位置決め装置
【課題】特定のエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供する。
【解決手段】 位置制御されるスライダ1と、このスライダ1と対向する面に磁極の歯が形成されてスライダ1と平面モータを構成するプラテン10とを備えた位置決め装置において、
スライダ1の位置を検出するレゾルバ30a〜30c(以下レゾルバ30とする。)と、
プラテン10の特定のエリアAにおけるスライダ1の位置をレゾルバ30よりも高い精度で検出するレーザ干渉計20a,20b(以下レーザ干渉計20とする。)と、
スライダ1の位置に応じてレゾルバ30またはレーザ干渉計20のいずれかの位置検出装置を選択する切替スイッチ100cと、
位置指令値および切替スイッチ100cで選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいてスライダ1の位置制御を実行する位置制御部102と、
を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【解決手段】 位置制御されるスライダ1と、このスライダ1と対向する面に磁極の歯が形成されてスライダ1と平面モータを構成するプラテン10とを備えた位置決め装置において、
スライダ1の位置を検出するレゾルバ30a〜30c(以下レゾルバ30とする。)と、
プラテン10の特定のエリアAにおけるスライダ1の位置をレゾルバ30よりも高い精度で検出するレーザ干渉計20a,20b(以下レーザ干渉計20とする。)と、
スライダ1の位置に応じてレゾルバ30またはレーザ干渉計20のいずれかの位置検出装置を選択する切替スイッチ100cと、
位置指令値および切替スイッチ100cで選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいてスライダ1の位置制御を実行する位置制御部102と、
を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め装置に関し、詳しくは、平面モータを構成するプラテンに対するスライダの位置を制御する位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は従来の位置決め装置の一例を示す構成図である。四辺形のプラテン10上に四辺形のスライダが搭載されており、プラテン10上でX軸方向およびY軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダのそれぞれの対向面には所定ピッチの磁極の歯(以下単に歯という)が形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダは指定された位置に移動する。
【0003】
スライダの側辺の3辺にはバーミラーが設けられている。プラテン10の辺10a〜10cにはスライダの位置検出を行う複数のレーザ干渉計が固定配置されている。プラテンの一方の対向する辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計はスライダのX軸方向の位置検出を行い、辺10cに配置されたレーザ干渉計はスライダのY軸方向の位置検出を行う。レーザ干渉計は、出射したレーザ光とこのレーザ光がスライダのバーミラーで反射されて戻ってくる反射光との干渉に基づき、スライダの位置を高精度に検出する。さらに詳しくは、レーザ干渉計は、反射光との干渉に基づいてレーザ干渉計とバーミラーとの間の距離に応じた検出信号を出力し、この検出信号に基づいてスライダの位置が算出される。
【0004】
レーザ干渉計で位置検出が可能なスライダの位置範囲は、スライダのバーミラーからの反射光がそのレーザ干渉計から外れる直前位置までに限られる。そのため、レーザ干渉計をスライダの移動方向に沿って複数設け、スライダの移動に伴いこれら複数のレーザ干渉計の中から使用すべきレーザ干渉計を切り替えることによって、スライダが移動可能な全エリアにおいてスライダの位置検出を可能としている。
【0005】
なお、プラテン10の辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計は、それぞれスライダのX軸方向の位置を2点ずつ検出して、スライダの回転角θを求めている。検出されたスライダの位置および回転角θは、平面モータにフィードバックされ、スライダの位置制御や姿勢制御に利用される。下記特許文献1には、レーザ干渉計を用いてスライダの位置検出を行う位置決め装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−163418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、位置決め装置の用途によっては、必ずしもスライダが移動可能な全エリアにおいて高い位置決め精度が必要とされているわけではなく、特定のエリアにおいてのみ高い位置決め精度を得ることができればよいという場合がある。このような場合には、その特定エリア以外のエリアでは、レーザ干渉計の位置検出精度はオーバースペックとなる。
【0008】
レーザ干渉計は、高価な部品であるため、オーバースペックとなるエリアについてまでレーザ干渉計を用いて位置検出を行うのは、位置決め装置の不要なコストアップにつながる。
【0009】
また、上記のようにレーザ干渉計の切り替えを伴う位置検出システムでは、レーザ干渉計切り替え時に発生する誤差が位置検出値に累積されていってしまう。そのため、高い位置決め精度が必要とされる特定エリアにおいても、レーザ干渉計本来の位置検出精度が得られない場合がある。
【0010】
本発明は、従来装置の問題をなくし、特定のエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
前記スライダの位置を検出する第1の位置検出装置と、
前記プラテンの特定のエリア内における前記スライダの位置を前記第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置と、
前記スライダの位置に応じて前記第1または第2の位置検出装置のいずれかを選択する切替手段と、
位置指令値および前記切替手段で選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいて前記スライダの位置制御を実行する位置制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の位置決め装置において、前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、
請求項2に記載の位置決め装置において、前記補正部は、前記切替手段が位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、
請求項3に記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、
請求項3に記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置は前記スライダに設けられたレゾルバであり、
前記第2の位置検出装置はレーザ干渉計であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、
第1の位置検出装置と、プラテンの特定のエリア内におけるスライダの位置を第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置とを備え、スライダの位置に応じてこれらの位置検出装置を使い分けることによって、特定のエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、
前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えているため、位置検出装置の切り替え時に発生するスライダの急激な移動を防止できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、
前記補正部は、位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正するため、第1の位置検出装置の検出誤差に起因して発生するスライダの急激な移動を防止できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であるため、プラテンの歯に不揃いや加工誤差などがある場合でも、位置検出装置の切り替え位置によらず、スライダの急激な移動を確実に防止できる。
【0021】
請求項5の発明によれば、
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であるため、位置検出装置の切り替え時のスライダ位置と、そのスライダ位置に対応するプラテンの歯との相対的な位置関係によらず、スライダの急激な移動を確実に防止できる。
【0022】
請求項6の発明によれば、
第1の位置検出装置はレゾルバであり、第2の位置検出装置はレーザ干渉計であるため、レーザ干渉計で高い位置検出精度を確保するとともに、レゾルバにより位置決め装置全体の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施例1では、スライダの位置検出を行う第1の位置検出装置としてレゾルバを、第2の位置検出装置としてレーザ干渉計を利用する。レゾルバを構成する主な部品はコアとコイルであり、レーザ干渉計など他のセンサに比較して構造が簡単で安価である。また、レゾルバのコアとコイルはいずれも耐久性が大きいため、メンテナンスが容易である。まず、レゾルバの動作原理について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はレゾルバが位置に応じた信号を出力する動作原理の説明図である。レゾルバのセンサ部200は、コア201と、このコア201に巻かれたコイル202で構成される。センサ部200はプラテン10上に所定の空隙を介して配置される。コア201のプラテン10と対向する面には、プラテン10の歯と同じピッチLで歯が形成されている。
【0025】
プラテン10とコア201との間には、プラテン10の歯とコア201の歯の相対位置に応じたインピーダンスZが存在する。コイル201に励磁電圧として一定振幅の矩形電圧を入力すると、コア201が励磁されてプラテン10との間に磁気回路Bが形成される。この磁気回路BはインピーダンスZにより影響を受けるため、結果としてコイル202の端子間電圧はプラテン10とコア201の相対位置に応じて変化する。そこで、コイル202の端子間電圧を取り出し、その振幅を検出信号とする。
【0026】
図1の(a)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最大、すなわち位相差が0°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最小となり、検出信号は最大となる。
