ブートストラップ回路
【課題】飛び込みの影響を軽減できるブートストラップ回路を提供する。
【解決手段】同一導電型の第1乃至第4TRから構成され、第1TRにおいて、一方のS/D領域は第2TRの一方のS/D領域に接続され、他方のS/D領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、ゲート電極は、第3TRの一方のS/D領域に接続され、第2TRにおいて、他方のS/D領域は電圧供給線に接続され、第3TRにおいて、他方のS/D領域には入力信号が印加され、ゲート電極には他方のクロックが印加され、第1TRのゲート電極と第3TRの一方のS/D領域とは、第3TRがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成し、第4TRにおいて、一方のS/D領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2TRのゲート電極とが接続されており、他方のS/D領域は入力信号が印加され、ゲート電極には他方のクロックが印加される。
【解決手段】同一導電型の第1乃至第4TRから構成され、第1TRにおいて、一方のS/D領域は第2TRの一方のS/D領域に接続され、他方のS/D領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、ゲート電極は、第3TRの一方のS/D領域に接続され、第2TRにおいて、他方のS/D領域は電圧供給線に接続され、第3TRにおいて、他方のS/D領域には入力信号が印加され、ゲート電極には他方のクロックが印加され、第1TRのゲート電極と第3TRの一方のS/D領域とは、第3TRがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成し、第4TRにおいて、一方のS/D領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2TRのゲート電極とが接続されており、他方のS/D領域は入力信号が印加され、ゲート電極には他方のクロックが印加される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレジスタ回路や出力バッファ回路等に用いられるブートストラップ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置や半導体メモリ装置等における走査回路やマトリクスアレイの駆動回路等として、シフトレジスタ回路が広く用いられている。
【0003】
シフトレジスタ回路の出力段には、一般にプッシュプル型の出力回路が用いられる。しかしながら、同一導電型のトランジスタのみを用いてプッシュプル型の出力回路を構成すると、出力電圧の振幅が充分に確保できない。例えばnチャネル型トランジスタのみを用いてプッシュプル型の出力回路を構成した場合、高電位側のトランジスタにあっては、出力電圧の上昇に伴ってゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsが低下する。トランジスタの閾値電圧をVthと表せば、Vgs<Vthとなるとトランジスタはオフ状態となる。従って、出力電圧をVgs−Vthまでしか取り出すことができない。この問題を解決するために、ブートストラップ動作を利用した出力回路が提案されている。
【0004】
ブートストラップ動作を利用したシフトレジスタ回路として、特開平10−112645号公報(特許文献1)には、1段を基本的に3つのトランジスタから構成した図25に示す回路が開示されている。この回路は、例えばnチャネル型のトランジスタTr1,Tr2,Tr3によって1段が構成されている。
【0005】
図25に示すシフトレジスタ回路について説明する。図26の(A)にシフトレジスタ回路の1段目の回路を示し、図26の(B)にシフトレジスタ回路の1段目の模式的なタイミングチャートを示す。シフトレジスタ回路の1段目に着目すると、第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2とがプッシュプル出力回路を構成している。第1トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン領域と第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域とが接続され、出力部OUT1を構成する。
【0006】
第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加される。第2トランジスタTr2の他方のソース/ドレイン領域には、電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される。第1トランジスタTr1のゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、ノード部P1を構成する。第2トランジスタTr2のゲート電極と第3トランジスタTr3のゲート電極には、他方のクロック(ここではCK2)が印加される。第3トランジスタTr3の他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加される。
【0007】
尚、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間、または、第1トランジスタTr1のゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間、あるいはこれら両方にブートストラップ容量としての容量部が接続される場合もある。図25に示す回路にあっては、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Caが接続されている。容量部Caは、例えば、絶縁層を挟んだ導電層から構成することもできるし、所謂MOS容量部として構成することもできる。
【0008】
図26の(B)に示すタイミングチャートを参照して、シフトレジスタ回路の1段目の動作を説明する。尚、2相のクロックCK1,CK2、及び、入力信号IN1のハイレベルは電圧Vdd(例えば5ボルト)、ローレベルは上述した電圧Vss(0ボルト)とする。また、第3トランジスタTr3の閾値電圧をVth3と表す。
【0009】
[期間−T1]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。第1トランジスタTr1のゲート電極にはオン状態の第3トランジスタTr3を介してローレベルの入力信号IN1が印加される。従って、ノード部P1の電位はローレベルであり、第1トランジスタTr1はオフ状態である。一方、第2トランジスタTr2はオン状態である。これにより、出力部OUT1は、オン状態の第2トランジスタTr2を介して電圧Vssが印加された状態であり、ローレベルである。
【0010】
[期間−T2]
この期間においては、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。第3トランジスタTr3がオフ状態となるので、ノード部P1は、[期間−T1]における電位を保った状態(即ち、ローレベルを保った状態)で、浮遊状態となる。これにより、第1トランジスタTr1はオフ状態を保つ。一方、第2トランジスタTr2はオン状態からオフ状態となる。これにより、出力部OUT1は図示せぬ容量負荷に接続された状態で浮遊状態となる。従って、出力部OUT1は、[期間−T1]における電位を保った状態(即ち、ローレベルを保った状態)で、浮遊状態となる。
【0011】
[期間−T3]
この期間においては、入力信号IN1はハイレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。第3トランジスタTr3はオン状態となり、ノード部P1にはハイレベル状態の入力信号IN1が印加されるので、ノード部P1の電位は上昇する。しかしながら、ノード部P1の電位が(Vdd−Vth3)に達すると、第3トランジスタTr3はオフ状態となる。ノード部P1は、電位(Vdd−Vth3)を保った状態で浮遊状態となる。第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2とはオン状態にある。第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域には、ローレベル(Vss)状態のクロックCK1が印加されており、第2トランジスタTr2の他方のソース/ドレイン領域には、電圧Vssが印加されている。従って、出力部OUT1は電圧Vssが印加された状態であり、ローレベルである。
【0012】
[期間−T4]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。クロックCK2はローレベルなので、第2トランジスタTr2はオフ状態となり、第3トランジスタTr3はオフ状態を保つ。ノード部P1は浮遊状態にあると共に、第1トランジスタTr1はオン状態にある。従って、クロックCK1がハイレベル状態にあると出力部OUT1の電位は上昇する。このとき、第1トランジスタTr1のゲート容量等を介したブートストラップ動作により、ノード部P1の電位はVdd以上に持ち上げられる。従って、出力部OUT1のハイレベルとしてVddを取り出すことができる。
【0013】
[期間−T5]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。クロックCK2がハイレベルになると第2トランジスタTr2と第3トランジスタTr3がオン状態となる。オン状態の第2トランジスタTr2を介して、電圧Vssが出力部OUT1に印加される。これにより、出力部OUT1はローレベルにリセットされる。また、オン状態の第3トランジスタTr3を介して、ノード部P1にローレベルの入力信号IN1が印加されるので、ノード部P1もローレベルにリセットされる。
【0014】
[期間−T6]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。この期間の動作は、基本的に上述した[期間−T2]と同様の動作である。第3トランジスタTr3がオフ状態となるので、ノード部P1は、ローレベルを保った状態で浮遊状態となる。これにより、第1トランジスタTr1はオフ状態を保つ。一方、第2トランジスタTr2はオン状態からオフ状態となる。これにより、出力部OUT1は、ローレベルを保った状態で浮遊状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−112645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したブートストラップ回路の動作説明においては、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を考慮していない。しかしながら実際には、浮遊状態にあるノード部P1等の電位は、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を受け変動する。そして、回路の動作を高速にすればするほど、パルスの立ち上がり/立ち下がりの速度が速くなるために飛び込みによる影響が強くなり、回路の誤動作を誘因する。
【0017】
従って、本発明の目的は、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を軽減することができる、シフトレジスタ回路や出力バッファ回路等に用いられるブートストラップ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様あるいは第4の態様に係るブートストラップ回路は、同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路に関する。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ノード部と電圧供給線との間に、容量部が接続されていることを特徴とする。容量部がノード部と電圧供給線との間に接続されているので、第3トランジスタがオフ状態にあるときのノード部における電位の変動が抑制され、クロックに起因するノード部の電位変化が抑制される。
【0020】
ここで、本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路にあっては、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(D−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1トランジスタのゲート電極に接続されており、
(D−2)他方のソース/ドレイン領域は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−3)ゲート電極は、所定の第2の電圧が印加される第2電圧供給線に接続されており、
容量部は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と第4トランジスタの他方のソース/ドレイン領域とが接続された部分と、電圧供給線との間に接続されている構成とすることができる。この構成によれば、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部が、第4トランジスタによって分割される。第2の電圧の値を、ブートストラップ動作において第4トランジスタがオフ状態となるように設定することにより、ブートストラップ動作において、容量部はノード部から切り離された状態となる。これにより、ノード部と電圧供給線との間に容量部を接続しても、ブートストラップゲインが低下することはないといった利点を有する。
【0021】
また、上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ノード部と第2トランジスタのゲート電極との間に、容量部が接続されていることを特徴とする。この構成によれば、2相のクロックのノード部への飛び込みによる電位の変動が相互に打ち消される。これにより、ノード部の電位の変動を抑制することができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路にあっては、ブートストラップ回路は、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2トランジスタのゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加される、
ことを特徴とする。所定の動作時において、反転回路の出力によって第2トランジスタのオン状態が維持されることにより、第2トランジスタの他のソース/ドレイン領域から出力部への電圧印加状態が維持される。これにより、ノード部の変動に起因して起こる第1トランジスタのリークによる出力部の電圧変動を低減することができる。ここで、第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と電圧供給線との間に、容量部が接続されている構成とすることができる。容量部は、反転回路の入力側の保持容量として作用するので、反転回路の動作をより安定なものとすることができる。上述した好ましい構成を含む本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部が接続されている構成とすることもできる。
【0023】
また、上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ブートストラップ回路は、更に、同一導電型の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタのゲート電極は、第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタの他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
2相のクロックのうち一方のクロックは、直列に接続された各第4トランジスタを介して、第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に印加される、
ことを特徴とする。ここで、出力部と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、容量部が接続されている構成とすることができる。上述した好ましい構成を含む本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部においてもブートストラップ動作が起こる。換言すれば、第4の態様に係るブートストラップ回路は、ブートストラップ動作が起こる回路部分が複数並列に接続された構成を備えている。この構成によれば、第3トランジスタがオフ状態にあるときのノード部における電位の変動が抑制され、クロックに起因するノード部の電位変化が抑制される。
【0024】
本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、及び、第4の態様に係るブートストラップ回路(以下、これらを総称して、単に、本発明のブートストラップ回路と呼ぶ場合がある)においては、ブートストラップ回路は、nチャネル型のトランジスタから構成されていてもよいし、pチャネル型のトランジスタから構成されていてもよい。トランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)であってもよいし、半導体基板等に形成されたトランジスタであってもよい。トランジスタの構造は特に限定するものではない。以下の説明においては、トランジスタはエンハンスメント型であるとして説明するが、これに限るものではない。デプレッション型のトランジスタが用いられていてもよい。また、トランジスタはシングルゲート型であってもよいし、デュアルゲート型であってもよい。
【0025】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を構成する基板上に、画素電極と画素電極に接続される駆動用トランジスタとを形成し、合わせて基板上にブートストラップ回路を用いた走査回路等を形成することができる。この場合には、ブートストラップ回路は、駆動用トランジスタと同じ導電型のトランジスタから構成することが便宜である。基板上に形成されるトランジスタが同一の導電型であるので、駆動用トランジスタと走査回路を構成するトランジスタとを同じ工程で形成することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示装置等においても同様である。
【0026】
本発明のブートストラップ回路に用いられる容量部は、例えば、絶縁層を挟んだ導電層から構成されていてもよいし、所謂MOS容量部として構成されていてもよい。ブートストラップ回路を構成するトランジスタや容量部あるいは配線等は広く周知の材料や方法により形成することができる。トランジスタや容量部あるいは配線等の構成や形成方法は、ブートストラップ回路を用いる装置の仕様等に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
