内燃機関の減速時制御装置
【課題】燃料カット中に吸気バルブの有効開度を増大して吸気負圧を増大する制御を行う内燃機関において、燃料カット開始前のトルクの増大を抑制する。
【解決手段】燃料カット条件成立後、燃料カット開始前に、第2可変動弁機構(VTC113b)によって、排気バルブの開閉タイミングを遅角させた後、第1可変動弁機構(VEL112)によって吸気バルブの有効開度を増大し、バルブオーバラップ量を増大して残留ガスによって燃焼圧(トルク)の増大を抑制し、燃料カット開始後に第2可変動弁機構(VTC113b)によって排気バルブの開閉タイミングを進角側に戻し、燃料リカバー後に第1可変動弁機構(VEL112)によって吸気バルブの有効開度を減少側に戻す制御を行う。
【解決手段】燃料カット条件成立後、燃料カット開始前に、第2可変動弁機構(VTC113b)によって、排気バルブの開閉タイミングを遅角させた後、第1可変動弁機構(VEL112)によって吸気バルブの有効開度を増大し、バルブオーバラップ量を増大して残留ガスによって燃焼圧(トルク)の増大を抑制し、燃料カット開始後に第2可変動弁機構(VTC113b)によって排気バルブの開閉タイミングを進角側に戻し、燃料リカバー後に第1可変動弁機構(VEL112)によって吸気バルブの有効開度を減少側に戻す制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に搭載された可変動弁機構を、減速時にスロットル弁下流側に吸気負圧を発生させる際に制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気バルブの作動角およびリフト量を可変な可変動弁機構を備え、燃料カットを伴う減速時に、大きな減速度を要求されるときには、スロットル弁を閉じ、吸気バルブの作動角およびリフト量を大きくして、スロットル弁下流側の吸気負圧を増大することが開示されている。
なお、吸気負圧を駆動源として利用するブレーキアシスト装置、その他蒸気燃料のパージ制御、ブローバイガス制御などのためにも、減速時に吸気負圧を確保することが要求される。
【特許文献1】特開2005−188284号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、減速時は、アクセル閉操作に応じて吸気バルブのリフト量が最小付近まで減少し、その後、吸気負圧の増大要求に応じてリフト量が増大するため、燃料カットが開始されるまでの間、トルクが増大し、運転性が損なわれる。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、減速時に吸気負圧を確保しつつトルクの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、燃料カットを伴う所定の減速時の燃料カット実行前に、吸気バルブの有効開度を可変な第1可変動弁機構によって吸気バルブの有効開度を増大させると共に、排気バルブの開閉タイミングを可変な第2可変動弁機構によって排気バルブの開閉タイミングを遅角側に移行させて吸気バルブとのバルブオーバラップ量を増大する構成とした。
【発明の効果】
【0005】
かかる構成とすれば、燃料カットを伴う所定の減速時、アクセル閉操作に応じて吸気バルブの有効開度が減少した後、吸気負圧の増大要求に伴って第1可変動弁機構により吸気バルブの有効開度が増大されるが、その際に、第2可変動弁機構により排気バルブの開閉タイミングが遅角されて吸気バルブとのバルブオーバラップ量が増大する。
これにより、燃料カットが実行されるまでの間、シリンダ内の残留ガス量が増大して燃焼圧の増大を抑制できトルクの増大を抑制できる。燃料カット開始後は、吸気バルブの有効開度の増大によって吸入空気流量が増大することにより、閉操作されているスロットル弁の下流側の吸気負圧が増大し、減速感も強化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、実施形態における車両用内燃機関のシステム構成図である。
図1において、内燃機関101の吸気管102には、スロットルモータ103aでスロットルバルブ103bを開閉駆動する電子制御スロットル104が介装され、該電子制御スロットル104及び吸気バルブ105を介して、燃焼室106内に空気が吸入される。
燃焼排気は燃焼室106から排気バルブ107を介して排出され、フロント触媒108及びリア触媒109で浄化された後、大気中に放出される。
【0007】
吸気バルブ105側には、吸気バルブ105のバルブリフト量を作動角と共に連続的に可変するVEL(Variable valve Event and Lift)機構112が設けられる。ここで、本実施形態の可変動弁機構VEL112では、バルブリフト量及びバルブ作動角は、吸気バルブ105の開期間における平均開度つまり有効開度に相関するバルブ特性である。
更に、吸気バルブ105側には、クランクシャフト120に対する吸気側カムシャフトの回転位相を変化させることで、吸気バルブ105の作動角の中心位相(開閉タイミング)を連続的に可変するVTC(Variable valve Timing Control)機構113aが設けられる。
【0008】
一方、排気バルブ107側には、クランクシャフト120に対する排気側カムシャフト110の回転位相を変化させることで、排気バルブ107の作動角の中心位相(開閉タイミング)を連続的に可変するVTC(Variable valve Timing Control)機構113bが設けられる。
前記吸気バルブ側のVEL機構112が第1可変動弁機構に相当し、前記排気バルブ側のVTC機構113bが第2可変動弁機構機構に相当する。
【0009】
マイクロコンピュータを内蔵するエンジンコントロールユニット(ECU)114は、要求トルクに対応する要求吸入空気量を得るように、また、所定の減速時に要求の吸入負圧を得るように、VEL機構112及びVTC機構113a,bと、前記電子制御スロットル104とを制御する。
前記ECU114には、内燃機関101の吸入空気量を検出するエアフローメータ115、アクセル開度を検出するアクセルペダルセンサ116(所定のアクセル開度以下でアイドル状態であることを検出するアイドルスイッチを含む)、クランクシャフト120から単位クランク角度毎の単位角度信号POSを取り出すクランク角センサ117、スロットルバルブ103bの開度TVOを検出するスロットルセンサ118、内燃機関101の冷却水温度を検出する水温センサ119、カムシャフトからカム信号CAM,カム角度信号CAMAを取り出す第1カムセンサ132及び第2カムセンサ133、車速を検出する車速センサ134からの検出信号が入力される。
【0010】
ここで、前記クランク角センサ117は、クランクシャフト120と一体的に回転する回転体に対してクランク角で10°毎に設けられる被検出部を検出することで、図18に示すように、クランク角10°毎に単位角度信号POSを出力するが、クランク角で180°間隔の2箇所において前記被検出部が連続して2箇所設けられずに、単位角度信号POSが2つ連続して出力されないようになっている。
【0011】
尚、前記クランク角180°は、本実施形態の4気筒機関において、気筒間の行程位相差に相当する。
そして、前記単位角度信号POSが一時的に途絶える部分を前記単位角度信号POSの出力周期に基づいて検出し、例えば、単位角度信号POSが途絶えた後最初に出力される単位角度信号POSを基準にクランクシャフト120の基準回転位置を検出する。
【0012】
前記ECU114は、前記基準回転位置の検出周期、又は、所定時間当たりの単位角度信号POSの発生数を計数することで、機関回転速度を算出する。
尚、クランク角センサ117が、クランクシャフト120の基準回転位置毎(180°毎)の基準角度信号REFと、抜けのない単位角度信号POSとを個別に出力する構成であっても良い。
【0013】
また、前記第1カムセンサ132は、カムシャフトと一体に回転する回転体に設けられる被検出部を検出することで、図18に示すように、クランク角で180°に相当するカム角90°毎に、パルス数で気筒番号(第1気筒〜第4気筒)を示すカム信号(気筒判別信号)CAMを出力する。
更に、前記第2カムセンサ133a,bは、図19に示すように、カムシャフトと一体に回転する回転体133aの半径が円周方向に連続的に変化するように形成し、該回転体133aの周縁に対向して固定されるギャップセンサ133bの出力が、図20に示すように、ギャップセンサ133bと回転体133a,b周縁との距離(ギャップ)がカムシャフトの回転によって変化することで連続的に変化するように構成される。
【0014】
ここで、カムシャフトの角度位置と前記ギャップとの関係は一定であるから、図21に示すように、前記ギャップセンサ133bの出力とカムシャフトの角度位置とは一定の相関を有し、前記ギャップセンサ133bの出力からカムシャフトの角度位置を検出することができ、前記ギャップセンサ133bの出力をカム角度信号CAMAとする。
各気筒の吸気バルブ105上流側の吸気ポート130には、電磁式の燃料噴射弁131が設けられ、該燃料噴射弁131は、前記ECU114からの噴射パルス信号によって開弁駆動され、前記噴射パルス信号の噴射パルス幅(開弁時間)に比例する量の燃料を噴射する。
【0015】
図2〜図4は、前記VEL機構112の構造を詳細に示すものである。
図2〜図4に示すVEL機構112は、一対の吸気バルブ105,105と、シリンダヘッド11のカム軸受14に回転自在に支持された中空状のカムシャフト13(駆動軸)と、該カムシャフト13に軸支された回転カムである2つの偏心カム15,15(駆動カム)と、前記カムシャフト13の上方位置に同じカム軸受14に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16に制御カム17を介して揺動自在に支持された一対のロッカアーム18,18と、各吸気バルブ105,105の上端部に一対のバルブリフター19,19を介して配置された一対のそれぞれ独立した揺動カム20,20とを備えている。
【0016】
前記偏心カム15,15とロッカアーム18,18とは、一対のリンクアーム25,25によって連係され、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とは、一対のリンク部材26,26によって連係されている。
上記ロッカアーム18,18,リンクアーム25,25,リンク部材26,26が伝達機構を構成する。
【0017】
前記偏心カム15は、図5に示すように、略リング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向にカムシャフト挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xがカムシャフト13の軸心Yから所定量だけ偏心している。
また、前記偏心カム15は、カムシャフト13に対し前記バルブリフター19に干渉しない両外側にカム軸挿通孔15cを介して圧入固定されている。
【0018】
前記ロッカアーム18は、図4に示すように、略クランク状に屈曲形成され、中央の基部18aが制御カム17に回転自在に支持されている。