一方、図1の(b)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最小、すなわち位相差が180°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最大となり、検出信号は最小となる。
【0027】
センサ部200がプラテン10上を移動すると、インピーダンスZは正弦波状に変化する。そのため、検出信号は、図1の(c)に示すように、ピッチLの周期で正弦波状に変化する。
【0028】
レゾルバは、このようなセンサ部200を2組用意し、図2に示すようにプラテン10に対する位相を90°ずらして配置して構成する。センサ部200の一方をsin相、他方をcos相とし、これらのセンサ部から得られる検出信号のアークタンジェントを取ることによって、レゾルバのプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10の歯に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のどの歯に対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。以上より、レゾルバによって原点位置からの位置に応じた信号を取り出すことができる。なお、一般的にレーザ干渉計の方がレゾルバよりも高い位置検出精度を有する。
【0029】
図3は、本実施例の位置決め装置の構成を示す上面図である。
プラテン10上にエアベアリングを利用してスライダ1が搭載されている。プラテン10とスライダ1のそれぞれの対向面にはX軸方向およびY軸方向に一定ピッチLの歯10a,1aが形成されており、平面モータを構成している。スライダ1は、プラテン10上でこの平面モータによりX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向に位置制御される。なお、本図ではプラテン10の歯を一部省略して示している。
【0030】
スライダ1は矩形状をしており、スライダ1の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0031】
プラテン10のY軸に沿った辺にレーザ干渉計20aが、X軸に沿った辺にレーザ干渉計20bが固定配置されている。また、スライダ1のレーザ干渉計20aに対向する側辺にバーミラー21aが、レーザ干渉計20bに対向する側辺にバーミラー21bが搭載されている。レーザ干渉計20aはスライダ1のX位置を検出し、レーザ干渉計20bはスライダ1のY位置を検出する。また、レーザ干渉計20bではスライダ1のY位置を2点検出し、検出されたY位置の差分に基づいてスライダ1の回転角θが検出される。
【0032】
さらに、レゾルバ30a〜30cがスライダ1に設けられている。レゾルバ30a〜30cは、スライダ1のプラテン10との対向面の辺縁部に埋設されている。レゾルバ30a,30bは、それぞれスライダ1のX軸方向の中央部に埋設され、レゾルバ30cはスライダ1のY軸方向の中央部に埋設されている。レゾルバ30a,30bは、プラテン10との対向面にX軸方向に一定ピッチLで歯が形成されており、スライダ1の中央部のX位置を検出する。レゾルバ30cは、プラテン10との対向面にY軸方向に一定ピッチLで歯が形成されており、スライダ1の中央部のY位置を検出する。また、レゾルバ30a,30bで検出されたX位置の差分に基づいて、スライダ1の回転角θが検出される。
【0033】
レーザ干渉計20a,20bの検出信号Oia,Oibと、レゾルバ30a〜30cの検出信号Ora,Orb,Orcは、それぞれ図示しないA/D変換器によりデジタル化され、その後図示しない演算部100に入力される。演算部100は、これらの検出信号に基づいてスライダ1の現在位置および回転角を算出する。算出されたスライダ1の現在位置と回転角は、平面モータにフィードバックされ、スライダ1の位置制御や姿勢制御に利用される。
【0034】
以下、レーザ干渉計20a,20bを代表するときはレーザ干渉計20と記載し、レゾルバ30a〜30cを代表するときはレゾルバ30と記載する。また、検出信号Oia,Oibを代表するときは検出信号Oiと記載し、検出信号Ora,Orb,Orcを代表するときは検出信号Orと記載する。
【0035】
図4は、プラテン10のエリア分けを示す図である。エリアAは、プラテン10上でスライダ1に高い位置決め精度が必要とされるエリアである。エリアBは、プラテン10上のエリアA以外のエリアであり、エリアAほど高い位置決め精度が必要とされないエリアである。
以下、「スライダ1がエリアAに位置する」とはスライダ1の全体がエリアA内に入っている状態を意味し、「スライダ1がエリアBに位置する」とはスライダ1の少なくとも一部がエリアAから出ている状態を意味する。
【0036】
スライダ1がエリアAに位置する場合には、レーザ干渉計20によりスライダ1の位置検出を行う。スライダ1がエリアBに位置する場合には、レゾルバ30によりスライダ1の位置検出を行う。
【0037】
なお、レゾルバ30はプラテン10上の全面で位置検出が可能であるが、レーザ干渉計20はスライダ1の位置によって位置検出できる範囲が限定される。レーザ干渉計20により位置検出が可能なスライダ1のY軸方向の範囲は、バーミラー21aからの反射光がレーザ干渉計20aから外れる直前位置までである。また、スライダ1のX軸方向の範囲は、バーミラー21bからの反射光がレーザ干渉計20bから外れる直前位置までとなる。そのため、エリアAの位置やサイズに合わせて、レーザ干渉計20a,20bの取り付け位置や、バーミラー21a,21bのサイズ、スライダ1のサイズを決定する。
スライダ1がエリアBに位置している場合には、レーザ干渉計20による位置検出値は不定となる。
【0038】
図5は本実施例の位置決め装置の詳細を示すブロック図である。
位置決め装置は、位置制御部102、スライダ1、レーザ干渉計20、レゾルバ30、演算部100から構成されている。演算部100は、測定処理部100a,100b、切替スイッチ100c、座標確立部100d、補正部100eから構成されている。位置決め装置は、上位装置から各種の指示信号やスライダ1の位置指令値が与えられる。
【0039】
位置指令値生成部101は、上位装置に含まれ、スライダ1の位置指令値Pcmdを生成する。位置制御部102は、位置指令値生成部101から位置指令値Pcmdが与えられる。位置指令値Pcmdはスライダ1を移動させたい座標(Xcmd,Ycmd,θcmd)、すなわち目標位置を示す信号である。位置制御部102は、位置指令値Pcmdをスライダ1の平面モータに供給する駆動電流に変換し、スライダ1を移動させる。
【0040】
レーザ干渉計20の検出信号Oiは、測定処理部100aに入力される。また、レゾルバ30の検出信号Orは、測定処理部100bに入力される。測定処理部100aは、入力された検出信号Oiを位置検出値Pi(Xi,Yi,θi)に変換し、切替手段100cに出力する。また、測定処理部100bは、入力された検出信号Orを位置検出値Pr(Xr,Yr,θr)に変換し、切替スイッチ100cに出力する。
【0041】
切替スイッチ100cは、上位装置より与えられる切替指示信号S1に従って位置検出値Pi,Prのいずれかに切り替える。切替スイッチ100cは、選択した位置検出値を位置フィードバック信号Pfbとして位置制御部102にフィードバックする。位置制御部102は、フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdとの偏差がゼロとなるように、スライダ1をサーボ制御する。
【0042】
切替指示信号S1は、スライダ1がエリアBからエリアAに移動する場合には位置検出値Piを選択するように切り替えられ、エリアAからエリアBに移動する場合には位置検出値Prを選択するように切り替えられる。これにより、レーザ干渉計20とレゾルバ30が切り替えられる。
【0043】
次に、レーザ干渉計20とレゾルバ30の切り替え時の動作について説明する。
スライダ1がエリアBからエリアAへ移動する場合と、エリアAからエリアBに移動する場合について順に説明する。
【0044】
<エリアBからエリアAへ移動する場合>
レゾルバ30による位置検出から、レーザ干渉計20による位置検出を確立する動作を行う。
【0045】
レーザ干渉計20はエリアBでは位置検出値が不定であり、また、レーザ干渉計20はインクリメント式の検出装置である。そのため、レーザ干渉計20による位置検出を確立するためには、スライダ1がエリアAに進入後、レーザ干渉計20による位置検出を開始する時点で初期値を与える必要がある(ステップST1)。
【0046】
座標確立部100dは、測定処理部100bから位置検出値Prが入力される。また、座標確立部100dは、スライダ1がエリアAに進入後、上位装置よりレーザ干渉計20による位置検出の確立を指示する確立指示信号S2が入力される。座標確立部100dは、確立指示信号S2の入力に応じて位置検出値Prを測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、入力された位置検出値Prを位置検出値Piにプリセットする(ステップST2)。その後、切り替え手段100cは、位置検出値をPrからPiに切り替える(ステップST3)。
【0047】
ところで、レゾルバ30でスライダ1の位置検出を行うと、位置検出値Prにはスライダ1の位置に応じた位置検出誤差E(Ex,Ey,Eθ)が現れる。位置検出値Piに位置検出値Prをプリセットすることにより、その後の位置検出値Piにも継続して位置検出誤差Eが付加されてしまう。エリアAでは高い位置検出精度が必要とされるため、位置検出値Piからこの位置検出誤差Eを補正する必要がある。
【0048】
補正部100eは位置検出誤差Eの補正を行う。補正部100eには、測定処理部100bから位置検出値Prが入力される。また、補正部100eは、上位装置より位置検出誤差Eの補正を指示する補正指示信号S3が入力される。補正部100eには、位置検出値Prと、その位置における位置検出誤差Eとをあらかじめ対応付けておく。補正部100eは、補正指示信号S3の入力に応じて位置検出値Prに対応する位置検出誤差Eを求め、測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、プリセットした位置検出値Prから位置検出誤差Eを減算し、位置検出値Piの初期値とする(ステップST4)。これにより、位置検出値Piから位置検出誤差Eが除去される。すなわち、切り替え後の位置フィードバック信号Pfbから位置検出誤差Eが除去される。
【0049】
