説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】 低コストで必要な仕事関数及び耐酸化性を有する金属膜を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】 基板を処理容器内に搬入する工程と、処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、処理済基板を処理容器内から搬出する工程と、を有し、処理を行う工程では、金属膜を形成する途中もしくは金属膜を形成した後に処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)の高集積化及び高性能化に伴い、ゲート絶縁膜への高誘電率絶縁膜の適用が検討されている。DRAMのキャパシタにおいては、HfO膜やZrO膜などの高誘電率絶縁膜が使用され、32nm世代以降では、さらに高い誘電率を持つSrTiO膜やTiO膜の採用が検討されている。電極材料としては、抵抗率などの観点から金属膜の採用が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TiO膜やSrTiO膜など、誘電率が50を越す高誘電率絶縁膜のバンドギャップは狭いため、リーク電流の増加が懸念される。係る課題を解決するには、5.0eV以上の高い仕事関数を有する金属材料を電極材料として用いるのが望ましい。しかしながら、高い仕事関数を有する金属材料として有望なPtを電極材料として用いた場合、材料が高価であること、成膜が非常に難しいこと等の課題があり、実用化には至っていないのが現状である。また、仕事関数の大きな他の金属材料、例えばNiやCoなどは酸化され易く、EOT(等価酸化膜厚)の増大を招いてしまう場合があった。
【0004】
そこで本発明は、低コストで必要な仕事関数及び耐酸化性を有する金属膜を備えた半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板を処理容器内に搬入する工程と、前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、処理済基板を前記処理容器内から搬出する工程と、を有し、前記処理を行う工程では、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質する半導体装置の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給する反応ガス供給系と、前記処理容器内を排気する排気系と、基板を収容した前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行うと共に、その際、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質するように、前記処理ガス供給系、前記反応ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る半導体装置の製造方法及び基板処理装置によれば、低コストで必要な仕事関数及び耐酸化性を有する金属膜を備えた半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のガス供給系の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図4】(a)従来のキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造の断面構成図である。
【図5】(a)本発明の一実施形態に係るキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造の断面構成図である。
【図6】(a)本発明の他の実施形態に係るキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造の断面構成図である。
【図7】(a)本発明の一実施形態に係る下部電極の形成工程のフロー図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る上部電極の形成工程のフロー図である。
【図8】(a)本発明の他の実施形態に係る下部電極の形成工程のフロー図であり、(b)は本発明の他の実施形態に係る上部電極の形成工程のフロー図である。
【図9】(a)は本発明の一実施形態に係るキャパシタ電極のエネルギー準位を示す概略図であり、(b)はW膜の単層からなる従来のキャパシタ電極のエネルギー準位を示す概略図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態に係る縦型装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉部分を縦断面で示し、(b)は処理炉部分を図10(a)のA−A線断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図2,3を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置40のウェハ処理時における断面構成図であり、図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置40のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0010】
(処理室)
図2,3に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置40は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0011】
(支持台)
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0012】
(昇降機構)
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられてい
る。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図3で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図2で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0013】
(リフトピン)
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させる貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、図3に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、図2に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウェハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0014】
(ウェハ搬送口)
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ44が設けられており、ゲートバルブ44を開くことにより、処理室201内と負圧移載室11内とが連通するようになっている。負圧移載室11は搬送容器(密閉容器)12内に形成されており、負圧移載室11内にはウェハ200を搬送する負圧移載機13が設けられている。負圧移載機13には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム13aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ44を開くことにより、負圧移載機13により処理室201内と負圧移載室11内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、負圧移載室11のウェハ搬送口250が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、負圧移載機13によりロードロック室内と負圧移載室11内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0015】
(排気系)
処理室201(処理容器202)の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0016】
(ガス導入口)
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0017】
(シャワーヘッド)
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させる分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させる第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0018】
(排気ダクト)
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を空けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0019】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0020】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0021】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェ
ハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、ウェハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室201下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0022】
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる基板処理装置40の有するガス供給系(ガス供給ライン)の構成図である。
【0023】
本実施形態にかかる基板処理装置40の有するガス供給系は、常温で液体状態であるタングステン(W)を含む液体原料を気化する気化部としてのバブラ220aと、バブラ220aにて液体原料を気化させて得た原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給系と、処理室201内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、処理室201内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、処理室201内にシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、処理室201内にパージガスを供給するパージガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる基板処理装置は、バブラ220aからの原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系を有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0024】