本発明の第3の態様に用いられる反転回路の構成は、特に限定するものではない。基本的には、反転回路は第3の態様に係るブートストラップ回路を構成する各トランジスタと同一の導電型のトランジスタから構成されていることが好ましい。例えば、特開2005−143068号公報において、単一導電型のトランジスタから構成された反転回路が開示されている。この反転回路を用いることもできる。また、発明者は特願2008−26742号及び特願2008−26743号において種々のインバータ回路(反転回路)を提案したが、これらの反転回路を用いることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のブートストラップ回路にあっては、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を軽減することができる。従って、本発明のブートストラップ回路を用いたシフトレジスタ回路や出力バッファ回路等にあっては、種々の飛び込みによる回路の誤動作が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施例1に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の回路図である。
【図2】図2の(A)は、走査回路を備え、有機エレクトロルミネッセンス素子を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置の概念図である。図2の(B)は、有機EL素子の模式的な回路図を示す。
【図3】図3の(A)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの回路図である。図3の(B)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図4】図4の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例1のブートストラップ回路の回路図である。図4の(B)は、実施例1のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図5】図5の(A)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が進んだ場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(B)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が遅れた場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図6】図6の(A)及び(B)は、遅延要素を介して後段に信号を伝える構成としたブートストラップ回路の回路図である。
【図7】図7の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例2のブートストラップ回路の回路図である。図7の(B)は、実施例2のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図8】図8の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例3のブートストラップ回路の回路図である。図8の(B)は、実施例3のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。
【図9】図9は、走査回路の1段目を構成する実施例4のブートストラップ回路の回路図である。
【図10】図10の(A)は、反転回路の回路図である。図10の(B)は、反転回路の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図11】図11は、図9のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。
【図12】図12の(A)は、インバータ回路(反転回路)10の回路図である。図12の(B)及び(C)は、図12の(A)に示すインバータ回路10の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図13】図13は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。
【図14】図14は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。
【図15】図15は、走査回路の1段目を構成する実施例7のブートストラップ回路の回路図である。
【図16】図16は、実施例7のブートストラップ回路の模式的なタイミングチャートである。
【図17】図17は、第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部と、第4トランジスタTr74A及び第5トランジスタTr75Aから成る回路部とを備えたブートストラップ回路の回路図である。
【図18】図18の(A)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例1において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。図18の(B)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例2において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。
【図19】図19は、実施例1乃至実施例7において説明した構成を適宜組み合わせた構成の一例であるブートストラップ回路である。
【図20】図20の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例1のブートストラップ回路の回路図であり、図1に示す回路の1段目に相当する。図20の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例2のブートストラップ回路の回路図であり、図7の(A)に示す回路に相当する。図20の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例3のブートストラップ回路の回路図であり、図8の(A)に示す回路に相当する。
【図21】図21の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例4のブートストラップ回路の回路図であり、図9に示す回路に相当する。図21の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例5のブートストラップ回路の回路図であり、図13に示す回路に相当する。図21の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例6のブートストラップ回路の回路図であり、図14に示す回路に相当する。
【図22】図22の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図15に示す回路に相当する。同様に、図22の(B)も、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図17に示す回路に相当する。
【図23】図23の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(A)に示す回路に相当する。図23の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(B)に示す回路に相当する。
【図24】図24は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図19に示す回路に相当する。
【図25】図25は、1段を基本的に3つのトランジスタから構成したブートストラップ動作を利用したシフトレジスタ回路の回路図である。
【図26】図26の(A)はシフトレジスタ回路の1段目の回路の回路図である。図26の(B)はシフトレジスタ回路の1段目のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例1は、本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路に関する。図1は、実施例1に係るブートストラップ回路から構成した走査回路101の回路図である。尚、便宜のため、図1においては走査回路101の1段目と2段目のブートストラップ回路を表した。図2の(A)は、この走査回路101を備え、有機エレクトロルミネッセンス素子10(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と呼ぶ場合がある)の概念図である。図2の(B)は、有機EL素子10の模式的な回路図である。
【0032】
図1に示す走査回路101の1段目に注目して、実施例1のブートストラップ回路を説明する。実施例1のブートストラップ回路は、同一導電型(実施例1では後述するようにnチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。
【0033】
実施例1のブートストラップ回路は、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0034】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、ノード部P1と電圧供給線PS1との間に、容量部C11が接続されている。
【0035】
実施例1においては、容量部C11は絶縁層を間に挟んだ導電層から構成されている。尚、背景技術において説明したと同様に、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Caも接続されている。容量部C11と同様に、容量部Caも絶縁層を挟んだ導電層から構成されている。
【0036】
尚、背景技術で説明したと同様に、2相のクロックCK1,CK2、及び、入力信号IN1のハイレベルは電圧Vdd(例えば5ボルト)、ローレベルは上述した電圧Vss(0ボルト)とする。また、第3トランジスタTr3の閾値電圧をVth3と表す。
【0037】
先ず、走査回路101を用いた有機EL表示装置の構成と動作について説明する。図2に概念図を示すように、有機EL表示装置は、
(1)走査回路101、
(2)信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが発光部ELP、及び、発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機EL素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、
(6)電源部100、
を備えている。尚、図2においては、便宜のため3×3個の有機EL素子10を示したが、これは単なる例示に過ぎない。走査回路101、有機EL素子10、走査線SCL、データ線DTL等は、ガラス等から成る図示せぬ基板上に形成されている。
【0038】
発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。信号出力回路102、走査線SCL、データ線DTL、電源部100の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0039】
図2の(B)に示すように、有機EL素子10は、発光部ELPの他、駆動トランジスタTrD、書込みトランジスタTrW、及び、保持容量CHから構成された駆動回路を備えている。尚、発光部ELPの容量を符号CELで表した。
【0040】
駆動トランジスタTrD及び書込みトランジスタTrWは、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。上述した図示せぬ基板上にこの駆動回路は形成されており、基板上の所定の領域にこの駆動回路を覆うように発光部ELPが形成されている。
【0041】
上述した駆動トランジスタTrDや書込みトランジスタTrWと同様に、走査回路101を構成する第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3も、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。これらのトランジスタも、上述した図示せぬ基板上に形成されている。他の実施例において説明する第4トランジスタ等においても同様である。
【0042】
駆動トランジスタTrDにおいては、一方のソース/ドレイン領域は電源部100(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続されており、他方のソース/ドレイン領域は発光部ELPに備えられたアノード電極に接続され、且つ、保持容量CHの一端に接続されている。また、ゲート電極は、書込みトランジスタTrWの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、保持容量CHの他端に接続されている。書込みトランジスタTrWにおいては、一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されており、ゲート電極は、走査線SCLに接続されている。発光部ELPに備えられたカソード電極には、電圧VCat(例えば0ボルト)が印加される。そして、以下説明するように有機EL素子10はアクティブマトリクス駆動される。
【0043】
例えば、図2の(A)の上段の走査線SCLが走査回路101の動作によりハイレベルになると、上段の走査線SCLに接続された有機EL素子10の書込みトランジスタTrWはオン状態となり、信号出力回路102から映像信号がデータ線DTLを介して保持容量CHの一端に印加される。その後走査線SCLがローレベルになると、書込みトランジスタTrWはオフ状態となる。しかし、駆動トランジスタTrDのゲート電極とソース領域との間の電位差は、保持容量CHにより映像信号に応じた値に保持されている。従って、駆動トランジスタTrDを介して電源部100から発光部ELPに映像信号の値に応じた電流が流れ、発光部ELPが発光する。
【0044】
次いで、実施例1の説明の便宜のため、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの動作を説明する。図3の(A)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの回路図である。図3の(B)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。尚、理解を助けるため、図26の(B)とは異なり2相クロックCK1,CK2が共にローレベルになる期間を明示してタイミングチャートを表した。
【0045】
図3の(A)において、第1トランジスタTr1のゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C1で表し、第2トランジスタTr2のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C2で表し、第3トランジスタTr3のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C3で表す。
【0046】
図3の(A)に示すブートストラップ回路において、ノード部P1は第3トランジスタTr3がオフ状態となると浮遊状態となる。ここで、ノード部P1を構成する第1トランジスタTr1のゲート電極と、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合している。また、ノード部P1を構成する第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域と、クロックCK2が印加される第3トランジスタTr3のゲート電極とは寄生容量C3により静電的に結合している。
【0047】
また、出力部OUT1は第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2が共にオフ状態である場合には浮遊状態となる。出力部OUT1を構成する第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域と、第2トランジスタTr2のゲート電極とは寄生容量C2により静電的に結合している。また、出力部OUT1を構成する第1トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン領域と、第1トランジスタTr1のゲート電極とは容量部Caにより静電的に結合している。尚、実際には、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にも寄生容量が存在する。しかしながら、通常は容量部Caによる静電的な結合が支配的であるので、便宜のため、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量は考慮していない。
【0048】
図3の(B)に示す[期間−T1]乃至[期間−T6]の動作は、基本的には、背景技術において図26の(B)を参照して説明した[期間−T1]乃至[期間−T6]の動作と同様であるので、基本的な動作の説明は省略する。
【0049】
上述したように、ノード部P1は、寄生容量C1により、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域と静電的に結合していると共に、寄生容量C3により、クロックCK2が印加される第3トランジスタTr3のゲート電極とも静電的に結合している。従って、第3トランジスタTr3がオフ状態であるときには、ノード部P1の電位はクロックCK1,CK2の立ち上がり及び立ち上がりに応じて変動する。例えば、図3の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部P1の電位は上昇する。クロックCK1は、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加されているので、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまうと、出力部OUT1の電位は上昇する。従って、図3の(B)に示すように、[期間−T2]や[期間−T6]において、出力部OUT1がローレベルを維持することができないといった問題が生ずる。
【0050】
図4の(A)は、走査回路101の1段目を構成する実施例1のブートストラップ回路の回路図である。図4の(B)は、実施例1のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【0051】