なお、位置検出値Piを位置検出誤差Eで補正することにより、位置フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdの値が異なる値となる。位置フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdを同じ値に保つため、位置指令値Pcmdに対しても位置検出誤差Eの補正を行う。
【0050】
補正部100eは、測定処理部100aとともに位置指令値生成部101にも位置検出誤差Eを出力する。位置指令値生成部101は、位置指令値Pcmdから位置検出誤差Eを減算し、これを新しい位置指令値Pcmdとして出力する(ステップST5)。これにより、切替スイッチ100cによる切り替えの前後において、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが一致した状態が保たれる。
【0051】
なお、ステップST4とステップST5は、同時に行う。位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが乖離する期間が生じると、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbの偏差が瞬間的に変化する。位置制御部102は、偏差が瞬間的に変化したことに起因してスライダ1を急激に移動させてしまい、スライダ1上に搭載されたワークが過大な加速度を受け損傷する場合があるためである。
【0052】
ステップST2〜ST5までの処理は、スライダ1をプラテン10の同一地点に位置させた状態で行う。さらに、ステップST4とステップST5は、ステップST3の直後、またはステップST3と同時に行う。
以上により、レーザ干渉計20による位置検出が確立される。
【0053】
<エリアAからエリアBへ移動する場合>
レーザ干渉計20による位置検出から、レゾルバ30による位置検出に移行する動作を行う。
【0054】
レゾルバ30による位置検出に移行する動作は、スライダ1がエリアAに位置した状態で行う。スライダ1がエリアAに位置しているときは、位置検出値Pi,Prの両方が得られる。位置検出値Prには位置検出誤差Eが含まれている。この位置検出誤差Eはスライダ1の位置に依存するため、レーザ干渉計20の確立時に補正に利用した位置検出誤差値と異なる。そのため、通常、位置検出値Piと位置検出値Prは一致しない(ステップST6)。
【0055】
この状態で切替スイッチ100cを位置検出値PiからPrへと切り替えると、切り替え前後で位置フィードバック信号が乖離する。そのため、再度補正部100eにより位置検出誤差Eの補正を行う。
【0056】
補正部100eには、再度上位装置より補正指示信号S3が入力され、位置検出値Prに対応する位置検出誤差Eを求める。補正部100eは、求めた位置検出誤差Eを測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、現在の位置検出値Piに位置検出誤差Eを加算し、新しい位置検出値Piとして出力する(ステップST7)。これにより、位置検出値Piは位置検出値Prと一致する。
【0057】
さらに、補正部100eは、位置指令値生成部101に位置検出誤差Eを出力する。位置指令値生成部101は、位置指令値Pcmdに位置検出誤差Eを加算し、これを新しい位置指令値Pcmdとして出力する(ステップST8)。ステップST8はステップST7と同時に行う。その後、切り替え手段100cは、位置検出値をPiからPrに切り替える(ステップST9)。これにより、切替スイッチ100cによる切り替えの前後において、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが一致した状態が保たれる。
【0058】
ステップST7〜ST9の処理は、スライダ1をプラテン10の同一地点に位置させた状態で行う。さらに、ステップST7とST8は、ステップST9の直前またはST9と同時に行う。
以上により、レゾルバ30による位置検出への移行が完了する。
その後、スライダ1がエリアAから出ると、レーザ干渉計20では検出信号Oiが得られなくなり、位置検出値Piは不定となる。
【0059】
なお、図5では位置指令値生成部101、位置制御部102および演算部100を機能ブロックのみで示しているが、実際にはCPUで構成される。
【0060】
図6は位置検出装置の切り替え時における各信号の値の変化を示す図であり、(a)はスライダ1がエリアBからエリアAへ移動する場合、(b)はスライダ1がエリアAからエリアBへ移動する場合の信号の変化である。なお、簡単のためX軸方向の値のみ示す。
【0061】
ステップST1において、位置指令値Xcmdおよび位置検出値Xrはともに10000である。レーザ干渉計20は確立前のため位置検出値Xiは不定である。位置検出値Xr=10000のときの位置検出誤差Ex=+50であり、スライダ1は実際にはX=9950に位置している。
【0062】
位置検出値Xrの値が位置検出値XiにプリセットされてXi=10000となる(ステップST2)。その後、切替スイッチ100cにより位置検出装置がレゾルバ30からレーザ干渉計20に切り替えられる(ステップST3)。また、位置検出値Xiから位置検出誤差Exが減算されてXi=9950となり(ステップST4)、位置指令値Xcmdから位置検出誤差Exが減算されてXcmd=9950となる(ステップST5)。ステップST4とステップST5は同時に行われるため、切り替えの前後において位置指令値Xcmdと位置フィードバック信号Xfbは常に一致している。そのため、切り替え前後でスライダ1は移動しない。
【0063】
ステップST6において、位置指令値Xcmd、位置検出値Xiおよびスライダ位置はすべて20000である。スライダ1がこの位置にあるとき、レゾルバ30による位置検出では位置検出値Xr=19900であり、位置検出誤差Ex=−100である。
【0064】
位置検出値Xiに位置検出誤差Exが加算されてXi=19900となり(ステップST7)、位置指令値Xcmdに位置検出誤差Exが加算されてXcmd=19900となる(ステップST8)。その後、切替スイッチ100cにより位置検出装置がレーザ干渉計20からレゾルバ30に切り替えられる(ステップST9)。ステップST7とステップST8は同時に行われるため、切り替えの前後において位置指令値Xcmdと位置フィードバック信号Xfbは常に一致している。そのため、切り替え前後でスライダ1は移動しない。
【0065】
次に、位置検出誤差E(Ex,Ey,Eθ)について説明する。
本実施例では、位置検出誤差Eを、プラテンの歯ピッチに同期して現れる誤差(位置検出誤差Ea)と、プラテン10の各歯それぞれに固有の誤差(位置検出誤差Eb)の2種類に分けて誤差値を求める。位置検出誤差Ea,Ebは、X軸方向、Y軸方向およびθ軸方向それぞれについて測定する。なお、位置検出誤差Eの取得は、位置決め装置の製造時など、実稼動に先立って行う。
【0066】
まず、位置検出誤差Ea(Eax,Eay,Eaθ)について説明する。
レゾルバ30は、プラテン10の歯10aに対する相対位置に基づいて検出信号を生成する。そのため、レゾルバ30の検出信号には、歯ピッチLの周期で位置検出誤差が現れる。
【0067】
図7はプラテン10の歯10aの拡大図である。歯10aを格子状に複数のエリアに分割し、各格子点にスライダ1を位置決めしたときに発生する位置検出誤差Eaを測定する。位置検出誤差は、スライダ1の上面に位置決め用マークを付しておき、プラテン10の上方に固定したカメラでその位置決め用マークの実際の位置を観測し、観測された位置を理論値と比較することによって求める。なお、歯10a内におけるX軸方向およびY軸方向の位置を示す場合に、添え字pを付加する。
【0068】
図7において、位置(Xp[m],Yp[n])の格子点をB1、位置(Xp[m],Yp[n+1])の格子点をB2、位置(Xp[m+1],Yp[n+1])の格子点をB3、位置(Xp[m+1],Yp[n])の格子点をB4とする。
【0069】
図8は、位置検出誤差Eaを示す図であり、図7の網掛け部分を拡大して示したものである。図8の(a)はX軸方向の位置検出誤差Eax、(b)はY軸方向の位置検出誤差Eay、(c)はθ軸方向の位置検出誤差Eaθである。
【0070】
各格子点で区切られる各エリア内部の位置検出誤差Eaは、周囲の格子点における位置検出誤差から内挿して求める。たとえば、図中の点B(xp,yp)における位置検出誤差Eax,Eay,Eaθは、点Bが存在するエリアを区切る格子点B1〜B4における位置検出誤差から内挿して算出する。
【0071】
格子点B1〜B4におけるX軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eax[m][n]、Eax[m][n+1]、Eax[m+1][n+1]、Eax[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eaxは、以下のように表現できる。
【0072】
また、格子点B1〜B4におけるY軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eay[m][n]、Eay[m][n+1]、Eay[m+1][n+1]、Eay[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eayは、以下のように表現できる。
【0073】
また、格子点B1〜B4におけるθ軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eaθ[m][n]、Eaθ[m][n+1]、Eaθ[m+1][n+1]、Eaθ[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eaθは、以下のように表現できる。
【0074】
次に、位置検出誤差Eb(Ebx,Eby,Ebθ)について説明する。
プラテン10の歯10aには、加工誤差によって歯の不揃いなどが発生している。そのため、レゾルバ30の検出信号には、各歯それぞれに固有の誤差が現れる。
【0075】
図9はプラテン10を示す図である。プラテン10を格子状に複数のエリアに分割し、各格子点にスライダ1を位置決めしたときに発生する位置検出誤差Ebを求める。図9の位置検出誤差は、スライダ1の上面に位置決め用マークを付しておき、プラテン10の上方に固定したカメラでその位置決め用マークの実際の位置を観測し、観測された位置を理論値と比較することによって求める。
【0076】
なお、位置検出誤差の観測値をEb’としたとき、観測値Eb’には位置検出誤差Eaが含まれている。そのため、位置検出誤差Ebは、観測値Eb’から位置検出誤差Eaを減算して求める。
【0077】
図9において、位置(X[h],Y[k])の格子点をC1、位置(X[h],Y[k+1])の格子点をC2、位置(X[h+1],Y[k+1])の格子点をC3、位置(X[h+1],Y[k])の格子点をC4とする。