(バブラ)
処理室201の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ220aが設けられている。バブラ220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ220aの周りには、バブラ220aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ206aが設けられている。原料としては、例えば、タングステン(W)元素を含む金属液体原料である六弗化タングステン(WF)が用いられる。
【0025】
バブラ220aには、キャリアガス供給管237aが接続されている。キャリアガス供給管237aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管237aの下流側端部は、バブラ220a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管237aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222aと、キャリアガスの供給を制御するバルブva1,va2とが設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管237a、MFC222a、バルブva1,va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0026】
上記構成により、バルブva1,va2を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて処理ガスとしての原料ガス(WFガス)を生成させることが可能となる。
【0027】
(原料ガス供給系)
バブラ220aには、バブラ220a内で生成された原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213aが接続されている。原料ガス供給管213aの上流側端部は、バブラ220aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管213aの下流側端部は、ガス導入口210に接続されている。原料ガス供給管213aには、上流側から順にバルブva5,va3が設けられている。バルブva5は、バブラ220aから原料ガス供給管213a内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、バブラ220aの近傍に設けられている。バルブva3は、原料ガス供給管213aから処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、ガス導入口210の近傍に設けられている。バルブva3と後述するバルブve3は高耐久高速ガスバルブとして構成されている。高耐久高速ガスバルブは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成された集積バルブである。なお、バルブve3は、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の空間を高速にパージしたのち、処理室201内をパージするパージガスの導入を制御するバルブである。
【0028】
上記構成により、バブラ220aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブva5,va3を開くことにより、原料ガス供給管213aから処理室201内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管213a、バルブva5,va3により原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0029】
また、主に、キャリアガス供給系、バブラ220a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0030】
(窒素含有ガス供給系)
また、処理室201の外部には、窒素含有ガス(窒化源)を供給する窒素含有ガス供給源220bが設けられている。窒素含有ガス供給源220bには、窒素含有ガス供給管213bの上流側端部が接続されている。窒素含有ガス供給管213bの下流側端部は、バルブvb3を介してガス導入口210に接続されている。窒素含有ガス供給管213bには、窒素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222bと、窒素含有ガスの供給を制御するバルブvb1,vb2,vb3が設けられている。窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ヒドラジン(N)ガス、または、Nガス等が用いられ、本実施形態では、例えばアンモニア(NH)ガスが用いられる。主に、窒素含有ガス供給源220b、窒素含有ガス供給管213b、MFC222b、バルブvb1,vb2,vb3により、窒素含有ガス供給系(窒素含有ガス供給ライン)が構成される。
【0031】
(酸素含有ガス供給系)
また、処理室201の外部には、酸素含有ガス(酸化源)を供給する酸素含有ガス供給源220gが設けられている。酸素含有ガス供給源220gには、酸素含有ガス供給管213gの上流側端部が接続されている。酸素含有ガス供給管213gの下流側端部は、バルブvg3を介してガス導入口210に接続されている。酸素含有ガス供給管213gには、酸素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222gと、酸素含有ガスの供給を制御するバルブvg1,vg2,vg3が設けられている。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HO)等が用いられ、本実施形態では、例えばOガスが用いられる。主に、酸素含有ガス供給源220g、酸素含有ガス供給管213g、MFC222g、バルブvg1,vg2,vg3により、酸素含有ガス供給系(酸素含有ガス供給ライン)が構成される。
【0032】
(シリコン含有ガス供給系)
また、処理室201の外部には、処理ガスとしてのシリコン含有ガスを供給するシリコ
ン含有ガス供給源220hが設けられている。シリコン含有ガス供給源220hには、シリコン含有ガス供給管213hの上流側端部が接続されている。シリコン含有ガス供給管213hの下流側端部は、バルブvh3を介してガス導入口210に接続されている。シリコン含有ガス供給管213hには、シリコン含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222hと、水素ガスの供給を制御するバルブvh1,vh2,vh3が設けられている。シリコン含有ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)等が用いられ、本実施形態では、例えばジシランガスが用いられる。主に、シリコン含有ガス供給源220h、シリコン含有ガス供給管213h、MFC222h、バルブvh1,vh2,vh3により、シリコン含有ガス供給系(シリコン含有ガス供給ライン)が構成される。
【0033】
主に、原料供給系、シリコン含有ガス供給系により、処理容器内に処理ガスとしての原料ガス、シリコン含有ガスを供給する処理ガス供給系(処理ガス供給ライン)が構成される。また、主に、窒素含有ガス供給系、酸素含有ガス供給系により、処理容器内に窒素含有ガス、酸素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給する反応ガス供給系(反応ガス供給ライン)が構成される。
【0034】
(パージガス供給系)
また、処理室201の外部には、パージガスを供給するパージガス供給源220c,220eが設けられている。パージガス供給源220c,220eには、パージガス供給管213c,213eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管213cの下流側端部は、バルブvc3を介してガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213eの下流側端部は、バルブve3を介して原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の部分に合流し、ガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213c,213eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222c,222eと、パージガスの供給を制御するバルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3と、がそれぞれ設けられている。パージガスとしては、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが用いられる。主に、パージガス供給源220c,220e、パージガス供給管213c,213e、MFC222c,222e、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0035】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管213aのバルブva3よりも上流側には、ベント管215aの上流側端部が接続されている。また、ベント管215aの下流側端部は、排気管261の圧力調整器262よりも下流側であって原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。ベント管215aには、ガスの流通を制御するバルブva4が設けられている。
【0036】
上記構成により、バルブva3を閉じ、バルブva4を開くことで、原料ガス供給管213a内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく、ベント管215aを介して処理室201をバイパスさせ、排気管261より排気することが可能となる。主に、ベント管215a、バルブva4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0037】
