説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】成膜ガスノズルの交換の時期を延長させ、成膜ガスノズル交換に要していた時間をなくし、反応炉のダウンタイムを短縮する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板200を反応炉31内に搬入するステップと、少なくとも一つの成膜ガスノズル40より反応炉31内に成膜ガスを供給して基板200上に薄膜を成膜するステップと、成膜後の基板200を反応炉31内から搬出するステップと、成膜ガスノズル40内にクリーニングガスを供給して成膜ガスノズル40内に堆積した生成膜を除去する第1のクリーニングステップと、反応炉31内に成膜ガスノズル40とは異なるクリーニングガス供給口46よりクリーニングガスを供給して反応炉31内に堆積した生成膜を除去する第2のクリーニングステップとを有し、第1のクリーニングステップを第2のクリーニングステップよりも先行して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板処理装置に係り、特に反応炉内のクリーニング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法を実施する半導体製造装置として、複数の基板を一括処理する縦型CVD装置が知られている。この縦型CVD装置の反応炉を使用して、複数の基板上に、フラットポリシリコン膜と呼ばれるポリシリコン膜を成膜することが行われている。ここで、フラットとは、炉内の温度勾配をフラット(ゼロ)にすることである。したがって、フラットポリシリコン膜とは、温度勾配をフラットにした炉内に配置された複数の基板上に成膜されるポリシリコン膜をいう。ここで、複数の基板が配置される炉内の領域を基板配列領域という。
このフラットポリシリコン膜の成膜に際しては、基板配列領域全体に均一に成膜ガスを供給するために、ロングノズルと呼ばれる成膜ガスノズルを使用している。ここでロングノズルとは、炉内の基板配列領域外からではなく、炉内の基板配列領域内から成膜ガスを供給することが可能な成膜ガスノズルをいう。縦型CVD装置の反応炉にあっては、このロングノズルは、通常、炉の下部から挿入されて炉の上部に向けて延在されているため、炉内の下部から挿入されてそこに止まる通常ノズルと比べて長さが長くなっている。上述したフラットポリシリコン膜の成膜には、基板配列領域に沿う、長さの異なる複数本の、例えば4本の石英製のロングノズル(以下、石英ロングノズルという)が使用されている。
ところで、反応炉内で成膜を繰り返していくと、反応炉内に副生成物である生成膜が堆積していく。この堆積膜厚が10μm以上になると、パーティクル発生の要因となるため、一旦、堆積膜の除去が必要となる。この反応炉内の膜除去には、クリーニングガスによるエッチングが採用される。例えばSiHを反応炉内に供給してポリシリコン膜を成膜する場合、ClFガスによるエッチングが有効である。ここで、反応炉の内壁等のみならず、フラットポリシリコン膜を成膜するために使用する石英ロングノズルの内壁にも、当然ポリシリコン膜が成膜される。したがって、反応炉の内壁等と石英ロングノズルの内壁との両方の堆積膜をエッチングする必要がある。この場合、成膜ガスノズル内の堆積膜厚は、反応炉内の堆積膜厚に比べ一般に4倍以上厚く付着している。このため、成膜ガスノズル内のクリーニングを、反応炉内のクリーニングと別に行う必要がある。
そこで、従来、クリーニングガスノズルよりクリーニングガスを反応炉内に導入して、反応炉内をクリーニングするとともに、クリーニングガスを成膜ガスノズル内にも導入して成膜ガスノズル内をクリーニングすることが行われている。この場合、成膜ガスノズルの内壁のクリーニング処理と、反応管の内壁等のクリーニング処理を同時に行うようにする方法の他に、これらのクリーニング処理を別々に行うようにする方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−68214号公報(段落番号0091等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の方法のように、成膜ガスノズルの内壁のクリーニング処理と反応管の内壁等のクリーニング処理を同時に行うと、クリーニング時間を反応管の内壁等に要するクリーニング時間に合せる必要があり、成膜ガスノズルに失透が発生するため好ましくない。
また、成膜ガスノズルの内壁のクリーニング処理と、反応管の内壁等のクリーニング処理を別々に行うようにする特許文献1の他の方法でも、成膜ガスノズルの内壁のクリーニ
ングを、反応管の内壁等のクリーニングと同一条件(同一ガス流量等)で行っているので、成膜ガスノズルのダメージが大きく、再利用が不可能になる場合があった。特にロングノズルの場合には、その形状からダメージが大きく、再利用が不可能であった。そこで、メンテナンス毎に、成膜ガスノズルのクリーニングを実施する代りに、成膜ガスノズルは新品に交換し、反応炉内のみのクリーニングを実施しているのが現状であった。
すなわち、成膜ガスノズル内壁と反応管の内壁等のクリーニング条件を同一にすると、クリーニングガス流量が少ない場合には反応管内壁等のクリーニングが不十分となり、また、クリーニングガス流量が多すぎる場合には成膜ガスノズル内壁のクリーニングが過剰となるという問題があった。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、クリーニング時の成膜ガスノズルのダメージを低減して、メンテナンス時のコストと装置のダウンタイムを低減することが可能な半導装置の製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、基板を反応炉内に搬入するステップと、少なくとも一つの成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給して基板上に薄膜を成膜するステップと、成膜後の基板を反応炉から搬出するステップと、反応炉内に成膜ガスノズルより第1の条件に設定したクリーニングガスを供給する第1のクリーニングステップと、反応炉内に成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガス供給口より第2の条件に設定したクリーニングガスを供給する第2のクリーニングステップと、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0005】
基板の反応炉内への搬入ステップ、基板上への成膜ステップ、反応炉から基板の搬出ステップが繰り返されると、成膜ガスノズル内及び反応炉内に成膜ステップに伴って発生する膜が堆積していく。この堆積膜は、2つのクリーニングステップによって除去される。
