル)の溶液に、2NのNaOH(2mL)を添加した。室温にて3時間攪拌後、溶媒を減圧除去した。得られた残渣を水(5mL)に溶解し、1Nの冷たいHClで酸化させた。形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、空気乾燥させて所望のカルボン酸を得た。
【0156】
H NMR(400MHz,d6−DMSO)δ8.34(d,2H,J=7.0Hz)、8.06(d,2H,J=7.0Hz)、7.87(d,2H,J=7.0Hz)、7.2(d,2H,J=7.0Hz)、4.85(1H,広幅s)。MS(ES)C1310S 計算値:323、実測値:324(M+H)。
【0157】
工程3:
【0158】
【化21】

【0159】
工程2からのカルボン酸(0.050g、0.155ミリモル)およびO−t−ブチルジメチルシリル(0.057mL、0.47ミリモル)の混合物をCHCl(1.5mL)に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、EDC(0.0.033g、0.172ミリモル)を添加し、該混合物を室温にて3時間攪拌した。この反応混合物をCHClで希釈し、2NのHClを用いて室温にて1時間攪拌し、水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧濃縮した。得られた残渣をTHF(1mL)に溶解し、AcOHで一晩処理した。得られた粗生成物をCHCl/MeOH(60:1)の勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、表題のヒドロキサム酸を得た。
【0160】
H NMR(400MHz,d6−DMSO)δ8.36(d,2H,J=7.0Hz)、8.16(d,2H,J=7.0Hz)、7.94(d,2H,J=7.0Hz)、7.32(d,2H,J=7.0Hz)。MS(ES)C1311S 計算値:337、実測値:338(M+H)。
【実施例2】
【0161】
化合物番号71を参照。
【0162】
【化22】

【0163】
工程1:
【0164】
【化23】

【0165】
DMF(10mL)中の実施例1の工程1からのエステル化合物(0.21g、0.62ミリモル)の溶液に、CSCO(0.41g、2.5ミリモル)を室温で添加した。30分間攪拌後、MEI(0.16ml、2.66ミリモル)を添加し、その温度で一晩攪拌を続けた。この反応物を水で希釈し、CHClで抽出した。この有機相を水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒除去後に、得られた粗生成物を33%EtOAc/石油エーテルを溶離剤として用いたシリカクロマトグラフィーによって精製して所望のスルホンアミドを得た。
【0166】
H NMR(400MHz,CDOD)δ8.36(d,2H,J=7.0Hz)、8.0(d,2H,J=7.0Hz)、7.8(d,2H,J=7.0Hz)、7.24(d,2H,J=7.0Hz)、3.92(3H,s)。MS(ES)C1514S 計算値:350、実測値:351(M+H)。
【0167】
工程2:
【0168】
【化24】

【0169】
MeOH(5mL)およびTHF(10mL)の混合物中の上記工程1からのエステル(0.165g、0.47ミリモル)の溶液に、2NのNaOH(5mL)を添加した。該混合物を1時間還流し、次いで、溶媒を減圧除去した。得られた残渣を水(5mL)に溶解し、1Nの冷たいHClで酸化させた。形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、空気乾燥させて所望のカルボン酸を得た。
【0170】
MS(ES)C1412S 計算値:336、実測値:337(M+H)。
【0171】
工程3:
【0172】
【化25】

【0173】
CHCl(1.5mL)中の上記工程2からのカルボン酸(0.033g、0.098ミリモル)の溶液に、O−t−ブチルヒドロキシアミン(0.050g)を0℃で添加し、次いで、EDC(0.0.028g、0.146ミリモル)を添加した。該混合物を室温で2時間攪拌し、次いでCHClで希釈し、水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧濃縮した。得られた残渣をTFAで室温にて一晩処理した。得られた粗生成物をCHCl/MeOH(60:1)の勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、表題のヒドロキサム酸を得た。
【0174】
H NMR(400MHz,d6−DMSO)δ8.36(d,2H,J=7.0Hz)、8.16(d,2H,J=7.0Hz)、7.94(d,2H,J=7.0Hz)、7.32(d,2H,J=7.0Hz)、3.7(3H,s)。MS(ES)C1413S 計算値:351、実測値:352(M+H)。
【0175】
以下の表1および2に記載の本発明の化合物は、それぞれ実施例1および2に記載したものと同様の方法を用いて調製した。
【0176】
【表1】





