説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】高誘電率材料を含むゲート絶縁膜と、高融点金属等を含むゲート電極とを備え、消費電力の低減と高速動作化とが図られた半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、高誘電率膜を含む絶縁膜101aを形成する工程(a)と、上面に酸化膜が形成され、高融点金属または高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1の導電膜102aを形成する工程(b)と、酸化膜103aを間に挟んで第1の導電膜102a上に、シリコンを含む第2の導電膜104aを形成する工程(c)と、第1の導電膜102aおよび第2の導電膜104aに対してイオン注入を行い、酸化膜103aの構成材料を前記第2の導電膜104a中のシリコンと混合させてミキシング層103bを形成する工程(d)と、熱処理を行ってミキシング層103bを導電層103cにする工程(e)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法、特に、高誘電率材料を含むゲート絶縁膜と高融点金属を含むゲート電極を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の分野では、高集積化や高速動作化について技術の発展が目覚しく、それに伴いトランジスタの微細化も急速に進められている。しかしながら、微細化に伴ってゲート絶縁膜の薄膜化を行う際にはトンネル電流によるゲートリーク電流の増加が問題となるため、ゲート絶縁膜の構成材料として酸化ハフニウム(HfO)、酸化ランタン(La)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の高誘電率材料を用いる研究が進められている。また、ゲート電極材料も従来のポリシリコンから、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属やその化合物を用いてMISFETの仕事関数を制御する手法が広く研究されている。
【0003】
図3(a)〜(e)は、非特許文献1に開示されている従来のCMISFETの製造方法を示す断面図である。
【0004】
従来の方法では、まず半導体基板30上に高誘電体材料からなるゲート絶縁膜31とチタン窒化物からなる金属層32とを順次堆積した後、金属層32のうちnMIS形成領域40内に設けられた部分を選択的に除去し、次いでポリシリコン層33を基板上に堆積する(図3(a)、(b))。ここで、nMIS形成領域とは、nチャネル型MISFETを形成するための領域を意味し、後述するpMIS形成領域とはpチャネル型MISFETを形成するための領域を意味するものとする。
【0005】
次に、リソグラフィ技術等を用いてnMIS形成領域40内にはゲート絶縁膜31を間に挟んで半導体基板30上にポリシリコン層33で構成されたnMISゲート電極を形成し、pMIS形成領域42内にはゲート絶縁膜31を間に挟んで半導体基板30上に金属層32及びポリシリコン層33とで構成されたpMISゲート電極を形成する(図3(c))。次いで、nMISゲート電極の側面上及びpMISゲート電極の側面上にサイドウォール34を形成する(図3(d))。その後、nMISゲート電極の両側下方に位置する領域にn型のソース/ドレイン領域を形成し、半導体基板30のうちpMISゲート電極の両側下方に位置する領域にp型のソース/ドレイン領域を形成する(図示せず)。次いで、pMISゲート電極上、nMISゲート電極上、及び各ソース/ドレイン領域上にシリサイド層35を形成する(図3(e))。
【0006】
nチャネル型MISFET(以下「pMISFET」と略記)とpチャネル型MISFET(以下「nMISFET」と略記)とでは動作に適するゲート電極の仕事関数が異なるため、nMISゲート電極とpMISゲート電極とが異なる構造を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cost Worthy and High Performance LSTP CMIS; Poly-Si/HfSiON nMIS and Poly-Si/TiN/HfSiON pMIS, Y. Inoue at el IEDM Tech Dig, (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術に開示された構造におけるpMISFETのように、ゲート電極を金属層とポリシリコン層との積層構造とした場合、金属層とポリシリコン層との間に形成される自然酸化膜により界面抵抗が上昇し、トランジスタの動作を阻害する可能性がある。
【0009】
一般的に、上述のような高融点金属やその化合物からなる金属層とポリシリコン層とを積層してゲート電極を形成する場合、両者の間の界面抵抗を抑制するために、ウェットエッチング等で金属層上の自然酸化膜を除去してからポリシリコンを堆積する。しかしながら、自然酸化膜の除去からポリシリコンの堆積までを真空中で行う以外は、自然酸化膜の形成を完全に抑制することは極めて難しい。
【0010】
