半導体基板の製造方法および発光素子
【課題】 半導体の結晶性を向上させることが可能な半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の半導体基板の製造方法は、単結晶基板2の上に単結晶基板2を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、平坦な上面4Aを有する複数の突起4が第1主面2Aに設けられた単結晶基板2を準備する工程と、複数の突起4のうち、上面4Aから半導体層3を結晶成長させるものを第1突起4aとし、第1突起4a同士の間に位置する、上面4Aに半導体層3を結晶成長させないものを第2突起4bとして、第2突起4bの上面4Aを被覆するように実質的に半導体層3が結晶成長しないマスク層5を形成する工程と、第1突起4aの上面4Aからそれぞれ第2突起4bの上面4Aのマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うように半導体層3を結晶成長させる工程とを有する。そのため、単結晶基板2上に成長させる半導体層3の単結晶基板2に対する平坦性を向上させることができ、半導体層3の結晶性を向上させることができる。
【解決手段】 本発明の半導体基板の製造方法は、単結晶基板2の上に単結晶基板2を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、平坦な上面4Aを有する複数の突起4が第1主面2Aに設けられた単結晶基板2を準備する工程と、複数の突起4のうち、上面4Aから半導体層3を結晶成長させるものを第1突起4aとし、第1突起4a同士の間に位置する、上面4Aに半導体層3を結晶成長させないものを第2突起4bとして、第2突起4bの上面4Aを被覆するように実質的に半導体層3が結晶成長しないマスク層5を形成する工程と、第1突起4aの上面4Aからそれぞれ第2突起4bの上面4Aのマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うように半導体層3を結晶成長させる工程とを有する。そのため、単結晶基板2上に成長させる半導体層3の単結晶基板2に対する平坦性を向上させることができ、半導体層3の結晶性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法および発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体層を基板上に積層させる方法が種々提案されている。特に、発光素子や受光素子に用いられる半導体層を基板上に結晶成長させる場合には、半導体層の結晶品質を向上させる必要があった。
【0003】
そこで、基板上に半導体層を結晶成長させる技術として、例えば、基板上に凹凸を設けることによって、基板上に成長させる半導体層の結晶性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された半導体層を成長させる技術によれば、基板の主面に設けられた凸部の間隔が広くなるほど、凸部上に成長させる半導体層の平坦性を維持することが難しかった。そのため、基板上に成長させる半導体層の結晶軸の配向性が低下し、半導体層の結晶性を向上させることが困難であるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献1に開示された方法によって製造された発光素子の技術によれば、基板と光半導体層との屈折率差が大きかったため、光半導体層で発光した光が光半導体層と基板との界面で、光半導体層側に反射されやすく、光取出し効率を向上させることが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に半導体層を成長させる際に、成長させる半導体層の平坦性を向上させることが可能な半導体基板の製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、光半導体層と基板との界面における反射を抑制することが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法は、単結晶基板の上に該単結晶基板を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、平坦な上面を有する複数の突起が主面に設けられた前記単結晶基板を準備する工程と、複数の前記突起のうち、前記上面から前記半導体層を結晶成長させるものを第1突起とし、該第1突起同士の間に位置する、前記上面に前記半導体層を結晶成長させないものを第2突起として、該第2突起の前記上面を被覆するように実質的に前記半導体層が結晶成長しないマスク層を形成する工程と、前記第1突起の前記上面からそれぞれ前記第2突起の前記上面の前記マスク層を越えて前記単結晶基板を覆うように前記半導体層を結晶成長させる工程とを有する。
【0010】
また、本発明の一実施形態にかかる発光素子は、平坦な上面を有する複数の突起を主面
に有する単結晶基板と、複数の前記突起の一部の前記上面に選択的に設けられた、前記単結晶基板よりも高い屈折率を有するマスク層と、前記単結晶基板上に、複数の前記突起および前記マスク層を覆うように設けられた、前記マスク層よりも高い屈折率を有する光半導体層とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法によれば、上述のように、第1突起の上面から第2突起の上面のマスク層を越えて半導体層を結晶成長させる工程を有することから、成長させる半導体層の平坦性を向上させることができ、良好な結晶品質の半導体層を成長させることができる。
【0012】
本発明の一実施形態にかかる発光素子によれば、上述のように、単結晶基板の突起と光半導体層との間にマスク層を有するため、光半導体層で発光した光が、光半導体層と基板との界面において、光半導体層側に反射されるのを抑制することができる。その結果、光半導体層で発光した光を基板に入射しやすくすることができ、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる発光素子に用いられた単結晶基板の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一例を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図4】本発明の一実施形態にかかる発光素子に用いられた単結晶基板のその他の例を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる発光素子の変形例を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図6】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図であり、図1のA−A’で切断したときの断面に相当する。
【図7】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の単結晶基板の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の変形例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。
【0015】
本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0016】
<発光素子>
図1は本発明の実施の形態の一例の発光素子1の斜視図、図2は、単結晶基板2を平面視したときの平面図、図3は図1に示す発光素子1の断面図であり、図1および図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【0017】
発光素子1は、図1および図3に示すように、単結晶基板2と、単結晶基板2上に成長させた半導体層である光半導体層3とを有する。
【0018】
単結晶基板2は、光半導体層3を成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウムなどを用いることができる。単結晶基板2の厚みとしては、例えば1μm以上1500μm以下程度である。単結晶基板2の厚みは、単結晶基板2の第1主面2Aから第2主面2Bまでの厚みを指す。
【0019】
光半導体層3で発光した光を光半導体層3の単結晶基板2側から取り出す場合には、単結晶基板2として光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の基材が用いられる。透光性の基材としては、光半導体層3で発光した光の波長に対して、例えば60%以上の透過率を有するものを用いればよい。単結晶基板2の透過率を求める方法としては、例えばJIS K0115に準拠した吸光光度分析法などを用いることができる。
【0020】
単結晶基板2として用いられる透光性の基材としては、具体的に、後述する発光層3bの構成を用いた場合、サファイア、窒化ガリウム、酸化亜鉛または二ホウ化ジルコニウムなどを単結晶基板2として用いることができる。
【0021】
本例において、単結晶基板2は光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の材料であるサファイアにより形成されている。単結晶基板2としてサファイアを用いた場合には、結晶を成長させる結晶成長面として、例えばA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0022】
単結晶基板2は、第1主面2Aに複数の突起4を有している。突起4は、平坦な上面4Aを有するように設けられている。なお、単結晶基板2の第1主面2Aは、単結晶基板2の突起4が設けられていない主面の領域を指す。
