説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラム

【課題】シリコン系ガスとアミン系ガスとを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】基板200を処理室201内に収容する工程と、加熱された処理室201内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して基板200上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、処理室201内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して、シリコン系ガスとアミン系ガスとを処理室201内に封じ込める工程と、シリコン系ガスとアミン系ガスとを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程と、処理室201内を排気する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムに関し、特に、SiC等のSiC系の膜を成膜する工程を備える半導体装置の製造方法、基板処理方法、当該処理に好適に使用される基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のサーマルプロセスでは、可燃性ガスと支燃性ガスとを用いて成膜が行われる。常温においては、可燃性ガス同士は熱力学的には反応しない系であることから、通常のサーマルプロセスでは可燃性ガス同士を用いることは考え難い。
【0005】
しかしながら、本発明者達は、敢えて、可燃性ガス同士の組み合わせであるシリコン系ガスとアミン系ガスとを使用して、サーマルプロセスにより、SiC等のSiC系の膜を低温で成膜できる手法を追求すべく研究を行った。
【0006】
本発明の主な目的は、シリコン系ガスとアミン系ガスとを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へシリコン系ガスを供給するシリコン系ガス供給系と、
前記処理室内へアミン系ガスを供給するアミン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板を収容した加熱された状態の前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める処理と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、が行われるように、前記ヒータ、前記シリコン系ガス供給系、前記アミン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順において、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコン系ガスとアミン系ガスとを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態の成膜シーケンスを説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態の成膜シーケンスの他の例を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の実施例1で形成したSiC膜の、1サイクルあたりの反応継続時間(ジシランガスの供給停止時間)とSiC膜中の炭素(C)および窒素(N)の濃度との関係を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施例2で形成したSiC膜の、1サイクルあたりの反応継続時間(ジシランガスの供給停止時間)とSiC膜中の炭素(C)および窒素(N)の濃度との関係を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
本発明者達が、可燃性ガス同士の組み合わせであるシリコン系ガスとアミン系ガスとを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜することを鋭意研究した結果、低温領域においても可燃性ガス同士の組み合わせであるシリコン系ガスとアミン系ガスとを用いて、ノンプラズマでSiC系の膜を形成できることを見出した。すなわち、低温領域においても、可燃性ガスであるシリコン系ガスとアミン系ガスとをそれぞれ気相で熱的に分解させ、ラジカル状態の活性種とすることで、分解により生じた物質同士を反応させることが可能であり、それによりSiC系の膜を形成できることを見出した。本発明の好ましい実施の形態は、本発明者達が見出したこれらの知見に基づくものである。
【0015】
なお、本明細書では、SiC系の膜という用語は、少なくともシリコン(Si)と炭素(C)とを含む膜を意味しており、これには、シリコン炭化膜(SiC膜)の他、例えば、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)等も含まれる。
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について、より詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。図2は本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線横断面図で示している。
【0018】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で分解させて活性化させる活性化機構としても機能する。
【0019】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0020】
処理室201内には、第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dが配置されており、それぞれが反応管203の下部を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第4ガス供給管232dが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には4本のノズル249a、249b、249c、249dと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。なお、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、この金属製のマニホールドの側壁を貫通するように設けるようにしてもよい。この場合、この金属製のマニホールドに、さらに後述する排気管231を設けるようにしてもよい。なお、この場合であっても、排気管231を金属製のマニホールドではなく、反応管203の下部に設けるようにしてもよい。このように、処理炉の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けるようにしてもよい。
【0021】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aにより第1ガス供給系が構成される。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル249bが接続されている。第2ノズル249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bにより第2ガス供給系が構成される。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。
【0023】
第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル249cが接続されている。第3ノズル249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル249cはL字型のロングノズルとして構成されている。第3ノズル249cの側面にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cにより第3ガス供給系が構成される。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
第4ガス供給管232dには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部には、上述の第4ノズル249dが接続されている。第4ノズル249dは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第4ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されている。第4ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250dは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dにより第4ガス供給系が構成される。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。
