説明

プローブ観察装置、表面性状測定装置

【課題】簡便な操作でプローブを高精度に観察できるプローブ観察装置を提供する。
【解決手段】プローブ210を撮像するカメラ230と、カメラ230にて取得した画像データを画像処理する画像処理部と、画像処理部にて画像処理された画像データを表示するモニタ400と、手動操作にて画像処理内容を入力指令するマウス500とを備える。画像処理部は、マウスにて入力される指令に応じて画像データを加工処理する画像データ加工処理部を備える。カメラ230は、低倍率のレンズ系を有し、プローブ210を視野内に入れた状態でプローブ210に対する相対位置が固定された状態で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ観察装置、表面性状測定装置に関する。例えば、被測定物表面性状の測定に使用されるプローブをモニタ等で観察するプローブ観察装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物表面を走査して被測定物の表面性状や立体的形状を測定する表面性状測定装置が知られ、例えば、粗さ測定機、輪郭形状測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。このような表面性状測定装置において、被測定物表面を検出するためにプローブが使用される。そして、近年では、被測定物が精密になってきていることや非常に高精度の測定精度が求められるようになってきているために、プローブが非常に微細になってきている。そのため、プローブを肉眼にて直接視認することが困難となってきている。そこで、プローブを測定ポイントに位置合わせする際にプローブを拡大レンズ等で拡大して観察することが行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1には、被測定物表面を検出するプローブと、このプローブを撮像するビデオカメラと、ビデオカメラで撮像された画像を表示するモニタと、を備えた測定装置が開示されている。そして、プローブとビデオカメラとの少なくともいずれか一方が回転可能または旋回可能に設けられ、プローブがビデオカメラの撮像領域内に入るように互いの位置を調整することが可能となっている。この構成において、プローブと測定ポイントを同時にビデオカメラの視野内に入るように調整し、モニタの表示を見ながらプローブを測定ポイントにアプローチさせる。
【0004】
【特許文献1】特表平7−505958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、プローブが非常に微細である場合、プローブを十分に拡大して観察するためにはビデオカメラが備える拡大レンズの倍率を大きくしなければならない。
しかしながら、拡大レンズの倍率が大きくなるにつれてビデオカメラの視野が狭くなり、ビデオカメラの視野内にプローブを入れるように調整することが非常に困難になってくる。そのため、ビデオカメラの視野内にプローブを入れるように互いの位置を調整するのに時間がかかってしまい、測定効率が悪くなるという問題が生じる。その一方、拡大倍率の小さい拡大レンズを使用すれば、視野は広いのでビデオカメラの視野内にプローブを入れるように調整することはもちろん簡単になる。しかしながら、微細なプローブを十分に観察することができない。そのため、プローブを正確に測定ポイントにアプローチさせることができなくなり、測定の精度が低くなるという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、簡便な操作でプローブを高精度に観察できるプローブ観察装置、表面性状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプローブ観察装置は、プローブにて被測定物表面を検出して前記被測定物表面性状を測定する測定装置本体部の前記プローブを撮像するとともにこのプローブの画像を表示するプローブ観察装置であって、前記プローブを撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理部にて画像処理された画像データを表示する表示手段と、手動操作にて前記画像処理部における画像処理内容を入力指令する操作手段と、を備え、前記画像処理部は、前記操作手段にて入力される指令または測定パートプログラムから入力される指令に応じて画像データを加工処理する画像データ加工処理部を備え、前記操作手段にて入力される指令または測定パートプログラムから入力される指令によってプローブ画像が操作可能であることを特徴とする。
【0008】
このような構成において、プローブが撮像手段により撮像される。すると、撮像手段により撮像された画像データは画像処理部において画像処理される。画像処理部における画像処理は操作手段にて入力された指令または測定パートプログラムから入力される指令に基づいて行われる。画像処理としては、例えば、画像の一部のみを拡大するデジタルズーム処理などが例として挙げられる。画像処理された画像データは表示手段にて表示される。この表示手段に表示された画像によりプローブを観察する。例えば、微細なプローブであってもデジタルズーム処理により拡大等されて表示されるので、ユーザーは明瞭にプローブを観察することができる。
