説明

ポリアミド樹脂及びそれを含んでなる樹脂組成物

【課題】耐イオンマイグレーション性に優れ、高湿度下での接着性とハンダ耐熱性に優れた、FPC基板用の接着剤に好適に用いられるポリアミド樹脂を提供すること。
【解決手段】ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とから形成されるポリアミド樹脂であって、前記ジカルボン酸成分(B)が、三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基を、炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000である脂肪族飽和一価アルコール(C)でハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を含むことを特徴とするポリアミド樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミン成分とジカルボン酸成分とから形成されるポリアミド樹脂であって、前記ジカルボン酸成分に疎水性成分を導入することにより、疎水性が付与されたポリアミド樹脂に関する。
さらに詳しくは、フレキシブルプリント配線基板(以下、「FPC基板」と称す)用接着剤に好ましく用いられる、耐マイグレーション性に優れ、高湿度下での接着性とハンダ耐熱性に優れたポリアミド樹脂及びそれを含んでなる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や、デジタルカメラ、モバイル型携帯パーソナルコンピューター、携帯型音楽プレーヤー等、電気・電子機器は小型、高性能化が進んでいる。それに伴い機器内部のFPCは、より高集積化、多層化されている。
フレキシブル銅張板は、可とう性のある絶縁性ベースフィルムの片面または両面に接着剤層を介して銅箔を貼り合わせた構造であり、絶縁性ベースフィルムの基材としては、高耐熱性・高信頼性であるポリイミドフィルムが使用されることが多い。更に、このフレキシブル銅張板は、レジスト層形成、露光、現像、エッチング、レジスト層剥離などの工程を経て、銅箔に導電性回路を形成したFPCとなる。
これらのFPCには、導電性回路の保護や絶縁性を目的として、フレキシブル銅張板の絶縁性ベースフィルムと銅箔とを貼り合わせるための接着剤、カバーレイ用接着剤や層間接着剤等の接着剤や、半導体封止材などが広く用いられている。電気・電子機器の小型、高性能化に伴い、これら接着剤や封止材には従来に比べ、高い性能が求められている。
例えば、基板内部で発生する熱に晒された時の耐熱性や、高温下での耐湿度性、耐イオンマイグレーション性、応力緩和性などが求められている。
さらには、従来のハンダ付け工程が、基板全体を高温に晒す、所謂ハンダリフロー方式に変わったり、環境問題から従来の鉛ハンダから鉛を使わない、所謂鉛フリーハンダが用いられる様になり、接着剤にもさらに高い耐熱性(ハンダ耐熱性)が求められるようになった。ハンダリフロー温度が高くなると、接着剤に含まれる水分がリフロー時に気化する際に接着剤を押しのけ、膨れが生じる「ポップコーン現象」と呼ばれる水蒸気爆発が発生しやすくなる。
【0003】
従来、フレキシブル銅張板の絶縁性ベースフィルムと銅箔とを貼り合わせるための接着剤、カバーレイ用接着剤や層間接着剤等の接着剤や、半導体封止材などには、ポリアミド樹脂系やエポキシ樹脂系接着剤が広く使用されてきた。
例えば、耐薬品性と耐熱接着性に優れ、高い接着強度を有するTAB用テープの接着剤として、特開平5−29399号公報が開示され、また、半導体装置用接着剤組成物として特開2002−241728号公報が開示されている。
【特許文献1】特開平5−29399号公報
【特許文献2】特開2002−241728号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されている様なポリアミド樹脂系接着剤では耐熱接着性には優れるものの、高温・高湿度下での接着強度が不十分であり、また、高温・高湿度下に晒された後のハンダ耐熱性(以下、「加湿ハンダ耐熱性」と称す)が劣る。また特許文献2に示されている様なエポキシ樹脂とジアミノシロキサン化合物とを混合したような接着剤では、樹脂同士の相溶性が劣り、十分な耐湿度性や強固な接着性が得られない。
一般的に、ポリアミド樹脂は他の樹脂との相溶性が乏しく、また吸水率が高いという欠点を有している。
例えば、これらの欠点を改善するために、吸水率の低いオレフィン系樹脂やシロキサン系樹脂をポリマーブレンドしようとしても、ポリアミド樹脂とオレフィン系樹脂やシロキサン系樹脂とは相溶性が悪くて分離してしまったりする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、その目的は、耐イオンマイグレーション性に優れ、高湿度下での接着性とハンダ耐熱性に優れた、FPC基板用の接着剤に好適に用いられるポリアミド樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。本発明のポリアミド樹脂は、元来吸水性の高いポリアミド樹脂中に疎水性基を導入することにより、樹脂の疎水性を高め、吸水性を低減させたことを特徴とするものである。
即ち、本発明は以下の通りである。