【0006】
第1のクリーニングステップでは、第1の条件に設定したクリーニングガスが、成膜ガスノズルより反応炉内に供給される。このとき、第1の条件にしたがって、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を除去できる。第1の条件は、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件とすることが好ましい。
【0007】
第2のクリーニングステップでは、第2の条件に設定したクリーニングガスがクリーニングガス供給口より反応炉内に供給される。このとき、第2の条件にしたがって、反応炉内に堆積した生成膜を除去できる。また、クリーニングガスを供給する供給口として、成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガス供給口を用いるので、成膜ガスノズルからは不活性ガスを供給することが可能となり、それにより第2のクリーニングステップにおいて、成膜ガスノズル内へのクリーニングガスの侵入を阻止できる。第2の条件は、反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件とすることが好ましい。
【0008】
このように第1のクリーニングステップでは第1の条件を設定し、第2のクリーニングステップでは第2の条件を設定するようにしたので、第1のクリーニングステップで成膜ガスノズルへのダメージを低減できる。したがって、従来、反応炉内をクリーニングするたびに行っていた成膜ガスノズル交換の時期を延長することができる。その結果、半導体製造装置の製造コストを低減することができる。また、成膜ガスノズル交換に要していた時間を低減することができ、反応炉のダウンタイムを短縮することができる。
【0009】
第1のクリーニングステップと第2のクリーニングステップとは同時に行うことも可能である。また、第1のクリーニングステップと第2のクリーニングステップとのいずれかを先に実行することも可能である。いずれかを先に実行する場合、成膜ガスノズルのクリーニングを先に実行することが好ましい。成膜ガスノズルのクリーニングを後にすると、
パーティクルの発生の懸念があるからである。
【0010】
なお、第1の発明は、基板を反応炉内に搬入するステップと、少なくとも一つの成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給して基板上に薄膜を成膜するステップと、成膜後の基板を反応炉から搬出するステップと、第1の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルよりクリーニングガスを供給する第1のクリーニングステップと、第1の条件とは異なる第2の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルより不活性ガスを供給しつつ、成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガス供給口よりクリーニングガスを供給する第2のクリーニングステップと、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法としてもよい。
【0011】
第1、第2の条件とは、例えばクリーニングガス流量、クリーニングガス濃度が挙げられる。基板としてはシリコンウェハが挙げられる。反応炉としては、バッチ式の縦型CVD装置や枚葉式のCVD装置等が挙げられる。基板を反応炉に対して搬入・搬出するステップを実行する搬送手段としては、縦型CVD装置の場合には、ボートなどの基板保持具を昇降する昇降手段が挙げられる。枚葉式CVD装置の場合には、基板移載手段が挙げられる。
【0012】
少なくとも一つの成膜ガスノズルとしては、成膜ガス用のノズルを成膜ガス種ごとに1つずつ設ける1系統ノズルでも、あるいは成膜ガス用のノズルを成膜ガス種ごとに複数ずつ設ける多系統ノズルでもよい。多系統ノズル、すなわち複数の成膜ガスノズルは、各成膜ガスノズルの長さを同じとしてもよいが、特に高さ方向に基板配列領域が存在する縦型CVD装置では、各ノズルの長さを基板配列領域に対して異なるようにして、基板配列領域に配置された各基板に対して、位置の異なる各ノズルから各基板に均一にガスが供給できるようになっていることが好ましい。
クリーニングガス供給口としては、成膜ガスノズルと異なりノズルである必要はなく、また成膜ガスノズルとは別に設けた供給口が一つあればよい。基板上に薄膜を成膜するステップとしては、ポリシリコン膜の成膜ステップなどが挙げられる。クリーニングガスとしては、ClFをはじめとして、NF、F、HF等が挙げられる。クリーニングガスを希釈化する不活性ガスはNが好ましい。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第1のクリーニングステップでは、クリーニングガス供給口より不活性ガスを供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
第1のクリーニングステップで、クリーニングガス供給口より不活性ガスを供給すると、成膜ガスノズルより反応炉内に供給されるクリーニングガスの濃度を調整できる。また、クリーニングガス供給口又はクリーニングガスノズル内に成膜ガスノズルからのクリーニングガスが侵入して、クリーニングガス供給口内が不要なダメージを受けないようにすることができる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、第1の条件とは成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件であり、第2の条件とは反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
第1のクリーニングステップで、仮に、反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な第2の条件と同じ条件で、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜をエッチングすると、第1のクリーニングステップで、成膜ガスノズルにダメージを与えることになる。この点で、第1の条件が成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件に設定されており、反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件とはなっていないので、第1のクリーニングステップでは、成膜ガスノズルへ与えるダメージを低減できる。また、第2のクリーニングステップでは、反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件に設定されている
