説明

プレキュアトレッドの製造方法および装置並びにプレキュアトレッド

【課題】加硫時に未加硫トレッド13に付与されている圧力を容易かつ高精度で調節する。
【解決手段】未加硫トレッド13に付与されている圧力を該未加硫トレッド13に直接接触しながら検出する第1、第2検出センサ34、37を加硫金型22内に設け、前記第1、第2検出センサ34、37により検出された圧力に基づき型締め手段25の流体シリンダ40による型締め力を変化させるようにしたので、未加硫トレッド13に加硫金型22から付与されている圧力を容易かつ高精度で所定範囲内に収めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台タイヤに貼付けられて更生タイヤを成形するプレキュアトレッドの製造方法および装置並びにプレキュアトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレキュアトレッドの製造方法・装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−180228号公報
【0004】
このものは、上、下モールドからなり、内部に未加硫トレッドを密閉収納する加硫空間を形成することができる開閉可能な加硫金型と、前記公報には開示されていないが、閉止された加硫金型に型締め力を付与して加硫時に未加硫トレッドを加圧する型締め手段とを備えたもので、下モールドに未加硫トレッドを搬入した後、上、下モールドを閉止して加硫金型の加硫空間に未加硫トレッドを密閉収納し、次に、前記加硫金型に対し型締め手段から型締め力を付与することで未加硫トレッドを加圧しながら加硫し、プレキュアトレッドを製造するようにしている。
【0005】
ここで、前述の未加硫トレッド、例えば踏面側のキャップ層に発泡剤が配合されている場合には、加硫時に発泡剤が発泡して該キャップ層の内部に気泡が成形されるが、このような発泡剤の発泡率は加硫時に未加硫トレッドに付与されている圧力と深い関係がある。例えば、図7に示すように、発泡剤を異なる配合量で配合したゴムを異なる圧力下で加硫すると、発泡率は圧力が上昇するに従い低下するのである。このようなことから、プレキュアトレッド(キャップ層)の発泡率を適切な範囲内とするには、加硫時に未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のプレキュアトレッドの製造方法・装置にあっては、加硫時に型締め手段から加硫金型に付与している型締め力の値を知ることは可能であるため、該型締め力の値から未加硫トレッドに付与されている圧力の値を推測することはできるものの、実際に付与されている圧力の値を知ることはできず、この結果、未加硫トレッドのボリュームにばらつきや加硫空間に対する搬入位置にずれ等がある場合には、前述した発泡率を適切な範囲内とすることが困難であるという課題があった。また、未加硫トレッドに発泡剤が配合されていない場合には、ゴム量が部分的に不足してベアが発生したり、モールド間に未加硫ゴムがはみ出してバリが発生することがあるという課題があった。
【0007】
この発明は、加硫時において未加硫トレッドに付与されている圧力を容易かつ高精度で調節することができるプレキュアトレッドの製造方法および装置並びにプレキュアトレッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、複数のモールドからなる加硫金型を閉止して、該加硫金型内の加硫空間に未加硫トレッドを密閉収納する密閉収納工程と、閉止された加硫金型に対し型締め手段から型締め力を付与することで未加硫トレッドを加圧しながら加硫する加硫工程とを備え、前記未加硫トレッドに対する加硫時に、加硫金型内に設けられ未加硫トレッドに直接接触している検出手段により該未加硫トレッドに付与されている圧力を検出するとともに、該検出された圧力に基づき型締め手段による型締め力を変化させて、未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収まるようにしたプレキュアトレッドの製造方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、複数のモールドからなり、内部に未加硫トレッドを密閉収納する加硫空間を