第1の発明は、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とから形成されるポリアミド樹脂であって、前記ジカルボン酸成分(B)が、三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基を、炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000である脂肪族飽和一価アルコール(C)でハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を含むポリアミド樹脂であり、
第2の発明は、ジカルボン酸成分(B)の合計100重量%中に、変性ジカルボン酸(b)0.5〜40重量%を含有する第1の発明のポリアミド樹脂である。
第3の発明は、第1又は第2の発明のポリアミド樹脂と、エポキシ化合物(D)とを含有する樹脂組成物である。
第4の発明は、第3の発明の樹脂組成物を含んでなる接着剤である。
第5の発明は、プラスチックフィルム1、第4の発明の接着剤から形成される硬化性接着剤層(I)及びプラスチックフィルム2が順次積層されてなる接着シートである。
第6の発明は、第4の発明の接着剤から形成される硬化接着剤層(II)を介して、ベースフィルムと銅箔とが貼り合わされてなるフレキシブル銅張板である。
第7の発明は、フレキシブルプリント配線板の導電性回路面に、第4の発明の接着剤から形成される硬化接着剤層(II)及びプラスチックフィルム1が順次積層されてなる、被覆されたフレキシブルプリント配線板である。
第8の発明は、第5の発明の接着シートからプラスチックフィルム2を剥がし、露出した硬化性接着剤層(I)を、フレキシブルプリント配線板の導電性回路面に貼り合せ、加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化する、フレキシブルプリント配線板の導電性回路面を被覆する方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ポリアミド樹脂の骨格中に疎水性成分が導入され、元来吸水性の高いポリアミド樹脂に疎水性を付与することが出来る。本発明のポリアミド樹脂は、耐イオンマイグレーション性と高湿度下での接着性、ハンダ耐熱性に優れたFPC基板用接着剤に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明のポリアミド樹脂について説明する。本発明のポリアミド樹脂は、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とから形成されるポリアミド樹脂であって、前記ジカルボン酸成分(B)が、三塩基酸無水物の無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの無水物基を、疎水性の一価アルコールによりハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を含むことを特徴とする。
【0009】
ジアミン成分(A)として用いられるジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラジアミノメチルシクロヘキサン、ピペラジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,10−デカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0010】
ジカルボン酸成分(B)として用いられるジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。また、ジカルボン酸とアルキルアルコールとのエステル化物等もジカルボン酸成分(B)として用いられる。
さらに、四塩基酸の一無水物もジカルボン酸成分(B)として使用可能である。
本発明においては、ジカルボン酸成分(B)として、三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基を、炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000である脂肪族飽和一価アルコール(C)〔以下、単に「脂肪族飽和一価アルコール(C)」とも表記する〕でハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を含むことが重要である。
疎水性の一価アルコールによりハーフエステル化せしめて、本発明で用いられる変性ジカルボン酸(b)となる酸無水物としては、三塩基酸無水物としては、無水トリメリット酸、ロジン無水マレイン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
また、四塩基酸二無水物としては、無水ピロメリット酸、リカシッドTMEG(新日本理化社製、エチレングリコールビストリメリテート二無水物)、リカシッドBT−100(新日本理化社製、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4−無水物)、リカシッドDSDA、リカシッドTDA−100、リカシッドTMTA−C、リカシッドMTA、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0011】
ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)との反応は、通常の反応により行う。