【0025】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円弧状の縦長の空間内に配置したノズル249a、249b、249c、249dを経由してガスを搬送し、ノズル249a、249b、249c、249dにそれぞれ開口されたガス供給孔250a、250b、250c、250dからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0026】
第1ガス供給管232aからは、シリコン系ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。
【0027】
第2ガス供給管232bからは、アミン系ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。
【0028】
第3ガス供給管232cからは、酸素含有ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0029】
第4ガス供給管232dからは、窒素含有ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0030】
不活性ガス供給管232e、232f、232g、232hからは、例えば窒素(N)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241e、241f、241g、241h、バルブ243e、243f、243g、243h、ガス供給管232a、232b、232c、232d、ガスノズル249a、249b、249c、249dを介して処理室201内に供給される。
【0031】
なお、例えば各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、第1ガス供給系によりシリコン系ガス供給系が構成される。また、第2ガス供給系によりアミン系ガス供給系が構成される。また、第3ガス供給系により酸素含有ガス供給系が構成される。また、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系が構成される。
【0032】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。図2に示すように、横断面視において、排気管231は、反応管203の第1ノズル249aのガス供給孔250a、第2ノズル249bのガス供給孔250b、第3ノズル249cのガス供給孔250c、および、第4ノズル249dのガス供給孔250dが設けられる側と対向する側、すなわちウエハ200を挟んでガス供給孔250a,250b,250c,250dとは反対側に設けられている。また、図1に示すように縦断面視において、排気管231は、ガス供給孔250a,250b,250c,250dが設けられる箇所よりも下方に設けられている。この構成により、ガス供給孔250a,250b,250c,250dから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、下方に向かって流れ、排気管231より排気されることとなる。処理室201内におけるガスの主たる流れが水平方向へ向かう流れとなるのは上述の通りである。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することにより、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することにより、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0033】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとを備えた構成にしてもよい。
【0035】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249b、249c、249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0036】
図9に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、上述のマスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241h、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0041】
次に、上記基板処理装置を使用して、処理室201内にシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して基板としてのウエハ200上にシリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)を形成する方法について説明する。本実施の形態では、シリコン系ガスとしてジシラン(Si)ガスを使用し、アミン系ガスとしてトリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガスを使用して、シリコンおよび炭素を含む膜としてシリコン炭化膜(SiC膜)を形成する。SiC膜の形成は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。なお、本実施の形態では、ウエハ200として半導体シリコンウエハを使用し、上記シリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)の形成は、半導体装置の製造工程の一工程として行われる。なお、SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に好適に用いられる。
【0042】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)され、複数枚のウエハ200は処理室201内に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0043】
次に、真空ポンプ246を作動させた状態でAPCバルブ244を徐々に全開にし、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力(真空度)を1Pa以下にする。なお、真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。回転機構267により、ボート217を回転させることで、ウエハ200を回転させ(ウエハ回転)、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内でその回転数を一定に維持する。なお、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。ヒータ207によって処理室201内を加熱することで、処理室201内の温度を所望の温度として、ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜450℃の範囲内の所望の温度に維持する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への電力供給具合がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0045】
その後、APCバルブ244を全開とした状態で、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力を、好ましくは、例えば、1Pa以下にする。処理室201内の圧力が1Pa以下になったところで、APCバルブ244を完全に閉じて、閉じ込め状態を開始する。なお、このとき、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくようにしてもよい。
【0046】
ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜450℃の範囲内の所望の温度に維持し、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内の所望の回転数でウエハ200の回転を維持し、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、シリコン系ガスとしてジシラン(Si)ガスを、第1ガス供給管232aから、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に導入する。同時に、アミン系ガスとしてトリエチルアミン(TEA)ガスを、第2ガス供給管232bから、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に導入する。これらの操作により、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に封じ込める(工程A)。トリエチルアミンガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜2slmの範囲内の所望の流量で導入し、ジシランガスは、好ましくは、例えば、0.05slm〜0.5slmの範囲内の所望の流量で導入する。トリエチルアミンガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の範囲内の所望の時間とし、ジシランガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜10秒の範囲内の所望の時間とする。そして、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを、好ましくは、例えば、100〜2000Paの範囲内の所望の圧力で処理室201内に封じ込める。