ので、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。
【0015】
第1の条件である、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件としては、第2の条件よりもクリーニングガスの濃度を低めたり、クリーニングガス流量を低減したりすることが挙げられる。第2の条件である、反応炉内に堆積した生成膜を優先的にエッチングすることが可能な条件としては、第1の条件よりもクリーニングガスの濃度を高めたり、クリーニングガス流量を増加したりすることが挙げられる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、第1のクリーニングステップの方が第2のクリーニングステップよりも、クリーニングガス流量が小さくなるようにすることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
第1のクリーニングステップの方が第2のクリーニングステップよりも、クリーニングガス流量が小さくなるようにすることによって、第1のクリーニングステップにおいて、成膜ガスノズルへダメージを与えることなく、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を有効に除去できる。また、第2のクリーニングステップにおいて、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。
【0017】
第5の発明は、第1の発明において、成膜ステップでは、SiHを用いてシリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
成膜ステップで、SiHを用いてシリコン膜を形成すると、成膜ガスノズル内及び反応炉内に成膜ステップに伴って発生するシリコン膜が堆積していく。
このようにSiHを用いてシリコン膜を成膜するステップを有する場合であっても、成膜ガスノズル内をクリーニングする第1の条件と、反応炉内をクリーニングする第2の条件とを異ならせているので、第1のクリーニングステップにおいて、成膜ガスノズル内に堆積したシリコン膜を、成膜ガスノズルにダメージを与えることなく、除去できる。また、第2のクリーニングステップにおいて、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。なお、シリコン膜としては、ポリシリコン膜やアモルファスシリコン膜等が挙げられる。
【0018】
第6の発明は、第1の発明において、成膜ステップでは、長さの異なる複数の成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
長さの異なる複数の成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給して基板上に薄膜を成膜するステップを有する場合であっても、複数の成膜ガスノズル内をクリーニングする第1の条件と、反応炉内をクリーニングする第2の条件とを異ならせているので、第1のクリーニングステップにおいて、長さの異なる複数の成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を、複数の成膜ガスノズルにダメージを与えることなく、除去できる。この場合、複数の成膜ガスノズルの長さに応じて、反応炉内に成膜ガスノズルよりクリーニングガスを供給する時間を変えてやることが好ましい。また、第2のクリーニングステップにおいて、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。
上述した長さの異なる複数の成膜ガスノズルは、特に、複数の基板を一括処理する縦型のCVD装置において、複数の基板が配列される反応炉内の基板配列領域の異なる位置にそれぞれ配設され、複数の基板に均一に成膜ガスを供給するために設けられる。
【0019】
第7の発明は、第1の発明において、成膜ステップでは、反応炉内の温度勾配をフラットにして、長さの異なる複数の成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
成膜ステップで、反応炉内の温度勾配をフラットにして、長さの異なる複数の成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給するようなステップを有する場合であっても、複数
の成膜ガスノズル内をクリーニングする第1の条件と、反応炉内をクリーニングする第2の条件とを異ならせているので、第1のクリーニングステップにおいて、長さの異なる複数の成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を、複数の成膜ガスノズルにダメージを与えることなく、有効に除去できる。また、第2のクリーニングステップにおいて、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。
上述したように、反応炉内の温度勾配をフラットにするのは、特に、複数の基板を一括処理する縦型のCVD装置において、複数の基板間で成膜温度を同じとするためである。また、長さの異なる複数の成膜ガスノズルは、特に、複数の基板を一括処理する縦型のCVD装置において、複数の基板が配列される反応炉内の基板配列領域の異なる位置にそれぞれ配設され、複数の基板に均一に成膜ガスを供給するに設けられる。
【0020】
第8の発明は、第1の発明において、クリーニングガスとはClFガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
複数の成膜ガスノズル内をクリーニングする第1の条件と、反応炉内をクリーニングする第2の条件とを異ならせたうえ、第1及び第2のクリーニングステップにおいて、クリーニングガスとしてClFガスを供給するので、成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を、成膜ガスノズルにダメージを与えることなく、有効に除去できる。また、反応炉内に堆積した生成膜を有効に除去できる。
【0021】