無溶剤下で、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とを一括で仕込み、脱水縮合反応により合成することが出来る。モノマーと一緒に予め水を仕込んでおき、この水を留去しながら脱水反応を行うと反応を制御しやすい。この反応は常圧下、減圧下の何れで行ってもよい。分子量の調整は、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)との仕込み当量比と、酸価、アミン価の制御により行う。ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とを等モルで仕込んだ場合には比較的高分子量の樹脂が得られ、ジアミン成分(A)もしくはジカルボン酸成分(B)の何れかを過剰になるように仕込んだ場合には比較的低分子量の樹脂が得られる。常圧下で得られた樹脂を更に減圧下で反応させると、高分子量の樹脂が得られる。
【0012】
これらジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とは、目的に応じて適宜組み合わせて用いることが出来るが、得られるポリアミド樹脂を接着剤の成分として用いる場合には、有機溶剤に溶解した溶液として用いる場合が多いので、有機溶剤に溶解するような組み合わせで用いることが好ましい。一般的に、ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とを夫々一種類の組み合わせで用いた、所謂ホモポリマーの場合には有機溶剤に対する溶解性が乏しい。好ましくは、ジアミン成分(A)もしくはジカルボン酸成分(B)のどちらかを2種類以上の組み合わせとするか、もしくはジアミン成分(A)、ジカルボン酸成分(B)のいずれも2種類以上組み合わせた方が、上記有機溶剤に対する溶解性が良好となる。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂を得るにあたっては、前記ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)以外に、ジアミン成分(A)及びジカルボン酸成分(B)と共重合し得る成分、例えばアミノカルボン酸や該アミノカルボン酸の分子内環状アミド化合物等を用いることが出来る。
アミノカルボン酸の例としては、ω−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等をあげることが出来る。
アミノカルボン酸の分子内環状アミド化合物の例としては、β−ラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン、ε−カプロラクタム、ω−カプリロラクタム、カプリンラクタム、ラウリンラクタム等を挙げることが出来る。
【0014】
また、本発明のポリアミド樹脂を得るにあたっては、三塩基酸無水物の酸無水物基/及び又は四塩基酸無水物の2つの酸無水物基を、例えば、炭素数が10未満の脂肪族飽和一価アルコール、炭素数が50を超える脂肪族飽和一価アルコール、あるいは数平均分子量が300未満もしくは1000を超える脂肪族飽和一価アルコールでハーフエステル化してなるジカルボン酸を、本発明の効果を妨げない範囲において併用してもよい。
さらには、上記酸無水物をハーフエステル化するアルコールとしては、脂肪族不飽和アルコール、芳香族アルコール、複素環式アルコール等のいずれもが使用可能である。
【0015】
さらにまた、本発明のポリアミド樹脂を得るにあたっては、前記ジカルボン酸成分(B)と共に、モノカルボン酸及びカルボキシル基を3つ以上有する多塩基酸を共重合に供してもよい。カルボキシル基を3つ以上有する多塩基酸としては、三塩基酸、四塩基酸等を挙げることができる。ここに、上記モノカルボン酸として、三塩基酸無水物が包含される。
【0016】
本発明で用いられる変性ジカルボン酸(b)とは、三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基と、脂肪族飽和一価アルコール(C)の水酸基とを反応させて無水環を開環せしめ、酸無水物基からカルボキシル基を遊離させたものである。
三塩基酸の酸無水物基と一価アルコールの水酸基とを反応させると一個のカルボキシル基が遊離して、当初から存在する1つの遊離カルボキシル基とあわせてジカルボン酸となる。また四塩基酸二無水物の二つの酸無水物基と一価アルコールの水酸基とを反応させると二個のカルボキシル基が遊離してジカルボン酸となる。
【0017】
次に酸無水物基をハーフエステル化する脂肪族飽和一価アルコール(C)について説明する。
本発明で用いられる脂肪族飽和一価アルコール(C)は、酸無水物基をハーフエステル化して、遊離のカルボキシル基を生成するとともに、共重合により得られるポリアミド樹脂中に導入され、疎水性を付与する役割を担う。脂肪族飽和一価アルコール(C)としては炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000であることが重要である。
酸無水物基のハーフエステル化に用いる脂肪族飽和一価アルコールの炭素数が10未満であり、かつ、数平均分子量が300未満の場合、ハーフエステル化によって生成するジカルボン酸を用いて得られるポリアミド樹脂は、耐水性が不十分である。
一方、脂肪族飽和一価アルコールの炭素数が50を超え、かつ、数平均分子量が1000を超える場合には、得られるポリアミド樹脂の有機溶剤に対する溶解性が乏しくなる傾向にある。
【0018】
