説明

下層膜形成用組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能、エッチング選択性、及びインターミキシング防止効果が良好なレジスト下層膜を形成可能な下層膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位(Rは水酸基等、nは0〜6の整数、Xは炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基等、mは1〜8の整数をそれぞれ示す)を必須の構成単位として有し、その他の特定の繰り返し単位を更に有する重合体(A)を含有する下層膜形成用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層膜形成用組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。更に詳しくは、特定構造を有する重合体を含有し、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適な下層膜形成用組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造方法では、より高い集積度を得るために、多層レジストプロセスが用いられている。即ち、多層レジストプロセスによって、加工サイズの微細化が達成される。このプロセスでは、まず液状の下層膜形成用組成物を基板上に塗布し硬化させてレジスト下層膜を得る。その後、このレジスト下層膜に液状のフォトレジスト組成物を更に塗布する。次に、縮小投影露光装置(ステッパー)によってマスクパターンを転写し、適当な現像液で現像することによりフォトレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを基板に転写する。以上のようにして、所望のパターン付き基板を得ることができる。なお、レジスト下層膜を一種類用いる多層プロセスを二層レジストプロセスと呼ぶことがあり、二種類用いる多層プロセスを三層レジストプロセスと呼ぶことがある。
【0003】
レジスト下層膜は、基板から反射した放射線を吸収する反射防止膜としての機能を通常有しており、炭素含有量の多い材料が用いられることが一般的である。炭素含有量の多いレジスト下層膜を用いると、基板加工時のエッチング選択性が向上し、より正確なパターン転写が可能となるためである。このようなレジスト下層膜は、熱硬化フェノールノボラックがよく知られている。また、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物も良好な特性を示すレジスト下層膜として知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、より高い集積度を得るためには、エッチングパターンの更なる微細化が要求されている。そして、この要求を達成するには、上記レジスト下層膜で生じるオーバーエッチングやインターミキシングが無視できない程度に大きな問題となっている。そのため、より良好な精密なパターン転写性能、エッチング選択性、及びインターミキシング防止効果を有するレジスト下層膜の開発が切望されている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能、エッチング選択性、及びインターミキシング防止効果が良好なレジスト下層膜を形成可能な下層膜形成用組成物、及びこの下層膜形成用組成物を用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ナフタレン構造を有する特定の繰り返し単位を含む重合体を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す下層膜形成用組成物、及びパターン形成方法が提供される。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表される繰り返し単位を必須の構成単位として有し、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位を更に有する重合体(A)を含有する下層膜形成用組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
前記一般式(1)中、Rは、水酸基又は水素を示し、nは、0〜6の整数を示す。但し、n=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Xは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、mは、1〜8の整数を示す。但し、m=2〜8である場合には、複数のXは同一であっても異なっていてもよい。n+mは、1〜8の整数である。
【0012】
【化2】

【0013】
前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜6の置換可能なアルキル基、炭素数1〜6の置換可能なアルケニル基、炭素数1〜6の置換可能なアルコキシ基、炭素数2〜10の置換可能なアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14の置換可能なアリール基、又はグリシジルエーテル基を示し、aは、0〜6の整数を示す。但し、a=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Yは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、bは1〜8の整数を示す。但し、b=2〜8である場合には、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。a+bは、1〜8の整数である。
【0014】
【化3】

【0015】
前記一般式(3)中、Zは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、cは、1〜8の整数を示す。但し、c=2〜8である場合には、複数のZは同一であっても異なっていてもよい。dは0〜2の整数を示し、c+dは、1〜8の整数である。
【0016】
【化4】