【0009】
このような構成によれば、撮像した画像データを画像データ加工処理部によって画像処理できる。したがって、プローブの画像を拡大処理等することで表示手段にプローブの画像を明瞭に表示することができる。表示手段の表示によりプローブを明瞭に観察することができるので、例えば、プローブを測定ポイントに正確にアプローチさせることができる。
【0010】
また、画像データ加工処理部による画像処理によって例えばプローブを拡大表示させることができるので、撮像手段自体が有するレンズ系の倍率を小さくすることができる。このような低倍率のレンズ系であれば高倍率レンズである場合に比べて撮像手段の視野が広い。撮像手段の視野が広いので、レンズの方向をプローブの方向に向けておけばプローブを容易に視野に入れることができる。したがって、プローブが撮像手段の視野内に入るようにプローブと撮像手段とで互いの相対位置を微調整する必要がない。よって、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0011】
ここで、測定パートプログラムとは、予め設定された測定の手順に従って測定動作を実行するように組まれたプログラムであり、このプログラムによって測定ポイントへのプローブの移動、画像の拡大縮小、測定データのサンプリング等が実行される。
【0012】
本発明では、前記撮像手段は、前記プローブの像を100倍以下の倍率で拡大するレンズ系を有していることが好ましい。
【0013】
このような構成において、レンズ系が100倍以下であれば、高倍率レンズに比べて撮像手段の視野が広いので、レンズの方向をプローブの方向に向けておけばプローブを容易に視野に入れることができる。よって、プローブが撮像手段の視野内に入るようにプローブと撮像手段とで互いの相対位置を微調整する必要がなく、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0014】
なお、具体的には、レンズ倍率を2倍〜4倍とし、デジタルズーム処理等の画像処理による倍率を20倍程度とし、トータルで40倍〜80倍程度にしてもよい。
【0015】
本発明では、前記撮像手段を直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させる3軸直交駆動機構を備えていることが好ましい。
【0016】
このような構成において、撮像手段を3軸直交駆動機構によりX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させて、撮像手段の視野内にプローブを入れることができる。
ここで、撮像手段のレンズ倍率が低倍である場合には、レンズの視野が広いので、3軸直交駆動機構にて撮像手段を大まかに移動させれば撮像手段の視野内にプローブを入れることができる。そして、画像データ加工処理部によって画像データを処理できるので、必ずしもプローブを視野の中央に調整する必要もないため、3軸直交駆動機構による撮像手段の位置調整は簡単であり、測定の手間が簡略化されて測定効率が向上する。
【0017】
本発明では、前記撮像手段は、前記プローブを視野内に入れた状態で前記プローブに対する相対位置が固定された状態で設けられていることが好ましい。
【0018】
ここで、撮像手段とプローブとの相対位置を固定した状態で撮像手段が設けられているとは、例えば、プローブを取り付け固定するためのプローブ取付部を測定装置本体部が備えている場合に、このプローブ取付部にプローブを取り付け、さらに、撮像手段もこのプローブ取付部に取り付け固定することが例として挙げられる。
また、レンズ系の倍率としては比較的低い倍率であればよく、15倍、10倍、5倍などでもよい。
【0019】
このような構成によれば、プローブが撮像手段の視野内に入るようにプローブと撮像手段とで互いの相対位置を微調整する必要がないので、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0020】
本発明では、前記操作手段は、前記表示手段の表示画面上の所定領域を選択領域として選択する領域選択指令、および、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を所定位置に移動させる移動指令を入力可能であり、前記画像データ加工処理部は、前記領域選択指令にて選択された前記選択領域を認識するとともに前記選択領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を前記移動指令に応じた位置に移動させる領域移動処理部と、を備えることが好ましい。
【0021】