【0023】
突起4は、例えば単結晶基板2を加工することにより、単結晶基板2と一体的に設けられている。突起4の上面4Aは、単結晶基板2の第1主面2Aからの距離が最も遠い位置にある面を指す。突起4は、単結晶基板2の第1主面2Aから上面4Aまでの高さが、例えば0.2μm以上5μm以下に設定されている。突起4の幅は、例えば0.5μm以上50μm以下に設定されている。
【0024】
突起4の上面4Aは、単結晶基板2の結晶成長面となるように設定されている。突起4の上面4Aの平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、突起4の上面4Aの表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。突起4の上面4Aは、単結晶基板2の第1主面2Aから傾斜していてもよく、突起4の上面4Aの傾斜角は単結晶基板2の第1主面2Aに対して、単結晶基板2のオフ角である例えば0°以上2°以下の角度に設定される。
【0025】
突起4としては、上面4Aを有する形状であればよく、例えば、四角柱状または六角柱状などの多角柱状または円柱状などのものを用いることができる。本例において突起4は、円柱状となるように設けられている。
【0026】
突起4として、側面が単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜した形状であってもよい。第1主面2Aに対して傾斜した側面を持つ突起4としては、例えば四角錘台状または六角錘台状などの多角錘台状または円錐台状などのものを用いることができる。この場合、光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と突起4の側面との界面で光半導体層2側に反射されにくくすることができるため、単結晶基板2に入射しやすくすることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0027】
複数の突起4のうち一部の突起4の上面4Aには、マスク層5が選択的に設けられている。マスク層5は、第2突起4bの上面4Aを覆うように設けられている。すなわち、マスク層5は、第2突起4bの上面4Aが露出しないように設けられる。マスク層5の厚みは、例えば0.02μm以上2μm以下に設定されている。
【0028】
このようなマスク層5は、実質的に光半導体層3が結晶成長しないものであるので、マスク層5が設けられた突起4(第2突起4b)の上面4Aから光半導体層3は成長しにくく、マスク層5が設けられていない突起4の上面4Aから光半導体層3が成長しやすくなる。以後の説明において、光半導体層3を結晶成長させる突起4を第1突起4aと称し、マスク層5が設けられた突起4を第2突起4bと称する。
【0029】
第2突起4bは、複数の突起4のうち、一部の突起4にマスク層5が選択的に形成されて設けられる。すなわち、複数の突起4のうちいずれかの突起4の上面4Aに、第2突起4bとしてマスク層5が設けられていればよい。第2突起4bは、全体の突起4の数に対して、例えば10%以上90%以下の数となるように設けられる。
【0030】
マスク層5は、実質的に光半導体層3が結晶成長しないものであるとともに、単結晶基板2よりも高い屈折率の材料などを用いることができる。具体的には、マスク層5としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブまたはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料から選択することができる。
【0031】
単結晶基板2上には、図3に示すように、複数の突起4およびマスク層5を覆うように光半導体層3が設けられている。光半導体層3は、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを順次積層することにより構成されている。光半導体層3は、全体の厚みを例えば0.1μm以上10μm以下として形成することができる。
【0032】
光半導体層3は、屈折率が単結晶基板2のマスク層5の屈折率よりも高くなるように設けられている。このような光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。
【0033】
III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。
【0034】
光半導体層3は、単結晶基板2上に結晶成長させることによって設けられている。そのため、光半導体層3は、単結晶基板2から厚み方向に延在する転位8を有している。本例においては、光半導体層3として窒化ガリウムを用いている。光半導体層3の各層の屈折率は、窒化ガリウムを用いた場合には、例えば1.8以上2.7以下に設定される。
【0035】
転位8は、成長させる半導体層の結晶面に、意図しない結晶面や原子ステップが発生す
ることにより生じやすくなり、例えば刃状転位またはらせん状転位などの種類がある。このような転位8は、第1半導体層3aの格子定数と単結晶基板2の格子定数とが異なるため、単結晶基板2と第1半導体層3aとの界面で発生しやすくなっている。
【0036】
第1突起4a上には、光半導体層3が結晶成長しやすくなっていることから、第1突起4aの上面4Aから厚み方向に転位8が存在しやすくなっている。一方、第2突起4b上には、光半導体層3が結晶成長しにくくなっていることから、第2突起4aの上面4Aおよびマスク層5から厚み方向に転位8が存在しにくくなっている。そのため、光半導体層3を平面透視して、第1突起4aと重なる領域に転位8が存在しやすくなっているとともに、第2突起4bと重なる領域に転位8が存在しにくくなっている。
【0037】
第1半導体層3aは、単結晶基板2上に設けられている。第1半導体層3aは、厚みが1μm以上10μm以下に設定されている。第1半導体層3aは、単結晶基板2上に有する突起4の上面4Aに設けられている。
【0038】
発光層3bは、第1半導体層3a上に設けられている。発光層3bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層からなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムとの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層3bは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光することができる。
【0039】
このように本例の発光素子20で発光した光の波長が、例えば350nm以上600nm以下である場合、光半導体層3の屈折率が約1.75以上2.35以下で、サファイアの屈折率が約1.65以上1.80以下になる。そのため、マスク層5としては、例えば、酸化マグネシウム(屈折率 約1.68以上1.80以下)、二酸化ジルコニウム(屈折率 約1.78以上2.00以下)、フッ化カルシウム(屈折率 約1.50以上2.10以下)、酸化ハフニウム(屈折率 約1.90以上2.10以下)、酸化イットリウム(屈折率 約1.80以上1.90以下)などを用いることができる。
【0040】
第2半導体層3cは、発光層3b上に設けられている。第2半導体層3cは、電子または正孔のどちらかを多数キャリアとすることにより、第1半導体層3aとは逆導電型を示すように設定されている。半導体層に導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムまたはシリコンを不純物として添加する方法を用いることができる。
【0041】
第1電極層6は第1半導体層3a上に、第2電極層7は第2半導体層3c上に、それぞれ設けられている。第1電極層6および第2電極層7によって、光半導体層3に電圧が印加される。
【0042】
第1電極層6および第2電極層7の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属、または酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、もしくは銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。
【0043】
第1電極層6および第2電極層7は、例えばスパッタリング法または蒸着法などの積層方法などを用いて形成することができる。また、第1電極層6および第2電極層7として、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数回積層して設けてもよい。
【0044】
本例においては、光半導体層3で発光した光を単結晶基板2側から取り出すことから、
第2電極層7として反射性電極材料を用いてもよい。第2電極層7として反射性電極材料を用いた場合には、光半導体層3で発光した光を単結晶基板2側に反射しやすくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【0045】
本例においては、光半導体層3を平面透視して、マスク層5が設けられていない単結晶基板2の突起4から光半導体層3の厚み方向に転位8が延在しやすくなっている、一方、マスク層5と重なる領域の光半導体層3には転位8が少なくなっている。そのため、マスク層5と重なる領域の光半導体層3では、マスク層5が設けられていない突起4と重なる領域の光半導体層3と比較して、光半導体層3に延在する転位8の数が少ないため、良好な結晶性を有している。すなわち、マスク層5と重なる領域の光半導体層3では、効率良く発光するようになっている。
【0046】