また、基部18aの外端部に突設された一端部18bには、リンクアーム25の先端部と連結するピン21が圧入されるピン孔18dが貫通形成されている一方、基部18aの内端部に突設された他端部18cには、各リンク部材26の後述する一端部26aと連結するピン28が圧入されるピン孔18eが形成されている。
【0019】
前記制御カム17は、円筒状を呈し、制御軸16外周に固定されていると共に、図2に示すように軸心P1位置が制御軸16の軸心P2からαだけ偏心している。
前記揺動カム20は、図2及び図6,図7に示すように略横U字形状を呈し、略円環状の基端部22にカムシャフト13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔22aが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18の他端部18c側に位置する端部23にピン孔23aが貫通形成されている。
【0020】
また、揺動カム20の下面には、基端部22側の基円面24aと該基円面24aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面24bとが形成されており、該基円面24aとカム面24bとが、揺動カム20の揺動位置に応じて各バルブリフター19の上面所定位置に当接するようになっている。
即ち、図8に示すバルブリフト特性からみると、図2に示すように基円面24aの所定角度範囲θ1がベースサークル区間になり、カム面24bの前記ベースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2が所謂ランプ区間となり、更に、カム面24bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。
【0021】
また、前記リンクアーム25は、円環状の基部25aと、該基部25aの外周面所定位置に突設された突出端25bとを備え、基部25aの中央位置には、前記偏心カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合穴25cが形成されている一方、突出端25bには、前記ピン21が回転自在に挿通するピン孔25dが貫通形成されている。
更に、前記リンク部材26は、所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部26a,26bには前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム20の端部23の各ピン孔18d,23aに圧入した各ピン28,29の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔26c,26dが貫通形成されている。
【0022】
尚、各ピン21,28,29の一端部には、リンクアーム25やリンク部材26の軸方向の移動を規制するスナップリング30,31,32が設けられている。
上記構成において、制御軸16の軸心P2と制御カム17の軸心P1との位置関係によって、図6,7に示すように、バルブリフト量が変化することになり、前記制御軸16を回転駆動させることで、制御カム17の軸心P1に対する制御軸16の軸心P2の位置を変化させる。
【0023】
前記制御軸16は、図10に示すような構成によって、ストッパにより制限される所定回転角度範囲内でDCサーボモータ(アクチュエータ)121により回転駆動されるようになっており、前記制御軸16の角度を前記アクチュエータ121で変化させることで、吸気バルブ105のバルブリフト量及びバルブ作動角が、前記ストッパで制限される最大バルブリフト量と最小バルブリフト量との間の可変範囲内で連続的に変化する(図9参照)。
【0024】
図10において、DCサーボモータ121は、その回転軸が制御軸16と平行になるように配置され、回転軸の先端には、かさ歯車122が軸支されている。
一方、前記制御軸16の先端に一対のステー123a,123bが固定され、一対のステー123a,123bの先端部を連結する制御軸16と平行な軸周りに、ナット124が揺動可能に支持される。
【0025】
前記ナット124に噛み合わされるネジ棒125の先端には、前記かさ歯車122に噛み合わされるかさ歯車126が軸支されており、DCサーボモータ121の回転によってネジ棒125が回転し、該ネジ棒125に噛み合うナット124の位置が、ネジ棒125の軸方向に変位することで、制御軸16が回転されるようになっている。
ここで、ナット124の位置をかさ歯車126に近づける方向が、バルブリフト量が小さくなる方向で、逆に、ナット124の位置をかさ歯車126から遠ざける方向が、バルブリフト量が大きくなる方向となっている。
【0026】
前記制御軸16の先端には、図10に示すように、制御軸16の角度を検出するポテンショメータ式の角度センサ127が設けられており、該角度センサ127で検出される実際の角度が目標角度(目標バルブリフト量相当値)に一致するように、前記ECU114が前記DCサーボモータ121をフィードバック制御する。
次に、前記VTC機構113a(113b)の構成を、図11〜図17に基づいて説明する。
【0027】
図11に示すように、前記VTC機構113a(113b)は、前記カムシャフト13(110)と、このカムシャフト13(110)の前端部に必要に応じて相対回動できるように組み付けられ、チェーン(図示せず)を介してクランクシャフト120に連係されるタイミングスプロケット302を外周に有する駆動リング303(駆動回転体)と、この駆動リング303とカムシャフト13の前方側(図11中左側)に配置されて、両者303,301の組付角を操作する組付角操作機構304と、この組付角操作機構304のさらに前方側に配置されて、同機構304を駆動する操作力付与手段305と、内燃機関の図外のシリンダヘッドとヘッドカバーの前面に跨って取り付けられて組付角操作機構304と操作力付与手段305の前面と周域を覆う図外のVTCカバーと、を備えている。
【0028】
駆動リング303は、段差状の挿通孔306を備えた短軸円筒状に形成され、この挿通孔306部分が、カムシャフト13(110)の前端部に結合された従動軸部材307(従動回転体)に回転可能に組み付けられている。
そして、駆動リング303の前面(カムシャフト13と逆側の面)には、図12に示すように、対面する平行な側壁を有する3個の径方向溝308(径方向ガイド)が駆動リング303のほぼ半径方向に沿うように形成されている。
【0029】
また、従動軸部材307は、図11に示すように、カムシャフト13の前端部に突き合わされる基部側外周に拡径部が形成されると共に、その拡径部よりも前方側の外周面に放射状に突出する三つのレバー309が一体に形成され、軸芯部を貫通するボルト310によってカムシャフト13に結合されている。
各レバー309には、リンク311の基端がピン312によって軸支連結され、各リンク311の先端には前記各径方向溝308に摺動自由に係合する円柱状の突出部313が一体に形成されている。
【0030】
各リンク311は、突出部313が対応する径方向溝308に係合した状態において、ピン312を介して従動軸部材307に連結されているため、リンク311の先端側が外力を受けて径方向溝308に沿って変位すると、駆動リング303と従動軸部材307とはリンク311の作用によって突出部313の変位に応じた方向及び角度だけ相対回動する。
【0031】
また、各リンク311の先端部には、軸方向前方側に開口する収容穴314が形成され、この収容穴314に、後述する渦巻き溝315(渦巻き状ガイド)に係合する球面突起316aを有する係合ピン316(転動部材)と、この係合ピン316を前方側(渦巻き溝315側)に付勢するコイルばね317とが収容されている。
なお、この実施形態においては、リンク311の先端の突出部313と係合ピン316、コイルばね317等とによって径方向に変位可能な可動案内部が構成されている。
【0032】
一方、従動軸部材307のレバー309の突設位置よりも前方側には、円板状のフランジ壁318aを有する中間回転体318が、軸受331を介して回転自在に支持されている。
この中間回転体318のフランジ壁318aの後面側には、断面半円状の前述の渦巻き溝315が形成され、この渦巻き溝315に、前記各リンク311の先端の係合ピン316が転動自在に案内係合されている。
【0033】
渦巻き溝315の渦巻きは、駆動リング303の回転方向に沿って次第に縮径するように形成されている。
従って、各リンク311先端の係合ピン316が渦巻き溝315に係合した状態において、中間回転体318が駆動リング303に対して遅れ方向に相対回転すると、リンク311の先端部は径方向溝308に案内されつつ、渦巻き溝315の渦巻き形状に誘導されて半径方向内側に移動し、逆に、中間回転体318が進み方向に相対変位すると、半径方向外側に移動する。
【0034】
この実施形態の組付角操作機構304は、以上説明した駆動リング303の径方向溝308、リンク311、突出部313、係合ピン316、レバー309、中間回転体318、渦巻き溝315等によって構成されている。
この組付角操作機構304は、操作力付与手段305から中間回転体318にカムシャフト13に対する相対的な回動操作力が入力されると、その操作力が渦巻き溝315と係合ピン316の係合部を通してリンク311の先端を径方向に変位させ、このときリンク311とレバー309の作用によって駆動リンク303と従動軸部材307に相対的な回動力を伝達する。
【0035】
一方、操作力付与手段305は、中間回転体318を駆動リング303の回転方向に付勢するゼンマイばね319と、中間回転体318を駆動リング303の回転方向と逆方向に付勢すべく制動する機構であるヒステリシスブレーキ320と、を備えてなり、内燃機関の運転状態に応じてヒステリシスブレーキ320の制動力を適宜制御することにより、中間回転体318を駆動リング303に対して相対回動させ、或いは、この両者の回動位置を維持するようになっている。
【0036】
ゼンマイばね319は、駆動リング303に一体に取り付けられた円筒部材321にその外周端部が結合される一方で、内周端部が中間回転体318の円筒状の基部に結合され、全体が中間回転体318のフランジ壁318aの前方側スペースに配置されている。
一方、ヒステリシスブレーキ320は、中間回転体318の前端部にリテーナプレート322を介して取り付けられた有底円筒状のヒステリシスリング323と、非回転部材である図外のVTCカバーに回転を規制される状態で取り付けられた磁界制御手段としての電磁コイル324と、電磁コイル324の磁気を誘導する磁気誘導部材であるコイルヨーク325と、を備え、電磁コイル324が機関の運転状態に応じて前記ECU114によって通電制御されるようになっている。
【0037】
ヒステリシスリング323は、図15に示すように、外部の磁界の変化に対して位相遅れをもって磁束力が変化する特性(磁気的ヒステリシス特性)を持つヒステリシス材(半硬質材)によって形成され、外周側の円筒壁323a部分が前記コイルヨーク325によって制動作用を受けるようになっている。
コイルヨーク325は、電磁コイル324を取り囲むように全体が略円筒形状に形成され、その内周面が軸受328を介して従動軸部材307の先端部に回転可能に支持されている。
【0038】
そして、コイルヨーク325の後部面側(中間回転体318側)には、磁気入出部分が円筒状の隙間をもって向かい合うように周面状の一対の対向面326,327が形成されている。
