説明

他車両検出装置

【課題】反射波からその反射波の原因となったものが他車両であるか、あるいは道路構造物といったその他の物体であるかといった区別をすることができる他車両検出装置を提供すること。
【解決手段】自車両から照射した照射波の反射波を用いて他車両の検出を行う他車両検出装置において、反射波が持つ強度のパターンから他車両の有無を判定する他車両判定手段を備えた(ステップS3〜ステップS5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両から発した照射波の反射波を受信して、自車両の近くにある他車両を検出する他車両検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、マイクロ光やレーザー光を自車の前方へ放射してこの反射信号から得た車間距離の変化及び反射信号強度の変化と、自車がカーブ走行しているか否かの判定結果とを用いて検出先行車の変化を認識することにより、自車線先行車から隣接車線を走行している別の車両に検出対象が移行したと判定することにより、この判定結果を利用してそれまでの追従走行あるいは定速走行のモードを新たな他のモードに移行して円滑な走行を継続できるようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3125496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術にあっては、反射強度の時間的変化のみに頼って先行車を検出し追従制御のモード移行を行っているため、同じ反射強度を持つ道路構造物などの静止物を他車両から区別することができず、このため、道路構造物を他車両と誤認識発生してしまい、静止物の道路構造物などに接近のため自車両のブレーキがにかかって、ドライバが違和感を感じることがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、反射波からその反射波の原因となったものが他車両であるか、あるいは道路構造物といったその他の物体であるかといった区別をすることができる他車両検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を達成するため、本発明では、自車両から照射した照射波の反射波を用いて他車両の検出を行う他車両検出装置において、反射波が持つ強度のパターンから他車両の有無を判定する他車両判定手段を備えた。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、他車両検出装置においては、他車両と道路構造物などの他の物体とを区別することができるので、より精密な検出結果を得ることができ、不必要なブレーキが作動することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の他車両検出装置を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
【0009】
図1は本発明の他車両検出装置を備えた車間距離制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0010】
車両の車間距離制御装置100は、ドライバが希望する設定車速(追従走行中における上限車速)と希望する設定車間距離とを入力する設定部1と、自車両と先行車との車間距離及び相対速度を検出する先行車車間検出部8と、自車両の車速を検出する車速検出部9と、自車両の車速に応じた自車両と先行車との車間距離から目標車速を算出決定する車間制御部2と、ドライバの設定車速と車間制御部2で決定された目標車速とのうち車速の小さい方を選択して速度指令値とする車速指令値選択部3と、速度指令値によりエンジン等の駆動力やブレーキの制動力を制御する車速制御部4と、を備えている。
【0011】
設定部1では、ドライバがボタンスイッチなどを操作することにより設定車速や設定車間距離を設定できる。設定車速は、例えば50km/hから100km/hの間でボタンスイッチにより5km/hごとに入力設定できる。また設定車間距離は、例えば「長」、「中」、「短」といった3段階の車間距離をボタンスイッチを押すごとに設定できる。設定部1は、ここで設定された設定車速情報及び設定車間距離情報を、車間制御部2、車速指令値選択部3及び車速制御部4に出力する。
【0012】
先行車車間検出部8は、車両の前部車体に設けられ、自車両の進行方向に向けて照射波等を照射する発信器と、自車両の前方にある物体で反射されてきた反射波を受信する受信器とを備える。なお照射波としてはレーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、ソナー等を用いられる。この先行車車間検出部8では、反射波から自車両の前方に他車両がいるか否かの判定や、自車両と先行車との車間距離及び相対速度を演算処理により求め、ここで生成した車両有無の判定情報、車間距離情報Dpsや相対速度情報を車間制御部2や車速制御部4に出力する。また後述する処理より自車両の前方にある物体が車両であるか否かを判定し、この判定結果に応じて車間制御部2や車速制御部4における車間距離制御の許可や禁止を指令する。