なお、バブラ220aの周りにはサブヒータ206aが設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管237a、原料ガス供給管213a、パージガス供給管213e、ベント管215a、排気管261、処理容器202、シャワーヘッド240等の周囲にもサブヒータ206aが設けられている。サブヒータ206aは、これらの部材を例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再液化を防止するように構成されている。
【0038】
(制御部)
本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ44、昇降機構207b、負圧移載機11、ヒータ206、サブヒータ206a、圧力調整器(APC)262、真空ポンプ264、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,vh1〜vh3、マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g,222h等の動作を制御する。
【0039】
(2)基板処理工程
次に、半導体装置の製造工程の一工程としてウェハ200上にキャパシタ構造(MIM:Metal Insulator Metal構造)を形成する基板処理工程について説明する。図5(a)は、本発明の一実施形態に係るキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造の断面構成図である。
【0040】
なお、本明細書では、金属膜という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜を意味しており、これには、金属単体で構成される導電性の金属単体膜の他、導電性の金属窒化膜、導電性の金属酸化膜、導電性の金属酸窒化膜、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜等も含まれる。なお、タングステン(W)膜は金属単体で構成される導電性の金属単体膜であり、窒化タングステン(WN)膜は導電性の金属窒化膜であり、酸化タングステン(WO)膜は導電性の金属酸化膜であり、酸窒化タングステン(WON)膜は導電性の金属酸窒化膜である。なお、WON膜はWO膜よりも抵抗率が低く、高速に電子を流すことが可能である。
【0041】
図5(a)に示すように、まず、上述の基板処理装置40を用い、基板としてのウェハ200が搬入された処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、ウェハ200上に下部電極、すなわち、導電性の金属膜としての所定膜厚のW膜を形成する処理を行う(Bottom Electrode formation)。
【0042】
なお、下部電極としてのW膜を形成する処理を行う工程では、W膜を形成する途中もしくはW膜を形成した後に、処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで、W膜の表面(後述するHfO膜との接合面)を、導電性の金属酸化層であるWO層、導電性の金属窒化層であるWN層、または導電性の金属酸窒化層であるWON層に改質する。すなわち、ウェハ200上に第1のW層を形成する工程(Metal film deposition−1)の後、第1のW層上に第2のW層を形成する工程(Metal film deposition−2)と、第2のW層に対して酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで第2のW層をWO層、WN層、またはWON層に改質する工程(O flow and/or NH flow)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、表面がWO層、WN層、またはWON層に改質された下部電極としてのW膜を形成する。これらの処理については後述する。なお、以下の説明においては、表面にWO層、WN層またはWON層が形成されたW膜を、便宜上、単にW膜とも呼ぶ。
【0043】
そして、下部電極としてのW膜上に、高誘電率絶縁膜、すなわち金属酸化膜としての酸化ハフニウム膜(HfO膜)を形成する処理を行う(High−k film deposition)。HfO膜の形成は、ウェハ200を収容した処理容器内に、ALD反応が生じる条件下で、原料としての例えばHfプリカーサであるTDMAHf(Tetrakis−Dimethyl−Amino−Hafnium : Hf[N(CH)を供給し排気する工程と、酸化源としての例えばHOガスをウェハ200に対して供給し排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することで行う。所定膜厚のHfO膜の形成後、例えば700℃程度の温度でウェハ200を熱処
理する(Post Deposition Annealing)。これらの処理は、上述の基板処理装置40とは異なる図示しない成膜装置、アニール装置等を用いて行う。
【0044】
そして、上述の基板処理装置40を用い、熱処理後のウェハ200が搬入された処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、HfO膜上に上部電極、すなわち、導電性の金属膜としての所定膜厚のW膜を形成する処理を行う(Top Electrode formation)。
【0045】
なお、上部電極としてのW膜を形成する処理を行う工程では、W膜を形成する途中に、処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで、W膜の底面(HfO膜との接合面)を、導電性の金属酸化層であるWO層、導電性の金属窒化層であるWN層、または導電性の金属酸窒化層であるWON層に改質する。すなわち、HfO膜上に第3のW層を形成する工程(Metal film deposition−3)と、第3のW層に対して酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで第3のW層をWO層、WN層、またはWON層に改質する工程(O flow and/or NH flow)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行った後、WO層、WN層、またはWON層上に第4のW層を形成する工程(Metal film deposition−4)を実施することで、底面がWO層、WN層、またはWON層に改質された上部電極としてのW膜を形成する。これらの処理については後述する。
【0046】
以下、上述した下部電極の形成(Bottom Electrode formation)及び上部電極の形成(Top Electrode formation)について、図7を用いて詳しく説明する。図7(a)は、本実施形態に係る下部電極の形成工程のフロー図であり、(b)は本実施形態に係る上部電極の形成工程のフロー図である。以下の説明において、基板処理装置40を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0047】
<下部電極の形成工程>
まず、本実施形態に係る下部電極の形成工程を、図7(a)、図1〜図3を用いて説明する。
【0048】
〔基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)〕
昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図3に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ44を開き、処理室201と負圧移載室11とを連通させる。そして、上述のように負圧移載機13により負圧移載室11内から処理室201内へウェハ200を搬送アーム13aで支持した状態でロードする(S101)。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。負圧移載機13の搬送アーム13aが処理室201内から負圧移載室11内へ戻ると、ゲートバルブ44が閉じられる。
【0049】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図2に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S102)。
【0050】
〔圧力調整工程(S103)、温度調整工程(S104)〕
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S103)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S104)。なお、温度調整工程(S104)は、圧力調整工程(S103)と並行して行うようにしてもよいし、
圧力調整工程(S103)よりも先行して行うようにしてもよい。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述する第1のW層形成工程(S105a〜S105e)及び第2のW層形成工程(S106a〜S106e)において、ALD法によりW層を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、第1のW層形成工程(S105a〜S105e)及び第2のW層形成工程(S106a〜S106e)で用いる原料が自己分解しない程度の処理温度、処理圧力である。なお、ここでいう所定の処理温度、処理圧力は、後述する第2のW層の改質工程(S106f,S106g)において、ウェハ200上に形成した第2のW層に対して酸化処理、窒化処理、または酸窒化処理がなされ得る処理温度、処理圧力でもある。
【0051】
なお、工程S101〜S104および後述する基板搬出工程(S108)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3,vb3,vg3,vh3を閉じ、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開くことで、処理室201内にNガスを常に流しておく。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0052】
また、工程S101〜S104と並行して、液体原料(W原料)であるWFを気化させた原料ガス(W原料ガス)、すなわちWFガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva1,va2,va5を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva4を開くことにより、原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。バブラにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブva3,va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0053】