【0017】
前記一般式(4)中、Aは、単結合又は二重結合を示し、Bは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、eは、1〜6の整数を示す。
【0018】
[2]酸発生剤(B)を更に含有する前記[1]に記載の下層膜形成用組成物。
【0019】
[3]架橋剤(C)を更に含有する前記[1]又は[2]に記載の下層膜形成用組成物。
【0020】
[4]被加工基板上に前記[1]〜[3]のいずれかに記載の下層膜形成用組成物を硬化させてなるレジスト下層膜を形成する工程と、前記レジスト下層膜上にレジストパターン層を形成する工程と、前記レジストパターン層をマスクとして、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板を加工する工程と、を有するパターン形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の下層膜形成用組成物は、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能、エッチング選択性、及びインターミキシング防止効果が良好なレジスト下層膜を形成可能であるといった効果を奏するものである。
【0022】
本発明のパターン形成方法によれば、反射防止膜としての機能を有するとともに、パターン転写性能、エッチング選択性、及びインターミキシング防止効果が良好なレジスト下層膜を形成可能な下層膜形成用組成物を使用するため、微細かつ高精度のパターンを簡便に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0024】
1.下層膜形成用組成物:
(重合体(A))
本発明の下層膜形成用組成物に含有される重合体(A)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう)を必須の構成単位として有するものである。
【0025】
【化5】

【0026】
前記一般式(1)中、Rは、水酸基又は水素を示し、nは、0〜6の整数を示す。但し、n=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Xは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、mは、1〜8の整数を示す。但し、m=2〜8である場合には、複数のXは同一であっても異なっていてもよい。n+mは、1〜8の整数である。
【0027】
(繰り返し単位(1))
繰り返し単位(1)は、置換基Rと置換基Xを有するものである。置換基Rは、水酸基(ヒドロキシル基)、又は水素である。なお、前記一般式(1)中のnは、0〜6の整数である。但し、nが2〜6である場合には、複数の置換基Rは、同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
繰り返し単位(1)中の置換基Xは、アルキレン基、又はアリーレン基である。アルキレン基としては、置換可能な炭素数1〜20のアルキル基を挙げることができ、より具体的には、メチレン基、エチレン基等を挙げることができる。また、アリーレン基としては、置換可能な炭素数6〜14のアリーレン基を挙げることができ、より具体的には、フェニレン基、ナフタレン基等を挙げることができる。なお、前記一般式(1)中のmは、1〜8の整数である。但し、mが2〜8である場合には、複数の置換基Xは、同一であっても異なっていてもよい。なお、n+mは1〜8の整数である。
【0029】
重合体(A)に含まれる繰り返し単位(1)の割合は、重合体(A)全体に対して5〜95モル%であることが好ましく、10〜70モル%であることが更に好ましい。5モル%未満であると分子量が大きくなり過ぎ、下層膜形成用組成物の塗布性が悪化する傾向にある。一方、95モル%超であると、分子量が小さ過ぎであり、下層膜形成用組成物をスピンコートした場合にストリエーションが発生する傾向にある。
【0030】
(繰り返し単位(2))
重合体(A)は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ともいう)、下記一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3)」ともいう)、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(4)」ともいう)からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位を有するものである。
【0031】
【化6】

【0032】
前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜6の置換可能なアルキル基、炭素数1〜6の置換可能なアルケニル基、炭素数1〜6の置換可能なアルコキシ基、炭素数2〜10の置換可能なアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14の置換可能なアリール基、又はグリシジルエーテル基を示し、aは、0〜6の整数を示す。但し、a=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Yは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、bは1〜8の整数を示す。但し、b=2〜8である場合には、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。a+bは、1〜8の整数である。
【0033】
【化7】

【0034】
前記一般式(3)中、Zは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、cは、1〜8の整数を示す。但し、c=2〜8である場合には、複数のZは同一であっても異なっていてもよい。dは0〜2の整数を示し、c+dは、1〜8の整数である。
【0035】
【化8】