上述したように、実施例1のブートストラップ回路にあっては、ノード部P1と電圧供給線PS1との間に、容量部C11が接続されている。従って、第3トランジスタTr3がオフ状態にあるときのノード部P1の変動が抑制されるので、図4の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]において、クロックCK1の立ち上がりに応じたノード部P1の電位の上昇が抑制される。これにより、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまい、[期間−T2]や[期間−T6]において出力部OUT1ローレベルを維持することができないといった問題が発生することを抑制することができる。
【0052】
尚、容量部C11が接続されることにより、ブートストラップゲインは低下する。実施例1のブートストラップ回路におけるブートストラップゲインgbは、第1トランジスタTr1のゲート容量をCTr1と表すとき、以下の式(1)で表すことができる。
【0053】
gb=(CTr1+Ca+C1)/(C11+C3+CTr1+Ca+C1) (1)
【0054】
第1トランジスタTr1の閾値電圧をVth1と表すとき、図4の(B)に示す[期間−T4]の始期において第1トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧がVth1を越えるようにする必要がある。容量部C11の値はこの条件を満たすように設定されている。尚、保持容量として容量部Caの値に対して充分大きい値であることが好ましい。
【0055】
ところで、図1に示すシフトレジスタ回路にあっては、前段の出力(例えば出力部OUT1の出力)が後段の入力(例えば入力信号IN2)となる。図5の(A)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が進んだ場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(B)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が遅れた場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(A)に示すように、位相が進んだ場合には、[期間−T3]〜[期間−T4]においてブートストラップ動作が正常に行われない。一方、位相が遅れた場合においては、[期間−T3]〜[期間−T4]において支障なくブートストラップ動作が行われる。そこで、後段の動作を確実なものとするために、図6の(A)あるいは(B)に示すように、遅延要素を介して後段に信号を伝える構成としてもよい。遅延要素としては、バッファ回路、容量、抵抗等を設計に応じて適宜選択すればよい。後述する他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0056】
実施例2は実施例1の変形である。実施例1と同様に、実施例2に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。走査回路を構成するブートストラップ回路の構成が相違する点を除く他、有機EL表示装置の構造や動作は実施例1において説明したと同様であるので説明を省略する。後述する他の実施例においても同様である。
【0057】
図7の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例2のブートストラップ回路の回路図である。図7の(B)は、実施例2のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【0058】
実施例2は実施例1に対して、ブートストラップ回路は同一導電型(実施例2においてはnチャネル型)の第4トランジスタTr24を更に備えている。より具体的には、第4トランジスタTr24においては、
(D−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1トランジスタTr1のゲート電極に接続されており、
(D−2)他方のソース/ドレイン領域は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−3)ゲート電極は、所定の第2の電圧(ここでは電圧Vdd)が印加される第2電圧供給線PS2に接続されており、
容量部は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域と第4トランジスタTr24の他方のソース/ドレイン領域とが接続された部分と、電圧供給線PS1との間に接続されている。以上の点を除く他、ブートストラップ回路の構成は実施例1において説明したと同様である。
【0059】
実施例2のブートストラップ回路においては、実施例1において説明した図4の(A)に示すノード部P1が、第4トランジスタTr24によって分割されている。図7においては、第1トランジスタTr1のゲート電極側のノード部を符号P1Aで示し、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域側のノード部を符号P1Bで表した。尚、第4トランジスタTr24のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C24で表す。
【0060】
実施例2の回路においては、ノード部P1Aとノード部P1Bの電位がVssのときは第4トランジスタTr24はオン状態であり、容量部C11がノード部P1Aに接続された状態となる。この状態においては、実施例1と同様に、第3トランジスタTr3がオフ状態にあるときのノード部P1の変動が抑制されるので、図7の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]において、クロックCK1の立ち上がりに応じたノード部P1の電位の上昇が抑制される。
【0061】
一方、図7の(B)に示す[期間−T4]においては、第4トランジスタTr24はオフ状態となる。即ち、ブートストラップ動作において、容量部C11はノード部P1Aから切り離された状態にある。従って、実施例1とは異なり、容量部C11によってブートストラップゲインが低下するといった現象は生じない。従って、実施例1よりも高いブートストラップゲインを得ることができる。実施例2のブートストラップ回路におけるブートストラップゲインgbは、第1トランジスタTr1のゲート容量をCTr1と表すとき、以下の式(2)で表すことができる。
【0062】
gb=(CTr1+Ca+C1)/(C24+CTr1+Ca+C1) (2)
【実施例3】
【0063】
実施例3は、本発明の第2の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例3に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0064】
図8の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例3のブートストラップ回路の回路図である。図8の(B)は、実施例3のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。尚、2相クロックCK1,CK2は同期してローレベル/ハイレベルが切り替わるとしてタイミングチャートを表した。
【0065】
実施例3のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。
【0066】
実施例3のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0067】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、ノード部P1と第2トランジスタTr2のゲート電極との間に、容量部C31が接続されている。
【0068】
容量部C31の値は、ノード部P1に対するクロックCK1の飛び込みとクロックCK2の飛び込みとが相殺するような値に設定されている。これにより、図7の(B)に示すように、[期間−T2]や[期間−T6]におけるノード部P1の電位変動が軽減する。
【0069】
以下具体的に説明する。クロックCK1は、寄生容量C1を経由してノードP1に飛び込む。また、クロックCK2は、寄生容量C3を経由する他、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由してノードP1に飛び込む。
【0070】
出力部OUT1には、走査線SCL等の大きな負荷容量が接続される。従って、一般的に第1トランジスタTr1は大きなサイズ(例えばW/L=100/10)とされる。これに対して、第3トランジスタTr3はブートストラップ動作を良好に行うためにリークを抑える必要があり、小さなサイズ(例えばW/L=5/10)とされる。また第2トランジスタTr2は、ローレベル(Vss)を維持するための補完的な性格のトランジスタであり大きなサイズは必要とせず、例えばW/L=10/10程度に設定される。
【0071】
出力部OUT1に接続された負荷容量をCSELと表すとき、負荷容量CSELの値は寄生容量C2に比べて非常に大きい。従って、クロックCK2の飛び込みのうち、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由して伝搬するものは、ノード部P1の電位には殆ど影響を与えない。従って、クロックCK2の飛び込みを考慮するにあたり、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由して伝搬するものは無視することができる。
【0072】
以上説明したように、クロックCK1は、寄生容量C1を経由してノードP1に飛び込む。また、クロックCK2は、寄生容量C3を経由してノードP1に飛び込む。2相のクロックCK1,CK2は逆相のクロックであるから、ノードP1に伝搬するこれらのクロックの飛び込みは、ノードP1の電位を相反する方向に変動させる。従って、寄生容量C1の値と寄生容量C3の値とが等しければ、クロックCK1の飛び込みとクロックCK2の飛び込みとは、相互に打ち消される。
【0073】
しかしながら、上述した第1トランジスタTr1と第3トランジスタTr3のサイズの相違により、通常、寄生容量C1の値は寄生容量C3の値よりも大きい。従って、クロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みに差が生じ、ノードP1の電位が変動する。
【0074】
そこで、実施例3のブートストラップ回路にあっては、寄生容量C3と並列に容量部C31を接続し、ノードP1に対するクロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みとの差によるノードP1の電位の変動を軽減した。容量部C31の値は、ノード部P1の電位の変動量を測定するなどして、設計に応じて適宜設定すればよい。
【実施例4】
【0075】
実施例4は、本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例4に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0076】
図9は、走査回路の1段目を構成する実施例4のブートストラップ回路の回路図である。実施例4のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3を備えている。
【0077】
実施例4のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0078】
そして、実施例4のブートストラップ回路は、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタTr44を更に備えており、
第4トランジスタTr44においては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路B41の入力側に接続されると共に、該反転回路B41の出力側と第2トランジスタTr2のゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加される。
【0079】
図9に示すように、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続されてなるノード部を符号Q1で表し、反転回路B41の出力側と第2トランジスタTr2のゲート電極とが接続されてなるノード部を符号R1と表す。
【0080】
図10の(A)は、反転回路B41の回路図である。図10の(B)は、反転回路B41の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。先ず、反転回路B41の構成及び動作について説明する。
【0081】
この反転回路B41の構成は、特開2005−143068号公報の図5に開示された構成と同様である。尚、図10の(A)にあっては、参照番号や符号は一部変更して記載した。
【0082】
図10の(A)に示すように、反転回路B41は、4つのnチャネル型トランジスタTr40,Tr41,Tr42,Tr43、及び、容量部Capから構成されている。トランジスタTr40,Tr41,Tr42,Tr43も、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成り、上述した図示せぬ基板上に形成されている。容量部Capは、実施例1において説明した容量部C11,Ca等と同様に、絶縁層を挟んだ導電層から構成されている。
【0083】
トランジスタTr40においては、一方のソース/ドレイン領域は、トランジスタTr41の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vssが印加され、ゲート電極にノード部Q1側から入力信号が印加される。トランジスタTr40の一方のソース/ドレイン領域と、トランジスタTr41の一方のソース/ドレイン領域との接続部から、ノード部R1側に反転した出力が印加される。トランジスタTr41は、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vddが印加され、負荷抵抗として作用する。
【0084】
容量部Capは、トランジスタTr41のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間に接続されており、トランジスタTr41と共にブートストラップ回路を構成する。トランジスタTr42は、一方のソース/ドレイン領域がトランジスタTr41のゲート電極に接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vddが印加され、ゲート電極にリファレンス信号REF1が与えられる。このトランジスタTr42の一方のソース/ドレイン領域とトランジスタTr41のゲート電極の接続点をノード部Nと表す。トランジスタTr43は、一方のソース/ドレイン領域がノード部Nに接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vssが印加され、ゲート電極にリファレンス信号REF2が印加される。
【0085】
図10の(B)は、ノード部Q1側からの入力(以下、入力信号INQ1と表記する場合がある)、リファレンス信号REF1,REF2、ノード部Nの電位及びノード部R1側への出力(以下、出力信号OUTR1と表記する場合がある)の各レベル及びタイミング関係を示す。リファレンス信号REF1は、入力信号INQ1のレベルがハイレベル(Vdd)からローレベル(Vss)に変化する前、換言すれば入力信号INQ1のレベルがハイレベルの終わり近くで一定期間だけハイレベルとなる。リファレンス信号REF2は、入力信号INQ1のレベルがローレベルからハイレベルに変化したときに、一定期間だけハイレベルとなる。
【0086】
反転回路B41において、トランジスタTr41のゲート電極の電位(ノード部Nの電位)を、入力信号INQ1のレベルがローレベルからハイレベルに変化したときにローレベルにリセットするトランジスタTr43を設けたことにより、入力信号INQ1がハイレベルの状態では、トランジスタTr41が完全にオフ状態になり、トランジスタTr41に貫通電流は流れない。従って、出力信号OUTR1の電位が貫通電流によって変動することがなく、出力信号OUTR1のレベルとしてVssを取り出すことができる。
【0087】
また、入力信号INQ1のレベルがハイレベルからローレベルに変化する前に、トランジスタTr41のゲート電極の電位(ノード部Nの電位)を、ハイレベルにプリチャージするトランジスタTr42を設けたことにより、このトランジスタTr42によるプリチャージ状態から、入力信号INQ1のレベルがローレベルに変化した際に、容量部Capによる容量結合によってトランジスタTr41のゲート電極の電位がハイレベルよりもさらにプラス側の電位まで上げられる。その結果、出力信号OUTR1のレベルとしてVddを取り出すことができる。
【0088】
図11は、図9のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。実施例4にあっては、反転回路B41の動作により、[期間−T1]の始期から[期間−T3]において入力IN1が立ち上がるまでの間、及び、[期間−T5]においてクロックCK2が立ち上がった後から[期間−T6]の終期までの間、ノード部R1の電位がハイレベルに保たれる。これらの期間にあっては、出力部OUT1にはオン状態の第2トランジスタTr2を介して電圧Vssが印加される。そして、[期間−T3]においてクロックCK2と入力信号IN1がハイレベルの間は、出力部OUT1にはローレベルのクロックCK1が印加される。また、[期間−T4]においてクロックCK1が立ち下がった後から、[期間−T5]においてクロックCK2が立ち上がるまでの間も、出力部OUT1にはローレベルのクロックCK1が印加される。
【0089】
従って、実施例4のブートストラップ回路にあっては、出力部OUT1がローレベルであるときは、電圧VssあるいはローレベルのクロックCK1が印加された状態にあり浮遊状態とならない。従って、容量部Caや寄生容量C2を介した飛び込みによって出力部OUT1の電位が変動せず、飛び込みによる影響を軽減することができる。
【0090】
尚、反転回路として、発明者が特願2008−26742号、特願2008−26742号において提案した種々のインバータ回路(反転回路)を用いた構成とすることもできる。図12の(A)は、特願2008−26742号の実施例1に係るインバータ回路(反転回路)110の回路図である。図12の(B)及び(C)は、図12の(A)に示すインバータ回路110の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【0091】
図12の(A)を参照して、インバータ回路110の構成を説明する。インバータ回路110は、同一導電型(例えばnチャネル型)のトランジスタQn_1、トランジスタQn_2、及び、トランジスタQn_3から構成され、
トランジスタQn_1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、トランジスタQn_2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUTを構成し、