〔第1のW層形成工程(S105a〜S105e)〕
〔WF供給工程(S105a)〕
続いて、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への処理ガスとしての原料ガスであるWFガスの供給、すなわち、ウェハ200へのWFガスの照射を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への原料ガスの供給時には、窒素含有ガス供給管213b内、酸素含有ガス供給管213g内、シリコン含有ガス供給管213h内への原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における原料ガスの拡散を促すように、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。バルブva3を開き、原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4を開いて、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。
【0054】
〔パージ工程(S105b)〕
バルブva3を閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止した後は、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留している原料ガスを除去する。
【0055】
〔Si供給工程(S105c)〕
処理室201内のパージが完了したら、バルブvh1,vh2,vh3を開いて、処理室201内への処理ガスとしてのシリコン含有ガスであるSiガスの供給、すなわち、ウェハ200へのSiガスの照射を開始する。MFC222hで流量制御されたSiガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰なSiガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのSiガスの供給時には、原料ガス供給管213a内、窒素含有ガス供給管213b内、酸素含有ガス供給管213g内へのSiガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるSiガスの拡散を促すように、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。バルブvh1,vh2,vh3を開き、Siガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvh3を閉じ、処理室201内へのSiガスの供給を停止する。
【0056】
〔パージ工程(S105d)〕
バルブvh3を閉じ、処理室201内へのSiガスの供給を停止した後は、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留しているSiガスや反応副生成物を除去する。
【0057】
〔所定回数実施工程(S105e)〕
そして、工程S105a〜S105dまでを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、ウェハ200上に所定の厚さの第1のW層を形成する。
【0058】
〔第2のW層形成工程(S106a〜S106e)〕
続いて、WF供給工程(S106a)、パージ工程(S106b)、Si供給工程(S106c)、パージ工程(S106d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S106e)により、上述の第1のW層上に第2のW層を形成する。なお、工程106a〜S106eは、上述の第1のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。
【0059】
ここで、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)で形成する第2のW層が薄すぎると、後述する第2のW層の改質工程(S106f〜S106g)において、酸化源として用いる酸素含有ガスや窒化源として用いる窒素含有ガスにより第1のW層が直接酸化、窒化、または酸窒化されてしまい、下部電極が過剰に酸化、窒化、または酸窒化されてしまう。従って、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)では、所定回数実施工程(S106e)でのサイクルの実施回数を例えば5回以上とし、形成する第2のW層の厚さを例えば0.5nm以上とすることが好ましい。
【0060】
また、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)で形成する第2のW層が厚すぎると、後述する第2のW層の改質工程(S106f〜S106g)において、酸化源として用いる酸素含有ガス中に含まれる酸素(O)原子や、窒化源として用いる窒素含有ガス中に含まれる窒素(N)原子が、第2のW層全体に導入され難くなる。従って、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)では、所定回数実施工程(S106e)でのサイクルの実施回数を例えば20回以下とし、形成する第2のW層の膜厚を例えば2nm以下とすることが好ましい。
【0061】
〔第2のW層の改質工程(S106f,S106g)〕
〔Oおよび/またはNH供給工程(S106f)〕
続いて、バルブvg1,vg2,vg3および/またはバルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内へのOガスおよび/またはNHガスの供給、すなわち、ウェハ200へのOガスおよび/またはNHガスの照射を開始する。MFC222gで流量制御されたOガスや、MFC222bで流量制御されたNHガスは、シャワーヘッド240によりそれぞれ分散され、熱で活性化されて処理室201内のウェハ200上にそれぞれ均一に供給される。余剰なOガスやNHガスは、それぞれ排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。
【0062】
処理室201内へのOガスおよび/またはNHガスの供給時には、原料ガス供給管213a内、シリコン含有ガス供給管213h内へのOガスやNHガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるOガスやNHガスの拡散を促すように、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。バルブvg1,vg2,vg3および/またはバルブvb1,vb2,vb3を開き、OガスやNHガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvg3および/またはバルブvb3を閉じ、処理室201内へのOガスやNHガスの供給を停止する。
【0063】
熱で活性化したOガスをウェハ200に照射すると、Oガスに含まれる酸素原子が第2のW層中に導入される。その結果、第2のW層が酸化され、導電性の金属酸化層としてのWO層に改質される。なお、下地の第1のW層は、酸化されずにW層のままとなる。第2のW層中への酸素原子の添加により、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WO層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0064】
また、熱で活性化したNHガスをウェハ200に照射すると、NHガスに含まれる窒素原子が第2のW層中に導入される。その結果、第2のW層が窒化され、導電性の金属窒化層としてのWN層に改質される。なお、下地の第1のW層は、窒化されずにW層のままとなる。第2のW層中への窒素原子の添加により、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WN層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0065】
また、熱で活性化したOガスおよびNHガスをウェハ200に照射すると、Oガスに含まれる酸素原子およびNHガスに含まれる窒素原子が第2のW層中にそれぞれ導入される。その結果、第2のW層が酸窒化され、導電性の金属酸窒化層としてのWON層に改質される。なお、下地の第1のW層は、酸窒化されずにW層のままとなる。第2のW層中への酸素原子および窒素原子の添加により、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WON層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0066】
〔パージ工程(S106g)〕
バルブvg3および/またはバルブvb3を閉じ、処理室201内へのOガスやNHガスの供給を停止した後は、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内へのNガスの供給を継続して行う。Nガスは、シャワーヘッド240を介して処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。このようにして、処理室201内をNガスによりパージし、処理室201内に残留しているOガス、NHガス、反応副生成物を除去する。
【0067】
〔所定回数実施工程(S106h)〕
そして、第2のW層の形成工程(S106a〜S106e)と第2のW層の改質工程(
S106f,S106g)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、第1のW層上に、所定の厚さのWO層(第2のW層が酸化された層)、WN層(第2のW層が窒化された層)、またはWON層(第2のW層が酸窒化された層)を形成し、下部電極とする。下部電極は、所定の厚さの第1のW層と、所定の厚さのWO層、WN膜、またはWON層と、が積層してなり、表面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜として構成される。
【0068】
なお、第1のW層上に形成するWO層、WN層、またはWON層の厚さは、HfO膜との界面から厚さ方向に例えば0.5nm以上2.0nm以下とすることが好ましい。WO層、WN層、またはWON層の厚さが0.5nmを下回ると、第2のW層中への酸素原子或いは窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、酸化、窒化、または酸窒化されていない第1のW層の仕事関数の影響が強くなってしてしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WO層、WN層、またはWON層の厚さが2.0nmを上回ると、下部電極の抵抗が高くなってしまう。なお、WO層、WN層、またはWON層の厚さを2.0nm以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、下部電極の表面の改質に際しては、HfO膜との界面付近だけを改質させるのが好ましい。