また、図13に示すように、コイルヨーク325の両対向面326,327には夫々円周方向に沿って複数の凹凸が連続して形成され、これら凹凸のうちの凸部326a,327aが磁極(磁界発生部)を成すようになっている。
【0039】
そして、一方の対向面326の凸部326aと他方の対向面327の凸部327aは円周方向に交互に配置され、対向面326,327相互の近接する凸部326a,327aがすべて円周方向にずれている。
従って、両対向面326,327の近接する凸部326a,327a間には、電磁コイル24の励磁によって図16に示すような円周方向に傾きをもった向きの磁界が発生する。
【0040】
そして、両対向面326,327間の隙間には前記ヒステリシスリング323の円筒壁323aが非接触状態で介装されている。
ここで、このヒステリシスブレーキ320の作動原理を図17によって説明する。
尚、図17(a)は、ヒステリシスリング323(ヒステリシス材)に最初に磁界をかけた状態を示し、図17(b)は、上記(a)の状態からヒステリシスリング323を変位(回転)させた状態を示す。
【0041】
図17(a)の状態においては、コイルヨーク325の対向面326,327間の磁界の向き(対向面27の凸部327aから他方の対向面326の凸部327aに向かう磁界の向き)に沿うようにヒステリシスリング323内に磁束の流れが生じる。
この状態からヒステリシスリング323が図17(b)に示すように外力Fを受けて移動すると、外部磁界内をヒステリシスリング323が変位することになるため、このときヒステリシスリング323の内部の磁束は位相遅れをもち、ヒステリシスリング323の内部の磁束の向きは対向面326,327間の磁界の向きに対してずれる(傾斜する)ことになる。
【0042】
従って、対向面327の凸部327aからヒステリシスリング323に入る磁束の流れ(磁力線)と、ヒステリシスリング323から他方の対向面326の凸部326aに向かう磁束の流れ(磁力線)が歪められ、このとき、この磁束の流れの歪みを矯正するような引き合い力が対向面326,327とヒステリシスリング323の間に作用し、その引き合い力がヒステリシスリング323を制動する抗力F’として働く。
【0043】
前記ヒステリシスブレーキ320は、以上のようにヒステリシスリング323が対向面326,327間の磁界内を変位するときに、ヒステリシスリング323の内部の磁束の向きと磁界の向きのずれによって制動力を発生するものであるが、その制動力は、ヒステリシスリング323の回転速度(対向面326,327とヒステリシスリング323の相対速度)に関係なく、磁界の強さ、即ち、電磁コイル324の励磁電流の大きさに略比例した一定の値となる。
【0044】
本実施形態に係るVTC機構113は以上のような構成となっており、ヒステリシスブレーキ320の電磁コイル324の励磁をオフにすると、ゼンマイばね319の付勢力によって中間回転体318が駆動リング303に対して機関回転方向に最大限回転し、係合ピン316が渦巻き溝315の外周側端面315aに突き当たる位置で規制され、この位置がVTC機構113の機構上で変更し得る回転位相の最遅角位置となる(図12参照)。
【0045】
この状態から電磁コイル324の励磁をオンとすると、ゼンマイばね319の力に抗する制動力が中間回転体318に付与されて、中間回転体318が駆動リング303に対して逆方向に回転し、それによってリンク311の先端の係合ピン316が渦巻き溝315に誘導されることでリンク311の先端部が径方向溝308に沿って変位し、リンク11の作用によって駆動リング303と従動軸部材307の組付角が進角側に変更される。
【0046】
そして、前記電磁コイル324の励磁電流を増大して制動力を増大していくと、ついには係合ピン316が渦巻き溝315の内周側端面315bに突き当たる位置で規制され、この位置がVTC機構113の機構上で変更し得る回転位相の最進角位置となる(図14参照)。
この状態から電磁コイル324の励磁電流が減少して制動力が減少すると、ゼンマイばね319の付勢力によって中間回転体318が正方向に戻り回転し、渦巻き溝315による係合ピン316の誘導によってリンク311が上記と逆方向に揺動し、駆動リング303と従動軸部材307の組付角が遅角側に変更される。
【0047】
このように、このVTC機構113によって可変されるクランクシャフト120に対するカムシャフト13の回転位相(吸気バルブ105の作動角の中心位相)は、電磁コイル324の励磁電流値を制御してヒステリシスブレーキ320の制動力を制御することによって任意に変更され、ゼンマイばね319の力とヒステリシスブレーキ320の制動力のバランスによってその位相を保持することができる。
【0048】
前記ECU114は、VTC機構113における回転位相の進角目標を演算し、該進角目標に実際の回転位相が一致するように、前記電磁コイル324の励磁電流値をフィードバック制御する。
以上のように吸気バルブの作動角、リフト量で定まる有効開度を可変なVEL機構112と、開閉時期を可変なVTC機構201とを備えた内燃機関において、減速時に以下の制御を実行する。
【0049】
図22は、第1の実施形態における減速時制御のフローを示す。
ステップS1では、前記各種センサからの検出信号(アクセル開度、アイドルスイッチ、スロットル開度、エンジン回転速度、車速、吸気負圧、吸気バルブの有効開度、排気バルブの開閉タイミングなど)を入力する。
ステップS2では、燃料カットを実行する所定の減速条件が成立したかを判定する。具体的には、周知のように、所定以上の車速ないしエンジン回転速度で、アイドルスイッチがONとなってアクセル開放されたか等で判定する。ここで、本実施形態及び以下の実施形態では、燃料カット時に吸気負圧を強化する。
【0050】
ステップS2で、燃料カット要求が発生したと判定されたときは、ステップS3へ進み、該判定からの経過時間を計測するタイマを起動すると共に、VTC113bを駆動して、排気バルブ107の開閉タイミング(作動角中心位相)を目標値まで遅角させる。この目標値へ遅角させる制御は、制御ゲインを大きくするなどして高応答で行い、できるだけ速やかに目標値に収束させるのが望ましい。
【0051】
なお、燃料カット条件が成立した時点で減速時のアクセル閉操作に応じてVEL機構112により、吸気バルブ105の有効開度(作動角及びリフト量)は、最小開度近傍まで減少され、スロットル弁103bも後述する吸気負圧要求等のため全閉(最小開度)近傍まで閉操作されている。
ステップS4で、前記排気バルブ107の開閉タイミングが目標値まで遅角されるまでのディレイ時間t0の経過を待って、ステップS5へ進む。
【0052】
ステップS5では、VEL機構112を駆動し、吸気バルブ105の有効開度を、目標値まで増大させる。
この吸気バルブ105の有効開度の目標値は、有効開度を該目標値まで増大して燃料カット時(非燃焼時)での吸入空気流量を増大することによって、スロットル弁下流の吸気負圧をブレーキアシスト装置の駆動源用などに十分な大きさまで増大させることができ、かつ、ポンピングロスの増大によって減速感(マイナストルクの増大)を高めることができる大きさに設定される。
【0053】
一方、前記ステップS3での排気バルブ107の開閉タイミングの目標値は、開閉タイミングを該目標値まで遅角させて、吸気バルブ105とのバルブオーバラップ量を増大させることにより、燃料カットが開始されるまでの燃焼期間中に、残留ガスを増大させて燃焼圧を減少し、十分なトルク増大抑制効果が得られる大きさに設定される。
ステップS6では、燃料カットが開始されたかを判定する。具体的には、燃料カット要求の発生後、所定のディレイ時間t1(>t0)の経過を待って、ステップS7で燃料カットが開始される。このように、燃料カットに遅れを持たせるのは、燃料カット条件成立時の減速過渡状態では、空気量の減量の遅れに伴う燃料噴射量の減量遅れ、壁流燃料量の影響などにより、まだ燃焼圧が高く維持されており、この状態で燃料カットを行うと、急激にトルクが減少して運転性を損ねてしまうからである(図23参照)。
【0054】
燃料カットが開始されたと判定されると、ステップS8へ進み、VTC機構113bを駆動し、排気バルブ107の開閉タイミングを、遅角側から進角側へ戻す制御を開始する。具体的には、ステップS2での燃料カット条件成立時における遅角制御開始前の排気バルブ107の開閉タイミングを新たな目標値とし、この目標値へ戻す制御を行う。該目標値への戻し速度は、前記遅角制御時より遅くしてよいが、進角側への戻し操作によってバルブオーバラップ量が減少し、燃料カット中の吸入空気流量が増大して吸気負圧が増大する。すなわち、戻し速度を大きくすれば、吸気負圧の増大が早められる一方、トルク変化速度が増大するので、これらのバランスを考慮するなどして戻し速度を設定すればよい。
【0055】
ステップS9では、燃料カットを終了し、燃料リカバー(燃料供給再開)に切り換えられたかを判定する。
燃料リカバーに切り換えられたと判定されるとステップS10へ進み、VEL112を駆動し、吸気バルブ105の有効開度を減少して戻す制御を開始する。具体的には、燃料リカバー時の運転状態に基づきマップからの検索等で目標値を設定してもよいが、有効開度を増大する前の最小開度付近の値を目標値として設定してもよい。
【0056】
以上の実施形態によれば、図23のタイムチャートに示すように、減速時に燃料カット条件成立後、VTC113bによって排気バルブ107の開閉タイミングが遅角側に制御され、次いで、VEL112によって吸気バルブ105の有効開度が増大制御される。
これにより、燃料カット開始までは、吸気バルブ105の有効開度が増大して燃料噴射量も増量されるが、排気バルブ107の閉時期EVCが遅角されて吸気バルブ105開時期IVOからEVCまでのバルブオーバラップ量が増大し、残留ガス量が増大する結果、燃焼圧の増大ひいてはトルクの増大を抑制でき、運転性の悪化を防止できる。
【0057】
特に、本実施形態では、VTC113bの遅角制御の終了を待ってからVELL112による吸気バルブ105の有効開度増大制御を開始するようにしたため、初期からトルクの増大を十分に抑制することができる。
ただし、VTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御の応答速度を十分に速め、一方、VEL112による吸気バルブ105の有効開度増大の立ち上がりを緩やかにすれば、これらVTC113bとVEL112の制御とを、略同時に開始しても初期からトルクの増大を抑制することができる。そしてこのように、2つの制御の開示時期を近づけることにより、排気バルブ107の開閉タイミングと、吸気バルブ105の有効開度との相互関係で定まるそれぞれの最適値からのずれ量を減少することができ、燃焼性を良好に維持できる。また、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角制御中、あるいは遅角制御が終了してから短時間の間に再進角する状況となったときに、既に、吸気バルブ105の有効開度の増大制御が開始されているので、該進角制御に高応答で追随させることができ運転性を向上できる。
【0058】