このような構成において、操作手段により指令が入力されると、画像データ加工処理部において入力された指令に従った画像処理が行われる。例えば、撮像手段の視野の隅にプローブが位置している場合において、操作手段により表示画面上の所定領域としてプローブを含む所定領域を選択する領域選択指令を入力する。すると、操作手段により選択された領域が選択領域認識部にて認識され、撮像手段にて取得される画像データからその選択領域の部分が抽出される。さらに、操作手段により選択領域を所定位置、例えば、表示画面の中央に移動させる移動指令を入力する。すると、領域移動処理部によって移動指令に応じた位置に選択領域が移動される。選択領域が移動されることにより表示手段の表示画面上ではプローブが画面の中央に表示される。表示画面の中央に表示されたプローブの画像によりユーザーがプローブを明瞭に観察することができるので、例えば、プローブを測定ポイントに正確にアプローチさせることができる。また、表示画面上で領域を選択してこの選択領域を例えば表示画面の中央等に移動させることができるので、実際にプローブが撮像手段の視野の中央に位置するようにプローブと撮像手段との相対位置を調整する必要がなく、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0022】
本発明では、前記操作手段は、前記表示手段の表示画面上の所定領域を選択領域として選択する領域選択指令、および、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を所定の大きさに拡大する拡大指令を入力可能であり、前記画像データ加工処理部は、前記操作手段にて選択された前記選択領域を認識するとともに選択領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を前記拡大指令に応じた大きさに拡大する領域拡大処理部と、を備えることが好ましい。
【0023】
このような構成において、操作手段により指令が入力されると、画像データ加工処理部において入力された指令に従った画像処理が行われる。例えば、操作手段により表示画面上の所定領域としてプローブを含む所定領域を選択する領域選択指令を入力する。すると、操作手段により選択された領域が選択領域認識部にて認識され、撮像手段にて取得される画像データからその選択領域の部分が抽出される。さらに、操作手段により選択領域を所定の大きさに拡大する拡大指令を入力する。すると、領域拡大処理部によって拡大指令に応じた大きさに選択領域が拡大される。
選択領域が拡大されることにより表示手段の表示画面上ではプローブが拡大されて表示される。表示画面上で拡大表示されたプローブの画像をみてユーザーがプローブを明瞭に観察することができるので、例えば、プローブを測定ポイントに正確にアプローチさせることができる。また、表示画面上で領域を選択してこの選択領域を拡大できるので、撮像手段自体が有するレンズ系の倍率は低倍率でもよく、レンズ系の倍率を低倍率とすることにより、撮像手段の視野が広くなり、視野内にプローブを入れることが容易となる。
さらには、視野が広ければ、撮像手段をプローブの方向に向けて固定しておいてもプローブを視野内に入れることができるので、プローブと撮像手段との位置調整を行う必要がなく、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。また、当初は倍率を小さくしてプローブ全体および被測定物全体を表示画面上に表示させておき、徐々に測定ポイント周辺を切り出して拡大できるので、プローブを測定ポイントにアプローチさせるのに操作性がよい。
【0024】
本発明では、前記画像データ加工処理部は、予め設定された測定ポイントと前記プローブとを含む領域を認識するとともに認識した領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域認識部にて抽出された領域を前記測定ポイントと前記プローブとの距離に応じて予め設定された拡大率で拡大する領域拡大処理部と、を備えることが好ましい。
【0025】
例えば、測定ポイントの座標を予め入力しておいて、プローブがその測定ポイントに近づいたら自動的に測定ポイントを拡大するようにしてもよい。
このような構成によれば、ユーザーの操作が非常に簡便になる。
【0026】
本発明の表面性状測定装置は、前記プローブ観察装置と、プローブを有する測定装置本体部と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、表示手段に表示されるプローブの画像によってプローブを明瞭に観察することができるので、例えば、測定部位にプローブを正確にアプローチさせることができる。その結果、測定精度が高い表面性状測定装置とすることができる。
また、プローブと撮像手段との互いの位置を調整する必要がないので、測定の手間を簡略化して測定効率が高い表面性状測定装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の表面性状測定装置に係る第1実施形態について説明する。
図1は、表面性状測定装置100の全体構成を示す図である。
図2は、カメラ230にてプローブ210を撮像している状態を示す図である。
【0029】
表面性状測定装置100は、三次元的に移動可能なプローブ210およびこのプローブ210を観察するカメラ(撮像手段)230を有する測定装置本体部200と、測定装置本体部200の動作制御およびカメラ230にて撮像された画像データの画像処理を行う中央制御部300と、測定データおよび画像データを表示するモニタ(表示手段)400と、ユーザーが手動操作にて動作指令を入力するためのマウス(操作手段)500と、を備えている。
