半導体デバイス製造装置
【課題】 基板面内、面間の処理を均一化するとともに、併せてグリッドのスパッタを抑制することを可能にする。
【解決手段】 被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室17と、プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッド19と、グリッドで集束させた電子を加速させるアノード20と、アノードで加速させた電子が導入される処理室46と、グリッド19と処理室46との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極29とを備え、処理室46内に導入される加速電子により処理室46内のガスをプラズマ化して被処理基板を処理するように構成される。
【解決手段】 被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室17と、プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッド19と、グリッドで集束させた電子を加速させるアノード20と、アノードで加速させた電子が導入される処理室46と、グリッド19と処理室46との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極29とを備え、処理室46内に導入される加速電子により処理室46内のガスをプラズマ化して被処理基板を処理するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造装置、特に電子によりガスをプラズマ化して被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス製造装置として、被処理基板である複数のウエハを保持したボートを処理室に搬入して、複数のウエハに対して同時にプラズマ処理をするバッチ式プラズマ処理炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来例のバッチ式プラズマ処理炉の構成を図11及び図12に示す。
図11及び図12に示すように、従来例のバッチ式プラズマ処理炉は、上下方向に所定間隔を開けて多段に積層される複数のウエハ6を収納する縦型のプロセスチューブ7を有する。このプロセスチューブ7内には、その内壁面に沿うように一対の保護管8が垂直に設けられている。一対の保護管8の下部は、プロセスチューブ7の下方から屈曲して取り出されている。取り出された一対の保護管8の下端から一対の保護管8内に棒状の電極9がそれぞれ挿入されている。
また、プロセスチューブ7の内周には、プラズマ発生室10を形成する樋形状の隔壁11が一対の保護管8を気密に取り囲むように設置されている。隔壁11には、上下方向に多段に積層された複数のウエハ6間を臨むように、複数の吹出口12が縦方向に多段に設けられている。
【0004】
このような従来の処理炉は、処理ガスをプラズマ発生室10に供給し、所定の圧力に維持した後に、高周波電源13によって高周波電力が一対の電極9間に供給される。これにより、プラズマ14がプラズマ発生室10に形成され、処理ガスは活性化される。
そして、活性化された処理ガスである電気的に中性の活性種(ラジカル)15は、隔壁11に形成された吹出口12から吹き出て処理室16に供給されることにより、ボート3に保持された各ウェハ6に接触する。ウェハ6に接触した活性種15は、ウェハ6の表面に成膜等の処理を行う。
【0005】
【特許文献1】特開2004−289166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の処理炉は、ウエハからプラズマの発生位置、つまりプラズマ室までの距離が遠いため、ウエハの表面近傍での活性種密度をウエハ面内、面間で均一にするのが困難である。また、同様の理由により、プラズマの種類によっては、せっかく発生した活性種が供給途中で失活してしまう場合があり、活性種濃度が低下して効率が良好とはいえないといった問題もある。そして、活性種密度の不均一は、特にバッチ処理においては、基板処理の均一性に悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明の目的は、電子ビーム励起プラズマを用いることによって、上述した従来の問題点を解消して、基板面内、面間の処理を均一化するとともに、併せてグリッドのスパッタを抑制することが可能な半導体デバイス製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子
を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加された電極とを備え、前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板面内、面間の処理を均一化することができるとともに、併せてグリッドのスパッタを抑制することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態において、半導体デバイス製造装置は、一例として、ICの製造方法における処理工程を実施するものとして構成されている。尚、以下の説明では、半導体デバイス製造装置として基板に酸化、拡散処理やCVD処理を行なう縦型の装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。
【0011】
図9は、処理装置の斜透視図として示されている。また、図10は図9に示す処理装置の側面透視図である。
【0012】
図9および図10に示されているように、シリコン等からなるウエハ(基板)200を収納したウエハキャリアとしてフープ(基板収容器。以下ポッドという。)110が使用されている本発明の処理装置100は、筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方部にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104、104がそれぞれ建て付けられている。
筐体111の正面壁111aにはポッド搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が筐体111の内外を連通するように開設されており、ポッド搬入搬出口112はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるようになっている。
ポッド搬入搬出口112の正面前方側にはロードポート(基板収容器受渡し台)114が設置されており、ロードポート114はポッド110を載置されて位置合わせするように構成されている。ポッド110はロードポート114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート114上から搬出されるようになっている。
【0013】
筐体111内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、回転式ポッド棚105は複数個のポッド110を保管するように構成されている。すなわち、回転式ポッド棚105は垂直に立設されて水平面内で間欠回転される支柱116と、支柱116に上中下段の各位置において放射状に支持された複数枚の棚板(基板収容器載置台)117とを備えており、複数枚の棚板117はポッド110を複数個宛それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
筐体111内におけるロードポート114と回転式ポッド棚105との間には、ポッド搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されており、ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成されており、ポッド搬送装置118はポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ(基板収容器蓋体開閉機構)121との間で、ポッド110を搬送するように構成されている。
【0014】
筐体111内の前後方向の略中央部における下部には、サブ筐体119が後端にわたって構築されている。サブ筐体119の正面壁119aにはウエハ200をサブ筐体119
内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が一対、垂直方向に上下二段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口120、120には一対のポッドオープナ121、121がそれぞれ設置されている。
ポッドオープナ121はポッド110を載置する載置台122、122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123、123とを備えている。ポッドオープナ121は載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0015】
サブ筐体119はポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105の設置空間から流体的に隔絶された移載室124を構成している。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bとで構成されている。図9に模式的に示されているようにウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111右側端部とサブ筐体119の移載室124前方領域右端部との間に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cをウエハ200の載置部として、ボート(基板保持具)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0016】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成されている。待機部126の上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0017】
図9に模式的に示されているように、耐圧筐体111右側端部とサブ筐体119の待機部126右端部との間にはボート217を昇降させるためのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ129が水平に据え付けられており、シールキャップ129はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0018】