また、上記のように燃料カット開始までのトルクの増大を抑制しつつ、燃料カット開始後は、吸気バルブ105の有効開度を増大して吸入空気流量を増大したことにより、全閉近傍にあるスロットル弁下流側の吸気負圧を、ブレーキアシスト装置の駆動源用などに十分な大きさまで増大させることができ、かつ、ポンピングロスの増大によって減速感(マイナストルクの増大)を高めることができる。
【0059】
さらに、燃料カット前のトルクの増大を抑制できることで、燃料カット開始時のトルク減少時におけるトルクの段差も減少でき、より、運転性を向上できる。
なお、本実施形態では、図23の実線で示すように、燃料カット開始直後に排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側に戻すことで、バルブオーバラップ量を減少させることにより、吸入空気流量が増大して吸気負圧をより増大させることができる。
【0060】
図24は、第2の実施形態の減速時制御のフローを示す。第1の実施形態との相違は、燃料カット条件成立後、燃料カット開始までの間の燃焼期間中において、点火時期の補正を行うことである。すなわち、一般的なエンジン機種では、バルブオーバラップ量を増大させて残留ガス量を増大しても、特に点火時期の補正なしの基本値(バルブオーバラップ量を増大させる制御を行わない場合のマップからの検索等で設定される値)で、失火防止とHC排出量の低減を両立でき、さらに、点火時期を遅角側に補正しても、これらを両立できる。そこで、本実施形態では、ステップS5'で失火防止のため公知の失火診断ファクターを用いて失火限界を超えない範囲で失火限界に近いところまで遅角側に補正する。
【0061】
かかる点火時期の遅角補正により、失火を防止しつつ吸気負圧を最大限高められると同時に、エンジントルクを減少させてエンジンブレーキ作用が強化されて強い減速感を得ることができる。
ただし、エンジン機種等によって、バルブオーバラップ量を増大させて残留ガス量を増大させた結果、燃焼性が低下し、失火の発生やHC排出量の増大が懸念される場合には、逆に、点火時期を進角側に補正して、失火防止とHC排出量の低減を両立させる構成とすることもできる。
【0062】
図25は、図22、図24のフローチャートにおいて、VTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの遅角制御の解除を、燃料リカバー時に行う第3の実施形態を示す。
図25では、ステップS11で燃料リカバーと判定されたときに、ステップS12でVTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側への戻し制御を開始すると同時に、VEL112による吸気バルブ105の有効開度の増大制御を解除し、有効開度減少制御を開始する。
【0063】
すなわち、燃料リカバーに合わせてVEL112による吸気バルブ105の有効開度を減少側に戻し制御して吸入空気量を減少し、該吸入空気量に見合ってリカバー燃料量を小さく設定することにより、燃料リカバー時のトルク段差を抑制することができる。一方、前記吸気バルブ105の有効開度を減少する制御に合わせてVTC113bによる排気バルブ開閉タイミングを進角させる制御を行うことにより、燃料リカバー後の安定した燃焼性を確保することができる。
【0064】
また、該吸気バルブ105の有効開度を減少側に戻す制御を高応答で行い、短時間で完了させるほど、燃料リカバー時のトルク段差をより小さく抑制することができ、前記吸気バルブの制御に合わせてVTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの進角制御も同様に高応答で行い、短時間で完了させることで、燃料リカバー時の安定した燃焼性も確保することができる。
【0065】
本実施形態では、燃料カット中は、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角側に維持してバルブオーバラップ量を大きくしているので、第1の実施形態に比較して吸気負圧が小さく、マイナストルク(絶対値)が小さい。一方、燃料リカバーと同時に、吸気バルブ105の有効開度減少と、排気バルブ開閉タイミングの進角側への戻しとを、同時に一気に行う(短時間で完了させる)ことにより、燃料リカバー時に良好な燃焼性を確保しつつトルクの増大を最小限に留められる。したがって、燃料リカバー時のトルク段差をより小さく抑制することができる。
【0066】
図26は、図22、図24のフローチャートにおいて、VTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの遅角制御の解除を、燃料リカバー後に吸気負圧要求が解除されたとき(アイドル状態)に行う第4の実施形態を示す。
図26では、ステップS21で燃料リカバー後の吸気負圧要求が解除されるアイドル状態(車速略0でニュートラル状態)と判定されたときに、ステップS22でVTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側への戻し制御を開始すると同時に、VEL112による吸気バルブ105の有効開度の増大制御を解除し、有効開度減少制御を開始する。
【0067】
この場合は、燃料リカバー後、アイドル状態に戻るまでの間は、運転状態に基づいてマップからの検索等によってVEL112より吸気バルブ105の有効開度を徐々に減少させる一方、該有効開度の減少速度に合わせて、VTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングも徐々に進角側へ戻されるようにする。
本実施形態では、燃料リカバー後もアイドル状態に戻るまでの吸気負圧の要求がある間は、吸気バルブ105の有効開度を大きく、かつ、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角側に維持することで、燃料カット開始前と同様、燃焼圧の増大を抑制して燃料リカバー後のトルクの増大を抑制しつつ、吸入空気流量の増大によってスロットル弁下流の吸気負圧を大きく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】VEL(Variable valve Event and Lift)機構を示す断面図(図3のA−A断面図)。
【図3】上記VEL機構の側面図。
【図4】上記VEL機構の平面図。
【図5】上記VEL機構に使用される偏心カムを示す斜視図。
【図6】上記VEL機構の低リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図7】上記VEL機構の高リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図8】上記VEL機構における揺動カムの基端面とカム面に対応したバルブリフト特性図。
【図9】上記VEL機構のバルブタイミングとバルブリフトの特性図。
【図10】上記VEL機構における制御軸の回転駆動機構を示す斜視図。
【図11】VTC(Variable valve Timing Control)機構を示す断面図。
【図12】図11のA−A線に沿う断面図。
【図13】図11のB−B線に沿う断面図。
【図14】上記VTC機構の作動状態を示す図12と同様の断面図。
【図15】ヒステリシス材の磁束密度−磁界特性を示すグラフ。
【図16】図13の部分拡大断面図。
【図17】図16の部品を直線状に展開した模式図であり、初期状態(a)とヒステリシスリングが回転したとき(b)の磁束の流れを示す図。
【図18】クランク角センサ及び第1カムセンサの出力信号を示すタイミングチャート。
【図19】第2カムセンサの構成を示す図。
【図20】ギャップとギャップセンサ出力との相関を示す線図。
【図21】カムシャフトの角度位置とギャップセンサ出力との相関を示す線図。
【図22】第1の実施形態に係る減速時制御を示すフローチャート。
【図23】第1の実施形態に係る減速時制御における各種状態量の変化の様子を示すタイムチャート。
【図24】第2の実施形態に係る減速時制御を示すフローチャート。
【図25】第3の実施形態に係る減速時制御の要部を示すフローチャート。
【図26】第3の実施形態に係る減速時制御の要部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0069】
13…カムシャフト、16…制御軸、101…内燃機関、104…電子制御スロットル、105…吸気バルブ、112…VEL機構(可変動弁機構)、113…VTC機構(可変バルブタイミング機構)、114…エンジンコントロールユニット(ECU)、117…クランク角センサ、120…クランクシャフト、121…DCサーボモータ、127…角度センサ、132…第1カムセンサ、133…第2カムセンサ、133b…ギャップセンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に搭載された可変動弁機構を、減速時にスロットル弁下流側に吸気負圧を発生させる際に制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気バルブの作動角およびリフト量を可変な可変動弁機構を備え、燃料カットを伴う減速時に、大きな減速度を要求されるときには、スロットル弁を閉じ、吸気バルブの作動角およびリフト量を大きくして、スロットル弁下流側の吸気負圧を増大することが開示されている。
なお、吸気負圧を駆動源として利用するブレーキアシスト装置、その他蒸気燃料のパージ制御、ブローバイガス制御などのためにも、減速時に吸気負圧を確保することが要求される。
【特許文献1】特開2005−188284号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、減速時は、アクセル閉操作に応じて吸気バルブのリフト量が最小付近まで減少し、その後、吸気負圧の増大要求に応じてリフト量が増大するため、燃料カットが開始されるまでの間、トルクが増大し、運転性が損なわれる。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、減速時に吸気負圧を確保しつつトルクの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、燃料カットを伴う所定の減速時の燃料カット実行前に、吸気バルブの有効開度を可変な第1可変動弁機構によって吸気バルブの有効開度を増大させると共に、排気バルブの開閉タイミングを可変な第2可変動弁機構によって排気バルブの開閉タイミングを遅角側に移行させて吸気バルブとのバルブオーバラップ量を増大する構成とした。
【発明の効果】
【0005】
かかる構成とすれば、燃料カットを伴う所定の減速時、アクセル閉操作に応じて吸気バルブの有効開度が減少した後、吸気負圧の増大要求に伴って第1可変動弁機構により吸気バルブの有効開度が増大されるが、その際に、第2可変動弁機構により排気バルブの開閉タイミングが遅角されて吸気バルブとのバルブオーバラップ量が増大する。
これにより、燃料カットが実行されるまでの間、シリンダ内の残留ガス量が増大して燃焼圧の増大を抑制できトルクの増大を抑制できる。燃料カット開始後は、吸気バルブの有効開度の増大によって吸入空気流量が増大することにより、閉操作されているスロットル弁の下流側の吸気負圧が増大し、減速感も強化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、実施形態における車両用内燃機関のシステム構成図である。