第9の発明は、基板を収容する反応炉と、前記反応炉に対して基板を搬送する搬送手段と、前記反応炉内にガスを供給する少なくとも一つの成膜ガスノズルと、前記反応炉内にガスを供給する成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガスノズルと、前記搬送手段、及び前記成膜ガスノズル及びクリーニングガスノズルより前記反応炉内に供給するガスをそれぞれ制御する制御手段とを備えて、前記制御手段は、搬送ステップでは基板を反応炉内に搬入し成膜後の基板を反応炉から搬出し、成膜ステップでは少なくとも一つの成膜ガスノズルより反応炉内に成膜ガスを供給して基板上に薄膜を成膜し、第1のクリーニングステップでは第1の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルよりクリーニングガスを供給し、第2のクリーニングステップでは第1の条件とは異なる第2の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルより不活性ガスを供給しつつ成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガスノズルよりクリーニングガスを供給するように制御するものであることを特徴とする半導体製造装置である。
【0022】
これによれば、第1のクリーニングステップでは第1の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルよりクリーニングガスを供給し、第2のクリーニングステップでは第2の条件に保持した反応炉内に成膜ガスノズルより不活性ガスを供給しつつクリーニングガスノズルよりクリーニングガスを供給するように制御する制御手段を備えているので、第1の発明の半導体装置の製造方法を容易に実施できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、クリーニング時の成膜ガスノズルのダメージを低減して、メンテナンス時のコストと装置のダウンタイムを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態による縦型CVD装置の概略断面図である。
【図2】実施の形態による炉内2段階クリーニングシーケンスの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態の半導体製造装置を示す縦型CVD装置の概略断面図を示す。縦型CVD装置は、主に基板を処理する反応空間を有する反応炉と、反応炉に対して基板保持
部材に保持された基板を搬送する搬送手段とを備え、基板保持部材を反応炉に収容して基板を処理するように構成される。
【0026】
反応炉31は、反応管37と加熱装置(以下ヒータ39)とを備える。反応管37は、外管(以下、アウタチューブ115)と内管(以下、インナチューブ116)とから構成されている。アウタチューブ115は例えば石英(SiO)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞され、下端に開口を有する円筒状の形態である。インナチューブ116は、上端及び下端の両端に開口を有する円筒状の形態を有し、アウタチューブ115内に同軸的に配置されている。アウタチューブ115とインナチューブ116の間の空間は筒状空間114を成す。インナチューブ116の上部開口から上昇したガスは、筒状空間114を通過して排気系(以下、排気管111)から排気されるようになっている。なお、反応炉31の制御系は制御手段103で制御される。
【0027】
アウタチューブ115およびインナチューブ116の下端には、例えばステンレス等よりなるマニホールド117が係合され、このマニホールド117にアウタチューブ115およびインナチューブ116が保持されている。アウタチューブ115の下端部およびマニホールド117の上部開口端部には、それぞれ環状のフランジが設けられ、これらのフランジ間が気密にシールされている。
【0028】
マニホールド117の下端開口部には、例えばステンレス等よりなる円盤状の蓋体(以下シールキャップ38)が気密シール可能に着脱自在に取付けられている。シールキャップ38には、回転手段(以下回転軸36)が連結されており、回転軸36により、基板保持部材(以下ボート21)及びボート21上に保持されている複数のウェハ200を回転させる。又、シールキャップ38は基板搬送手段としての昇降手段(以下、ボートエレベータ35)に連結されていて、ボート21を昇降させる。ボートエレベータ35は、ボート21に保持された複数のウェハを反応空間34に対して搬送する。回転軸36、及びボートエレベータ35は、所定のスピードにするように、制御手段103により制御される。
【0029】
アウタチューブ115の外周にはヒータ39が同軸的に配置されている。ヒータ39は、アウタチューブ115内の温度を所定の処理温度にするよう制御手段103により制御する。前述したインナチューブ116、アウタチューブ115と、マニホールド117とで、ボート21に支持されたウェハ200を収納して処理するための反応空間34を構成する。
【0030】
マニホールド117から反応管37にわたって、それらの一側には、石英製の成膜ガスノズル40が複数本設けられている。これらの成膜ガスノズル40により、成膜ガスがインナチューブ116内に供給されるようになっている。成膜ガスノズル40は、複数本、例えば長さの異なる4本の石英ロングノズルA〜D(長さはA>B>C>Dの関係にある)から構成される。ここで、成膜ガスノズル40を、長さの異なる4本の石英ロングノズルから構成したのは、反応炉内の温度勾配をゼロとしたうえで、複数のウェハ200の膜厚均一性を確保するためには、ウェハ配列領域22を4ゾーンに分割して、分割した各ゾーンに対応するように、反応炉内に複数本のロングノズルを延在させ、これらから成膜ガスを供給することが必要となるからである。
石英ロングノズルA〜Dの先端部は、反応空間34内のウェハ配列領域22に位置決めされている。この場合、石英ロングノズルA〜Dの出口となる先端部は、ウェハ配列領域22に沿って、上下方向にずれるように位置決めされ、ウェハ配列領域22の途中箇所から複数のウェハ200に成膜ガスを均等に供給するようになっている。これらの石英ロングノズルA〜Dの入口となる基端部は、マニホールド117の一側に形成されたノズル通し穴を介して反応管37の外部に取り出されている。
【0031】
また、マニホールド117の他側には、クリーニングガス供給口を形成する石英製のクリーニングガスノズル(以下、ClFノズル46)が設けられている。このClFノズル46により、クリーニングガスがインナチューブ116内に供給されるようになっている。ClFノズル46の先端部は、ウェハ配列領域22の下方に位置決めされている。このClFノズル46の基端部は、フランジ117に形成されたノズル通し穴を介して反応管37の外部に取り出されている。ここで、ClFノズル46も石英ロングノズルA〜Dと同じ材料の石英から形成されているが、ClFノズル46は、その長さが石英ロングノズルA〜Dの長さと比べると短く、石英ロングノズルA〜Dのようなクリーニング時のダメージ問題はあまり生じない。
【0032】