トランジスタQn_2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は第2電圧供給線PS2に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、トランジスタQn_3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
トランジスタQn_3においては、
(C−1)ゲート電極は他方のソース/ドレイン領域に接続されている、
インバータ回路である。
【0092】
インバータ回路110は、更に、同一導電型のトランジスタQn_14を備えている。トランジスタQn_3の他方のソース/ドレイン領域は第2電圧供給線PS2に接続されている。トランジスタQn_2のゲート電極とトランジスタQn_3の一方のソース/ドレイン領域とが接続されたノード部Aには、トランジスタQn_14の一方のソース/ドレイン領域が接続されている。トランジスタQn_1の他方のソース/ドレイン領域及びトランジスタQn_14の他方のソース/ドレイン領域は、電圧供給線PS1に接続されている。トランジスタQn_1のゲート電極及びトランジスタQn_14のゲート電極には入力信号INが印加される。
【0093】
インバータ回路110を構成するトランジスタQn_1、トランジスタQn_2、トランジスタQn_3、及び、トランジスタQn_14は、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。これらのトランジスタは、図示せぬ基板上に形成されている。
【0094】
尚、トランジスタQn_2のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Capが接続されている。例えば絶縁層を挟んだ導電層から構成された容量部Capも、上述した図示せぬ基板上に形成されている。
【0095】
第2電圧供給線PS2からは所定の電圧Vddが供給され、電圧供給線PS1からは所定の電圧Vssが供給される。トランジスタQn_1のゲート電極には入力信号INが印加される。入力信号INのローレベルは電圧Vss、ハイレベルは電圧Vddであるとして、インバータ回路110の動作を説明する。
【0096】
インバータ回路110にあっては、トランジスタQn_1をオン状態とする入力信号INが印加された状態にあっては、トランジスタQn_14もオン状態となる。従って、図12の(B)に示すように、期間T2において、上記ノード部Aの電位VA2は、(Vdd−Vth_3)から電圧供給線PS1の電位Vss側に近づく。ローレベルの出力の値はトランジスタQn_1のオン抵抗の値と、ゲート電極により低い値の電圧が印加された状態のトランジスタQn_2の抵抗値との分圧比によって定まる。従って、期間T2における出力VOUT2は、よりVssに近づく。一方、期間T3にあっては背景技術において説明したと同様のブートストラップ動作が起こり、ノード部Aの電位VA3はハイレベルであるVddを越える。そして(VA3−Vdd)の値がトランジスタQn_2の閾値電圧Vth_2の値を超えるように設定されていれば、期間T3においてインバータ回路110の出力VOUT3は完全なハイレベル(Vdd)に達する。
【0097】
尚、インバータ回路110にあっては、入力信号INはトランジスタQn_1のゲート−ソース間電圧(Vgs)となる。入力信号INのハイレベルが電圧Vddに至らない場合であっても、インバータ回路110は動作する。具体的には、図12の(C)に示すように、期間T2において入力信号INの値がトランジスタQn_1の閾値電圧Vth_1を超えれば、インバータ回路110の出力はハイレベルからローレベルへと向かう。従って、インバータ回路110はレベルシフタとしても動作する。
【実施例5】
【0098】
実施例5は実施例4の変形である。上述したように、実施例5に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0099】
図13は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。実施例5のブートストラップ回路は、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続された部分と電圧供給線PS1との間に、容量部C51が接続されている点を除く他、実施例4のブートストラップ回路と同様の構成である。
【0100】
実施例5のブートストラップ回路の動作は、実施例4において図11を参照して説明したと同様であるので説明を省略する。容量部C51は、ノード部Q1の電位を保持する保持容量として作用する。これにより、反転回路B41の動作がより安定したものとなり、ひいては、ブートストラップ回路の動作をより安定したものとすることができる。
【実施例6】
【0101】
実施例6も実施例4の変形である。上述したように、実施例6に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0102】
図14は、走査回路の1段目を構成する実施例6のブートストラップ回路の回路図である。実施例6のブートストラップ回路は、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続された部分と第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部C61が接続されている点を除く他、実施例4のブートストラップ回路と同様の構成である。尚、第4トランジスタTr44のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C44で表す。
【0103】
実施例6のブートストラップ回路の動作は、実施例4において図11を参照して説明したと同様であるので説明を省略する。容量部C61は、ノードP1に対するクロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みとの差を少なくするように作用する。より具体的には、寄生容量C44を介したクロックCK2の飛び込みと、容量部C61を介したクロックCK1の飛び込みとが相殺される。これにより、ブートストラップ回路の動作をより安定したものとすることができる。
【実施例7】
【0104】
実施例7は、本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例7に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0105】
図15は、走査回路の1段目を構成する実施例7のブートストラップ回路の回路図である。実施例7のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。図16は、図15に示すブートストラップ回路の模式的なタイミングチャートである。
【0106】
実施例7のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0107】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加される。実施例7のブートストラップ回路は、更に、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタTr74のゲート電極は、第5トランジスタTr75の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタTr75の他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)は、直列に接続された各第4トランジスタTr74を介して、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加される。また、出力部OUT1と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、ブートストラップ補完容量として容量部Cbが接続されている。
【0108】
図15から明らかなように、この構成によれば、第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部においてもブートストラップ動作が起こる。第4トランジスタTr74のゲート電極と第5トランジスタTr75の一方のソース/ドレイン領域とは、第5トランジスタTr75がオフ状態になると浮遊状態となるノード部Q1を構成する。第4トランジスタTr74の片側のソース/ドレイン領域と第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域は接続され、ノード部R1を構成する。第4トランジスタTr74の残りのソース/ドレイン領域にはクロックCK1が印加される。ノード部R1は、クロックCK1の影響を受けて変動しやすい。このため、容量部Cbがブートストラップ動作以外の影響を受け難くするために、容量部Cbをノード部R1ではなく出力部OUT1に接続した。このように、実施例7のブートストラップ回路は、ブートストラップ動作が起こる回路部分が複数並列に接続された構成を備えている。符号C74は、第4トランジスタTr74のゲート電極とクロックCK1が印加されるソース/ドレイン領域との間の寄生容量である。符号C75は、第5トランジスタTr75のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量である。
【0109】
実施例1の説明において、寄生容量を考慮したときの従来のブートストラップ回路の動作に言及した。そして、図3の(A)に示す回路にあっては、ノード部P1を構成する第1トランジスタTr1のゲート電極と、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合し、例えば、図3の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部P1の電位は上昇することを説明した。また、クロックCK1は、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加されているので、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまうと、出力部OUT1の電位は上昇し、ローレベルを維持することができないといった問題が生ずることを説明した。
【0110】
図15に示す回路においては、ノード部Q1に対して、図3の(A)を参照して説明したと同様の現象が起こる。即ち、ノード部Q1を構成する第4トランジスタTr74のゲート電極と、クロックCK1が印加される第4トランジスタTr74のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合し、図16に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部Q1の電位は上昇する。
【0111】
しかしながら、クロックCK1の揺れと比べて、ノード部R1の電位は、ブートストラップ動作を除いては相対的に揺れは小さい。これにより、ノード部R1の電位変化によるノード部P1への飛び込みも小さくなり、図3の(A)に示す回路よりもノード部P1の電位の変動を抑えることができる。
【0112】
尚、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を2つ以上備える構成とすることもできる。この構成によれば、よりノード部P1の変動を抑制することができる。
【0113】
図17に示す回路は、図15に示すブートストラップ回路に更に第4トランジスタTr74A及び第5トランジスタTr75Aから成る回路部を加えた構成である。2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)は、直列に接続された各第4トランジスタTr74,Tr74Aを介して、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加される。尚、図17以降の図面については、便宜のため、寄生容量の表示を省略した。
【0114】
尚、実施例1において説明した容量部C11に相当する容量部を備えた構成とすることもできる。図18の(A)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例1において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。あるいは又、実施例2において説明した容量部C31に相当する容量部を備えた構成とすることもできる。図18の(B)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例2において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。
【0115】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明したブートストラップ回路の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。図19は、実施例1乃至実施例7において説明した構成を適宜組み合わせた構成の一例であるブートストラップ回路である。
【0116】
尚、実施例1乃至実施例7においては、各トランジスタはnチャネル型トランジスタとして説明したが、これに限るものではない。pチャネル型トランジスタから成る構成とすることもできる。この場合には、基本的には上述した実施例においてトランジスタをpチャネル型トランジスタに置き換えると共に、電圧Vssと電圧Vddとを入れ替えた構成とすればよい。
【0117】
図20の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例1のブートストラップ回路の回路図であり、図1に示す回路の1段目に相当する。図20の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例2のブートストラップ回路の回路図であり、図7の(A)に示す回路に相当する。図20の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例3のブートストラップ回路の回路図であり、図8の(A)に示す回路に相当する。
【0118】
図21の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例4のブートストラップ回路の回路図であり、図9に示す回路に相当する。図21の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例5のブートストラップ回路の回路図であり、図13に示す回路に相当する。図21の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例6のブートストラップ回路の回路図であり、図14に示す回路に相当する。
【0119】
図22の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図15に示す回路に相当する。同様に、図22の(B)も、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図17に示す回路に相当する。
【0120】
図23の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(A)に示す回路に相当する。図23の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(B)に示す回路に相当する。図24は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図19に示す回路に相当する。
【符号の説明】
【0121】
10・・・有機EL素子、100・・・電源部、101・・・走査回路、102・・・信号出力回路、110・・・インバータ回路、SCL・・・走査線、DTL・・・データ線、TrD・・・駆動トランジスタ、TrW・・・書込みトランジスタ、CH・・・保持容量CH、ELP・・・発光部、CEL・・・発光部の容量、Tr1・・・第1トランジスタ、Tr2・・・第2トランジスタ、Tr3・・・第3トランジスタ、Tr24,Tr24A,Tr44,Tr74,Tr74A・・・第4トランジスタ、Tr75,Tr75A・・・第5トランジスタ、B41・・・反転回路、Tr40,Tr41,Tr42,Tr43・・・トランジスタ、Qn_1,Qn_2,Qn_3,Qn_4・・・トランジスタ、P1,P2,P1A,P1B・・・ノード部、Q1,R1・・・ノード部、N,A・・・ノード部、C1,C2,C3,C24,C44,C74,C75・・・寄生容量、Ca,Cb,Cc,Cap・・・ブートストラップ容量としての容量部、C11,C11A,C31,C31A,C51,C61・・・容量部、OUT1,OUT2・・・出力部、PS1・・・電圧供給線、PS2・・・第2電圧供給線
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレジスタ回路や出力バッファ回路等に用いられるブートストラップ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置や半導体メモリ装置等における走査回路やマトリクスアレイの駆動回路等として、シフトレジスタ回路が広く用いられている。
【0003】
シフトレジスタ回路の出力段には、一般にプッシュプル型の出力回路が用いられる。しかしながら、同一導電型のトランジスタのみを用いてプッシュプル型の出力回路を構成すると、出力電圧の振幅が充分に確保できない。例えばnチャネル型トランジスタのみを用いてプッシュプル型の出力回路を構成した場合、高電位側のトランジスタにあっては、出力電圧の上昇に伴ってゲート電極とソース領域との間の電位差Vgsが低下する。トランジスタの閾値電圧をVthと表せば、Vgs<Vthとなるとトランジスタはオフ状態となる。従って、出力電圧をVgs−Vthまでしか取り出すことができない。この問題を解決するために、ブートストラップ動作を利用した出力回路が提案されている。
【0004】
ブートストラップ動作を利用したシフトレジスタ回路として、特開平10−112645号公報(特許文献1)には、1段を基本的に3つのトランジスタから構成した図25に示す回路が開示されている。この回路は、例えばnチャネル型のトランジスタTr1,Tr2,Tr3によって1段が構成されている。
【0005】
図25に示すシフトレジスタ回路について説明する。図26の(A)にシフトレジスタ回路の1段目の回路を示し、図26の(B)にシフトレジスタ回路の1段目の模式的なタイミングチャートを示す。シフトレジスタ回路の1段目に着目すると、第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2とがプッシュプル出力回路を構成している。第1トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン領域と第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域とが接続され、出力部OUT1を構成する。
【0006】