【0030】
測定装置本体部200は、プローブ210と、このプローブ210を被測定物表面に沿って三次元的に移動させる移動機構としての三次元駆動機構220と、プローブ210を観察するカメラ230と、を備えている。
【0031】
プローブ210としては、例えば、先端に接触部212を有するスタイラス211を軸方向に定常振動させるとともに、接触部212が被測定物表面に当接した際のスタイラス211の振動変化を検出する加振型接触式プローブ210が例として挙げられる。この加振型接触式プローブ210の接触部212が被測定物表面に当接する際の測定力を一定にした状態で被測定物表面を倣い走査してもよい。あるいは、加振型接触式プローブ210の接触部212を被測定物表面に接触させた後に離間させるタッチ測定を行ってもよい。
【0032】
三次元駆動機構220は、従来の三次元測定装置に用いられるX、YおよびZ方向スライド機構を備えたものが利用される。具体的には、三次元駆動機構220は、載物台240に対して前後にスライド移動可能に立設された門型フレーム221と、この門型フレーム221の梁部222を左右にスライド移動可能に設けられたZコラム223と、このZコラム223内を上下にスライド可能に設けられたZスピンドル224と、を備える。
このZスピンドル224の下端にプローブ210とカメラ230とが設けられている。すなわち、このZスピンドル224の下端がプローブ取付部となっている。また、三次元駆動機構220の各軸には駆動量を検出するエンコーダ225(図3参照)が設けられている。
【0033】
カメラ(撮像手段)230は、図示しない光学系を備える。
光学系は対物レンズ等のレンズ光学系およびCCD等の撮像光学系により構成される。
カメラ230は、Zスピンドル224の下端に設けられている。カメラ230の向きはプローブ210を視野内に入れるように調整可能であるが、視野内にプローブ210の接触部212が入る向きに調整された状態で通常は固定されている。そして、カメラ230の向きあるいはプローブ210の位置を調整しなくても視野内にプローブ210の接触部212が十分に入る程度に低い倍率の対物レンズが使用される。対物レンズの倍率としては、例えば、3倍〜20倍程度である。
【0034】
図3は、中央制御部の構成を示す図である。
中央制御部300は、三次元駆動機構220の動作制御により測定動作を制御する測定動作制御部310と、エンコーダ225による検出結果に基づいて被測定物表面性状を算出する形状解析部320と、カメラ230にて撮像された画像データを画像処理する画像処理部330と、測定データおよび画像データを出力処理するデータ出力部360と、中央制御部全体の動作制御を行う中央処理装置(CPU)370と、を備える。
【0035】
測定動作制御部310は、三次元駆動機構220の門型フレーム221、Zコラム223およびZスピンドル224の駆動量を制御する。具体的には、測定動作制御部310は、プローブ210を被測定物表面に当接させた状態でプローブ210にて被測定物表面を倣い走査するように三次元駆動機構220の動作制御を行う。また、測定動作制御部310は、エンコーダ225に所定のサンプリングピッチでプローブ210の変位量をサンプリングさせる。サンプリング結果は形状解析部320に出力される。
【0036】
形状解析部320は、エンコーダ225にて検出されたプローブ210の変位に基づいて被測定物の表面形状を求める。求められた被測定物表面の形状データはデータ出力部360を介してモニタ400に表示される。
【0037】
画像処理部330は、カメラ230にて撮像された画像データを取り込んでバッファする画像取込部340と、画像取込部340に取り込まれた画像データをユーザーの指令に従って加工する画像データ加工処理部350と、を備えている。
画像取込部340は、カメラ230からの画像信号がデジタル信号であればそのままデジタルデータとして記憶するが、カメラ230からの画像信号がアナログ信号である場合にはデジタル変換したうえでデジタルデータとして記憶する。画像データ加工処理部350は、選択領域認識部351と、領域移動処理部352と、領域拡大処理部353と、を備えている。これら各部の動作については図4から図7のモニタ画面例を参照しながら後述する。
【0038】
ここで、カメラ230と、画像処理部330と、モニタ400と、マウス500と、によりプローブ観察装置が構成されている。
【0039】
このような構成を備える表面性状測定装置100によって被測定物を測定する動作について説明する。
まず、載物台240に被測定物をセットし、被測定物の測定部位にプローブ210の接触部212を当接させる。ここで、プローブ210の接触部212を測定部位にアプローチさせるにあたってはモニタ400の表示を見ながらプローブ位置の調整を行う。
【0040】
カメラ230がプローブ210の接触部212を視野に入れた状態で固定されているので、カメラ230によってプローブ210の接触部212が撮像される。
