説明

半導体装置の製造方法

【課題】ドライクリーニングにおいてガス供給管の破損を防ぎ、メンテナンス効率を高めるようにする。
【解決手段】ウエハ200を処理室201内に搬入する工程と、ガス供給管165,166,167に原料ガスを供給して処理室201内に原料ガスを導入し、基板200にシリコン又はシリコン化合物の膜を形成する工程と、処理室201内から基板を搬出する工程と、処理室201内を加熱する加熱工程と、加熱工程後に処理室201内の温度を低下させる降温工程と、降温工程後にガス供給管165,166,167にクリーニングガスを供給して処理室201内にクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に基板を処理する際に装置内の各部に形成された膜を除去することができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットウォール型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いてSi系膜の成膜を行う場合、ガス供給管を介して原料ガス及びエッチングガスを反応炉内に供給する。しかし、ガス供給源よりガスを供給すると、ウエハのみならず、石英部品(反応管、ボート、ガス供給管(ノズルを含む)等)に膜が堆積され、累積膜厚が3μmを超えると膜はがれが生じパーティクルの発生原因となる。
そのため、周期的にこれらの石英部品のクリーニングを行う必要があり、また石英部品の消耗度合によっては新品に交換する必要もある。ウエハの処理毎にウエットクリーニング(フッ硝酸、フッ酸などのSi系膜エッチング溶液)を行う方法もあるが、洗浄及び乾燥工程が入るためメンテナンスに時間がかかり、メンテナンス性が悪い。また、石英部品を取り外す際、反応炉内を大気に曝すことになり汚染原因となるため高洗浄化を保つのに好ましくない。
そこで、石英部品を装置に取り付けた状態で、N雰囲気中でクリーニングガス(例えばClF)を反応炉内に導入することで、Si系膜のドライエッチングによるクリーニングを行うことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、Si系膜の成膜の際、原料ガス用のガス供給管(ノズルを含む)内部では反応炉よりも圧力が高くなるため、炉内よりも膜が厚く堆積してしまう。そのため、ガス供給管には膜による応力が蓄積される。ガス供給管に応力が蓄積された状態でクリーニングガスをガス供給管に流通させると、ガス供給管内の膜が急激にエッチングされるため、応力の開放が急激である。そのため、ガス供給管にひび割れ等の破損が生ずる。またこれによりパーティクルの発生及びドライクリーニング後のガス供給管交換により、メンテナンス効率が悪化する問題がある。
【0004】
そこで本発明の課題は、ドライクリーニングにおいてガス供給管の破損を防ぐとともにメンテナンス効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明によれば、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内のガス供給管に原料ガスを供給して前記処理室内に前記原料ガスを導入し、前記処理室内の基板にシリコン又はシリコン化合物の膜を形成する工程と、
前記処理室内から基板を搬出する工程と、
前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記処理室内の温度を低下させる降温工程と、
前記降温工程後、前記ガス供給管にクリーニングガスを供給して前記処理室内に前記クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、処理室内にクリーニングガスを供給する前に、クリーニングガスを供給する際の処理室内の温度よりも高温になるような加熱処理を行うことで、装置内部に形成された膜による応力の開放を緩やかにし、ノズルの破損を防ぐことができる。これにより、ノズルの破損によるパーティクルの発生を低減することができ、メンテナンス性の向上にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本実施例に係る基板処理装置は、半導体装置集積回路(IC(Integrated Circuits))の製造に使用される半導体製造装置の一例として構成されているものである。下記の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し熱処理等をおこなう縦型の装置を使用した場合について述べる。
【0008】
図1は、本発明の実施形態における基板処理装置101の概略構成図である。
【0009】
図1に示す通り基板処理装置101は、ガス供給系300、移載機106、カセット110、処理炉202、ボート217、コントローラ240及び真空排気装置246を備える。
【0010】
基板処理装置101内には複数のカセット110が収容されており、カセット110は、複数のウエハ200を水平姿勢に整列させた状態で保持している。ウエハ200はシリコン等の材料から構成され、円板状に形成されている。
【0011】
移載機106は、ウエハ200をカセット110からボート217へ移載したり、ボート217からカセット110へ移載したりするためのものであり、ウエハ200をピックアップすることができるように構成されている。即ち、移載機106はウエハ200をボート217に対し装填(ウエハチャージング)及び脱装(ウエハディスチャージング)が可能となっている。ボート217は、成膜処理前は処理炉202の真下に位置する。
【0012】
処理炉202はヒータ206及びプロセスチューブ203等を有する。プロセスチューブ203の周囲にヒータ206が設けられており、プロセスチューブ203を加熱することができるようになっている。更に処理炉202には、各種処理ガスを供給するガス供給系300及び内部を真空排気する真空排気装置246が接続されている。処理炉202の詳細については後述する。
【0013】
コントローラ240は基板処理装置101の各種動作を制御する。
【0014】
図2は、基板処理装置101の処理炉202の概略構成図であり、縦断面図として示されている。なお、図2はウエハ200及びボート217が処理室201内に搬入された後の図である。図2を参照して処理炉202について説明する。
【0015】
図1でも示したように、処理炉202は加熱機構としてのヒータ206を有する。ヒータ206は円筒形状であり、ヒータ素線とその周囲に設けられた断熱材より構成され、図示しない保持体に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0016】
ヒータ206の内側には、ヒータ206と同心円状にプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205とからなる。
【0017】
