説明

内燃機関制御装置

【課題】自動停止条件成立から内燃機関が完全に停止するまでの期間の高圧燃料ポンプの燃料吐出量を所定値以下に制限することにより、停止に向かう内燃機関にとっての負荷外乱の発生を抑制し、ピストンを適正位置で停止させる確率を高める内燃機関制御装置を得る。
【解決手段】機械式の高圧燃料ポンプと、高圧燃料ポンプから畜圧室に供給される燃料吐出量を調整する電磁式の流量制御弁10と、流量制御弁を制御するECU60と、畜圧室内の燃料を内燃機関の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備えた内燃機関制御装置において、ECU60は、内燃機関の停止条件の成立後に、高圧燃料ポンプの燃料吐出量を所定量QLMT以下に制限する吐出量制限手段632を有し、吐出量制限手段632による燃料吐出量の制限実行条件は、内燃機関の停止条件の成立後から内燃機関が完全に停止するまでの所定期間を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関によって駆動される高圧燃料ポンプで加圧された燃料を燃焼室内に直接噴射する筒内噴射式の内燃機関制御装置に関し、特に、内燃機関の運転中に自動停止条件が成立したときには、ピストンが所定位置で停止するようにピストン停止位置を制御しながら内燃機関を自動的に停止させ、自動的に停止している間に自動始動条件が成立したときには、所定気筒で燃焼を行わせて自動的に始動させる内燃機関制御装置に適用される高圧燃料ポンプの制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費低減やCO2排出量の抑制を目的として、アイドリング時に自動的に内燃機関を一旦停止させ、その後に発進操作などの再始動条件が成立したときに自動的に再始動させる、いわゆるアイドルストップ機能を備えた内燃機関制御装置が開発されている。
アイドルストップにおける再始動においては、発進操作に応じて即座に始動させることが要求されるので、スタータ(始動用モータ)によって再始動を行うことは、始動完了までの時間がかかり過ぎることから、アイドルストップ適用時の始動方法としては好ましくない。
【0003】
そこで、スタータを用いることなく、停止状態にある内燃機関の特定気筒内に燃料を直接噴射して着火および燃焼を行わせ、その燃焼エネルギーで内燃機関を即時的に始動させるという方法が提案されている。
しかしながら、このように、スタータを用いることなく内燃機関を再始動させる方法においては、ピストン停止位置が適正でない場合(たとえば、上死点または下死点に極めて近い位置にピストンが停止している場合)には、再始動時に燃焼を行わせる気筒内の空気量が少な過ぎて、始動に必要な燃焼エネルギーが充分に得られなかったり、着火後の燃焼エネルギーをピストンに作用させる行程が短過ぎたりして、正常に始動できなくなる可能性がある。
【0004】
また、再始動時に燃焼を行わせる気筒内は、ある程度の圧縮圧力を維持した状態となっていることから、当該気筒内に燃料を噴射供給するためには、燃料噴射弁からの噴射燃料の燃圧が当該気筒の圧縮圧力以上の状態に維持されていることも必要である。
すなわち、スタータを用いることなく内燃機関を始動させるためには、自動停止するときに、再始動にとって適正な位置でピストンを停止させることと、停止した気筒の圧縮圧に打ち勝つ噴射燃料圧を確保しておくことが最も重要となる。
【0005】
そのため、自動停止条件が成立してから内燃機関が停止に向かう間の所定期間に、吸入空気量を増加することにより、ピストンを適正な位置で停止させるという停止位置制御機能を備えた内燃機関制御装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の従来装置によれば、内燃機関が停止に向かうときに、吸入空気量を増大させることにより、停止時に圧縮行程となる気筒および膨張行程となる気筒において、ピストンが上死点に近づいたときにピストンを押し戻そうとする反力(ピストンが上死点方向に移動するときの抵抗)を増加させ、高い確率でピストンを行程中間の所定範囲内に停止させることができる。
【0006】
また、あらかじめ、内燃機関の各気筒の回転位置と、高圧燃料ポンプの燃料吐出動作により内燃機関が受ける負荷の発生位置とが、所定関係となるように構成しておき、内燃機関が停止する直前に高圧燃料ポンプを強制駆動することにより、燃料を吐出させるという停止位置制御機能を備えた内燃機関制御装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の従来装置によれば、ピストンが上死点にあるときに高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最大となるように、かつピストンが上死点と下死点の中間にあるときに高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となるように構成したうえで、内燃機関の停止直前時には高圧燃料ポンプを強制駆動して燃料を吐出させることにより、停止後の噴射燃料圧を確保することができる。また、停止に向かう内燃機関に負荷をかけ、高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小になる方向(すなわち、ピストンを上死点と下死点のほぼ中間に移動させる方向)への作用を増大させ、より高い確率でピストンを行程中間の所定範囲内に停止させることができる。
【0007】
なお、上記特許文献1、2において、ピストンの適正な位置停止とは、一般的には上死点後90°CA(クランク角)前後(すなわち、上死点と下死点の中間付近)であり、この位置でピストンを停止させることができれば、適度に存在する筒内空気と、再始動時に供給される燃料とにより、良好な燃焼が得られ、再始動に充分なトルクを発生させ易いと言われている。
【0008】
ところで、特許文献1に記載の従来装置においては、ピストンを適正な位置で停止させるために、内燃機関が停止に向かう所定期間に吸入空気量を増加することにより、ピストンを適正な位置で停止させようとしているが、内燃機関が停止するまでの間に高圧燃料ポンプから燃料が吐出された場合の、ピストン停止位置への影響に関しては何ら触れられていない。
【0009】
通常、高圧燃料ポンプの燃料吐出量は、畜圧室内の燃圧を目標燃圧に一致させるためにフィードバック制御されているので、内燃機関が停止するまでは、畜圧室内の燃圧と目標燃圧との偏差に応じてフィードバック制御が行われる。
すなわち、ピストンを適正位置で停止させるために停止位置の制御を実行している最中や、内燃機関の停止直前であっても畜圧室内の燃圧が目標燃圧よりも低い状態になった場合には、燃圧の検出値と目標燃圧との偏差に応じた燃料が吐出されるので、停止に向かう内燃機関に対して負荷変化をもたらすことになる。
【0010】
畜圧室内の燃圧と目標燃圧との偏差は、その時々によって異なることから、発生する負荷変化の程度も不定となることが予想され、場合によっては、高圧燃料ポンプの燃料吐出による負荷変化が外乱となって、ピストン停止位置をばらつかせることになる。
すなわち、自動停止条件成立時に自動停止し、自動停止後の自動始動条件成立時に自動始動する筒内噴射式の内燃機関制御装置において、自動停止条件成立から内燃機関が停止するまでの間に、畜圧室内の燃圧を目標燃圧に復帰させるために高圧燃料ポンプから燃料吐出する場合、燃料吐出動作(内燃機関に対する負荷変化)が外乱となって、ピストンを適正位置で停止することができなくなり、最悪の場合には、ピストン停止位置が適正範囲から外れて再始動に必要な燃焼エネルギーが得られず、所望の自動始動が達成できなくなる可能性があった。
【0011】
以下、図8を参照しながら、内燃機関が停止するまでの上記負荷変化による、ピストン停止位置への影響について補足説明する。
図8は従来の自動停止制御装置による動作を示すタイミングチャートであり、上段から順番に、自動停止条件成立フラグFS、停止位置制御(吸入空気量制御)実行フラグFA、燃料カット実行フラグFCの各状態が、それぞれ実線で示されている。
各フラグFS、FA、FCの状態において、HI(ハイ)側は「1」、LO(ロー)側は「0」を示している。
【0012】
また、図8において、各フラグFS、FA、FCの下段には、畜圧室内の燃圧Pの挙動(実線)と、目標燃圧PO(1点鎖線)とが示されている。
また、燃圧Pの下側に記された燃料噴射INJ(塗つぶしの黒四角)は、燃料噴射弁の駆動時期および噴射量を、その位置および大きさにより模式的に示している。