さらに、マスク層5の屈折率が、単結晶基板2の屈折率と光半導体層3の屈折率との間に設定されていることから、マスク層5によって光半導体層3と単結晶基板2との屈折率差を緩和することができ、マスク層5と重なる領域の光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と単結晶基板2との界面で反射されにくくすることができる。
【0047】
その結果、光半導体層3を平面透視して、マスク層5と重なる光半導体層の領域から効率良く発光させることができるとともに、マスク層5によって光半導体層5と単結晶基板2との界面で反射されにくくすることができるため、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0048】
仮に、単結晶基板上に光半導体層のみを成長させた構成では、単結晶基板と光半導体層との屈折率差を緩和することができず、単結晶基板と光半導体層との界面で光半導体層側に反射されやすくなり、光取出し効率の低下を招くおそれがある。
【0049】
第2突起4bの突起4を、図4に示すように、第1突起4aの幅より大きく設けてもよい。このように第2突起4bの幅を、第1突起4bの直径より大きく設けることにより、第1突起4aの上面4Aから延びる転位8の数を抑制した状態で、平面透視して光半導体層3のマスク層5と重なる領域を広げることができるとともに、単結晶基板2と光半導体層3との界面で反射されにくくした領域を広げることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0050】
マスク層5は、図5に示すように、第1突起4aの上面4Aを除く単結晶基板2の光半導体層3を成長させる面の表面を覆うように設けてもよい。すなわち、マスク層5を第1突起4aの上面4Aを露出させるとともに、第2突起4bの上面4Aおよび側面、第1突起4aの側面および単結晶基板2の主面2Aを覆うように設けてもよい。
【0051】
このようにマスク層5を単結晶基板2上に設けた場合、光半導体層3を平面透視して、第1突起4aと重ならない領域にマスク層5が設けられているため、光半導体層3と単結晶基板2との屈折率差を緩和することができ、光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0052】
また、第1突起4aと重ならない領域がマスク層5で覆われているため、マスク層5で覆われている単結晶基板2の表面から結晶成長しにくくすることができることから、突起4aの上面4A以外の単結晶基板2から延びる転位8をさらに少なくすることができ、平面透視して第1突起4aと重ならない領域における光半導体層3の発光効率を向上させることができる。
【0053】
<半導体基板の製造方法>
図6−図13は、それぞれ半導体基板9の製造工程を示す断面図であり、いずれも図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。上述の発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図11に示すように、本実施の形態の半導体基板9の製造方法により製造される半導体基板9は、単結晶基板2と、マスク層5と、半導体層3とから主に製造される。なお、本例においては、半導体層3として光半導体層3を成長させる場合について説明する。
【0055】
このように製造される半導体基板9は、例えば発光素子、半導体レーザ、受光素子またはトランジスタなどの電子部品に用いられる。
【0056】
続いて、本発明の実施の形態の半導体基板9の製造方法を説明する。
【0057】
(単結晶基板を準備する工程)
単結晶基板2の第1主面2Aに、突起4を形成する方法を、図6を参考にしつつ説明する。
【0058】
単結晶基板2としては、半導体を成長させることが可能な材料を用いられる。第1基板2は、例えばサファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化シリコン、窒化インジウムまたはシリコンカーバイドなどを用いることができる。本例において、単結晶基板2は、サファイアを用いている。
【0059】
単結晶基板2は、平面視形状が例えば四角形状などの多角形状または円形状などに設定されている。単結晶基板2は、厚みが例えば2μm以上2000μm以下に設定されている。単結晶基板2として、単結晶基板2の上面2A’が平坦なものを用いることができる。単結晶基板2の上面2A’の平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、単結晶基板2の上面2A’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。
【0060】
単結晶基板2の上面2A’としては、例えば単結晶基板2の結晶面が揃っているものを用いることができる。単結晶基板2がサファイアの場合、単結晶基板2の結晶面としては、例えばサファイアのA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0061】
図6に示すように、単結晶基板2の上面2A’上に、単結晶基板2の上面2A’の一部が露出する露出領域10を有するマスクパターン11を形成する。マスクパターン11の露出領域10は、平面視形状が例えば単結晶基板2の第1主面2A上に形成する突起4の底面形状に設定される。そのため、露出領域10の幅は、突起4の底面の寸法に設定すればよく、例えば0.5μm以上50μm以下に設定される。
【0062】
マスクパターン11としては、後に容易に除去することができる材料を選択することができ、例えば酸化シリコンなどの酸化物またはチタンなどの金属を用いることができる。マスクパターン11の膜厚は、エッチングにより単結晶基板2の一部を除去する場合であれば、単結晶基板2のエッチングレートとマスクパターン11のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができ、例えば200nm以上3500nm以下に設定することができる。
【0063】
マスクパターン11は、マスク材料をスパッタリング法または蒸着法などの真空積層法を用いることによって単結晶基板2上に積層膜を積層し、露出領域10をパターニングすることによって形成することができる。この際、単結晶基板2としてサファイアを用いてドライエッチングを行なう場合、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして用い
ることができるが、この場合、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0064】
次に、図7に示すように、単結晶基板2の上面2A’の一部を露出させた露出領域10からエッチング法などで、単結晶基板2の一部を厚み方向へ除去する。単結晶基板2の一部を除去する方法としては、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどのエッチング法を用いることができる。ここで、単結晶基板2の上面2A’に、結晶が揃った平坦な結晶面を用いた場合、突起4の上面4Aがマスクパターン11で覆われていることから、単結晶基板2の一部を除去する工程の際に、平坦性を維持することができる。
【0065】
単結晶基板2としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングにより単結晶基板2の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行なうことによって、生産性を向上させることができる。
【0066】
その後、図8に示すように、マスクパターン11を単結晶基板2から剥離することによって、単結晶基板2の第1主面2Aに複数の突起4を単結晶基板2と一体的に設けることができる。
【0067】
本例において、上面4A’が平坦な単結晶基板2を用いた場合について説明したが、平坦性の低い単結晶基板2を用いた場合、突起4を設けてマスクパターン11を剥離した後、突起4の上面4Aを研磨する工程を設けてもよい。このようにマスクパターン11を剥離した後に、突起4の上面4Aを研磨することにより、突起4の上面4Aに残留した、例えばマスクパターン11の一部または剥離剤などの付着物を除去するとともに、平坦化することができる。
【0068】
さらに、マスクパターン11を剥離する工程に代えて、マスクパターン11の上方から突起4の上面4Aまで研磨してもよい。この場合、マスクパターン11を除去する工程と突起4の上面4Aを平坦化する工程とを続けて行うことができ、生産性を向上することができる。
【0069】
(マスク層を形成する工程)
次に、単結晶基板2の第1主面2Aに設けた複数の突起4のうち、一部の突起4上にマスク層5を形成する。ここで、複数の突起4のうち、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させるものを第1突起4aとし、第1突起4a同士の間に位置する、上面4Aに光半導体層3を結晶成長させないものを第2突起4bとしている。
【0070】
マスク層5は、非晶質の材料などを用いることができる。マスク層5としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブまたはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料から選択することができる。
【0071】
マスク層5は、例えばスパッタリング法、蒸着法またはスピンコート法などを用いて積層した後、パターニングすることにより形成される。具体的には、第1主面2Aに突起4を有する単結晶基板2上に、図9に示すように、マスク層5となる材料をスパッタリング法により積層した積層膜12を形成する。
【0072】