第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加される。第2トランジスタTr2の他方のソース/ドレイン領域には、電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される。第1トランジスタTr1のゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、ノード部P1を構成する。第2トランジスタTr2のゲート電極と第3トランジスタTr3のゲート電極には、他方のクロック(ここではCK2)が印加される。第3トランジスタTr3の他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加される。
【0007】
尚、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間、または、第1トランジスタTr1のゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間、あるいはこれら両方にブートストラップ容量としての容量部が接続される場合もある。図25に示す回路にあっては、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Caが接続されている。容量部Caは、例えば、絶縁層を挟んだ導電層から構成することもできるし、所謂MOS容量部として構成することもできる。
【0008】
図26の(B)に示すタイミングチャートを参照して、シフトレジスタ回路の1段目の動作を説明する。尚、2相のクロックCK1,CK2、及び、入力信号IN1のハイレベルは電圧Vdd(例えば5ボルト)、ローレベルは上述した電圧Vss(0ボルト)とする。また、第3トランジスタTr3の閾値電圧をVth3と表す。
【0009】
[期間−T1]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。第1トランジスタTr1のゲート電極にはオン状態の第3トランジスタTr3を介してローレベルの入力信号IN1が印加される。従って、ノード部P1の電位はローレベルであり、第1トランジスタTr1はオフ状態である。一方、第2トランジスタTr2はオン状態である。これにより、出力部OUT1は、オン状態の第2トランジスタTr2を介して電圧Vssが印加された状態であり、ローレベルである。
【0010】
[期間−T2]
この期間においては、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。第3トランジスタTr3がオフ状態となるので、ノード部P1は、[期間−T1]における電位を保った状態(即ち、ローレベルを保った状態)で、浮遊状態となる。これにより、第1トランジスタTr1はオフ状態を保つ。一方、第2トランジスタTr2はオン状態からオフ状態となる。これにより、出力部OUT1は図示せぬ容量負荷に接続された状態で浮遊状態となる。従って、出力部OUT1は、[期間−T1]における電位を保った状態(即ち、ローレベルを保った状態)で、浮遊状態となる。
【0011】
[期間−T3]
この期間においては、入力信号IN1はハイレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。第3トランジスタTr3はオン状態となり、ノード部P1にはハイレベル状態の入力信号IN1が印加されるので、ノード部P1の電位は上昇する。しかしながら、ノード部P1の電位が(Vdd−Vth3)に達すると、第3トランジスタTr3はオフ状態となる。ノード部P1は、電位(Vdd−Vth3)を保った状態で浮遊状態となる。第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2とはオン状態にある。第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域には、ローレベル(Vss)状態のクロックCK1が印加されており、第2トランジスタTr2の他方のソース/ドレイン領域には、電圧Vssが印加されている。従って、出力部OUT1は電圧Vssが印加された状態であり、ローレベルである。
【0012】
[期間−T4]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。クロックCK2はローレベルなので、第2トランジスタTr2はオフ状態となり、第3トランジスタTr3はオフ状態を保つ。ノード部P1は浮遊状態にあると共に、第1トランジスタTr1はオン状態にある。従って、クロックCK1がハイレベル状態にあると出力部OUT1の電位は上昇する。このとき、第1トランジスタTr1のゲート容量等を介したブートストラップ動作により、ノード部P1の電位はVdd以上に持ち上げられる。従って、出力部OUT1のハイレベルとしてVddを取り出すことができる。
【0013】
[期間−T5]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はローレベル、クロックCK2はハイレベルである。クロックCK2がハイレベルになると第2トランジスタTr2と第3トランジスタTr3がオン状態となる。オン状態の第2トランジスタTr2を介して、電圧Vssが出力部OUT1に印加される。これにより、出力部OUT1はローレベルにリセットされる。また、オン状態の第3トランジスタTr3を介して、ノード部P1にローレベルの入力信号IN1が印加されるので、ノード部P1もローレベルにリセットされる。
【0014】
[期間−T6]
この期間においては、入力信号IN1はローレベル、クロックCK1はハイレベル、クロックCK2はローレベルである。この期間の動作は、基本的に上述した[期間−T2]と同様の動作である。第3トランジスタTr3がオフ状態となるので、ノード部P1は、ローレベルを保った状態で浮遊状態となる。これにより、第1トランジスタTr1はオフ状態を保つ。一方、第2トランジスタTr2はオン状態からオフ状態となる。これにより、出力部OUT1は、ローレベルを保った状態で浮遊状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−112645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したブートストラップ回路の動作説明においては、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を考慮していない。しかしながら実際には、浮遊状態にあるノード部P1等の電位は、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を受け変動する。そして、回路の動作を高速にすればするほど、パルスの立ち上がり/立ち下がりの速度が速くなるために飛び込みによる影響が強くなり、回路の誤動作を誘因する。
【0017】
従って、本発明の目的は、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を軽減することができる、シフトレジスタ回路や出力バッファ回路等に用いられるブートストラップ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様あるいは第4の態様に係るブートストラップ回路は、同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路に関する。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ノード部と電圧供給線との間に、容量部が接続されていることを特徴とする。容量部がノード部と電圧供給線との間に接続されているので、第3トランジスタがオフ状態にあるときのノード部における電位の変動が抑制され、クロックに起因するノード部の電位変化が抑制される。
【0020】
ここで、本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路にあっては、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(D−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1トランジスタのゲート電極に接続されており、
(D−2)他方のソース/ドレイン領域は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−3)ゲート電極は、所定の第2の電圧が印加される第2電圧供給線に接続されており、
容量部は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と第4トランジスタの他方のソース/ドレイン領域とが接続された部分と、電圧供給線との間に接続されている構成とすることができる。この構成によれば、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部が、第4トランジスタによって分割される。第2の電圧の値を、ブートストラップ動作において第4トランジスタがオフ状態となるように設定することにより、ブートストラップ動作において、容量部はノード部から切り離された状態となる。これにより、ノード部と電圧供給線との間に容量部を接続しても、ブートストラップゲインが低下することはないといった利点を有する。
【0021】
また、上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ノード部と第2トランジスタのゲート電極との間に、容量部が接続されていることを特徴とする。この構成によれば、2相のクロックのノード部への飛び込みによる電位の変動が相互に打ち消される。これにより、ノード部の電位の変動を抑制することができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路にあっては、ブートストラップ回路は、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2トランジスタのゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加される、
ことを特徴とする。所定の動作時において、反転回路の出力によって第2トランジスタのオン状態が維持されることにより、第2トランジスタの他のソース/ドレイン領域から出力部への電圧印加状態が維持される。これにより、ノード部の変動に起因して起こる第1トランジスタのリークによる出力部の電圧変動を低減することができる。ここで、第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と電圧供給線との間に、容量部が接続されている構成とすることができる。容量部は、反転回路の入力側の保持容量として作用するので、反転回路の動作をより安定なものとすることができる。上述した好ましい構成を含む本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部が接続されている構成とすることもできる。
【0023】
また、上記の目的を達成するための本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、ブートストラップ回路は、更に、同一導電型の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタのゲート電極は、第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタの他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
2相のクロックのうち一方のクロックは、直列に接続された各第4トランジスタを介して、第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に印加される、
ことを特徴とする。ここで、出力部と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、容量部が接続されている構成とすることができる。上述した好ましい構成を含む本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路にあっては、第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部においてもブートストラップ動作が起こる。換言すれば、第4の態様に係るブートストラップ回路は、ブートストラップ動作が起こる回路部分が複数並列に接続された構成を備えている。この構成によれば、第3トランジスタがオフ状態にあるときのノード部における電位の変動が抑制され、クロックに起因するノード部の電位変化が抑制される。
【0024】
本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、及び、第4の態様に係るブートストラップ回路(以下、これらを総称して、単に、本発明のブートストラップ回路と呼ぶ場合がある)においては、ブートストラップ回路は、nチャネル型のトランジスタから構成されていてもよいし、pチャネル型のトランジスタから構成されていてもよい。トランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)であってもよいし、半導体基板等に形成されたトランジスタであってもよい。トランジスタの構造は特に限定するものではない。以下の説明においては、トランジスタはエンハンスメント型であるとして説明するが、これに限るものではない。デプレッション型のトランジスタが用いられていてもよい。また、トランジスタはシングルゲート型であってもよいし、デュアルゲート型であってもよい。
【0025】
例えば、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を構成する基板上に、画素電極と画素電極に接続される駆動用トランジスタとを形成し、合わせて基板上にブートストラップ回路を用いた走査回路等を形成することができる。この場合には、ブートストラップ回路は、駆動用トランジスタと同じ導電型のトランジスタから構成することが便宜である。基板上に形成されるトランジスタが同一の導電型であるので、駆動用トランジスタと走査回路を構成するトランジスタとを同じ工程で形成することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示装置等においても同様である。
【0026】
本発明のブートストラップ回路に用いられる容量部は、例えば、絶縁層を挟んだ導電層から構成されていてもよいし、所謂MOS容量部として構成されていてもよい。ブートストラップ回路を構成するトランジスタや容量部あるいは配線等は広く周知の材料や方法により形成することができる。トランジスタや容量部あるいは配線等の構成や形成方法は、ブートストラップ回路を用いる装置の仕様等に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
本発明の第3の態様に用いられる反転回路の構成は、特に限定するものではない。基本的には、反転回路は第3の態様に係るブートストラップ回路を構成する各トランジスタと同一の導電型のトランジスタから構成されていることが好ましい。例えば、特開2005−143068号公報において、単一導電型のトランジスタから構成された反転回路が開示されている。この反転回路を用いることもできる。また、発明者は特願2008−26742号及び特願2008−26743号において種々のインバータ回路(反転回路)を提案したが、これらの反転回路を用いることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のブートストラップ回路にあっては、寄生容量等を介した種々の飛び込みによる影響を軽減することができる。従って、本発明のブートストラップ回路を用いたシフトレジスタ回路や出力バッファ回路等にあっては、種々の飛び込みによる回路の誤動作が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施例1に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の回路図である。
【図2】図2の(A)は、走査回路を備え、有機エレクトロルミネッセンス素子を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置の概念図である。図2の(B)は、有機EL素子の模式的な回路図を示す。
【図3】図3の(A)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの回路図である。図3の(B)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図4】図4の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例1のブートストラップ回路の回路図である。図4の(B)は、実施例1のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図5】図5の(A)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が進んだ場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(B)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が遅れた場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図6】図6の(A)及び(B)は、遅延要素を介して後段に信号を伝える構成としたブートストラップ回路の回路図である。
【図7】図7の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例2のブートストラップ回路の回路図である。図7の(B)は、実施例2のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【図8】図8の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例3のブートストラップ回路の回路図である。図8の(B)は、実施例3のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。
【図9】図9は、走査回路の1段目を構成する実施例4のブートストラップ回路の回路図である。
【図10】図10の(A)は、反転回路の回路図である。図10の(B)は、反転回路の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図11】図11は、図9のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。
【図12】図12の(A)は、インバータ回路(反転回路)10の回路図である。図12の(B)及び(C)は、図12の(A)に示すインバータ回路10の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【図13】図13は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。