図1において、内燃機関101の吸気管102には、スロットルモータ103aでスロットルバルブ103bを開閉駆動する電子制御スロットル104が介装され、該電子制御スロットル104及び吸気バルブ105を介して、燃焼室106内に空気が吸入される。
燃焼排気は燃焼室106から排気バルブ107を介して排出され、フロント触媒108及びリア触媒109で浄化された後、大気中に放出される。
【0007】
吸気バルブ105側には、吸気バルブ105のバルブリフト量を作動角と共に連続的に可変するVEL(Variable valve Event and Lift)機構112が設けられる。ここで、本実施形態の可変動弁機構VEL112では、バルブリフト量及びバルブ作動角は、吸気バルブ105の開期間における平均開度つまり有効開度に相関するバルブ特性である。
更に、吸気バルブ105側には、クランクシャフト120に対する吸気側カムシャフトの回転位相を変化させることで、吸気バルブ105の作動角の中心位相(開閉タイミング)を連続的に可変するVTC(Variable valve Timing Control)機構113aが設けられる。
【0008】
一方、排気バルブ107側には、クランクシャフト120に対する排気側カムシャフト110の回転位相を変化させることで、排気バルブ107の作動角の中心位相(開閉タイミング)を連続的に可変するVTC(Variable valve Timing Control)機構113bが設けられる。
前記吸気バルブ側のVEL機構112が第1可変動弁機構に相当し、前記排気バルブ側のVTC機構113bが第2可変動弁機構機構に相当する。
【0009】
マイクロコンピュータを内蔵するエンジンコントロールユニット(ECU)114は、要求トルクに対応する要求吸入空気量を得るように、また、所定の減速時に要求の吸入負圧を得るように、VEL機構112及びVTC機構113a,bと、前記電子制御スロットル104とを制御する。
前記ECU114には、内燃機関101の吸入空気量を検出するエアフローメータ115、アクセル開度を検出するアクセルペダルセンサ116(所定のアクセル開度以下でアイドル状態であることを検出するアイドルスイッチを含む)、クランクシャフト120から単位クランク角度毎の単位角度信号POSを取り出すクランク角センサ117、スロットルバルブ103bの開度TVOを検出するスロットルセンサ118、内燃機関101の冷却水温度を検出する水温センサ119、カムシャフトからカム信号CAM,カム角度信号CAMAを取り出す第1カムセンサ132及び第2カムセンサ133、車速を検出する車速センサ134からの検出信号が入力される。
【0010】
ここで、前記クランク角センサ117は、クランクシャフト120と一体的に回転する回転体に対してクランク角で10°毎に設けられる被検出部を検出することで、図18に示すように、クランク角10°毎に単位角度信号POSを出力するが、クランク角で180°間隔の2箇所において前記被検出部が連続して2箇所設けられずに、単位角度信号POSが2つ連続して出力されないようになっている。
【0011】
尚、前記クランク角180°は、本実施形態の4気筒機関において、気筒間の行程位相差に相当する。
そして、前記単位角度信号POSが一時的に途絶える部分を前記単位角度信号POSの出力周期に基づいて検出し、例えば、単位角度信号POSが途絶えた後最初に出力される単位角度信号POSを基準にクランクシャフト120の基準回転位置を検出する。
【0012】
前記ECU114は、前記基準回転位置の検出周期、又は、所定時間当たりの単位角度信号POSの発生数を計数することで、機関回転速度を算出する。
尚、クランク角センサ117が、クランクシャフト120の基準回転位置毎(180°毎)の基準角度信号REFと、抜けのない単位角度信号POSとを個別に出力する構成であっても良い。
【0013】
また、前記第1カムセンサ132は、カムシャフトと一体に回転する回転体に設けられる被検出部を検出することで、図18に示すように、クランク角で180°に相当するカム角90°毎に、パルス数で気筒番号(第1気筒〜第4気筒)を示すカム信号(気筒判別信号)CAMを出力する。
更に、前記第2カムセンサ133a,bは、図19に示すように、カムシャフトと一体に回転する回転体133aの半径が円周方向に連続的に変化するように形成し、該回転体133aの周縁に対向して固定されるギャップセンサ133bの出力が、図20に示すように、ギャップセンサ133bと回転体133a,b周縁との距離(ギャップ)がカムシャフトの回転によって変化することで連続的に変化するように構成される。
【0014】
ここで、カムシャフトの角度位置と前記ギャップとの関係は一定であるから、図21に示すように、前記ギャップセンサ133bの出力とカムシャフトの角度位置とは一定の相関を有し、前記ギャップセンサ133bの出力からカムシャフトの角度位置を検出することができ、前記ギャップセンサ133bの出力をカム角度信号CAMAとする。
各気筒の吸気バルブ105上流側の吸気ポート130には、電磁式の燃料噴射弁131が設けられ、該燃料噴射弁131は、前記ECU114からの噴射パルス信号によって開弁駆動され、前記噴射パルス信号の噴射パルス幅(開弁時間)に比例する量の燃料を噴射する。
【0015】
図2〜図4は、前記VEL機構112の構造を詳細に示すものである。
図2〜図4に示すVEL機構112は、一対の吸気バルブ105,105と、シリンダヘッド11のカム軸受14に回転自在に支持された中空状のカムシャフト13(駆動軸)と、該カムシャフト13に軸支された回転カムである2つの偏心カム15,15(駆動カム)と、前記カムシャフト13の上方位置に同じカム軸受14に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16に制御カム17を介して揺動自在に支持された一対のロッカアーム18,18と、各吸気バルブ105,105の上端部に一対のバルブリフター19,19を介して配置された一対のそれぞれ独立した揺動カム20,20とを備えている。
【0016】
前記偏心カム15,15とロッカアーム18,18とは、一対のリンクアーム25,25によって連係され、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とは、一対のリンク部材26,26によって連係されている。
上記ロッカアーム18,18,リンクアーム25,25,リンク部材26,26が伝達機構を構成する。
【0017】
前記偏心カム15は、図5に示すように、略リング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向にカムシャフト挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xがカムシャフト13の軸心Yから所定量だけ偏心している。
また、前記偏心カム15は、カムシャフト13に対し前記バルブリフター19に干渉しない両外側にカム軸挿通孔15cを介して圧入固定されている。
【0018】
前記ロッカアーム18は、図4に示すように、略クランク状に屈曲形成され、中央の基部18aが制御カム17に回転自在に支持されている。
また、基部18aの外端部に突設された一端部18bには、リンクアーム25の先端部と連結するピン21が圧入されるピン孔18dが貫通形成されている一方、基部18aの内端部に突設された他端部18cには、各リンク部材26の後述する一端部26aと連結するピン28が圧入されるピン孔18eが形成されている。
【0019】
前記制御カム17は、円筒状を呈し、制御軸16外周に固定されていると共に、図2に示すように軸心P1位置が制御軸16の軸心P2からαだけ偏心している。
前記揺動カム20は、図2及び図6,図7に示すように略横U字形状を呈し、略円環状の基端部22にカムシャフト13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔22aが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18の他端部18c側に位置する端部23にピン孔23aが貫通形成されている。
【0020】
また、揺動カム20の下面には、基端部22側の基円面24aと該基円面24aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面24bとが形成されており、該基円面24aとカム面24bとが、揺動カム20の揺動位置に応じて各バルブリフター19の上面所定位置に当接するようになっている。
即ち、図8に示すバルブリフト特性からみると、図2に示すように基円面24aの所定角度範囲θ1がベースサークル区間になり、カム面24bの前記ベースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2が所謂ランプ区間となり、更に、カム面24bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。
【0021】
また、前記リンクアーム25は、円環状の基部25aと、該基部25aの外周面所定位置に突設された突出端25bとを備え、基部25aの中央位置には、前記偏心カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合穴25cが形成されている一方、突出端25bには、前記ピン21が回転自在に挿通するピン孔25dが貫通形成されている。
更に、前記リンク部材26は、所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部26a,26bには前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム20の端部23の各ピン孔18d,23aに圧入した各ピン28,29の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔26c,26dが貫通形成されている。
【0022】
尚、各ピン21,28,29の一端部には、リンクアーム25やリンク部材26の軸方向の移動を規制するスナップリング30,31,32が設けられている。
上記構成において、制御軸16の軸心P2と制御カム17の軸心P1との位置関係によって、図6,7に示すように、バルブリフト量が変化することになり、前記制御軸16を回転駆動させることで、制御カム17の軸心P1に対する制御軸16の軸心P2の位置を変化させる。
【0023】
前記制御軸16は、図10に示すような構成によって、ストッパにより制限される所定回転角度範囲内でDCサーボモータ(アクチュエータ)121により回転駆動されるようになっており、前記制御軸16の角度を前記アクチュエータ121で変化させることで、吸気バルブ105のバルブリフト量及びバルブ作動角が、前記ストッパで制限される最大バルブリフト量と最小バルブリフト量との間の可変範囲内で連続的に変化する(図9参照)。
【0024】
図10において、DCサーボモータ121は、その回転軸が制御軸16と平行になるように配置され、回転軸の先端には、かさ歯車122が軸支されている。
一方、前記制御軸16の先端に一対のステー123a,123bが固定され、一対のステー123a,123bの先端部を連結する制御軸16と平行な軸周りに、ナット124が揺動可能に支持される。