撮像された画像データは、画像取込部340に取り込まれてデジタル画像信号として一旦バッファされる。そして、画像取込部340からデータ出力部360を介して画像データがモニタ400に出力されてモニタ400にプローブ210の接触部212が表示される。
【0041】
ここで、プローブ210の接触部212が視野に入るようにカメラ230の向きが設定されているが、必ずしも接触部212がカメラ視野の中央に位置しているとは限らない。
図4は、カメラ230で撮像されたプローブ210の接触部212がモニタ400に表示されている状態を示す図である。
例えば、図4に示されるように、プローブ210の接触部212がカメラ視野の隅に位置する場合もありうる。このような場合、ユーザーは、プローブ210の接触部212がモニタ画面の略中央領域に表示されるように画像データの加工処理を指令する。
【0042】
この画像データの加工処理にあたって、まず、ユーザーは、表示画面の中央に移動させたい領域を選択する。例えば、図4に示されるように、マウス500を操作して表示画面上のマウスポインタにより領域を囲んで選択する。
このように領域の選択操作が行われると、選択領域認識部351にて選択された領域が認識される。そして、選択領域認識部351は、画像データ中の選択領域を抽出して別フレームの画像データにするとともに、モニタ上には選択領域401を囲む囲み線402を表示させる。
【0043】
次に、ユーザーは、選択した領域をモニタ表示画面の略中央に移動させるように画面上において選択領域401を画面の略中央に引っ張ってくる。
例えば、マウス500によって選択領域401をドラッグする。
このように選択領域を移動させるように選択領域401をドラッグする操作が行われると、領域移動処理部352がドラッグ操作にあわせて選択領域401を移動させる。すると、図5に示されるように、選択領域401が画面中央において別ウィンドウ403として表示される。このウィンドウ403内にプローブ210の接触部212が表示されているので、ユーザーは表示画面においてプローブ210の接触部212を見ながら接触部212を測定部位にアプローチさせる。
【0044】
また、カメラ230の対物レンズは、位置調整しなくてもプローブ210の接触部212を視野内に捉えることができる程度の低倍率レンズとしているので、表示画面上においてプローブ210の接触部212を確認するには拡大率が十分であるとは限らない。例えば、図6に示されるようにプローブ210の接触部212が十分に拡大されていない場合もありうる。
このような場合、ユーザーは、プローブ210の接触部212がモニタ画面上で拡大されるように画像データの加工処理を指令する。すなわち、ユーザーは、拡大したい領域を囲んで選択する。
この選択領域401は選択領域認識部351にて認識される。そして、ユーザーが表示画面上において選択領域401を拡大するように選択領域401の隅を引っ張る(ドラッグする)。このように選択領域401を拡大するように選択領域401の隅をドラッグする操作が行われると、領域拡大処理部353がドラッグ操作にあわせて選択領域401を拡大する。すると、図7に示されるように、選択領域401が拡大され、別ウィンドウ404として表示される。
ユーザーは、このウィンドウ404内で拡大されたプローブ接触部212を見ながら接触部212を測定部位にアプローチさせる。
【0045】
上記の操作によってプローブ210の接触部212が測定部位にアプローチしたところで、測定動作制御部310による測定動作が実行される。すなわち、プローブ接触部212が一定の測定力で被測定物表面に当接しながら被測定物表面を倣い走査するように三次元駆動機構220が測定動作制御部310にて駆動制御される。このときのプローブ変位が三次元駆動機構220の各軸に設けられたエンコーダ225で検出される。この検出値が形状解析部320にて解析されて、解析結果がモニタ400上に表示される。
【0046】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)カメラ230で撮像した画像データを画像データ加工処理部350によって画像処理できるので、プローブ210の画像を拡大処理等することでモニタ400にプローブ210の画像を明瞭に表示することができる。よって、ユーザーがモニタ400の表示をみてプローブ210を明瞭に観察することができ、プローブ210を測定ポイントに正確にアプローチさせることができる。
【0047】
(2)画像データ加工処理部350による画像処理によってモニタ400の表示を調整することでプローブ210を拡大表示等させることができるので、カメラ自体が有するレンズ系の倍率を小さくすることができる。低倍率のレンズ系によりカメラ230の視野を広くすることで、カメラ視野内にプローブ210を容易に入れることができる。
したがって、プローブ210がカメラ230の視野内に入るようにプローブ210とカメラ230との互いの相対位置を微調整する必要がない。よって、操作を簡便とし、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0048】