同様に、燃料噴射INJの下側に記された燃料吐出PMP(白抜きの四角)は、高圧燃料ポンプの駆動時期および吐出量を、その位置および大きさにより模式的に示している。
さらに、図8内の最下段には、実際の機関回転速度NEの挙動(実線)と、ピストンが適正な位置に停止したときの理想的な機関回転速度NEiの挙動(2点鎖線)と、が示されている。
【0013】
次に、図8内の各フラグおよび各パラメータの挙動について、順次説明する。
まず、時刻T1までの通常運転期間において、内燃機関は、アイドリングのような運転状態にあり、自動停止に関係する3つのフラグFS、FA、FCは、すべて「0」にリセットされている。
また、通常運転期間において、燃圧PFは、燃料噴射弁による燃料噴射INJにより目標燃圧POから低下し、これに続く高圧燃料ポンプの燃料吐出PMPにより再び目標燃圧POに復帰することを繰り返す。
【0014】
次に、時刻T1において、内燃機関がアイドリング運転中であることが検知されると、自動停止条件成立フラグFSが「1」にセットされ、自動停止のための一連の制御が開始される。
FS=1となった後、時刻T2において、燃料カットを開始するのに適した機関回転速度であることが判定されると、燃料カットフラグFCが「1」にセットされ、同時に、停止位置制御実行フラグFAも「1」にセットされる。
【0015】
以下、FS=1となって燃料カットが開始されてから、実際に内燃機関が停止するまでの間は、燃料の噴射が禁止され続ける。
また、FA=1となっている停止位置制御期間(時刻T2から内燃機関が停止する直前までの所定期間)においては、ピストン停止位置を制御するために、吸入空気量の増量制御が実行される。
以下、吸入空気量の増量制御が終了し、FA=1から再びFA=0になった時点から、内燃機関が完全に停止するまでの期間を停止直前期間と称する。
【0016】
ところで、時刻T2において、FC=1となり燃料カットが開始されると、内燃機関はトルクを失って停止に向かうが、このとき、停止位置制御が開始され、時刻T2以降に、高圧燃料ポンプから燃料が吐出されない場合には、停止しようとする内燃機関に対して負荷変化は発生しないので、内燃機関は、2点鎖線で示した理想的な機関回転速度NEiの軌跡をたどって、時刻T5で停止する。この場合、ピストンは適正な位置で停止する。
【0017】
しかし、実際には、時刻T1から時刻T2までの期間に噴射された最後の噴射燃料により、燃圧PFが低下しているので、燃圧PFを目標燃圧POに復帰させるための燃料吐出PMPが時刻T2から時刻T3までの期間にわたって実行される。この燃料吐出PMPにより、時刻T3において、燃圧PFは目標燃圧POに復帰する。
【0018】
しかしながら、停止位置制御期間中に実行される燃料吐出PMPは、停止しようとする内燃機関に対して負荷変化となるので、内燃機関は、実線で示した機関回転速度NEの軌跡をたどりながら、時刻T4bで停止する。
このとき、時刻T4bで停止したときと時刻T5で停止したときのとの時間差Xb(=T5−T4b)が大きい場合には、ピストンが適正な停止位置で停止する確率を低下させてしまい、最悪の場合、再始動に必要な燃焼エネルギーが得られず、良好な自動始動を実現することができなくなる。
【0019】
図8においては、最後に噴射された燃料によって燃圧PFが低下したときの動作例を示しているが、たとえば、停止中の燃圧を高めに維持させることを目的として、FS=1となった以降に目標燃圧POを高い値に変更する場合や、何らかの原因により停止直前期間で燃圧PFが低下してしまった場合にも、高圧燃料ポンプの燃料吐出動作によって外乱が発生し、同様の課題が生じるものと予想される。
【0020】
一方、特許文献2に記載の従来装置においては、停止直前期間中に高圧燃料ポンプから燃料を吐出させて畜圧室内の燃圧を目標燃圧に制御しつつ、高圧燃料ポンプの燃料吐出による負荷を発生させることによって、停止直前の内燃機関に負荷をかけ、ピストンを適正な位置で停止させようとしているが、高圧燃料ポンプの燃料吐出による負荷量が前述のフィードバック制御に依存して異なることを考慮していない。
【0021】
つまり、その時々で畜圧室内の燃圧と目標燃圧との偏差が異なれば、高圧燃料ポンプの燃料吐出量が異なる(すなわち、内燃機関にかかる負荷量もその時々で異なる)ことを考慮していないので、停止直前の内燃機関にかかる負荷が不定量となって、ピストン停止位置をばらつかせ、その結果、最悪の場合には、ピストン停止位置が適正範囲から外れて、再始動に必要な燃焼エネルギーが得られず、所望の自動始動が達成できなくなる可能性がある。
【0022】
さらに、特許文献2に記載の技術は、「内燃機関の各気筒の回転位置と、高圧燃料ポンプの燃料吐出動作により発生する内燃機関の負荷の発生位置とが、所定関係となるように構成」されていることを前提としている。
以下、4気筒内燃機関の制御行程を示す図9の説明図を参照しながら、特許文献2における課題について補足説明する。
【0023】
図9において、上段には、4気筒内燃機関(気筒数M=4個)の各気筒の回転位置を示すピストン行程が示されており、各気筒のピストン行程は「吸気→圧縮→膨張(爆発)→排気」の順番で上下運動を繰り返す。
また、たとえば各気筒が吸気行程であるときに、各気筒の燃料噴射弁から燃料が「#1→#3→#4→#2気筒」の順番でシーケンシャル噴射されるようになっている。
【0024】
また、図9の下段には、上記各気筒の燃料噴射行程が一巡する間における高圧燃料ポンプの2つの行程a、bの構成例が示されている。
ポンプ行程aは、特許文献2の技術に該当しない「上記各気筒の燃料噴射行程が一巡する間にN(=3)回の燃料吐出行程1a〜3aを有する高圧燃料ポンプの構成」を示し、ポンプ行程bは、特許文献2の技術に該当する「上記各気筒の燃料噴射行程が一巡する間にN(=4)回の燃料吐出行程1b〜4bを有する高圧燃料ポンプの構成」を示している。
【0025】
ポンプ行程b(特許文献2)のように「M=4個ある各気筒の燃料噴射行程が一巡する間にN=4回の吐出行程となる構成」の内燃機関においては、各気筒のピストン位置がトップまたはボトムとなる位置(破線参照)に、すべての燃料吐出行程1b〜4bを均等に配置することができる。
したがって、停止直前に高圧燃料ポンプから燃料を吐出させたときに、高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となる点(上死点と下死点とのほぼ中間)に移動させる方向の作用が各燃料吐出行程で同じ傾向となり、特許文献2に記載のとおりの効果が得られる。
【0026】
しかしながら、ポンプ行程aのように「M=4個ある各気筒の燃料噴射行程が一巡する間にN=3回の吐出行程となる構成」の内燃機関においては、各気筒のピストン位置がトップまたはボトムとなる位置(破線参照)にすべての燃料吐出行程1a〜3aを均等に配置することができなくなる。
したがって、停止直前に高圧燃料ポンプから燃料を吐出させたときに、ピストンに作用する力が各燃料吐出行程で同じ傾向とならず、ピストン停止位置が最適位置からずれてしまう可能性が高くなる。
【0027】
すなわち、ポンプ行程aの場合、燃料吐出行程1aについては、ピストン位置がトップまたはボトムとなる位置(破線参照)に配置できているが、燃料吐出行程2a、3aにおいては、全く異なるピストン位置に配置せざるを得なくなる。
このように、「M気筒内燃機関(Mは、「3」以上の自然数、たとえば「4」)において、各気筒への燃料噴射行程が一巡する間にN回(Nは、「N<M」を満たす「2」以上の自然数、たとえば「2」または「3」)の燃料吐出行程となる構成」の場合には、既に製造されている内燃機関に対して特許文献2に記載の技術を適用しようとすると、構成の変更が必要となり、大幅なコストアップを招く可能性がある。
【0028】
【特許文献1】特開2004−124754号公報
【特許文献2】特開2004−301047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従来の内燃機関制御装置では、特許文献1の場合には、自動停止制御時において、内燃機関が停止するまでの間に高圧燃料ポンプから燃料が吐出された場合のピストン停止位置への影響を考慮していないので、高圧燃料ポンプの燃料吐出による負荷変化が外乱となってピストン停止位置をばらつかせてしまい、最悪の場合にはピストン停止位置が適正範囲から外れて再始動に必要な燃焼エネルギーが得られず、所望の自動始動が達成できなくなるという課題があった。
【0030】
また、特許文献2の場合には、高圧燃料ポンプの燃料吐出による負荷量がフィードバック制御に依存して異なることが考慮されていないので、停止直前の内燃機関にかかる負荷が不定量となってピストン停止位置をばらつかせ、ピストン停止位置が適正範囲から外れて再始動に必要な燃焼エネルギーが得られず、所望の自動始動が達成できなくなるという課題があった。