その後、積層膜12は、図10に示すように、エッチング法またはフォトリソグラフィ法を用いて、第1突起4aの上面4Aが露出するとともに、第2突起4bの上面4Aを覆うマスク層5となるようにパターニングされる。積層膜12の厚みは、マスク層5と同程度の厚
みであり、例えば0.02μm以上5μm以下に設定される。
【0073】
本例において、第2突起4bは、図2に示すように、第1突起4a同士の間に位置するように設けられている。具体的に、第2突起4bは、第1突起4a同士を通る仮想直線と重なる部分を有するように設けられている。すなわち、第1突起4aと第2突起4bとが一直線上に位置するように設けられている。第2突起4bは、全体の突起4の数に対して、例えば10%以上90%以下の数となるように設けられる。
【0074】
(光半導体層を成長させる工程)
次に、図11に示すように、単結晶基板2上に光半導体層3を成長させる。
【0075】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。本例においては、光半導体層3は窒化ガリウムが用いられている。単結晶基板2の上面2Aに光半導体層3を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル法、有機金属エピタキシャル法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0076】
光半導体層3を成長させる方法としては、例えば、光半導体層3を、第1主面2に対して垂直である垂直方向より第1主面2Aと平行な平面方向に成長しやすくした横方向成長を用いることができる。具体的には、光半導体層3のそれぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整することにより、光半導体層3を横方向成長させることができる。
【0077】
単結晶基板2上に光半導体層3として窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるには、窒化ガリウムの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。成長温度としては、例えば350℃以上1500℃以下に設定することができる。単結晶基板2上に窒化ガリウムからなる第1半導体層3aの低温バッファ層を設ける場合には、成長温度として例えば350℃以上800℃以下に設定することができる。
【0078】
光半導体層3は、第1突起4aの上面4Aからそれぞれ第2突起4bの上面4Aのマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うように結晶成長される。
【0079】
本例において、単結晶基板2は、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させる第1突起4aと、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させないようにマスク層5が形成された第2突起4bを有している。マスク層5は、非晶質からなる材料で構成されているため、実質的に光半導体層3が結晶成長しないようになっている。なお、「実質的に光半導体層3が結晶成長しない」とは、第1突起4aの上面4Aと比較して、マスク層5の表面に結晶の核が生成されにくく、結晶が成長しにくくなっている状態を指す。
【0080】
このように単結晶基板2に光半導体層3を結晶成長させた場合、光半導体層3は、第1突起4aの上面4Aから結晶成長するとともに、第2突起4bの上面4bから結晶成長しにくくなっている。そのため、第1突起4aの上面4Aから結晶成長させた光半導体層3がマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うようになる。
【0081】
このように光半導体層3を単結晶基板2上に結晶成長させることができることから、単結晶基板2を覆う際に、第1突起4aから横方向に成長した光半導体層3の平坦性を向上させることができる。ここで、光半導体層3の平坦性は、単結晶基板2の第1主面2Aに対する平坦性または原子オーダーである2nm以下の平坦性を指す。
【0082】
このように第1突起4aの上面4Aに成長させる光半導体層3の平坦性を向上させることができ、さらには成長させた光半導体層3の結晶軸の配向性を向上させることができる
。具体的には、光半導体層3を成長させる際に、単結晶基板2の第1主面2Aに対する光半導体層3の平坦性を向上させることができるため、成長する光半導体層3にひずみなどを内在しにくくすることができる。そのため、単結晶基板2の第1突起4aの上面4Aの結晶軸の配向性を維持した状態で光半導体層3を成長させることができ、光半導体層3の結晶性を向上させることができる。
【0083】
本例の発光素子20における光半導体層3は、単結晶基板2上に、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cから構成されている。そのため、第1半導体層3aの平坦性を維持した状態で発光層3bおよび第2半導体層3cを成長させることができ、発光層3bで発光する光の波長分散性を改善することができる。
【0084】
一方、単結晶基板上に複数の突起を設けて光半導体層を成長させた構成の発光素子の場合、原子オーダーでの光半導体層の平坦性が低下しやすくなる。その結果、光半導体層の一部が局所的にひずみやすくなり、発光層で発光する光に所望の波長以外の光が混ざりやすくなるため、波長分散性の低下を招くおそれがあった。
【0085】
上述した「第1突起4a同士の間」には、図12に示すように、隣接する第1突起4a同士を通る仮想直線と重ならない場合も含むものである。すなわち、第2突起4bが第1突起4aと一直線上にない場合である。このように第2突起4bを配置した場合でも、第1突起4aから結晶成長させた光半導体層3における、平坦性を向上させることができる。
【0086】
光半導体層3を結晶成長させる工程の前に、図13に示すように、第1突起4aの上面4Aに、頂部13aから上面4Aに対して傾斜した結晶面13bを有する結晶体13を成長させる工程を有してもよい。
【0087】
このような結晶体13は、光半導体層3として窒化ガリウムを用いた場合、頂部13aから突起4の上面4Aに対して傾斜した結晶面13bを有する結晶体を形成する方法としては、例えば20kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させればよい。このような条件で結晶成長させることにより、図13(a)に示すように、単結晶基板2の第1突起4aの上面4Aに結晶体13を成長させることができる。このような結晶体13の結晶面13bは、サファイアからなる単結晶基板3の第1突起4aの上面4Aがc面である場合、例えば{1−101}面とすることができる。
【0088】
その後、図13(b)に示すように、結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させる。このように結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させることにより、それぞれの第1突起4aの上面4Aから延びる転位8同士を結合させて、光半導体層3の厚み方向に延びる転位8の数を少なくすることができる。
【0089】
このように光半導体層3の厚み方向に延びる転位8の数を少なくすることにより、光半導体層3の結晶品質を向上させることができ、光半導体層3の発光効率を向上させることができる。また、光半導体層3の第1半導体層3aにおいて、転位8を結合させた場合には、発光層3bに延在する転位8を少なくすることができるため、発光層3bで発光する領域を広げることができる。
【0090】
さらに、ファセット形成時の温度以上に設定した高温状態およびファセット形成時の圧力以下に設定した低圧力状態にして結晶成長させることにより、光半導体層3を横方向成長させることができる。
【0091】
また、結晶体13を成長させる工程において、結晶体13の頂部13aを、第2突起4bの上面4Aのマスク層5よりも高くなるように成長させてもよい。このように結晶体13の頂部
13aを、マスク層5よりも高くなるように成長させた場合には、結晶体13の結晶面13bを横方向に成長させて、隣接する結晶体13同士を結合させやすくすることができる。隣接する結晶体13同士を結合させやすくすることができるため、結晶性を向上させるとともに、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 発光素子
2 単結晶基板
3 光半導体層(半導体層)
3 第1半導体層
3b 発光層
3c 第2半導体層
4 突起
4a 第1突起
4b 第2突起
5 マスク層
6 第1電極層
7 第2電極層
8 転位
9 半導体基板
10 露出領域
11 マスクパターン
12 積層膜
13 結晶体
13a 頂部
13b 結晶面
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法および発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体層を基板上に積層させる方法が種々提案されている。特に、発光素子や受光素子に用いられる半導体層を基板上に結晶成長させる場合には、半導体層の結晶品質を向上させる必要があった。
【0003】