形成することができる開閉可能な加硫金型と、閉止された加硫金型に型締め力を付与して加硫時に未加硫トレッドを加圧する型締め手段と、前記加硫金型内に設けられ、前記未加硫トレッドに付与されている圧力を該未加硫トレッドに直接接触しながら検出する検出手段とを備え、前記検出手段により検出された圧力に基づき型締め手段による型締め力を変化させて、未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収まるようにしたプレキュアトレッドの製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、未加硫トレッドに付与されている圧力を該未加硫トレッドに直接接触しながら検出する検出手段を加硫金型内に設け、前記検出手段により検出された圧力に基づき型締め手段による型締め力を変化させるようにしたので、未加硫トレッドに付与されている圧力を容易かつ高精度で所定範囲内に収めることができる。
【0011】
この結果、発泡剤が配合されている未加硫トレッドを加硫する際、該未加硫トレッドのボリュームにばらつきや加硫空間に対する搬入位置にずれ等があっても、発泡剤の発泡率を容易に適切な範囲内とすることができる。また、未加硫トレッドに発泡剤が配合されていない場合に、前述のようなばらつきやずれがあっても、ベアあるいはバリの発生を容易かつ効果的に抑制することができる。
【0012】
また、請求項3に記載のように構成すれば、未加硫トレッドの長手方向における付与圧力を容易に均一化することができる。さらに、プレキュアトレッドの貼付け面は台タイヤへの貼付け前にバフ加工を行うため、請求項4に記載のような位置に検出センサを設置すれば、検出センサにより接触痕やベアが生じても、これを容易に除去することができる。
【0013】
また、プレキュアトレッドの長手方向両端部は台タイヤへの貼付け前に切断するため、請求項5に記載のような位置に検出センサを設置すれば、検出センサにより接触痕やベアが生じても、これを容易に除去することができる。さらに、請求項6に記載のように構成すれば、複数の未加硫トレッドを同時に加硫する場合にも、発泡率を容易に適切な範囲に収めたり、あるいは、ベア、バリの発生を容易に抑制することができる。また、請求項7に記載のようなプレキュアトレッドは前述した効果を確実に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態1を示す加硫前の概略正面断面図である。
【図2】加硫時の概略正面断面図である。
【図3】一部がブロックで表された図2の側面断面図である。
【図4】更生タイヤのトレッド部近傍を示す子午線断面図である。
【図5】付与圧力と時間との関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施形態2を示す加硫前の概略側面図である。
【図7】発泡率と圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、11は直線状に延びる帯板状をしたプレス機の下モールドであり、この下モールド11の上面には長手方向に延びる成形凹み12が形成され、この成形凹み12の断面形状は更生タイヤ用未加硫トレッド13の断面形状と略同一である。ここで、前記未加硫トレッド13は、路面に接地する踏面13a側に配置されたキャップ層14と、該キャップ層14の裏面側、即ち台タイヤに貼り付けられる貼付け面13b側に積層配置されたベース層15との2層構造で、例えば、押出し機により押し出すことで、あるいは、カレンダーロールを用いて連続帯状に成形される。
【0016】
そして、前記キャップ層14は天然ゴム、合成ゴム(BR、SBR等)、カーボンブラックに発泡剤を混入したゴム組成物から構成されており、この結果、このようなキャップ層14は加硫時に加熱されることで、発泡剤が発泡し内部に多数の独立気泡が形成混入される。ここで、前述の発泡剤としては、例えば、ジニトロソ・ペンタメチレンーテトラアミン、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、高沸点炭化水素化合物の樹脂ミクロカプセル等が有名である。なお、この発明においては、未加硫トレッドとして、全体に発泡剤を配合してものでもよく、あるいは、全く発泡剤を配合していないものでもよい。