【0036】
前記一般式(4)中、Aは、単結合又は二重結合を示し、Bは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、eは、1〜6の整数を示す。
【0037】
前記一般式(2)中、Rで表される「炭素数1〜6の置換可能なアルキル基」の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。なかでも、メチル基、エチル基が好ましい。前記一般式(2)中、Rで表される「炭素数1〜6の置換可能なアルケニル基」の具体例としては、ビニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基等を挙げることができる。なかでも、ビニル基、プロペニル基が好ましい。前記一般式(2)中、Rで表される「炭素数1〜6の置換可能なアルコキシ基」の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、1−メチルプロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等を挙げることができる。なかでも、メトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましい。
【0038】
前記一般式(2)中、Rで表される「炭素数2〜10の置換可能なアルコキシカルボニル基」の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。なかでも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。前記一般式(2)中、Rで表される「炭素数6〜14の置換可能なアリール基」の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等を挙げることができる。なかでも、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0039】
前記一般式(2)中、Yで表される「炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラセニルメチレン基、ピレニルメチレン基等を挙げることができる。なかでも、メチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基が好ましい。また、前記一般式(2)中、Yで表される「炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基」の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、キシリレン基等を挙げることができる。なかでも、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0040】
重合体(A)に含まれる繰り返し単位(2)の割合は、重合体(A)全体に対して0〜90モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることが更に好ましい。90モル%超であると、基板加工後のパターン形状が倒れたり、曲がったりする傾向にある。
【0041】
(繰り返し単位(3))
前記一般式(3)中、Zで表される「炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラセニルメチレン基、ピレニルメチレン基等を挙げることができる。なかでも、メチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基が好ましい。また、前記一般式(3)中、Zで表される「炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基」の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、キシリレン基等を挙げることができる。なかでも、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0042】
重合体(A)に含まれる繰り返し単位(3)の割合は、重合体(A)全体に対して0〜90モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることが更に好ましい。90モル%超であると、基板加工後のパターン形状が倒れたり、曲がったりする傾向にある。
【0043】
(繰り返し単位(4))
前記一般式(4)中、Bで表される「炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラセニルメチレン基、ピレニルメチレン基等を挙げることができる。なかでも、メチレン基、メチルメチレン基、2−フルフリルメチレン基が好ましい。また、前記一般式(4)中、Bで表される「炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基」の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、キシリレン基等を挙げることができる。なかでも、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0044】
重合体(A)に含まれる繰り返し単位(4)の割合は、重合体(A)全体に対して0〜90モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることが更に好ましい。90モル%超であると、基板加工後のパターン形状が倒れたり、曲がったりする傾向にある。
【0045】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、500〜8000であることが好ましく、1000〜3000であることが更に好ましく、1500〜2500であることが特に好ましい。Mwが500未満であると、膜焼成時に成分が揮発して所望の膜厚とならない場合がある。一方、Mwが8000超であると、溶剤への溶解性が低下する場合がある。
【0046】
重合体(A)は、例えば、以下に示す(i)工程、又は(ii)工程で合成することができる。(i)工程は、それぞれの繰り返し単位を構成し得る単量体(ナフタレン誘導体やアセナフチレン等、以下、「単量体成分」ともいう)と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で縮合する工程である。また、(ii)工程は、単量体成分と、ジビニル化合物類とを、酸触媒の存在下で共縮合する工程である。なお、いずれの工程においても、ナフタレン誘導体やアセナフチレン等の単量体成分以外の「他の共縮合可能な成分(化合物)」を共存させた状態で共縮合させてもよい。
【0047】