(3)マウス500によって移動指令を入力する操作によりプローブ210を表示画面の中央に表示させることができる。このとき、実際にプローブ210がカメラ230の視野の中央に位置するようにプローブ210とカメラ230との相対位置を調整する必要がなく、単なるマウス500の操作のみでよいので、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0049】
(4)マウス500によって拡大指令を入力することにより、プローブ210をモニタ400上で拡大表示させることができる。よって、カメラ自体が有するレンズ系の倍率は低倍率でもよく、レンズ系の倍率を低倍率とすることにより、カメラ230の視野が広くなり、視野内にプローブ210を入れることが容易となる。さらには、視野が広ければ、カメラ230をプローブ210の方向に向けて固定しておいてもプローブ210を視野内に入れることができるので、プローブ210とカメラ230との位置調整を行う必要がなく、測定の手間を簡略化して測定効率を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
プローブ210としては、被測定物の測定ポイントに当接あるいは近接して被測定物表面を検出できる構成であればよい。例えば、加振型接触式プローブ210の他、スタイラス211を三次元的に微小変位可能に支持するとともにスタイラス211の微小変位を一定に保つことによって測定力を一定とした倣い測定を行う倣いプローブでもよい。あるいは、被測定物表面を非接触で検出する非接触式プローブであってもよい。非接触式プローブとしては、AFM(原子間力顕微鏡)に利用されるトンネル電流を検出するカンチレバーや、静電容量式プローブ等が例として挙げられる。
【0051】
画像データ加工処理としては、移動、拡大縮小、回転、歪み補正といった幾何学的加工処理の他、コントラスト調整、シャープ化およびエッジ抽出等のフィルタリングなどの機能を備えていても良いことがもちろんである。
【0052】
プローブ210の接触部212を画面の中央に表示させるにあたって、マウス500の操作にて領域を選択した後に選択領域を所定位置にドラッグする場合を例にして説明したが、この他、例えば、ユーザーが表示画面上でプローブ210の接触部位置を示すように画面上においてプローブ210の接触部212にマウスポインタを合わせてクリックすることで、画像処理部330が自動的に表示画面上におけるプローブ接触部212の位置を認識し、プローブ接触部212を含む所定面積の領域をモニタ画面の略中央に移動させるようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、ユーザーが領域を選択し、さらに、拡大表示の指示を行うことで測定ポイントを拡大表示する場合について説明したが、例えば、測定ポイントの座標を予め入力しておいて、プローブがその測定ポイントに近づいたら自動的に測定ポイントを拡大するようにしてもよい。
【0054】
操作手段としては、マウス500である場合を例にして説明したが例えばキーボードであってもよく、画像データ加工処理部に画像処理の指令を入力できる手段であればよい。キーボードであれば、領域の選択や選択領域の移動先を座標値の入力によって指令でき、また、数字を入力して選択領域の拡大率を指令できる。
カメラ(撮像手段)のレンズ系の倍率は可変であってもよい。
カメラは、門型フレームあるいは載物台上に設置してもよい。
さらに、上記実施形態においては、カメラは固定されている場合について説明したが、カメラは、例えば、3軸直交駆動機構によって直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸方向に移動可能であってもよい。
【0055】
また、モニタにカーソル(例えば、十字カーソル)を表示させてもよい。
そして、このカーソルを基準としてプローブの姿勢(垂直姿勢、水平姿勢)を調整してもよい。
さらに、モニタを測定装置本体部から離隔した位置に配置するとともに、測定装置本体部を遠隔操作可能にして遠隔測定を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、プローブ観察装置および表面性状測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】表面性状測定装置の全体構成を示す図。
【図2】カメラにてプローブを撮像している状態を示す図。
【図3】中央制御部の構成を示す図。
【図4】カメラで撮像されたプローブの接触部がモニタに表示されている状態を示す図。
【図5】プローブの画像をモニタ画面の中央に移動させた状態を示す図。
【図6】プローブの画像をモニタ画面上で拡大する様子を示す図。
【図7】プローブの画像をモニタ画面上で拡大表示した状態を示す図
【符号の説明】
【0058】