【0017】
前記成形凹み12の底面には上方に向かって突出した少なくとも1本、ここでは4本の主骨18が形成され、これらの主骨18は下モールド11の幅方向に離れて配置されるとともに、長手方向に連続して延びている。そして、これら主骨18は加硫時に未加硫トレッド13のキャップ層14に踏面13a側から押し込まれ、該未加硫トレッド13の踏面13aに主骨18と補完関係にある長手方向に延びた主溝19を形成する。なお、前記成形凹み12の底面に前記主骨18に対して傾斜した少なくとも1本の横骨を形成してもよい。
【0018】
21は下モールド11とほぼ同一形状で下面が平坦な帯板状を呈し、プラテンとしての機能をも有する昇降可能な上モールドであり、この上モールド21が下降して下モールド11に押し付けられると、成形凹み12は上端開口が閉止されて密閉された一定容積の加硫空間となる。そして、台タイヤへの貼付け前に前記未加硫トレッド13を成形凹み12内に踏面13aが下側となるようにして搬入した後、上モールド21により成形凹み12を閉止すると、未加硫トレッド13は加硫空間に密閉収納される。前述した複数、ここでは2個の下、上モールド11、21は全体として、内部に未加硫トレッド13を密閉収納する加硫空間を形成することができる開閉可能な加硫金型22を構成し、この加硫金型22は台タイヤへの貼付け前に未加硫トレッド13に対し加硫を施すことができるとともに、上モールド21が昇降することで開閉することができる。
【0019】
25は型締め手段であり、この型締め手段25は閉止された加硫金型22に対し上下方向の型締め力(挟持力)を付与することができるが、この加硫金型22内に未加硫トレッド13が密閉収納されていると、前記型締め力により未加硫トレッド13は加圧され、ある値の圧力が付与される。そして、型締め手段25によって未加硫トレッド13に対し圧力が付与されているときに該未加硫トレッド13が加硫金型22によって加硫されると、該未加硫トレッド13はプレキュアトレッド26となるが、このとき、踏面13aに主骨18が押し込まれて主溝19が形成されるとともに、キャップ層14に配合されている発泡剤が発泡し、キャップ層14内に多数の微小な独立気泡が形成混入される。
【0020】
その後、前記プレキュアトレッド26は、図4に示すように、台タイヤ27の半径方向外側に貼付けられて更生タイヤ28が成形されるが、この更生タイヤ28の氷雪性能、特にブレーキ性能はプレキュアトレッド26のキャップ層14における発泡剤の発泡率に大きな影響を受け、この発泡剤の発泡率は前述した加硫時の未加硫トレッド13に対する付与圧力と深い関係がある。このようなことから優れた氷雪性能を発揮する更生タイヤ28を成形するには、加硫時の未加硫トレッド13に対する付与圧力が適切な所定範囲内となるよう調節する必要がある。
【0021】
このため、この実施形態においては、加硫時に未加硫トレッド13に付与されている圧力を該未加硫トレッド13に直接接触しながら検出する検出手段31を加硫金型22内に設け、該検出手段31により検出された圧力(面圧)に基づいて型締め手段25による型締め力を変化させるようにしたのである。この結果、未加硫トレッド13に付与されている圧力を容易かつ高精度で所定範囲内に収めることができ、これにより、未加硫トレッド13のボリュームにばらつきや、未加硫トレッド13の加硫空間に対する搬入位置にずれ等があっても、発泡剤の発泡率を容易に適切な範囲内とすることができる。
【0022】
ここで、前述の検出手段31は上モールド21の下面に形成された複数の収納穴33にそれぞれ収納固定された第1検出センサ34を有し、これら複数の第1検出センサ34は上モールド21の下面において露出しているため、加硫時に未加硫トレッド13の貼付け面13bに直接接触する。前述のように第1検出センサ34を未加硫トレッド13に直接接触する位置に設置すると、該第1検出センサ34により接触痕やベアがプレキュアトレッド26の表面に生じるが、前述のような位置に第1検出センサ34を設置すれば、台タイヤ27への貼付け前にプレキュアトレッド26の貼付け面13bに対して接着力を向上させるべくバフ加工が行われるため、前述した接触痕やベアは容易に除去され、問題となることはない。
【0023】