そこで、基板上に半導体層を結晶成長させる技術として、例えば、基板上に凹凸を設けることによって、基板上に成長させる半導体層の結晶性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された半導体層を成長させる技術によれば、基板の主面に設けられた凸部の間隔が広くなるほど、凸部上に成長させる半導体層の平坦性を維持することが難しかった。そのため、基板上に成長させる半導体層の結晶軸の配向性が低下し、半導体層の結晶性を向上させることが困難であるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献1に開示された方法によって製造された発光素子の技術によれば、基板と光半導体層との屈折率差が大きかったため、光半導体層で発光した光が光半導体層と基板との界面で、光半導体層側に反射されやすく、光取出し効率を向上させることが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に半導体層を成長させる際に、成長させる半導体層の平坦性を向上させることが可能な半導体基板の製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、光半導体層と基板との界面における反射を抑制することが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法は、単結晶基板の上に該単結晶基板を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、平坦な上面を有する複数の突起が主面に設けられた前記単結晶基板を準備する工程と、複数の前記突起のうち、前記上面から前記半導体層を結晶成長させるものを第1突起とし、該第1突起同士の間に位置する、前記上面に前記半導体層を結晶成長させないものを第2突起として、該第2突起の前記上面を被覆するように実質的に前記半導体層が結晶成長しないマスク層を形成する工程と、前記第1突起の前記上面からそれぞれ前記第2突起の前記上面の前記マスク層を越えて前記単結晶基板を覆うように前記半導体層を結晶成長させる工程とを有する。
【0010】
また、本発明の一実施形態にかかる発光素子は、平坦な上面を有する複数の突起を主面
に有する単結晶基板と、複数の前記突起の一部の前記上面に選択的に設けられた、前記単結晶基板よりも高い屈折率を有するマスク層と、前記単結晶基板上に、複数の前記突起および前記マスク層を覆うように設けられた、前記マスク層よりも高い屈折率を有する光半導体層とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法によれば、上述のように、第1突起の上面から第2突起の上面のマスク層を越えて半導体層を結晶成長させる工程を有することから、成長させる半導体層の平坦性を向上させることができ、良好な結晶品質の半導体層を成長させることができる。
【0012】
本発明の一実施形態にかかる発光素子によれば、上述のように、単結晶基板の突起と光半導体層との間にマスク層を有するため、光半導体層で発光した光が、光半導体層と基板との界面において、光半導体層側に反射されるのを抑制することができる。その結果、光半導体層で発光した光を基板に入射しやすくすることができ、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光素子を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる発光素子に用いられた単結晶基板の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる発光素子の一例を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図4】本発明の一実施形態にかかる発光素子に用いられた単結晶基板のその他の例を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる発光素子の変形例を示す断面図であり、図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図6】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図であり、図1のA−A’で切断したときの断面に相当する。
【図7】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の一工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の一例の単結晶基板の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる半導体基板の製造方法の実施形態の変形例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。
【0015】
本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0016】
<発光素子>
図1は本発明の実施の形態の一例の発光素子1の斜視図、図2は、単結晶基板2を平面視したときの平面図、図3は図1に示す発光素子1の断面図であり、図1および図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【0017】
発光素子1は、図1および図3に示すように、単結晶基板2と、単結晶基板2上に成長させた半導体層である光半導体層3とを有する。
【0018】
単結晶基板2は、光半導体層3を成長させることが可能な材料から構成されている。単結晶基板2としては、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコンまたは二ホウ化ジルコニウムなどを用いることができる。単結晶基板2の厚みとしては、例えば1μm以上1500μm以下程度である。単結晶基板2の厚みは、単結晶基板2の第1主面2Aから第2主面2Bまでの厚みを指す。
【0019】
光半導体層3で発光した光を光半導体層3の単結晶基板2側から取り出す場合には、単結晶基板2として光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の基材が用いられる。透光性の基材としては、光半導体層3で発光した光の波長に対して、例えば60%以上の透過率を有するものを用いればよい。単結晶基板2の透過率を求める方法としては、例えばJIS K0115に準拠した吸光光度分析法などを用いることができる。
【0020】
単結晶基板2として用いられる透光性の基材としては、具体的に、後述する発光層3bの構成を用いた場合、サファイア、窒化ガリウム、酸化亜鉛または二ホウ化ジルコニウムなどを単結晶基板2として用いることができる。
【0021】
本例において、単結晶基板2は光半導体層3で発光した光を透過しやすい透光性の材料であるサファイアにより形成されている。単結晶基板2としてサファイアを用いた場合には、結晶を成長させる結晶成長面として、例えばA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0022】
単結晶基板2は、第1主面2Aに複数の突起4を有している。突起4は、平坦な上面4Aを有するように設けられている。なお、単結晶基板2の第1主面2Aは、単結晶基板2の突起4が設けられていない主面の領域を指す。
【0023】
突起4は、例えば単結晶基板2を加工することにより、単結晶基板2と一体的に設けられている。突起4の上面4Aは、単結晶基板2の第1主面2Aからの距離が最も遠い位置にある面を指す。突起4は、単結晶基板2の第1主面2Aから上面4Aまでの高さが、例えば0.2μm以上5μm以下に設定されている。突起4の幅は、例えば0.5μm以上50μm以下に設定されている。
【0024】
突起4の上面4Aは、単結晶基板2の結晶成長面となるように設定されている。突起4の上面4Aの平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、突起4の上面4Aの表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。突起4の上面4Aは、単結晶基板2の第1主面2Aから傾斜していてもよく、突起4の上面4Aの傾斜角は単結晶基板2の第1主面2Aに対して、単結晶基板2のオフ角である例えば0°以上2°以下の角度に設定される。
【0025】
突起4としては、上面4Aを有する形状であればよく、例えば、四角柱状または六角柱状などの多角柱状または円柱状などのものを用いることができる。本例において突起4は、円柱状となるように設けられている。
【0026】
突起4として、側面が単結晶基板2の第1主面2Aに対して傾斜した形状であってもよい。第1主面2Aに対して傾斜した側面を持つ突起4としては、例えば四角錘台状または六角錘台状などの多角錘台状または円錐台状などのものを用いることができる。この場合、光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と突起4の側面との界面で光半導体層2側に反射されにくくすることができるため、単結晶基板2に入射しやすくすることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0027】
複数の突起4のうち一部の突起4の上面4Aには、マスク層5が選択的に設けられている。マスク層5は、第2突起4bの上面4Aを覆うように設けられている。すなわち、マスク層5は、第2突起4bの上面4Aが露出しないように設けられる。マスク層5の厚みは、例えば0.02μm以上2μm以下に設定されている。
【0028】
このようなマスク層5は、実質的に光半導体層3が結晶成長しないものであるので、マスク層5が設けられた突起4(第2突起4b)の上面4Aから光半導体層3は成長しにくく、マスク層5が設けられていない突起4の上面4Aから光半導体層3が成長しやすくなる。以後の説明において、光半導体層3を結晶成長させる突起4を第1突起4aと称し、マスク層5が設けられた突起4を第2突起4bと称する。
【0029】