「他の共縮合可能な成分(化合物)」としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等の置換スチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系化合物;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル系化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、ジメチルビニルメタクリロイルオキシメチルシラン等の不飽和基含有不飽和カルボン酸エステル;2−クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル、クロロ酢酸アリル等のハロゲン含有ビニル系化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ビニル系化合物;(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド等のアミド基含有ビニル系化合物;2−メタクロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクロイルオキシエチルマレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル系化合物;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン、9−ビニルカルバゾール等のビニルアリール系化合物等を挙げることができる。
【0048】
重合体(A)を構成する、「他の共縮合可能な成分(化合物)」に由来する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中、5〜95モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることが更に好ましく、20〜50モル%であることが特に好ましい。
【0049】
((i)工程)
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類;アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類;フルフラール等のヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド、ピレンカルバルデヒド等の芳香族アルデヒド類等を挙げることができる。なかでも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びフルフラールが好ましい。これらのアルデヒド類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
縮合反応におけるアルデヒド類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して、1〜10000質量部であることが好ましく、30〜120質量部であることが更に好ましい。
【0051】
また、この縮合反応においては、他の共縮合成分として芳香族炭化水素類(以下、「芳香族類」ともいう)を添加してもよい。この場合の縮合反応は、単量体成分、芳香族類、及びアルデヒド類を混合し、酸触媒の存在下、無溶剤又は溶剤中で加熱することにより行われる。
【0052】
芳香族類は、単量体成分と共縮合重合し得る芳香族類であればよい。芳香族類の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン等の無置換芳香族炭化水素類;トルエン、m−キシレン、p−キシレン、1−メチルナフタレン等のアルキル置換芳香族炭化水素類;フェノール、クレゾール、1−ナフトール、ビスフェノール類、多価フェノール類等のヒドロキシ置換芳香族炭化水素類;安息香酸、1−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸等のカルボキシル置換芳香族炭化水素類;アニリン等のアミノ置換芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらの芳香族類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
縮合反応における芳香族類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して10000質量部以下であることが好ましい。また、縮合反応におけるアルデヒド類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して1〜1000質量部であることが好ましい。
【0054】
縮合反応で用いられる酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類;蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。酸触媒の使用量は、使用する酸の種類によって種々選択されるが、一例を挙げると、単量体成分の合計100質量部に対して、0.001〜10000質量部であることが好ましく、0.01〜1000質量部であることが更に好ましい。
【0055】
縮合反応時の温度(反応温度)は、40℃〜200℃であることが好ましい。反応時間は、反応温度によって種々選択されるが、30分〜72時間であることが好ましい。
【0056】
((ii)工程)
ジビニル化合物類としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、5−ビニルノルボルナジエン等を挙げることができる。中でも、ジビニルベンゼンが好ましい。これらのジビニル化合物類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
縮合反応におけるジビニル化合物類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して、通常1〜10000質量部であり、好ましくは30〜120質量部である。
【0058】
また、この縮合反応において、他の共縮合成分として芳香族類を添加してもよい。この場合の縮合反応は、単量体成分、芳香族類、及びジビニル化合物類を混合し、酸触媒の存在下、無溶剤又は溶剤中で加熱することにより行われる。
【0059】
芳香族類の具体例としては、前述の「(i)工程」で例示したものと同様のものを挙げることができる。これらの芳香族類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
縮合反応における芳香族類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して10000質量部以下であることが好ましい。また、縮合反応におけるジビニル化合物類の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して1〜1000質量部であることが好ましい。
【0061】
縮合反応で用いられる酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類;蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類等を挙げることができる。酸触媒の使用量は、使用する酸の種類によって種々選択されるが、一例を挙げると、単量体成分の合計100質量部に対して、0.001〜10000質量部であることが好ましく、0.01〜1000質量部であることが更に好ましい。
【0062】
縮合反応時の温度(反応温度)は、40℃〜200℃であることが好ましい。反応時間は、反応温度によって種々選択されるが、30分〜72時間であることが好ましい。