また、前述した複数の第1検出センサ34は、未加硫トレッド13の長手方向にほぼ等距離離して設置しているので、未加硫トレッド13の長手方向にほぼ等距離離れた複数位置で付与圧力を検出することができる。さらに、前述の検出手段31は成形凹み12(下モールド11)の長手方向両端面に形成された複数(2個)の収納穴36にそれぞれ収納固定された第2検出センサ37を有し、これら複数の第2検出センサ37は成形凹み12の長手方向両端面に露出しているため、加硫時に未加硫トレッド13の長手方向両端面にそれぞれ直接接触する。
【0024】
前述のように第2検出センサ37を未加硫トレッド13に直接接触する位置に設置すると、該第2検出センサ37により接触痕やベアがプレキュアトレッド26の表面に生じるが、前述のような位置に第2検出センサ37を設置すれば、台タイヤ27への貼付け直前に接合用の新規面を露出させるべくプレキュアトレッド26の長手方向両端部が切断されるため、前述した接触痕やベアは容易に除去され、問題となることはない。ここで、前述の第1、第2検出センサ34、37としては、例えば、静電容量式圧力センサ、半導体圧力センサ、圧電式圧力センサ等を用いることができる。また、前述した複数の第1、第2検出センサ34、37は全体として、前記検出手段31を構成する。
【0025】
一方、前記型締め手段25は下モールド11の直下に設置された上下方向に延びる複数の押圧機構としての流体シリンダ40を有し、これら流体シリンダ40は未加硫トレッド13の長手方向にほぼ等距離離れて配置されるとともに、そのピストンロッド41の先端は下モールド11の下面に連結されている。この結果、未加硫トレッド13に対し加硫を施すとき、前記流体シリンダ40(型締め手段25)から加硫金型22に型締め力(押付け力)を付与すると、加硫金型22内の未加硫トレッド13に圧力が付与される。なお、この発明においては型締め手段を加硫金型の直上に設置し、上方から加硫金型に型締め力を付与するようにしてもよい。
【0026】
44は各流体シリンダ40に対応して設置された流体シリンダ40と同数の圧力制御弁であり、これらの圧力制御弁44と、対応する流体シリンダ40とは給排通路45により接続されている。また、前記圧力制御弁44とポンプ46とは供給通路47を介して接続され、さらに、前記圧力制御弁44とタンク48とは排出通路49を介して接続されている。そして、いずれかの圧力制御弁44が制御されると、ポンプ46から供給された流体は圧力が調節されて対応する流体シリンダ40に流入し、加硫金型22に対する型締め力(押付け力)が変更される。前述した圧力制御弁44、給排通路45、ポンプ46、供給通路47、タンク48、排出通路49は全体として、流体シリンダ40の押付け力をコントロールするコントロール機構50を構成する。なお、この発明においては、前記押圧機構をねじ機構、ラック・ピニオン機構、クランク機構等から構成してもよい。
【0027】
51はCPU等の制御手段であり、この制御手段51には前記検出手段31、即ち、第1、第2検出センサ34、37により検出された圧力(検出信号)がリード線52を通じて入力される。また、前記制御手段51と圧力制御弁44とはリード線53を通じて接続されている。そして、前記制御手段51は検出手段31(第1、第2検出センサ34、37)から入力された検出信号(未加硫トレッド13に対する付与圧力)が予め記憶している許容範囲に収まっているか否かを判断し、前記検出信号が許容範囲から外れているときには、演算を行っていずれの流体シリンダ40の押付け力をどの程度の値とすればよいかを求めるとともに、リード線53を通じて前記求めた流体シリンダ40の圧力制御弁44を制御し、該流体シリンダ40から加硫金型22に付与される型締め力を変化させる。
【0028】
このように制御手段51は検出手段31により検出された圧力に基づいて型締め手段25による型締め力を変化させることで、加硫金型22から未加硫トレッド13に付与されている圧力を所定範囲内に収まるように調節し、これにより、キャップ層14における発泡剤の発泡率を適切な範囲内とする。ここで、前述のように型締め手段25を未加硫トレッド13の長手方向に離れて設置された複数の押圧機構(流体シリンダ40)から構成するとともに、検出手段31を未加硫トレッド13の長手方向に離れて設置された複数の第1、第2検出センサ34、37から構成すれば、未加硫トレッド13の長手方向における付与圧力を容易に均一化することができる。