炭素数が10〜50の脂肪族飽和一価アルコールとしては、例えば、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等が挙げられる。
【0019】
数平均分子量が300〜1000の脂肪族飽和一価アルコールとしては、例えば、ベーカー・ペトロライト社製の「ユニリン」を挙げることが出来る。具体的にはユニリン350〔数平均分子量(以下、「Mn」とも表記する):375〕、ユニリン425(Mn:460)、ユニリン550(Mn:550)、ユニリン700(Mn:700)等が挙げられる。
【0020】
炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000である脂肪族飽和一価アルコール(C)で酸無水物基をハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)は、ジカルボン酸成分(B)の合計100重量%中に、0.5〜40重量%含有されることが好ましく、1〜30重量%含有されることがより好ましい。
変性ジカルボン酸(b)がジカルボン酸成分(B)の合計100重量%中、0.5重量%未満では、ポリアミド樹脂に十分な疎水性を付与することが出来ない。40重量%を越えて含有すると、ポリアミド樹脂の有機溶剤に対する溶解性が乏しくなる傾向にある。
【0021】
本発明で言うところの「ハーフエステル化」とは、酸無水物基を有する化合物の酸無水物基を、水酸基を有する化合物、例えばアルコールと反応させ、酸無水物基を形成する2個のカルボン酸の一方をエステル化し、もう一方のカルボン酸を遊離させてカルボキシル基を生成する付加反応である。
この付加反応は通常の方法で行えばよく、例えば、50〜150℃で、必要に応じて触媒を使用して混合撹拌することにより行うことが出来る。反応は無溶剤下もしくは有機溶剤に溶解した状態で行う。触媒としては、三級アミン類や四級アンモニウム塩類を用いることが出来る。
このようにして得られた三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基をハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を、ジカルボン酸成分(B)として用いて、ジアミン成分(A)と反応させる。
【0022】
次に、本発明に用いられるエポキシ化合物(D)について説明する。
ポリアミド樹脂とともに本発明の樹脂組成物を構成するエポキシ化合物は、該ポリアミド樹脂を硬化させる硬化剤の役割を担う。
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及びそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−グリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン等が挙げられる。
【0023】
また、高耐熱性を有するβ−ナフトールをベースとしたアラルキル構造を有する多官能エポキシ樹脂や、ナフタレンジオールをベースとしたアラルキル構造を有する多官能エポキシ樹脂、スルフィド構造を有する結晶性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、さらには、難燃性付与を目的とした臭素やリン含有エポキシ樹脂等も用いられる。
また、フェノールノボラックエポキシ樹脂やクレゾールノボラックエポキシ樹脂等も多官能エポキシ樹脂として好適に用いられる。これらは、それぞれ単独で、または併用して用いることが出来る。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とエポキシ化合物(D)とを、ポリアミド樹脂/エポキシ化合物(D)=60〜97/40〜3(重量比)の範囲内で含有することが好ましい。さらに好ましくは、ポリアミド樹脂とエポキシ化合物(D)とを、ポリアミド樹脂/エポキシ化合物=70〜95/30〜5(重量比)の範囲内で含有することが、良好な性能を発揮する。エポキシ化合物(D)の含有割合が3未満ではポリアミド樹脂の硬化が不十分となり、強固な接着強度が得られにくくなる。一方、エポキシ化合物(D)の含有割合が40を超えると、樹脂組成物中に占めるポリアミド樹脂の割合が少なくなり、高温・高湿度下での強固な接着強度とハンダ耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とエポキシ化合物との硬化反応におけるエポキシ基の開環触媒として、広く知られる硬化触媒を用いることが出来る。このような硬化触媒としては、三級アミン(塩)類、ホスフィン類、イミダゾール類、ルイス酸(塩)類等が挙げられる。
三級アミン(塩)類の例としては、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルベンジルアミン、アミノエチルピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、2−メチルアミノメチルフェノール等やそれらの塩類が挙げられる。
ホスフィン類としては、例えば、トリオルガノホスフィン類が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等が挙げられる。
イミダゾール類の例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン等が挙げられる。