【0063】
本発明の下層膜形成用組成物は、重合体(A)を溶解する溶剤を含有するものであることが好ましい。溶剤を含有する場合には、下層膜形成用組成物は、通常、液状である。なお、本発明の下層膜形成用組成物に含有される重合体(A)の割合は、8〜30質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。
【0064】
(溶剤)
溶剤は、重合体(A)を溶解し得るものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0065】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0066】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、ギ酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0067】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。
【0068】
これらの溶剤のなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。これらの溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
溶剤の含有割合は、得られる下層膜形成用組成物の固形分濃度が、5〜80質量%となる量であることが好ましく、5〜40質量%となる量であることが更に好ましく、10〜30質量%となる量であることが特に好ましい。
【0070】
(その他の成分)
本発明の下層膜形成用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、酸発生剤(B)、架橋剤(C)、及び添加剤(D)を更に配合することが好ましい。
【0071】
(酸発生剤(B))
酸発生剤(B)は、露光又は加熱により酸を発生する成分である。酸発生剤を配合することにより、常温を含む比較的低温で重合体の分子鎖間に有効に架橋反応を生起させることができる。露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」ともいう)の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0072】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0073】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0074】
1−〔4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0075】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0076】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等を挙げることができる。
【0077】
これらの光酸発生剤のうち、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネートが好ましい。これらの光酸発生剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」ともいう)の具体例としては、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。これらの熱酸発生剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、光酸発生剤と熱酸発生剤を併用することもできる。
【0079】
酸発生剤の配合量は、下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、5000質量部以下であることが好ましく、0.1〜1000質量部であることが更に好ましく、0.1〜100質量部であることが特に好ましい。
【0080】
(架橋剤(C))
架橋剤(C)は、下層膜形成用組成物を硬化させて得られるレジスト下層膜と、このレジスト下層膜の上に形成するレジスト被膜との間のインターミキシングを防止するとともに、レジスト下層膜におけるクラックの発生を防止する作用を示す成分である。架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。
【0081】
多核フェノール類の具体例としては、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等を挙げることができる。なかでも、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ノボラックが好ましい。これらの多核フェノール類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
また、硬化剤の具体例としては、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類;以下商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ社製)、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、DER331、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508(以上、三井サイアナミッド社製)等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド社製)等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172(以上、三井サイアナミッド社製)、ニカラックN−2702(三和ケミカル社製)等のグリコールウリル系硬化剤等を挙げることができる。これらの硬化剤のうち、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。これらの硬化剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、多核フェノール類と硬化剤を併用することもできる。
【0083】
架橋剤の配合量は、下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、5000質量部以下であることが好ましく、1000質量部以下であることが更に好ましい。
【0084】
(添加剤(D))
添加剤(D)は、前述の酸発生剤(B)及び架橋剤(C)以外の成分であって、レジスト下層膜とレジスト被膜との間のインターミキシングを防止するとともに、下層膜形成用組成物の塗布性を向上させる等の作用を示す成分である。添加剤(D)としては、例えば、バインダー樹脂、放射線吸収剤、及び界面活性剤等を挙げることができる。
【0085】
バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−1−ドデセン、ポリ−1−テトラデセン、ポリ−1−ヘキサデセン、ポリ−1−オクダデセン、ポリビニルシクロアルカン等のα−オレフイン系重合体類;ポリ−1,4−ペンタジエン、ポリ−1,4−ヘキサジエン、ポリ−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン系重合体類;