【0029】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
前述のようなプレキュアトレッド26を製造する場合には、押出し機等を用いてキャップ層14、ベース層15からなる2層構造の連続帯状をした未加硫トレッド13を成形した後、所定長さに次々に切断する。次に、このように切断された未加硫トレッド13を成形凹み12内に踏面13aが下側となるようにして搬入した後、上モールド21を下降させて加硫金型22を閉止し、該未加硫トレッド13を加硫金型22の加硫空間に密閉収納する。
【0030】
次に、ポンプ46からの流体を全ての流体シリンダ40に流入させることで、これら流体シリンダ40(型締め手段25)から加硫金型22に型締め力を付与し、加硫金型22内の未加硫トレッド13に圧力を付与する。この状態で加硫金型22により未加硫トレッド13に対し加硫を施すが、この加硫時、踏面13aに主骨18が押し込まれて主溝19が形成されるとともに、キャップ層14に配合されている発泡剤が発泡し、キャップ層14内に多数の微小な独立気泡が形成混入される。また、前述の加硫時、未加硫トレッド13の表面に直接接触している第1、第2検出センサ34、37は、該未加硫トレッド13に付与されている圧力(面圧)を常時検出し、その検出圧力(検出信号)を制御手段51に出力する。なお、前記第1、第2検出センサ34、37による検出は断続的、例えば 1秒毎に行うようにしてもよい。
【0031】
ここで、未加硫トレッド13のボリュームにばらつきや、加硫空間に対する未加硫トレッド13の搬入位置にずれ等があると、未加硫トレッド13の一部あるいは全体における付与圧力が所定範囲Aから外れる、例えば図5に示すように所定範囲Aより高圧となるが、このような場合には、制御手段51は検出手段31(第1、第2検出センサ34、37)から入力された検出信号が許容範囲から外れたと判断するとともに、演算を行っていずれの流体シリンダ40の型締め力をどの程度の値とすればよいかを求める。その後、該制御手段51はリード線53を通じて前記求めた流体シリンダ40の圧力制御弁44を制御し、該流体シリンダ40の型締め力を前述の求めた値まで変化させる。
【0032】
これにより、加硫時に加硫金型22から未加硫トレッド13に付与される圧力を容易かつ高精度で所定範囲に収めることができ、キャップ層14における発泡剤の発泡率は適切な範囲内となる。このようにして未加硫トレッド13がプレキュアトレッド26となると、加硫金型22を開放した後、プレキュアトレッド26を加硫金型22から取り出し、バフローラにより貼付け面13bをバフ加工して粗面とするとともに、プレキュアトレッド26の長手方向両端部を切断する。これにより、プレキュアトレッド26の貼付け面13bおよびプレキュアトレッド26の長手方向両端面に生じた第1、第2検出センサ34、37による接触痕やベアは除去される。
【0033】
次に、台タイヤ27の半径方向外側に未加硫ゴムからなるクッションゴム層を貼付けた後、前記プレキュアトレッド26を前記クッションゴム層を間に介装した状態で台タイヤ27の半径方向外側に貼付け、その後、これら台タイヤ27、プレキュアトレッド26に対し加硫を施して更生タイヤ28とする。このとき、キャップ層14の発泡率を前述のように適切な範囲内とすることができたので、更生タイヤ28の氷雪性能を容易に向上させることができる。
【0034】
図6は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、下モールド11および上モールド21からなる加硫金型22を上下に複数段重ね合わせているが、最下段に位置する加硫金型22の下モールド11を下基台56の上面に固定するとともに、最上段に位置する加硫金型22の上モールド21を昇降可能な上基台57の下面に固定し、さらに、中間段に位置する加硫金型22の下モールド11と上モールド21とを互いに締結するようにしている。
【0035】