【図14】図14は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。
【図15】図15は、走査回路の1段目を構成する実施例7のブートストラップ回路の回路図である。
【図16】図16は、実施例7のブートストラップ回路の模式的なタイミングチャートである。
【図17】図17は、第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部と、第4トランジスタTr74A及び第5トランジスタTr75Aから成る回路部とを備えたブートストラップ回路の回路図である。
【図18】図18の(A)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例1において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。図18の(B)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例2において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。
【図19】図19は、実施例1乃至実施例7において説明した構成を適宜組み合わせた構成の一例であるブートストラップ回路である。
【図20】図20の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例1のブートストラップ回路の回路図であり、図1に示す回路の1段目に相当する。図20の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例2のブートストラップ回路の回路図であり、図7の(A)に示す回路に相当する。図20の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例3のブートストラップ回路の回路図であり、図8の(A)に示す回路に相当する。
【図21】図21の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例4のブートストラップ回路の回路図であり、図9に示す回路に相当する。図21の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例5のブートストラップ回路の回路図であり、図13に示す回路に相当する。図21の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例6のブートストラップ回路の回路図であり、図14に示す回路に相当する。
【図22】図22の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図15に示す回路に相当する。同様に、図22の(B)も、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図17に示す回路に相当する。
【図23】図23の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(A)に示す回路に相当する。図23の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(B)に示す回路に相当する。
【図24】図24は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図19に示す回路に相当する。
【図25】図25は、1段を基本的に3つのトランジスタから構成したブートストラップ動作を利用したシフトレジスタ回路の回路図である。
【図26】図26の(A)はシフトレジスタ回路の1段目の回路の回路図である。図26の(B)はシフトレジスタ回路の1段目のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例1は、本発明の第1の態様に係るブートストラップ回路に関する。図1は、実施例1に係るブートストラップ回路から構成した走査回路101の回路図である。尚、便宜のため、図1においては走査回路101の1段目と2段目のブートストラップ回路を表した。図2の(A)は、この走査回路101を備え、有機エレクトロルミネッセンス素子10(以下、単に、有機EL素子と略称する)を発光素子として用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、有機EL表示装置と呼ぶ場合がある)の概念図である。図2の(B)は、有機EL素子10の模式的な回路図である。
【0032】
図1に示す走査回路101の1段目に注目して、実施例1のブートストラップ回路を説明する。実施例1のブートストラップ回路は、同一導電型(実施例1では後述するようにnチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。
【0033】
実施例1のブートストラップ回路は、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0034】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、ノード部P1と電圧供給線PS1との間に、容量部C11が接続されている。
【0035】
実施例1においては、容量部C11は絶縁層を間に挟んだ導電層から構成されている。尚、背景技術において説明したと同様に、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Caも接続されている。容量部C11と同様に、容量部Caも絶縁層を挟んだ導電層から構成されている。
【0036】
尚、背景技術で説明したと同様に、2相のクロックCK1,CK2、及び、入力信号IN1のハイレベルは電圧Vdd(例えば5ボルト)、ローレベルは上述した電圧Vss(0ボルト)とする。また、第3トランジスタTr3の閾値電圧をVth3と表す。
【0037】
先ず、走査回路101を用いた有機EL表示装置の構成と動作について説明する。図2に概念図を示すように、有機EL表示装置は、
(1)走査回路101、
(2)信号出力回路102、
(3)第1の方向にN個、第1の方向とは異なる第2の方向(具体的には、第1の方向に直交する方向)にM個、合計N×M個の、2次元マトリクス状に配列され、それぞれが発光部ELP、及び、発光部ELPを駆動するための駆動回路を備えている有機EL素子10、
(4)走査回路101に接続され、第1の方向に延びるM本の走査線SCL、
(5)信号出力回路102に接続され、第2の方向に延びるN本のデータ線DTL、
(6)電源部100、
を備えている。尚、図2においては、便宜のため3×3個の有機EL素子10を示したが、これは単なる例示に過ぎない。走査回路101、有機EL素子10、走査線SCL、データ線DTL等は、ガラス等から成る図示せぬ基板上に形成されている。
【0038】
発光部ELPは、例えば、アノード電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、カソード電極等の周知の構成、構造を有する。信号出力回路102、走査線SCL、データ線DTL、電源部100の構成、構造は、周知の構成、構造とすることができる。
【0039】
図2の(B)に示すように、有機EL素子10は、発光部ELPの他、駆動トランジスタTrD、書込みトランジスタTrW、及び、保持容量CHから構成された駆動回路を備えている。尚、発光部ELPの容量を符号CELで表した。
【0040】
駆動トランジスタTrD及び書込みトランジスタTrWは、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。上述した図示せぬ基板上にこの駆動回路は形成されており、基板上の所定の領域にこの駆動回路を覆うように発光部ELPが形成されている。
【0041】
上述した駆動トランジスタTrDや書込みトランジスタTrWと同様に、走査回路101を構成する第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3も、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。これらのトランジスタも、上述した図示せぬ基板上に形成されている。他の実施例において説明する第4トランジスタ等においても同様である。
【0042】
駆動トランジスタTrDにおいては、一方のソース/ドレイン領域は電源部100(電圧VCC、例えば20ボルト)に接続されており、他方のソース/ドレイン領域は発光部ELPに備えられたアノード電極に接続され、且つ、保持容量CHの一端に接続されている。また、ゲート電極は、書込みトランジスタTrWの他方のソース/ドレイン領域に接続され、且つ、保持容量CHの他端に接続されている。書込みトランジスタTrWにおいては、一方のソース/ドレイン領域は、データ線DTLに接続されており、ゲート電極は、走査線SCLに接続されている。発光部ELPに備えられたカソード電極には、電圧VCat(例えば0ボルト)が印加される。そして、以下説明するように有機EL素子10はアクティブマトリクス駆動される。
【0043】
例えば、図2の(A)の上段の走査線SCLが走査回路101の動作によりハイレベルになると、上段の走査線SCLに接続された有機EL素子10の書込みトランジスタTrWはオン状態となり、信号出力回路102から映像信号がデータ線DTLを介して保持容量CHの一端に印加される。その後走査線SCLがローレベルになると、書込みトランジスタTrWはオフ状態となる。しかし、駆動トランジスタTrDのゲート電極とソース領域との間の電位差は、保持容量CHにより映像信号に応じた値に保持されている。従って、駆動トランジスタTrDを介して電源部100から発光部ELPに映像信号の値に応じた電流が流れ、発光部ELPが発光する。
【0044】
次いで、実施例1の説明の便宜のため、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの動作を説明する。図3の(A)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの回路図である。図3の(B)は、従来のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。尚、理解を助けるため、図26の(B)とは異なり2相クロックCK1,CK2が共にローレベルになる期間を明示してタイミングチャートを表した。
【0045】
図3の(A)において、第1トランジスタTr1のゲート電極と他方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C1で表し、第2トランジスタTr2のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C2で表し、第3トランジスタTr3のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C3で表す。
【0046】
図3の(A)に示すブートストラップ回路において、ノード部P1は第3トランジスタTr3がオフ状態となると浮遊状態となる。ここで、ノード部P1を構成する第1トランジスタTr1のゲート電極と、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合している。また、ノード部P1を構成する第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域と、クロックCK2が印加される第3トランジスタTr3のゲート電極とは寄生容量C3により静電的に結合している。
【0047】
また、出力部OUT1は第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2が共にオフ状態である場合には浮遊状態となる。出力部OUT1を構成する第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域と、第2トランジスタTr2のゲート電極とは寄生容量C2により静電的に結合している。また、出力部OUT1を構成する第1トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン領域と、第1トランジスタTr1のゲート電極とは容量部Caにより静電的に結合している。尚、実際には、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にも寄生容量が存在する。しかしながら、通常は容量部Caによる静電的な結合が支配的であるので、便宜のため、第1トランジスタTr1のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量は考慮していない。
【0048】
図3の(B)に示す[期間−T1]乃至[期間−T6]の動作は、基本的には、背景技術において図26の(B)を参照して説明した[期間−T1]乃至[期間−T6]の動作と同様であるので、基本的な動作の説明は省略する。
【0049】
上述したように、ノード部P1は、寄生容量C1により、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域と静電的に結合していると共に、寄生容量C3により、クロックCK2が印加される第3トランジスタTr3のゲート電極とも静電的に結合している。従って、第3トランジスタTr3がオフ状態であるときには、ノード部P1の電位はクロックCK1,CK2の立ち上がり及び立ち上がりに応じて変動する。例えば、図3の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部P1の電位は上昇する。クロックCK1は、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加されているので、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまうと、出力部OUT1の電位は上昇する。従って、図3の(B)に示すように、[期間−T2]や[期間−T6]において、出力部OUT1がローレベルを維持することができないといった問題が生ずる。
【0050】
図4の(A)は、走査回路101の1段目を構成する実施例1のブートストラップ回路の回路図である。図4の(B)は、実施例1のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【0051】
上述したように、実施例1のブートストラップ回路にあっては、ノード部P1と電圧供給線PS1との間に、容量部C11が接続されている。従って、第3トランジスタTr3がオフ状態にあるときのノード部P1の変動が抑制されるので、図4の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]において、クロックCK1の立ち上がりに応じたノード部P1の電位の上昇が抑制される。これにより、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまい、[期間−T2]や[期間−T6]において出力部OUT1ローレベルを維持することができないといった問題が発生することを抑制することができる。
【0052】
尚、容量部C11が接続されることにより、ブートストラップゲインは低下する。実施例1のブートストラップ回路におけるブートストラップゲインgbは、第1トランジスタTr1のゲート容量をCTr1と表すとき、以下の式(1)で表すことができる。
【0053】
gb=(CTr1+Ca+C1)/(C11+C3+CTr1+Ca+C1) (1)
【0054】
第1トランジスタTr1の閾値電圧をVth1と表すとき、図4の(B)に示す[期間−T4]の始期において第1トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧がVth1を越えるようにする必要がある。容量部C11の値はこの条件を満たすように設定されている。尚、保持容量として容量部Caの値に対して充分大きい値であることが好ましい。
【0055】
ところで、図1に示すシフトレジスタ回路にあっては、前段の出力(例えば出力部OUT1の出力)が後段の入力(例えば入力信号IN2)となる。図5の(A)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が進んだ場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(B)は、図1に示すシフトレジスタ回路において、後段の回路の入力の位相が遅れた場合の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。図5の(A)に示すように、位相が進んだ場合には、[期間−T3]〜[期間−T4]においてブートストラップ動作が正常に行われない。一方、位相が遅れた場合においては、[期間−T3]〜[期間−T4]において支障なくブートストラップ動作が行われる。そこで、後段の動作を確実なものとするために、図6の(A)あるいは(B)に示すように、遅延要素を介して後段に信号を伝える構成としてもよい。遅延要素としては、バッファ回路、容量、抵抗等を設計に応じて適宜選択すればよい。後述する他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0056】
実施例2は実施例1の変形である。実施例1と同様に、実施例2に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。走査回路を構成するブートストラップ回路の構成が相違する点を除く他、有機EL表示装置の構造や動作は実施例1において説明したと同様であるので説明を省略する。後述する他の実施例においても同様である。
【0057】
図7の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例2のブートストラップ回路の回路図である。図7の(B)は、実施例2のブートストラップ回路において寄生容量を考慮したときの模式的なタイミングチャートである。
【0058】
実施例2は実施例1に対して、ブートストラップ回路は同一導電型(実施例2においてはnチャネル型)の第4トランジスタTr24を更に備えている。より具体的には、第4トランジスタTr24においては、
(D−1)一方のソース/ドレイン領域は、第1トランジスタTr1のゲート電極に接続されており、
(D−2)他方のソース/ドレイン領域は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−3)ゲート電極は、所定の第2の電圧(ここでは電圧Vdd)が印加される第2電圧供給線PS2に接続されており、
容量部は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域と第4トランジスタTr24の他方のソース/ドレイン領域とが接続された部分と、電圧供給線PS1との間に接続されている。以上の点を除く他、ブートストラップ回路の構成は実施例1において説明したと同様である。
【0059】