【0025】
前記ナット124に噛み合わされるネジ棒125の先端には、前記かさ歯車122に噛み合わされるかさ歯車126が軸支されており、DCサーボモータ121の回転によってネジ棒125が回転し、該ネジ棒125に噛み合うナット124の位置が、ネジ棒125の軸方向に変位することで、制御軸16が回転されるようになっている。
ここで、ナット124の位置をかさ歯車126に近づける方向が、バルブリフト量が小さくなる方向で、逆に、ナット124の位置をかさ歯車126から遠ざける方向が、バルブリフト量が大きくなる方向となっている。
【0026】
前記制御軸16の先端には、図10に示すように、制御軸16の角度を検出するポテンショメータ式の角度センサ127が設けられており、該角度センサ127で検出される実際の角度が目標角度(目標バルブリフト量相当値)に一致するように、前記ECU114が前記DCサーボモータ121をフィードバック制御する。
次に、前記VTC機構113a(113b)の構成を、図11〜図17に基づいて説明する。
【0027】
図11に示すように、前記VTC機構113a(113b)は、前記カムシャフト13(110)と、このカムシャフト13(110)の前端部に必要に応じて相対回動できるように組み付けられ、チェーン(図示せず)を介してクランクシャフト120に連係されるタイミングスプロケット302を外周に有する駆動リング303(駆動回転体)と、この駆動リング303とカムシャフト13の前方側(図11中左側)に配置されて、両者303,301の組付角を操作する組付角操作機構304と、この組付角操作機構304のさらに前方側に配置されて、同機構304を駆動する操作力付与手段305と、内燃機関の図外のシリンダヘッドとヘッドカバーの前面に跨って取り付けられて組付角操作機構304と操作力付与手段305の前面と周域を覆う図外のVTCカバーと、を備えている。
【0028】
駆動リング303は、段差状の挿通孔306を備えた短軸円筒状に形成され、この挿通孔306部分が、カムシャフト13(110)の前端部に結合された従動軸部材307(従動回転体)に回転可能に組み付けられている。
そして、駆動リング303の前面(カムシャフト13と逆側の面)には、図12に示すように、対面する平行な側壁を有する3個の径方向溝308(径方向ガイド)が駆動リング303のほぼ半径方向に沿うように形成されている。
【0029】
また、従動軸部材307は、図11に示すように、カムシャフト13の前端部に突き合わされる基部側外周に拡径部が形成されると共に、その拡径部よりも前方側の外周面に放射状に突出する三つのレバー309が一体に形成され、軸芯部を貫通するボルト310によってカムシャフト13に結合されている。
各レバー309には、リンク311の基端がピン312によって軸支連結され、各リンク311の先端には前記各径方向溝308に摺動自由に係合する円柱状の突出部313が一体に形成されている。
【0030】
各リンク311は、突出部313が対応する径方向溝308に係合した状態において、ピン312を介して従動軸部材307に連結されているため、リンク311の先端側が外力を受けて径方向溝308に沿って変位すると、駆動リング303と従動軸部材307とはリンク311の作用によって突出部313の変位に応じた方向及び角度だけ相対回動する。
【0031】
また、各リンク311の先端部には、軸方向前方側に開口する収容穴314が形成され、この収容穴314に、後述する渦巻き溝315(渦巻き状ガイド)に係合する球面突起316aを有する係合ピン316(転動部材)と、この係合ピン316を前方側(渦巻き溝315側)に付勢するコイルばね317とが収容されている。
なお、この実施形態においては、リンク311の先端の突出部313と係合ピン316、コイルばね317等とによって径方向に変位可能な可動案内部が構成されている。
【0032】
一方、従動軸部材307のレバー309の突設位置よりも前方側には、円板状のフランジ壁318aを有する中間回転体318が、軸受331を介して回転自在に支持されている。
この中間回転体318のフランジ壁318aの後面側には、断面半円状の前述の渦巻き溝315が形成され、この渦巻き溝315に、前記各リンク311の先端の係合ピン316が転動自在に案内係合されている。
【0033】
渦巻き溝315の渦巻きは、駆動リング303の回転方向に沿って次第に縮径するように形成されている。
従って、各リンク311先端の係合ピン316が渦巻き溝315に係合した状態において、中間回転体318が駆動リング303に対して遅れ方向に相対回転すると、リンク311の先端部は径方向溝308に案内されつつ、渦巻き溝315の渦巻き形状に誘導されて半径方向内側に移動し、逆に、中間回転体318が進み方向に相対変位すると、半径方向外側に移動する。
【0034】
この実施形態の組付角操作機構304は、以上説明した駆動リング303の径方向溝308、リンク311、突出部313、係合ピン316、レバー309、中間回転体318、渦巻き溝315等によって構成されている。
この組付角操作機構304は、操作力付与手段305から中間回転体318にカムシャフト13に対する相対的な回動操作力が入力されると、その操作力が渦巻き溝315と係合ピン316の係合部を通してリンク311の先端を径方向に変位させ、このときリンク311とレバー309の作用によって駆動リンク303と従動軸部材307に相対的な回動力を伝達する。
【0035】
一方、操作力付与手段305は、中間回転体318を駆動リング303の回転方向に付勢するゼンマイばね319と、中間回転体318を駆動リング303の回転方向と逆方向に付勢すべく制動する機構であるヒステリシスブレーキ320と、を備えてなり、内燃機関の運転状態に応じてヒステリシスブレーキ320の制動力を適宜制御することにより、中間回転体318を駆動リング303に対して相対回動させ、或いは、この両者の回動位置を維持するようになっている。
【0036】
ゼンマイばね319は、駆動リング303に一体に取り付けられた円筒部材321にその外周端部が結合される一方で、内周端部が中間回転体318の円筒状の基部に結合され、全体が中間回転体318のフランジ壁318aの前方側スペースに配置されている。
一方、ヒステリシスブレーキ320は、中間回転体318の前端部にリテーナプレート322を介して取り付けられた有底円筒状のヒステリシスリング323と、非回転部材である図外のVTCカバーに回転を規制される状態で取り付けられた磁界制御手段としての電磁コイル324と、電磁コイル324の磁気を誘導する磁気誘導部材であるコイルヨーク325と、を備え、電磁コイル324が機関の運転状態に応じて前記ECU114によって通電制御されるようになっている。
【0037】
ヒステリシスリング323は、図15に示すように、外部の磁界の変化に対して位相遅れをもって磁束力が変化する特性(磁気的ヒステリシス特性)を持つヒステリシス材(半硬質材)によって形成され、外周側の円筒壁323a部分が前記コイルヨーク325によって制動作用を受けるようになっている。
コイルヨーク325は、電磁コイル324を取り囲むように全体が略円筒形状に形成され、その内周面が軸受328を介して従動軸部材307の先端部に回転可能に支持されている。
【0038】
そして、コイルヨーク325の後部面側(中間回転体318側)には、磁気入出部分が円筒状の隙間をもって向かい合うように周面状の一対の対向面326,327が形成されている。
また、図13に示すように、コイルヨーク325の両対向面326,327には夫々円周方向に沿って複数の凹凸が連続して形成され、これら凹凸のうちの凸部326a,327aが磁極(磁界発生部)を成すようになっている。
【0039】
そして、一方の対向面326の凸部326aと他方の対向面327の凸部327aは円周方向に交互に配置され、対向面326,327相互の近接する凸部326a,327aがすべて円周方向にずれている。
従って、両対向面326,327の近接する凸部326a,327a間には、電磁コイル24の励磁によって図16に示すような円周方向に傾きをもった向きの磁界が発生する。
【0040】
そして、両対向面326,327間の隙間には前記ヒステリシスリング323の円筒壁323aが非接触状態で介装されている。
ここで、このヒステリシスブレーキ320の作動原理を図17によって説明する。
尚、図17(a)は、ヒステリシスリング323(ヒステリシス材)に最初に磁界をかけた状態を示し、図17(b)は、上記(a)の状態からヒステリシスリング323を変位(回転)させた状態を示す。
【0041】
図17(a)の状態においては、コイルヨーク325の対向面326,327間の磁界の向き(対向面27の凸部327aから他方の対向面326の凸部327aに向かう磁界の向き)に沿うようにヒステリシスリング323内に磁束の流れが生じる。
この状態からヒステリシスリング323が図17(b)に示すように外力Fを受けて移動すると、外部磁界内をヒステリシスリング323が変位することになるため、このときヒステリシスリング323の内部の磁束は位相遅れをもち、ヒステリシスリング323の内部の磁束の向きは対向面326,327間の磁界の向きに対してずれる(傾斜する)ことになる。
【0042】
従って、対向面327の凸部327aからヒステリシスリング323に入る磁束の流れ(磁力線)と、ヒステリシスリング323から他方の対向面326の凸部326aに向かう磁束の流れ(磁力線)が歪められ、このとき、この磁束の流れの歪みを矯正するような引き合い力が対向面326,327とヒステリシスリング323の間に作用し、その引き合い力がヒステリシスリング323を制動する抗力F’として働く。
【0043】
前記ヒステリシスブレーキ320は、以上のようにヒステリシスリング323が対向面326,327間の磁界内を変位するときに、ヒステリシスリング323の内部の磁束の向きと磁界の向きのずれによって制動力を発生するものであるが、その制動力は、ヒステリシスリング323の回転速度(対向面326,327とヒステリシスリング323の相対速度)に関係なく、磁界の強さ、即ち、電磁コイル324の励磁電流の大きさに略比例した一定の値となる。
【0044】
本実施形態に係るVTC機構113は以上のような構成となっており、ヒステリシスブレーキ320の電磁コイル324の励磁をオフにすると、ゼンマイばね319の付勢力によって中間回転体318が駆動リング303に対して機関回転方向に最大限回転し、係合ピン316が渦巻き溝315の外周側端面315aに突き当たる位置で規制され、この位置がVTC機構113の機構上で変更し得る回転位相の最遅角位置となる(図12参照)。
【0045】
この状態から電磁コイル324の励磁をオンとすると、ゼンマイばね319の力に抗する制動力が中間回転体318に付与されて、中間回転体318が駆動リング303に対して逆方向に回転し、それによってリンク311の先端の係合ピン316が渦巻き溝315に誘導されることでリンク311の先端部が径方向溝308に沿って変位し、リンク11の作用によって駆動リング303と従動軸部材307の組付角が進角側に変更される。
【0046】
そして、前記電磁コイル324の励磁電流を増大して制動力を増大していくと、ついには係合ピン316が渦巻き溝315の内周側端面315bに突き当たる位置で規制され、この位置がVTC機構113の機構上で変更し得る回転位相の最進角位置となる(図14参照)。