【0013】
車速検出部9は、図示しない車速センサからの信号により車速を算出し、この車速情報VSPを設定部1、車間制御部2、及び車速制御部4に出力する。
【0014】
車間制御部2は、車間距離情報Dps、相対速度情報、車速情報VSP、設定車間距離情報等が入力されて、これらの情報から車速に応じた車間距離を設定し、併せて目標車速を算出する。
【0015】
車速指令値選択部3は、設定車速情報と目標車速情報とを比べて車速が小さい方を車速指令値として車速制御部4へ出力する。
【0016】
車速制御部4は、設定車速情報、設定車間距離情報、先行車車間距離情報、相対速度情報、及び車速情報等が入力されて、車間距離制御に応じて決定したエンジントルク指令値Tengを駆動力制御部5に、また車間距離制御に応じて決定したブレーキトルク指令値Tbkを液圧ブレーキ制御部6にそれぞれ出力する。
【0017】
駆動力制御部5は、車速制御部4から入力されたエンジントルク指令値Tengに応じ、例えば、電子制御スロットルアクチュエータを用いてアクセル開度APを制御する。
【0018】
液圧ブレーキ制御部6は、車速制御部4から入力されたブレーキトルク指令値Tbkに応じ、例えば、ABSアクチュエータを用いて車輪に制動力を付与するブレーキ液圧Pbk0を作り出す。
【0019】
エンジン7a及びブレーキ7bは、駆動力制御部5によるアクセル開度APと、液圧ブレーキ制御部6によるブレーキ液圧Pbk0とに応じ、車両を定速走行させたり加速したり減速したりして車両が設定車間距離や設定車速となるように制御される。
【0020】
次に、作用を説明する。
[他車両判定処理]
【0021】
図2は本実施例1の他車両検出装置において、自車両の進行方向にある物体が車両であるか否かを判定する制御の流れを示すフローチャートである。
【0022】
ステップS1では、先行車車間検出部8が、自車両の進行方向上に物体があるか否かを判定する前方物体有無判定処理を行いステップS2へ移行する。すなわち、物体有無判定処理では、自車両の進行方向に物体があるか否かを判定するため、自車両進行方向にレーザー光を照射して、その反射波を受信しており、その反射波が所定値以上の強度を有すると進行方向に障害物あるいは被追従車と推定される物体があると判定する。
【0023】
ステップS2では、ステップS1で前方に物体があると判定されると、図3に示すように先行車車間検出部8が、さらに車両11の後方両側部に取り付けられたリフレクタ10の高さで同図中に矢印で示すように横方向へレーザー光によるスキャニングを行い、先方物体の反射波の検出角度と反射強度とを検出する。
【0024】
ステップS3では、ステップS2で得た反射波波形パターンよりピークとなる部分を検出し、2つのピークが検出されればステップS4へ移行し、2つのピークが検出されなければステップS7移行する。
【0025】
図4は、このスキャニングの結果、自車両前方に他車両がいた場合の検出例を示す図であり、横軸に反射波の方向を検出したときの検出角度、縦軸に反射波の反射強度を示す。検出した物体が車両であれば、図4に実線で示すように反射波が横軸方向に離れた2つの大きなピーク値を持つ波形パターンとして検出される。このように2つの大きなピークは車両後方の2つのリフレクタをスキャンした検出角度の位置に表れる。
【0026】
ステップS4では、中心反射強度をピーク強度で割ったものが第1の閾値PD以上であるか否かを判定し、YESであればステップS5へ移行し、NOであればステップS7へ移行する。ここで、図4においてピーク強度は反射波のピーク検出位置θP1、θP2での強度A0であり、中心強度はピーク検出位置θP1及びθP2間の中心位置θAでの強度A又はA'である。前方車両を検出した場合は図4に実線で示すような波形が検出されるが、例えばガードレール上にある2つの反射板に電波を照射したときに図4の一点鎖線で示すような波形を検出することがある。
【0027】
2つのピーク検出位置θP1、θP2の間は、左右の反射板からの反射波が干渉する結果、ピーク検出位置θP1、θP2の外側と比べると反射強度が高くなる。更に、前方車両からの反射波を検出した場合には左右のリフレクタ間に金属のボディが存在するので、ボディからの反射波も干渉するので、反射板の間に検出物がない他の障害物に比べて、反射強度は大きくなる。この特性を用いて、ステップS4では反射波で検出した物体が他車両であるか、あるいは道路構造物等であるかの判定を行う。
【0028】