また、マニホールド117の他側には、真空ポンプ等の排気装置(図示せず)に連結されたガスの排気管111が接続されており、アウタチューブ115とインナチューブ116との間の筒状空間114を流れるガスを排出し、アウタチューブ115内を所定の圧力の減圧雰囲気にするよう制御手段103により制御する。
【0033】
上述した石英ロングノズルA〜D、ClFノズル46は、図示しない成膜ガス源、不活性ガス源、クリーニングガス源に配管系を介して連結されている。
【0034】
石英ロングノズルA〜Dは、反応管37の外部に取り出されているそれらの基端部が、それぞれエアバルブ79〜82、2方向バルブ51〜54、エアバルブ75〜78、流量制御手段(以下、MFC)91〜94、及びエアバルブ71〜74を介在した配管で、図示しない成膜ガス源(以下、SiHガス源)に連結されている。上記2方向バルブ51〜54は、石英ロングノズルA〜D側配管を、SiHガス源側又は非成膜ガス源側配管に切替えるバルブである。ここで非成膜ガス源側とは、不活性ガス源側(以下、Nガス源)又はクリーニングガス源(ClFガス源)側のことである。
【0035】
また、ClFノズル46は、エアバルブ89、2方向バルブ55、エアバルブ84、MFC95、及びエアバルブ83を介在した配管で、図示しないClFガス源に連結されている。ここで2方向バルブ55は、ClFガス源側配管をClFノズル46側又は石英ロングノズルA〜D側配管に切替えるバルブである。
【0036】
また、ClFノズル46側の配管に介設された2方向バルブ55とエアバルブ84との間の配管には、エアバルブ86、MFC96、エアバルブ85を介在した配管が連結されており、その配管は、図示しないNガス源に連結されている。また、成膜ガスノズル40側の配管に介設された4つの2方向バルブ51〜54とClFノズル46側の配管に介設された2方向バルブ55とを共通接続した配管には、エアバルブ88、MFC97、エアバルブ87を介在した配管が連結されており、その配管は上述したNガス源に連結されている。
【0037】
制御手段103は、ボート21に保持した複数のウェハ200を反応空間34に対してボートエレベータ35で搬送する搬送ステップ、石英ロングノズルA〜Dから反応空間34に成膜ガスを供給しつつ排気管111から排気して、ウェハ200上に薄膜を成膜する成膜ステップ、及び成膜ステップで反応管37内に堆積した生成膜を除去するクリーニングステップを実行するように制御する。制御手段103は、成膜ステップとクリーニングステップとにおいて、石英ロングノズルA〜D及びClFノズル46へのガスの導入をつぎのように制御する。
【0038】
成膜ステップのときは、制御手段103によって、SiHガス源が石英ロングノズルA〜Dに連通するように、成膜ガスノズル40側の配管に介設された2方向バルブ51〜
54を石英ロングノズルA〜D側に切替えて、MFC91〜94で流量に制御された成膜ガスを、石英ロングノズルA〜Dから反応空間34に供給するようになっている。
【0039】
また、クリーニングステップのときは、クリーニングステップを第1のクリーニングステップと、第2のクリーニングステップとに分け、第1のクリーニングステップでは、制御手段103によって、反応炉31内を第1の条件に保持するとともに、ClFガス源が石英ロングノズルA〜D側配管に連通するように、成膜ガスノズル40側の配管に介設された2方向バルブ51〜54、及びClFノズル46側の配管に介設された2方向バルブ55を、いずれも成膜ガスノズル40側配管に、所定のタイミングで切替えることによって、MFC95で流量制御されたクリーニングガス(ClFガス)を、石英ロングノズルA〜Dから第1の条件に保持した反応空間34に供給するようになっている。
【0040】
また、第2のクリーニングステップでは、制御手段103によって、反応炉31内を第1の条件とは異なる第2の条件に保持するとともに、ClFガス源がClFノズル46側に連通するように、ClFノズル46側の配管に介設された2方向バルブ55をClFノズル46側に、所定のタイミングで切替えることによって、MFC95で流量制御されたClFガスを、ClFノズル46から、第1の条件とは異なる第2の条件に保持した反応空間34に供給するようになっている。
【0041】
また、第1のクリーニングステップ及び第2のクリーニングステップにおいて、制御手段103によって、Nガス源側の配管に介設されたエアバルブ86、88等を、所定のタイミングで開閉制御することによって、石英ロングノズルA〜D又はClFノズル46から、MFC96〜97で流量制御された不活性ガスを反応空間34に供給するようになっている。
【0042】
つぎに、上述した反応炉31による半導体装置の製造方法の一例を説明する。
(1)成膜ステップ及び成膜ステップに関連する動作
まず、ボートエレベータ35によりボート21を下降させる。ボート21に複数枚のウェハ200を保持する。次いで、ヒータ39により加熱しながら、反応空間34内の温度を所定の処理温度にする。
MFC97により流量制御された不活性ガスを石英ロングノズルA〜Dより反応空間34内に供給して、予め反応空間34内を不活性ガスで充填しておく。ボートエレベータ35により、ボート21を上昇させて反応空間34内に移し、シールキャップ38により炉口を気密に閉塞する。反応空間34の内部温度を所定の処理温度に維持する。このときヒータ39の制御手段103による加熱制御によって形成される反応空間34内の温度勾配は、フラットすなわちゼロとする。温度勾配をゼロとするのは、温度に対して影響のあるウェハの膜質や膜厚を均一にするためである。
【0043】
反応空間34内を所定の真空状態まで排気した後、回転軸36により、ボート21及びボート21上に保持されている複数のウェハ200を回転させる。同時に石英ロングノズルA〜Dから、MFC91〜94によって流量制御された成膜ガスを反応空間34内に供給する。供給されたガスは、反応空間34内を上昇し、ウェハ配列領域22に配置された複数のウェハ200に対して均等に供給される。減圧CVD処理中の反応空間34内は、排気管111を介して排気され、所定の真空になるよう自動圧力制御器(図示せず)により圧力が制御され、所定時間減圧CVD処理、すなわち成膜ステップを実行する。
【0044】
このようにして成膜ステップが終了すると、次のウェハ200の減圧CVD処理に移るべく、反応空間34内のガスを不活性ガスで置換するとともに、圧力を常圧にし、その後、ボートエレベータ35によりボート21を下降させて、ボート21及び処理済のウェハ200を反応空間34から取り出す。反応空間34から取り出されたボート21上の処理
済のウェハ200は、未処理のウェハ200と交換され、再度前述同様にして反応空間34内に上昇され、減圧CVD処理が成される。
【0045】
ところで、反応炉31の内壁の堆積膜厚が、例えば、10μm以上になると、パーティクル発生の要因となるため、反応管37の内壁等をクリーニングするクリーニングステップを実行する必要が生じる。