三フッ化ホウ素などのルイス酸をアミン塩としたものや、オニウム塩等は常温では安定であるが、加熱により急激に反応し、潜在性硬化剤として用いられる。
これらの硬化触媒は、本発明の樹脂組成物100重量部に対して0.1〜10重量部の割合で用いられる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、前記エポキシ化合物(D)以外の硬化剤をエポキシ化合物(D)と共に含有していても良い。これらエポキシ化合物(D)以外の硬化剤としては、イソシアネート化合物やレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
さらには、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンや、ジシアンジアミド等のポリアミン系硬化剤も使用可能である。
【0027】
本発明の樹脂組成物はポリアミド樹脂とエポキシ化合物とから構成されるものであるが、必要に応じて難燃剤やフィラーを添加することが出来る。難燃剤としては、窒素系難燃剤、リン系難燃剤、無機物系難燃剤等が挙げられ、フィラーとしては、熱膨張収縮の抑制や疎水化を目的として、シリカ、アルミナ、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、各種金属やプラスチック、ガラス等の接着に有用な接着剤として好適であるが、特にフレキシブル銅張板のベースフィルムと銅箔とを貼り合せるための接着剤、カバーレイ用接着剤、多層基板の層間接着剤等として特に有用である。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂とエポキシ化合物とを含有する接着剤は、前記有機溶剤に溶解したものを使用しても良いし、溶融押し出しで使用してもよい。
フレキシブル銅張板を製造するための、ベースフィルムと銅箔との貼り合わせに利用する場合の使用方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
すなわち、
(1−1):接着剤の有機溶剤溶液をベースフィルムに塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を設け、その上に銅箔を貼り合わせて加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(1−2):接着剤の有機溶剤溶液を銅箔に塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を設け、その上にベースフィルムを貼り合わせて加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(1−3):接着剤の有機溶剤溶液を剥離性フィルムに塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を得る。次いで、該硬化性接着剤層(I)とベースフィルムとを貼り合わせ、前記剥離性フィルムを剥離し、露出した硬化性接着剤層(I)と銅箔とを貼り合わせた後に加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(1−4):接着剤の有機溶剤溶液を剥離性フィルムに塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を得る。次いで、該硬化性接着剤層(I)と銅箔とを貼り合わせ、前記剥離性フィルムを剥離し、露出した硬化性接着剤層(I)とベースフィルムとを貼り合わせた後に加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(1−5):接着剤を溶融押出ししてベースフィルムに塗布し、硬化性接着剤層(I)を設け、その上に銅箔を貼り合わせて加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(1−6):接着剤を溶融押出しして銅箔に塗布し、硬化性接着剤層(I)を設け、その上にベースフィルムを貼り合わせて加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法。
【0030】
前記ベースフィルムとしては、ポリイミドフィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等を用いることができる。
接着剤の有機溶剤溶液を塗布する方法としては、コンマコートや、ナイフコート、ダイコート、リップコート、刷毛塗りや、浸漬塗布、ロールコーター塗装、スプレー塗装、カーテン塗装等の従来公知の方法によることができる。
また、硬化性接着剤層(I)は、半硬化(いわゆる、「Bステージ」)状態とされていても良い。
【0031】
FPCの導電性回路面の被覆に用いる場合の使用方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
すなわち、
(2−1):接着剤の有機溶剤溶液をプラスチックフィルム1に塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を設け、その上にプラスチックフィルム2を積層して接着シートを得る。