さらに、特許文献2に記載の技術を「M気筒内燃機関(Mは、「3」以上の自然数)において、各気筒への燃料噴射行程が一巡する間にN回(Nは、「N<M」となる「2」以上の自然数)の燃料吐出行程となる構成」で製造されている内燃機関に適用しようとすると、構成の変更が必要となり、大幅なコストアップを招くという課題があった。
【0031】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、内燃機関制御装置に適用される高圧燃料ポンプの制御を改良することにより、大幅なコストアップを招くことなく、自動停止条件成立の高圧燃料ポンプによる燃料吐出によって発生する内燃機関にとっての負荷の変化を抑制し、ピストン停止位置がばらつくことを低減してピストンが適正位置で停止する確率を高め、良好な自動始動を得ることのできる内燃機関制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この発明による内燃機関制御装置は、内燃機関の運転状態を検出する各種センサと、加圧された燃料を蓄積する畜圧室と、畜圧室内の燃圧を検出する燃圧センサと、内燃機関により駆動されて加圧した燃料を畜圧室に吐出する機械式の高圧燃料ポンプと、高圧燃料ポンプから畜圧室に供給される燃料吐出量を調整する電磁式の流量制御弁と、高圧燃料ポンプの燃料吐出量が、畜圧室内の燃圧を内燃機関の運転状態に応じてあらかじめ設定されている目標燃圧と一致させるための必要量となるように、流量制御弁を制御する燃圧制御部と、畜圧室内の燃料を内燃機関の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁と、を備えた内燃機関制御装置において、燃圧制御部は、内燃機関の停止条件の成立後に、高圧燃料ポンプの燃料吐出量を所定量以下に制限する吐出量制限手段を有し、吐出量制限手段による燃料吐出量の制限実行条件は、内燃機関の停止条件の成立後から内燃機関が完全に停止するまでの所定期間を含むものである。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、自動停止条件の成立以降の所定時期から内燃機関が完全に停止するまでの間において、高圧燃料ポンプの燃料吐出量を所定量以下に制限することにより、停止に向かう内燃機関に対する負荷外乱の発生を抑制し、ピストンを適正位置で停止させる確率を高め、良好に自動始動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1に係る自動停止制御機能を有する内燃機関制御装置について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る内燃機関制御装置を概略的に示すブロック構成図であり、特に高圧燃料ポンプ制御部の関連構成を示している。
また、図2は図1内のECU60の具体的な構成を示す機能ブロック図である。
なお、図1においては、内燃機関40の気筒数M=4個とし、内燃機関40のクランク軸(図示せず)が2回転する間(すなわち、カム軸24が1回転する間)の高圧燃料ポンプ20の燃料吐出行程N=3回とした場合の構成例を示している。
【0035】
図1において、内燃機関40の制御装置は、燃料供給系統として、ソレノイド12を有する電磁式かつ常開式の流量制御弁10と、シリンダ21、プランジャ22および加圧室23を有する機械式の高圧燃料ポンプ20と、3箇所の突起部を有するポンプカム25を有するカム軸24と、燃料が充填された燃料タンク30と、低圧燃料ポンプ31および低圧レギュレータ32を介して燃料タンク30に接続された低圧通路33と、高圧燃料ポンプ20の加圧室23に接続された高圧通路(吐出通路)34と、吐出弁(逆止弁)35を介して高圧通路34に接続された蓄圧室36と、リリーフ弁37を介して蓄圧室36と燃料タンク30との間を接続するリリーフ通路38と、蓄圧室36内に蓄積された燃料を内燃機関40の各燃焼室(M=4個)に直接噴射供給する燃料噴射弁39とを備えている。
【0036】
また、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を制御するための制御系統として、電磁弁からなる流量制御弁10のソレノイド12の励磁(流量制御弁10の閉弁)駆動タイミングを制御するECU60を備えている。
ECU60には、燃圧センサ61、イグニションスイッチ62、カム角センサ63、クランク角センサ64、アクセルポジションセンサ65などの各種センサからの検出信号が内燃機関40の運転情報として入力されている。
【0037】
ECU60は、図2に示すように、目標燃圧設定手段601と、フィードバック量演算手段602と、流量制御弁制御手段603と、内燃機関40の運転そのものを制御する内燃機関制御手段604と、内燃機関40の自動停止自動始動を制御するアイドルストップ制御手段605とを備えている。
【0038】
また、ECU60には、各手段601〜605の機能を実現するために必要な他の各種センサやアクチェータ群(図示せず)も接続されている。
ECU60内の流量制御弁制御手段603は、燃圧制御部として機能し、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量が、畜圧室36内の燃圧PFを内燃機関40の運転状態に応じてあらかじめ設定されている目標燃圧POと一致させるための必要量となるように、流量制御弁10を制御する。
【0039】
図1に戻り、低圧燃料ポンプ31は、燃料タンク30内の燃料を汲み上げて低圧通路33に吐出する。
高圧燃料ポンプ20は、ポンプカム25を介して内燃機関40により駆動され、低圧燃料ポンプ31から吐出された燃料を加圧室23内に吸入し、加圧した燃料を畜圧室36に吐出する。
【0040】
低圧通路33は、流量制御弁10を介して高圧燃料ポンプ20内の加圧室23の上流側に接続されている。すなわち、流量制御弁10は、低圧通路33と加圧室23とを接続する燃料通路中に配置され、高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に供給される燃料吐出量を調整する。
吐出弁35は、加圧室23と畜圧室36とを接続する高圧通路34中に配置されている。
燃料噴射弁39は、畜圧室36内の高圧燃料を、内燃機関40の気筒(M=4個)の各燃焼室内に直接噴射して供給する。
燃圧センサ61は、畜圧室36内の燃圧PFを検出してECU60に出力する。
【0041】
燃料供給系統の低圧通路33側において、低圧燃料ポンプ31から吐出された燃料は、低圧レギュレータ32により所定の低圧値に調整されており、プランジャ22がシリンダ21内で下動する際に、流量制御弁10を通して加圧室23内に導入される。
高圧燃料ポンプ20内のプランジャ22は、内燃機関40の回転に同期してシリンダ21内で往復動作する。これにより、高圧燃料ポンプ20は、燃料吸入行程(プランジャ22の下動期間中)においては低圧通路33から流量制御弁10を介して加圧室23内に燃料を吸入し、燃料吐出行程(プランジャ22の上動するの期間中)においては流量制御弁10の閉弁駆動中に加圧室23内の燃料を高圧に加圧して吐出弁35を介して畜圧室36に燃料を供給する。
この動作機構から明らかなように、高圧燃料ポンプ20が燃料を吐出する際には、加圧室23内の燃料を加圧することになるため、加圧動作の程度に応じた負荷が内燃機関40に加わることになる。
【0042】
加圧室23は、シリンダ21の内周壁面とプランジャ22の上端面とにより区画形成されており、プランジャ22の下端は、内燃機関40のカム軸24に設けられたポンプカム25に圧接され、カム軸24の回転に連動してポンプカム25が回転することにより、プランジャ22がシリンダ21内を往復動作して、加圧室23内の容積が拡大/縮小変化するようになっている。
なお、図1の構成においては、ポンプカム25には3つの突起部があり、カム軸24が1回転する間に3回の燃料吐出行程(N=3回)を得る。
【0043】
加圧室23の下流側に接続された高圧通路34は、加圧室23から畜圧室36に向かう燃料の流通のみを許す逆止弁からなる吐出弁35を介して、畜圧室36に接続されている。
畜圧室36は、加圧室23から吐出された高圧の燃料を蓄積保持するとともに、内燃機関40の各燃料噴射弁39に対して共通に接続されて、蓄積した高圧の燃料を燃料噴射弁39に分配する。