【0047】
その後、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内への供給を停止して、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内への封じ込め状態を維持する(工程B)。
【0048】
なお、工程A、または、工程Aおよび工程Bでは、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくことで、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを僅かに排気してガスの流れを僅かに形成するようにしてもよい。この場合、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、その際、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内からの排気レートをジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持することで、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを僅かに排気するようにしてもよい。すなわち、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、トータルでの処理室201内からのガス排気レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス排気量、すなわち、排気流量(体積流量))をトータルでの処理室201内へのガス供給レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス供給量、すなわち、供給流量(体積流量))よりも小さくした状態を維持することで、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを僅かに排気するようにしてもよい。この場合、工程Aにおいて、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内からの排気レートをジシランガスおよびトリエチルアミンガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を形成し、工程Bにおいて、その状態を維持することとなる。
【0049】
このように処理室201内に供給されるガスを僅かに排気するようにしても、APCバルブ244を完全に閉じる場合と実質的に同様な封じ込め状態を形成することができる。よって本明細書ではこのように処理室201内に供給されるガスを僅かに排気するような状態をも、封じ込めた状態に含めて考えることとしている。すなわち、本明細書において「封じ込め」という言葉を用いた場合は、APCバルブ244を完全に閉じて処理室201内の排気を停止する場合の他、APCバルブを完全に閉じることなく僅かに開き、処理室201内に供給されるガスの処理室201内からの排気レートを処理室201内に供給されるガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持し、処理室201内に供給されるガスを僅かに排気する場合をも含む。
【0050】
そして、工程Aと工程Bとを所定回数実施した後、APCバルブ244を全開にして、処理室201内を速やかに排気する(工程C)。
【0051】
上記の工程A、工程B、工程Cを含むサイクル、すなわち、工程Aと工程Bとを所定回数実施する工程(工程D)と、工程Cとで構成されるサイクルを、ウエハ200上に形成されるSiC膜の膜厚が所望の膜厚になるまで所定回数実施する。本実施の形態のサイクル・シーケンスの一例を図3に示す。
【0052】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを、好ましくは、例えば、数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0053】
その後、回転機構267によるボート217の回転を止め、APCバルブ244を閉じて、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して、処理室201内の圧力が大気圧になるまで、処理室201内に供給する(大気圧復帰)。
【0054】
成膜処理の終わったウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって処理室201内から搬出される(ボートアンロード)。その後、成膜処理後の複数枚のウエハ200がボート217から取り出される。
【0055】
上述した、本実施の形態では、図3に示すように、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程(工程A)と、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程(工程B)と、を交互に複数回(一例として、3回)行う工程(工程D)と、処理室201内を排気する工程(工程C)と、を交互に複数回繰り返している。すなわち、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを複数サイクル(一例として、3サイクル)行う工程Dと、工程Cと、で構成されるサイクルを複数サイクル繰り返すようにしている。
【0056】
なお、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施しているが、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1サイクル行う毎に工程Cを行うようにしてもよい。すなわち、工程Aと工程Bとを交互に1回行う工程と、工程Cと、を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。この場合、工程Aと工程Bと工程Cとで構成されるサイクルを複数回繰り返すこととなる。
【0057】
また、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程Aにおけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスの1回の供給量を、本実施の形態におけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスの1回の供給量よりも多くする(例えば、本実施の形態の工程Aにおけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスの1回の供給量の3倍の供給量とし、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う際の供給量と同じ供給量とする)ようにしてもよい。但し、この場合、一回の供給により多量のガスが供給されるので、成膜速度は上がるが、処理室201内の圧力が急激に高くなり、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジ(段差被覆性)が悪くなる可能性がある。
【0058】
これに対して、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程Aにおけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスの1回の供給量を少なくする(例えば、本実施の形態の工程Aにおけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスの1回の供給量と同じにするか、あるいは、その1回の供給量よりも少なくする)と、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは良好となるが、成膜速度が小さくなる。
【0059】
本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施している。すなわち、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスをそれぞれ複数回(3回)に分けて供給しており、処理室201内の圧力は、多段階(この場合は3段階)で、徐々に高くなる。第1段階(第1サイクル)は、3段階のうちで一番圧力が低く、成膜レートは一番低いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは最も良好となる。逆に第3段階(第3サイクル)は3段階のうち一番圧力が高く、成膜レートは一番高いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは悪くなる可能性がある。第2段階(第2サイクル)は、第1段階(第1サイクル)と第3段階(第3サイクル)の中間の特性となる。
【0060】