【0078】
図10は、位置検出誤差Ebを示す図であり、図9の網掛け部分を拡大して示したものである。図10の(a)はX軸方向の位置検出誤差Ebx、(b)はY軸方向の位置検出誤差Eby’、(c)はθ軸方向の位置検出誤差Ebθ’である。
【0079】
各格子点で区切られる各エリア内部の位置検出誤差Ebは、周囲の格子点における位置検出誤差から内挿して求める。たとえば、図中の点C(x,y)における位置検出誤差Ebx,Eby,Ebθは、点Cが存在するエリアを区切る格子点C1〜C4における位置検出誤差から内挿して算出する。
【0080】
格子点C1〜C4におけるX軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Ebx[h][k]、Ebx[h][k+1]、Ebx[h+1][k+1]、Ebx[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebxは、以下のように表現できる。
【0081】
また、格子点C1〜C4におけるY軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eby[h][k]、Eby[h][k+1]、Eby[h+1][k+1]、Eby[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebyは、以下のように表現できる。
【0082】
また、格子点C1〜C4におけるθ軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Ebθ[h][k]、Ebθ[h][k+1]、Ebθ[h+1][k+1]、Ebθ[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebθは、以下のように表現できる。
【0083】
補正部100eには、プラテン10の歯10aを複数エリアに分割する格子点B1,B2,・・・に対応する位置検出誤差Eaを記憶させるとともに、プラテン10全体を複数のエリアに分割する格子点C1,C2,・・・に対応する位置検出誤差Ebを記憶させておく。そして、補正部100eは、これらの位置検出誤差Ea,Ebを加算し、位置検出誤差Eとする。
【0084】
すなわち、補正部100eは、スライダ1の位置に応じて、
位置検出誤差Ex=Eax+Ebx ……(7)
位置検出誤差Ey=Eay+Eby ……(8)
位置検出誤差Eθ=Eaθ+Ebθ ……(9)
を計算し、位置検出誤差Eを算出する。
【0085】
本実施例は以上のように構成され、
スライダ1の位置を検出するレゾルバ30と、プラテン10のエリアA内におけるスライダ1の位置をレゾルバ30よりも高い精度で検出するレーザ干渉計20とを備え、スライダ1の位置に応じてレゾルバ30とレーザ干渉計20を使い分けることによって、エリアAでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【0086】
また、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え前後でスライダ1を同じ位置に維持する補正を行う補正部100eを備えているため、切り替え時に発生するスライダ位置の飛びを防止できる。
【0087】
また、補正部100eは、レゾルバ30とレーザ干渉計20とを切り替える際に、レゾルバ30の位置検出誤差Eに基づいて、位置指令値Pcmdおよびレーザ干渉計20で検出される位置検出値Piを補正するため、レゾルバ30の位置検出誤差Eに起因して発生するスライダ位置の飛びを防止できる。
【0088】
また、レゾルバ30の位置検出誤差Eは、プラテン10のスライダ1の現在位置に対応する歯に固有の検出誤差Ebを含んでいるため、プラテン10の歯に不揃いや加工誤差などがある場合でも、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え位置によらず、確実にスライダ位置の飛びを防止できる。
【0089】
また、レゾルバ30の位置検出誤差Eは、プラテン10の歯ピッチLに同期して現れる位置検出誤差Eaを含んでいるため、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え時のスライダ位置と、そのスライダ位置に対応するプラテン10の歯との相対的な位置関係によらず、確実にスライダ位置の飛びを防止できる。
【0090】
なお、本実施例では、位置検出誤差Ebをプラテン10上の全面において算出できるようにした。しかし、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替えを行う位置がプラテン10上の特定の位置に限定される場合には、補正部100eに記憶する位置検出誤差Ebは、その切り替え位置の分のみとしてもよい。
【0091】
本実施例において、レゾルバ30は請求項における第1の位置検出装置、レーザ干渉計20は第2の位置検出装置、切替スイッチ100cは切替手段に相当する。
【実施例2】
【0092】
図11は本発明の実施例2を示す上面図である。本実施例は、先の実施例1に対し、高い位置決め精度が必要とされるエリアが2ヶ所のものである。
【0093】
プラテン11は、エリアA1、エリアA2、エリアBの3つに分けられている。エリアA1,A2は高い位置決め精度が必要とされるエリアであり、実施例1のエリアAに相当する。エリアB1は実施例1のエリアBに相当する。プラテン11にはスライダ1が搭載されている。
【0094】
プラテン11のY軸に沿った辺にレーザ干渉計20a,20cが、X軸に沿った辺にレーザ干渉計20bが固定配置されている。レーザ干渉計20aはエリアA1に対応し、レーザ干渉計20cはエリアA2に対応する。
【0095】
スライダ1がエリアA1に位置する場合には、レーザ干渉計20a,20bを用いてスライダ1の位置検出が行われる。スライダ1がエリアA2に位置する場合には、レーザ干渉計20c,20bを用いてスライダ1の位置検出が行われる。スライダ1がエリアB1に位置する場合には、レゾルバ30によりスライダ1の位置検出が行われる。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0096】
本実施例は以上のように構成され、実施例1で得られる効果に加え、プラテン11上に高い位置決め精度が必要とされるエリアが複数ある場合でも、必要最小限の個数のレーザ干渉計でそれらのエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【実施例3】
【0097】
図12は本発明の実施例3を示す上面図である。本実施例は、先の実施例1の位置決め装置を2台接続したものである。
【0098】
プラテン10に、第2のプラテン10’が接続されている。プラテン10’は、エリアA’とエリアB’の2つのエリアに分けられており、それぞれプラテン10におけるエリアAとエリアBに相当する。プラテン10’のY軸に沿った辺にはレーザ干渉計20a’が、X軸に沿った辺にはレーザ干渉計20b’が固定配置されている。
【0099】
プラテン10にはスライダ1が搭載され、プラテン10’にはスライダ1’が搭載されている。スライダ1,1’は、それぞれ個別に位置制御される。これらのスライダは、それぞれプラテン10上およびプラテン10’上の両方を移動する。これらのスライダは、エリアAに位置する場合にはレーザ干渉計20a,20bにより位置検出が行われ、エリアA’に位置する場合にはレーザ干渉計20a’,20b’により位置検出が行われる。なお、スライダ1,1’のX軸方向の位置検出をレーザ干渉計20a,20a’の両方で行うことができるように、スライダ1,1’にはY軸に沿う側面の両方にバーミラーが搭載されている。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0100】
本実施例の位置決め装置の用途例として、半導体製造用の露光装置がある。エリアAの上方に、レチクル面上に形成されているIC等の電子回路パターンとウエハとの相対的な位置合わせを行うためのアライメント装置を備え、エリアA’の上方に露光機を備えておく。スライダ1にウエハを搭載し、まずエリアAに位置させてアライメントを行う。その後スライダ1をエリアA’に移動させ、ウエハの露光を行う。スライダ1で露光を行っている間に、スライダ1’をエリアAに位置させてアライメントを行う。スライダ1の露光が終了すると、スライダ1,1’の位置を交代する。このように、各スライダをエリアA,エリアA’に交互に往復させ、アライメントと露光を交互に繰り返す。これにより、露光装置の単位時間当たりのウエハ加工処理量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】レゾルバによる位置検出の動作原理の説明図である。
【図2】レゾルバの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1を示す上面図である。
【図4】プラテン10のエリア分けを示す図である。
【図5】実施例1の位置決め装置の詳細を示すブロック図である。
【図6】位置検出装置の切り替え時における各信号の値の変化を示す図である。
【図7】プラテン10の歯10aの拡大図である。
【図8】位置検出誤差Eaを示す図である。
【図9】プラテン10を示す図である。
【図10】位置検出誤差Ebを示す図である。
【図11】本発明の実施例2を示す上面図である。
【図12】本発明の実施例3を示す上面図である。
【図13】従来例の位置決め装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1 スライダ
10 プラテン
20,20a,20b レーザ干渉計
21a,21b バーミラー
30,30a〜30c レゾルバ
100 演算部
100a,100b 測定処理部
100c 切替スイッチ
100d 座標確立部
100e 補正部
101 位置指令値生成部
102 位置制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め装置に関し、詳しくは、平面モータを構成するプラテンに対するスライダの位置を制御する位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は従来の位置決め装置の一例を示す構成図である。四辺形のプラテン10上に四辺形のスライダが搭載されており、プラテン10上でX軸方向およびY軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダのそれぞれの対向面には所定ピッチの磁極の歯(以下単に歯という)が形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダは指定された位置に移動する。
【0003】