畜圧室36に接続されたリリーフ弁37は、所定燃圧(開弁圧設定値)以上で開弁する常閉弁からなり、畜圧室36内の燃圧がリリーフ弁37の開弁圧設定値以上に上昇しようとしたときに開弁する。これにより、開弁圧設定値以上に上昇しようとした畜圧室36内の燃料は、リリーフ通路38を通して燃料タンク30に戻され、畜圧室36内の燃圧が過大になることはない。
【0044】
低圧燃料ポンプ31と加圧室23とを接続する低圧通路33に設けられた流量制御弁10は、ECU60の制御下でソレノイド12が励磁されると流量制御弁10が閉弁駆動される。プランジャ22がシリンダ21内で上動(加圧室23の容積が縮小)する際、流量制御弁10が開弁(ソレノイド12の消磁)制御されている間は、加圧室23に吸入されている燃料が、加圧室23から流量制御弁10を通じて低圧通路33に戻されるので、畜圧室36に高圧燃料が供給されることはない。
【0045】
一方、プランジャ22がシリンダ21内で上動中の所定タイミングで流量制御弁10を閉弁した後は、加圧室23で加圧された燃料が吐出通路34に吐出され、吐出弁35を通して畜圧室36に供給される。
【0046】
ECU60は、燃圧センサ61により検出される畜圧室36内の燃圧PF、カム角センサ63により検出される内燃機関40の回転位相角CP、クランク角センサ64により検出される内燃機関40の機関回転速度NE、アクセルポジションセンサ65により検出されるアクセルペダル(図示せず)の踏込量APなどの各種運転状態を取り込む。
そして、ECU60は、取り込んだ各種運転状態を元に目標燃圧を決定し、畜圧室36内の燃圧PFが目標燃圧と一致するために必要な目標吐出量を演算し、この目標吐出量に応じて流量制御弁10の閉弁タイミングを制御して高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出される燃料量を制御する。
【0047】
次に、図2の機能ブロック図を参照しながら、この発明の実施の形態1における高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量制御を実現するための具体的な構成について説明する。
なお、図2内のECU60の関連要素10、12、61〜65については、前述(図1)と同一符号を付して詳述を省略する。
また、内燃機関40の運転状態そのものを制御する内燃機関制御手段604と、内燃機関40の自動停止および自動始動を制御するアイドルストップ制御手段605とについては、公知なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0048】
図2において、ECU60には、燃圧センサ61により検出される蓄圧室36内の燃圧PFと、イグニションスイッチ62により検出されるイグニション状態信号IGと、カム角センサ63により検出される内燃機関40の回転位相角CPと、クランク角センサ64により検出される内燃機関40の機関回転速度NEと、アクセルポジションセンサ65により検出されるアクセルペダルの踏込量APとが入力されている。
これにより、ECU60は、各種センサの検出情報に基づいて、流量制御弁10の閉弁タイミング(実際には、ソレノイド12の励磁タイミング)を制御する。
【0049】
また、ECU60内において、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出制御に寄与する目標燃圧設定手段601、フィードバック量演算手段602および流量制御弁制御手段603は、イグニションスイッチ62がオン状態であり、かつ内燃機関40が気筒識別を完了した運転状態にあることを条件として実行が許可され、イグニションスイッチ62がオフ状態になるか、内燃機関40がエンストすると、制御が禁止されるようにプログラミングされている。
【0050】
目標燃圧設定手段601は、クランク角センサ64により検出された内燃機関40の機関回転速度NEと、アクセルポジションセンサ65により検出されたアクセルペダルの踏込量APとに対応したマップデータに基づいて、目標燃圧POを決定する。
フィードバック量演算手段602は、目標圧力POと検出された燃圧PFとの圧力偏差ΔPFを算出する減算器621と、圧力偏差ΔPFを用いた比例演算部622および積分演算部623と、比例演算項QFBPおよび積分演算項QFBIを加算して燃料吐出フィードバック量QFBを算出する加算器624とを備えている。
【0051】
流量制御弁制御手段603は、燃料吐出フィードバック量QFBおよび燃料噴射量QINJを加算する加算器631と、加算器631の出力値(=QFB+QINJ)および所定量QLMTに基づいて目標燃料吐出量QOを出力する吐出量制限手段632と、回転速度NEおよび目標燃料吐出量QOを用いて駆動タイミングTDを設定するソレノイド駆動手段633とを備えている。
ソレノイド駆動手段633は、駆動タイミングマップを含む。
【0052】
加算器631は、通常時の目標吐出量演算手段として機能し、燃料吐出フィードバック量QFBと内燃機関制御手段604で求められた燃料噴射量QINJとを加算して、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を演算する。
吐出量制限手段632は、所定量QLMTに基づいて目標吐出量QOの制限値を求める制限値演算部634と、接点C1、C2を介して通常時の目標吐出量QOと制限値とを切り替えて出力する切替スイッチ635とを有する。
【0053】
制限値演算部634は、加算器631の出力値(目標吐出量QO=QFB+QINJ)と所定量QLMTとの最小値に基づく制限値(≦QLMT)を切替スイッチ635の接点C2に入力する。
【0054】
切替スイッチ635は、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を選択する接点C1と、自動停止制御用の制限された目標吐出量を選択する接点C2とを有する。
切替スイッチ635の接点C1には、加算器631の出力値(=QFB+QINJ)が入力され、切替スイッチ635の接点C2には、制限値演算部634の出力値(制限値)が入力される。
【0055】
また、切替スイッチ635には、内燃機関制御手段604からの燃料カット実行フラグFCと、アイドルストップ制限手段605からの自動停止条件成立フラグFSと、燃圧センサ61からの燃圧PFと、クランク角センサ64からの機関回転速度NEとが入力されている。
なお、図2には示されていないが、停止位置制御実行フラグFAは、停止位置制御の実行時において、ECU60内で生成される。
【0056】
これにより、切替スイッチ635は、各フラグFC、FSを含む入力パラメータに基づいて、通常時または制限時の目標吐出量QOを切り替えて出力する。
すなわち、通常時において、吐出量制限手段632の切替スイッチ635は、接点C1側に接続されており、加算器(目標吐出量演算手段)631で演算された通常時の目標吐出量QOがソレノイド駆動手段633に出力される。
【0057】
一方、アイドルストップ制御手段605が自動停止条件の成立を判定しているときには、アイドルストップ制御手段605から吐出量制限手段632に対して自動停止条件の成立(FS=1)が通知される。
したがって、吐出量制限手段632は、自動停止制御を実行するために、切替スイッチ635を接点C2側に切り替え、通常時の目標吐出量(=QFB+QINJ)から、所定量QLMT以下に制限した目標吐出量QOをソレノイド駆動手段633に出力する。
【0058】
なお、所定量QLMTをあらかじめ最小値(=0)に設定しておけば、自動停止制御を実行するために切替スイッチ635が接点C2側に切り替えられた時点で、制限された目標吐出量QO(=0)がソレノイド駆動手段633に出力される。
【0059】
ここで、フィードバック量演算手段602の具体的な演算処理について説明する。
フィードバック量演算手段602内において、減算器621は目標燃圧POと燃圧PFとの燃圧偏差△PF(=PO−PF)を演算し、比例演算部622は、燃圧偏差△PFに基づく比例積分演算を行い高圧燃料ポンプ20の燃料吐出フィードバック量QFBを演算する。
このとき、比例演算部622で算出される比例演算項QFBPは、燃圧偏差△PFに基づいて、以下の式(1)のように求められる。
【0060】
QFBP=△PF×KP ・・・(1)
【0061】
ただし、式(1)において、KPは比例係数である。
すなわち、比例演算項QFBPは、△PF≧0(燃圧偏差△PFの符号が「+(プラス)」)の場合には、燃圧偏差△PFに比例した正の値となり、逆に、△PF<0(燃圧偏差△PFの符号が「−(マイナス)」)の場合には、燃圧偏差△PFに比例した負の値となる。
【0062】
一方、フィードバック量演算手段602内の積分演算部623で算出される積分演算項QFBIは、たとえば、燃圧偏差△PFの符号(「+」または「−」)の向きに応じて、以下の式(2)または式(3)のいずれか一方の式が選択されて求められる。