【0069】
また、第1のW層上に形成するWO層の酸素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WO層中の酸素濃度が5atom%を下回ると、第2のW層中への酸素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、酸化されていない第1のW層の仕事関数の影響が強くなってしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WO層中の酸素濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が酸化物となり、絶縁体となってしまうと共に、EOT(等価酸化膜厚)も増加してしまう。なお、WO層中の酸素濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WO層中の酸素濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下にするとよい。
【0070】
また、第1のW層上に形成するWN層の窒素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WN層中の窒素濃度が5atom%を下回ると、第2のW層中への窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、窒化されていない第1のW層の仕事関数の影響が強くなってしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WN層中の窒素濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が窒化物となり、絶縁体となってしまう。なお、WN層中の窒素濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WN層中の窒素濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下にするとよい。
【0071】
また、第1のW層上に形成するWON層の酸素及び窒素濃度は、酸素と窒素の合計濃度を例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WON層中の酸素と窒素の合計濃度が5atom%を下回ると、第2のW層中への酸素原子及び窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、酸窒化されていない第1のW層の仕事関数の影響が強くなってしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WON層中の窒素濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が酸窒化物となり、絶縁体となってしまう。なお、WON層中の酸素と窒素の合計濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WON層中の酸素と窒素の合計濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10
atom%以下にするとよい。
【0072】
なお、WO層、WN層、またはWON層の厚さは、所定回数実施工程(S106h)におけるサイクルの実施回数等を調整することにより制御できる。また、WO層、WN層、またはWON層の酸素濃度及び窒素濃度は、例えばO照射時間、O濃度、O供給流量、NH照射時間、NH濃度、NH供給流量、ウェハ温度等を調整することにより制御できる。
【0073】
本実施形態における第1のW層形成工程(S105a〜S105e)、及び第2のW層形成工程(S106a〜S106e)でのウェハ200の処理条件としては、
ウェハ温度:100〜400℃、
処理室内圧力:0.1〜1000Pa、
WF供給流量:1〜1000sccm、
Si供給流量:1〜2000sccm、
(パージガス)供給流量:10〜10000sccm
が例示される。
【0074】
また、本実施形態における第2のW層の改質工程(S106f、S106g)でのウェハ200の処理条件としては、
ウェハ温度:100〜400℃、
処理室内圧力:1〜5000Pa、
供給流量:1〜5000sccm、
NH供給流量:1〜5000sccm、
(パージガス)供給流量:10〜10000sccm
が例示される。
【0075】
〔残留ガス除去工程(S107)〕
ウェハ200上に下部電極(表面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜)が形成された後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのNガスの供給を継続する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0076】
〔基板搬出工程(S108)〕
その後、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)に示した手順とは逆の手順により、下部電極を形成した後のウェハ200を、処理室201内から負圧移載室11内へ搬出する。その後、下部電極を形成した後のウェハ200を、HfO膜を成膜する他の装置、及び熱処理を実施する他の装置に順次搬送する。
【0077】
<上部電極の形成工程>
続いて、本実施形態に係る上部電極の形成工程を、図7(b)、図1〜図3を用いて説明する。
【0078】
〔基板搬入工程(S201)〜温度調整工程(S204)〕
下部電極上にHfO膜が形成され、さらに熱処理が実施されたウェハ200を処理室201内に搬入し、サセプタ217上に載置する。これらの工程は、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)と同様に行う。
【0079】
続いて、圧力調整工程(S203)、温度調整工程(S204)を実施する。これらの工程は、上述した圧力調整工程(S103)、温度調整工程(S104)と同様に行う。
【0080】
〔第3のW層形成工程(S205a〜S205e)〕
続いて、WF供給工程(S205a)、パージ工程(S205b)、Si供給工程(S205c)、パージ工程(S205d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S205e)により、熱処理がなされたHfO膜上に所定の厚さの第3のW層を形成する。なお、工程205a〜S205eは、上述の第2のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。
【0081】
〔第3のW層の改質工程(S205f,S205g)〕
続いて、Oおよび/またはNH供給工程(S205f)を実施し、形成した第3のW層をWO層、WN層、またはWON層に改質する。その後、パージ工程(S205g)を実施する。Oおよび/またはNH供給工程(S205f)およびパージ工程(S205g)は、上述のOおよび/またはNH供給工程(S106f)およびパージ工程(S106g)と同様に行う。
【0082】
〔所定回数実施工程(S205h)〕
続いて、第3のW層の形成工程(S205a〜S205e)と第3のW層の改質工程(S205f,S205g)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、熱処理がなされたHfO膜上に、所定の厚さのWO層(第3のW層が酸化された層)、WN層(第3のW層が窒化された層)、またはWON層(第3のW層が酸窒化された層)を形成する。HfO膜上に形成するWO層、WN層、またはWON層の厚さ、酸素濃度、窒素濃度は、第1のW層上に形成したWO層、WN層、またはWON層の厚さ、酸素濃度、窒素濃度と同様とする。
【0083】
〔第4のW層形成工程(S206a〜S206e)〕
続いて、WF供給工程(S206a)、パージ工程(S206b)、Si供給工程(S206c)、パージ工程(S206d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S206e)により、HfO膜上に形成したWO層、WN層、またはWON層上に、所定の厚さの第4のW層を形成し、上部電極とする。上部電極は、所定の厚さのWO層、WN膜、またはWON層と、所定の厚さの第4のW層とが積層してなり、底面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜として構成される。なお、工程S206a〜S206eは、上述の第1のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。
【0084】
〔残留ガス除去工程(S207)、基板搬出工程(S208)〕
その後、上述した残留ガス除去工程(S107)と同様の工程を実施した後(S207)、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)に示した手順とは逆の手順により、上部電極を形成した後のウェハ200を、処理室201内から負圧移載室11内へ搬出し(S208)、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0085】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す効果のうち1つ又は複数の効果を奏する。
【0086】
(a)本実施形態によれば、下部電極及び上部電極としてのW膜を形成する途中もしくはW膜を形成した後に、処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで、下部電極を構成するW膜の表面、及び上部電極を構成するW膜の底面を、WO層、WN層、またはWON層にそれぞれ改質する。このとき、WO層、WN層、またはWON層の厚さは、HfO膜との界面から厚さ方向に例えば0.5n
m以上2.0nm以下とする。また、WO層中の酸素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下とし、WN層中の窒素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下とし、WON層中の酸素および窒素の合計濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下とする。
【0087】