スライダの側辺の3辺にはバーミラーが設けられている。プラテン10の辺10a〜10cにはスライダの位置検出を行う複数のレーザ干渉計が固定配置されている。プラテンの一方の対向する辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計はスライダのX軸方向の位置検出を行い、辺10cに配置されたレーザ干渉計はスライダのY軸方向の位置検出を行う。レーザ干渉計は、出射したレーザ光とこのレーザ光がスライダのバーミラーで反射されて戻ってくる反射光との干渉に基づき、スライダの位置を高精度に検出する。さらに詳しくは、レーザ干渉計は、反射光との干渉に基づいてレーザ干渉計とバーミラーとの間の距離に応じた検出信号を出力し、この検出信号に基づいてスライダの位置が算出される。
【0004】
レーザ干渉計で位置検出が可能なスライダの位置範囲は、スライダのバーミラーからの反射光がそのレーザ干渉計から外れる直前位置までに限られる。そのため、レーザ干渉計をスライダの移動方向に沿って複数設け、スライダの移動に伴いこれら複数のレーザ干渉計の中から使用すべきレーザ干渉計を切り替えることによって、スライダが移動可能な全エリアにおいてスライダの位置検出を可能としている。
【0005】
なお、プラテン10の辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計は、それぞれスライダのX軸方向の位置を2点ずつ検出して、スライダの回転角θを求めている。検出されたスライダの位置および回転角θは、平面モータにフィードバックされ、スライダの位置制御や姿勢制御に利用される。下記特許文献1には、レーザ干渉計を用いてスライダの位置検出を行う位置決め装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−163418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、位置決め装置の用途によっては、必ずしもスライダが移動可能な全エリアにおいて高い位置決め精度が必要とされているわけではなく、特定のエリアにおいてのみ高い位置決め精度を得ることができればよいという場合がある。このような場合には、その特定エリア以外のエリアでは、レーザ干渉計の位置検出精度はオーバースペックとなる。
【0008】
レーザ干渉計は、高価な部品であるため、オーバースペックとなるエリアについてまでレーザ干渉計を用いて位置検出を行うのは、位置決め装置の不要なコストアップにつながる。
【0009】
また、上記のようにレーザ干渉計の切り替えを伴う位置検出システムでは、レーザ干渉計切り替え時に発生する誤差が位置検出値に累積されていってしまう。そのため、高い位置決め精度が必要とされる特定エリアにおいても、レーザ干渉計本来の位置検出精度が得られない場合がある。
【0010】
本発明は、従来装置の問題をなくし、特定のエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
前記スライダの位置を検出する第1の位置検出装置と、
前記プラテンの特定のエリア内における前記スライダの位置を前記第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置と、
前記スライダの位置に応じて前記第1または第2の位置検出装置のいずれかを選択する切替手段と、
位置指令値および前記切替手段で選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいて前記スライダの位置制御を実行する位置制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の位置決め装置において、前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、
請求項2に記載の位置決め装置において、前記補正部は、前記切替手段が位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、
請求項3に記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、
請求項3に記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の位置決め装置において、前記第1の位置検出装置は前記スライダに設けられたレゾルバであり、
前記第2の位置検出装置はレーザ干渉計であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、
第1の位置検出装置と、プラテンの特定のエリア内におけるスライダの位置を第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置とを備え、スライダの位置に応じてこれらの位置検出装置を使い分けることによって、特定のエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、
前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えているため、位置検出装置の切り替え時に発生するスライダの急激な移動を防止できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、
前記補正部は、位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正するため、第1の位置検出装置の検出誤差に起因して発生するスライダの急激な移動を防止できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であるため、プラテンの歯に不揃いや加工誤差などがある場合でも、位置検出装置の切り替え位置によらず、スライダの急激な移動を確実に防止できる。
【0021】
請求項5の発明によれば、
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であるため、位置検出装置の切り替え時のスライダ位置と、そのスライダ位置に対応するプラテンの歯との相対的な位置関係によらず、スライダの急激な移動を確実に防止できる。
【0022】
請求項6の発明によれば、
第1の位置検出装置はレゾルバであり、第2の位置検出装置はレーザ干渉計であるため、レーザ干渉計で高い位置検出精度を確保するとともに、レゾルバにより位置決め装置全体の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施例1では、スライダの位置検出を行う第1の位置検出装置としてレゾルバを、第2の位置検出装置としてレーザ干渉計を利用する。レゾルバを構成する主な部品はコアとコイルであり、レーザ干渉計など他のセンサに比較して構造が簡単で安価である。また、レゾルバのコアとコイルはいずれも耐久性が大きいため、メンテナンスが容易である。まず、レゾルバの動作原理について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はレゾルバが位置に応じた信号を出力する動作原理の説明図である。レゾルバのセンサ部200は、コア201と、このコア201に巻かれたコイル202で構成される。センサ部200はプラテン10上に所定の空隙を介して配置される。コア201のプラテン10と対向する面には、プラテン10の歯と同じピッチLで歯が形成されている。
【0025】
プラテン10とコア201との間には、プラテン10の歯とコア201の歯の相対位置に応じたインピーダンスZが存在する。コイル201に励磁電圧として一定振幅の矩形電圧を入力すると、コア201が励磁されてプラテン10との間に磁気回路Bが形成される。この磁気回路BはインピーダンスZにより影響を受けるため、結果としてコイル202の端子間電圧はプラテン10とコア201の相対位置に応じて変化する。そこで、コイル202の端子間電圧を取り出し、その振幅を検出信号とする。
【0026】
図1の(a)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最大、すなわち位相差が0°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最小となり、検出信号は最大となる。
一方、図1の(b)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最小、すなわち位相差が180°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最大となり、検出信号は最小となる。
【0027】
センサ部200がプラテン10上を移動すると、インピーダンスZは正弦波状に変化する。そのため、検出信号は、図1の(c)に示すように、ピッチLの周期で正弦波状に変化する。
【0028】
レゾルバは、このようなセンサ部200を2組用意し、図2に示すようにプラテン10に対する位相を90°ずらして配置して構成する。センサ部200の一方をsin相、他方をcos相とし、これらのセンサ部から得られる検出信号のアークタンジェントを取ることによって、レゾルバのプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10の歯に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のどの歯に対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。以上より、レゾルバによって原点位置からの位置に応じた信号を取り出すことができる。なお、一般的にレーザ干渉計の方がレゾルバよりも高い位置検出精度を有する。
【0029】
図3は、本実施例の位置決め装置の構成を示す上面図である。
プラテン10上にエアベアリングを利用してスライダ1が搭載されている。プラテン10とスライダ1のそれぞれの対向面にはX軸方向およびY軸方向に一定ピッチLの歯10a,1aが形成されており、平面モータを構成している。スライダ1は、プラテン10上でこの平面モータによりX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向に位置制御される。なお、本図ではプラテン10の歯を一部省略して示している。
【0030】
スライダ1は矩形状をしており、スライダ1の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0031】
プラテン10のY軸に沿った辺にレーザ干渉計20aが、X軸に沿った辺にレーザ干渉計20bが固定配置されている。また、スライダ1のレーザ干渉計20aに対向する側辺にバーミラー21aが、レーザ干渉計20bに対向する側辺にバーミラー21bが搭載されている。レーザ干渉計20aはスライダ1のX位置を検出し、レーザ干渉計20bはスライダ1のY位置を検出する。また、レーザ干渉計20bではスライダ1のY位置を2点検出し、検出されたY位置の差分に基づいてスライダ1の回転角θが検出される。