【0086】
α,β−不飽和アルデヒド系重合体類;ポリ(メチルビニルケトン)、ポリ(芳香族ビニルケトン)、ポリ(環状ビニルケトン)等のα,β−不飽和ケトン系重合体類;(メタ)アクリル酸、α−クロルアクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の重合体類;ポリ(メタ)アクリル酸無水物、無水マレイン酸の共重合体等のα,β−不飽和カルボン酸無水物の重合体類;メチレンマロン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和多塩基性カルボン酸エステルの重合体類;
【0087】
ソルビン酸エステル、ムコン酸エステル等のジオレフィンカルボン酸エステルの重合体類;(メタ)アクリル酸チオエステル、α−クロルアクリル酸チオエステル等のα,β−不飽和カルボン酸チオエステルの重合体類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体の重合体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体の重合体類;スチリル金属化合物の重合体類;ビニルオキシ金属化合物の重合体類;
【0088】
ポリイミン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリオキシラン、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロピラン等のポリエーテル類;ポリスルフィド類;ポリスルホンアミド類;ポリペプチド類;ナイロン66、ナイロン1〜ナイロン12等のポリアミド類;脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、ポリ炭酸エステル等のポリエステル類;ポリ尿素類;ポリスルホン類;ポリアジン類;ポリアミン類;ポリ芳香族ケトン類;ポリイミド類;ポリベンゾイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類;ポリベンゾチアゾール類;ポリアミノトリアゾール類;ポリオキサジアゾール類;ポリピラゾール類;ポリテトラゾール類;ポリキノキサリン類;ポリトリアジン類;ポリベンゾオキサジノン類;ポリキノリン類;ポリアントラゾリン類等を挙げることができる。
【0089】
また、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となるものであり、バインダー樹脂として好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、熱硬化性アクリル系樹脂類、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等を挙げることができる。なかでも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
【0090】
これらのバインダー樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂の配合量は、下層膜形成用組成物に含有される重合体100質量部当たり、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0091】
放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、チヌビン234(商品名、チバガイギー社製)、チヌビン1130(商品名、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等を挙げることができる。これらの放射線吸収剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。放射線吸収剤の配合量は、下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることが更に好ましい。
【0092】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、濡れ性、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業社製)、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤の配合量は、下層膜形成用組成物の固形分100質量部当たり、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0093】
なお、酸発生剤(B)、架橋剤(C)、及び添加剤(D)以外のその他の成分としては、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等を挙げることができる。
【0094】
2.パターン形成方法:
本発明のパターン形成方法の一実施形態は、被加工基板上に前述の下層膜形成用組成物を硬化させてなるレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)と、レジスト下層膜上にレジストパターン層を形成する工程(以下、「工程(2)」ともいう)と、レジストパターン層をマスクとして、レジスト下層膜及び被加工基板を加工する工程(以下、「工程(3)」ともいう)と、を有する方法である。
【0095】
(工程(1))
被加工基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆したウエハー等を使用することができる。回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法により、被加工基板上に下層膜形成用組成物を塗布すれば、塗膜を形成することができる。その後、露光及び/又は加熱することにより塗膜を硬化させる。露光に際して照射する放射線は、光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。下層膜形成用組成物に光酸発生剤が含有される場合には、露光により常温でも塗膜を有効に硬化させることが可能である。また、加熱温度は、90〜350℃であることが好ましく、200〜300℃であることが更に好ましい。下層膜形成用組成物に熱酸発生剤が含有される場合には、例えば、90〜150℃に加熱することでも塗膜を有効に硬化させることが可能である。形成されるレジスト下層膜の膜厚は、0.1〜5μmであることが好ましい。
【0096】
(工程(2))
レジスト下層膜上に、所定の膜厚のレジスト被膜が形成されるようにレジスト組成物溶液を塗布して塗膜を形成する。その後、プレベークして塗膜中の溶剤を揮発させれば、レジスト被膜を形成することができる。プレベークの温度は、レジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜150℃であることが更に好ましい。
【0097】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤を含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤を含有するネガ型レジスト組成物等を挙げることができる。