なお、それぞれの反射強度は自車両と障害物との距離に応じて変化するので、第1の閾値PDは図5に示すように自車両と障害物との距離に応じて値が設定され、障害物との距離が大きくなるにしたがって第1の閾値PDが大きくなるように設定している。この第1の閾値PDの大きさは車両からの反射波か否かを判定できるように計算若しくは実験により求められたものである。また図5は第1の閾値PDとして実際に使用するものを示したものではなく、模式的にその傾向を表したものである。
【0029】
ステップS5では図4に示す、ピーク検出位置θP1に対して中心強度検出位置θA分、これとは逆方向に折り返した検出位置θBでの反射強度Bを検出位置θAでの中心強度A若しくはA'で割ったのもが第2の閾値BDより小さいか否かを判定し、YESであればステップS6へ移行し、NOであればステップS7へ移行する。
【0030】
なお、検出位置θBでの反射強度Bは、車両のリフレクタからの反射強度、およびその他の反射板からの反射強度の両方ともほぼ同じ値を示す。また、前述のように中心反射強度は、車両からの中心反射強度A'と、車両以外の反射板を2つ持つものの中心反射強度Aと、を比べると、車両からの反射強度A'の方が大きい。この特性を用いてステップS5では、ステップS4の判定に加え、さらに反射波で検出した物体が他車両であるか、あるいは道路構造物等であるかの判定を行う。ここで、それぞれの反射強度は自車両と障害物との距離に応じて変化するので、第2の閾値BDは第1の閾値PDと同様に図6に示すように自車両と障害物との距離に応じて値が設定され、障害物との距離が大きくなるにしたがって第2の閾値BDが大きくなるように設定している。この第2の閾値の大きさは車両からの反射波であるか否かを判定できるように計算若しくは実験により求められたものである。また図6は第2の閾値BDとして実際に使用するものを示したものではなく、模式的にその傾向を表したものである。
【0031】
ステップS6では、車間制御許可フラグに1を入力し車間制御部2や車速制御部4に対して車間制御を許可する。
【0032】
これに対し、ステップS7では、車間制御許可フラグに0を入力し車間制御部2や車速制御部4に対して車間制御を禁止する。
[定速走行]
【0033】
車両の車間距離制御装置は、先行車車間検出部8により先行車が検出されなかった場合には、設定部1でドライバが設定した設定車速を保つように制御対象である自車両11を制御する。例えば、ドライバが設定車速を100km/hに設定したとすると、車間制御部2では、先行車車両が検出されていないので目標車速は出力されず、車速指令値選択部3では、設定部1から入力した設定車速情報の100km/hを選択して、100km/hを車速指令値として車速制御部4に出力する。その後、車速制御部4はドライバの設定車速100km/hを保つように車速情報等を監視しながら駆動力制御部5を介して、自車両を制御する。
[減速走行]
【0034】
自車両の進行方向に自車両の現在車速より遅い先行車がいるときは、車間距離を保つように減速する。このときドライバの設定車速(例えば100km/h)より遅い先行車(例えば80km/h)を検出したとき、車間制御部2ではドライバの設定車間情報を基に速度に応じた車間距離と、自車両と先行車との相対速度とから算出した目標車速を車速指令値選択部3に出力する。車速指令値選択部3では、設定部1からの設定車速情報(ここでは100km/h)と、車間制御部2からの目標車速情報(ここでは80km/h)とを入力し、車速の小さい方を車速指令値(ここでは80km/h)として車速制御部4へ出力する。車速制御部4では車速指令値と、設定車間距離を達成するように駆動力制御部5及び液圧ブレーキ制御部6とを介して、エンジン7a及びブレーキ7bを制御する。
[追従走行]
【0035】
ドライバが設定した設定車間距離を基に速度に応じて算出した車間距離を保って、先行車に追従して走行するように車両を制御する。車間制御部2では、車速情報並びに車間距離情報及び相対車速情報並びに設定車間距離情報が入力され、車速に応じた車間距離を設定し、目標車速を算出する。車速指令値選択部3では、ドライバの設定車速情報と車間制御部2からの目標車速とから、車速の小さいものを選択し指令車速値として車速制御部4に出力する。車速制御部4では、車速指令値等により駆動力制御部5及び液圧ブレーキ制御部6を介して制御対象(車両)7の加減速制御を行う。
【0036】
なお、このときの車速はドライバが設定した設定車速を上限とし、車速が設定車速を超えると追従走行をやめて、定速走行を行う。
[加速走行]
【0037】
自車両の進行方向にいる先行車が走行レーンを移動するなどしていなくなったときには、ドライバの設定車速を上限にそれより低い場合には加速をする。このとき、車速指令値選択部3では、車間制御部2では目標車速が設定されないのでドライバの設定車速を車速指令値として車速制御部4へ入力する。車速制御部4では、駆動力制御部5を介して、制御対象(車両)7を車速指令値まで加速させる。
【0038】
次に、本実施例1の物体検出装置の効果を説明する。