【0032】
さらに、レゾルバ30a〜30cがスライダ1に設けられている。レゾルバ30a〜30cは、スライダ1のプラテン10との対向面の辺縁部に埋設されている。レゾルバ30a,30bは、それぞれスライダ1のX軸方向の中央部に埋設され、レゾルバ30cはスライダ1のY軸方向の中央部に埋設されている。レゾルバ30a,30bは、プラテン10との対向面にX軸方向に一定ピッチLで歯が形成されており、スライダ1の中央部のX位置を検出する。レゾルバ30cは、プラテン10との対向面にY軸方向に一定ピッチLで歯が形成されており、スライダ1の中央部のY位置を検出する。また、レゾルバ30a,30bで検出されたX位置の差分に基づいて、スライダ1の回転角θが検出される。
【0033】
レーザ干渉計20a,20bの検出信号Oia,Oibと、レゾルバ30a〜30cの検出信号Ora,Orb,Orcは、それぞれ図示しないA/D変換器によりデジタル化され、その後図示しない演算部100に入力される。演算部100は、これらの検出信号に基づいてスライダ1の現在位置および回転角を算出する。算出されたスライダ1の現在位置と回転角は、平面モータにフィードバックされ、スライダ1の位置制御や姿勢制御に利用される。
【0034】
以下、レーザ干渉計20a,20bを代表するときはレーザ干渉計20と記載し、レゾルバ30a〜30cを代表するときはレゾルバ30と記載する。また、検出信号Oia,Oibを代表するときは検出信号Oiと記載し、検出信号Ora,Orb,Orcを代表するときは検出信号Orと記載する。
【0035】
図4は、プラテン10のエリア分けを示す図である。エリアAは、プラテン10上でスライダ1に高い位置決め精度が必要とされるエリアである。エリアBは、プラテン10上のエリアA以外のエリアであり、エリアAほど高い位置決め精度が必要とされないエリアである。
以下、「スライダ1がエリアAに位置する」とはスライダ1の全体がエリアA内に入っている状態を意味し、「スライダ1がエリアBに位置する」とはスライダ1の少なくとも一部がエリアAから出ている状態を意味する。
【0036】
スライダ1がエリアAに位置する場合には、レーザ干渉計20によりスライダ1の位置検出を行う。スライダ1がエリアBに位置する場合には、レゾルバ30によりスライダ1の位置検出を行う。
【0037】
なお、レゾルバ30はプラテン10上の全面で位置検出が可能であるが、レーザ干渉計20はスライダ1の位置によって位置検出できる範囲が限定される。レーザ干渉計20により位置検出が可能なスライダ1のY軸方向の範囲は、バーミラー21aからの反射光がレーザ干渉計20aから外れる直前位置までである。また、スライダ1のX軸方向の範囲は、バーミラー21bからの反射光がレーザ干渉計20bから外れる直前位置までとなる。そのため、エリアAの位置やサイズに合わせて、レーザ干渉計20a,20bの取り付け位置や、バーミラー21a,21bのサイズ、スライダ1のサイズを決定する。
スライダ1がエリアBに位置している場合には、レーザ干渉計20による位置検出値は不定となる。
【0038】
図5は本実施例の位置決め装置の詳細を示すブロック図である。
位置決め装置は、位置制御部102、スライダ1、レーザ干渉計20、レゾルバ30、演算部100から構成されている。演算部100は、測定処理部100a,100b、切替スイッチ100c、座標確立部100d、補正部100eから構成されている。位置決め装置は、上位装置から各種の指示信号やスライダ1の位置指令値が与えられる。
【0039】
位置指令値生成部101は、上位装置に含まれ、スライダ1の位置指令値Pcmdを生成する。位置制御部102は、位置指令値生成部101から位置指令値Pcmdが与えられる。位置指令値Pcmdはスライダ1を移動させたい座標(Xcmd,Ycmd,θcmd)、すなわち目標位置を示す信号である。位置制御部102は、位置指令値Pcmdをスライダ1の平面モータに供給する駆動電流に変換し、スライダ1を移動させる。
【0040】
レーザ干渉計20の検出信号Oiは、測定処理部100aに入力される。また、レゾルバ30の検出信号Orは、測定処理部100bに入力される。測定処理部100aは、入力された検出信号Oiを位置検出値Pi(Xi,Yi,θi)に変換し、切替手段100cに出力する。また、測定処理部100bは、入力された検出信号Orを位置検出値Pr(Xr,Yr,θr)に変換し、切替スイッチ100cに出力する。
【0041】
切替スイッチ100cは、上位装置より与えられる切替指示信号S1に従って位置検出値Pi,Prのいずれかに切り替える。切替スイッチ100cは、選択した位置検出値を位置フィードバック信号Pfbとして位置制御部102にフィードバックする。位置制御部102は、フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdとの偏差がゼロとなるように、スライダ1をサーボ制御する。
【0042】
切替指示信号S1は、スライダ1がエリアBからエリアAに移動する場合には位置検出値Piを選択するように切り替えられ、エリアAからエリアBに移動する場合には位置検出値Prを選択するように切り替えられる。これにより、レーザ干渉計20とレゾルバ30が切り替えられる。
【0043】
次に、レーザ干渉計20とレゾルバ30の切り替え時の動作について説明する。
スライダ1がエリアBからエリアAへ移動する場合と、エリアAからエリアBに移動する場合について順に説明する。
【0044】
<エリアBからエリアAへ移動する場合>
レゾルバ30による位置検出から、レーザ干渉計20による位置検出を確立する動作を行う。
【0045】
レーザ干渉計20はエリアBでは位置検出値が不定であり、また、レーザ干渉計20はインクリメント式の検出装置である。そのため、レーザ干渉計20による位置検出を確立するためには、スライダ1がエリアAに進入後、レーザ干渉計20による位置検出を開始する時点で初期値を与える必要がある(ステップST1)。
【0046】
座標確立部100dは、測定処理部100bから位置検出値Prが入力される。また、座標確立部100dは、スライダ1がエリアAに進入後、上位装置よりレーザ干渉計20による位置検出の確立を指示する確立指示信号S2が入力される。座標確立部100dは、確立指示信号S2の入力に応じて位置検出値Prを測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、入力された位置検出値Prを位置検出値Piにプリセットする(ステップST2)。その後、切り替え手段100cは、位置検出値をPrからPiに切り替える(ステップST3)。
【0047】
ところで、レゾルバ30でスライダ1の位置検出を行うと、位置検出値Prにはスライダ1の位置に応じた位置検出誤差E(Ex,Ey,Eθ)が現れる。位置検出値Piに位置検出値Prをプリセットすることにより、その後の位置検出値Piにも継続して位置検出誤差Eが付加されてしまう。エリアAでは高い位置検出精度が必要とされるため、位置検出値Piからこの位置検出誤差Eを補正する必要がある。
【0048】
補正部100eは位置検出誤差Eの補正を行う。補正部100eには、測定処理部100bから位置検出値Prが入力される。また、補正部100eは、上位装置より位置検出誤差Eの補正を指示する補正指示信号S3が入力される。補正部100eには、位置検出値Prと、その位置における位置検出誤差Eとをあらかじめ対応付けておく。補正部100eは、補正指示信号S3の入力に応じて位置検出値Prに対応する位置検出誤差Eを求め、測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、プリセットした位置検出値Prから位置検出誤差Eを減算し、位置検出値Piの初期値とする(ステップST4)。これにより、位置検出値Piから位置検出誤差Eが除去される。すなわち、切り替え後の位置フィードバック信号Pfbから位置検出誤差Eが除去される。
【0049】
なお、位置検出値Piを位置検出誤差Eで補正することにより、位置フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdの値が異なる値となる。位置フィードバック信号Pfbと位置指令値Pcmdを同じ値に保つため、位置指令値Pcmdに対しても位置検出誤差Eの補正を行う。
【0050】
補正部100eは、測定処理部100aとともに位置指令値生成部101にも位置検出誤差Eを出力する。位置指令値生成部101は、位置指令値Pcmdから位置検出誤差Eを減算し、これを新しい位置指令値Pcmdとして出力する(ステップST5)。これにより、切替スイッチ100cによる切り替えの前後において、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが一致した状態が保たれる。
【0051】
なお、ステップST4とステップST5は、同時に行う。位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが乖離する期間が生じると、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbの偏差が瞬間的に変化する。位置制御部102は、偏差が瞬間的に変化したことに起因してスライダ1を急激に移動させてしまい、スライダ1上に搭載されたワークが過大な加速度を受け損傷する場合があるためである。
【0052】
ステップST2〜ST5までの処理は、スライダ1をプラテン10の同一地点に位置させた状態で行う。さらに、ステップST4とステップST5は、ステップST3の直後、またはステップST3と同時に行う。
以上により、レーザ干渉計20による位置検出が確立される。
【0053】
<エリアAからエリアBへ移動する場合>
レーザ干渉計20による位置検出から、レゾルバ30による位置検出に移行する動作を行う。
【0054】
レゾルバ30による位置検出に移行する動作は、スライダ1がエリアAに位置した状態で行う。スライダ1がエリアAに位置しているときは、位置検出値Pi,Prの両方が得られる。位置検出値Prには位置検出誤差Eが含まれている。この位置検出誤差Eはスライダ1の位置に依存するため、レーザ干渉計20の確立時に補正に利用した位置検出誤差値と異なる。そのため、通常、位置検出値Piと位置検出値Prは一致しない(ステップST6)。
【0055】
この状態で切替スイッチ100cを位置検出値PiからPrへと切り替えると、切り替え前後で位置フィードバック信号が乖離する。そのため、再度補正部100eにより位置検出誤差Eの補正を行う。
【0056】
補正部100eには、再度上位装置より補正指示信号S3が入力され、位置検出値Prに対応する位置検出誤差Eを求める。補正部100eは、求めた位置検出誤差Eを測定処理部100aに出力する。測定処理部100aは、現在の位置検出値Piに位置検出誤差Eを加算し、新しい位置検出値Piとして出力する(ステップST7)。これにより、位置検出値Piは位置検出値Prと一致する。