【0046】
このクリーニングステップは、炉内温度を常温に落とすことなく、2段階に分けて行う。第1段階(第1のクリーニングステップ)は、主に成膜ガスノズル40(石英ロングノズルA〜D)の内壁をクリーニングする。第2段階(第2のクリーニングステップ)は、主に反応管37の内壁等をクリーニングする。以下、図2を用いて具体的に説明する。
【0047】
(2)第1のクリーニングステップ
石英ロングノズルA〜Dの内壁をクリーニングする場合の動作を説明する。本実施の形態では、この第1のクリーニングステップは、石英ロングノズルA〜Dが失透するのを防止するために、反応管37の内壁等の第2のクリーニングステップに先立って行われる。この場合、反応炉31内を第1の条件に保持する。この第1の条件とは、第1のクリーニングステップで石英ロングノズルA〜Dに流すClFガスの総流量が、第2のクリーニングステップでClFノズル46から流す総流量よりも小さい条件のことである。
【0048】
成膜処理用の石英ロングノズルA〜Dのその入口から、MFC95により流量制御されたClFガスが導入されて、その出口から反応管37内に供給される。これにより、石英ロングノズルA〜Dの内壁に堆積している生成膜がClFガスによってエッチングされる。エッチングされた生成膜は、石英ロングノズルA〜Dの出口から反応空間34に排出される。このとき、真空排気処理が実行される。これにより、エッチングされて反応空間34に出力された生成膜は、排気管111を介して排出される。
【0049】
図2に示すように、クリーニング処理は、小流量のClFとNの混合ガスを流すことにより行うが(黒塗り部)、4本の石英ロングノズルA〜Dについて、ここでは同時に行う。この場合、4本の石英ロングノズルA〜Dは、ノズルの長さがそれぞれ異なるために、クリーニング処理が、より短い石英ロングノズルDから、より長い石英ロングノズルAへかけて順次終了していくように、制御手段103によって各石英ロングノズルA〜DにClFとNの混合ガスを流す時間を制御する。この場合、クリーニングが終了しても、クリーニングが終了した石英ロングノズルA〜Dからは引続きNガスを流して(白抜き部)、反応空間34内に不活性ガスが供給されるようにする。これにより、エッチングが終了した石英ロングノズルA〜Dのオーバーエッチングが防止される。
すなわち、クリーニング処理が終了した石英ロングノズルA〜Dの内部には、通常、ClFガスが残存する。したがって、これをそのまま放置すると、石英ロングノズルA〜D内壁全体がオーバーエッチングされる。しかしながら、本実施の形態では、クリーニング処理の終了した石英ロングノズルA〜Dに不活性ガスNが引続き供給される(白抜き部)。これにより、この石英ロングノズルA〜Dの内部に残存するClFガスが追い出される。また、クリーニングが終了していない石英ロングノズルA〜Dから反応空間34内に排出されるClFガスが、クリーニング終了後の石英ロングノズルA〜Dに流入するのを阻止する。その結果、石英ロングノズルA〜D内のClFガスの残存及び流入によるオーバーエッチングが防止される。
【0050】
また、第1のクリーニングステップでは、ClFノズル46よりNガスを反応空間34内に供給する。ClFノズル46より不活性ガスを供給すると、成膜ガスノズル40から反応空間34内に供給されるClFガスの濃度を調整することができる。また、成膜ガスノズル40から反応空間34内に供給されるClFガスが、ClFノズル4
6内に侵入しないので、ClFノズルの余分な失透を防ぐことができる。
【0051】
(3)第2のクリーニングステップ
次に、反応管37の内壁等をクリーニングする場合の動作を説明する。本実施の形態では、反応管37の内壁等のクリーニングを行う第2のクリーニングステップは、図2に示すように、石英ロングノズルA〜Dのうち、最長の石英ロングノズルAのエッチングが終了した後、連続してClFノズルに大流量のClFとNの混合ガスを流すことにより行われる(黒塗り部分)。ここでは、第2のクリーニングステップにより、石英ロングノズルA〜Dの外壁も、反応炉用のClFガスにさらされて、反応管37の内壁と同様にクリーニングされることになる。ここでは、反応炉31内を第2の条件に保持する。この第2の条件とは、第2のクリーニングステップでClFノズル46から流す総流量が、第1のクリーニングステップで石英ロングノズルA〜Dに流すClFガスの総流量よりも大きい条件のことである。
【0052】
クリーニング処理用のClFノズル46の入口から大流量のClFとNの混合ガスが導入されて、その出口から反応空間34内に供給される。これにより、反応管37の内壁や石英ロングノズルA〜D及びClFノズル46の外壁等に堆積した生成膜がエッチングされる。また、このとき、真空排気処理が実行される。これにより、エッチングされた生成膜が排気管111を介して排出される。
【0053】
また、この場合、図2に示すように、クリーニング処理が終了した全ての石英ロングノズルA〜Dから反応空間34内に小流量の不活性ガスNが継続して供給される(白塗り部)。これは、石英ロングノズルA〜D内へのClFガスの侵入を防止するためである。すなわち、石英ロングノズルA〜D内の生成膜除去後、反応炉内の生成膜除去を、第2の条件で実施する際、石英ロングノズルA〜D内に大流量のClFガスが入り込んでしまい、次の成膜時に悪影響を与えてしまうことが懸念される。このため、反応炉の内壁等の生成膜除去の際は、石英ロングノズルA〜Dに小流量のNガスを流すことで、ClFガスの流入を防いでいる。
【0054】
上述した成膜ステップ、及びクリーニングステップの条件を、具体的に例示すれば以下のようになる。ここでの膜種はポリシリコン膜(すなわち、フラットポリシリコン膜)、成膜ガスはSiH、クリーニングガスはClFガスとNとの混合ガス(以下、ClF+Nという)である。なお、Nはクリーニングガスを希釈する不活性ガスである。
[成膜ステップ条件]
反応炉容量:300〜500L
成膜温度:600〜700℃
反応炉内圧力:10〜100Pa
ウェハ径:30cm
反応炉に挿入するウェハ枚数:100枚
ウェハ配列領域の高さ:1〜1.2m
全石英ロングノズルA〜Dに流す(SiH)総流量:0.04〜1.2SLM
各石英ロングノズルA〜Dに流す(SiH)流量:0.01〜0.3SLM
【0055】
[第1のクリーニングステップにおける第1の条件]
全石英ロングノズルA〜Dに流す(ClF+N)総流量:0.02〜6SLM
全石英ロングノズルA〜Dに流すClF総流量:0.01〜2SLM
全石英ロングノズルA〜Dに流すN総流量:0.01〜4SLM
各石英ロングノズルA〜Dに流す(ClF+N)流量:0.005〜1.5SLM
各石英ロングノズルA〜Dに流すClF流量:0.0025〜0.5SLM
各石英ロングノズルA〜Dに流すN総流量:0.0025〜1SLM
ClFノズルに流すN流量:0.1〜1SLM