【0039】
(1)物体の存在の確認だけでなく、反射波のピークから物体が他車両であるか否かを判定でき、より精密な物体検出ができる。
【0040】
(2)車両の進行方向の障害物が車両であるか否かを判定できるので、車両との車間距離制御を行う際に、車両以外の障害物に対して車間距離制御を行い不必要なブレーキを作動させたりすることがないようにすることができ、ドライバに違和感を与えずに車間距離制御を行うことができる。
【0041】
(3)反射波の波形に2つのピークが検出された場合、ピークの間の中心強度A又はA'と、ピーク強度A0とを比較して、障害物が車両であるか否かを判定できるので、より精確な車両判定を行うことができる。したがって、車両判定の誤認識の可能性が少なくなり、車間距離制御を行う際にドライバに違和感を与えずに車間距離制御を行うことができる。
【0042】
(4)反射波の波形に2つのピークが検出された場合、ピークの間の中心強度A又はA'と、ピーク位置θPに対し中心強度検出位置θAに対称な位置θBの反射強度Bとを比較して、障害物が車両であるか否かを判定できるので、より精確な車両判定を行うことができる。したがって、車両判定の誤認識の可能性が少なくなり、車間距離制御を行う際にドライバに違和感を与えずに車間距離制御を行うことができる。
【0043】
以上、本発明の車両の他車両検出装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
【0044】
例えば、本実施例1では、ステップS4、ステップS5でそれぞれ車両判定を行っているが、いずれかひとつを用いても良い。また、車両が動いているか障害物が動いているか否かの判定も組み合わせて、走行中の車両のみを検出するようにしても良い。また、ステップS1の物体有無判定処理中もレーザ光をスキャニングしていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願は、他車両を検出して、他車両検出装置等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1に係る、本発明の他車両検出装置を備えた車両の車間距離制御装置を示す全体システム図である。
【図2】実施例1に係る、他車両検出装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1に係る、電波によるスキャニングの様子を示す図である。
【図4】実施例1に係る、電波によるスキャニングにより得られた反射波波形を示す図である。
【図5】実施例1に係る、閾値PDと自車両と障害物との距離の関係を示す図である。
【図6】実施例1に係る、閾値BDと自車両と障害物との距離の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 設定部
2 車間制御部
3 車速指令値選択部
4 車速制御部
5 駆動力制御部
6 液圧ブレーキ制御部
7a エンジン
7b ブレーキ
8 先行車車間検出部
9 車速検出部
10 リフレクタ
11 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から照射した照射波の反射波を用いて他車両の検出を行う他車両検出装置において、
前記反射波が持つ強度のパターンから他車両の有無を判定する他車両判定手段を備えることを特徴とする他車両検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の他車両検出装置において、
前記他車両判定手段は、前記反射波の強度パターンが2つの前記ピークを持つときに他車両の存在を検出することを特徴とする他車両検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の他車両検出装置において、
前記他車両判定手段は、前記反射波の波形パターンが持つ前記2つのピークの中心位置における中心強度と、前記ピークのピーク強度と、を比較することにより前記他車両の有無の判定を行うことを特徴とする他車両検出装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の他車両検出装置において、
前記他車両判定手段は、前記反射波の2つのピークの中心位置における中心強度と、前記ピークの位置に対して前記中心強度の位置を対称に折り返した対称位置での強度と、を比較することにより前記他車両の有無の判定を行うことを特徴とする他車両検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−38698(P2006−38698A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220430(P2004−220430)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】