但し、本実施の形態のように、3段階等の多段階で圧力を増加させる場合、第1段階(第1サイクル)ではウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることから、第2段階、第3段階等では、そのウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜を下地として膜が形成されることとなり、その際、その下地の影響を受け、その後も、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることとなる。このように、多段階で圧力を増加させる場合には、初期段階において、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な初期層を形成することができ、その後、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジを確保しつつ、成膜レートを上げることが可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態では、トリエチルアミンガスの供給時間をジシランガスの供給時間よりも長くしているが、トリエチルアミンガスの供給時間とジシランガスの供給時間とを等しくしてもよく、トリエチルアミンガスの供給時間をジシランガスの供給時間よりも短くしてもよい。その中でも、トリエチルアミンガスの供給時間とジシランガスの供給時間とを等しくすることがより好ましい。
【0062】
ところで、本実施の形態におけるジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、加熱された処理室201内へのジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給により、処理室201内においてジシランガスおよびトリエチルアミンガスを熱的に分解させるようにしている。すなわち、熱的に気相分解反応を生じさせるようにしている。なお、工程Aだけでなく、工程Bにおいても、処理室201内に供給されたジシランガスおよびトリエチルアミンガスは熱的に分解される。
【0063】
ジシラン(Si)ガスを熱的に分解させることで、例えば、SiH+SiH、Si+H、SiH+SiH等の物質が生じる。また、トリエチルアミン((CN)ガスを熱的に分解させることで、例えば、(CN+C、CN+2C、N+3C等の物質が生じる。これらの物質が、ウエハ200上にSiC膜が形成される際の反応に主に寄与する代表的な物質の例である。
【0064】
そしてジシランガスおよびトリエチルアミンガスを熱的に分解させるために、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、処理室201内の圧力を、処理室201内へのジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給により、好ましくは、100〜2000Paの範囲内の圧力とする。また、ヒータ207の温度を、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜450℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、処理室201内に、不活性ガスとしてNガスを不活性ガス供給管232e、232fから供給するようにしてもよい。また、不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0065】
なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとジシランガスが熱分解しなくなり、トリエチルアミンガスが熱分解した物質との反応が生じなくなって、SiC膜が形成されなくなる。ウエハ200の温度が450℃を超えるとSiC膜中に残留する窒素(N)の量が不純物レベルを超え、窒素が膜を構成する成分として作用し、SiC膜が形成されなくなってしまう(SiC膜ではなく、SiCN膜が形成されることとなる)。また、ウエハ200の温度が450℃を超えると気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、ウエハ200の温度は350〜450℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0066】
また、処理室201内の圧力が100Pa未満となると、ジシランガスが熱分解した物質と、トリエチルアミンガスが熱分解した物質との反応が生じにくくなる。処理室201内の圧力が2000Paを超えると、工程Cにおける処理室201内の排気に時間がかかってしまい、スループットに影響を及ぼすこととなる。また、処理室201内の圧力が2000Paを超えると、SiC膜中に残留する窒素(N)の量が不純物レベルを超え、窒素が膜を構成する成分として作用し、SiC膜が形成されなくなってしまう(SiC膜ではなく、SiCN膜が形成されることとなる)。また、気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、処理室201内の圧力は100〜2000Paの範囲内の圧力とするのが好ましい。
【0067】
このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、ジシランガスの供給流量が50sccm未満となると成膜レートが極端に悪くなる。また、ジシランガスの供給流量が500sccmを超えるとSiC膜中の炭素(C)の量が少なくなってしまう。よって、ジシランガスの供給流量は50〜500sccm(0.05〜0.5slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0068】
また、ジシランガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。ジシランガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間(ジシランガスの供給停止時間)をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のジシランガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、ジシランガスの供給時間は1〜10秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0069】
また、このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、トリエチルアミンガスの供給流量が100sccm未満となるとSiC膜中の炭素(C)の量が極端に少なくなってしまう。また、トリエチルアミンガスの供給流量が2000sccmを超えると反応に寄与しないトリエチルアミンガスの量が多くなり、無駄となってしまう。よって、トリエチルアミンガスの供給流量は100〜2000sccm(0.1〜2slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0070】
また、トリエチルアミンガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。トリエチルアミンガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のトリエチルアミンガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、トリエチルアミンガスの供給流時間は1〜60秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0071】
処理室201内へのジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給を停止して、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程Bでは、加熱された処理室201内へのジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給により、処理室内201においてジシランガスおよびトリエチルアミンガスを熱的に分解させることで生じた物質同士を反応させる。すなわち、ジシランガスを熱的に分解させることで生じたSiH+SiH、Si+H、SiH+SiH等の物質と、トリエチルアミンガスを熱的に分解させることで生じた(CN+C、CN+2C、N+3C等の物質とを、反応させる。この反応は、大部分が気相反応であるが、表面反応も僅かに生じる。なおこの反応は工程Aにおいても生じ、工程Bではこの反応を継続させることとなる。この反応により、ウエハ200上にSiC膜が形成されることとなる。
【0072】
なお、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスは反応しにくく、反応速度が非常に遅い(反応に時間がかかる)ので、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持して、時間をかけることで、反応を生じさせ、SiC膜を形成することが可能となる。
【0073】