第2突起4bは、複数の突起4のうち、一部の突起4にマスク層5が選択的に形成されて設けられる。すなわち、複数の突起4のうちいずれかの突起4の上面4Aに、第2突起4bとしてマスク層5が設けられていればよい。第2突起4bは、全体の突起4の数に対して、例えば10%以上90%以下の数となるように設けられる。
【0030】
マスク層5は、実質的に光半導体層3が結晶成長しないものであるとともに、単結晶基板2よりも高い屈折率の材料などを用いることができる。具体的には、マスク層5としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブまたはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料から選択することができる。
【0031】
単結晶基板2上には、図3に示すように、複数の突起4およびマスク層5を覆うように光半導体層3が設けられている。光半導体層3は、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cを順次積層することにより構成されている。光半導体層3は、全体の厚みを例えば0.1μm以上10μm以下として形成することができる。
【0032】
光半導体層3は、屈折率が単結晶基板2のマスク層5の屈折率よりも高くなるように設けられている。このような光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。
【0033】
III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。
【0034】
光半導体層3は、単結晶基板2上に結晶成長させることによって設けられている。そのため、光半導体層3は、単結晶基板2から厚み方向に延在する転位8を有している。本例においては、光半導体層3として窒化ガリウムを用いている。光半導体層3の各層の屈折率は、窒化ガリウムを用いた場合には、例えば1.8以上2.7以下に設定される。
【0035】
転位8は、成長させる半導体層の結晶面に、意図しない結晶面や原子ステップが発生す
ることにより生じやすくなり、例えば刃状転位またはらせん状転位などの種類がある。このような転位8は、第1半導体層3aの格子定数と単結晶基板2の格子定数とが異なるため、単結晶基板2と第1半導体層3aとの界面で発生しやすくなっている。
【0036】
第1突起4a上には、光半導体層3が結晶成長しやすくなっていることから、第1突起4aの上面4Aから厚み方向に転位8が存在しやすくなっている。一方、第2突起4b上には、光半導体層3が結晶成長しにくくなっていることから、第2突起4aの上面4Aおよびマスク層5から厚み方向に転位8が存在しにくくなっている。そのため、光半導体層3を平面透視して、第1突起4aと重なる領域に転位8が存在しやすくなっているとともに、第2突起4bと重なる領域に転位8が存在しにくくなっている。
【0037】
第1半導体層3aは、単結晶基板2上に設けられている。第1半導体層3aは、厚みが1μm以上10μm以下に設定されている。第1半導体層3aは、単結晶基板2上に有する突起4の上面4Aに設けられている。
【0038】
発光層3bは、第1半導体層3a上に設けられている。発光層3bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層からなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムとの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層3bは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光することができる。
【0039】
このように本例の発光素子20で発光した光の波長が、例えば350nm以上600nm以下である場合、光半導体層3の屈折率が約1.75以上2.35以下で、サファイアの屈折率が約1.65以上1.80以下になる。そのため、マスク層5としては、例えば、酸化マグネシウム(屈折率 約1.68以上1.80以下)、二酸化ジルコニウム(屈折率 約1.78以上2.00以下)、フッ化カルシウム(屈折率 約1.50以上2.10以下)、酸化ハフニウム(屈折率 約1.90以上2.10以下)、酸化イットリウム(屈折率 約1.80以上1.90以下)などを用いることができる。
【0040】
第2半導体層3cは、発光層3b上に設けられている。第2半導体層3cは、電子または正孔のどちらかを多数キャリアとすることにより、第1半導体層3aとは逆導電型を示すように設定されている。半導体層に導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウムまたはシリコンを不純物として添加する方法を用いることができる。
【0041】
第1電極層6は第1半導体層3a上に、第2電極層7は第2半導体層3c上に、それぞれ設けられている。第1電極層6および第2電極層7によって、光半導体層3に電圧が印加される。
【0042】
第1電極層6および第2電極層7の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属、または酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物や、もしくは銀−アルミニウム合金、金−亜鉛合金または金−ベリリウム合金などの合金膜を好適に用いることができる。
【0043】
第1電極層6および第2電極層7は、例えばスパッタリング法または蒸着法などの積層方法などを用いて形成することができる。また、第1電極層6および第2電極層7として、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数回積層して設けてもよい。
【0044】
本例においては、光半導体層3で発光した光を単結晶基板2側から取り出すことから、
第2電極層7として反射性電極材料を用いてもよい。第2電極層7として反射性電極材料を用いた場合には、光半導体層3で発光した光を単結晶基板2側に反射しやすくすることができ、光取出し効率を向上させることができる。
【0045】
本例においては、光半導体層3を平面透視して、マスク層5が設けられていない単結晶基板2の突起4から光半導体層3の厚み方向に転位8が延在しやすくなっている、一方、マスク層5と重なる領域の光半導体層3には転位8が少なくなっている。そのため、マスク層5と重なる領域の光半導体層3では、マスク層5が設けられていない突起4と重なる領域の光半導体層3と比較して、光半導体層3に延在する転位8の数が少ないため、良好な結晶性を有している。すなわち、マスク層5と重なる領域の光半導体層3では、効率良く発光するようになっている。
【0046】
さらに、マスク層5の屈折率が、単結晶基板2の屈折率と光半導体層3の屈折率との間に設定されていることから、マスク層5によって光半導体層3と単結晶基板2との屈折率差を緩和することができ、マスク層5と重なる領域の光半導体層3で発光した光を、光半導体層3と単結晶基板2との界面で反射されにくくすることができる。
【0047】
その結果、光半導体層3を平面透視して、マスク層5と重なる光半導体層の領域から効率良く発光させることができるとともに、マスク層5によって光半導体層5と単結晶基板2との界面で反射されにくくすることができるため、発光素子1の光取出し効率を向上させることができる。
【0048】
仮に、単結晶基板上に光半導体層のみを成長させた構成では、単結晶基板と光半導体層との屈折率差を緩和することができず、単結晶基板と光半導体層との界面で光半導体層側に反射されやすくなり、光取出し効率の低下を招くおそれがある。
【0049】
第2突起4bの突起4を、図4に示すように、第1突起4aの幅より大きく設けてもよい。このように第2突起4bの幅を、第1突起4bの直径より大きく設けることにより、第1突起4aの上面4Aから延びる転位8の数を抑制した状態で、平面透視して光半導体層3のマスク層5と重なる領域を広げることができるとともに、単結晶基板2と光半導体層3との界面で反射されにくくした領域を広げることができる。その結果、発光素子1の光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0050】
マスク層5は、図5に示すように、第1突起4aの上面4Aを除く単結晶基板2の光半導体層3を成長させる面の表面を覆うように設けてもよい。すなわち、マスク層5を第1突起4aの上面4Aを露出させるとともに、第2突起4bの上面4Aおよび側面、第1突起4aの側面および単結晶基板2の主面2Aを覆うように設けてもよい。
【0051】
このようにマスク層5を単結晶基板2上に設けた場合、光半導体層3を平面透視して、第1突起4aと重ならない領域にマスク層5が設けられているため、光半導体層3と単結晶基板2との屈折率差を緩和することができ、光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0052】
また、第1突起4aと重ならない領域がマスク層5で覆われているため、マスク層5で覆われている単結晶基板2の表面から結晶成長しにくくすることができることから、突起4aの上面4A以外の単結晶基板2から延びる転位8をさらに少なくすることができ、平面透視して第1突起4aと重ならない領域における光半導体層3の発光効率を向上させることができる。
【0053】
<半導体基板の製造方法>
図6−図13は、それぞれ半導体基板9の製造工程を示す断面図であり、いずれも図1のA−A’線で切断したときの断面に相当する。上述の発光素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図11に示すように、本実施の形態の半導体基板9の製造方法により製造される半導体基板9は、単結晶基板2と、マスク層5と、半導体層3とから主に製造される。なお、本例においては、半導体層3として光半導体層3を成長させる場合について説明する。