図9に模式的に示されているように移載室124のウエハ移載装置エレベータ125b側およびボートエレベータ115側と反対側である左側端部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給するよう供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されており、ウエハ移載装置125aとクリーンユニット134との間には、図示はしないが、ウエハの円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置135が設置されている。
クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、ノッチ合わせ装置135およびウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート217に流通された後に、図示しないダクトにより吸い込まれて、筐体111の外部に排気がなされるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環され、再びクリーンユニット134によって、移載室124内に吹き出されるように構成されている。
【0019】
次に、本発明の処理装置の動作について説明する。
図9および図10に示されているように、ポッド110がロードポート114に供給されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放され、ロードポート114の上のポッド110はポッド搬送装置118によって筐体111の内部へポッド搬入搬出口112から搬入される。
搬入されたポッド110は回転式ポッド棚105の指定された棚板117へポッド搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、棚板117から一方のポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載されるか、もしくは直接ポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載される。この際、ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124にはクリーンエア133が流通され、充満されている。例えば、移載室124にはクリーンエア133として窒素ガスが充満することにより、酸素濃度が20ppm以下と、筐体111の内部(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く設定されている。
【0020】
載置台122に載置されたポッド110はその開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aにおけるウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに、そのキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口を開放される。
ポッド110がポッドオープナ121によって開放されると、ウエハ200はポッド110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ノッチ合わせ装置135にてウエハを整合した後、移載室124の後方にある待機部126へ搬入され、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0021】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ121におけるウエハ移載機構125によるウエハのボート217への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121には回転式ポッド棚105から別のポッド110がポッド搬送装置118によって搬送されて移載され、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が同時進行される。
【0022】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ129がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0023】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200にCVD処理等の任意の処理が実施される。処理後は、ノッチ合わせ装置135でのウエハの整合工程を除き、上述したのと逆の手順で、ウエハ200およびポッド110は筐体111の外部へ払出される。
【0024】
本発明の最良の実施の形態(以下、最良実施形態という)の前提となる実施の形態(以下、前提実施形態という)では、上述した縦型のバッチ式プラズマ処理炉に、基板面内、面間の処理を均一化するために、プラズマ源として電子ビーム励起プラズマ(EBEP:Electron−Beam−Excited−Plasma)方式を用いる。EBEPは、電子銃によって電子を直接ウエハの間に照射し、プラズマガスをウエハの直近でイオン化する方式である。
【0025】
このようなバッチ式プラズマ処理炉は図5及び図6に示すように構成されている。
図5は、前提実施形態に係るバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図であり、図6は、図5におけるX−X断面図である。
【0026】
図5及び図6に示すように、バッチ式プラズマ処理炉5は、従来のバッチ式プラズマ処理炉と同様に、上部が閉じた円筒状の排気可能な処理容器としてのプロセスチューブ7の内壁面に、上下に延びた隔壁11が設けられている。この隔壁11により、プロセスチューブ7内に区画されたプラズマ発生室17が形成されている。ウエハ6は、ボート3に、上下に表裏面が向くように複数並べて配置されている。より詳しくいうと、プロセスチューブ7の中心軸上に各ウエハ6の中心が並ぶように、ボート3がプロセスチューブ7の中心に配置されている。隔壁11は、プロセスチューブ7と同心円状で、各ウエハ6の外周に沿った断面円弧状の中心壁11aと、この中心壁11aをプロセスチューブ7に接続する接続壁11bとから構成されている。
【0027】
隔壁11の中心壁11aには、電子を吹き出させる複数の吹出口12が設けられている。吹出口12は、上下に多段に積層された複数のウエハ6の間に電子ビームを噴出できるように、隣接する各ウエハ6の間の高さの位置に上下に並んで等間隔に設けられている。吹出口12は、電子ビームがウエハ6の中心を通過するように配置されているが、ウエハ6の中心から多少ずれた向きに電子ビームが通過するように配置されていてもよい。なお、隔壁11は、プロセスチューブ7内に形成される処理室46とプラズマ発生室17とを区画している。
【0028】
プラズマ発生室17の中には、上下に延びた平板状のグリッド19とアノード20とが設けられている。グリッド19とアノード20とは、互いに対面して配置され、また、アノード20は、隔壁11のうちバッチ式プラズマ処理炉5の中心側の壁に対面して設けられている。グリッド19及びアノード20は、共に吹出口12に対応して電子通過孔19a,20aが縦方向に多段に形成されている。グリッド19は、直流電源21の負極側に接続され、アノード20は、直流電源21の陽極側に接続されている。従って、グリッド19とアノード20との間に直流電源21で電圧を印加すれば、電子通過孔19aから電子通過孔20aの間で電子を加速するための電界が発生する。
【0029】
プロセスチューブ7のプラズマ発生室17に対応する位置の外側には、例えば金属や炭素の棒等からなる一対の電極22を備えた誘導結合型プラズマ(ICP)源が配置されている。一対の電極22とプロセスチューブ7との間には、金属製のシールド23が介設されている。一対の電極22間には高周波電源13に接続されている。プラズマはプロセスチューブ7とグリッド19の間に生成される。これらのプラズマ発生室17、グリッド19、アノード20、直流電源21、電極22、高周波電源13などから、電子供給装置(電子銃)18が構成される。
【0030】
プロセスチューブ7には、電子源用のプラズマガス(電子源用プラズマガス)及びウェハの処理反応に寄与するプラズマガス(反応寄与プラズマガス)を供給するためのガス導入ポート31と、必要に応じて反応プロセスガスを処理室46に供給するためのガス導入ポート37と、プロセスチューブ7内を排気するための排気管32が設けられている。ガス導入ポート31には、電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスを供給するため、ガス供給源、配管及びバルブなどからなるガス供給系33が接続されている。このガス導入ポート31、ガス供給系33からプラズマガス供給装置が構成される。排気管32には自動圧力制御バルブ、配管を通じてポンプ34が接続され、プロセスチューブ7を排気可能としている。
【0031】
ボート3は、ウエハ6の中心を回転中心として回転できるように、軸受35により支持されている。ボート3は、回転装置としての回転駆動機構36により回転させられる。
【0032】
以上のように構成されたバッチ式プラズマ処理炉5の動作について説明する。
前回のバッチ処理が終わった後には、ボート3がバッチ式プラズマ処理炉5から下降し
て、ウエハ移載機構125によりボート3に新たに複数のウエハ6が積載される。ウエハ6が積載されたボート3は、バッチ式プラズマ処理炉5内に挿入され、シールキャップ129によりバッチ式プラズマ処理炉5が気密に閉塞される。
そして、ガス導入ポート37から反応プロセスガスが処理室46に供給される。また、ガス供給系33に接続されたガス導入ポート31からは、プラズマ発生室17内へ電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスが供給される。ポンプ34で排気を行い、プラズマ発生に適したガス、圧力の雰囲気にする。
【0033】
そして、ヒータ16によりバッチ式プラズマ処理炉5を加熱しつつ、直流電源21と高周波電源13を作動させる。高周波電源13への電圧印加及び直流電源21への電圧印加により、電子供給装置により電子ビーム(EB:Electron−beam)24を発生してEBEP(励起もしくはイオン化されたプラズマガス27)を生成する。