【0063】
(△PF≧0の場合)
QFBI=QFBI前回値+KI・・・(2)
(△PF<0の場合)
QFBI=QFBI前回値−KI・・・(3)
【0064】
ただし、式(2)、式(3)において、KIは積分係数である。
すなわち、積分演算項QFBIは、燃圧偏差△PFの符号が「+」の場合には式(2)により積分係数KIだけ大きな値となり、反対に燃圧偏差△PFの符号が「−」の場合には式(3)により積分係数KIだけ小さな値となる。
最後に、加算器624は、比例演算項QFBPと積分演算項QFBIとの加算値を燃料吐出フィードバック量QFBとして算出する。
【0065】
以下、流量制御弁制御手段603内において、ソレノイド駆動手段633は、吐出量制限手段632を介した目標吐出量QOと、クランク角センサ64からの機関回転速度NEとに基づいて、流量制御弁10を所定タイミングで閉弁駆動するためのソレノイド12の励磁タイミングTDを設定し、ソレノイド12を駆動制御する。
【0066】
こうしてソレノイド12が励磁されると、流量制御弁10が所定タイミングで閉弁駆動されるので、通常時であれば、加算器(目標吐出量演算手段)631で求められた目標燃料吐出量QOが高圧燃料ポンプ20から畜圧室36内に吐出され、畜圧室36内の燃料が増加して、畜圧室36内の燃圧PFは目標燃圧POと一致する。
【0067】
一方、アイドルストップ制御手段605が自動停止条件の成立を判定している(自動停止条件成立フラグFSが「1」にセットされている)場合には、吐出量制限手段632内の制限値演算部634により所定量QLMT以下に制限された目標燃料吐出量QOが、切替スイッチ635を介してソレノイド駆動手段633に入力されるので、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量は、所定量QLMT以下の制限値に基づいて制御される。
なお、所定量QLMTが最小値(=0)に設定されていて、目標燃料吐出量QO=QLMT(=0)の場合には、ソレノイド12が励磁されることはなく、高圧燃料ポンプ20から燃料を吐出させなくする(すなわち、燃料吐出量=0とする)ことができる。
【0068】
次に、図3のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1によるECU60の制御動作について説明する。
図3において、ECU60は、まず、イグニションスイッチ62からのイグニション状態信号IGに基づき、イグニションスイッチ62がON状態であるか否かを判定し(ステップS101)、イグニションスイッチ62がOFF状態である(すなわち、No)と判定されれば、ソレノイド12の励磁を禁止して(ステップS111)、図3の処理ルーチンを抜け出る。この場合、ソレノイド12が励磁されないので、高圧燃料ポンプ20から燃料が吐出されることはない。
【0069】
一方、ステップS101において、イグニションスイッチ62がON状態である(すなわち、Yes)と判定されれば、続いて、クランク角センサ64からの機関回転速度NEに基づきエンスト状態か否かを判定し(ステップS102)、エンスト状態である(すなわち、Yes)と判定されれば、ソレノイド12の励磁を禁止して(ステップS111)、図3の処理ルーチンを抜け出る。
【0070】
一方、ステップS102において、エンスト状態でない(すなわち、No)と判定されれば、続いて、カム角センサ63からの回転位相角CPに基づき、内燃機関42の気筒識別を完了しているか否かを判定し(ステップS103)、気筒識別を完了していない(すなわち、No)と判定されれば、ソレノイド12の励磁を禁止して(ステップS111)、図3の処理ルーチンを抜け出る。
【0071】
一方、ステップS103において、気筒識別を完了している(すなわち、Yes)と判定されれば、目標燃圧設定手段601は、クランク角センサ64からの機関回転速度NEとアクセルポジションセンサ65からのアクセルペダル踏込量APとに基づいて、目標燃圧POを決定する(ステップS104)。
【0072】
続いて、フィードバック量演算手段602内の減算器621は、目標燃圧POと燃圧センサ61からの燃圧PFとの燃圧偏差△PF(=PO−PF)を演算する(ステップS105)。
また、フィードバック量演算手段602内の比例演算部622は、燃圧偏差△PFに基づく前述の式(1)から比例演算項QFBPを算出し、積分演算部623は、燃圧偏差△PFに基づく前述の式(2)、(3)から積分演算項QFBIを算出し、加算器624は、比例演算項QFBPと積分演算項QFBIとを加算して、燃料吐出フィードバック量QFB(=QFBP+QFBI)を演算する(ステップS106)。
【0073】
次に、流量制御弁制御手段603内の吐出量制限手段632は、自動停止条件成立フラグFSが「1」にセットされているか否かを判定し(ステップS107)、自動停止条件が成立していて、FS=1(すなわち、Yes)と判定されれば、制限値演算部634からの出力値を目標吐出量QOとして選択し、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標吐出量QOを演算する(ステップS112)。
このとき、制限値演算部634において、自動停止制御用の目標吐出量QOは、以下の式(4)のように、加算器624の出力値(=QFB+QINJ)と所定量QLMTとのうちの最小値が設定される。
【0074】
QO=Min.{(QFB+QINJ),QLMT} ・・・(4)
【0075】
なお、前述のように、所定量QLMT=0に設定されている場合は、式(4)に基づく目標吐出量QOは、「0」に制限(固定)される。
一方、ステップS107において、自動停止条件が非成立であって、FS=0(すなわち、No)と判定されれば、吐出量制限手段632は、加算器624からの出力値を目標吐出量QOとして選択し、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を演算する(ステップS108)。
【0076】
上記目標吐出量QOの演算処理(ステップS112、S108)に続いて、流量制御弁制御手段603内のソレノイド駆動手段633は、いずれかで演算された目標燃料吐出量QOと、クランク角センサ64からの機関回転速度NEとに基づき、流量制御弁10を所定タイミングで閉弁駆動するために、ソレノイド12の励磁タイミングTDを設定し(ステップS109)、励磁タイミングTDでソレノイド12の励磁を実行して(ステップS110)、図3の処理ルーチンを抜け出る。
【0077】
この結果、ステップS107において、FS=1(自動停止条件の成立)が判定された場合には、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標燃料吐出量QO(ステップS112で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、停止位置制御への影響が生じない程度に制限された吐出量で畜圧室36内の燃料が増加する。
一方、ステップS107において、FS=0(自動停止条件の非成立)が判定された場合には、最大値が制限されていない通常時の目標燃料吐出量QO(ステップS108で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、畜圧室36内の燃料が必要量だけ増加して、畜圧室36内の燃圧PFが目標燃圧POに一致するように制御される。
【0078】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、内燃機関40の運転中に自動停止条件が成立すると、内燃機関40のピストンが所定位置で停止するようにピストン停止位置を制御しながら自動的に停止させ、自動停止中に自動始動条件が成立すると、所定気筒で燃焼を行わせて自動的に始動させる内燃機関制御装置において、ECU60内の流量制御弁制御手段603(燃圧制御部)は、内燃機関40の停止条件の成立後に、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を所定量QLMT以下に制限する吐出量制限手段632を有し、吐出量制限手段632による燃料吐出量の制限実行条件は、内燃機関40の停止条件の成立後から内燃機関40が完全に停止するまでの所定期間を含むので、自動停止条件の成立後から内燃機関40が完全に停止するまでの間に、高圧燃料ポンプ20が作動するときの燃料吐出量が停止位置制御にとって外乱とならない程度に制限される。
【0079】