今後更に進むトランジスタの微細化と、それに伴う低消費電力化や高速動作化に際し、金属材料とポリシリコンと間の自然酸化膜がトランジスタ動作に与える影響が顕著になると考えられ、界面抵抗の安定化や低抵抗化が必須となる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、高誘電率材料を含むゲート絶縁膜と、高融点金属等を含むゲート電極とを備え、消費電力の低減と高速動作化とが図られた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、高誘電率膜を含む絶縁膜を形成する工程(a)と、前記絶縁膜上に、上面に酸化膜が形成され、高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1の導電膜を形成する工程(b)と、前記酸化膜を間に挟んで前記第1の導電膜上に、シリコンを含む第2の導電膜を形成する工程(c)と、前記第2の導電膜の上方から前記第1の導電膜および前記第2の導電膜に対してイオン注入を行い、前記酸化膜の構成材料を前記第2の導電膜中のシリコンと混合させてミキシング層を形成する工程(d)と、熱処理を行って前記ミキシング層を導電層にする工程(e)とを備えている。
【0013】
この方法によれば、第1の導電膜上に形成された自然酸化膜等の酸化膜を工程(d)、(e)により第1の導電膜の上面を露出しない状態で導電層に変化させることができる。このため、第1のゲート電極と第2のゲート電極との界面での抵抗上昇を効果的に抑制することができる。そのため、微細化が進んだ場合でも消費電力の低減や動作の高速化の実現を図ることができる。また、pMISFETとnMISFETを同一の半導体基板上に形成する場合でもMISFETの閾値の制御を安定に行うことができる。
【0014】
前記工程(e)の後に、前記第1の導電膜の一部で構成された第1のゲート電極、前記導電層の一部、及び前記第2の導電膜の一部で構成された第2のゲート電極を有するゲート電極と、前記絶縁膜の一部で構成されたゲート絶縁膜とを形成する工程(f)をさらに備えていてもよい。
【0015】
前記工程(e)では、前記導電層において、前記高融点金属または前記高融点金属の化合物とシリコンとが反応することによりシリサイド層が形成されていてもよい。
【0016】
本発明の第2の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、高誘電率膜を含む絶縁膜を形成する工程(a)と、前記絶縁膜上に、上面に酸化膜が形成され、高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1の導電膜を形成する工程(b)と、前記酸化膜を間に挟んで前記第1の導電膜上に、シリコンを含む第2の導電膜を形成する工程(c)と、前記第1の導電膜の一部で構成された第1のゲート電極、前記酸化膜の一部、及び前記第2の導電膜の一部で構成された第2のゲート電極を有するゲート電極と、前記絶縁膜の一部で構成されたゲート絶縁膜とを形成する工程(d)と、前記ゲート電極をマスクとして導電性不純物のイオン注入を行い、前記半導体基板における前記ゲート電極の両側下方に位置する領域に注入層を形成する工程(e)と、前記工程(e)の後、熱処理を行って前記導電性不純物を活性化させ、前記注入層を不純物拡散層にする工程(f)とを備えている。さらに、前記工程(e)では、前記イオン注入によって、前記酸化膜の構成材料を前記第2の導電膜中のシリコンと混合させてミキシング層を前記注入層と同時に形成し、前記工程(f)では、前記熱処理によって前記不純物拡散層を形成するとともに、前記ミキシング層を導電層にする。
【0017】
この方法によれば、第1の導電膜上に形成された自然酸化膜等の酸化膜を工程(e)、(f)により第1のゲート電極の上面を露出しない状態で導電膜に変化させることができる。このため、第1のゲート電極と第2のゲート電極との界面での抵抗上昇を効果的に抑制することができる。そのため、微細化が進んだ場合でも消費電力の低減や動作の高速化の実現を図ることができる。また、ミキシング層の形成を注入層を形成するためのイオン注入と同時に行い、導電層の形成を不純物拡散層を形成するための熱処理と同時に行っているので、第1の製造方法に比べて少ない工程で第1の製造方法と同様の効果を得ることが可能となる。
【0018】
前記工程(e)では、前記第2のゲート電極の膜厚をh、前記注入層の深さをdとすると、h≦dとなる条件で前記イオン注入を行ってもよい。
【0019】
前記工程(f)では、前記導電層において、前記高融点金属または前記高融点金属の化合物とシリコンとが反応することによりシリサイド層が形成されてもよい。
【0020】
前記高誘電率膜は、Hf、Zr、La、Al、Lu、Gdのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0021】
前記高融点金属は、Ti、Ta、Nb、W、Mo、Vのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0022】
前記第2の導電膜はポリシリコンまたはアモルファスシリコンで構成されていてもよい。
【0023】