高周波電源13によりICP源となる一対の電極22に電圧が印加されると、図7に示すように、電子源用プラズマガス(A分子もしくは原子)が供給されるプラズマ発生室17においてプラズマが発生する。プラズマ発生室17において発生したプラズマ中には、イオン25(A+)と電子26(e)が混在して、全体として中性を保っている。そして、直流電源21によりグリッド19とアノード20の間に電圧が印加されると、プラズマ中の電子26はグリッド19に印加された負の電圧で作られた電界により、軌道修正を受けて電子通過孔19aに集束する。集束した電子eは、アノード20に印加された正の電圧(加速電圧)により作られた電界により、アノード20の電子通過孔20aに向かって加速される。加速された電子eは、電子の束、すなわち電子ビーム24となって隔壁11の吹出口12からウエハ6、6の間の反応寄与プラズマガス28(B分子)にウエハ6、6と平行に照射される。電子ビーム24の照射により、ウエハ6の表面の直ぐ近くにおいて、ある確率で反応寄与プラズマガス28(B分子)が励起もしくはイオン化されることにより、電子ビーム励起プラズマが生成される。この生成された電子ビーム励起プラズマがウエハ6の表面に作用して、電子ビーム励起プラズマに含まれる励起もしくはイオン化されたプラズマガス27(B+)がウエハ6の表面を処理する。
【0034】
この際、回転駆動機構36によりボート3を回転させることにより、ウエハ6の面内、面間の電子ビームの均一性が一層確保され、ウエハ6の面内、面間が均一な励起もしくはイオン化されたプラズマガス27と接触し、複数のウエハ6が全体的に均一に処理される。
【0035】
なお、上述したプロセスチューブ7の外壁とグリッド19との間のプラズマ発生室17がプラズマカソード領域、グリッド19とアノード20との間の領域が電子加速領域、そして、処理室46内がEBEP(電子ビーム励起プラズマ)領域を構成する。
【0036】
本前提実施形態によれば、以下の(1)から(5)の一つ又はそれ以上の効果を有する。
【0037】
(1)電子供給装置18を用いてウエハ6の直近で電子ビーム励起プラズマを生成して、反応寄与プラズマガスを活性化させるので、寿命が短い活性種であっても、ウエハ6の表面に必要量を供給することが可能である。したがって、ウエハの表面近傍での活性種密度をウエハ面内、面間で均一にするのができる。また、ウエハと接触する前に活性種が失活するのを大幅に低減できるので、活性種濃度が高く効率が良好となる。そして、活性種密度を均一化できるので、特にバッチ処理においては、基板処理の均一性を向上できる。
【0038】
(2)また、プロセスチューブ内部に電極を設置し、この電極に高周波を印加することにより容量性結合型プラズマ(CCP)を発生させて処理室内に活性種を送り込む方法もあるが、本実施の形態のバッチ式プラズマ処理炉では、CCPで発生させた高エネルギー
プラズマにウエハ6が晒されるわけではないので、ウエハ6自体がプラズマからダメージを受けることがない。
【0039】
(3)さらに、プラズマ発生室17では、電子を取り出すためにだけプラズマを発生させればよいので、高出力の高周波を印加する必要がなく、プロセスチューブ7を構成する石英壁などがスパッタされる可能性が低い。また、本実施の形態ではプラズマ発生室にICP源を用いており、ICP源がプロセスチューブ7の外にあるので、フィラメント(超高温の金属)を使用する場合と比べて、処理の際の汚染源にはならず、非常にクリーンである。
【0040】
(4)また、本前提実施形態では、特開平11−204292号公報に記載されているように、枚葉のウエハ6の正面から電子を照射するのではなく、ウエハ6の表面に沿う方向、例えば表面と平行に電子ビームを照射している。同公報のように枚葉でウエハの真上から電子ビームを当てようとすると、ビーム径を広げる必要があるため、レンズや電極等の部品が必要になり構造が複雑になるばかりか、電子ビームを均一にすることが困難になる。この点で、本前提実施形態では、ウエハ表面と平行に電子ビームを照射しているので、そのような問題がなく、ウエハ6の表面近傍の広い範囲で電子ビーム励起プラズマを発生させることができる。これに加えて、ボート3を回転させることで複数のウエハ6を回転させているので、複数のウエハ6の面内、面間に対し、より均一に電子ビーム励起プラズマを供給することができる。
【0041】
(5)また、このように電子ビーム励起プラズマが各ウエハ6上に均一に形成されることで、プラズマ処理が成膜処理である場合にあっては、膜質が向上し、また、バッチ式であることで製品のスループットも向上する。
【0042】
上述したように前提実施形態のバッチ式プラズマ処理炉は、ウエハ表面に活性種を必要量供給することが可能であり、ウエハ自身がプラズマからダメージを受けることがなく、また、ウエハ周辺で高出力の高周波を印加する必要がなく、石英等がスパッタされる懸念が少ないこと等に特徴がある。
【0043】
しかしながら、前提実施形態は、次のような点についてなお改善の余地がある。
図7の要部を拡大した図8に示すように、照射された電子ビーム24は負の電荷を帯びた電子26の集合体であるため、ウエハ6直上の反応寄与プラズマガス27中の正電荷を帯びたイオン化されたプラズマガスB+は電子ビーム24に吸い寄せられ、電子ビーム24と逆方向30に流れる虞がある。この逆方向30に流れるイオン化されたプラズマガスB+は、隔壁11に開設された吹出口12よりアノード20、グリッド19、プラズマ発生室17の方向で逆流する可能性がある。
【0044】
これにより、グリッド19に衝突したイオン化されたプラズマガスB+は、グリッド19をスパッタ作用132し、また、グリッド19での衝突により飛び出したガスにより、アノード20にも同様に衝突して、スパッタ作用132を惹き起こすことがある。そうなると、グリッド19やアノード20の電極表面が汚れ、パーテイクルの原因になるとともに、グリッド19及びアノード20に印加される電圧が変動し、プラズマ中の電子の収束作用、加速作用が著しく変動し、電子ビーム24の照射量、電子エネルギーが減少することになる。
【0045】
また、グリッド19からプラズマ発生室17まで到達したイオン化されたプラズマガスB+は、発生中のプラズマ中の電子26(e)またはイオン25(A+)と衝突133し、プラズマ発生室17内でのプラズマ発生にも悪影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
すなわち、上述した前提実施形態では、電子ビームと逆方向にイオンガスが流れるために、電極がスパッタされてパーティクルの原因になる懸念がある。また、電極に電圧変動が発生し、電子ビームの照射量、電子エネルギーが減少し、励起もしくはイオン化されたプラズマガスのウエハ上での発生率が減少し、また、プラズマ室内でのプラズマ発生を不安定にさせる懸念もある。その結果、電子ビームにより励起もしくはイオン化されたプラズマが不均一になり、またウエハ成膜品質が低下する虞があるため、なお改善の余地がある。
【0047】
そこで、次に説明する本発明の半導体デバイス製造装置の最良実施形態では、グリッド、アノード以外に第3の電極を設置し、電子ビームと逆方向に流れるイオンガスを抑制するようにして、改善している。
【0048】
以下に上述したような最良実施形態のバッチ式プラズマ処理炉を説明する。
図1に最良実施形態の処理室縦断面を、図2にその処理室A−A断面をそれぞれ示す。
最良実施形態は、制御電極及び制御電極用の電源を設けた点以外の構成は、図5、図6に示した前提実施形態に係るバッチ式プラズマ処理炉と同様である。
【0049】
具体的には、最良実施形態では、制御電極としての中間電極29が設けられ、中間電極29に電源39を接続して電圧が印加さるようになっている。中間電極29は、グリッド19とアノード20の中間に設置される。この中間電極29には、グリッド19及びアノード20と同様に、吹出口12に対応して電子通過孔29aが縦方向に多段に形成されている。
【0050】
より具体的には、プラズマ発生室17と処理室46との間、すなわちプラズマ発生室17の一方の壁を構成するプロセスチューブ7と、プラズマ発生室17の他方の壁であってプラズマ発生室17と処理室46とを区画形成する隔壁11との間に複数の電極が設けられる。複数の電極は、グリッド19、制御電極29、アノード20から構成され、プラズマ発生室17から処理室46に向かって順にグリッド19、制御電極29、アノード20が設けられている。グリッド19は、プラズマ発生室17に隣接して設けられ、負にバイアスされている。グリッド19と処理室46との間に設けられた制御電極29には、電源39が接続されて正の電圧が印加されている。制御電極29と処理室46との間にアノード20が設けられ、ゼロ電位に接地されている。
【0051】
図3に最良実施形態の電子ビーム励起プラズマの原理図、及び図4に図3の要部拡大図を示す。
プラズマ発生室17にて発生したプラズマ中の電子は、縦方向に多段に電子通過孔19aが形成されたグリッド19により軌道修正を受けて集束し、さらにグリッド19と同様に縦方向に多段に電子通過孔20aが形成されたアノード20に向かって加速される。加速された電子は電子ビーム24となって、隔壁11に多段に形成された吹出口12より、ボート3に載置されたウエハ6間に照射される。ボート回転機構(図示せず)によりボート3を回転させながら、所定時間だけ電子ビーム24を照射し、ウエハ6直上において反応寄与プラズマガスを励起若しくはイオン化させウエハ6の表面を処理するのは、既述した前提実施形態と同様である。
【0052】
電子ビーム24と逆方向30へ流れるイオン化されたプラズマガスB+は、隔壁11に多段に形成された吹出口12よりプラズマ発生室17側へ流れ込む。しかし、正の電圧を印加した中間電極29をグリッド19とアノード20との間に設置すると、正に印加された中間電極29により作られた電界により、正の電位を持つイオン化されたプラズマガスB+は軌道修正の力を受け、ゼロ電位に接地されたアノード20へ吸収される。
これにより、逆方向30へ流れるイオン化されたプラズマガスB+のグリッド19及び
プラズマ発生室17への流れ込みを防止し、グリッド19とアノード20のスパッタを防ぎ、プラズマ発生室17でのプラズマを安定させ、電子ビーム照射時のイオン化ロスを低減させることが可能となる。
【0053】
なお、中間電極29に印加する電圧は、プラズマ発生室17内のプラズマ中の電子26を軌道補正により収束させる電界を発生させ、収束された電子ビーム24を加速させる電界を発生させるグリッド19及びアノード20へ印加する電圧へ意図しない影響を与える場合がある。このため、中間電極29に印加されている正の電圧を適切な電圧とする必要があるが、これは実験的に求めることが可能である。
【0054】
本発明の最良実施形態によれば、バッチ式プラズマ装置において、以下の1つ又はそれ以上の効果を有する。
(1)プラズマプロセスにEBEPを用いる場合に、特に逆流イオンによりグリッドやアノードなどの加速電極がスパッタされるという問題が生じるが、グリッドと処理室との間に正の電圧が印加された制御電極を設けることにより、グリッドがスパッタされるのを抑制することができる。また、グリッドのスパッタが抑制されるので、グリッドがスパッタされることに起因するアノードのスパッタも抑制することができる。これにより、電子ビーム加速電極内のスパッタを抑制し、スパッタ作用による異物の発生を解消することができる。したがって、グリッドやアノードの電極表面が汚れることもなく、パーテイクルの発生原因も解消される。その結果、グリッド及びアノードに印加される電圧が安定し、プラズマ中の電子の収束作用、加速作用が著しく変動するのを防止できるので、電子ビームの照射量、電子エネルギーの減少を有効に防止できる。