100…表面性状測定装置、200…測定装置本体部、210…プローブ、211…スタイラス、212…接触部、220…三次元駆動機構、221…門型フレーム、222…梁部、223…Zコラム、224…Zスピンドル、225…エンコーダ、230…カメラ(撮像手段)、240…載物台、300…中央制御部、310…測定動作制御部、320…形状解析部、330…画像処理部、340…画像取込部、350…画像データ加工処理部、351…選択領域認識部、352…領域移動処理部、353…領域拡大処理部、360…データ出力部、370…CPU、400…モニタ(表示手段)、401…選択領域、402…囲み線、403…ウィンドウ、404…ウィンドウ、500…マウス(操作手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブにて被測定物表面を検出して前記被測定物表面性状を測定する測定装置本体部の前記プローブを撮像するとともにこのプローブの画像を表示するプローブ観察装置であって、
前記プローブを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段にて撮像された画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理部にて画像処理された画像データを表示する表示手段と、
手動操作にて前記画像処理部における画像処理内容を入力指令する操作手段と、を備え、
前記画像処理部は、前記操作手段にて入力される指令または測定パートプログラムから入力される指令に応じて画像データを加工処理する画像データ加工処理部を備え、
前記操作手段にて入力される指令または測定パートプログラムから入力される指令によってプローブ画像が操作可能である
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブ観察装置において、
前記撮像手段は、前記プローブの像を100倍以下の倍率で拡大するレンズ系を有している
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプローブ観察装置において、
前記撮像手段を直交する3軸であるX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させる3軸直交駆動機構を備えている
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のプローブ観察装置において、
前記撮像手段は、前記プローブを視野内に入れた状態で前記プローブに対する相対位置が固定された状態で設けられている
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のプローブ観察装置において、
前記操作手段は、前記表示手段の表示画面上の所定領域を選択領域として選択する領域選択指令、および、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を所定位置に移動させる移動指令を入力可能であり、
前記画像データ加工処理部は、
前記領域選択指令にて選択された前記選択領域を認識するとともに前記選択領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、
前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を前記移動指令に応じた位置に移動させる領域移動処理部と、を備える
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のプローブ観察装置において、
前記操作手段は、前記表示手段の表示画面上の所定領域を選択領域として選択する領域選択指令、および、前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を所定の大きさに拡大する拡大指令を入力可能であり、
前記画像データ加工処理部は、
前記操作手段にて選択された前記選択領域を認識するとともに選択領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、
前記表示手段の表示画面上において前記選択領域を前記拡大指令に応じた大きさに拡大する領域拡大処理部と、を備える
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のプローブ観察装置において、
前記画像データ加工処理部は、予め設定された測定ポイントと前記プローブとを含む領域を認識するとともに認識した領域を画像データから抽出する選択領域認識部と、
前記表示手段の表示画面上において前記選択領域認識部にて抽出された領域を前記測定ポイントと前記プローブとの距離に応じて予め設定された拡大率で拡大する領域拡大処理部と、を備える
ことを特徴とするプローブ観察装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のプローブ観察装置と、
プローブを有する測定装置本体部と、を備えた
ことを特徴とする表面性状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−114000(P2007−114000A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304338(P2005−304338)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】