したがって、停止へと向かう内燃機関40に対する負荷変化を抑制することができるので、ピストン停止位置が適正範囲から外れることがなく、再始動に必要な燃焼エネルギーを確実に得ることができ、良好な自動始動を実現することができる。
ここで、吐出量制限手段632により燃料吐出量を制限するための所定量QLMTは、たとえば実験的に検証された後の値として、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出動作で内燃機関40に対して負荷変化が生じても、ピストン停止位置制御への影響が許容できる程度の値に設定される。
【0080】
また、吐出量制限手段632において、所定期間における高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を最小値(たとえば、QLMT=0)に固定した場合には、ソレノイド12が励磁されることがなく、高圧燃料ポンプ20からの燃料吐出量を「0」にすることができる。
この場合、停止に向かう内燃機関40に対する負荷変化をさらに抑制することができるので、ピストン停止位置の適正範囲からのずれ量をさらに抑制することができる。
【0081】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図3参照)では、高圧燃料ポンプ20からの燃料吐出量の制限実行条件として、内燃機関40が完全に停止するまでの所定期間のみを考慮したが、停止条件の成立後であって、燃料噴射弁39からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御が開始された以降から内燃機関40が完全に停止するまでの燃料カット期間を、燃料吐出量の制限実行条件に含めてもよい。
【0082】
以下、図1および図2とともに、図4を参照しながら、燃料カット期間を燃料吐出量の制限実行条件に含めたこの発明の実施の形態2による制御処理について説明する。
図4はこの発明の実施の形態2による自動停止制御用の高圧燃料ポンプ20の制御処理を示すフローチャートであり、前述(図3参照)と同様の処理については、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0083】
この場合、自動停止用の目標吐出量QOの演算処理(ステップS112)の直前に、燃料カット実行フラグFCの判定処理(ステップS213)が挿入された点のみが前述(図3)と異なる。
また、この発明の実施の形態2に係る内燃機関制御装置の構成は、図1および図2に示した通りであり、ECU60内の吐出量制限手段632の一部機能が異なるのみである。
【0084】
すなわち、この発明の実施の形態2によるECU60(高圧燃料ポンプ制御装置)は、吐出量制限手段632の切替スイッチ635において、アイドルストップ制御手段605から自動停止条件の成立(自動停止条件成立フラグFS=1)が通知されていること、および、内燃機関制御手段604から燃料カットの実行(燃料カット実行フラグFC=1)が通知されていること、の両方の条件が成立(FS=1、かつ、FC=1)している場合に、通常時の接点C1側から自動停止制御実行用の接点C2側に切り替えることにより、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を、所定量QLMT以下に制限された目標燃料吐出量QOで制御するようになっている。
【0085】
図4において、まず、前述と同様のステップS101〜S106により、イグニションスイッチ62がON状態で、内燃機関40がエンスト状態でなく、かつ気筒識別が完了した場合に、目標燃圧POと燃圧PFとの燃圧偏差△PFに基づく比例演算項QFBPおよび積分演算項QFBIから燃料吐出フィードバック量QFBを演算する。
【0086】
続いて、ステップS107において、自動停止条件成立フラグFS=1(自動停止条件が成立)と判定された場合には、燃料カット実行フラグFCが「1」にセットされているか否かを判定する(ステップS213)。
ステップS213において、燃料カット開始条件が成立していて、FC=1(すなわち、Yes)と判定されれば、ステップS112に進み、前述の式(4)のように、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標吐出量QOを演算し、ステップS109に進む。
【0087】
一方、ステップS213において、燃料カット開始条件が非成立であって、FC=0(すなわち、No)と判定されれば、ステップS108に進み、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を演算して、ステップS109に進む。
以下、前述のステップS109〜S111を実行して、図4の処理ルーチンを抜け出る。
【0088】
この結果、ステップS107におけるFS=1(自動停止条件成立)と、ステップS213におけるFC=1(燃料カット開始条件成立)との両方の条件が満たされた場合には、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標燃料吐出量QO(ステップS112で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、停止位置制御への影響が生じない程度に制限された吐出量で畜圧室36内の燃料が増加する。
【0089】
一方、ステップS107においてFS=0(自動停止条件の非成立)、または、ステップS213においてFC=0(燃料カット開始条件の非成立)が判定された場合には、最大値が制限されない通常時の目標燃料吐出量QO(ステップS108で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、畜圧室36内の燃料が必要量だけ増加して、畜圧室36内の燃圧PFが目標燃圧POに一致するようになる。
【0090】
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、自動停止条件が成立(FS=1)しても、実際に燃料カットが開始(FC=1)されるまでの間に、高圧燃料ポンプ20から燃料を吐出可能な機会を得た場合には、制限されない通常時の目標吐出量QO(畜圧室36内の燃圧PFを目標燃圧POに復帰させるのに必要な燃料量)で燃料が吐出されるので、内燃機関40が停止したときの畜圧室36内の燃圧PFを、可能な限り高い状態に維持させて停止させることができる。
【0091】
なお、ステップS213における判定条件は、たとえば、「FC=1、かつ、FC=1となってから、燃料吐出行程が所定回数経過」、または、「FC=1となってから、所定時間経過」のように実行開始にディレイを設けるようにしてもよい。
この場合、FC=1となって燃料カットが開始されてからも、所定回数または所定時間に達するまでの所定期間は、通常時の目標燃料吐出量QOが高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出され、所定期間の経過した後から、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標燃料吐出量QOが高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるようになる。
【0092】
ここで、図7を参照しながら、この発明の実施の形態2による作用効果について補足説明する。
図7はこの発明の実施の形態2による動作を示すタイミングチャートであり、従来技術におけるタイミングチャート(図8参照)に対応した各パラメータの挙動を示している。
また、図7において、通常運転期間、停止位置制御期間、停止直前期間に対応した各時刻T1、T2、T5についても、図8で説明したものと同様である。
【0093】
図7においても、時刻T1において、自動停止条件成立(FS=1)となった後、時刻T2において、燃料カットフラグFC=1となり、燃料噴射弁からの燃料噴射が停止されて内燃機関40は停止へと向かう。
しかしながら、この場合、時刻T2以降における燃料吐出量が制限されるので、停止しようとする内燃機関40に対して負荷変化が低減される。
【0094】
したがって、実線で示す機関回転速度NEの軌跡をたどり、ピストンが適正な位置に停止できたときの理想的な停止位置である時刻T5に極めて近い時刻T4aで停止させることが可能となる。
これにより、ピストンが適正な位置に停止できたときの理想的な停止位置である時刻T5と、実際の停止位置T4aとの時間差Xaは、図8内の時間差Xbよりも大幅に縮小される。すなわち、停止しようとする内燃機関40に対する負荷の変化が抑制され、ピストン停止位置がばらつくことが低減されて、ピストンが適正位置で停止する確率が高まり、良好な自動始動を実現することができる。