(2)また、グリッドとアノードとの間に設置した中間電極に適切な正の電圧を印加することにより、電子ビーム照射時のイオンロスを低減させることができ、電子ビームによる励起プラズマを安定させることができる。
(3)また、イオン化されたプラズマガスB+が、グリッドからプラズマ発生室まで到達したり、発生中のプラズマ中の電子またはイオンと衝突したりすることがなくなるので、プラズマ発生室内でのプラズマ発生に悪影響を及ぼすこともなくなる。
(4)また、グリッドと処理室との間に制御電極を設けると、制御電極がスパッタされるという問題が新たに生じるが、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けることにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
(5)電子ビーム励起プラズマのウエハ面内及びウエハ面間の均一性を向上させることができ、ウエハの膜厚均一性を向上することができる。
(6)半導体デバイスの製造における品質の向上を図ることができる。
【0055】
以上説明した本発明の最良実施形態では、グリッド電極と処理室との間に制御電極を設け、さらに制御電極と処理室の間に接地されたアノード電極を設けるようにしたが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することが可能である。
【0056】
例えば、グリッド電極と処理室との間に制御電極を設ける点は同じでも、制御電極と処理室の間に設けるアノード電極は、ゼロ電位に接地せず正にバイアスするようにしてもよい。これによれば、制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことはできなくなるものの、制御電極のない従来例と異なり、グリッドのスパッタを抑制し、スパッタ作用による異物の発生を解消することができる。
【0057】
例えば、プラズマ発生室におけるプラズマの発生方法は、一例として高周波を印加することによるICPを用いているが、これに限定されることなく、電子サイクロトロン共鳴プラズマや、表面波プラズマなど、スパッタ作用を極力抑えたプラズマ発生方式ならば他の方式を適用することもできる。
【0058】
例えば、半導体デバイス製造装置をウエハを多数枚同時処理するバッチ式プラズマ装置に適用した場合を説明したが、ウエハを1枚ないし数枚ずつ処理する枚葉式プラズマ装置にも適用することができる。
【0059】
また、プラズマ発生室における電子源用プラズマガスと反応寄与プラズマガスは、同一のものであっても異なるものであってもよい。異なるものである場合は、ガス導入ポート31とは異なる別なガス導入ポート37を必要とする場合である。
【0060】
上述した電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスには、反応プロセスに応じて、例えば、H2、He、Ar、N2、アンモニアガス(NH3)などを用いることができる。この場合に、電子源用と反応寄与用のプラズマガスが同一でも、あるいは異なっていてもよく、さらにはプラズマガスの他にこのプラズマガスと異なる種類のガスを供給してウエハ処理するようにしてもよい。例えば、プラズマガスと異なる種類のガスを供給する場合として、励起もしくはイオン化されたプラズマガスとしてNH3を用い、ガス導入ポート37からシラン系ガス、例えばDCS(SiH2Cl2)を供給する方法もある。この方法によれば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)処理によりシリコン窒化膜(Si3N4)を形成することが可能である。
【0061】
また、プラズマCVD処理に限らず、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)処理や、プラズマを利用したH2活性種によるウエハ上の自然酸化膜の除去にも利用可能である。例えば、プラズマを利用したH2活性種によるウエハ上の自然酸化膜を除去する場合には、ICPで作ったプラズマから電子を引き出し、ウエハ直上で原子状水素を発生させる。
【0062】
以下に本発明の好ましい態様を付記する。
【0063】
第1の態様は、被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極とを備え、前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置である。
グリッドにより、プラズマ発生室で発生したプラズマから電子が引き出されて集束される。集束した電子は制御電極を介してアノードで加速される。加速された電子は処理室に導入される。加速された電子が処理室に導入されると、処理室のプラズマガスが励起される。これにより励起もしくはイオン化されたプラズマガスが生成される。この励起もしくはイオン化されたプラズマガスによって被処理基板が処理される。
このようにプラズマプロセスに加速させた電子を用いる場合に、特にグリッドがスパッタされるという問題があるが、グリッドと処理室との間に正の電圧を印加された制御電極を設けたことにより、グリッドがスパッタされるのを確実に防ぐことができる。なお、制御電極はグリッドとアノードとの間に設けるようにしても、アノードと処理室との間に設けるようにしてもよい。
【0064】
第2の態様は、前記アノードは、前記制御電極と前記処理室との間に設けられ、接地されていることを特徴とする。
このようにプラズマプロセスに加速させた電子を用いる場合に、特に制御電極がスパッタされるという問題があるが、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けたことにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
【0065】
第3の態様は、電子ビームによる励起プラズマを利用して成膜することを特徴とするバッチ式半導体製造装置である。
【0066】
第4の態様は、複数の被処理基板をプラズマ処理する半導体デバイス製造装置であって、排気可能に構成された処理容器と、前記処理容器内に挿入される前記複数の被処理基板を多段に保持する基板保持具と、前記処理容器内にプラズマガスを供給するプラズマガス供給手段と、前記処理容器に連通するプラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室から前記処理容器内の前記基板保持具に保持される被処理基板間に電子を照射するための電子供給装置と、前記処理容器内で前記基板保持具を回転させる回転装置と、を備えた半導体デバイス製造装置であって、前記電子供給装置が、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極とを備えた半導体デバイス製造装置である。
処理容器内の基板保持具を回転させ、プラズマ発生室でプラズマを発生させる。電子供給装置によりプラズマ発生室から電子が発射される。発射された電子は、基板保持具に保持される被処理基板間のプラズマガスに当る。これにより電子ビーム励起プラズマが生成される。このプラズマにより複数の被処理基板が同時にプラズマ処理される。このとき、基板保持具が回転装置によって回転しているので、被処理基板間でプラズマがより均等に生成されて、被処理基板は面内及び面間でより均一にプラズマ処理される。また、被処理基板間に電子を照射するので、電子供給装置の構成が簡単になり、装置構造も比較簡単に構成できる。また、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けたことにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
【0067】
第5の態様は、第4の態様において、前記プラズマ発生室が処理容器内に設けられる半導体デバイス製造装置であり、これにより装置の小型化を図ることができる。
【0068】
第6の態様は、第4または第5の態様において、前記プラズマ発生室が誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)源を有する半導体デバイス製造装置であり、これにより電子を含むクリーンなプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の最良実施形態における半導体デバイス製造装置のバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】本発明の最良実施形態における電子ビーム励起プラズマを説明する図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明の前提実施形態における半導体デバイス製造装置のバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図である。
【図6】図5におけるX−X断面図である。
【図7】本発明の前提実施形態における電子ビーム励起プラズマを説明する図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】本発明の一実施の形態における半導体デバイス製造装置の全体斜透視図である。
【図10】本発明の一実施の形態における半導体デバイス製造装置の側面透視図である。
【図11】従来例の半導体デバイス製造装置におけるバッチ式プラズマ処理炉の縦断面図である。
【図12】図11におけるX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0070】
3 ボート(基板保持具)
6 ウエハ(被処理基板)
7 プロセスチューブ(処理容器)
17 プラズマ発生室
18 電子供給装置
26 電子
29 制御電極
31 ガス導入ポート(プラズマガス供給装置)
32 排気管
33 ガス供給系(プラズマガス供給装置)
36 回転駆動機構(回転装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造装置、特に電子によりガスをプラズマ化して被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス製造装置として、被処理基板である複数のウエハを保持したボートを処理室に搬入して、複数のウエハに対して同時にプラズマ処理をするバッチ式プラズマ処理炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来例のバッチ式プラズマ処理炉の構成を図11及び図12に示す。