次いで、前記接着シートからプラスチックフィルム2を剥離して、露出した硬化性接着剤層(I)をFPCの導電性回路面に貼り合わせ、加熱して前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(2−2):接着剤の有機溶剤溶液を剥離性フィルムに塗布し、乾燥させて硬化性接着剤層(I)を得る。次いで、該硬化性接着剤層(I)とFPCの導電性回路面とを貼り合わせてから、前記剥離性フィルムを剥離し、露出した硬化性接着剤層(I)とプラスチックフィルム1とを貼り合わせ、加熱して前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法、
(2−3): 接着剤を溶融押出ししてプラスチックフィルム1に塗布し、硬化性接着剤層(I)を設け、その上にプラスチックフィルム2を積層して接着シートを得る。
次いで、前記接着シートからプラスチックフィルム2を剥離して、露出した硬化性接着剤層(I)をFPCの導電性回路面に貼り合わせ、加熱して前記硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法。
【0032】
ここに、前記プラスチックフィルム2は、硬化性接着剤層(I)から剥離されることが必要であるため、その表面が剥離処理された剥離性フィルムであることが好ましい。
また、前記プラスチックフィルム1としては、絶縁性や可とう性、耐熱性を有するプラスチックフィルムが好ましく、ポリイミドフィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリカーボネートフィルム等を用いることができる。
【0033】
剥離性フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン等のプラスチックフィルムや、グラシン紙、ポリエチレンラミネート上質紙等に、シリコーン化合物あるいはフッ素化合物を含む剥離剤をコーティングすることにより剥離処理されたものを用いることが出来る。
【0034】
接着剤の有機溶剤溶液をプラスチックフィルム1に塗布する方法としては、フレキシブル銅張板の製造の項で述べた方法と同様の方法を用いることができる。
また同様に、硬化性接着剤層(I)は、半硬化状態とされていても良い。
【0035】
本発明の接着剤の硬化方法は、従来公知の各種方法を用いることが出来る。例えば、硬化性接着剤層(I)を半硬化状態(Bステージ)にするためには、80℃〜150℃程度の温度で1〜2分間乾燥させる方法、また、硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法としては、40〜60℃の温度で3日〜5日程度の所謂エージングや、100℃〜150℃の温度で1時間〜4時間程度の硬化、180℃〜200℃の温度で10分〜30分程度の硬化、200℃以上の温度で数秒〜5分間程度の硬化方法等が用いられる。加熱の方法としては、恒温室でのエージングや、熱風乾燥炉、遠赤外線乾燥炉、高周波誘導加熱炉等の加熱方法が用いられる。また、加熱プレス機による加圧下での加熱等の方法も用いられることもある。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0037】
[合成例1〜9](変性ジカルボン酸(b)の合成)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流脱水装置を備えたフラスコに、メチルエチルケトン10.0部、トルエン50.0部、無水ピロメリット酸51.73部、ラウリルアルコール88.27部、ジメチルベンジルアミン0.28部を仕込み、撹拌を続けながら130℃まで昇温し、130℃で7時間反応を続けた。その後、脱溶剤を行い、固形分99.1%、酸価185.3mgKOH/gの変性ジカルボン酸(b)であるYP−1を得た。
YP−1の製造方法と同様の方法で、表−1の組成(仕込み重量部)にしたがって合成を行い、YP−2〜YP−9の変性ジカルボン酸(b)を得た。それらの固形分と酸価を表−1に示す。
なお、酸価は、変性ジカルボン酸の乾燥状態での値を示す。
【0038】
[合成例10〜17](ポリアミド樹脂の合成)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、イオン交換水180部、アジピン酸23.26部、アゼライン酸29.91部、セバシン酸32.13部、合成例1で得られた変性ジカルボン酸(b)のYP−1を42.07部、ヘキサメチレンジアミン33.47部、メタキシリレンジアミン39.16部、ε−カプロラクタム100.0部を仕込んだ。発熱の温度が一定になるまで撹拌し、温度が安定したら110℃まで昇温した。水の留出を確認してから30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分毎に10℃づつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が220℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、目標アミン価になったことを確認してポリアミド樹脂PA−1を得た。
PA−1の製造方法と同様の方法で、表−2の組成(仕込み重量部)に従って合成を行い、ポリアミド樹脂のPA−2〜PA−8を得た。その特性値を表−2に示す。
【0039】
[合成例18〜22](比較例用ポリアミド樹脂の合成)
合成例9と同様の方法で、比較例用ポリアミド樹脂(PA−9〜PA−13)を合成した。その組成(仕込み重量部)と特性値を表−3に示す。
【0040】
《アミン価の測定》