これにより、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の表面(WO層、WN層、またはWON層)及び上部電極の底面(WO層、WN層、またはWON層)の仕事関数をそれぞれ増加させることができ、それにより、下部電極全体及び上部電極全体としての仕事関数をそれぞれ増加させることができ、例えばキャパシタ部におけるリーク電流を低減することができる。特に、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)で形成する第2のW膜や、第3のW層形成工程(S205a〜S205e)で形成する第3のW膜の厚さをそれぞれ2nm以下とすることで、第2のW層の改質工程(S106f,S106g)や第3のW層の改質工程(S205f,S205g)において、第2のW膜や第3のW膜中に、酸素原子や窒素原子を確実に導入することができ、下部電極としてのW膜の表面、および上部電極としてのW膜の底面を、それぞれWO層、WN層、またはWON層へ確実に改質することができる。
【0088】
図5(b)は、本実施形態に係るキャパシタ構造(MIM構造)の断面拡大図である。図示するように、下部電極が、第1のW層と、WO層、WN層、またはWON層(第2のW層が改質された層)との積層構造からなり、キャパシタ絶縁膜がHfO膜からなり、上部電極が、WO層、WN層、またはWON層(第3のW層が改質された層)と、第4のW層と、の積層構造からなる。また、図9(a)は、本実施形態に係るキャパシタ電極(下部極及び上部電極)のエネルギー準位を例示する概略図である。キャパシタ絶縁膜をキャパシタ電極で挟むキャパシタ構造におけるリーク電流は、主としてキャパシタ電極の仕事関数とキャパシタ絶縁膜の伝導帯側とのバンドオフセット(コンダクションバンドオフセット)によって定まる。一般的に、コンダクションバンドオフセットはキャパシタ電極間へ印加する電圧よりも高い値とすることが望ましい。本実施形態によれば、HfO膜に接合する下部電極や上部電極の仕事関数を、それぞれ、WO層、WN層、またはWON層の仕事関数(4.9eV〜5.1eV)とすることができる。そのため、キャパシタ絶縁膜としてHfO膜を用いた場合、コンダクションバンドオフセットを2.9〜3.1eV程度確保することができ、リーク電流を大幅に減少させることができる。
【0089】
なお、図4(a)は従来のキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造(MIM構造)の断面構成図である。図示するように、キャパシタ電極(下部電極及び上部電極)がそれぞれW膜の単層からなり、キャパシタ絶縁膜がHfO膜からなる。また、図9(b)は、W膜の単層からなる従来のキャパシタ電極(下部電極及び上部電極)のエネルギー準位を示す概略図である。Wの仕事関数は4.5eV程度であるから、キャパシタ絶縁膜としてHfO膜を用いた場合、コンダクションバンドオフセットは2.5eV程度しか確保できず、上述の場合と比較して0.4eV〜0.6eVほど低くなり、リーク電流が増大してしまう恐れがある。
【0090】
(b)本実施形態によれば、Oガスに含まれる酸素原子やNHガスに含まれる窒素原子を、第2のW層および第3のW層のみに導入している。そして、第1のW層および第4のW層は、酸化、窒化、または酸窒化させずにW層のままとしている。これにより、下部電極および上部電極を形成するW膜全体が過剰に酸化、窒化、または酸窒化されてしまうことを防ぐことができ、下部電極および上部電極の抵抗値の増加、及びEOT(等価酸化膜厚)の増加を抑制することができる。特に、第2のW層形成工程(S106a〜S106e)で形成する第2のW層を0.5nm以上とすることで、OガスやNHガスが第1のW層に直接供給されることを確実に防ぐことができ、下部電極の過剰な酸化を確実に
回避することができる。
【0091】
(c)本実施形態によれば、下部電極や上部電極を構成する金属膜を、例えばNi,Co等の酸化されやすい金属を用いることなく、Wを用いて形成している。Wは比較的酸化されにくい材料であることから、W膜全体が過剰に酸化されてしまうことを防ぐことができ、下部電極および上部電極のEOT(等価酸化膜厚)の増加を抑制することができる。
【0092】
(d)本実施形態によれば、下部電極や上部電極を構成する金属膜を、例えばAu、Ag,Pt,Pd,Rh,Ir,Ru,Os等の高価な貴金属を用いることなく、Wを用いて形成している。Wは比較的安価、かつ成膜が容易な材料であることから、半導体装置の製造コストを低減させることが可能となる。
【0093】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱で活性化して供給し排気することで、W膜の底面もしくは表面をWO層、WN層、またはWON層に改質していたが、本発明は係る形態に限定されない。すなわち、処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスをプラズマで活性化して供給し排気することで、上述の改質処理を行ってもよい。
【0094】
図6(a)は、本実施形態に係るキャパシタ構造の製造工程のフロー図であり、(b)は係るフローにより製造されるキャパシタ構造の断面構成図である。
【0095】
図6(a)に示すように、本実施形態に係る下部電極としてのW膜を形成する処理を行う工程(Bottom Electrode formation)では、ウェハ200上に第1のW層を形成する工程(Metal film deposition−1)と、第1のW層に対して酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスをプラズマで活性化して供給し排気することで第1のW層の表面をWO層、WN層、またはWON層に改質する工程(Plasma O and/or NH)と、を実施することで、表面がWO層、WN層、またはWON層に改質された下部電極としての所定膜厚のW膜を形成する点が、上述の実施形態と異なる。
【0096】
また、本実施形態に係る上部電極としてのW膜を形成する処理を行う工程(Top Electrode formation)では、HfO膜上に第2のW層を形成する工程(Metal film deposition−2)と、第2のW層に対して酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスをプラズマで活性化して供給し排気することで第2のW層をWO層、WN層、またはWON層に改質する工程(Plasma O and/or NH)と、WO層、WN層、またはWON層上に第3のW層を形成する工程(Metal film deposition−3)と、を実施することで、底面がWO層、WN層、またはWON層に改質された上部電極としての所定膜厚のW膜を形成する点が、上述の実施形態と異なる。
【0097】
以下、上述した下部電極の形成(Bottom Electrode formation)及び上部電極の形成(Top Electrode formation)について、図8を用いて詳しく説明する。図8(a)は、本実施形態に係る下部電極の形成工程のフロー図であり、(b)は本実施形態に係る上部電極の形成工程のフロー図である。以下の説明において、基板処理装置40を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0098】
<下部電極の形成工程>
まず、本実施形態に係る下部電極の形成工程を、図8(a)、図1〜図3を用いて説明
する。
【0099】
〔基板搬入工程(S301)〜温度調整工程(S304)〕
ウェハ200を処理室201内に搬入し、サセプタ217上に載置する。これらの工程は、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)と同様に行う。
【0100】
続いて、圧力調整工程(S303)、温度調整工程(S304)を実施する。これらの工程は、上述した圧力調整工程(S103)、温度調整工程(S104)と同様に行う。
【0101】
〔第1のW層形成工程(S305a〜S305e)〕
続いて、WF供給工程(S305a)、パージ工程(S305b)、Si供給工程(S305c)、パージ工程(S305d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S305e)により、ウェハ200上に所定の厚さの第1のW層を形成する。なお、工程305a〜S305eは、上述の第1のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。
【0102】
〔プラズマOおよび/またはNH供給工程(S306)〕
続いて、バルブvg1,vg2,vg3および/またはバルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内へのプラズマで活性化されたOガスおよび/またはプラズマで活性化されたNHガスの供給、すなわち照射を開始する。MFC222gで流量制御されたOガスや、MFC222bで流量制御されたNHガスは、シャワーヘッド240によりそれぞれ分散され、処理室201内のウェハ200上にそれぞれ均一に供給される。余剰なOガスやNHガスは、それぞれ排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、OガスやNHガスの活性化は、酸素含有ガス供給管213gや窒素含有ガス供給管213bに設けられた図示しないリモートプラズマユニット等によって行う。また、プラズマで活性化されたNHガスの代わりに、プラズマで活性化されたNガスを供給してもよい。
【0103】
処理室201内へのOガスおよび/またはNHガスの供給時には、原料ガス供給管213a内、シリコン含有ガス供給管213h内へのOガスやNHガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるOガスやNHガスの拡散を促すように、バルブvc3,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。バルブvg1,vg2,vg3、バルブvb1,vb2,vb3のいずれか又は両方を開き、OガスやNHガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvg3、バルブvb3のいずれか又は両方を閉じ、処理室201内へのOガスやNHガスの供給を停止する。
【0104】
プラズマで活性化したOガスをウェハ200に照射すると、Oガスに含まれる酸素原子が第1のW層の表面に導入される。その結果、第1のW層の表面が酸化され、導電性の金属酸化層としてのWO層に改質される。なお、第1のW層の表面を除いた領域は、酸化されずにW層のままとなる。下部電極としてのW膜は、表面にWO層が形成された第1のW層として構成される。第1のW層表面への酸素原子の添加により、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WO層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0105】