図11及び図12に示すように、従来例のバッチ式プラズマ処理炉は、上下方向に所定間隔を開けて多段に積層される複数のウエハ6を収納する縦型のプロセスチューブ7を有する。このプロセスチューブ7内には、その内壁面に沿うように一対の保護管8が垂直に設けられている。一対の保護管8の下部は、プロセスチューブ7の下方から屈曲して取り出されている。取り出された一対の保護管8の下端から一対の保護管8内に棒状の電極9がそれぞれ挿入されている。
また、プロセスチューブ7の内周には、プラズマ発生室10を形成する樋形状の隔壁11が一対の保護管8を気密に取り囲むように設置されている。隔壁11には、上下方向に多段に積層された複数のウエハ6間を臨むように、複数の吹出口12が縦方向に多段に設けられている。
【0004】
このような従来の処理炉は、処理ガスをプラズマ発生室10に供給し、所定の圧力に維持した後に、高周波電源13によって高周波電力が一対の電極9間に供給される。これにより、プラズマ14がプラズマ発生室10に形成され、処理ガスは活性化される。
そして、活性化された処理ガスである電気的に中性の活性種(ラジカル)15は、隔壁11に形成された吹出口12から吹き出て処理室16に供給されることにより、ボート3に保持された各ウェハ6に接触する。ウェハ6に接触した活性種15は、ウェハ6の表面に成膜等の処理を行う。
【0005】
【特許文献1】特開2004−289166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の処理炉は、ウエハからプラズマの発生位置、つまりプラズマ室までの距離が遠いため、ウエハの表面近傍での活性種密度をウエハ面内、面間で均一にするのが困難である。また、同様の理由により、プラズマの種類によっては、せっかく発生した活性種が供給途中で失活してしまう場合があり、活性種濃度が低下して効率が良好とはいえないといった問題もある。そして、活性種密度の不均一は、特にバッチ処理においては、基板処理の均一性に悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明の目的は、電子ビーム励起プラズマを用いることによって、上述した従来の問題点を解消して、基板面内、面間の処理を均一化するとともに、併せてグリッドのスパッタを抑制することが可能な半導体デバイス製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子
を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加された電極とを備え、前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板面内、面間の処理を均一化することができるとともに、併せてグリッドのスパッタを抑制することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態において、半導体デバイス製造装置は、一例として、ICの製造方法における処理工程を実施するものとして構成されている。尚、以下の説明では、半導体デバイス製造装置として基板に酸化、拡散処理やCVD処理を行なう縦型の装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。
【0011】
図9は、処理装置の斜透視図として示されている。また、図10は図9に示す処理装置の側面透視図である。
【0012】
図9および図10に示されているように、シリコン等からなるウエハ(基板)200を収納したウエハキャリアとしてフープ(基板収容器。以下ポッドという。)110が使用されている本発明の処理装置100は、筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方部にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口103を開閉する正面メンテナンス扉104、104がそれぞれ建て付けられている。
筐体111の正面壁111aにはポッド搬入搬出口(基板収容器搬入搬出口)112が筐体111の内外を連通するように開設されており、ポッド搬入搬出口112はフロントシャッタ(基板収容器搬入搬出口開閉機構)113によって開閉されるようになっている。
ポッド搬入搬出口112の正面前方側にはロードポート(基板収容器受渡し台)114が設置されており、ロードポート114はポッド110を載置されて位置合わせするように構成されている。ポッド110はロードポート114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート114上から搬出されるようになっている。
【0013】
筐体111内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、回転式ポッド棚105は複数個のポッド110を保管するように構成されている。すなわち、回転式ポッド棚105は垂直に立設されて水平面内で間欠回転される支柱116と、支柱116に上中下段の各位置において放射状に支持された複数枚の棚板(基板収容器載置台)117とを備えており、複数枚の棚板117はポッド110を複数個宛それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
筐体111内におけるロードポート114と回転式ポッド棚105との間には、ポッド搬送装置(基板収容器搬送装置)118が設置されており、ポッド搬送装置118は、ポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと搬送機構としてのポッド搬送機構(基板収容器搬送機構)118bとで構成されており、ポッド搬送装置118はポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、回転式ポッド棚105、ポッドオープナ(基板収容器蓋体開閉機構)121との間で、ポッド110を搬送するように構成されている。
【0014】
筐体111内の前後方向の略中央部における下部には、サブ筐体119が後端にわたって構築されている。サブ筐体119の正面壁119aにはウエハ200をサブ筐体119
内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が一対、垂直方向に上下二段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口120、120には一対のポッドオープナ121、121がそれぞれ設置されている。
ポッドオープナ121はポッド110を載置する載置台122、122と、ポッド110のキャップ(蓋体)を着脱するキャップ着脱機構(蓋体着脱機構)123、123とを備えている。ポッドオープナ121は載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0015】
サブ筐体119はポッド搬送装置118や回転式ポッド棚105の設置空間から流体的に隔絶された移載室124を構成している。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bとで構成されている。図9に模式的に示されているようにウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111右側端部とサブ筐体119の移載室124前方領域右端部との間に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)125cをウエハ200の載置部として、ボート(基板保持具)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0016】
移載室124の後側領域には、ボート217を収容して待機させる待機部126が構成されている。待機部126の上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0017】
図9に模式的に示されているように、耐圧筐体111右側端部とサブ筐体119の待機部126右端部との間にはボート217を昇降させるためのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設置されている。ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ129が水平に据え付けられており、シールキャップ129はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜125枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0018】
図9に模式的に示されているように移載室124のウエハ移載装置エレベータ125b側およびボートエレベータ115側と反対側である左側端部には、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア133を供給するよう供給フアンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134が設置されており、ウエハ移載装置125aとクリーンユニット134との間には、図示はしないが、ウエハの円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合わせ装置135が設置されている。
クリーンユニット134から吹き出されたクリーンエア133は、ノッチ合わせ装置135およびウエハ移載装置125a、待機部126にあるボート217に流通された後に、図示しないダクトにより吸い込まれて、筐体111の外部に排気がなされるか、もしくはクリーンユニット134の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環され、再びクリーンユニット134によって、移載室124内に吹き出されるように構成されている。
【0019】
次に、本発明の処理装置の動作について説明する。
図9および図10に示されているように、ポッド110がロードポート114に供給されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放され、ロードポート114の上のポッド110はポッド搬送装置118によって筐体111の内部へポッド搬入搬出口112から搬入される。