このとき、処理室201内の圧力は、好ましくは、100〜2000Paの範囲内の圧力を維持する。また、このときのヒータ207の温度は、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜450℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。すなわち、工程Aと同様な圧力範囲内の圧力および温度範囲内の温度に維持する。
【0074】
なお、ジシランガスの供給を停止する時間は、好ましくは、例えば5〜500秒の範囲内の時間とする。ジシランガスの供給停止時間を5秒未満とすると、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを熱的に分解させることで生じた物質同士の反応が不十分となる。この反応がある程度進行すると、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを熱的に分解させることで生じた物質の量が少なくなり、反応は生じるものの反応効率が低下してしまう。その状態を継続しても成膜レートが低下した状態での成膜を継続することとなる。すなわち、ジシランガスの供給停止時間を長くしすぎるとスループットに影響を及ぼすこととなる。よって、ジシランガスの供給停止時間は5〜500秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0075】
本実施の形態により形成されるSiC膜のサイクルレート(1サイクル(工程Aと工程Bとで構成されるサイクル)あたりの成膜レート)は、0.01〜0.5nm/サイクルとなることが確認されており、サイクル数を制御することで、任意の膜厚を得ることができる。例えば、SiC膜をエッチングストッパーに適用する場合におけるSiC膜の膜厚としては、100〜500Å(10〜50nm)が例示され、この場合、上述のサイクルを、例えば、20〜5000サイクル行うことで、この膜厚を実現できる。
【0076】
本実施の形態では、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に供給して封じ込めるようにしたので、低温領域において反応しにくいガスであるジシランガスおよびトリエチルアミンガスを用いる場合であっても、気相反応効率を高めることが可能となり、成膜効率(ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの消費、成膜レートなど)を向上させることが可能となる。
【0077】
また、この手法では、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する時間により、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度を、例えば、1〜40%となるように制御することができる。すなわち、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給を停止する時間、特に、ジシランガスの供給停止時間により、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度を制御することができる。なお、本実施の形態のような低温領域におけるサーマルプロセスによる成膜においては、SiC膜中の炭素濃度は40%とするのが限界であり、それを超える濃度は実現できないことを確認している。なお、SiC膜中の炭素濃度を制御し、このSiC膜中の炭素濃度を高くすることにより、SiC膜の比誘電率(k値)を下げることが可能となり、また、エッチング耐性を高めることが可能となる。
【0078】
本実施の形態では、SiC系の膜として、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明したが、ウエハ200の温度と処理室201内の圧力を高くすることで、アミン系ガスに含まれる窒素(N)を膜中に取り込むことができ、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することもできる。
【0079】
また、本実施の形態では、SiC系の膜として、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明したが、例えば、工程Bなど、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を形成できる。
【0080】
例えば、図4のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNHガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成できる。
【0081】
窒素含有ガスは、第4ガス供給管232dから、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0082】
また、例えば、図5のように、工程Bにおいて、酸素含有ガスとして例えばOガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiOC膜またはSiOCN膜を形成できる。
【0083】
酸素含有ガスは、第3ガス供給管232cから、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0084】
さらに、例えば、図6のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNHガスを供給する工程と、酸素含有ガスとして例えばOガスを供給する工程と、を設けることで、SiC系の膜として、SiOCN膜を形成できる。
【0085】
なお、図6では、NHガスを供給する工程と、Oガスを供給する工程とを、同時に行っているが、NHガスを供給する工程を、Oガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよいし、Oガスを供給する工程を、NHガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよい。
【0086】
なお、図4、図5、図6では、工程Bなどの、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設ける例について説明したが、工程Aなどの、ジシランガスおよびトリエチルアミンガスの供給を継続する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiCN膜、SiOC膜およびSiOCN膜のうち少なくとも1種類の膜を形成するようにしてもよい。
【0087】
なお、シリコン系ガスとは、シリコンを含むガス(シリコン含有ガス)のことをいう。シリコン系ガスとしては、例えばジシラン(Si)ガスやトリシラン(Si)ガス等のシラン系ガスを好ましく用いることができる。本実施の形態では、シリコン系ガスとして、シリコン(Si)と水素(H)を含み、塩素(Cl)を含まない、クロル非含有シラン系ガスを用いている。
【0088】
アミン系ガスとは、アミン基を含むガスのことであり、少なくとも炭素(C)、窒素(N)及び水素(H)を含むガスである。アミン系ガスは、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン等のアミンを含む。ここで、アミンとは、アンモニア(NH)の水素原子をアルキル基等の炭化水素基で置換した形の化合物の総称である。つまり、アミンは、アルキル基等の炭化水素基を含む。アミン系ガスは、シリコン(Si)を含んでいないことからシリコン非含有のガスとも言え、更には、シリコン及び金属を含んでいないことからシリコン及び金属非含有のガスとも言える。アミン系ガスとしては、例えば、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)の他、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)等のエチルアミン系ガス、トリプロピルアミン((CN、略称:TPA)、ジプロピルアミン((CNH、略称:DPA)、モノプロピルアミン(CNH、略称:MPA)等のプロピルアミン系ガス、トリイソプロピルアミン([(CHCH]N、略称:TIPA)、ジイソプロピルアミン([(CHCH]NH、略称:DIPA)、モノイソプロピルアミン((CHCHNH、略称:MIPA)等のイソプロピルアミン系ガス、トリブチルアミン((CN、略称:TBA)、ジブチルアミン((CNH、略称:DBA)、モノブチルアミン(CNH、略称:MBA)等のブチルアミン系ガス、または、トリイソブチルアミン([(CHCHCHN、略称:TIBA)、ジイソブチルアミン([(CHCHCHNH、略称:DIBA)、モノイソブチルアミン((CHCHCHNH、略称:MIBA)等のイソブチルアミン系ガスを好ましく用いることができる。すなわち、アミン系ガスとしては、例えば、(CNH3−x、(CNH3−x、[(CHCH]NH3−x、(CNH3−x、[(CHCHCHNH3−x(式中、xは1〜3の整数)のうち少なくとも1種類のガスを好ましく用いることができる。
【0089】
窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等を好ましく用いることができる。なお、窒素(N)ガスは不活性ガスであり、SiC膜中に取り込まれないので、窒素含有ガスから除かれる。