この状態から電磁コイル324の励磁電流が減少して制動力が減少すると、ゼンマイばね319の付勢力によって中間回転体318が正方向に戻り回転し、渦巻き溝315による係合ピン316の誘導によってリンク311が上記と逆方向に揺動し、駆動リング303と従動軸部材307の組付角が遅角側に変更される。
【0047】
このように、このVTC機構113によって可変されるクランクシャフト120に対するカムシャフト13の回転位相(吸気バルブ105の作動角の中心位相)は、電磁コイル324の励磁電流値を制御してヒステリシスブレーキ320の制動力を制御することによって任意に変更され、ゼンマイばね319の力とヒステリシスブレーキ320の制動力のバランスによってその位相を保持することができる。
【0048】
前記ECU114は、VTC機構113における回転位相の進角目標を演算し、該進角目標に実際の回転位相が一致するように、前記電磁コイル324の励磁電流値をフィードバック制御する。
以上のように吸気バルブの作動角、リフト量で定まる有効開度を可変なVEL機構112と、開閉時期を可変なVTC機構201とを備えた内燃機関において、減速時に以下の制御を実行する。
【0049】
図22は、第1の実施形態における減速時制御のフローを示す。
ステップS1では、前記各種センサからの検出信号(アクセル開度、アイドルスイッチ、スロットル開度、エンジン回転速度、車速、吸気負圧、吸気バルブの有効開度、排気バルブの開閉タイミングなど)を入力する。
ステップS2では、燃料カットを実行する所定の減速条件が成立したかを判定する。具体的には、周知のように、所定以上の車速ないしエンジン回転速度で、アイドルスイッチがONとなってアクセル開放されたか等で判定する。ここで、本実施形態及び以下の実施形態では、燃料カット時に吸気負圧を強化する。
【0050】
ステップS2で、燃料カット要求が発生したと判定されたときは、ステップS3へ進み、該判定からの経過時間を計測するタイマを起動すると共に、VTC113bを駆動して、排気バルブ107の開閉タイミング(作動角中心位相)を目標値まで遅角させる。この目標値へ遅角させる制御は、制御ゲインを大きくするなどして高応答で行い、できるだけ速やかに目標値に収束させるのが望ましい。
【0051】
なお、燃料カット条件が成立した時点で減速時のアクセル閉操作に応じてVEL機構112により、吸気バルブ105の有効開度(作動角及びリフト量)は、最小開度近傍まで減少され、スロットル弁103bも後述する吸気負圧要求等のため全閉(最小開度)近傍まで閉操作されている。
ステップS4で、前記排気バルブ107の開閉タイミングが目標値まで遅角されるまでのディレイ時間t0の経過を待って、ステップS5へ進む。
【0052】
ステップS5では、VEL機構112を駆動し、吸気バルブ105の有効開度を、目標値まで増大させる。
この吸気バルブ105の有効開度の目標値は、有効開度を該目標値まで増大して燃料カット時(非燃焼時)での吸入空気流量を増大することによって、スロットル弁下流の吸気負圧をブレーキアシスト装置の駆動源用などに十分な大きさまで増大させることができ、かつ、ポンピングロスの増大によって減速感(マイナストルクの増大)を高めることができる大きさに設定される。
【0053】
一方、前記ステップS3での排気バルブ107の開閉タイミングの目標値は、開閉タイミングを該目標値まで遅角させて、吸気バルブ105とのバルブオーバラップ量を増大させることにより、燃料カットが開始されるまでの燃焼期間中に、残留ガスを増大させて燃焼圧を減少し、十分なトルク増大抑制効果が得られる大きさに設定される。
ステップS6では、燃料カットが開始されたかを判定する。具体的には、燃料カット要求の発生後、所定のディレイ時間t1(>t0)の経過を待って、ステップS7で燃料カットが開始される。このように、燃料カットに遅れを持たせるのは、燃料カット条件成立時の減速過渡状態では、空気量の減量の遅れに伴う燃料噴射量の減量遅れ、壁流燃料量の影響などにより、まだ燃焼圧が高く維持されており、この状態で燃料カットを行うと、急激にトルクが減少して運転性を損ねてしまうからである(図23参照)。
【0054】
燃料カットが開始されたと判定されると、ステップS8へ進み、VTC機構113bを駆動し、排気バルブ107の開閉タイミングを、遅角側から進角側へ戻す制御を開始する。具体的には、ステップS2での燃料カット条件成立時における遅角制御開始前の排気バルブ107の開閉タイミングを新たな目標値とし、この目標値へ戻す制御を行う。該目標値への戻し速度は、前記遅角制御時より遅くしてよいが、進角側への戻し操作によってバルブオーバラップ量が減少し、燃料カット中の吸入空気流量が増大して吸気負圧が増大する。すなわち、戻し速度を大きくすれば、吸気負圧の増大が早められる一方、トルク変化速度が増大するので、これらのバランスを考慮するなどして戻し速度を設定すればよい。
【0055】
ステップS9では、燃料カットを終了し、燃料リカバー(燃料供給再開)に切り換えられたかを判定する。
燃料リカバーに切り換えられたと判定されるとステップS10へ進み、VEL112を駆動し、吸気バルブ105の有効開度を減少して戻す制御を開始する。具体的には、燃料リカバー時の運転状態に基づきマップからの検索等で目標値を設定してもよいが、有効開度を増大する前の最小開度付近の値を目標値として設定してもよい。
【0056】
以上の実施形態によれば、図23のタイムチャートに示すように、減速時に燃料カット条件成立後、VTC113bによって排気バルブ107の開閉タイミングが遅角側に制御され、次いで、VEL112によって吸気バルブ105の有効開度が増大制御される。
これにより、燃料カット開始までは、吸気バルブ105の有効開度が増大して燃料噴射量も増量されるが、排気バルブ107の閉時期EVCが遅角されて吸気バルブ105開時期IVOからEVCまでのバルブオーバラップ量が増大し、残留ガス量が増大する結果、燃焼圧の増大ひいてはトルクの増大を抑制でき、運転性の悪化を防止できる。
【0057】
特に、本実施形態では、VTC113bの遅角制御の終了を待ってからVELL112による吸気バルブ105の有効開度増大制御を開始するようにしたため、初期からトルクの増大を十分に抑制することができる。
ただし、VTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御の応答速度を十分に速め、一方、VEL112による吸気バルブ105の有効開度増大の立ち上がりを緩やかにすれば、これらVTC113bとVEL112の制御とを、略同時に開始しても初期からトルクの増大を抑制することができる。そしてこのように、2つの制御の開示時期を近づけることにより、排気バルブ107の開閉タイミングと、吸気バルブ105の有効開度との相互関係で定まるそれぞれの最適値からのずれ量を減少することができ、燃焼性を良好に維持できる。また、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角制御中、あるいは遅角制御が終了してから短時間の間に再進角する状況となったときに、既に、吸気バルブ105の有効開度の増大制御が開始されているので、該進角制御に高応答で追随させることができ運転性を向上できる。
【0058】
また、上記のように燃料カット開始までのトルクの増大を抑制しつつ、燃料カット開始後は、吸気バルブ105の有効開度を増大して吸入空気流量を増大したことにより、全閉近傍にあるスロットル弁下流側の吸気負圧を、ブレーキアシスト装置の駆動源用などに十分な大きさまで増大させることができ、かつ、ポンピングロスの増大によって減速感(マイナストルクの増大)を高めることができる。
【0059】
さらに、燃料カット前のトルクの増大を抑制できることで、燃料カット開始時のトルク減少時におけるトルクの段差も減少でき、より、運転性を向上できる。
なお、本実施形態では、図23の実線で示すように、燃料カット開始直後に排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側に戻すことで、バルブオーバラップ量を減少させることにより、吸入空気流量が増大して吸気負圧をより増大させることができる。
【0060】
図24は、第2の実施形態の減速時制御のフローを示す。第1の実施形態との相違は、燃料カット条件成立後、燃料カット開始までの間の燃焼期間中において、点火時期の補正を行うことである。すなわち、一般的なエンジン機種では、バルブオーバラップ量を増大させて残留ガス量を増大しても、特に点火時期の補正なしの基本値(バルブオーバラップ量を増大させる制御を行わない場合のマップからの検索等で設定される値)で、失火防止とHC排出量の低減を両立でき、さらに、点火時期を遅角側に補正しても、これらを両立できる。そこで、本実施形態では、ステップS5'で失火防止のため公知の失火診断ファクターを用いて失火限界を超えない範囲で失火限界に近いところまで遅角側に補正する。
【0061】
かかる点火時期の遅角補正により、失火を防止しつつ吸気負圧を最大限高められると同時に、エンジントルクを減少させてエンジンブレーキ作用が強化されて強い減速感を得ることができる。
ただし、エンジン機種等によって、バルブオーバラップ量を増大させて残留ガス量を増大させた結果、燃焼性が低下し、失火の発生やHC排出量の増大が懸念される場合には、逆に、点火時期を進角側に補正して、失火防止とHC排出量の低減を両立させる構成とすることもできる。
【0062】
図25は、図22、図24のフローチャートにおいて、VTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの遅角制御の解除を、燃料リカバー時に行う第3の実施形態を示す。
図25では、ステップS11で燃料リカバーと判定されたときに、ステップS12でVTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側への戻し制御を開始すると同時に、VEL112による吸気バルブ105の有効開度の増大制御を解除し、有効開度減少制御を開始する。
【0063】
すなわち、燃料リカバーに合わせてVEL112による吸気バルブ105の有効開度を減少側に戻し制御して吸入空気量を減少し、該吸入空気量に見合ってリカバー燃料量を小さく設定することにより、燃料リカバー時のトルク段差を抑制することができる。一方、前記吸気バルブ105の有効開度を減少する制御に合わせてVTC113bによる排気バルブ開閉タイミングを進角させる制御を行うことにより、燃料リカバー後の安定した燃焼性を確保することができる。
【0064】
また、該吸気バルブ105の有効開度を減少側に戻す制御を高応答で行い、短時間で完了させるほど、燃料リカバー時のトルク段差をより小さく抑制することができ、前記吸気バルブの制御に合わせてVTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの進角制御も同様に高応答で行い、短時間で完了させることで、燃料リカバー時の安定した燃焼性も確保することができる。
【0065】