搬入されたポッド110は回転式ポッド棚105の指定された棚板117へポッド搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、棚板117から一方のポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載されるか、もしくは直接ポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載される。この際、ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124にはクリーンエア133が流通され、充満されている。例えば、移載室124にはクリーンエア133として窒素ガスが充満することにより、酸素濃度が20ppm以下と、筐体111の内部(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く設定されている。
【0020】
載置台122に載置されたポッド110はその開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aにおけるウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに、そのキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ウエハ出し入れ口を開放される。
ポッド110がポッドオープナ121によって開放されると、ウエハ200はポッド110からウエハ移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ノッチ合わせ装置135にてウエハを整合した後、移載室124の後方にある待機部126へ搬入され、ボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aはポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0021】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ121におけるウエハ移載機構125によるウエハのボート217への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121には回転式ポッド棚105から別のポッド110がポッド搬送装置118によって搬送されて移載され、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が同時進行される。
【0022】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって、開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ129がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0023】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200にCVD処理等の任意の処理が実施される。処理後は、ノッチ合わせ装置135でのウエハの整合工程を除き、上述したのと逆の手順で、ウエハ200およびポッド110は筐体111の外部へ払出される。
【0024】
本発明の最良の実施の形態(以下、最良実施形態という)の前提となる実施の形態(以下、前提実施形態という)では、上述した縦型のバッチ式プラズマ処理炉に、基板面内、面間の処理を均一化するために、プラズマ源として電子ビーム励起プラズマ(EBEP:Electron−Beam−Excited−Plasma)方式を用いる。EBEPは、電子銃によって電子を直接ウエハの間に照射し、プラズマガスをウエハの直近でイオン化する方式である。
【0025】
このようなバッチ式プラズマ処理炉は図5及び図6に示すように構成されている。
図5は、前提実施形態に係るバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図であり、図6は、図5におけるX−X断面図である。
【0026】
図5及び図6に示すように、バッチ式プラズマ処理炉5は、従来のバッチ式プラズマ処理炉と同様に、上部が閉じた円筒状の排気可能な処理容器としてのプロセスチューブ7の内壁面に、上下に延びた隔壁11が設けられている。この隔壁11により、プロセスチューブ7内に区画されたプラズマ発生室17が形成されている。ウエハ6は、ボート3に、上下に表裏面が向くように複数並べて配置されている。より詳しくいうと、プロセスチューブ7の中心軸上に各ウエハ6の中心が並ぶように、ボート3がプロセスチューブ7の中心に配置されている。隔壁11は、プロセスチューブ7と同心円状で、各ウエハ6の外周に沿った断面円弧状の中心壁11aと、この中心壁11aをプロセスチューブ7に接続する接続壁11bとから構成されている。
【0027】
隔壁11の中心壁11aには、電子を吹き出させる複数の吹出口12が設けられている。吹出口12は、上下に多段に積層された複数のウエハ6の間に電子ビームを噴出できるように、隣接する各ウエハ6の間の高さの位置に上下に並んで等間隔に設けられている。吹出口12は、電子ビームがウエハ6の中心を通過するように配置されているが、ウエハ6の中心から多少ずれた向きに電子ビームが通過するように配置されていてもよい。なお、隔壁11は、プロセスチューブ7内に形成される処理室46とプラズマ発生室17とを区画している。
【0028】
プラズマ発生室17の中には、上下に延びた平板状のグリッド19とアノード20とが設けられている。グリッド19とアノード20とは、互いに対面して配置され、また、アノード20は、隔壁11のうちバッチ式プラズマ処理炉5の中心側の壁に対面して設けられている。グリッド19及びアノード20は、共に吹出口12に対応して電子通過孔19a,20aが縦方向に多段に形成されている。グリッド19は、直流電源21の負極側に接続され、アノード20は、直流電源21の陽極側に接続されている。従って、グリッド19とアノード20との間に直流電源21で電圧を印加すれば、電子通過孔19aから電子通過孔20aの間で電子を加速するための電界が発生する。
【0029】
プロセスチューブ7のプラズマ発生室17に対応する位置の外側には、例えば金属や炭素の棒等からなる一対の電極22を備えた誘導結合型プラズマ(ICP)源が配置されている。一対の電極22とプロセスチューブ7との間には、金属製のシールド23が介設されている。一対の電極22間には高周波電源13に接続されている。プラズマはプロセスチューブ7とグリッド19の間に生成される。これらのプラズマ発生室17、グリッド19、アノード20、直流電源21、電極22、高周波電源13などから、電子供給装置(電子銃)18が構成される。
【0030】
プロセスチューブ7には、電子源用のプラズマガス(電子源用プラズマガス)及びウェハの処理反応に寄与するプラズマガス(反応寄与プラズマガス)を供給するためのガス導入ポート31と、必要に応じて反応プロセスガスを処理室46に供給するためのガス導入ポート37と、プロセスチューブ7内を排気するための排気管32が設けられている。ガス導入ポート31には、電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスを供給するため、ガス供給源、配管及びバルブなどからなるガス供給系33が接続されている。このガス導入ポート31、ガス供給系33からプラズマガス供給装置が構成される。排気管32には自動圧力制御バルブ、配管を通じてポンプ34が接続され、プロセスチューブ7を排気可能としている。
【0031】
ボート3は、ウエハ6の中心を回転中心として回転できるように、軸受35により支持されている。ボート3は、回転装置としての回転駆動機構36により回転させられる。
【0032】
以上のように構成されたバッチ式プラズマ処理炉5の動作について説明する。
前回のバッチ処理が終わった後には、ボート3がバッチ式プラズマ処理炉5から下降し
て、ウエハ移載機構125によりボート3に新たに複数のウエハ6が積載される。ウエハ6が積載されたボート3は、バッチ式プラズマ処理炉5内に挿入され、シールキャップ129によりバッチ式プラズマ処理炉5が気密に閉塞される。
そして、ガス導入ポート37から反応プロセスガスが処理室46に供給される。また、ガス供給系33に接続されたガス導入ポート31からは、プラズマ発生室17内へ電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスが供給される。ポンプ34で排気を行い、プラズマ発生に適したガス、圧力の雰囲気にする。
【0033】
そして、ヒータ16によりバッチ式プラズマ処理炉5を加熱しつつ、直流電源21と高周波電源13を作動させる。高周波電源13への電圧印加及び直流電源21への電圧印加により、電子供給装置により電子ビーム(EB:Electron−beam)24を発生してEBEP(励起もしくはイオン化されたプラズマガス27)を生成する。
高周波電源13によりICP源となる一対の電極22に電圧が印加されると、図7に示すように、電子源用プラズマガス(A分子もしくは原子)が供給されるプラズマ発生室17においてプラズマが発生する。プラズマ発生室17において発生したプラズマ中には、イオン25(A+)と電子26(e)が混在して、全体として中性を保っている。そして、直流電源21によりグリッド19とアノード20の間に電圧が印加されると、プラズマ中の電子26はグリッド19に印加された負の電圧で作られた電界により、軌道修正を受けて電子通過孔19aに集束する。集束した電子eは、アノード20に印加された正の電圧(加速電圧)により作られた電界により、アノード20の電子通過孔20aに向かって加速される。加速された電子eは、電子の束、すなわち電子ビーム24となって隔壁11の吹出口12からウエハ6、6の間の反応寄与プラズマガス28(B分子)にウエハ6、6と平行に照射される。電子ビーム24の照射により、ウエハ6の表面の直ぐ近くにおいて、ある確率で反応寄与プラズマガス28(B分子)が励起もしくはイオン化されることにより、電子ビーム励起プラズマが生成される。この生成された電子ビーム励起プラズマがウエハ6の表面に作用して、電子ビーム励起プラズマに含まれる励起もしくはイオン化されたプラズマガス27(B+)がウエハ6の表面を処理する。
【0034】
この際、回転駆動機構36によりボート3を回転させることにより、ウエハ6の面内、面間の電子ビームの均一性が一層確保され、ウエハ6の面内、面間が均一な励起もしくはイオン化されたプラズマガス27と接触し、複数のウエハ6が全体的に均一に処理される。
【0035】
なお、上述したプロセスチューブ7の外壁とグリッド19との間のプラズマ発生室17がプラズマカソード領域、グリッド19とアノード20との間の領域が電子加速領域、そして、処理室46内がEBEP(電子ビーム励起プラズマ)領域を構成する。
【0036】
本前提実施形態によれば、以下の(1)から(5)の一つ又はそれ以上の効果を有する。
【0037】