【0055】
このように製造される半導体基板9は、例えば発光素子、半導体レーザ、受光素子またはトランジスタなどの電子部品に用いられる。
【0056】
続いて、本発明の実施の形態の半導体基板9の製造方法を説明する。
【0057】
(単結晶基板を準備する工程)
単結晶基板2の第1主面2Aに、突起4を形成する方法を、図6を参考にしつつ説明する。
【0058】
単結晶基板2としては、半導体を成長させることが可能な材料を用いられる。第1基板2は、例えばサファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化シリコン、窒化インジウムまたはシリコンカーバイドなどを用いることができる。本例において、単結晶基板2は、サファイアを用いている。
【0059】
単結晶基板2は、平面視形状が例えば四角形状などの多角形状または円形状などに設定されている。単結晶基板2は、厚みが例えば2μm以上2000μm以下に設定されている。単結晶基板2として、単結晶基板2の上面2A’が平坦なものを用いることができる。単結晶基板2の上面2A’の平坦性は、表面粗さが例えば10nm以下に設定されている。なお、単結晶基板2の上面2A’の表面粗さとしては、JIS B0601−2001に準拠した最大高さ粗さRzを用いればよい。
【0060】
単結晶基板2の上面2A’としては、例えば単結晶基板2の結晶面が揃っているものを用いることができる。単結晶基板2がサファイアの場合、単結晶基板2の結晶面としては、例えばサファイアのA面、C面またはR面などを用いることができる。
【0061】
図6に示すように、単結晶基板2の上面2A’上に、単結晶基板2の上面2A’の一部が露出する露出領域10を有するマスクパターン11を形成する。マスクパターン11の露出領域10は、平面視形状が例えば単結晶基板2の第1主面2A上に形成する突起4の底面形状に設定される。そのため、露出領域10の幅は、突起4の底面の寸法に設定すればよく、例えば0.5μm以上50μm以下に設定される。
【0062】
マスクパターン11としては、後に容易に除去することができる材料を選択することができ、例えば酸化シリコンなどの酸化物またはチタンなどの金属を用いることができる。マスクパターン11の膜厚は、エッチングにより単結晶基板2の一部を除去する場合であれば、単結晶基板2のエッチングレートとマスクパターン11のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができ、例えば200nm以上3500nm以下に設定することができる。
【0063】
マスクパターン11は、マスク材料をスパッタリング法または蒸着法などの真空積層法を用いることによって単結晶基板2上に積層膜を積層し、露出領域10をパターニングすることによって形成することができる。この際、単結晶基板2としてサファイアを用いてドライエッチングを行なう場合、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして用い
ることができるが、この場合、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0064】
次に、図7に示すように、単結晶基板2の上面2A’の一部を露出させた露出領域10からエッチング法などで、単結晶基板2の一部を厚み方向へ除去する。単結晶基板2の一部を除去する方法としては、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどのエッチング法を用いることができる。ここで、単結晶基板2の上面2A’に、結晶が揃った平坦な結晶面を用いた場合、突起4の上面4Aがマスクパターン11で覆われていることから、単結晶基板2の一部を除去する工程の際に、平坦性を維持することができる。
【0065】
単結晶基板2としてサファイアを用いた場合に、ドライエッチングにより単結晶基板2の一部を除去する際には、サファイアと反応しやすい塩素系ガス雰囲気中でドライエッチングを行なうことによって、生産性を向上させることができる。
【0066】
その後、図8に示すように、マスクパターン11を単結晶基板2から剥離することによって、単結晶基板2の第1主面2Aに複数の突起4を単結晶基板2と一体的に設けることができる。
【0067】
本例において、上面4A’が平坦な単結晶基板2を用いた場合について説明したが、平坦性の低い単結晶基板2を用いた場合、突起4を設けてマスクパターン11を剥離した後、突起4の上面4Aを研磨する工程を設けてもよい。このようにマスクパターン11を剥離した後に、突起4の上面4Aを研磨することにより、突起4の上面4Aに残留した、例えばマスクパターン11の一部または剥離剤などの付着物を除去するとともに、平坦化することができる。
【0068】
さらに、マスクパターン11を剥離する工程に代えて、マスクパターン11の上方から突起4の上面4Aまで研磨してもよい。この場合、マスクパターン11を除去する工程と突起4の上面4Aを平坦化する工程とを続けて行うことができ、生産性を向上することができる。
【0069】
(マスク層を形成する工程)
次に、単結晶基板2の第1主面2Aに設けた複数の突起4のうち、一部の突起4上にマスク層5を形成する。ここで、複数の突起4のうち、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させるものを第1突起4aとし、第1突起4a同士の間に位置する、上面4Aに光半導体層3を結晶成長させないものを第2突起4bとしている。
【0070】
マスク層5は、非晶質の材料などを用いることができる。マスク層5としては、例えばチタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、トリウム、スカンジウム、ネオジウム、ニオブまたはナトリウムからなる酸化物もしくは弗化物もしくは窒化物の少なくとも1種類を含む材料から選択することができる。
【0071】
マスク層5は、例えばスパッタリング法、蒸着法またはスピンコート法などを用いて積層した後、パターニングすることにより形成される。具体的には、第1主面2Aに突起4を有する単結晶基板2上に、図9に示すように、マスク層5となる材料をスパッタリング法により積層した積層膜12を形成する。
【0072】
その後、積層膜12は、図10に示すように、エッチング法またはフォトリソグラフィ法を用いて、第1突起4aの上面4Aが露出するとともに、第2突起4bの上面4Aを覆うマスク層5となるようにパターニングされる。積層膜12の厚みは、マスク層5と同程度の厚
みであり、例えば0.02μm以上5μm以下に設定される。
【0073】
本例において、第2突起4bは、図2に示すように、第1突起4a同士の間に位置するように設けられている。具体的に、第2突起4bは、第1突起4a同士を通る仮想直線と重なる部分を有するように設けられている。すなわち、第1突起4aと第2突起4bとが一直線上に位置するように設けられている。第2突起4bは、全体の突起4の数に対して、例えば10%以上90%以下の数となるように設けられる。
【0074】
(光半導体層を成長させる工程)
次に、図11に示すように、単結晶基板2上に光半導体層3を成長させる。
【0075】
光半導体層3としては、例えばIII−V族半導体を用いることができる。本例においては、光半導体層3は窒化ガリウムが用いられている。単結晶基板2の上面2Aに光半導体層3を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル法、有機金属エピタキシャル法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0076】
光半導体層3を成長させる方法としては、例えば、光半導体層3を、第1主面2に対して垂直である垂直方向より第1主面2Aと平行な平面方向に成長しやすくした横方向成長を用いることができる。具体的には、光半導体層3のそれぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整することにより、光半導体層3を横方向成長させることができる。
【0077】
単結晶基板2上に光半導体層3として窒化ガリウムをエピタキシャル成長させるには、窒化ガリウムの組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。成長温度としては、例えば350℃以上1500℃以下に設定することができる。単結晶基板2上に窒化ガリウムからなる第1半導体層3aの低温バッファ層を設ける場合には、成長温度として例えば350℃以上800℃以下に設定することができる。
【0078】
光半導体層3は、第1突起4aの上面4Aからそれぞれ第2突起4bの上面4Aのマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うように結晶成長される。
【0079】
本例において、単結晶基板2は、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させる第1突起4aと、上面4Aから光半導体層3を結晶成長させないようにマスク層5が形成された第2突起4bを有している。マスク層5は、非晶質からなる材料で構成されているため、実質的に光半導体層3が結晶成長しないようになっている。なお、「実質的に光半導体層3が結晶成長しない」とは、第1突起4aの上面4Aと比較して、マスク層5の表面に結晶の核が生成されにくく、結晶が成長しにくくなっている状態を指す。
【0080】
このように単結晶基板2に光半導体層3を結晶成長させた場合、光半導体層3は、第1突起4aの上面4Aから結晶成長するとともに、第2突起4bの上面4bから結晶成長しにくくなっている。そのため、第1突起4aの上面4Aから結晶成長させた光半導体層3がマスク層5を越えて単結晶基板2を覆うようになる。