実施例2のブートストラップ回路においては、実施例1において説明した図4の(A)に示すノード部P1が、第4トランジスタTr24によって分割されている。図7においては、第1トランジスタTr1のゲート電極側のノード部を符号P1Aで示し、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域側のノード部を符号P1Bで表した。尚、第4トランジスタTr24のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C24で表す。
【0060】
実施例2の回路においては、ノード部P1Aとノード部P1Bの電位がVssのときは第4トランジスタTr24はオン状態であり、容量部C11がノード部P1Aに接続された状態となる。この状態においては、実施例1と同様に、第3トランジスタTr3がオフ状態にあるときのノード部P1の変動が抑制されるので、図7の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]において、クロックCK1の立ち上がりに応じたノード部P1の電位の上昇が抑制される。
【0061】
一方、図7の(B)に示す[期間−T4]においては、第4トランジスタTr24はオフ状態となる。即ち、ブートストラップ動作において、容量部C11はノード部P1Aから切り離された状態にある。従って、実施例1とは異なり、容量部C11によってブートストラップゲインが低下するといった現象は生じない。従って、実施例1よりも高いブートストラップゲインを得ることができる。実施例2のブートストラップ回路におけるブートストラップゲインgbは、第1トランジスタTr1のゲート容量をCTr1と表すとき、以下の式(2)で表すことができる。
【0062】
gb=(CTr1+Ca+C1)/(C24+CTr1+Ca+C1) (2)
【実施例3】
【0063】
実施例3は、本発明の第2の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例3に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0064】
図8の(A)は、走査回路の1段目を構成する実施例3のブートストラップ回路の回路図である。図8の(B)は、実施例3のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。尚、2相クロックCK1,CK2は同期してローレベル/ハイレベルが切り替わるとしてタイミングチャートを表した。
【0065】
実施例3のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。
【0066】
実施例3のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0067】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、ノード部P1と第2トランジスタTr2のゲート電極との間に、容量部C31が接続されている。
【0068】
容量部C31の値は、ノード部P1に対するクロックCK1の飛び込みとクロックCK2の飛び込みとが相殺するような値に設定されている。これにより、図7の(B)に示すように、[期間−T2]や[期間−T6]におけるノード部P1の電位変動が軽減する。
【0069】
以下具体的に説明する。クロックCK1は、寄生容量C1を経由してノードP1に飛び込む。また、クロックCK2は、寄生容量C3を経由する他、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由してノードP1に飛び込む。
【0070】
出力部OUT1には、走査線SCL等の大きな負荷容量が接続される。従って、一般的に第1トランジスタTr1は大きなサイズ(例えばW/L=100/10)とされる。これに対して、第3トランジスタTr3はブートストラップ動作を良好に行うためにリークを抑える必要があり、小さなサイズ(例えばW/L=5/10)とされる。また第2トランジスタTr2は、ローレベル(Vss)を維持するための補完的な性格のトランジスタであり大きなサイズは必要とせず、例えばW/L=10/10程度に設定される。
【0071】
出力部OUT1に接続された負荷容量をCSELと表すとき、負荷容量CSELの値は寄生容量C2に比べて非常に大きい。従って、クロックCK2の飛び込みのうち、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由して伝搬するものは、ノード部P1の電位には殆ど影響を与えない。従って、クロックCK2の飛び込みを考慮するにあたり、寄生容量C2とブートストラップ動作のための容量部Caを経由して伝搬するものは無視することができる。
【0072】
以上説明したように、クロックCK1は、寄生容量C1を経由してノードP1に飛び込む。また、クロックCK2は、寄生容量C3を経由してノードP1に飛び込む。2相のクロックCK1,CK2は逆相のクロックであるから、ノードP1に伝搬するこれらのクロックの飛び込みは、ノードP1の電位を相反する方向に変動させる。従って、寄生容量C1の値と寄生容量C3の値とが等しければ、クロックCK1の飛び込みとクロックCK2の飛び込みとは、相互に打ち消される。
【0073】
しかしながら、上述した第1トランジスタTr1と第3トランジスタTr3のサイズの相違により、通常、寄生容量C1の値は寄生容量C3の値よりも大きい。従って、クロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みに差が生じ、ノードP1の電位が変動する。
【0074】
そこで、実施例3のブートストラップ回路にあっては、寄生容量C3と並列に容量部C31を接続し、ノードP1に対するクロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みとの差によるノードP1の電位の変動を軽減した。容量部C31の値は、ノード部P1の電位の変動量を測定するなどして、設計に応じて適宜設定すればよい。
【実施例4】
【0075】
実施例4は、本発明の第3の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例4に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0076】
図9は、走査回路の1段目を構成する実施例4のブートストラップ回路の回路図である。実施例4のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3を備えている。
【0077】
実施例4のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0078】
そして、実施例4のブートストラップ回路は、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタTr44を更に備えており、
第4トランジスタTr44においては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路B41の入力側に接続されると共に、該反転回路B41の出力側と第2トランジスタTr2のゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加される。
【0079】
図9に示すように、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続されてなるノード部を符号Q1で表し、反転回路B41の出力側と第2トランジスタTr2のゲート電極とが接続されてなるノード部を符号R1と表す。
【0080】
図10の(A)は、反転回路B41の回路図である。図10の(B)は、反転回路B41の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。先ず、反転回路B41の構成及び動作について説明する。
【0081】
この反転回路B41の構成は、特開2005−143068号公報の図5に開示された構成と同様である。尚、図10の(A)にあっては、参照番号や符号は一部変更して記載した。
【0082】
図10の(A)に示すように、反転回路B41は、4つのnチャネル型トランジスタTr40,Tr41,Tr42,Tr43、及び、容量部Capから構成されている。トランジスタTr40,Tr41,Tr42,Tr43も、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成り、上述した図示せぬ基板上に形成されている。容量部Capは、実施例1において説明した容量部C11,Ca等と同様に、絶縁層を挟んだ導電層から構成されている。
【0083】
トランジスタTr40においては、一方のソース/ドレイン領域は、トランジスタTr41の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vssが印加され、ゲート電極にノード部Q1側から入力信号が印加される。トランジスタTr40の一方のソース/ドレイン領域と、トランジスタTr41の一方のソース/ドレイン領域との接続部から、ノード部R1側に反転した出力が印加される。トランジスタTr41は、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vddが印加され、負荷抵抗として作用する。
【0084】
容量部Capは、トランジスタTr41のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間に接続されており、トランジスタTr41と共にブートストラップ回路を構成する。トランジスタTr42は、一方のソース/ドレイン領域がトランジスタTr41のゲート電極に接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vddが印加され、ゲート電極にリファレンス信号REF1が与えられる。このトランジスタTr42の一方のソース/ドレイン領域とトランジスタTr41のゲート電極の接続点をノード部Nと表す。トランジスタTr43は、一方のソース/ドレイン領域がノード部Nに接続されており、他方のソース/ドレイン領域に電圧Vssが印加され、ゲート電極にリファレンス信号REF2が印加される。
【0085】
図10の(B)は、ノード部Q1側からの入力(以下、入力信号INQ1と表記する場合がある)、リファレンス信号REF1,REF2、ノード部Nの電位及びノード部R1側への出力(以下、出力信号OUTR1と表記する場合がある)の各レベル及びタイミング関係を示す。リファレンス信号REF1は、入力信号INQ1のレベルがハイレベル(Vdd)からローレベル(Vss)に変化する前、換言すれば入力信号INQ1のレベルがハイレベルの終わり近くで一定期間だけハイレベルとなる。リファレンス信号REF2は、入力信号INQ1のレベルがローレベルからハイレベルに変化したときに、一定期間だけハイレベルとなる。
【0086】
反転回路B41において、トランジスタTr41のゲート電極の電位(ノード部Nの電位)を、入力信号INQ1のレベルがローレベルからハイレベルに変化したときにローレベルにリセットするトランジスタTr43を設けたことにより、入力信号INQ1がハイレベルの状態では、トランジスタTr41が完全にオフ状態になり、トランジスタTr41に貫通電流は流れない。従って、出力信号OUTR1の電位が貫通電流によって変動することがなく、出力信号OUTR1のレベルとしてVssを取り出すことができる。
【0087】
また、入力信号INQ1のレベルがハイレベルからローレベルに変化する前に、トランジスタTr41のゲート電極の電位(ノード部Nの電位)を、ハイレベルにプリチャージするトランジスタTr42を設けたことにより、このトランジスタTr42によるプリチャージ状態から、入力信号INQ1のレベルがローレベルに変化した際に、容量部Capによる容量結合によってトランジスタTr41のゲート電極の電位がハイレベルよりもさらにプラス側の電位まで上げられる。その結果、出力信号OUTR1のレベルとしてVddを取り出すことができる。
【0088】
図11は、図9のブートストラップ回路における模式的なタイミングチャートである。実施例4にあっては、反転回路B41の動作により、[期間−T1]の始期から[期間−T3]において入力IN1が立ち上がるまでの間、及び、[期間−T5]においてクロックCK2が立ち上がった後から[期間−T6]の終期までの間、ノード部R1の電位がハイレベルに保たれる。これらの期間にあっては、出力部OUT1にはオン状態の第2トランジスタTr2を介して電圧Vssが印加される。そして、[期間−T3]においてクロックCK2と入力信号IN1がハイレベルの間は、出力部OUT1にはローレベルのクロックCK1が印加される。また、[期間−T4]においてクロックCK1が立ち下がった後から、[期間−T5]においてクロックCK2が立ち上がるまでの間も、出力部OUT1にはローレベルのクロックCK1が印加される。
【0089】
従って、実施例4のブートストラップ回路にあっては、出力部OUT1がローレベルであるときは、電圧VssあるいはローレベルのクロックCK1が印加された状態にあり浮遊状態とならない。従って、容量部Caや寄生容量C2を介した飛び込みによって出力部OUT1の電位が変動せず、飛び込みによる影響を軽減することができる。
【0090】
尚、反転回路として、発明者が特願2008−26742号、特願2008−26742号において提案した種々のインバータ回路(反転回路)を用いた構成とすることもできる。図12の(A)は、特願2008−26742号の実施例1に係るインバータ回路(反転回路)110の回路図である。図12の(B)及び(C)は、図12の(A)に示すインバータ回路110の動作を説明するための模式的なタイミングチャートである。
【0091】
図12の(A)を参照して、インバータ回路110の構成を説明する。インバータ回路110は、同一導電型(例えばnチャネル型)のトランジスタQn_1、トランジスタQn_2、及び、トランジスタQn_3から構成され、
トランジスタQn_1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、トランジスタQn_2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUTを構成し、
トランジスタQn_2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は第2電圧供給線PS2に接続されており、
(B−2)ゲート電極は、トランジスタQn_3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
トランジスタQn_3においては、
(C−1)ゲート電極は他方のソース/ドレイン領域に接続されている、
インバータ回路である。
【0092】
インバータ回路110は、更に、同一導電型のトランジスタQn_14を備えている。トランジスタQn_3の他方のソース/ドレイン領域は第2電圧供給線PS2に接続されている。トランジスタQn_2のゲート電極とトランジスタQn_3の一方のソース/ドレイン領域とが接続されたノード部Aには、トランジスタQn_14の一方のソース/ドレイン領域が接続されている。トランジスタQn_1の他方のソース/ドレイン領域及びトランジスタQn_14の他方のソース/ドレイン領域は、電圧供給線PS1に接続されている。トランジスタQn_1のゲート電極及びトランジスタQn_14のゲート電極には入力信号INが印加される。
【0093】
インバータ回路110を構成するトランジスタQn_1、トランジスタQn_2、トランジスタQn_3、及び、トランジスタQn_14は、ソース/ドレイン領域、チャネル形成領域、及び、ゲート電極を備えた、nチャネル型の薄膜トランジスタ(TFT)から成る。これらのトランジスタは、図示せぬ基板上に形成されている。
【0094】
尚、トランジスタQn_2のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間にブートストラップ容量としての容量部Capが接続されている。例えば絶縁層を挟んだ導電層から構成された容量部Capも、上述した図示せぬ基板上に形成されている。
【0095】
第2電圧供給線PS2からは所定の電圧Vddが供給され、電圧供給線PS1からは所定の電圧Vssが供給される。トランジスタQn_1のゲート電極には入力信号INが印加される。入力信号INのローレベルは電圧Vss、ハイレベルは電圧Vddであるとして、インバータ回路110の動作を説明する。
【0096】
インバータ回路110にあっては、トランジスタQn_1をオン状態とする入力信号INが印加された状態にあっては、トランジスタQn_14もオン状態となる。従って、図12の(B)に示すように、期間T2において、上記ノード部Aの電位VA2は、(Vdd−Vth_3)から電圧供給線PS1の電位Vss側に近づく。ローレベルの出力の値はトランジスタQn_1のオン抵抗の値と、ゲート電極により低い値の電圧が印加された状態のトランジスタQn_2の抵抗値との分圧比によって定まる。従って、期間T2における出力VOUT2は、よりVssに近づく。一方、期間T3にあっては背景技術において説明したと同様のブートストラップ動作が起こり、ノード部Aの電位VA3はハイレベルであるVddを越える。そして(VA3−Vdd)の値がトランジスタQn_2の閾値電圧Vth_2の値を超えるように設定されていれば、期間T3においてインバータ回路110の出力VOUT3は完全なハイレベル(Vdd)に達する。
【0097】
尚、インバータ回路110にあっては、入力信号INはトランジスタQn_1のゲート−ソース間電圧(Vgs)となる。入力信号INのハイレベルが電圧Vddに至らない場合であっても、インバータ回路110は動作する。具体的には、図12の(C)に示すように、期間T2において入力信号INの値がトランジスタQn_1の閾値電圧Vth_1を超えれば、インバータ回路110の出力はハイレベルからローレベルへと向かう。従って、インバータ回路110はレベルシフタとしても動作する。
【実施例5】
【0098】
実施例5は実施例4の変形である。上述したように、実施例5に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0099】
図13は、走査回路の1段目を構成する実施例5のブートストラップ回路の回路図である。実施例5のブートストラップ回路は、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続された部分と電圧供給線PS1との間に、容量部C51が接続されている点を除く他、実施例4のブートストラップ回路と同様の構成である。
【0100】
実施例5のブートストラップ回路の動作は、実施例4において図11を参照して説明したと同様であるので説明を省略する。容量部C51は、ノード部Q1の電位を保持する保持容量として作用する。これにより、反転回路B41の動作がより安定したものとなり、ひいては、ブートストラップ回路の動作をより安定したものとすることができる。
【実施例6】
【0101】
実施例6も実施例4の変形である。上述したように、実施例6に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0102】