(1)電子供給装置18を用いてウエハ6の直近で電子ビーム励起プラズマを生成して、反応寄与プラズマガスを活性化させるので、寿命が短い活性種であっても、ウエハ6の表面に必要量を供給することが可能である。したがって、ウエハの表面近傍での活性種密度をウエハ面内、面間で均一にするのができる。また、ウエハと接触する前に活性種が失活するのを大幅に低減できるので、活性種濃度が高く効率が良好となる。そして、活性種密度を均一化できるので、特にバッチ処理においては、基板処理の均一性を向上できる。
【0038】
(2)また、プロセスチューブ内部に電極を設置し、この電極に高周波を印加することにより容量性結合型プラズマ(CCP)を発生させて処理室内に活性種を送り込む方法もあるが、本実施の形態のバッチ式プラズマ処理炉では、CCPで発生させた高エネルギー
プラズマにウエハ6が晒されるわけではないので、ウエハ6自体がプラズマからダメージを受けることがない。
【0039】
(3)さらに、プラズマ発生室17では、電子を取り出すためにだけプラズマを発生させればよいので、高出力の高周波を印加する必要がなく、プロセスチューブ7を構成する石英壁などがスパッタされる可能性が低い。また、本実施の形態ではプラズマ発生室にICP源を用いており、ICP源がプロセスチューブ7の外にあるので、フィラメント(超高温の金属)を使用する場合と比べて、処理の際の汚染源にはならず、非常にクリーンである。
【0040】
(4)また、本前提実施形態では、特開平11−204292号公報に記載されているように、枚葉のウエハ6の正面から電子を照射するのではなく、ウエハ6の表面に沿う方向、例えば表面と平行に電子ビームを照射している。同公報のように枚葉でウエハの真上から電子ビームを当てようとすると、ビーム径を広げる必要があるため、レンズや電極等の部品が必要になり構造が複雑になるばかりか、電子ビームを均一にすることが困難になる。この点で、本前提実施形態では、ウエハ表面と平行に電子ビームを照射しているので、そのような問題がなく、ウエハ6の表面近傍の広い範囲で電子ビーム励起プラズマを発生させることができる。これに加えて、ボート3を回転させることで複数のウエハ6を回転させているので、複数のウエハ6の面内、面間に対し、より均一に電子ビーム励起プラズマを供給することができる。
【0041】
(5)また、このように電子ビーム励起プラズマが各ウエハ6上に均一に形成されることで、プラズマ処理が成膜処理である場合にあっては、膜質が向上し、また、バッチ式であることで製品のスループットも向上する。
【0042】
上述したように前提実施形態のバッチ式プラズマ処理炉は、ウエハ表面に活性種を必要量供給することが可能であり、ウエハ自身がプラズマからダメージを受けることがなく、また、ウエハ周辺で高出力の高周波を印加する必要がなく、石英等がスパッタされる懸念が少ないこと等に特徴がある。
【0043】
しかしながら、前提実施形態は、次のような点についてなお改善の余地がある。
図7の要部を拡大した図8に示すように、照射された電子ビーム24は負の電荷を帯びた電子26の集合体であるため、ウエハ6直上の反応寄与プラズマガス27中の正電荷を帯びたイオン化されたプラズマガスB+は電子ビーム24に吸い寄せられ、電子ビーム24と逆方向30に流れる虞がある。この逆方向30に流れるイオン化されたプラズマガスB+は、隔壁11に開設された吹出口12よりアノード20、グリッド19、プラズマ発生室17の方向で逆流する可能性がある。
【0044】
これにより、グリッド19に衝突したイオン化されたプラズマガスB+は、グリッド19をスパッタ作用132し、また、グリッド19での衝突により飛び出したガスにより、アノード20にも同様に衝突して、スパッタ作用132を惹き起こすことがある。そうなると、グリッド19やアノード20の電極表面が汚れ、パーテイクルの原因になるとともに、グリッド19及びアノード20に印加される電圧が変動し、プラズマ中の電子の収束作用、加速作用が著しく変動し、電子ビーム24の照射量、電子エネルギーが減少することになる。
【0045】
また、グリッド19からプラズマ発生室17まで到達したイオン化されたプラズマガスB+は、発生中のプラズマ中の電子26(e)またはイオン25(A+)と衝突133し、プラズマ発生室17内でのプラズマ発生にも悪影響を及ぼす可能性がある。
【0046】
すなわち、上述した前提実施形態では、電子ビームと逆方向にイオンガスが流れるために、電極がスパッタされてパーティクルの原因になる懸念がある。また、電極に電圧変動が発生し、電子ビームの照射量、電子エネルギーが減少し、励起もしくはイオン化されたプラズマガスのウエハ上での発生率が減少し、また、プラズマ室内でのプラズマ発生を不安定にさせる懸念もある。その結果、電子ビームにより励起もしくはイオン化されたプラズマが不均一になり、またウエハ成膜品質が低下する虞があるため、なお改善の余地がある。
【0047】
そこで、次に説明する本発明の半導体デバイス製造装置の最良実施形態では、グリッド、アノード以外に第3の電極を設置し、電子ビームと逆方向に流れるイオンガスを抑制するようにして、改善している。
【0048】
以下に上述したような最良実施形態のバッチ式プラズマ処理炉を説明する。
図1に最良実施形態の処理室縦断面を、図2にその処理室A−A断面をそれぞれ示す。
最良実施形態は、制御電極及び制御電極用の電源を設けた点以外の構成は、図5、図6に示した前提実施形態に係るバッチ式プラズマ処理炉と同様である。
【0049】
具体的には、最良実施形態では、制御電極としての中間電極29が設けられ、中間電極29に電源39を接続して電圧が印加さるようになっている。中間電極29は、グリッド19とアノード20の中間に設置される。この中間電極29には、グリッド19及びアノード20と同様に、吹出口12に対応して電子通過孔29aが縦方向に多段に形成されている。
【0050】
より具体的には、プラズマ発生室17と処理室46との間、すなわちプラズマ発生室17の一方の壁を構成するプロセスチューブ7と、プラズマ発生室17の他方の壁であってプラズマ発生室17と処理室46とを区画形成する隔壁11との間に複数の電極が設けられる。複数の電極は、グリッド19、制御電極29、アノード20から構成され、プラズマ発生室17から処理室46に向かって順にグリッド19、制御電極29、アノード20が設けられている。グリッド19は、プラズマ発生室17に隣接して設けられ、負にバイアスされている。グリッド19と処理室46との間に設けられた制御電極29には、電源39が接続されて正の電圧が印加されている。制御電極29と処理室46との間にアノード20が設けられ、ゼロ電位に接地されている。
【0051】
図3に最良実施形態の電子ビーム励起プラズマの原理図、及び図4に図3の要部拡大図を示す。
プラズマ発生室17にて発生したプラズマ中の電子は、縦方向に多段に電子通過孔19aが形成されたグリッド19により軌道修正を受けて集束し、さらにグリッド19と同様に縦方向に多段に電子通過孔20aが形成されたアノード20に向かって加速される。加速された電子は電子ビーム24となって、隔壁11に多段に形成された吹出口12より、ボート3に載置されたウエハ6間に照射される。ボート回転機構(図示せず)によりボート3を回転させながら、所定時間だけ電子ビーム24を照射し、ウエハ6直上において反応寄与プラズマガスを励起若しくはイオン化させウエハ6の表面を処理するのは、既述した前提実施形態と同様である。
【0052】
電子ビーム24と逆方向30へ流れるイオン化されたプラズマガスB+は、隔壁11に多段に形成された吹出口12よりプラズマ発生室17側へ流れ込む。しかし、正の電圧を印加した中間電極29をグリッド19とアノード20との間に設置すると、正に印加された中間電極29により作られた電界により、正の電位を持つイオン化されたプラズマガスB+は軌道修正の力を受け、ゼロ電位に接地されたアノード20へ吸収される。
これにより、逆方向30へ流れるイオン化されたプラズマガスB+のグリッド19及び
プラズマ発生室17への流れ込みを防止し、グリッド19とアノード20のスパッタを防ぎ、プラズマ発生室17でのプラズマを安定させ、電子ビーム照射時のイオン化ロスを低減させることが可能となる。
【0053】
なお、中間電極29に印加する電圧は、プラズマ発生室17内のプラズマ中の電子26を軌道補正により収束させる電界を発生させ、収束された電子ビーム24を加速させる電界を発生させるグリッド19及びアノード20へ印加する電圧へ意図しない影響を与える場合がある。このため、中間電極29に印加されている正の電圧を適切な電圧とする必要があるが、これは実験的に求めることが可能である。
【0054】
本発明の最良実施形態によれば、バッチ式プラズマ装置において、以下の1つ又はそれ以上の効果を有する。
(1)プラズマプロセスにEBEPを用いる場合に、特に逆流イオンによりグリッドやアノードなどの加速電極がスパッタされるという問題が生じるが、グリッドと処理室との間に正の電圧が印加された制御電極を設けることにより、グリッドがスパッタされるのを抑制することができる。また、グリッドのスパッタが抑制されるので、グリッドがスパッタされることに起因するアノードのスパッタも抑制することができる。これにより、電子ビーム加速電極内のスパッタを抑制し、スパッタ作用による異物の発生を解消することができる。したがって、グリッドやアノードの電極表面が汚れることもなく、パーテイクルの発生原因も解消される。その結果、グリッド及びアノードに印加される電圧が安定し、プラズマ中の電子の収束作用、加速作用が著しく変動するのを防止できるので、電子ビームの照射量、電子エネルギーの減少を有効に防止できる。
(2)また、グリッドとアノードとの間に設置した中間電極に適切な正の電圧を印加することにより、電子ビーム照射時のイオンロスを低減させることができ、電子ビームによる励起プラズマを安定させることができる。
(3)また、イオン化されたプラズマガスB+が、グリッドからプラズマ発生室まで到達したり、発生中のプラズマ中の電子またはイオンと衝突したりすることがなくなるので、プラズマ発生室内でのプラズマ発生に悪影響を及ぼすこともなくなる。
(4)また、グリッドと処理室との間に制御電極を設けると、制御電極がスパッタされるという問題が新たに生じるが、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けることにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
(5)電子ビーム励起プラズマのウエハ面内及びウエハ面間の均一性を向上させることができ、ウエハの膜厚均一性を向上することができる。
(6)半導体デバイスの製造における品質の向上を図ることができる。
【0055】
以上説明した本発明の最良実施形態では、グリッド電極と処理室との間に制御電極を設け、さらに制御電極と処理室の間に接地されたアノード電極を設けるようにしたが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することが可能である。