試料1gをオルソジクロロベンゼン50mlとメタノール70mlとの混合溶剤に溶解し、自動滴定装置にて0.1mol/Lの塩酸水溶液で滴定して、樹脂1g当りの塩酸と当量のKOHのmg数を求めた。
【0041】
《酸価の測定》
試料1gをエタノール/トルエン=70/30(重量比)の混合溶剤30mlに溶解し、0.1mol/LのKOHエタノール溶液で滴定して、変性ジカルボン酸もしくはポリアミド樹脂1g当りのKOHのmg数を求めた。
【0042】
[実施例1]
合成例10で得られたポリアミド樹脂(PA−1)を、エタノール/トルエン=70/30(重量比)の混合溶剤で固形分30%になる様に溶解した。この溶液を樹脂分換算で(以下樹脂分換算で示す)90部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂「エポトートYD−8125」(東都化成社製)を10部取り、エタノール/トルエン=70/30の混合溶剤で固形分濃度が25%となる様に混合溶解して接着剤を調整した。次いで、以下に示す方法により積層物を作製し、以下に示す方法により各種試験を行った。その結果を表−4に示す。
【0043】
[実施例2〜8]
実施例1と同様の方法で、ポリアミド樹脂(PA−2)〜(PA−8)及びエポキシ化合物を用いて、表−4の組成に従って接着剤を得た。次いで、実施例1と同様の方法により積層物を作製し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。その結果を表−4に示す。
【0044】
[比較例1〜5]
実施例1と同様の方法で、比較例用ポリアミド樹脂(PA−9)〜(PA−13)及びエポキシ化合物を用いて、表−5の組成に従って接着剤を得た。次いで、実施例1と同様の方法により積層物を作製し、実施例1と同様の方法により各種試験を行った。その結果を表−5に示す。
【0045】
(積層物の作製)
1.フレキシブル銅張板の作製
実施例1〜8、比較例1〜5で得られた接着剤を乾燥膜厚が10μmとなる様に、大きさが65mm×65mm、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ社製、「カプトン100H」)に塗布し、80℃で2分乾燥させ、硬化性接着剤層を形成した。次に、該硬化性接着剤層と厚さ35μmの電解銅箔のマット面とを貼り合せ、80℃、1kgf/cm、150mm/minの条件でラミネートした。更に、この「ポリイミドフィルム/硬化性接着剤層/銅箔」積層物を加熱プレス機にて、150℃、10MPaの条件下で2分間熱圧着した後、150℃のオーブンで3時間熱処理して硬化性接着剤層を硬化させてフレキシブル銅張板を作製した。
【0046】
2.カバーフィルム付き2層CCLの作製
実施例1〜8、比較例1〜5で得られた接着剤を乾燥膜厚が30μmとなる様に、大きさが65mm×65mmである保護フィルム(シリコーン塗布により剥離処理されたPETフィルム)に塗布し、80℃で2分間乾燥させて硬化性接着剤層を形成した。次に、該硬化性接着剤層と厚さ25μmの、カバーフィルムとしてのポリイミドフィルム(東レ社製、「カプトン100H」)とを貼り合せ、80℃、1kgf/cm、150mm/minの条件でラミネートし、接着剤層付きカバーフィルムを作製した。次いで、この接着剤層付きカバーフィルムの保護フィルムを剥がして露出した接着剤層の面と、2層CCL(ポリイミドフィルムと電解銅箔との積層物)の電解銅箔の面とを貼り合せ、80℃、1kgf/cm、150mm/minの条件でラミネートして「ポリイミドフィルム/硬化性接着剤層/2層CCL」積層物を得た。更に、この積層物を加熱プレス機にて、150℃、10MPaの条件下で2分間熱圧着した後、150℃のオーブンで3時間熱処理して硬化性接着剤層を硬化させてカバーフィルム付き2層CCLを作製した。
【0047】
《試験方法》
1.吸水率の測定
実施例1〜8、比較例1〜5で得られた接着剤を乾燥膜厚が30μmとなる様に保護フィルム(シリコーン塗布により剥離処理されたPETフィルム)に塗布し、80℃で2分間乾燥させて硬化性接着剤層を形成した。この硬化性接着剤層を保護フィルムから剥離し、テフロン(登録商標)板に載せて150℃のオーブンで3時間熱処理し、硬化接着剤層を得た。この硬化接着剤層を100mm×100mmの大きさにカットし、80℃の温水を入れたビーカー中に入れて、3時間保持した。温水処理する前と温水処理した後の硬化接着剤層の重量を測定して、下記式により吸水率を算出した。
吸水率(%)=(温水処理後の重量−温水処理前の重量)/温水処理前の重量×100
【0048】
2.接着強度試験(常態)
前記方法で作製したフレキシブル銅張板、及びカバーフィルム付き2層CCLを10mmの幅にカットして、フレキシブル銅張板の場合はポリイミドフィルムと銅箔との間において、また、カバーフィルム付き2層CCLの場合はカバーフィルムと2層CCLとの間において、それぞれ引っ張り速度50mm/minで180度剥離試験を行った。
【0049】
3.接着強度試験(加湿後)
前記方法で作製したフレキシブル銅張板、及びカバーフィルム付き2層CCLを10mmの幅にカットした切片を60℃、90%RH加湿下で24時間放置した後、フレキシブル銅張板の場合はポリイミドフィルムと銅箔との間において、また、カバーフィルム付き2層CCLの場合はカバーフィルムと2層CCLとの間において、それぞれ引っ張り速度50mm/minで180度剥離試験を行った。
【0050】
4.ハンダ耐熱試験(常態)