そして、開放している加硫金型22の下モールド11と上モールド21との間にそれぞれ未加硫トレッド13を搬入した後、上基台57、加硫金型22を下降させて複数の加硫金型22をほぼ同時に閉止する。次に、前述と同様の型締め手段を用いて複数の未加硫トレッド13に対し所定範囲内の圧力を付与しながら加硫金型22により同時に加硫を施す。この際、全段の加硫金型22に前述と同様の検出手段を設け、各加硫金型22によって加硫されている未加硫トレッド13の圧力を検出しながら型締め力を調節する。このようにすれば、複数の未加硫トレッド13を同時に加硫する場合にも、発泡率を容易に適切な範囲内に収めることができる。
【0036】
なお、前述の実施形態においては、未加硫トレッド13の一部(キャップ層14)に発泡剤を配合したが、この発明においては、未加硫トレッドとして全体に発泡剤を配合してものを用いてもよく、あるいは、全く発泡剤を配合しないものを用いてもよい。そして、後者の場合には、未加硫トレッドのボリュームにばらつきや加硫空間に対する搬入位置にずれ等があっても、未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収めることで、ベアあるいはバリの発生を容易かつ効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、台タイヤに貼付けられて更生タイヤを成形するプレキュアトレッドの産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
11、21…モールド 13…未加硫トレッド
13b…貼付け面 22…加硫金型
25…型締め手段 27…台タイヤ
31…検出手段 34、37…検出センサ
40…押圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモールドからなる加硫金型を閉止して、該加硫金型内の加硫空間に未加硫トレッドを密閉収納する密閉収納工程と、閉止された加硫金型に対し型締め手段から型締め力を付与することで未加硫トレッドを加圧しながら加硫する加硫工程とを備え、前記未加硫トレッドに対する加硫時に、加硫金型内に設けられ未加硫トレッドに直接接触している検出手段により該未加硫トレッドに付与されている圧力を検出するとともに、該検出された圧力に基づき型締め手段による型締め力を変化させて、未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収まるようにしたことを特徴とするプレキュアトレッドの製造方法。
【請求項2】
複数のモールドからなり、内部に未加硫トレッドを密閉収納する加硫空間を形成することができる開閉可能な加硫金型と、閉止された加硫金型に型締め力を付与して加硫時に未加硫トレッドを加圧する型締め手段と、前記加硫金型内に設けられ、前記未加硫トレッドに付与されている圧力を該未加硫トレッドに直接接触しながら検出する検出手段とを備え、前記検出手段により検出された圧力に基づき型締め手段による型締め力を変化させて、未加硫トレッドに付与されている圧力を所定範囲内に収まるようにしたことを特徴とするプレキュアトレッドの製造装置。
【請求項3】
前記型締め手段を未加硫トレッドの長手方向に離れて設置された複数の押圧機構から構成する一方、前記検出手段を未加硫トレッドの長手方向に離れて設置された複数の検出センサから構成した請求項2記載のプレキュアトレッドの製造装置。
【請求項4】
前記検出センサを未加硫トレッドの貼付け面に直接接触する位置に設置した請求項3記載のプレキュアトレッドの製造装置。
【請求項5】
前記検出センサを未加硫トレッドの長手方向両端面にそれぞれ直接接触する位置に設置した請求項3記載のプレキュアトレッドの製造装置。
【請求項6】
前記加硫金型を上下に複数段重ね合わせ、これら複数の加硫金型により複数の未加硫トレッドを付与圧力を調節しながら同時に加硫するようにした請求項2記載のプレキュアトレッドの製造装置。
【請求項7】
前記請求項1に記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とするプレキュアトレッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247443(P2010−247443A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99847(P2009−99847)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】