【0090】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、オゾン(O)ガス、水素(H)ガス+Oガス、Hガス+Oガス、水蒸気(HO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
上述の図3を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は425℃とし、材料の供給量、すなわち、材料の供給流量、供給時間は、処理室201の容積100Lに対してそれぞれ次のように設定した。すなわち、トリエチルアミンガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.35slm、20秒とし、ジシランガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.10slm、3秒とした。なお、1サイクル(工程Aと工程Bとで構成されるサイクル、以下同様)あたりの反応継続時間、すなわち、1サイクルあたりのジシランガスの供給停止時間を50〜250秒の間で変化させて複数、ここでは3つの評価サンプルを作成した。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その複数の評価サンプルにおけるSiC膜中の炭素(C)および窒素(N)の濃度を蛍光エックス線分析(XRF)により測定した。
【0092】
その結果を図7に示す。図7の横軸は、1サイクルあたりの反応継続時間(秒/サイクル)、すなわち、1サイクルあたりのジシランガスの供給停止時間(秒/サイクル)を示しており、縦軸は、XRF強度/膜厚(任意単位(a.u.))を示している。なお、XRF強度/膜厚とは蛍光エックス線分析(XRF)のX線強度を膜厚で割った値を示している。
【0093】
図7より、反応継続時間を変化させることにより、SiC膜中の炭素濃度を制御できることが分かる。すなわち、反応継続時間を長くするほどSiC膜中の炭素濃度が高くなり、反応継続時間を短くするほどSiC膜中の炭素濃度が低くなることが分かる。なお、図7における3点の炭素の原子濃度は左から順に、20%、26%、30%程度であることを確認した。また、図7における3点の窒素の原子濃度は左から順に、2%、4%、5%程度で、不純物レベルであることを確認した。このように、本実施例より、反応継続時間を変化させることにより、SiC膜中の炭素濃度、すなわち、SiC膜の組成比を制御できることが判明した。
【0094】
(実施例2)
上述の図3を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各工程における処理条件は上述の実施例1における条件と同様な条件とした。ただし、実施例2では、1サイクルあたりの反応継続時間、すなわち、1サイクルあたりのジシランガスの供給停止時間を18〜98秒の間で変化させて複数、ここでは4つの評価サンプルを作成した。そして、その複数の評価サンプルにおけるSiC膜中の炭素(C)および窒素(N)の濃度を蛍光エックス線分析(XRF)により測定した。
【0095】
その結果を図8に示す。図8の横軸は、1サイクルあたりの反応継続時間(秒/サイクル)、すなわち、1サイクルあたりのジシランガスの供給停止時間(秒/サイクル)を示しており、縦軸は、XRF強度/膜厚(任意単位(a.u.))を示している。なお、XRF強度/膜厚とは蛍光エックス線分析(XRF)のX線強度を膜厚で割った値を示している。
【0096】
図8より、実施例1と同様、反応継続時間を変化させることにより、SiC膜中の炭素濃度を制御できることが分かる。すなわち、反応継続時間を長くするほどSiC膜中の炭素濃度が高くなり、反応継続時間を短くするほどSiC膜中の炭素濃度が低くなることが分かる。なお、図8における4つの評価サンプルにおけるSiC膜中の炭素の原子濃度は左から順に、2.5%、11%、13%、20%程度であることを確認した。また、図8における4つの評価サンプルにおけるSiC膜中の窒素の原子濃度はいずれも5%以下で、不純物レベルであることを確認した。このように、本実施例より、反応継続時間を変化させることにより、SiC膜中の炭素濃度、すなわち、SiC膜の組成比を制御できることが判明した。
【0097】
(実施例3)
上述の図3を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各工程における処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様な複数のサンプルを準備した。その複数の評価サンプルにおけるSiC膜に対し、1%HF溶液によるウェットエッチング評価を行った。その結果、いずれの評価サンプルにおけるSiC膜においても、ウェットエッチングレートが0.5Å/min以下の耐性が得られることを確認した。
【0098】
(実施例4)
上述の図3を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各ステップにおける処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様な複数の評価サンプルを準備した。その複数の評価サンプルにおけるSiC膜に対し、プラズマ酸化を行い、その前後におけるSiC膜の最表面の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の濃度をXRFにより測定した。その結果、いずれの評価サンプルにおけるSiC膜においても、C元素の濃度に変化はなく、N元素がO元素に置換されるレベルの耐性が得られることを確認した。
【0099】
(比較例)
上述の実施の形態における成膜シーケンスではなく、ジシランガスとトリエチルアミンガスとが処理室201内において混合されないよう、ジシランガスとトリエチルアミンガスとを、間に処理室201内のパージを挟んで、交互供給することで、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各ステップにおける処理条件は上述の実施の形態と同様な条件とした。その結果、比較例では、ウエハ上に形成されたSiC膜自体が薄すぎて、実施例1、2のようなSiC膜中の炭素(C)や窒素(N)のXRFによる強度測定は行えなかった。また、実施例3、4のような耐性の評価も行うことができなかった。
【0100】
これらのことから、ジシランガスとトリエチルアミンガスとを、間に処理室201内のパージを挟んで、交互供給する場合、表面反応が主体的となるが、表面反応が主体的となる条件下ではSiC膜の形成が難しいことが判明した。低温領域におけるサーマルプロセスによる成膜においては、本実施の形態のように気相反応が主体的となる条件下で成膜する必要があることが判明した。
【0101】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0102】
(付記1)
本発明の好ましい一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0103】
(付記2)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスのうち少なくともいずれか一方のガスが熱的に分解するような温度となるように、前記処理室内が加熱される。
【0104】
(付記3)
付記1または2の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
【0105】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行う。
【0106】
ここで、「(A)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。同様に、「(A)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。
【0107】
(付記5)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0108】
(付記6)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に複数回繰り返す工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0109】
(付記7)
付記1乃至6のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ供給された前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを熱的に分解させ、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める期間において、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを熱的に分解させることで生じた物質同士を反応させ、この反応により前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する。
【0110】
(付記8)
付記1乃至7のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコン系ガスが、Si26およびSi38のうち少なくとも1種類のガスであり、前記アミン系ガスが、(C25xNH3-x、(C37xNH3-x、(C49xNH3-x、((CH32CH)xNH3-x、((CH32CHCH2xNH3-x(式中、xは1〜3の整数)のうち少なくとも1種類のガスである。