本発明の半導体装置は、半導体基板上に形成された高誘電率膜を含むゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極上に形成されたシリコンを含む第2のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との界面部に形成された導電層とを有するゲート電極とを備えている。さらに、前記導電層では、前記高融点金属の酸化物とシリコンとがミキシングされている。
【0024】
この構成によれば、第1のゲート電極と第2のゲート電極との界面に導電層が形成されているので、第1のゲート電極と第2のゲート電極との界面における抵抗増加が抑えられる。従って、ゲート電極の仕事関数を適切な値に制御しつつ、低消費電力化や動作の高速化を図ることができる。
【0025】
前記半導体基板における前記ゲート電極の両側下方に位置する領域に形成され、導電性不純物を含む不純物拡散層をさらに備えており、前記第2のゲート電極は前記導電性不純物を含んでいてもよい。
【0026】
前記第2のゲート電極の膜厚をh、前記不純物拡散層の深さをdとすると、h≦dとなってもよい。
【0027】
前記導電層では、前記高融点金属の酸化物とシリコンとがアモルファス層を形成していてもよい。
【0028】
前記導電層は、前記高融点金属のシリサイド層を有していてもよい。
【0029】
前記高誘電率膜は、Hf、Zr、La、Al、Lu、Gdのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0030】
前記高融点金属は、Ti、Ta、Nb、W、Mo、Vのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0031】
前記第2のゲート電極はポリシリコンまたはアモルファスシリコンで構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、高融点金属またはその化合物を含む第1の導電膜(第1のゲート電極)とその上に形成されるシリコンを含む第2の導電膜(第2のゲート電極)との間に介在する酸化膜の絶縁性を低下させることができる。そのため、第1のゲート電極と第2のゲート電極との界面における抵抗上昇を効果的に抑制することができ、半導体装置の低消費電力化および高速動作化が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、従来のCMISFETの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、以下、図面に基づいて説明する。また、以下では、pMISFETを例示して説明する。なお、本明細書中で「高誘電体」とは、少なくともシリコン酸化物よりも大きな誘電率を持つ物質のことをいうものとする。また、「高融点金属」とは、融点が1500℃以上の金属をいうものとする。
【0035】
図1(a)〜(f)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0036】
まず、図1(a)に示すように、シリコン等からなる半導体基板100上に高誘電率絶縁膜101aを形成する。ここで、高誘電率絶縁膜101aの例としては、ALD(Atomic Layer Deposition)法等により形成された厚さ2nm程度の酸化ハフニウム膜、あるいは熱酸化により形成されたシリコン酸化膜と酸化ハフニウム膜等の高誘電体膜との積層膜等が挙げられる。
【0037】
続いて、図1(b)に示すように、高誘電率絶縁膜101a上に高融点金属や導電性を有する高融点金属の化合物等からなる第1の導電膜102aを形成する。第1の導電膜102aは、後に形成されるゲート電極の仕事関数を制御する目的で設けられ、高融点金属または高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む膜であればよい。第1の導電膜102aは高融点金属膜または高融点金属化合物膜やこれらの積層膜であってもよい。第1の導電膜102aは例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)法により形成された厚さ20nm程度のTaN単層膜、あるいは合計厚さが20nm程度のTaN膜とTa膜との積層膜などであってもよい。第1の導電膜102aの形成時に、第1の導電膜102a上には自然酸化膜103aが1nm以下の厚さで形成される。
【0038】
次に、図1(c)に示すように、自然酸化膜103aを間に挟んだ状態で第1の導電膜102a上に、シリコン材料からなる第2の導電膜104aを形成する。第2の導電膜104aとしては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成された厚さ100nmのポリシリコン膜等が用いられる。なお、第2の導電膜104aはシリコン以外にもSiGe等、シリコンを含む半導体で構成されていてもよい。
【0039】
次に、図1(d)に示すように、第2の導電膜104aの上方から、基板(少なくとも第1の導電膜102a及び第2の導電膜104a)に不純物のイオン注入108を行うことで、自然酸化膜103aのミキシング層103bを形成する。ミキシング層103bは、イオンエネルギーにより自然酸化膜103aの構成材料(酸素)と第2の導電膜104aの構成材料とが混合する(ミキシングされる)ことで形成される。本工程では、例えばリンイオンを加速電圧20KeV、注入量5X1015ion/cmで注入することで、自然酸化膜103aのミキシング層103bを形成する。この際、注入イオン種としては、ポリシリコン(第2の導電膜104a)の抵抗制御を目的としてリン、砒素あるいはボロン(B)を用いてもよいし、アルゴン(Ar)や窒素(N)等を用いてもよい。ミキシングに必要とされるイオン注入量は1×1015ion/cm以上であるが、イオン種は特に限定されない。ソース/ドレイン用のイオン注入は1015ion/cm程度であるので、ミキシングと兼用することが可能である。