また、プラズマで活性化したNHガスをウェハ200に照射すると、NHガスに含まれる窒素原子が第1のW層の表面に導入される。その結果、第1のW層の表面が窒化され、導電性の金属窒化層としてのWN層に改質される。なお、第1のW層の表面を除いた領域は、窒化されずにW層のままとなる。下部電極としてのW膜は、表面にWN層が形成された第1のW層として構成される。第1のW層表面への窒素原子の添加により、高誘電
率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WN層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0106】
また、プラズマで活性化したOガスおよびNHガスをウェハ200に照射すると、Oガスに含まれる酸素原子およびNHガスに含まれる窒素原子が第1のW層の表面にそれぞれ導入される。その結果、第1のW層の表面が酸窒化され、導電性の金属酸窒化層としてのWON層に改質される。なお、第1のW層の表面を除いた領域は、酸窒化されずにW層のままとなる。下部電極としてのW膜は、表面にWON層が形成された第1のW層として構成される。第1のW層表面への酸素原子および窒素原子の添加により、高誘電率絶縁膜としてのHfO膜に接合する下部電極の接合面(WON層)の仕事関数を増加させることができ、それにより、下部電極全体としての仕事関数を増加させることができる。
【0107】
なお、第1のW層を酸化、窒化、または酸窒化させる領域(WO層、WN層、またはWON層)の厚さ(深さ)は、HfO膜との界面から厚さ方向に例えば0.5nm以上2.0nm以下とすることが好ましい。WO層、WN層、またはWON層の厚さが0.5nmを下回ると、第1のW層表面への酸素原子或いは窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、表面を除いた領域(酸化、窒化、または酸窒化されてない第1のW層)の仕事関数の影響が強くなってしてしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WO層、WN層、またはWON層の厚さが2.0nmを上回ると、下部電極の抵抗が高くなってしまう。なお、WO層、WN層、またはWON層の厚さを2.0nm以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、下部電極の表面の改質に際しては、HfO膜との界面付近だけを改質させるのが好ましい。
【0108】
また、第1のW層を酸化させる領域(WO層)の酸素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WO層中の酸素濃度が5atom%を下回ると、第1のW層表面への酸素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、表面を除いた領域(酸化されてない第1のW層)の仕事関数の影響が強くなってしてしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WO層中の酸素濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が酸化物となり、絶縁体となってしまうと共に、EOT(等価酸化膜厚)も増加してしまう。なお、WO層中の酸素濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WO層中の酸素濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下にするとよい。
【0109】
また、第1のW層を窒化させる領域(WN層)の窒素濃度は、例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WN層中の窒素濃度が5atom%を下回ると、第1のW層表面への窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、表面を除いた領域(窒化されてない第1のW層)の仕事関数の影響が強くなってしてしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WN層中の窒素濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が窒化物となり、絶縁体となってしまう。なお、WN層中の窒素濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WN層中の酸素濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下にするとよい。
【0110】
また、第1のW層を酸窒化させる領域(WON層)の酸素及び窒素濃度は、酸素と窒素
の合計濃度を例えば5atom%以上20atom%以下とすることが好ましく、5atom%以上10atom%以下とすることがより好ましい。WON層中の酸素と窒素の合計濃度が5atom%を下回ると、第1のW層表面への酸素原子及び窒素原子の添加による仕事関数の増大効果が減少してしまうと共に、表面を除いた領域(酸窒化されてない第1のW層)の仕事関数の影響が強くなってしてしまい、下部電極全体としての仕事関数を増加させることが困難になってしまう。また、WON層中の酸素と窒素の合計濃度が20atom%を上回ると、下部電極の表面部分が酸窒化物となり、絶縁体となってしまう。なお、WON層中の酸素と窒素の合計濃度を10%以下とすれば仕事関数の増大効果は充分に得られる。すなわち、WON層中の酸素と窒素の合計濃度は、5atom%以上20atom%以下、好ましくは5atom%以上10atom%以下にするとよい。
【0111】
なお、WO層、WN層、またはWON層の厚さ(深さ)、酸素濃度、窒素濃度は、例えばO照射時間、O濃度、O供給流量、NH照射時間、NH濃度、NH供給流量、ウェハ温度等を調整することにより制御できる。
【0112】
なお、本実施形態におけるプラズマOおよび/またはNH供給工程(S306)でのウェハ200の処理条件としては、
ウェハ温度:25〜400℃、
処理室内圧力:0.1〜250Pa、
供給流量:1〜5000sccm、
NH供給流量:1〜5000sccm、
(パージガス)供給流量:10〜10000sccm、
高周波電力:50〜400W
が例示される。
【0113】
〔残留ガス除去工程(S307)、基板搬出工程(S308)〕
その後、上述した残留ガス除去工程(S107)と同様の工程を実施した後(S307)、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)に示した手順とは逆の手順により、下部電極を形成した後のウェハ200を、処理室201内から負圧移載室11内へ搬出する(S308)。その後、下部電極が形成されたウェハ200を、HfO膜を成膜する他の装置、及び熱処理を実施する他の装置に順次搬送する。
【0114】
<上部電極の形成工程>
続いて、本実施形態に係る上部電極の形成工程を、図8(b)、図1〜図3を用いて説明する。
【0115】
〔基板搬入工程(S401)〜温度調整工程(S404)〕
下部電極上にHfO膜が形成され、さらに熱処理が実施されたウェハ200を処理室201内に搬入し、サセプタ217上に載置する。これらの工程は、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)と同様に行う。
【0116】
続いて、圧力調整工程(S403)、温度調整工程(S404)を実施する。これらの工程は、上述した圧力調整工程(S103)、温度調整工程(S104)と同様に行う。
【0117】
〔第2のW層形成工程(S405a〜S405e)〕
続いて、WF供給工程(S405a)、パージ工程(S405b)、Si供給工程(S405c)、パージ工程(S405d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S405e)により、熱処理がなされたHfO膜上に所定の厚さの第2のW層を形成する。なお、工程405a〜S405eは、上述の第1のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。また、形成する第2のW層の厚
さは、例えば0.5nm以上2nm以下とする。
【0118】
〔プラズマOおよび/またはNH供給工程(S406)〕
続いて、プラズマOおよび/またはNH供給工程(S406)を実施し、形成した第2のW層をWO層、WN層、またはWON層に改質する。なお、プラズマOおよび/またはNH供給工程(S406)は、上述のプラズマOおよび/またはNH供給工程(S306)と同様に行う。
【0119】
〔パージ工程(S407)〕
続いて、パージ工程(S407)を実施して、処理室201内に残留しているOおよび/またはNHガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。パージ工程(S407)は上述の残留ガス除去工程(S107)と同様に行う。
【0120】
〔第3のW層形成工程(S408a〜S408e)〕
続いて、WF供給工程(S408a)、パージ工程(S408b)、Si供給工程(S408c)、パージ工程(S408d)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施する所定回数実施工程(S408e)により、第2のW層が改質されたWO層、WN層、またはWON層上に、所定の厚さの第3のW層を形成し、上部電極とする。上部電極は、所定の厚さのWO層、WN膜、またはWON層と、所定の厚さの第3のW層とが積層してなり、底面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜として構成される。なお、工程408a〜S408eは、上述の第1のW層形成工程(S105a〜S105e)と同様に行う。
【0121】
〔残留ガス除去工程(S409)、基板搬出工程(S410)〕
その後、上述した残留ガス除去工程(S107)と同様の工程を実施した後(S409)、上述した基板搬入工程(S101)、基板載置工程(S102)に示した手順とは逆の手順により、上部電極を形成した後のウェハ200を、処理室201内から負圧移載室11内へ搬出し(S410)、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0122】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、低コストで必要な仕事関数及び耐酸化性を有する金属膜を備えた半導体装置を製造することができる。また、下部電極の形成工程が簡略化されるため、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0123】
<本発明の更に他の実施形態>
上述の実施形態では、基板処理装置(成膜装置)として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のALD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型ALD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型ALD装置について説明する。