【0111】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記基板の温度を350℃以上450℃以下とする。
【0112】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度を制御する。
【0113】
(付記11)
付記10の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度が1〜40%となるように制御する。
【0114】
(付記12)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記処理室内への前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの供給を停止し、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの供給を停止する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度を制御する。
【0115】
(付記13)
付記12の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの供給を停止する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度が1〜40%となるように制御する。
【0116】
(付記14)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記処理室内への前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの供給を停止し、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスの供給を停止する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度を制御する。
【0117】
(付記15)
付記14の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記シリコン系ガスの供給を停止する時間により、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度が1〜40%となるように制御する。
【0118】
(付記16)
付記1乃至15のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程および前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記処理室内の排気を停止する。
【0119】
(付記17)
付記1乃至15のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程および前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内へ供給しつつ排気し、その際、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの前記処理室内からの排気レートを前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を維持する。
【0120】
(付記18)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜は、シリコン炭化膜(SiC膜)を含む。
【0121】
(付記19)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜は、シリコン炭化膜(SiC膜)およびシリコン炭窒化膜(SiCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を含む。
【0122】
(付記20)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を形成する。
【0123】
(付記21)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成する。
【0124】
(付記22)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を形成する。
【0125】
(付記23)
付記1乃至17のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程と、酸素含有ガスを供給する工程とを有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成する。
【0126】
(付記24)
本発明のさらに好ましい他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内へ供給しつつ排気し、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの前記処理室内からの排気レートを前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を形成する工程と、
その状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0127】
(付記25)
本発明のさらに好ましい他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
【0128】
(付記26)
本発明のさらに好ましい他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へシリコン系ガスを供給するシリコン系ガス供給系と、
前記処理室内へアミン系ガスを供給するアミン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板を収容した加熱された状態の前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める処理と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、が行われるように、前記ヒータ、前記シリコン系ガス供給系、前記アミン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0129】
(付記27)
本発明のさらに好ましい他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順において、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を実行させるプログラムが提供される。
【0130】
(付記28)
本発明のさらに好ましい他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順において、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0131】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。
【0132】
例えば、上述の実施の形態では、工程Aや工程Bにおいて、シリコン系ガスおよびアミン系ガスの両方を熱的に分解させる例について説明したが、シリコン系ガスおよびアミン系ガスのうち少なくともいずれか一方を熱的に分解させるようにしてもよい。例えば、シリコン系ガスだけ熱的に分解させるようにしてもよいし、アミン系ガスだけ熱的に分解させるようにしてもよい。ただし、反応効率を考慮するとシリコン系ガスおよびアミン系ガスの両方を熱的に分解させるのがより好ましい。
【0133】
また例えば、上述の実施の形態では、工程Bにおいて、シリコン系ガスとアミン系ガスの供給を停止する例について説明したが、工程Bにおいては、各ノズル内にNガス等の不活性ガスを連続的に流すようにしてもよい。その場合、処理室内に不活性ガスが供給され、処理室内の圧力が上昇することとなるが、各ノズル内に供給する不活性ガスの流量を制御することで、処理室内の圧力が処理圧力、すなわち、100〜2000Paの範囲内の所望の圧力を超えないようにすることとなる。工程Bにおいて、各ノズル内に不活性ガスを連続的に流すようにすることで、各ノズル内にシリコンや炭素を含む膜が形成されるのを防止することができる。
【0134】
また例えば、上述の実施形態では、一重反応管構造の処理室を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、二重反応管構造の処理室を用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、好ましくは、反応管をアウターチューブ(外部反応管)と、その内側に設けられたインナーチューブ(内部反応管)とで構成し、インナーチューブ内部の筒中空部に形成される処理室内に、シリコン系ガスとアミン系ガスとを、例えば、インナーチューブの下端側から上端側に向けて流し、インナーチューブの上端側からインナーチューブとアウターチューブとの間の筒状空間に流出させ、該筒状空間を流下させて排気管から排気する。この場合も、上述の実施形態と同様に、排気管に設けられたAPCバルブの開度を調整することで、上述の封じ込め状態を形成、維持することとなる。このように、二重反応管構造の処理室を用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0135】