【0057】
さらに、補正部100eは、位置指令値生成部101に位置検出誤差Eを出力する。位置指令値生成部101は、位置指令値Pcmdに位置検出誤差Eを加算し、これを新しい位置指令値Pcmdとして出力する(ステップST8)。ステップST8はステップST7と同時に行う。その後、切り替え手段100cは、位置検出値をPiからPrに切り替える(ステップST9)。これにより、切替スイッチ100cによる切り替えの前後において、位置指令値Pcmdと位置フィードバック信号Pfbが一致した状態が保たれる。
【0058】
ステップST7〜ST9の処理は、スライダ1をプラテン10の同一地点に位置させた状態で行う。さらに、ステップST7とST8は、ステップST9の直前またはST9と同時に行う。
以上により、レゾルバ30による位置検出への移行が完了する。
その後、スライダ1がエリアAから出ると、レーザ干渉計20では検出信号Oiが得られなくなり、位置検出値Piは不定となる。
【0059】
なお、図5では位置指令値生成部101、位置制御部102および演算部100を機能ブロックのみで示しているが、実際にはCPUで構成される。
【0060】
図6は位置検出装置の切り替え時における各信号の値の変化を示す図であり、(a)はスライダ1がエリアBからエリアAへ移動する場合、(b)はスライダ1がエリアAからエリアBへ移動する場合の信号の変化である。なお、簡単のためX軸方向の値のみ示す。
【0061】
ステップST1において、位置指令値Xcmdおよび位置検出値Xrはともに10000である。レーザ干渉計20は確立前のため位置検出値Xiは不定である。位置検出値Xr=10000のときの位置検出誤差Ex=+50であり、スライダ1は実際にはX=9950に位置している。
【0062】
位置検出値Xrの値が位置検出値XiにプリセットされてXi=10000となる(ステップST2)。その後、切替スイッチ100cにより位置検出装置がレゾルバ30からレーザ干渉計20に切り替えられる(ステップST3)。また、位置検出値Xiから位置検出誤差Exが減算されてXi=9950となり(ステップST4)、位置指令値Xcmdから位置検出誤差Exが減算されてXcmd=9950となる(ステップST5)。ステップST4とステップST5は同時に行われるため、切り替えの前後において位置指令値Xcmdと位置フィードバック信号Xfbは常に一致している。そのため、切り替え前後でスライダ1は移動しない。
【0063】
ステップST6において、位置指令値Xcmd、位置検出値Xiおよびスライダ位置はすべて20000である。スライダ1がこの位置にあるとき、レゾルバ30による位置検出では位置検出値Xr=19900であり、位置検出誤差Ex=−100である。
【0064】
位置検出値Xiに位置検出誤差Exが加算されてXi=19900となり(ステップST7)、位置指令値Xcmdに位置検出誤差Exが加算されてXcmd=19900となる(ステップST8)。その後、切替スイッチ100cにより位置検出装置がレーザ干渉計20からレゾルバ30に切り替えられる(ステップST9)。ステップST7とステップST8は同時に行われるため、切り替えの前後において位置指令値Xcmdと位置フィードバック信号Xfbは常に一致している。そのため、切り替え前後でスライダ1は移動しない。
【0065】
次に、位置検出誤差E(Ex,Ey,Eθ)について説明する。
本実施例では、位置検出誤差Eを、プラテンの歯ピッチに同期して現れる誤差(位置検出誤差Ea)と、プラテン10の各歯それぞれに固有の誤差(位置検出誤差Eb)の2種類に分けて誤差値を求める。位置検出誤差Ea,Ebは、X軸方向、Y軸方向およびθ軸方向それぞれについて測定する。なお、位置検出誤差Eの取得は、位置決め装置の製造時など、実稼動に先立って行う。
【0066】
まず、位置検出誤差Ea(Eax,Eay,Eaθ)について説明する。
レゾルバ30は、プラテン10の歯10aに対する相対位置に基づいて検出信号を生成する。そのため、レゾルバ30の検出信号には、歯ピッチLの周期で位置検出誤差が現れる。
【0067】
図7はプラテン10の歯10aの拡大図である。歯10aを格子状に複数のエリアに分割し、各格子点にスライダ1を位置決めしたときに発生する位置検出誤差Eaを測定する。位置検出誤差は、スライダ1の上面に位置決め用マークを付しておき、プラテン10の上方に固定したカメラでその位置決め用マークの実際の位置を観測し、観測された位置を理論値と比較することによって求める。なお、歯10a内におけるX軸方向およびY軸方向の位置を示す場合に、添え字pを付加する。
【0068】
図7において、位置(Xp[m],Yp[n])の格子点をB1、位置(Xp[m],Yp[n+1])の格子点をB2、位置(Xp[m+1],Yp[n+1])の格子点をB3、位置(Xp[m+1],Yp[n])の格子点をB4とする。
【0069】
図8は、位置検出誤差Eaを示す図であり、図7の網掛け部分を拡大して示したものである。図8の(a)はX軸方向の位置検出誤差Eax、(b)はY軸方向の位置検出誤差Eay、(c)はθ軸方向の位置検出誤差Eaθである。
【0070】
各格子点で区切られる各エリア内部の位置検出誤差Eaは、周囲の格子点における位置検出誤差から内挿して求める。たとえば、図中の点B(xp,yp)における位置検出誤差Eax,Eay,Eaθは、点Bが存在するエリアを区切る格子点B1〜B4における位置検出誤差から内挿して算出する。
【0071】
格子点B1〜B4におけるX軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eax[m][n]、Eax[m][n+1]、Eax[m+1][n+1]、Eax[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eaxは、以下のように表現できる。
【0072】
また、格子点B1〜B4におけるY軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eay[m][n]、Eay[m][n+1]、Eay[m+1][n+1]、Eay[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eayは、以下のように表現できる。
【0073】
また、格子点B1〜B4におけるθ軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eaθ[m][n]、Eaθ[m][n+1]、Eaθ[m+1][n+1]、Eaθ[m+1][n]
としたとき、点Bにおける位置検出誤差Eaθは、以下のように表現できる。
【0074】
次に、位置検出誤差Eb(Ebx,Eby,Ebθ)について説明する。
プラテン10の歯10aには、加工誤差によって歯の不揃いなどが発生している。そのため、レゾルバ30の検出信号には、各歯それぞれに固有の誤差が現れる。
【0075】
図9はプラテン10を示す図である。プラテン10を格子状に複数のエリアに分割し、各格子点にスライダ1を位置決めしたときに発生する位置検出誤差Ebを求める。図9の位置検出誤差は、スライダ1の上面に位置決め用マークを付しておき、プラテン10の上方に固定したカメラでその位置決め用マークの実際の位置を観測し、観測された位置を理論値と比較することによって求める。
【0076】
なお、位置検出誤差の観測値をEb’としたとき、観測値Eb’には位置検出誤差Eaが含まれている。そのため、位置検出誤差Ebは、観測値Eb’から位置検出誤差Eaを減算して求める。
【0077】
図9において、位置(X[h],Y[k])の格子点をC1、位置(X[h],Y[k+1])の格子点をC2、位置(X[h+1],Y[k+1])の格子点をC3、位置(X[h+1],Y[k])の格子点をC4とする。
【0078】
図10は、位置検出誤差Ebを示す図であり、図9の網掛け部分を拡大して示したものである。図10の(a)はX軸方向の位置検出誤差Ebx、(b)はY軸方向の位置検出誤差Eby’、(c)はθ軸方向の位置検出誤差Ebθ’である。
【0079】
各格子点で区切られる各エリア内部の位置検出誤差Ebは、周囲の格子点における位置検出誤差から内挿して求める。たとえば、図中の点C(x,y)における位置検出誤差Ebx,Eby,Ebθは、点Cが存在するエリアを区切る格子点C1〜C4における位置検出誤差から内挿して算出する。
【0080】
格子点C1〜C4におけるX軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Ebx[h][k]、Ebx[h][k+1]、Ebx[h+1][k+1]、Ebx[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebxは、以下のように表現できる。
【0081】
また、格子点C1〜C4におけるY軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Eby[h][k]、Eby[h][k+1]、Eby[h+1][k+1]、Eby[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebyは、以下のように表現できる。
【0082】
また、格子点C1〜C4におけるθ軸方向の位置検出誤差を、それぞれ
Ebθ[h][k]、Ebθ[h][k+1]、Ebθ[h+1][k+1]、Ebθ[h+1][k]
としたとき、点Cにおける位置検出誤差Ebθは、以下のように表現できる。
【0083】
補正部100eには、プラテン10の歯10aを複数エリアに分割する格子点B1,B2,・・・に対応する位置検出誤差Eaを記憶させるとともに、プラテン10全体を複数のエリアに分割する格子点C1,C2,・・・に対応する位置検出誤差Ebを記憶させておく。そして、補正部100eは、これらの位置検出誤差Ea,Ebを加算し、位置検出誤差Eとする。
【0084】
すなわち、補正部100eは、スライダ1の位置に応じて、
位置検出誤差Ex=Eax+Ebx ……(7)
位置検出誤差Ey=Eay+Eby ……(8)
位置検出誤差Eθ=Eaθ+Ebθ ……(9)
を計算し、位置検出誤差Eを算出する。
【0085】
本実施例は以上のように構成され、
スライダ1の位置を検出するレゾルバ30と、プラテン10のエリアA内におけるスライダ1の位置をレゾルバ30よりも高い精度で検出するレーザ干渉計20とを備え、スライダ1の位置に応じてレゾルバ30とレーザ干渉計20を使い分けることによって、エリアAでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【0086】
また、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え前後でスライダ1を同じ位置に維持する補正を行う補正部100eを備えているため、切り替え時に発生するスライダ位置の飛びを防止できる。