【0040】
次に、図1(e)に示すように、例えば、電気炉やランプ加熱法、レーザー加熱法等により600℃の熱処理を行うことで、自然酸化膜103aと第2の導電膜104aとにより形成されたミキシング層103bから界面導電層103cを形成する。界面導電層103cの厚みはイオンの加速電圧や熱処理温度により依存して変化するが、例えば2〜5nm程度である。ここで、界面導電層103cでは、第1の導電膜102aに含まれる高融点金属と第2の導電膜104aの材料(例えばポリシリコン)とが反応し、アモルファス状になる。
【0041】
なお、第1のゲート電極がTaN膜とTa膜との積層構造を有している場合は、界面導電層103cはTaシリサイドで構成されることとなる。また、Ta膜以外の高融点金属を用いた場合でも界面導電層103cを金属シリサイドで構成することはできる。
【0042】
次に、図1(f)に示すように、フォトリソグラフィーにより形成したレジスト等(図示せず)を用いた異方性ドライエッチングを行い、高誘電率絶縁膜101a上にゲート電極105を形成する。ここで、ゲート電極105は、下から順に、第1の導電膜102aの一部である第1のゲート電極102と、界面導電層103cの一部である界面導電層103d、第2の導電膜104aの一部である第2のゲート電極104とで構成されている。次いで、ウエットエッチングにより半導体基板100とゲート電極105とに挟まれた部分を残して高誘電率絶縁膜101aを除去し、ゲート絶縁膜101を形成する。
【0043】
以上の方法で作製される本実施形態の半導体装置は、図1(f)に示すように、半導体基板100と、半導体基板上に形成され、高誘電体等からなるゲート絶縁膜101と、ゲート絶縁膜101上に形成されたゲート電極105とを備えている。
【0044】
ゲート電極105は、ゲート絶縁膜101上に形成され、金属又は導電性の金属化合物を含む第1のゲート電極102と、第1のゲート電極102上に形成された界面導電層103dと、界面導電層103d上に形成されたポリシリコン等からなる第2のゲート電極104とを有している。また、図示を省略しているが、半導体基板100のうちゲート電極105の両側下方に位置する領域には例えばリンなどのp型不純物を含む不純物拡散領域が形成されている。第1のゲート電極102は、例えばTa膜とTaN膜とで構成された積層膜であるなど、高融点金属を含んでいる。
【0045】
界面導電層103dは、第1のゲート電極102に含まれる高融点金属と第2のゲート電極104に含まれるシリコンとをアモルファスの状態で含んでおり、導電性を示す。
【0046】
本実施形態の半導体装置の製造方法では、図1(d)に示す工程において第2の導電膜104aの上方から少なくとも自然酸化膜103bにまでイオンが届くようなエネルギーでイオン注入108を行う。この工程で、注入された物質イオンの持つエネルギーで自然酸化膜103aとこれに接する第2の導電膜104aの一部とをミキシングし、これに続く図1(e)に示す工程で熱処理を行うことによって、自然酸化膜103aを導電性の界面導電層103cにすることができる。この界面導電層103cは第1のゲート電極102と第2のゲート電極104とに挟まれた界面導電層103dとなる。
【0047】
このため、本実施形態の方法によれば、第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との間に絶縁性の膜が形成されなくなるため、第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との間の界面抵抗の上昇を抑制することができる。特に、自然酸化膜103aの改質を、第1のゲート電極102(第1の導電膜102a)の上面が露出しない状態で行われるので、第2の導電膜104aの形成前に自然酸化膜103aの除去を行う方法に比べて、再度自然酸化膜103aが形成されることがない。このため、ゲート電極105内での界面抵抗が安定して低減され、微細化が進んでもMISFETの低抵抗化及び低消費電力化を実現することが可能となる。また、nMISFETとpMISFETとを同一基板上に形成する場合でも、仕事関数の制御が容易にでき、各MISFETの閾値制御が容易になる。
【0048】
なお、図1(b)に示す工程で、例えばTaN膜とTa膜の積層構造を有する第1の導電膜102aを形成した後、図1(e)に示す工程で600℃の熱処理を行うことで、第1のゲート電極102となる第1の導電膜102aと第2のゲート電極104となる第2の導電膜104aとの界面に形成される界面導電層103cをTaシリサイドで構成することができる。この場合、界面導電層103cがアモルファス層で構成される場合よりもさらに、ゲート電極105内での界面抵抗の低減が可能となる。
【0049】