また例えば、上述の実施形態では、基板を支持する基板支持具としてラダーボート(ボート支柱に係止溝を設けたタイプのボート)を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、リングボートを用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、例えば、リングボートは、周方向に適宜間隔を開けて立設した3〜4本のボート支柱と、ボート支柱に水平に多段に取り付けられ基板の外周を裏面から支持する支持板としてのリング状ホルダとから構成されるようにしてもよい。この場合、リング状ホルダは、外径が基板の径よりも大きく、内径が基板の径よりも小さいリング状プレートと、リング状プレート上の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。また、この場合、リング状ホルダは、外径および内径が基板の径よりも大きいリング状プレートと、リング状プレートの内側の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。リング状プレートが存在しない場合に比べて、リング状プレートがある分、各ノズルの孔から基板毎に分離された領域(この場合、リング状プレート間で区切られた領域)への距離が短くなるので、各ノズルから噴出したガスが基板領域に行き渡り易くなるという利点がある。これにより基板上へのガス供給量を十分に保つことが可能となり、成膜速度の低下や、均一性の悪化を防ぐことができる。リングボートを用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0136】
また、上述の実施形態では、半導体元素であるシリコンを含むシリコン系絶縁膜(SiC膜、SiCN膜、SiOCN膜、SiOC膜)を形成する例について説明したが、本発明は、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも適用することができる。
【0137】
例えば、本発明は、チタン炭化膜(TiC膜)、ジルコニウム炭化膜(ZrC膜)、ハフニウム炭化膜(HfC膜)、タンタル炭化膜(TaC膜)、アルミニウム炭化膜(AlC膜)、モリブデン炭化膜(MoC膜)等の金属炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0138】
また例えば、本発明は、チタン炭窒化膜(TiCN膜)、ジルコニウム炭窒化膜(ZrCN膜)、ハフニウム炭窒化膜(HfCN膜)、タンタル炭窒化膜(TaCN膜)、アルミニウム炭窒化膜(AlCN膜)、モリブデン炭窒化膜(MoCN膜)等の金属炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0139】
また例えば、本発明は、チタン酸炭窒化膜(TiOCN膜)、ジルコニウム酸炭窒化膜(ZrOCN膜)、ハフニウム酸炭窒化膜(HfOCN膜)、タンタル酸炭窒化膜(TaOCN膜)、アルミニウム酸炭窒化膜(AlOCN膜)、モリブデン酸炭窒化膜(MoOCN膜)等の金属酸炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0140】
また例えば、本発明は、チタン酸炭化膜(TiOC膜)、ジルコニウム酸炭化膜(ZrOC膜)、ハフニウム酸炭化膜(HfOC膜)、タンタル酸炭化膜(TaOC膜)、アルミニウム酸炭化膜(AlOC膜)、モリブデン酸炭化膜(MoOC膜)等の金属酸炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0141】
この場合、上述の実施形態におけるシリコン系ガスの代わりに、金属元素を含む金属系原料ガスを用い、上述の実施形態と同様なシーケンスにより成膜を行うことができる。
【0142】
例えば、Tiを含む金属系薄膜(TiC膜、TiCN膜、TiOCN膜、TiOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、チタニウムテトラクロライド(TiCl)やチタニウムテトラフルオライド(TiF)等のTi系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0143】
また例えば、Zrを含む金属系薄膜(ZrC膜、ZrCN膜、ZrOCN膜、ZrOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl)やジルコニウムテトラフルオライド(ZrF)等のZr系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0144】
また例えば、Hfを含む金属系薄膜(HfC膜、HfCN膜、HfOCN膜、HfOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)やハフニウムテトラフルオライド(HfF)等のHf系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0145】
また例えば、Taを含む金属系薄膜(TaC膜、TaCN膜、TaOCN膜、TaOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、タンタルペンタクロライド(TaCl)やタンタルペンタフルオライド(TaF)等のTa系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0146】
また例えば、Alを含む金属系薄膜(AlC膜、AlCN膜、AlOCN膜、AlOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、アルミニウムトリクロライド(AlCl)やアルミニウムトリフルオライド(AlF)等のAl系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0147】
また例えば、Moを含む金属系薄膜(MoC膜、MoCN膜、MoOCN膜、MoOC膜)を形成する場合は、原料ガスとして、モリブデンペンタクロライド(MoCl)やモリブデンペンタフルオライド(MoF)等のMo系原料ガスを用いることができる。アミン系ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0148】
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む薄膜を形成する場合に好適に適用することができる。
【0149】
また例えば、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0150】
また、上述の実施形態の各成膜例や各応用例等は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0151】
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更することも可能である。
【0152】
従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0153】
121 コントローラ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 ガス排気管
232a 第1ガス供給管
232b 第2ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へシリコン系ガスを供給するシリコン系ガス供給系と、
前記処理室内へアミン系ガスを供給するアミン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板を収容した加熱された状態の前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める処理と、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、が行われるように、前記ヒータ、前記シリコン系ガス供給系、前記アミン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へシリコン系ガスとアミン系ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順において、
前記処理室内へ前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを供給して、前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記シリコン系ガスと前記アミン系ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30752(P2013−30752A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−116772(P2012−116772)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】