本実施形態では、燃料カット中は、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角側に維持してバルブオーバラップ量を大きくしているので、第1の実施形態に比較して吸気負圧が小さく、マイナストルク(絶対値)が小さい。一方、燃料リカバーと同時に、吸気バルブ105の有効開度減少と、排気バルブ開閉タイミングの進角側への戻しとを、同時に一気に行う(短時間で完了させる)ことにより、燃料リカバー時に良好な燃焼性を確保しつつトルクの増大を最小限に留められる。したがって、燃料リカバー時のトルク段差をより小さく抑制することができる。
【0066】
図26は、図22、図24のフローチャートにおいて、VTC113bによる排気バルブ開閉タイミングの遅角制御の解除を、燃料リカバー後に吸気負圧要求が解除されたとき(アイドル状態)に行う第4の実施形態を示す。
図26では、ステップS21で燃料リカバー後の吸気負圧要求が解除されるアイドル状態(車速略0でニュートラル状態)と判定されたときに、ステップS22でVTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングの遅角制御を解除し、進角側への戻し制御を開始すると同時に、VEL112による吸気バルブ105の有効開度の増大制御を解除し、有効開度減少制御を開始する。
【0067】
この場合は、燃料リカバー後、アイドル状態に戻るまでの間は、運転状態に基づいてマップからの検索等によってVEL112より吸気バルブ105の有効開度を徐々に減少させる一方、該有効開度の減少速度に合わせて、VTC113bによる排気バルブ107の開閉タイミングも徐々に進角側へ戻されるようにする。
本実施形態では、燃料リカバー後もアイドル状態に戻るまでの吸気負圧の要求がある間は、吸気バルブ105の有効開度を大きく、かつ、排気バルブ107の開閉タイミングを遅角側に維持することで、燃料カット開始前と同様、燃焼圧の増大を抑制して燃料リカバー後のトルクの増大を抑制しつつ、吸入空気流量の増大によってスロットル弁下流の吸気負圧を大きく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】VEL(Variable valve Event and Lift)機構を示す断面図(図3のA−A断面図)。
【図3】上記VEL機構の側面図。
【図4】上記VEL機構の平面図。
【図5】上記VEL機構に使用される偏心カムを示す斜視図。
【図6】上記VEL機構の低リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図7】上記VEL機構の高リフト時の作用を示す断面図(図3のB−B断面図)。
【図8】上記VEL機構における揺動カムの基端面とカム面に対応したバルブリフト特性図。
【図9】上記VEL機構のバルブタイミングとバルブリフトの特性図。
【図10】上記VEL機構における制御軸の回転駆動機構を示す斜視図。
【図11】VTC(Variable valve Timing Control)機構を示す断面図。
【図12】図11のA−A線に沿う断面図。
【図13】図11のB−B線に沿う断面図。
【図14】上記VTC機構の作動状態を示す図12と同様の断面図。
【図15】ヒステリシス材の磁束密度−磁界特性を示すグラフ。
【図16】図13の部分拡大断面図。
【図17】図16の部品を直線状に展開した模式図であり、初期状態(a)とヒステリシスリングが回転したとき(b)の磁束の流れを示す図。
【図18】クランク角センサ及び第1カムセンサの出力信号を示すタイミングチャート。
【図19】第2カムセンサの構成を示す図。
【図20】ギャップとギャップセンサ出力との相関を示す線図。
【図21】カムシャフトの角度位置とギャップセンサ出力との相関を示す線図。
【図22】第1の実施形態に係る減速時制御を示すフローチャート。
【図23】第1の実施形態に係る減速時制御における各種状態量の変化の様子を示すタイムチャート。
【図24】第2の実施形態に係る減速時制御を示すフローチャート。
【図25】第3の実施形態に係る減速時制御の要部を示すフローチャート。
【図26】第3の実施形態に係る減速時制御の要部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0069】
13…カムシャフト、16…制御軸、101…内燃機関、104…電子制御スロットル、105…吸気バルブ、112…VEL機構(可変動弁機構)、113…VTC機構(可変バルブタイミング機構)、114…エンジンコントロールユニット(ECU)、117…クランク角センサ、120…クランクシャフト、121…DCサーボモータ、127…角度センサ、132…第1カムセンサ、133…第2カムセンサ、133b…ギャップセンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気バルブの有効開度を可変な第1可変動弁機構と、排気バルブの開閉タイミングを可変な第2可変動弁機構と、を備えた内燃機関であって、
燃料カットを伴う所定の減速時に、前記第1可変動弁機構を駆動して吸気バルブの有効開度を増大して、吸気スロットル弁下流の吸気負圧を増大する一方、
前記燃料カットの実行前に、前記第2可変動弁機構を駆動して排気バルブの開閉タイミングを遅角させ、吸気バルブとのバルブオーバラップ量を増大する制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の減速時制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記燃料カットの実行条件成立と同時に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量を増大する制御を開始し、その後、第1可変動弁機構を駆動して吸気バルブの有効開度を増大する制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記燃料カット実行前に第1可変動弁機構により吸気バルブの有効開度が増大され、かつ、第2可変動弁機構によりバルブオーバラップ量が増大されているときは、点火時期を失火の抑制を確保しつつ補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した以降に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を解除することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した直後に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した後、燃料リカバー時に前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御と、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御と、を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記吸気スロットル弁下流の吸気負圧を増大する要求が解除されたときに、前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御と、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御と、を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御、または、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を、前記解除後、それぞれの制御開始時の目標値または現時点の目標値へのフィードバック制御に切り換えることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項1】
吸気バルブの有効開度を可変な第1可変動弁機構と、排気バルブの開閉タイミングを可変な第2可変動弁機構と、を備えた内燃機関であって、
燃料カットを伴う所定の減速時に、前記第1可変動弁機構を駆動して吸気バルブの有効開度を増大して、吸気スロットル弁下流の吸気負圧を増大する一方、
前記燃料カットの実行前に、前記第2可変動弁機構を駆動して排気バルブの開閉タイミングを遅角させ、吸気バルブとのバルブオーバラップ量を増大する制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の減速時制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記燃料カットの実行条件成立と同時に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量を増大する制御を開始し、その後、第1可変動弁機構を駆動して吸気バルブの有効開度を増大する制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記燃料カット実行前に第1可変動弁機構により吸気バルブの有効開度が増大され、かつ、第2可変動弁機構によりバルブオーバラップ量が増大されているときは、点火時期を失火の抑制を確保しつつ補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した以降に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を解除することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した直後に、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記燃料カットを実行した後、燃料リカバー時に前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御と、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御と、を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記吸気スロットル弁下流の吸気負圧を増大する要求が解除されたときに、前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御と、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御と、を解除することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1可変動弁機構による吸気バルブの有効開度増大制御、または、第2可変動弁機構によるバルブオーバラップ量の増大制御を、前記解除後、それぞれの制御開始時の目標値または現時点の目標値へのフィードバック制御に切り換えることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関の減速時制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−53711(P2010−53711A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216754(P2008−216754)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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