【0056】
例えば、グリッド電極と処理室との間に制御電極を設ける点は同じでも、制御電極と処理室の間に設けるアノード電極は、ゼロ電位に接地せず正にバイアスするようにしてもよい。これによれば、制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことはできなくなるものの、制御電極のない従来例と異なり、グリッドのスパッタを抑制し、スパッタ作用による異物の発生を解消することができる。
【0057】
例えば、プラズマ発生室におけるプラズマの発生方法は、一例として高周波を印加することによるICPを用いているが、これに限定されることなく、電子サイクロトロン共鳴プラズマや、表面波プラズマなど、スパッタ作用を極力抑えたプラズマ発生方式ならば他の方式を適用することもできる。
【0058】
例えば、半導体デバイス製造装置をウエハを多数枚同時処理するバッチ式プラズマ装置に適用した場合を説明したが、ウエハを1枚ないし数枚ずつ処理する枚葉式プラズマ装置にも適用することができる。
【0059】
また、プラズマ発生室における電子源用プラズマガスと反応寄与プラズマガスは、同一のものであっても異なるものであってもよい。異なるものである場合は、ガス導入ポート31とは異なる別なガス導入ポート37を必要とする場合である。
【0060】
上述した電子源用プラズマガス及び反応寄与プラズマガスには、反応プロセスに応じて、例えば、H2、He、Ar、N2、アンモニアガス(NH3)などを用いることができる。この場合に、電子源用と反応寄与用のプラズマガスが同一でも、あるいは異なっていてもよく、さらにはプラズマガスの他にこのプラズマガスと異なる種類のガスを供給してウエハ処理するようにしてもよい。例えば、プラズマガスと異なる種類のガスを供給する場合として、励起もしくはイオン化されたプラズマガスとしてNH3を用い、ガス導入ポート37からシラン系ガス、例えばDCS(SiH2Cl2)を供給する方法もある。この方法によれば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)処理によりシリコン窒化膜(Si3N4)を形成することが可能である。
【0061】
また、プラズマCVD処理に限らず、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)処理や、プラズマを利用したH2活性種によるウエハ上の自然酸化膜の除去にも利用可能である。例えば、プラズマを利用したH2活性種によるウエハ上の自然酸化膜を除去する場合には、ICPで作ったプラズマから電子を引き出し、ウエハ直上で原子状水素を発生させる。
【0062】
以下に本発明の好ましい態様を付記する。
【0063】
第1の態様は、被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、プラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極とを備え、前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置である。
グリッドにより、プラズマ発生室で発生したプラズマから電子が引き出されて集束される。集束した電子は制御電極を介してアノードで加速される。加速された電子は処理室に導入される。加速された電子が処理室に導入されると、処理室のプラズマガスが励起される。これにより励起もしくはイオン化されたプラズマガスが生成される。この励起もしくはイオン化されたプラズマガスによって被処理基板が処理される。
このようにプラズマプロセスに加速させた電子を用いる場合に、特にグリッドがスパッタされるという問題があるが、グリッドと処理室との間に正の電圧を印加された制御電極を設けたことにより、グリッドがスパッタされるのを確実に防ぐことができる。なお、制御電極はグリッドとアノードとの間に設けるようにしても、アノードと処理室との間に設けるようにしてもよい。
【0064】
第2の態様は、前記アノードは、前記制御電極と前記処理室との間に設けられ、接地されていることを特徴とする。
このようにプラズマプロセスに加速させた電子を用いる場合に、特に制御電極がスパッタされるという問題があるが、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けたことにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
【0065】
第3の態様は、電子ビームによる励起プラズマを利用して成膜することを特徴とするバッチ式半導体製造装置である。
【0066】
第4の態様は、複数の被処理基板をプラズマ処理する半導体デバイス製造装置であって、排気可能に構成された処理容器と、前記処理容器内に挿入される前記複数の被処理基板を多段に保持する基板保持具と、前記処理容器内にプラズマガスを供給するプラズマガス供給手段と、前記処理容器に連通するプラズマを発生するプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室から前記処理容器内の前記基板保持具に保持される被処理基板間に電子を照射するための電子供給装置と、前記処理容器内で前記基板保持具を回転させる回転装置と、を備えた半導体デバイス製造装置であって、前記電子供給装置が、前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極とを備えた半導体デバイス製造装置である。
処理容器内の基板保持具を回転させ、プラズマ発生室でプラズマを発生させる。電子供給装置によりプラズマ発生室から電子が発射される。発射された電子は、基板保持具に保持される被処理基板間のプラズマガスに当る。これにより電子ビーム励起プラズマが生成される。このプラズマにより複数の被処理基板が同時にプラズマ処理される。このとき、基板保持具が回転装置によって回転しているので、被処理基板間でプラズマがより均等に生成されて、被処理基板は面内及び面間でより均一にプラズマ処理される。また、被処理基板間に電子を照射するので、電子供給装置の構成が簡単になり、装置構造も比較簡単に構成できる。また、制御電極と処理室の間に接地されたアノードを設けたことにより、処理室内のガスをプラズマ化する際に発生するイオンがアノードに吸収されるので、イオンにより制御電極がスパッタされるのを確実に防ぐことができる。
【0067】
第5の態様は、第4の態様において、前記プラズマ発生室が処理容器内に設けられる半導体デバイス製造装置であり、これにより装置の小型化を図ることができる。
【0068】
第6の態様は、第4または第5の態様において、前記プラズマ発生室が誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)源を有する半導体デバイス製造装置であり、これにより電子を含むクリーンなプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の最良実施形態における半導体デバイス製造装置のバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】本発明の最良実施形態における電子ビーム励起プラズマを説明する図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明の前提実施形態における半導体デバイス製造装置のバッチ式プラズマ処理炉の構成を示す縦断面図である。
【図6】図5におけるX−X断面図である。
【図7】本発明の前提実施形態における電子ビーム励起プラズマを説明する図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】本発明の一実施の形態における半導体デバイス製造装置の全体斜透視図である。
【図10】本発明の一実施の形態における半導体デバイス製造装置の側面透視図である。
【図11】従来例の半導体デバイス製造装置におけるバッチ式プラズマ処理炉の縦断面図である。
【図12】図11におけるX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0070】
3 ボート(基板保持具)
6 ウエハ(被処理基板)
7 プロセスチューブ(処理容器)
17 プラズマ発生室
18 電子供給装置
26 電子
29 制御電極
31 ガス導入ポート(プラズマガス供給装置)
32 排気管
33 ガス供給系(プラズマガス供給装置)
36 回転駆動機構(回転装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、
プラズマを発生するプラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、
前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、
前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、
前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極と
を備え、
前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置。
【請求項2】
前記アノードは、前記制御電極と前記処理室との間に設けられ、接地されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス製造装置。
【請求項1】
被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置において、
プラズマを発生するプラズマ発生室と、
前記プラズマ発生室で生成されたプラズマから電子を集束させるグリッドと、
前記グリッドで集束させた電子を加速させるアノードと、
前記アノードで加速させた電子が導入される処理室と、
前記グリッドと前記処理室との間に設けられ正の電圧を印加される制御電極と
を備え、
前記処理室内に導入される加速電子により該処理室内のガスをプラズマ化して前記被処理基板を処理する半導体デバイス製造装置。
【請求項2】
前記アノードは、前記制御電極と前記処理室との間に設けられ、接地されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【公開番号】特開2009−33064(P2009−33064A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198081(P2007−198081)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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