【0087】
また、補正部100eは、レゾルバ30とレーザ干渉計20とを切り替える際に、レゾルバ30の位置検出誤差Eに基づいて、位置指令値Pcmdおよびレーザ干渉計20で検出される位置検出値Piを補正するため、レゾルバ30の位置検出誤差Eに起因して発生するスライダ位置の飛びを防止できる。
【0088】
また、レゾルバ30の位置検出誤差Eは、プラテン10のスライダ1の現在位置に対応する歯に固有の検出誤差Ebを含んでいるため、プラテン10の歯に不揃いや加工誤差などがある場合でも、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え位置によらず、確実にスライダ位置の飛びを防止できる。
【0089】
また、レゾルバ30の位置検出誤差Eは、プラテン10の歯ピッチLに同期して現れる位置検出誤差Eaを含んでいるため、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替え時のスライダ位置と、そのスライダ位置に対応するプラテン10の歯との相対的な位置関係によらず、確実にスライダ位置の飛びを防止できる。
【0090】
なお、本実施例では、位置検出誤差Ebをプラテン10上の全面において算出できるようにした。しかし、レゾルバ30とレーザ干渉計20の切り替えを行う位置がプラテン10上の特定の位置に限定される場合には、補正部100eに記憶する位置検出誤差Ebは、その切り替え位置の分のみとしてもよい。
【0091】
本実施例において、レゾルバ30は請求項における第1の位置検出装置、レーザ干渉計20は第2の位置検出装置、切替スイッチ100cは切替手段に相当する。
【実施例2】
【0092】
図11は本発明の実施例2を示す上面図である。本実施例は、先の実施例1に対し、高い位置決め精度が必要とされるエリアが2ヶ所のものである。
【0093】
プラテン11は、エリアA1、エリアA2、エリアBの3つに分けられている。エリアA1,A2は高い位置決め精度が必要とされるエリアであり、実施例1のエリアAに相当する。エリアB1は実施例1のエリアBに相当する。プラテン11にはスライダ1が搭載されている。
【0094】
プラテン11のY軸に沿った辺にレーザ干渉計20a,20cが、X軸に沿った辺にレーザ干渉計20bが固定配置されている。レーザ干渉計20aはエリアA1に対応し、レーザ干渉計20cはエリアA2に対応する。
【0095】
スライダ1がエリアA1に位置する場合には、レーザ干渉計20a,20bを用いてスライダ1の位置検出が行われる。スライダ1がエリアA2に位置する場合には、レーザ干渉計20c,20bを用いてスライダ1の位置検出が行われる。スライダ1がエリアB1に位置する場合には、レゾルバ30によりスライダ1の位置検出が行われる。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0096】
本実施例は以上のように構成され、実施例1で得られる効果に加え、プラテン11上に高い位置決め精度が必要とされるエリアが複数ある場合でも、必要最小限の個数のレーザ干渉計でそれらのエリアでは高い位置決め精度を確保しつつ、全体として比較的安価な位置決め装置を提供することができる。
【実施例3】
【0097】
図12は本発明の実施例3を示す上面図である。本実施例は、先の実施例1の位置決め装置を2台接続したものである。
【0098】
プラテン10に、第2のプラテン10’が接続されている。プラテン10’は、エリアA’とエリアB’の2つのエリアに分けられており、それぞれプラテン10におけるエリアAとエリアBに相当する。プラテン10’のY軸に沿った辺にはレーザ干渉計20a’が、X軸に沿った辺にはレーザ干渉計20b’が固定配置されている。
【0099】
プラテン10にはスライダ1が搭載され、プラテン10’にはスライダ1’が搭載されている。スライダ1,1’は、それぞれ個別に位置制御される。これらのスライダは、それぞれプラテン10上およびプラテン10’上の両方を移動する。これらのスライダは、エリアAに位置する場合にはレーザ干渉計20a,20bにより位置検出が行われ、エリアA’に位置する場合にはレーザ干渉計20a’,20b’により位置検出が行われる。なお、スライダ1,1’のX軸方向の位置検出をレーザ干渉計20a,20a’の両方で行うことができるように、スライダ1,1’にはY軸に沿う側面の両方にバーミラーが搭載されている。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0100】
本実施例の位置決め装置の用途例として、半導体製造用の露光装置がある。エリアAの上方に、レチクル面上に形成されているIC等の電子回路パターンとウエハとの相対的な位置合わせを行うためのアライメント装置を備え、エリアA’の上方に露光機を備えておく。スライダ1にウエハを搭載し、まずエリアAに位置させてアライメントを行う。その後スライダ1をエリアA’に移動させ、ウエハの露光を行う。スライダ1で露光を行っている間に、スライダ1’をエリアAに位置させてアライメントを行う。スライダ1の露光が終了すると、スライダ1,1’の位置を交代する。このように、各スライダをエリアA,エリアA’に交互に往復させ、アライメントと露光を交互に繰り返す。これにより、露光装置の単位時間当たりのウエハ加工処理量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】レゾルバによる位置検出の動作原理の説明図である。
【図2】レゾルバの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1を示す上面図である。
【図4】プラテン10のエリア分けを示す図である。
【図5】実施例1の位置決め装置の詳細を示すブロック図である。
【図6】位置検出装置の切り替え時における各信号の値の変化を示す図である。
【図7】プラテン10の歯10aの拡大図である。
【図8】位置検出誤差Eaを示す図である。
【図9】プラテン10を示す図である。
【図10】位置検出誤差Ebを示す図である。
【図11】本発明の実施例2を示す上面図である。
【図12】本発明の実施例3を示す上面図である。
【図13】従来例の位置決め装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1 スライダ
10 プラテン
20,20a,20b レーザ干渉計
21a,21b バーミラー
30,30a〜30c レゾルバ
100 演算部
100a,100b 測定処理部
100c 切替スイッチ
100d 座標確立部
100e 補正部
101 位置指令値生成部
102 位置制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
前記スライダの位置を検出する第1の位置検出装置と、
前記プラテンの特定のエリア内における前記スライダの位置を前記第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置と、
前記スライダの位置に応じて前記第1または第2の位置検出装置のいずれかを選択する切替手段と、
位置指令値および前記切替手段で選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいて前記スライダの位置制御を実行する位置制御部と、
を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記切替手段が位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正することを特徴とする請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であることを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であることを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記第1の位置検出装置は前記スライダに設けられたレゾルバであり、
前記第2の位置検出装置はレーザ干渉計であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項1】
位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを備えた位置決め装置において、
前記スライダの位置を検出する第1の位置検出装置と、
前記プラテンの特定のエリア内における前記スライダの位置を前記第1の位置検出装置よりも高い精度で検出する第2の位置検出装置と、
前記スライダの位置に応じて前記第1または第2の位置検出装置のいずれかを選択する切替手段と、
位置指令値および前記切替手段で選択された位置検出装置で検出される位置検出値に基づいて前記スライダの位置制御を実行する位置制御部と、
を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記第1および第2の位置検出装置の切り替え前後で前記スライダを同じ位置に維持する補正を行う補正部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記切替手段が位置検出装置を切り替える際に、前記第1の位置検出装置の検出誤差に基づいて、前記位置指令値および前記第2の位置検出装置で検出される位置検出値を補正することを特徴とする請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの前記スライダの現在位置に対応する歯に固有の検出誤差であることを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記第1の位置検出装置の検出誤差は、前記プラテンの歯ピッチに同期して現れる検出誤差であることを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記第1の位置検出装置は前記スライダに設けられたレゾルバであり、
前記第2の位置検出装置はレーザ干渉計であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の位置決め装置。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図11】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2010−26921(P2010−26921A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189872(P2008−189872)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】
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