クリーニング終了後の各石英ロングノズルA〜Dに流すN流量:0.01〜1SLM
クリーニング時間:5min〜30min
【0056】
なお、各石英ロングノズルA〜Dのクリーニングの終了と、その後にNガスを流すタイミングは、ポリシリコン膜の厚さによるが、ノズルの長さが、ノズルA>ノズルB>ノズルC>ノズルDなので、ノズルD→ノズルC→ノズルB→ノズルAの順にクリーニングを終了してNガスを流すことになる。
【0057】
[第2のクリーニングステップにおける第2の条件]
ClFノズルに流す(ClF+N)総流量:1.1〜11SLM
ClFノズルに流す(ClF+N)総流量のうちのClF流量:0.1〜1SLM
ClFノズルに流す(ClF+N)総流量のうちのN流量:1〜10SLM
クリーニング時間:1〜3Hr(時間)
各石英ロングノズルA〜Dに流すN流量:0.01〜0.1SLM
(第1の条件と第2の条件の共通条件)
温度:300〜500℃
反応炉内圧力:10〜200Pa
ClF濃度:10〜50%
【0058】
上述したように、本実施の形態によれば、第1のクリーニングステップのClFとNとの混合ガス流量を、第2のクリーニングステップの混合ガス流量よりも少なく(1/50〜1/2程度と)したので、第1のクリーニングステップで石英ロングノズルA〜Dへのダメージを低減できる。したがって、従来、反応管37内をクリーニングするたびに行っていた石英ロングノズル交換の時期を延長することができる。その結果、CVD装置のメンテナンス時のコストを大幅に低減することができる。また、石英ロングノズル交換に要していた時間を低減することができ、反応炉のダウンタイムを短縮することができる。
【0059】
また、第1のクリーニングステップでは、ClFノズル46よりも長さの長い石英ロングノズルA〜Dより、第2のクリーニングステップと比べて小流量のClFとNとの混合ガスを供給するので、石英ロングノズルA〜Dにダメージを与えることなく、石英ロングノズルA〜D内に堆積したポリシリコン膜を有効に除去できる。このとき、クリーニングの終了した石英ロングノズルA〜D内に不活性ガスNが供給されて、石英ロングノズルA〜D内部に残存するClFガスが追い出されるので、ClFガス残存によるオーバエッチングが防止できる。また、クリーニングが終了していない石英ロングノズルA〜Dより反応空間34に排出されたClFガスが、クリーニング終了後の石英ロングノズルA〜D内に侵入するのが阻止されるので、ClFガスの侵入による石英ロングノズルA〜D内壁の先端部でのオーバエッチングが防止できる。
【0060】
また、第1のクリーニングステップでは、長さの異なる複数の石英ロングノズルA〜Dの長さに応じて、クリーニングガスを供給する時間を変えているので、複数の石英ロングノズルA〜Dにオーバエッチ等のダメージを与えることなく、適切なエッチングを行うことができる。
特に、実施の形態では、反応炉内の温度勾配をゼロにして長さの異なる複数の石英ロングノズルA〜Dより反応炉内に成膜ガスを供給することによって、フラットポリシリコン膜を成膜するようにしているが、本発明は、このようなフラットポリシリコン膜を成膜するときに使用される長さの異なる石英ロングノズルA〜Dの内壁に堆積する生成膜をエッ
チングする場合に、その形状から石英ロングノズルA〜Dがダメージを受けやすいので、特に有用である。
【0061】
また、第2のクリーニングステップでは、ClFノズル46より、第1のクリーニングステップと比べて大流量のClFとNとの混合ガスを反応管37内に供給するので、反応管37内壁等に堆積したポリシリコン膜を有効に除去できる。また、反応管37内をクリーニングするときのクリーニングガスノズルとして、成膜ガスノズル40とは異なるClFノズル46を用いており、石英ロングノズルA〜DからはNガスを供給することができるため、第2のクリーニングステップにおいて、石英ロングノズルA〜D内へのClFガスの侵入を阻止できる。したがって、ClFガスの侵入による石英ロングノズルA〜D内のオーバエッチングが防止できる。
【0062】
なお、実施の形態では、ノズルクリーニングを先に、反応管クリーニングを後にしているが、これとは逆に、反応管クリーニングを先に実行することも考えられる。しかし、ノズルクリーニングを後にすると、ノズルクリーニングステップではクリーニングガス量を少なくしているので、ノズル内壁からエッチングされた生成膜が、反応管から有効に排出できずに、反応管底部に溜り、パーティクルの発生の懸念がある。したがって、そのような懸念のない実施の形態の順序でクリーニングを行う方が好ましい。
【0063】
また、実施の形態では、ポリシリコン膜をクリーニング処理する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の膜種をクリーニング処理する場合についても適用可能である。また、実施の形態では、成膜ガスノズルを4本使用する場合について説明したが、成膜ガスノズルの本数は4本に限定されない。
【0064】
また、実施の形態では、SiHを用いて基板上にポリシリコン膜を成膜させ、その成膜処理過程で反応管内やノズル内に堆積したポリシリコン膜をクリーニングする場合において、クリーニングガスとしてポリシリコン膜のエッチングに最も有効なClFを用いたので、成膜ガスノズル内壁及び反応管内壁等に堆積したポリシリコン膜を有効に除去できる。なお、本発明のクリーニングガスはClFに限定されるものではなく、例えばNF、Fなど他のクリーニングガスも使用可能である。
【0065】
また、実施の形態では、複数本の成膜ガスノズルを同時にクリーニング処理する場合について説明したが、複数本の成膜ガスノズルを予め定めた順序に従って順次1本ずつ選択することにより、1本ずつ行うようにしてもよい。
【0066】
また、実施の形態では、第1、第2の条件として、クリーニングガスの総流量をパラメータとしたが、本発明はこれに限定されない。例えばクリーニングガス濃度をパラメータとしてもよい。この場合、第1のクリーニングステップの方が、第2のクリーニングステップよりもクリーニングガス(ClF等)濃度が小さくなるようにするのが好ましい。こうすることにより、石英ロングノズルA〜Dにダメージを与えることなく、石英ロングノズルA〜D内に堆積したポリシリコン膜を有効に除去できる。なお、ガス濃度は、希釈ガスのNの流量又はClFの流量を変えることによって行う。また、この場合、ガス濃度とガス流量の両方をパラメータとすることも、ガス濃度のみをパラメータとすることも可能である。
【0067】
また、実施の形態では、第1のクリーニングステップ(ノズルクリーニング)後に、第2のクリーニングステップ(反応管クリーニング)を行う場合について説明したが、第1のクリーニングステップと第2のクリーニングステップとを同時に行うことも可能である。その場合、成膜ガスノズルより、第1の条件に設定したクリーニングガスを供給しつつ、ClFノズルより、第1の条件とは異なる第2の条件に設定したクリーニングガスを