【0095】
また、図7のように、時刻T2以降における燃料吐出量を制限することにより、内燃機関40が、「M気筒内燃機関(Mは、3以上の自然数)において、各気筒への燃料噴射行程が一巡する間にN回(Nは、「N<M」となる「2」以上の自然数)の燃料吐出行程となる構成」で、既に製造されていても、構成変更の必要はなく、大幅なコストアップを招くこともない。
図7に示した機関回転速度NEの挙動および作用効果は、この発明の実施の形態2に限らず、他の実施の形態においても同様である。
【0096】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図4参照)では、停止条件成立後における高圧燃料ポンプ20からの燃料吐出量の制限実行条件として、燃料カット制御が開始された以降から内燃機関40が完全に停止するまでの燃料カット期間を考慮したが、内燃機関40の機関回転速度NEが所定回転速度NEoを下回った以降から内燃機関40が完全に停止するまでの低回転速度期間を、燃料吐出量の制限実行条件に含めてもよい。
【0097】
以下、図1および図2とともに、図5を参照しながら、低回転速度期間を燃料吐出量の制限実行条件に含めたこの発明の実施の形態3による制御処理について説明する。
図5はこの発明の実施の形態3による自動停止制御用の高圧燃料ポンプ20の制御処理を示すフローチャートであり、前述(図3、図4参照)と同様の処理については、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0098】
この場合、前述(図4)の燃料カット実行フラグFCの判定処理(ステップS213)に代えて、機関回転速度NEの判定処理(ステップS313)が挿入された点のみが異なる。
また、この発明の実施の形態3に係る内燃機関制御装置の構成は、図1および図2に示した通りであり、ECU60内の吐出量制限手段632の一部機能が異なるのみである。
【0099】
すなわち、この発明の実施の形態3によるECU60(高圧燃料ポンプ制御装置)は、吐出量制限手段632の切替スイッチ635において、アイドルストップ制御手段605から自動停止条件の成立(FS=1)が通知されていること、および、クランク角センサからの機関回転速度NEが所定回転速度NEoを下回っていること、の両方の条件が成立(FS=1、かつ、NE<NEo)している場合に、通常時の接点C1側から自動停止制御実行用の接点C2側に切り替え、所定量QLMT以下に制限された目標燃料吐出量QOで高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を制御する。
【0100】
図5において、まず、前述と同様のステップS101〜S106に続いて、ステップS107で自動停止条件成立フラグFSの状態を判定し、FS=1(自動停止条件が成立)と判定された場合には、内燃機関40の機関回転速度NEが所定回転速度NEoを下回っているか否かを判定する(ステップS313)。
【0101】
ステップS313において、NE<NEo(すなわち、Yes)と判定されれば、ステップS112に進み、前述の式(4)のように、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標吐出量QOを演算し、ステップS109に進む。
一方、ステップS313において、NE≧NEo(すなわち、No)と判定されれば、ステップS108に進み、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を演算して、ステップS109に進む。
以下、前述のステップS109〜S111を実行して、図5の処理ルーチンを抜け出る。
【0102】
この結果、ステップS107におけるFS=1(自動停止条件成立)と、ステップS313におけるNE<NEo(低回転速度条件成立)との両方の条件が満たされた場合には、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標燃料吐出量QO(ステップS112で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、停止位置制御への影響が生じない程度に制限された吐出量で畜圧室36内の燃料が増加する。
【0103】
一方、ステップS107においてFS=0(自動停止条件の非成立)、または、ステップS313においてNE≧NEo(低回転速度条件の非成立)、が判定された場合には、最大値が制限されない通常時の目標燃料吐出量QO(ステップS108で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、畜圧室36内の燃料が必要量だけ増加して、畜圧室36内の燃圧PFが目標燃圧POに一致するようになる。
【0104】
以上のように、この発明の実施の形態3によれば、自動停止条件が成立(FS=1)しても、実際に内燃機関40の機関回転速度NEが所定回転速度NEoを下回るまでの間に、高圧燃料ポンプ20から燃料を吐出可能な機会を得た場合には、制限されない通常時の目標吐出量QO(畜圧室36内の燃圧PFを目標燃圧POに復帰させるのに必要な燃料量)で燃料が吐出されるので、内燃機関40が停止したときの畜圧室36内の燃圧PFを、可能な限り高い状態に維持させて停止させることができる。
【0105】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図5参照)では、停止条件成立後における高圧燃料ポンプ20からの燃料吐出量の制限実行条件として、機関回転速度NEが所定回転速度NEoを下回った以降から内燃機関40が完全に停止するまでの低回転速度期間を考慮したが、燃圧センサにより検出された畜圧室36内の燃圧PFが所定燃圧PFoを上回っていることを、燃料吐出量の制限実行条件に含めてもよい。
【0106】
以下、図1および図2とともに、図6を参照しながら、燃圧PFが所定燃圧PFoを上回っていることを燃料吐出量の制限実行条件に含めたこの発明の実施の形態4による制御処理について説明する。
図6はこの発明の実施の形態4による自動停止制御用の高圧燃料ポンプ20の制御処理を示すフローチャートであり、前述(図3〜図5参照)と同様の処理については、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0107】
この場合、前述(図5)の機関回転速度NEの判定処理(ステップS313)に代えて、燃圧PFの判定処理(ステップS413)が挿入された点のみが異なる。
また、この発明の実施の形態4に係る内燃機関制御装置の構成は、図1および図2に示した通りであり、ECU60内の吐出量制限手段632の一部機能が異なるのみである。
【0108】
すなわち、この発明の実施の形態4によるECU60(高圧燃料ポンプ制御装置)は、吐出量制限手段632の切替スイッチ635において、アイドルストップ制御手段605から自動停止条件の成立(FS=1)が通知されていること、および、燃圧センサ61により検出された畜圧室36内の燃圧PFが所定燃圧PFoを上回っていること、の両方の条件が成立(FS=1、かつ、PF>PFo)している場合に、通常時の接点C1側から自動停止制御実行用の接点C2側に切り替え、所定量QLMT以下に制限された目標燃料吐出量QOで高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量を制御する。
【0109】
図6において、まず、前述と同様のステップS101〜S106に続いて、ステップS107で自動停止条件成立フラグFSの状態を判定し、FS=1(自動停止条件が成立)と判定された場合には、燃圧センサ61により検出された畜圧室36内の燃圧PFが所定燃圧PFoを上回っているか否かを判定する(ステップS413)。
【0110】
ステップS413において、PF>PFo(すなわち、Yes)と判定されれば、ステップS112に進み、前述の式(4)のように、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標吐出量QOを演算し、ステップS109に進む。
一方、ステップS413において、PF≦PFo(すなわち、No)と判定されれば、ステップS108に進み、通常時の目標吐出量QO(=QFB+QINJ)を演算して、ステップS109に進む。
以下、前述のステップS109〜S111を実行して、図6の処理ルーチンを抜け出る。
【0111】