なお、本実施形態ではnMISFETを単独で製造する方法を例に挙げて説明したが、半導体基板100上にnMISFETとpMISFETをそれぞれ形成する際には、例えば図1(b)に示す工程の後、第1の導電膜102aのうち半導体基板100のpMIS形成領域上に形成された部分を除去する。また、図1(d)に示す工程でpMIS形成領域を覆うマスクをした状態でn型不純物の注入を行い、図1(f)に示す工程で、第2の導電膜104aで構成されたnMISゲート電極を形成すればよい。これにより、ゲート電極の構成を導電型に応じて適宜変更した半導体装置が作製できる。
【0050】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について、以下、図2に基づいて説明する。また、以下では、pMISFETを例示して説明する。
【0051】
図2(a)〜(d)は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0052】
まず、図2(a)に示すように、第1の実施形態で説明した図1(a)〜(c)に示す工程と同じ工程により、半導体基板100上に高誘電率絶縁膜101a、第1の導電膜102a、第2の導電膜104aを順次形成する。
【0053】
具体的には、例えばALD法により厚さが約2nmの酸化ハフニウム膜、あるいは熱酸化により形成されたシリコン酸化膜と酸化ハフニウム膜との積層膜を高誘電率絶縁膜101aとして半導体基板100上に形成する。次いで、高融点金属やその化合物を含む第2の導電膜104aを高誘電率絶縁膜101a上に形成する。第1の導電膜102aは、後に形成されるゲート電極の仕事関数を制御する目的で設けられる。第2の導電膜104aの例としては、PVD法等により形成され、全体の厚さが約20nmのTaN膜、あるいは合計の厚さが20nm程度である、TaN膜とTa膜との積層膜などが挙げられる。なお、本工程において、第1の導電膜102aを形成する際に、第1の導電膜102a上には厚さ1nm以下程度の自然酸化膜153が形成される。
【0054】
次に、上面に自然酸化膜153が形成された第1の導電膜102a上に、シリコン材料からなる第2の導電膜104aを形成する。第2の導電膜104aの例としては、CVD法により形成された厚さ100nmのポリシリコン膜が挙げられる。
【0055】
次に、図2(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びパターニングにより形成したマスク(図示せず)を用いて異方性ドライエッチングを行い、第1の導電膜102a、自然酸化膜153、及び第2の導電膜104aを、それぞれ一部を残して除去する。これにより、第1の導電膜102aの一部で構成された第1のゲート電極102、自然酸化膜153の一部で構成された自然酸化膜153a、及び第2の導電膜104aの一部で構成された第2のゲート電極104を有するゲート電極205が形成される。
【0056】
次いで、上述のマスクを用いたウエットエッチングにより高誘電率絶縁膜101aの一部を除去することで、半導体基板100と第1のゲート電極102との間にゲート絶縁膜101を形成する。その後、マスクを除去する。
【0057】
次に、図2(c)に示すように、ゲート電極205の側面上にLDD(Lightly Doped Drain)用サイドウォール206を形成し、ゲート電極205および半導体基板100に導電性の不純物イオンを注入する。一例としては、砒素イオンを加速電圧20KeV、注入量2X1015ion/cmで)の条件でイオン注入208を行い、後にソース/ドレインまたはエクステンション領域となる注入層207aをゲート電極205の両側下方に位置する領域に形成する。このイオン注入208により、注入層207aの形成と同時に、第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との界面部に自然酸化膜153aのミキシング層153bを形成する。ミキシング層153bでは、自然酸化膜153aの構成材料と第2のゲート電極104中のポリシリコンとが混合されている。なお、このとき、第2のゲート電極104の材料膜厚hとイオン注入層207aの深さdとの間に、h≦dの関係が成立するイオン注入条件とすることが好ましい。
【0058】
次に、図2(d)に示すように、例えば、電気炉やランプ加熱法、レーザー加熱法による600℃の熱処理を半導体基板100に対して行うことで、ミキシング層153b内で混合された自然酸化膜153aの構成材料とポリシリコンとが反応し、界面導電層153cが形成される。また、この熱処理により注入層207a内の導電性不純物が活性化し、不純物拡散層207bが形成される。
【0059】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の実施形態とは異なり、ミキシングのみを目的としたイオン注入を実施せず、ゲート電極205の形成後にソースおよびドレイン、あるいはエクステンション領域である不純物拡散層207bを形成するためのイオン注入のエネルギーを利用してミキシング層153bを形成するものである。また、ミキシング層153b内の高融点金属とポリシリコン等とを反応させる熱処理も、不純物拡散層207bを形成するための熱処理と兼用している。
【0060】