【0098】
レジスト組成物溶液の固形分濃度は、5〜50質量%であることが好ましい。なお、レジスト組成物溶液は、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して用いることが好ましい。なお、市販のレジスト組成物溶液をそのまま使用することもできる。
【0099】
露光に用いる放射線としては、レジスト組成物に含有される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、好ましくは遠紫外線であり、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。露光後のレジスト被膜を現像し、洗浄及び乾燥すれば、所望とするパターンを有するレジストパターン層を形成することができる。なお、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、露光後、現像前に、ポストベークを行うことも好ましい。
【0100】
現像に用いる現像液は、レジスト組成物の種類に応じて適宜選択されるが、ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物を用いた場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチル・エタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を用いることができる。また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0101】
(工程(3))
形成されたレジストパターン層をマスクとして、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマを用いてレジスト下層膜と被加工基板を乾式エッチングすれば、所望とするパターンを有する加工済み基板を得ることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0103】
[分子量(Mw)の測定]:
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を使用し、流量:1.0mL/min、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0104】
[性能評価用サンプルの作製]:
直径8インチのシリコンウエハー上に下層膜形成用組成物をスピンコートした後、180℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。形成されたレジスト下層膜上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(商品名「NFC SOG080」、JSR社製)をスピンコートし、200℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。形成された中間層被膜上に、ArF用レジスト(商品名「AIM5056JN」、JSR社製)をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。その後、NIKON社製ArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.78、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間だけ露光した。次いで、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークした後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃で1分間現像し、水洗及び乾燥して性能評価用サンプル(ArF用ポジ型レジストパターン)を得た。
【0105】
[光学特性]:
直径8インチのシリコンウエハー上に、下層膜形成用組成物をスピンコートした後、300℃のホットプレート上で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。形成したレジスト下層膜について、J.A.WOOLLAM社製の分光エリプソメータ(商品名「VUV−VASE」)を使用し、波長193nmにおける屈折率(n値)と吸光度(k値)を測定した。
【0106】
[現像後パターン形状]:
性能評価用サンプルのレジストパターンの形状を走査型電子顕微鏡により観察し、以下の基準に従って評価した。
「良好」:レジストパターンの形状が矩形である。
「不良」:レジストパターンの形状が矩形以外の形状((例)T−top、スカム等)である。
【0107】
[定在波防止効果]:
性能評価用サンプルのレジストパターンに対する定在波の影響の有無を走査型電子顕微鏡により観察し、以下の基準に従って評価した。
「良好」:パターン側面にレジスト下層膜からの反射による定在波が観察されない。
「不良」:パターン側面にレジスト下層膜からの反射による定在波が観察される。
【0108】
[インターミキシング防止効果]:
形成したレジスト下層膜をシクロヘキサノンに室温で1分間浸漬し、浸漬前後の膜厚変化を測定した。なお、膜厚の測定は、分光エリプソメータ(商品名「UV1280E」、(KLA−TENCOR社製))を用いて行った。評価基準を以下に示す。
「良好」:膜厚変化が認められない。
「不良」:膜厚変化が認められる。
【0109】
[基板加工後パターン形状]:
性能評価用サンプルのレジストパターンの形状を走査型電子顕微鏡により観察し、以下の基準に従って評価した。
「良好」:レジスト下層膜のパターンが立っている状態である。
「不良」:レジスト下層膜のパターンが、倒れたり、曲がったりしている状態である。
【0110】
[エッチング耐性]:
直径8インチのシリコンウエハー上に、下層膜形成用組成物をスピンコートした後、300℃のホットプレート上で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。形成したレジスト下層膜を、エッチング装置(商品名「EXAM」(神鋼精機社製))を使用して、CF/Ar/O(CF:40mL/min、Ar:20mL/min、O:5mL/min;圧力:20Pa;RFパワー:200W;処理時間:40秒;温度:15℃)でエッチング処理し、処理前後の膜厚を測定してエッチングレート(nm/min)を算出した。また、以下の基準に従ってエッチング耐性を評価した。
「良好」:エッチングレートが200nm/min以下である。
「不良」:エッチングレートが200nm/min超である。
【0111】
(合成例1)
コンデンサー、温度計、及び撹拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、1,5−ジメチルナフタレン20部、1−(1−ヒドロキシエチルナフタレン20部、アセナフチレン20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、蓚酸4部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させて、下記構造の重合体(a1)(Mw=1500)を得た。
【0112】
【化9】