【0177】
【表2】





【実施例3】
【0178】
化合物番号141を参照。
【0179】
【化26】

【0180】
工程1:
【0181】
【化27】

【0182】
CHCl(40mL)中の4−アミノ安息香酸メチルエステル(1.26g、7ミリモル)に、ピリジン(1.4mL)、DMAP(0.1g)および4−ニトロベンゾイルクロライド(1.33g、7ミリモル)を0℃で順番に添加した。該混合物を室温にて一晩攪拌した。形成された沈殿物を濾過し、水およびEtOAcで洗浄し、吸引乾燥させて表題の生成物を得た。この生成物の付加的な0.6gを濾物から単離した。MS(ES)C1512 計算値:300、実測値:301(M+H)。
【0183】
工程2:
【0184】
【化28】

【0185】
MeOH(6mL)中の工程1からのエステル(0.3g、1ミリモル)の溶液に、2NのNaOH(2mL)を添加した。該混合物を1時間還流し、次いで溶媒を減圧除去した。得られた残渣を水(5mL)に溶解し、1Nの冷たいHClで酸化させた。形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、空気乾燥させて所望のカルボン酸(0.2g)を得た。
【0186】
MS(ES)C1410 計算値:286、実測値:287(M+H)。
【0187】
工程3:
【0188】
【化29】

【0189】
CHCl(3mL)およびDMF(0.5mL)の混合物中の上記工程2からのカルボン酸(0.1g、0.35ミリモル)の溶液に、O−t−ブチルジメチルシリルヒドロキシアミン(0.078g、0.53ミリモル)を0℃で添加し、次いで、EDC(0.11g、0.575ミリモル)を添加した。該混合物を室温にて一晩攪拌した。この反応物をCHClで希釈し、水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧濃縮した。得られた残渣をTHF(2mL)、AcOH(1mL)および水(1mL)に溶解し、室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧除去し、得られた粗生成物をCHCl/MeOH(60:1)の勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、表題のヒドロキサム酸を得た。
【0190】
MS(ES)C1411 計算値:301、実測値:302(M+H)。
【0191】
以下の表3および4に記載の本発明の化合物は、それぞれ実施例3および4に記載したものと同様の方法を用いて調製した。
【0192】
【表3】