本実施形態の方法によってもゲート電極205内の第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との界面に生じる絶縁性の自然酸化膜を酸素に触れない状態で導電性の界面導電層153cに変換することができるので、第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との界面での抵抗上昇を従来の方法に比べて効果的に抑えることができる。
【0061】
特に、第1のゲート電極102がTaN膜とTa膜との積層膜である場合など、シリコンと反応してシリサイドを形成する高融点金属を含んでいる場合には、界面導電層153cは金属シリサイドで構成されることとなるので、第1のゲート電極102と第2のゲート電極104との界面での抵抗上昇をより効果的に抑制することができる。このため、ゲート電極の仕事関数の制御を容易に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態の製造方法によれば、自然酸化膜153aのミキシング及びその後の熱処理を不純物拡散層207bを形成するための工程と兼用しているので、第1の実施形態に比べてより少ない工程でゲート電極205内での抵抗の低減を図ることができる。
【0063】
なお、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、高誘電率絶縁膜101aとしてHfを含む膜を例示したが、これに限定されるものではない。ゲート絶縁膜101(及び高誘電率絶縁膜101a)は、例えば、Hf、Zr、ランタン(La)、Al、ルテチウム(Lu)、ガドリニウム(Gd)のいずれか1つ、あるいはそれらを複数種含む膜であっても構わない。
【0064】
また、本発明の第1および第2の実施形態に係る製造方法等においては、高融点金属としてTa、高融点金属の化合物としてTaNを用いる例を示したが、これに限定されるものではない。第1のゲート電極102(及び第1の導電膜102a)は、例えば、Ti、Ta、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、Mo、バナジウム(V)のいずれか1つ、あるいはそれらを複数種含む膜であっても構わず、さらに、それら高融点金属の導電性化合物で構成された膜であっても構わない。
【0065】
また、第1及び第2の実施形態に係る製造方法等においては、第2のゲート電極104の構成材料としてポリシリコンを例示したが、これに限定されるものではなく、アモルファスシリコンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明は、高誘電率材料を含むゲート絶縁膜と高融点金属を含むゲート電極を有する半導体装置およびその製造方法において有用である。
【符号の説明】
【0067】
100 半導体基板
101 ゲート絶縁膜
101a 高誘電率絶縁膜
102 第1のゲート電極
102a 第1の導電膜
103a、153、153a 自然酸化膜
103b、153b ミキシング層
103c、103d、153c 界面導電層
104 第2のゲート電極
104a 第1の導電膜
104a 第2の導電膜
105、205 ゲート電極
108、208 イオン注入
206 LDD用サイドウォール
207a 注入層
207b 不純物拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、高誘電率膜を含む絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記絶縁膜上に、上面に酸化膜が形成され、高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1の導電膜を形成する工程(b)と、
前記酸化膜を間に挟んで前記第1の導電膜上に、シリコンを含む第2の導電膜を形成する工程(c)と、
前記第2の導電膜の上方から前記第1の導電膜および前記第2の導電膜に対してイオン注入を行い、前記酸化膜の構成材料を前記第2の導電膜中のシリコンと混合させてミキシング層を形成する工程(d)と、
熱処理を行って前記ミキシング層を導電層にする工程(e)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(e)の後に、前記第1の導電膜の一部で構成された第1のゲート電極、前記導電層の一部、及び前記第2の導電膜の一部で構成された第2のゲート電極を有するゲート電極と、前記絶縁膜の一部で構成されたゲート絶縁膜とを形成する工程(f)をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(e)では、前記導電層において、前記高融点金属または前記高融点金属の化合物とシリコンとが反応することによりシリサイド層が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に、高誘電率膜を含む絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記絶縁膜上に、上面に酸化膜が形成され、高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1の導電膜を形成する工程(b)と、
前記酸化膜を間に挟んで前記第1の導電膜上に、シリコンを含む第2の導電膜を形成する工程(c)と、