【0113】
(合成例2)
コンデンサー、温度計、及び撹拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、1,5−ジメチルナフタレン20部、1−(1−ヒドロキシエチルナフタレン20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、蓚酸4部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させて、下記構造の重合体(a2)(Mw=1500)を得た。
【0114】
【化10】

【0115】
(合成例3)
コンデンサー、温度計、及び撹拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、2,6−ジビニルナフタレン30部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、蓚酸4部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させて、下記構造の重合体(a3)(Mw=1500)を得た。
【0116】
【化11】

【0117】
(合成例4)
コンデンサー、温度計、及び撹拌装置を備えた反応装置に、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、1,5−ビス(1−ヒドロキシエチル)ナフタレン30部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、蓚酸4部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させて、下記構造の重合体(a4)(Mw=1500)を得た。
【0118】
【化12】

【0119】
(合成例5)
コンデンサー、温度計、及び撹拌装置を備えた反応装置に、1,5−ジメチルナフタレン100部、1−(1−ヒドロキシエチル)ナフタレン20部、アセナフチレン20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部、及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、蓚酸4部を添加し、脱水しながら120℃に昇温、5時間反応させて、下記構造の重合体(a5)(Mw=1500)を得た。
【0120】
【化13】

【0121】
(実施例1)
重合体(a1)10部、酸発生剤ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート0.5部、及び架橋剤テトラメトキシメチルグリコールウリル0.5部を、プロピレングリコールモノメチルアセテート89質量部に溶解した後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して下層膜形成用組成物(I)を調製した。調製した下層膜形成用組成物(I)についての評価結果は、n値が1.46、k値が0.32、現像後パターン形状が「良好」、定在波防止効果が「良好」、インターミキシング防止効果が「良好」、基板加工後パターン形状が「良好」、エッチングレートが185nm/min、及びエッチング耐性が「良好」であった。
【0122】
(実施例2〜4)
重合体(a1)に代えて、重合体(a2)〜(a4)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして下層膜形成用組成物(II)〜(IV)を調製した。各種評価結果を表1に示す。
【0123】
(実施例5)
重合体(a1)10部を、プロピレングリコールモノメチルアセテート90部に溶解した後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して下層膜形成用組成物(V)を調製した。各種評価結果を表1に示す。
【0124】
(実施例6〜8)
重合体(a1)に代えて、重合体(a2)〜(a4)を用いたこと以外は、前述の実施例5と同様にして下層膜形成用組成物(VI)〜(VIII)を調製した。各種評価結果を表1に示す。
【0125】
(比較例1)
重合体(a5)10部、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート0.5部、及びテトラメトキシメチルグリコールウリル0.5部を、プロピレングリコールモノメチルアセテート89質量部に溶解した後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して下層膜形成用組成物(IX)を調製した。各種評価結果を表1に示す。
【0126】
(比較例2)
重合体(a5)10部を、プロピレングリコールモノメチルアセテート90質量部に溶解した後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して下層膜形成用組成物(X)を調製した。各種評価結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の下層膜形成用組成物は、ドライエッチング耐性に優れ、反射防止効果が高く、かつレジストとインターミキシングを生じることのない反射防止膜を形成することができるため、高集積度の集積回路の製造に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を必須の構成単位として有し、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも一種の繰り返し単位を更に有する重合体(A)を含有する下層膜形成用組成物。
【化1】

(前記一般式(1)中、Rは、水酸基又は水素を示し、nは、0〜6の整数を示す。但し、n=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Xは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、mは、1〜8の整数を示す。但し、m=2〜8である場合には、複数のXは同一であっても異なっていてもよい。n+mは、1〜8の整数である)
【化2】

(前記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜6の置換可能なアルキル基、炭素数1〜6の置換可能なアルケニル基、炭素数1〜6の置換可能なアルコキシ基、炭素数2〜10の置換可能なアルコキシカルボニル基、炭素数6〜14の置換可能なアリール基、又はグリシジルエーテル基を示し、aは、0〜6の整数を示す。但し、a=2〜6である場合には、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Yは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、bは1〜8の整数を示す。但し、b=2〜8である場合には、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。a+bは、1〜8の整数である)
【化3】

(前記一般式(3)中、Zは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、cは、1〜8の整数を示す。但し、c=2〜8である場合には、複数のZは同一であっても異なっていてもよい。dは0〜2の整数を示し、c+dは、1〜8の整数である)
【化4】

(前記一般式(4)中、Aは、単結合又は二重結合を示し、Bは、炭素数1〜20の置換可能なアルキレン基、又は炭素数6〜14の置換可能なアリーレン基を示し、eは、1〜6の整数を示す)
【請求項2】
酸発生剤(B)を更に含有する請求項1に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項3】
架橋剤(C)を更に含有する請求項1又は2に記載の下層膜形成用組成物。
【請求項4】
被加工基板上に請求項1〜3のいずれか一項に記載の下層膜形成用組成物を硬化させてなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜上にレジストパターン層を形成する工程と、
前記レジストパターン層をマスクとして、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板を加工する工程と、
を有するパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−229666(P2009−229666A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73199(P2008−73199)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】