【0124】
図10は、本実施形態で好適に用いられる縦型ALD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図10(a)のA−A線断面図で示す。
【0125】
図10(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0126】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ
303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0127】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0128】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿って、ウェハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0129】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給管213aが接続され、第2ノズル333bに酸素含有ガス供給管213b、窒素含有ガス供給管213g、およびシリコン含有ガス供給管213hが接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガスと、酸素含有ガス、窒素含有ガス、シリコン含有ガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、さらに酸素含有ガス、窒素含有ガス、シリコン含有ガスを別々のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0130】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0131】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述す
るボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0132】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0133】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、ゲートバルブ44、負圧移載機11、サブヒータ206a、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,vh1〜vh3、マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g,222h等の動作を制御する。
【0134】
次に、上記構成にかかる縦型ALD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ウェハ200上に下部電極又は上部電極を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、縦型ALD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0135】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図10(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0136】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウェハ200を回転させる。
【0137】
その後、上述の実施形態に係る下部電極又は上部電極の形成工程を実施することにより、ウェハ200上に、表面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜(下部電極)、又は底面がWO層、WN層、またはWON層に改質されたW膜(上部電極)を形成する。
【0138】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホー
ルド309の下端を開口させるとともに、下部電極又は上部電極が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウェハ200をボート317より取り出す(ウェハディスチャージ)。
【0139】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、低コストで必要な仕事関数及び耐酸化性を有する金属膜を備えた半導体装置を製造することができる。
【0140】
<本発明の更に他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0141】
例えば、上述の実施形態では、金属膜としてW膜を形成し、W膜の底面もしくは表面をWO膜、WN膜、WON膜に改質する場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されず、金属膜としてWN膜を形成し、WN膜の底面もしくは表面をWON膜に改質する場合や、金属膜として窒化チタニウム(TiN)膜を形成し、TiN膜の底面もしくは表面をTiN膜に改質する場合にも好適に適用可能である。
【0142】
また、上述の実施形態では、高誘電率絶縁膜としてHfO膜を形成する場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されず、高誘電率絶縁膜として例えばHfSiO膜、HfAlO膜、ZrO膜、ZrSiO膜、ZrAlO膜、TiO膜、Nb膜、Ta膜、SrTiO膜、BaSrTiO膜、PZT膜を形成したり、これらを組み合わせたり混合させたりした膜を形成する場合にも好適に適用可能である。
【0143】
また、上述の実施形態では、酸素含有ガス(酸化源)としてOガスを用い、窒素含有ガス(窒化源)としてNHガスを用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、酸化源としてOガスの代わりにOガスやHOガスを用いてもよく、窒化源としてNHガスの代わりにNガスを用いてもよい。
【0144】
また、上述の実施形態では、下部電極及び上部電極の形成、高誘電率絶縁膜の形成、熱処理をそれぞれ別々の処理容器により行うこととしていたが、本発明は係る形態に限定されない。すなわち、下部電極、上部電極、高誘電率絶縁膜の形成を同一の処理容器内にて行うこととしてもよく、さらに、高誘電率絶縁膜の形成と熱処理とを同一の処理容器内にて行うこととしてもよい。
【0145】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0146】
本発明の一態様によれば、
基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理容器内から搬出する工程と、を有し、
前記処理を行う工程では、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質する半導体装置の製造方法が提供される。
【0147】
好ましくは、前記導電性の金属酸化層、前記導電性の金属窒化層または前記導電性の金属酸窒化層の厚さを0.5nm以上2nm以下とする。
【0148】
また好ましくは、前記導電性の金属酸化層の酸素濃度を5%以上20%以下とする。
また好ましくは、前記導電性の金属酸化層の酸素濃度を5%以上10%以下とする。
【0149】
また好ましくは、前記導電性の金属窒化層の窒素濃度を5%以上20%以下とする。
また好ましくは、前記導電性の金属窒化層の窒素濃度を5%以上10%以下とする。
【0150】
また好ましくは、前記導電性の金属酸窒化層の酸素と窒素の合計濃度を5%以上20%以下とする。
また好ましくは、前記導電性の金属酸窒化層の酸素と窒素の合計濃度を5%以上10%以下とする。
【0151】
また好ましくは、前記金属膜がW膜であり、前記導電性の金属酸化層がWO層である。
また好ましくは、前記金属膜がW膜であり、前記導電性の金属窒化層がWN層である。
また好ましくは、前記金属膜がW膜であり、前記導電性の金属酸窒化層がWON層である。
【0152】
また好ましくは、前記金属膜がWN膜であり、前記導電性の金属酸窒化層がWON層である。
また好ましくは、前記金属膜がTiN膜であり、前記導電性の金属酸窒化層がTiON層である。
【0153】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給する反応ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
基板を収容した前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行うと共に、その際、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質するように、前記処理ガス供給系、前記反応ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0154】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
202 処理容器
280 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理容器内に搬入する工程と、
前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理容器内から搬出する工程と、を有し、
前記処理を行う工程では、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給する反応ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
基板を収容した前記処理容器内に処理ガスを供給し排気することで、前記基板上に所定膜厚の金属膜を形成する処理を行うと共に、その際、前記金属膜を形成する途中もしくは前記金属膜を形成した後に前記処理容器内に酸素含有ガスおよび/または窒素含有ガスを熱またはプラズマで活性化して供給し排気することで、前記金属膜の底面もしくは表面を導電性の金属酸化層、導電性の金属窒化層または導電性の金属酸窒化層に改質するように、前記処理ガス供給系、前記反応ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62502(P2012−62502A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205867(P2010−205867)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】