図14は、走査回路の1段目を構成する実施例6のブートストラップ回路の回路図である。実施例6のブートストラップ回路は、第4トランジスタTr44の一方のソース/ドレイン領域と反転回路B41の入力側とが接続された部分と第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部C61が接続されている点を除く他、実施例4のブートストラップ回路と同様の構成である。尚、第4トランジスタTr44のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量を符号C44で表す。
【0103】
実施例6のブートストラップ回路の動作は、実施例4において図11を参照して説明したと同様であるので説明を省略する。容量部C61は、ノードP1に対するクロックCK1の飛び込みと、CK2の飛び込みとの差を少なくするように作用する。より具体的には、寄生容量C44を介したクロックCK2の飛び込みと、容量部C61を介したクロックCK1の飛び込みとが相殺される。これにより、ブートストラップ回路の動作をより安定したものとすることができる。
【実施例7】
【0104】
実施例7は、本発明の第4の態様に係るブートストラップ回路に関する。上述したように、実施例7に係るブートストラップ回路から構成した走査回路の1段目の回路の構成及び動作について説明する。
【0105】
図15は、走査回路の1段目を構成する実施例7のブートストラップ回路の回路図である。実施例7のブートストラップ回路は、上述した実施例1と同様に、同一導電型(nチャネル型)の第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、及び、第3トランジスタTr3から構成されている。図16は、図15に示すブートストラップ回路の模式的なタイミングチャートである。
【0106】
実施例7のブートストラップ回路は、実施例1において説明したと同様に、第1トランジスタTr1においては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタTr2の一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部OUT1を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)が印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタTr2においては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧Vss(例えば0ボルト)が印加される電圧供給線PS1に接続されており、
第3トランジスタTr3においては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加され、
第1トランジスタTr1のゲート電極と第3トランジスタTr3の一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタTr3がオフ状態になると浮遊状態となるノード部P1を構成するブートストラップ回路である。
【0107】
そして、第2トランジスタTr2のゲート電極には、2相のクロックCK1,CK2のうち他方のクロック(ここではCK2)が印加される。実施例7のブートストラップ回路は、更に、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタTr74のゲート電極は、第5トランジスタTr75の一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタTr75の他方のソース/ドレイン領域には、入力信号IN1が印加され、
2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)は、直列に接続された各第4トランジスタTr74を介して、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加される。また、出力部OUT1と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、ブートストラップ補完容量として容量部Cbが接続されている。
【0108】
図15から明らかなように、この構成によれば、第4トランジスタTr74及び第5トランジスタTr75から成る回路部においてもブートストラップ動作が起こる。第4トランジスタTr74のゲート電極と第5トランジスタTr75の一方のソース/ドレイン領域とは、第5トランジスタTr75がオフ状態になると浮遊状態となるノード部Q1を構成する。第4トランジスタTr74の片側のソース/ドレイン領域と第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域は接続され、ノード部R1を構成する。第4トランジスタTr74の残りのソース/ドレイン領域にはクロックCK1が印加される。ノード部R1は、クロックCK1の影響を受けて変動しやすい。このため、容量部Cbがブートストラップ動作以外の影響を受け難くするために、容量部Cbをノード部R1ではなく出力部OUT1に接続した。このように、実施例7のブートストラップ回路は、ブートストラップ動作が起こる回路部分が複数並列に接続された構成を備えている。符号C74は、第4トランジスタTr74のゲート電極とクロックCK1が印加されるソース/ドレイン領域との間の寄生容量である。符号C75は、第5トランジスタTr75のゲート電極と一方のソース/ドレイン領域との間の寄生容量である。
【0109】
実施例1の説明において、寄生容量を考慮したときの従来のブートストラップ回路の動作に言及した。そして、図3の(A)に示す回路にあっては、ノード部P1を構成する第1トランジスタTr1のゲート電極と、クロックCK1が印加される第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合し、例えば、図3の(B)に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部P1の電位は上昇することを説明した。また、クロックCK1は、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加されているので、ノード部P1の電位の上昇が、第1トランジスタTr1にリークを起こさせる程度まで達してしまうと、出力部OUT1の電位は上昇し、ローレベルを維持することができないといった問題が生ずることを説明した。
【0110】
図15に示す回路においては、ノード部Q1に対して、図3の(A)を参照して説明したと同様の現象が起こる。即ち、ノード部Q1を構成する第4トランジスタTr74のゲート電極と、クロックCK1が印加される第4トランジスタTr74のソース/ドレイン領域とは寄生容量C1により静電的に結合し、図16に示す[期間−T2]や[期間−T6]にあっては、クロックCK1の立ち上がりに応じてノード部Q1の電位は上昇する。
【0111】
しかしながら、クロックCK1の揺れと比べて、ノード部R1の電位は、ブートストラップ動作を除いては相対的に揺れは小さい。これにより、ノード部R1の電位変化によるノード部P1への飛び込みも小さくなり、図3の(A)に示す回路よりもノード部P1の電位の変動を抑えることができる。
【0112】
尚、同一導電型(nチャネル型)の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を2つ以上備える構成とすることもできる。この構成によれば、よりノード部P1の変動を抑制することができる。
【0113】
図17に示す回路は、図15に示すブートストラップ回路に更に第4トランジスタTr74A及び第5トランジスタTr75Aから成る回路部を加えた構成である。2相のクロックCK1,CK2のうち一方のクロック(ここではCK1)は、直列に接続された各第4トランジスタTr74,Tr74Aを介して、第1トランジスタTr1の他方のソース/ドレイン領域に印加される。尚、図17以降の図面については、便宜のため、寄生容量の表示を省略した。
【0114】
尚、実施例1において説明した容量部C11に相当する容量部を備えた構成とすることもできる。図18の(A)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例1において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。あるいは又、実施例2において説明した容量部C31に相当する容量部を備えた構成とすることもできる。図18の(B)は、図15に示すブートストラップ回路において、実施例2において説明した容量部に相当する容量部を備えた構成の回路図を示す。
【0115】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明したブートストラップ回路の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。図19は、実施例1乃至実施例7において説明した構成を適宜組み合わせた構成の一例であるブートストラップ回路である。
【0116】
尚、実施例1乃至実施例7においては、各トランジスタはnチャネル型トランジスタとして説明したが、これに限るものではない。pチャネル型トランジスタから成る構成とすることもできる。この場合には、基本的には上述した実施例においてトランジスタをpチャネル型トランジスタに置き換えると共に、電圧Vssと電圧Vddとを入れ替えた構成とすればよい。
【0117】
図20の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例1のブートストラップ回路の回路図であり、図1に示す回路の1段目に相当する。図20の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例2のブートストラップ回路の回路図であり、図7の(A)に示す回路に相当する。図20の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例3のブートストラップ回路の回路図であり、図8の(A)に示す回路に相当する。
【0118】
図21の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例4のブートストラップ回路の回路図であり、図9に示す回路に相当する。図21の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例5のブートストラップ回路の回路図であり、図13に示す回路に相当する。図21の(C)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例6のブートストラップ回路の回路図であり、図14に示す回路に相当する。
【0119】
図22の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図15に示す回路に相当する。同様に、図22の(B)も、pチャネル型トランジスタを用いて構成した実施例7のブートストラップ回路の回路図であり、図17に示す回路に相当する。
【0120】
図23の(A)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(A)に示す回路に相当する。図23の(B)は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図18の(B)に示す回路に相当する。図24は、pチャネル型トランジスタを用いて構成したブートストラップ回路の回路図であり、図19に示す回路に相当する。
【符号の説明】
【0121】
10・・・有機EL素子、100・・・電源部、101・・・走査回路、102・・・信号出力回路、110・・・インバータ回路、SCL・・・走査線、DTL・・・データ線、TrD・・・駆動トランジスタ、TrW・・・書込みトランジスタ、CH・・・保持容量CH、ELP・・・発光部、CEL・・・発光部の容量、Tr1・・・第1トランジスタ、Tr2・・・第2トランジスタ、Tr3・・・第3トランジスタ、Tr24,Tr24A,Tr44,Tr74,Tr74A・・・第4トランジスタ、Tr75,Tr75A・・・第5トランジスタ、B41・・・反転回路、Tr40,Tr41,Tr42,Tr43・・・トランジスタ、Qn_1,Qn_2,Qn_3,Qn_4・・・トランジスタ、P1,P2,P1A,P1B・・・ノード部、Q1,R1・・・ノード部、N,A・・・ノード部、C1,C2,C3,C24,C44,C74,C75・・・寄生容量、Ca,Cb,Cc,Cap・・・ブートストラップ容量としての容量部、C11,C11A,C31,C31A,C51,C61・・・容量部、OUT1,OUT2・・・出力部、PS1・・・電圧供給線、PS2・・・第2電圧供給線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路であって、
ブートストラップ回路は、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2トランジスタのゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加される、
ブートストラップ回路。
【請求項2】
第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と電圧供給線との間に、容量部が接続されている請求項1に記載のブートストラップ回路。
【請求項3】
第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部が接続されている請求項1に記載のブートストラップ回路。
【請求項4】
同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路であって、
第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
ブートストラップ回路は、更に、同一導電型の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタのゲート電極は、第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタの他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
2相のクロックのうち一方のクロックは、直列に接続された各第4トランジスタを介して、第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に印加される、
ブートストラップ回路。
【請求項5】
出力部と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、容量部が接続されている請求項4に記載のブートストラップ回路。
【請求項1】
同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路であって、
ブートストラップ回路は、同一導電型の第4トランジスタを更に備えており、
第4トランジスタにおいては、
(C−1)一方のソース/ドレイン領域は、反転回路の入力側に接続されると共に、該反転回路の出力側と第2トランジスタのゲート電極とが接続されており、
(C−2)他方のソース/ドレイン領域は、入力信号が印加され、
(C−3)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加される、
ブートストラップ回路。
【請求項2】
第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と電圧供給線との間に、容量部が接続されている請求項1に記載のブートストラップ回路。
【請求項3】
第4トランジスタの一方のソース/ドレイン領域と反転回路の入力側とが接続された部分と第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域との間に、容量部が接続されている請求項1に記載のブートストラップ回路。
【請求項4】
同一導電型の第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタから構成され、
第1トランジスタにおいては、
(A−1)一方のソース/ドレイン領域は、第2トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続され、出力部を構成し、
(A−2)他方のソース/ドレイン領域には、2相のクロックのうち一方のクロックが印加され、
(A−3)ゲート電極は、第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
第2トランジスタにおいては、
(B−1)他方のソース/ドレイン領域は、所定の電圧が印加される電圧供給線に接続されており、
第3トランジスタにおいては、
(C−1)他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
(C−2)ゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
第1トランジスタのゲート電極と第3トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とは、第3トランジスタがオフ状態になると浮遊状態となるノード部を構成するブートストラップ回路であって、
第2トランジスタのゲート電極には、2相のクロックのうち他方のクロックが印加され、
ブートストラップ回路は、更に、同一導電型の第4トランジスタ及び第5トランジスタから成る回路部を少なくとも1つ備えており、
各回路部においては、
(D−1)第4トランジスタのゲート電極は、第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域に接続されており、
(D−2)第5トランジスタの他方のソース/ドレイン領域には、入力信号が印加され、
2相のクロックのうち一方のクロックは、直列に接続された各第4トランジスタを介して、第1トランジスタの他方のソース/ドレイン領域に印加される、
ブートストラップ回路。
【請求項5】
出力部と、第4トランジスタのゲート電極と第5トランジスタの一方のソース/ドレイン領域とが接続された部分との間に、容量部が接続されている請求項4に記載のブートストラップ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−48425(P2013−48425A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201104(P2012−201104)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2008−28559(P2008−28559)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2008−28559(P2008−28559)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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