【0081】
このように光半導体層3を単結晶基板2上に結晶成長させることができることから、単結晶基板2を覆う際に、第1突起4aから横方向に成長した光半導体層3の平坦性を向上させることができる。ここで、光半導体層3の平坦性は、単結晶基板2の第1主面2Aに対する平坦性または原子オーダーである2nm以下の平坦性を指す。
【0082】
このように第1突起4aの上面4Aに成長させる光半導体層3の平坦性を向上させることができ、さらには成長させた光半導体層3の結晶軸の配向性を向上させることができる
。具体的には、光半導体層3を成長させる際に、単結晶基板2の第1主面2Aに対する光半導体層3の平坦性を向上させることができるため、成長する光半導体層3にひずみなどを内在しにくくすることができる。そのため、単結晶基板2の第1突起4aの上面4Aの結晶軸の配向性を維持した状態で光半導体層3を成長させることができ、光半導体層3の結晶性を向上させることができる。
【0083】
本例の発光素子20における光半導体層3は、単結晶基板2上に、第1半導体層3a、発光層3bおよび第2半導体層3cから構成されている。そのため、第1半導体層3aの平坦性を維持した状態で発光層3bおよび第2半導体層3cを成長させることができ、発光層3bで発光する光の波長分散性を改善することができる。
【0084】
一方、単結晶基板上に複数の突起を設けて光半導体層を成長させた構成の発光素子の場合、原子オーダーでの光半導体層の平坦性が低下しやすくなる。その結果、光半導体層の一部が局所的にひずみやすくなり、発光層で発光する光に所望の波長以外の光が混ざりやすくなるため、波長分散性の低下を招くおそれがあった。
【0085】
上述した「第1突起4a同士の間」には、図12に示すように、隣接する第1突起4a同士を通る仮想直線と重ならない場合も含むものである。すなわち、第2突起4bが第1突起4aと一直線上にない場合である。このように第2突起4bを配置した場合でも、第1突起4aから結晶成長させた光半導体層3における、平坦性を向上させることができる。
【0086】
光半導体層3を結晶成長させる工程の前に、図13に示すように、第1突起4aの上面4Aに、頂部13aから上面4Aに対して傾斜した結晶面13bを有する結晶体13を成長させる工程を有してもよい。
【0087】
このような結晶体13は、光半導体層3として窒化ガリウムを用いた場合、頂部13aから突起4の上面4Aに対して傾斜した結晶面13bを有する結晶体を形成する方法としては、例えば20kPa以上90kPa以下の圧力および700℃以上1150℃以下の温度で結晶成長させればよい。このような条件で結晶成長させることにより、図13(a)に示すように、単結晶基板2の第1突起4aの上面4Aに結晶体13を成長させることができる。このような結晶体13の結晶面13bは、サファイアからなる単結晶基板3の第1突起4aの上面4Aがc面である場合、例えば{1−101}面とすることができる。
【0088】
その後、図13(b)に示すように、結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させる。このように結晶体13を横方向に成長させて、隣接する結晶体13と結合させることにより、それぞれの第1突起4aの上面4Aから延びる転位8同士を結合させて、光半導体層3の厚み方向に延びる転位8の数を少なくすることができる。
【0089】
このように光半導体層3の厚み方向に延びる転位8の数を少なくすることにより、光半導体層3の結晶品質を向上させることができ、光半導体層3の発光効率を向上させることができる。また、光半導体層3の第1半導体層3aにおいて、転位8を結合させた場合には、発光層3bに延在する転位8を少なくすることができるため、発光層3bで発光する領域を広げることができる。
【0090】
さらに、ファセット形成時の温度以上に設定した高温状態およびファセット形成時の圧力以下に設定した低圧力状態にして結晶成長させることにより、光半導体層3を横方向成長させることができる。
【0091】
また、結晶体13を成長させる工程において、結晶体13の頂部13aを、第2突起4bの上面4Aのマスク層5よりも高くなるように成長させてもよい。このように結晶体13の頂部
13aを、マスク層5よりも高くなるように成長させた場合には、結晶体13の結晶面13bを横方向に成長させて、隣接する結晶体13同士を結合させやすくすることができる。隣接する結晶体13同士を結合させやすくすることができるため、結晶性を向上させるとともに、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 発光素子
2 単結晶基板
3 光半導体層(半導体層)
3 第1半導体層
3b 発光層
3c 第2半導体層
4 突起
4a 第1突起
4b 第2突起
5 マスク層
6 第1電極層
7 第2電極層
8 転位
9 半導体基板
10 露出領域
11 マスクパターン
12 積層膜
13 結晶体
13a 頂部
13b 結晶面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶基板の上に該単結晶基板を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、
平坦な上面を有する複数の突起が主面に設けられた前記単結晶基板を準備する工程と、
複数の前記突起のうち、前記上面から前記半導体層を結晶成長させるものを第1突起とし、該第1突起同士の間に位置する、前記上面に前記半導体層を結晶成長させないものを第2突起として、該第2突起の前記上面を被覆するように実質的に前記半導体層が結晶成長しないマスク層を形成する工程と、
前記第1突起の前記上面からそれぞれ前記第2突起の前記上面の前記マスク層を越えて前記単結晶基板を覆うように前記半導体層を結晶成長させる工程と
を有する半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層を結晶成長させる工程の前に、前記第1突起の前記上面に、頂部から前記上面に対して傾斜した結晶面を有する結晶体を成長させる工程を含む請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記結晶体を成長させる工程において、前記結晶体の前記頂部を前記第2突起の前記上面の前記マスク層よりも高くなるように成長させる請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記マスク層を形成する工程において、前記マスク層を、前記第2突起の前記上面から前記第2突起の側面にかけて被覆するように前記マスク層を形成する請求項1−3のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
平坦な上面を有する複数の突起を主面に有する単結晶基板と、
複数の前記突起の一部の前記上面に選択的に設けられた、前記単結晶基板よりも高い屈折率を有するマスク層と、
前記単結晶基板上に、複数の前記突起および前記マスク層を覆うように設けられた、前記マスク層よりも高い屈折率を有する光半導体層と
を有する発光素子。
【請求項1】
単結晶基板の上に該単結晶基板を覆うように半導体層を結晶成長させた半導体基板の製造方法であって、
平坦な上面を有する複数の突起が主面に設けられた前記単結晶基板を準備する工程と、
複数の前記突起のうち、前記上面から前記半導体層を結晶成長させるものを第1突起とし、該第1突起同士の間に位置する、前記上面に前記半導体層を結晶成長させないものを第2突起として、該第2突起の前記上面を被覆するように実質的に前記半導体層が結晶成長しないマスク層を形成する工程と、
前記第1突起の前記上面からそれぞれ前記第2突起の前記上面の前記マスク層を越えて前記単結晶基板を覆うように前記半導体層を結晶成長させる工程と
を有する半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層を結晶成長させる工程の前に、前記第1突起の前記上面に、頂部から前記上面に対して傾斜した結晶面を有する結晶体を成長させる工程を含む請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項3】
前記結晶体を成長させる工程において、前記結晶体の前記頂部を前記第2突起の前記上面の前記マスク層よりも高くなるように成長させる請求項2に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項4】
前記マスク層を形成する工程において、前記マスク層を、前記第2突起の前記上面から前記第2突起の側面にかけて被覆するように前記マスク層を形成する請求項1−3のいずれかに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項5】
平坦な上面を有する複数の突起を主面に有する単結晶基板と、
複数の前記突起の一部の前記上面に選択的に設けられた、前記単結晶基板よりも高い屈折率を有するマスク層と、
前記単結晶基板上に、複数の前記突起および前記マスク層を覆うように設けられた、前記マスク層よりも高い屈折率を有する光半導体層と
を有する発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−49447(P2012−49447A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192279(P2010−192279)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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