【0193】
【表4】

【0194】
以下の化合物のリストは、TFA塩として作製した。化合物番号2、8〜9、24、28、31〜34、36、41〜42、46、48〜49、51、53〜54、57、72、78〜79、94、98、101〜104、106、111〜112、116、118〜119、121〜124、127、142、146〜147、152および156〜157。
【0195】
アッセイ
実施例に記載し、表1〜4に示した本発明の化合物をアッセイで試験したところ、HDAC阻害活性を有することが認められた(≦30μMのIC50)。その他のアッセイは文献において知られており、当業者であれば容易に実行することができる。HDAC阻害活性を決定するのに有用なアッセイの例およびプロトコルを以下に示す。
【0196】
HDACアッセイ1
2.5μlの化合物またはDMSO(20X)を96ウェルマイクロプレート(Packard Optiplate)に調製した。各ウェルにMix Aを37.5μl添加し、振盪させながら室温にて30分間インキュベートし、次いで、Mix Bを10μl添加し、振盪させながら室温にて3.5時間インキュベートし、次いで、STOP Mix Bを10μl添加し、室温で30分間インキュベートし、次いで、FLUOSTAR(ex355nM em460/40nM)で測定した。
【0197】
最終的なアッセイ条件は以下を含む:Hepes(pH7.4、50ミリモル)、グリセロール(10%)、BSA(0.1mg/ml)、Triton X100(0.01%)、蛍光ペプチドIRBM91(BoC−Ala−Ala−Lys[ε−Ac]−AMC;20μM)、細胞核(20μg/ml)からのHeLa S3抽出物またはHDAC1(1nM)、Lysyl End Peptidase(LEP;0.25mAu/ml)またはLysyl Cエンドプロテアーゼ(LysC;4.8mU/ml)およびトリコスタチンA(1μM)。
【0198】
最終アッセイ容量は50μlとする。
【0199】
Mix Aは以下を含む:緩衝液A 1X(37.5μl)、細胞核(20μg/ml;50μl/ウェルを考慮)からのHeLa−S3抽出物または HDAC1(1nM;50μl/ウェルを考慮)。
【0200】
Mix Bは以下を含む:緩衝液A 1X(10μl)およびPep IRBM91(20μM;50μl/ウェルを考慮)。
【0201】
STOP Mixは以下を含む:緩衝液A 1X(10μl)、LEPまたはLys C(0.25mAu/ml)または4.8mU/ml;最終容量60μlを考慮)およびトリコスタチンA(1μM;最終容量60μlを考慮)。
【0202】
緩衝液A 1Xは以下を含む:Hepes(pH7.4;50ミリモル)、グリセロール(10%)、BSA(0.1mg/ml)およびTriton X100(0.01%)。
【0203】
HDACアッセイ2
2.5μlの化合物またはDMSO(20X)を96ウェルマイクロプレート(Packard Optiplate)に調製した。各ウェルにMix Aを37.5μL添加し、次いで、Mix B10μlを添加し、振盪させながら室温にて3.5時間インキュベートし、次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ25μl(緩衝液A 1X中)を添加し、最終的にPackard TOP COUNTで計測した。
【0204】
最終的なアッセイ条件は以下を含む:Hepes(pH7.4、50ミリモル)、グリセロール(10%)、BSA(0.1mg/ml)、Triton X100(0.01%)、3Hビオチン−PEP439(Biotin−G−A−[アセチル−3H]K−R−H−R−[アセチル−3H]K−V−NH、SPA−ストレプトアビジンビーズ(2mg/ml)およびHeLa S3抽出物(40μg/ml)。
【0205】
最終アッセイ容量は50μlとする。
【0206】
Mix Aは以下を含む:緩衝液A 2X(25μl)、HeLa−S3抽出物(40μg/ml)およびHO(37.5μlに)。
【0207】
Mix Bは以下を含む:緩衝液A 2X(5μl)、Pep439(50nM;最終容量50μlを考慮)およびHO(10μlに)。
【0208】
緩衝液A 2Xは以下を含む:Hepes(pH7.4;100ミリモル)、グリセロール(20%)、BSA(0.2mg/ml)およびTriton X100(0.02%)。
【0209】
HELA細胞(接着細胞または懸濁細胞)からの細胞核抽出のためのプロトコル
HeLa S3細胞(接着細胞または懸濁細胞)からの細胞核抽出プロトコルについては、Nareら、1999年、Anal.Biochem.、267:390〜396頁を参照されたい。
【0210】
HeLa S3接着細胞(0.5〜1×10個)の細胞核調製は次の通りである:1×PBSで細胞を2回洗浄し、1×PBSに細胞を掻き落とし、プレートを1×PBSで洗浄し、4℃で800×gで10分間、細胞をプールおよび遠心し、細胞ペレットを1×PBSで洗浄し(細胞を計数)、4℃で800×gで10分間細胞を遠心し、細胞ペレットを液体窒素で凍結して、−80℃で保管する。
【0211】
HeLa S3懸濁細胞(0.5〜1×10個)の細胞核調製は次の通りである:4℃で800×gで10分間、遠心分離することによって細胞を収集し、1×PBSで細胞ペレットを洗浄し、4℃で800×gで10分間、細胞を遠心し、洗浄工程を2回繰り返し(細胞を計数)、細胞ペレットを液体窒素で凍結して、−80℃で保管する。
【0212】
溶解緩衝液中に細胞(5ml/1×10個;緩衝液は0.25Mスクロース、0.45%NP40、10mMのトリス−HCl(7.5)、10mMのNaCl、5mMのMgCl、0.1mMのEGTA、0.5mMのPMSF、COMPLETEプロテアーゼ阻害剤ミックスを含む。)を再懸濁し、10秒間ボルテックスし、15分間氷上に置き、クッションを介して遠心し(溶解物25ml/5mlクッション;クッションは30%スクロース、10mMトリス−HCl(7.5)、10mMのNaCl、3mMのMgClを含む。)、4℃で1300×gで10分間遠心し、スーパー/クッションを除去し、上記のように溶解緩衝液に再懸濁し、上記のようにクッションを介して再遠心し、スーパー/クッションを除去する。
【0213】
核抽出物については、核抽出緩衝液(13.5ml/5ml核ペレット;核抽出緩衝液は50mM Hepes pH7.4を含む(HDACアッセイ2に使用する場合、0.5mM PMSFおよびCOMPLETEプロテアーゼ阻害剤ミックスも含む。)中に核ペレットを再懸濁し、氷上で超音波懸濁し(1分、4〜5で出力制御)、氷上に30分放置し、4℃で100,000×gで1時間遠心分離し、超音波懸濁/氷上放置/遠心分離工程をさらに2回繰り返し、3つの上清をプールし、50mMのHepes、pH7.4/10%グリセロール中で透析し、液体窒素中で適したアリコートを急速凍結し、−80℃で保管する。
【0214】
Hela細胞において発現したFlag付きHDAC1のための抽出および精製プロトコル
pCDNA3−HDAC1−FLAGに一過性にトランスフェクトしたHela細胞を、DMEM(抗生物質およびグルタミンを補給した10%ウシ胎児血清)中の10cm培養皿上で80%集密まで成長させた。細胞を10mlの冷たいPBSで洗浄し、PBSの2mlに掻き取った。細胞を4℃で800×gで5分間遠心分離し、30mlのPBSで洗浄し、10mlのPBS中に再懸濁し、計数し、再遠心分離し、−80℃で凍結した。
【0215】
この凍結細胞ペレットをCOMPLETEプロテアーゼ阻害剤を含んだ低張溶解緩衝液(LB:20mM Hepes pH7.9、0.25mM EDTA、10%グリセロール)の1ml中で再懸濁し、氷上で15分間インキュベートし、次いで2mlのDounceBホモジナイザー(25ストローク)上でホモジネートする。150mM KClおよび0.5%NP−40をこのホモジネートに添加し、30秒間に2回この溶液を超音波分離し(出力5/6、デューティサイクル90)、4℃で1時間インキュベートした。12000rpmおよび4℃にて30分間遠心分離後、上清(可溶性抽出物)を収集し、BIORADアッセイを用いてタンパク濃度を決定する。
【0216】
抗−FLAG M2親和性樹脂(Sigma社)をTBSで3回、LBで2回洗浄した。タンパク質(Flagged−HDAC1の2〜3ug)のLB洗浄した樹脂/mgの10μlを可溶性抽出物(1mL)に添加し、軽く混ぜながら4℃で一晩インキュベートする。次いで、この樹脂を遠心分離によって収集し、LBで1回、LB+0.1%NP40で2回、溶出緩衝液(50mM Hepes pH7.4、5%グリセロール、100mM KCl、0.01%TritonX−100)で2回洗浄する。
【0217】
(樹脂に対して)10倍過剰の100μg/mlの3X FLAGペプチド(SIGMA社)を含んだ溶出緩衝液を添加することにより、このアフィニティー精製したHDACを樹脂から溶離する。精製HDACの濃度はウェスタンブロット法によって決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、aは0または1であり;bは0または1であり;mは0、1または2であり;nは0、1、2、3、4または5であり;pは0、1、2または3であり;
【化2】

はシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたは
【化3】

であり;
XはC=OまたはS(O)であり;
はHおよび(C〜C)アルキルから選択され;
はオキソ、OH、(C=O)(C〜C10)アルケニル、(C=O)(C〜C10)アルキニル、NO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C=O)(C〜C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)m−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択され;
はHおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
はオキソ、NO、N(R、OH、CN、ハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択される。)
による化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
【化4】

が、フェニル、ヘテロシクリルまたは
【化5】

であり;
pが0または1であり;
がCHであり;
すべての置換基および可変因子が請求項1に定義した通りである式Iの、請求項1に記載の化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
がNO、(C=O)(C〜C)アルキル、CN、(C10)シクロアルキル、ハロゲン、(C=O)−N(R、CF、OH、NH−S(O)−R、(C=O)−ヘテロシクリル、(C=O)−アリール、S(O)−R、NH(C=O)R、N=N−アリール−N(R、(C〜C)アルキル−アリールおよびヘテロシクリル(前記アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルは1〜3個のRで場合によって置換されている。)から独立して選択され;
がHおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
がハロゲン、CFおよび(C〜C)アルキルから独立して選択され;
すべての置換基および可変因子が請求項2に定義した通りである式Iの、請求項2に記載の化合物、またはこの薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
医薬担体および該担体中に分散された請求項1に記載の化合物の治療有効量を含む医薬組成物。
【請求項5】
癌の治療を必要とする哺乳動物における癌を治療または予防するのに有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
神経変性疾患の治療を必要とする哺乳動物における神経変性疾患の治療または予防に有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項7】
統合失調症の治療を必要とする哺乳動物における統合失調症の治療または予防に有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項8】
脳卒中の治療を必要とする哺乳動物における脳卒中の治療または予防に有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項9】
再狭窄の治療を必要とする哺乳動物における再狭窄の治療または予防に有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項10】
原虫感染症の治療を必要とする哺乳動物における原虫感染症の治療または予防に有用な薬剤を調製するための請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−505969(P2008−505969A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521530(P2007−521530)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024512
【国際公開番号】WO2006/017214
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】