前記方法で作製したフレキシブル銅張板、及びカバーフィルム付き2層CCLをそれぞれ10mmの幅にカットしたものを、フレキシブル銅張板の場合はポリイミドフィルムの面を、カバーフィルム付き2層CCLの場合はカバーフィルムの面を、260℃で溶融した鉛フリーハンダ浴上に1分間乗せた後、取り出して接着剤層の発泡状態を観察した。
◎:試験前の状態と全く変化なし
〇:試験片に5個以下の膨れが発生するが、実用上問題なし
△:試験片の面積の1/2に膨れが発生
×:試験片全面に膨れが発生
【0051】
5.ハンダ耐熱試験(加湿後)
前記方法で作製したフレキシブル銅張板、及びカバーフィルム付き2層CCLをそれぞれ10mmの幅にカットしたものを、60℃、90%RH加湿下にて24時間放置した後、前記常態の項と同様の操作をおこない、接着剤層の発泡状態を観察した。
◎:試験前の状態と全く変化なし
〇:試験片に5個以下の膨れが発生、実用上問題なし
△:試験片の面積の1/2に膨れが発生
×:試験片全面に膨れが発生
【0052】
6.耐イオンマイグレーション性試験
実施例1〜8、比較例1〜5で得られた接着剤を、保護フィルムに乾燥膜厚が30μmとなる様に塗布し、80℃で2分乾燥してシート状の硬化性接着剤層を得た。次いで、厚さ25μmのポリイミドフィルムに、上記硬化性接着剤層を接着剤層の面がポリイミドフィルムと接する様に重ね合わせ、80℃、1kgf/cm、150mm/minの条件でラミネートした。次いで、前記保護フィルムを剥がして露出した接着剤層に、厚さ35μmの圧延銅箔を、圧延銅箔の酸処理面が接着剤層と接するようにして重ね合わせ、80℃、1kgf/cm、150mm/minの条件でラミネートした。
得られた「ポリイミドフィルム/硬化性接着剤層/圧延銅箔」の積層物を150℃、10MPaの加圧下で2分間プレスした後、さらに150℃にて3時間熱処理して接着剤層を硬化させて、銅貼り積層板を得た。この銅貼り積層板を用いて、常法により銅箔面にフォトレジスト塗布、パターン露光、現像、銅箔パターンエッチング、フォトレジスト剥離工程を経て、銅線間が100μmとなる櫛型の導電パターンを有するパターン基板を作製した。
また、上記と同様の方法で保護フィルム上にシート状の硬化性接着剤層を設け、厚さ50μmのポリイミドフィルムとラミネートし、フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを得た。このカバーフィルムの保護フィルムを剥がし、露出した硬化性接着剤層と前記パターン基板の導電パターン形成面とを貼り合わせ、150℃、10MPaの加圧下にて2分間プレスし、ラミネートした。この積層物を150℃にて3時間熱処理して目的のサンプルを得た。この様にして得られた耐マイグレーション試験用FPCについて、温度85℃、湿度85%の環境下で、印加電圧DC24V、1000時間の導電試験を行った。
◎:短絡の発生、及び基板の変色が全くなし
〇:短絡の発生は無く、基板が僅かに変色するが実用上問題なし
△:600時間で短絡が発生、基板の変色が著しい
×:300時間で短絡が発生、基板の変色が著しい
上記、各試験の結果を表−4と表−5に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン成分(A)とジカルボン酸成分(B)とから形成されるポリアミド樹脂であって、前記ジカルボン酸成分(B)が、三塩基酸無水物の酸無水物基及び/又は四塩基酸二無水物の2つの酸無水物基を、炭素数が10〜50及び/又は数平均分子量が300〜1000である脂肪族飽和一価アルコール(C)でハーフエステル化してなる変性ジカルボン酸(b)を含むことを特徴とするポリアミド樹脂。
【請求項2】
ジカルボン酸成分(B)の合計100重量%中に、変性ジカルボン酸(b)0.5〜40重量%を含有することを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂と、エポキシ化合物(D)とを含有する樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の樹脂組成物を含んでなる接着剤。
【請求項5】
プラスチックフィルム1、請求項4記載の接着剤から形成される硬化性接着剤層(I)及びプラスチックフィルム2が順次積層されてなる接着シート。
【請求項6】
請求項4記載の接着剤から形成される硬化接着剤層(II)を介して、ベースフィルムと銅箔とが貼り合わされてなるフレキシブル銅張板。
【請求項7】
フレキシブルプリント配線板の導電性回路面に、請求項4記載の接着剤から形成される硬化接着剤層(II)及びプラスチックフィルム1が順次積層されてなる、被覆されたフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
請求項5記載の接着シートからプラスチックフィルム2を剥がし、露出した硬化性接着剤層(I)を、フレキシブルプリント配線板の導電性回路面に貼り合わせ、加熱し、前記硬化性接着剤層(I)を硬化することを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の導電性回路面を被覆する方法。

【公開番号】特開2008−143925(P2008−143925A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329030(P2006−329030)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】