前記第1の導電膜の一部で構成された第1のゲート電極、前記酸化膜の一部、及び前記第2の導電膜の一部で構成された第2のゲート電極を有するゲート電極と、前記絶縁膜の一部で構成されたゲート絶縁膜とを形成する工程(d)と、
前記ゲート電極をマスクとして導電性不純物のイオン注入を行い、前記半導体基板における前記ゲート電極の両側下方に位置する領域に注入層を形成する工程(e)と、
前記工程(e)の後、熱処理を行って前記導電性不純物を活性化させ、前記注入層を不純物拡散層にする工程(f)とを備え、
前記工程(e)では、前記イオン注入によって、前記酸化膜の構成材料を前記第2の導電膜中のシリコンと混合させてミキシング層を前記注入層と同時に形成し、
前記工程(f)では、前記熱処理によって前記不純物拡散層を形成するとともに、前記ミキシング層を導電層にする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(e)では、前記第2のゲート電極の膜厚をh、前記注入層の深さをdとすると、h≦dとなる条件で前記イオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(f)では、前記導電層において、前記高融点金属または前記高融点金属の化合物とシリコンとが反応することによりシリサイド層が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記高誘電率膜は、Hf、Zr、La、Al、Lu、Gdのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記高融点金属は、Ti、Ta、Nb、W、Mo、Vのうちの少なくとも1つであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の導電膜はポリシリコンまたはアモルファスシリコンで構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板上に形成された高誘電率膜を含むゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された高融点金属または前記高融点金属の化合物の少なくとも一方を含む第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極上に形成されたシリコンを含む第2のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極との界面部に形成された導電層とを有するゲート電極とを備え、
前記導電層では、前記高融点金属の酸化物とシリコンとがミキシングされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記半導体基板における前記ゲート電極の両側下方に位置する領域に形成され、導電性不純物を含む不純物拡散層をさらに備えており、
前記第2のゲート電極は前記導電性不純物を含んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置において、
前記第2のゲート電極の膜厚をh、前記不純物拡散層の深さをdとすると、h≦dとなることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項10〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記導電層では、前記高融点金属の酸化物とシリコンとがアモルファス層を形成していることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項10〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記導電層は、前記高融点金属のシリサイド層を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項10〜14のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記高誘電率膜は、Hf、Zr、La、Al、Lu、Gdのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項10〜15のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記高融点金属は、Ti、Ta、Nb、W、Mo、Vのうちの少なくとも1つであることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項10〜16のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第2のゲート電極はポリシリコンまたはアモルファスシリコンで構成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−9329(P2011−9329A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149431(P2009−149431)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】