この結果、ステップS107におけるFS=1(自動停止条件成立)と、ステップS413におけるPF>PFo(高燃圧条件成立)との両方の条件が満たされた場合には、所定量QLMT以下に制限された自動停止制御用の目標燃料吐出量QO(ステップS112で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、停止位置制御への影響が生じない程度に制限された吐出量で畜圧室36内の燃料が増加する。
【0112】
一方、ステップS107においてFS=0(自動停止条件の非成立)、または、ステップS413においてPF≦PFo(高燃圧条件の非成立)、が判定された場合には、最大値が制限されない通常時の目標燃料吐出量QO(ステップS108で演算)が高圧燃料ポンプ20から畜圧室36に吐出されるので、畜圧室36内の燃料が必要量だけ増加して、畜圧室36内の燃圧PFが目標燃圧POに一致するようになる。
【0113】
以上のように、この発明の実施の形態4によれば、停止に向かう内燃機関40の畜圧室内36の燃圧PFが所定燃圧PFoよりも低下しているときには、停止に向かう内燃機関40のピストンが適正な位置で停止する確率を高めることよりも、再始動(燃料噴射時)に必要な燃料噴射圧および噴射量の確保維持を優先して、燃料吐出量の抑制を禁止する。
したがって、停止前の燃料吐出量を制限してピストン停止位置を適正範囲に停止させることよりも優先して、再始動時に燃焼を予定している停止気筒内の空気の圧縮圧力に打ち勝つ燃料噴射圧を上回る畜圧室36内の燃圧PFを確保することができ、再始動に必要な燃焼エネルギー(燃料噴射弁から噴射される燃料量)を確保して、確実な自動始動を実現することができる。
【0114】
なお、高圧燃料ポンプ20の燃料吐出量の制限実行条件として判定される所定燃圧PFoは、実験的に検証された後の値として、少なくとも停止したときに圧縮行程となる気筒(または、膨張行程となる気筒)における停止中の筒内圧力よりも大きな値に設定される。
これにより、停止前の燃料吐出量が制限されていたとしても、再始動時に燃焼を予定している気筒内の空気の圧縮圧に打ち勝つ燃料噴射圧が最低でも確保されるようになる。
【0115】
また、この発明の実施の形態1〜4に係る内燃機関制御装置は、M個(Mは、「3」以上の自然数)の気筒を有する内燃機関40と、M個の各気筒への燃料噴射行程が一巡する間にN回(Nは、「N<M」となる「2」以上の自然数)の燃料吐出行程を有する高圧燃料ポンプ20とを備えているので、内燃機関40のピストン行程位置と高圧燃料ポンプ20の燃料吐出位置とが所定関係となる構成を変更しないまま、停止に向かう内燃機関40に対する負荷変化を抑制することができる。
これにより、構成変更にともなうコストアップを招くことなく、ピストン停止位置を適正範囲に制御することができ、再始動に必要な燃焼エネルギーを確保して良好な自動始動を実現することができる。
さらに、上記実施の形態2〜4で説明した燃料吐出量の制限実行条件は、任意に組み合わせて重複可能なことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の実施の形態1に係る内燃機関制御装置の高圧燃料ポンプ制御装置を概略的に示すブロック構成図である。
【図2】図1内のECUを具体的に示す機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による制御動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2による制御動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3による制御動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態4による制御動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の効果を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】従来の課題を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】4気筒内燃機関におけるピストン行程と高圧燃料ポンプの燃料吐出行程の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 流量制御弁、12 ソレノイド、20 高圧燃料ポンプ、36 畜圧室、39 燃料噴射弁、40 内燃機関、60 ECU、61 燃圧センサ、62 イグニションスイッチ、63 カム角センサ、64 クランク角センサ、65 アクセルポジションセンサ、601 目標燃圧設定手段、602 フィードバック量演算手段、603 流量制御弁制御手段、604 内燃機関制御手段、605 アイドルストップ制御手段、631 加算器(目標吐出量演算手段)、632 吐出量制限手段、633 ソレノイド駆動手段、634 制限値演算部、635 切替スイッチ、AP アクセルペダルの踏込量、NE 機関回転速度、PF 燃圧、PO 目標燃圧、ΔPF 燃圧偏差、QFB 燃料吐出フィードバック量、QINJ 燃料噴射量、QO 目標燃料吐出量、TD 励磁タイミング、FS 自動停止条件成立フラグ、FC 燃料カット実行フラグ、QLMT 所定量(制限値)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の運転状態を検出する各種センサと、
加圧された燃料を蓄積する畜圧室と、
前記畜圧室内の燃圧を検出する燃圧センサと、
前記内燃機関により駆動されて加圧した燃料を前記畜圧室に吐出する機械式の高圧燃料ポンプと、
前記高圧燃料ポンプから前記畜圧室に供給される燃料吐出量を調整する電磁式の流量制御弁と、
前記高圧燃料ポンプの燃料吐出量が、前記畜圧室内の燃圧を前記内燃機関の運転状態に応じてあらかじめ設定されている目標燃圧と一致させるための必要量となるように、前記流量制御弁を制御する燃圧制御部と、
前記畜圧室内の燃料を前記内燃機関の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁と、
を備えた内燃機関制御装置において、
前記燃圧制御部は、前記内燃機関の停止条件の成立後に、前記高圧燃料ポンプの燃料吐出量を所定量以下に制限する吐出量制限手段を有し、
前記吐出量制限手段による前記燃料吐出量の制限実行条件は、前記内燃機関の停止条件の成立後から前記内燃機関が完全に停止するまでの所定期間を含むことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記吐出量制限手段は、前記所定期間における前記高圧燃料ポンプの燃料吐出量を最小値に固定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記吐出量制限手段による前記燃料吐出量の制限実行条件は、前記停止条件の成立後であって、前記燃料噴射弁からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御が開始された以降から前記内燃機関が完全に停止するまでの燃料カット期間を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記吐出量制限手段による前記燃料吐出量の制限実行条件は、前記内燃機関の停止条件の成立後であって、前記内燃機関の機関回転速度が所定回転速度を下回った以降から前記内燃機関が完全に停止するまでの低回転速度期間を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記吐出量制限手段による前記燃料吐出量の制限実行条件は、前記内燃機関の停止条件の成立後であって、前記燃圧センサにより検出された前記畜圧室内の燃圧が所定燃圧を上回っていること、を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関は、M個(Mは、「3」以上の自然数)の気筒を有し、
前記高圧燃料ポンプは、前記M個の気筒への燃料噴射行程が一巡する間にN回(Nは、「N<M」を満たす「2」以上の自然数)の燃料吐出行程を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の内燃機関制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−106719(P2008−106719A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292402(P2006−292402)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】