供給することとなる。なお、第1の条件、第2の条件、クリーニング終了後の成膜ガスノズルへのNの供給などは実施の形態と同様である。
このように、第1クリーニングステップと第2クリーニングステップとを同時に行うようにすると、トータルでクリーニング時間を短縮することができる。
【0068】
また、実施の形態では、特に効果が大きい多系統ノズルの場合について説明したが、1系統ノズルの場合にも本発明は適用可能である。また、長さが異なる成膜ガスノズルの場合について説明したが、長さが同一の成膜ガスノズルを有する場合についても適用可能である。
【実施例】
【0069】
図1に示す縦型CVD装置を使用して、フラットポリシリコン膜を成膜した後、ClFガスによるクリーニングを行った。第1のクリーニングステップにおいて、第1の条件として、炉内温度400℃の状態で、石英ロングノズルA〜D内に、ClFガスを28.6%の濃度になるように希釈用のNガスを混合させて流し、混合ガス総流量0.7SLM(ClF:0.2SLM、N:0.5SLM)でクリーニングを実施した。この総流量は、後述する第2の条件の約1/3である。これにより石英ロングノズルA〜D内のダメージを極力抑えてクリーニングできることを確認した。
なお、この条件、すなわち、ClF濃度28.6%、混合ガス総流量0.7SLM(ClF:0.2SLM、N:0.5SLM)でのエッチングレートは、同濃度で混合ガス総流量0.07SLM(ClF:0.02SLM、N:0.05SLM)とした場合のエッチングレートの4.7倍となることが確認されている。
【0070】
また、続けて第2のクリーニングステップとして、第2の条件として、炉内温度を400℃の状態で、ClFノズル46内に、ClFガスを28.6%の濃度になるように希釈用のNガスを混合させて流し、混合ガス総流量約2.5SLMでクリーニングを実施した。このようにClFガスクリーニングを行うことで、反応炉内壁等を有効にクリーニングできるとともに、石英ロングノズルA〜D内のダメージを抑えることができることを確認した。
【0071】
また、第1のクリーニングステップでクリーニング終了後の石英ロングノズルとClFノズルに流すNガスの流量、及び第2のクリーニングステップで各石英ロングノズルに流すNガスの流量を、ともに0.02SLMとした。これにより、次のフラットポリシリコン膜の成膜時に悪影響を与えたり、ノズルにオーバエッチ等のダメージを与えたり、ノズルが失透したりしないことを確認した。
【符号の説明】
【0072】
21 ボート(基板保持部材)
31 反応炉
40 成膜ガスノズル
41〜44 石英ロングノズル(成膜ガスノズル)
46 ClFノズル(クリーニングガスノズル)
200 ウェハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を反応炉内に搬入するステップと、
少なくとも一つの成膜ガスノズルより前記反応炉内に成膜ガスを供給して基板上に薄膜を成膜するステップと、
成膜後の基板を前記反応炉内から搬出するステップと、
前記成膜ガスノズル内にクリーニングガスを供給して前記成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を除去する第1のクリーニングステップと、
前記反応炉内に前記成膜ガスノズルとは異なるクリーニングガス供給口よりクリーニングガスを供給して前記反応炉内に堆積した生成膜を除去する第2のクリーニングステップと、を有し、
前記第1のクリーニングステップを前記第2のクリーニングステップよりも先行して行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1のクリーニングステップで前記成膜ガスノズル内に供給するクリーニングガスの流量が、前記第2のクリーニングステップで前記クリーニングガス供給口より前記反応炉内に供給するクリーニングガスの流量よりも小さくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1のクリーニングステップで前記成膜ガスノズル内に供給するクリーニングガスの濃度が、前記第2のクリーニングステップで前記クリーニングガス供給口より前記反応炉内に供給するクリーニングガスの濃度と同濃度となるようにすると共に、前記第1のクリーニングステップで前記成膜ガスノズル内に供給するクリーニングガスの流量が、前記第2のクリーニングステップで前記クリーニングガス供給口より前記反応炉内に供給するクリーニングガスの流量よりも小さくなるようにすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1のクリーニングステップでは、前記クリーニングガス供給口より不活性ガスを供給し、前記第2のクリーニングステップでは、前記成膜ガスノズルより不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のクリーニングステップでは、前記成膜ガスノズルよりクリーニングガスと不活性ガスとの混合ガスを供給しつつ前記クリーニングガス供給口より不活性ガスを供給し、前記第2のクリーニングステップでは、前記クリーニングガス供給口よりクリーニングガスと不活性ガスとの混合ガスを供給しつつ前記成膜ガスノズルより不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板を収容する反応炉と、
前記反応炉内に成膜ガスを供給する少なくとも一つの成膜ガスノズルと、
前記成膜ガスノズルとは別に設けられ、前記反応炉内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給口と、
前記成膜ガスノズル内にクリーニングガスを供給して前記成膜ガスノズル内に堆積した生成膜を除去する第1のクリーニングと、前記反応炉内に前記クリーニングガス供給口よりクリーニングガスを供給して前記反応炉内に堆積した生成膜を除去する第2のクリーニングと、を行うと共に、前記第1のクリーニングを前記第2のクリーニングよりも先行して行うようにクリーニングガスの導入を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−157747(P2010−157747A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16526(P2010−16526)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【分割の表示】特願2004−96063(P2004−96063)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】