アウターチューブ205は、石英(SiO)、炭化シリコン(SiC)その他の耐熱性材料からなる。アウターチューブ205が円筒形状に形成されており、アウターチューブ205の上端が閉塞し、アウターチューブ205の下端が開口している。
【0018】
インナーチューブ204は、石英、炭化シリコンその他の耐熱性材料からなる。インナーチューブ204が円筒形状に形成されており、インナーチューブ204の上端及び下端が開口している。インナーチューブ204がアウターチューブ205内に設けられている。インナーチューブ204とアウターチューブ205が同心となるよう配置され、インナーチューブ204の外径がアウターチューブ205の内径よりも小さい。このためインナーチューブ204とアウターチューブ205との間には筒状空間250が形成される。また、インナーチューブ204の上端がアウターチューブ205の上端天井部から下に離れており、インナーチューブ204の中空212と筒状空間250がその上側で連通している。
【0019】
インナーチューブ204及びアウターチューブ205の下方には、マニホールド209が設けられている。マニホールド209はステンレスその他金属材料からなる。マニホールド209が円筒形状に設けられ、マニホールド209の上端及び下端が開口している。マニホールド209の上下中間部であってその内側には中板210が形成され、その中板210の中央部に通し孔211が貫通している。
マニホールド209の径がアウターチューブ205の径に等しく、マニホールド209の上端がアウターチューブ205の下端に連結され、アウターチューブ205がマニホールド209に支持されている。インナーチューブ204は中板210の上に立てた状態に設けられ、通し孔211がインナーチューブ204内にある。マニホールド209とアウターチューブ205との間にはシール部材としてのOリングが設けられている。マニホールド209が図示しない保持体に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。
【0020】
プロセスチューブ203とマニホールド209により反応容器が形成されている。そして、反応容器内の処理室201が、インナーチューブ204の中空212と、インナーチューブ204とアウターチューブ205の間の筒状空間250と、マニホールド209の中空であって中板210よりも下側部分の下部空間213とに分けられる。
【0021】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219はステンレスその他の金属からなり、円板状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリングが設けられている。シールキャップ219には、回転機構254が設けられている。回転機構254の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構254は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、処理炉202の外側に設けられた昇降機構としての昇降モータ248によって垂直方向に昇降される。これによりボート217を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構254及びボートエレベータ115には、駆動制御部237が電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0022】
基板保持具としてのボート217は、石英、炭化珪素その他の耐熱性材料からなり、複数枚(例えば50〜150枚程度)のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なおボート217の下部には、石英、炭化珪素その他の耐熱性材料からなる円板形状をした断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されており、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わりにくくなるよう構成されている。
【0023】
また、インナーチューブ204の内部には温度センサ263が設けられている。
ヒータ206と温度センサ263には、電気的に温度制御部238が接続されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ206への通電具合を調整することにより処理室201内の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0024】
ガス供給管165,167及び4本のガス供給管166がマニホールド209に設けられている。これらガス供給管165,166,167はマニホールド209の外からマニホールド209を貫通して、処理室201内まで配管されている。ガス供給管165,166,167の下流側端部がノズルになっている。
【0025】
ガス供給管165の下流側端部がマニホールド209内の下部空間213内にある。ガス供給管165の上流側が方向切替弁331に接続されている。方向切替弁331は3ポートの方向切替弁である。方向切替弁332の第1のポートがガス供給管165に接続されている。方向切替弁332の第2のポートがバルブ321及びMFC(マスフローコントローラ)311を介して原料ガス供給源301に接続されているとともに、バルブ322及びMFC312を介して希釈ガス供給源302に接続されている。方向切替弁332の第3のポートがバルブ325及びMFC315を介して不活性ガス供給源305に接続されているとともにバルブ326及びMFC316を介してクリーニングガス供給源306に接続されている。方向切替弁331の切替位置は2位置であり、第1の切替位置では、ガス供給管165がバルブ321及びバルブ322に通じた状態になり、第2の切替位置では、ガス供給管165がバルブ325及びバルブ326に通じた状態になる。
【0026】
4本のガス供給管166のうち1本のガス供給管166の下流側端部が下部空間213内にあり、他の3本のガス供給管166の下流側端部がインナーチューブ204の中空212内にあり、これら3本のガス供給管166の下流側端部の高さが異なっている。ガス供給管166の上流側が方向切替弁333の第1のポートに接続されている。方向切替弁333の第2のポートがバルブ323及びMFC313を介して原料ガス供給源303に接続され、第3のポートがバルブ325及びMFC315を介して不活性ガス供給源305に接続されているとともにバルブ326及びMFC316を介してクリーニングガス供給源306に接続されている。方向切替弁333の切替位置は2位置であり、第1の切替位置では、ガス供給管166がバルブ323に通じた状態になり、第2の切替位置では、ガス供給管166がバルブ325及びバルブ326に通じた状態になる。
【0027】
ガス供給管167の下流側端部が下部空間213内にある。ガス供給管167の上流側が方向切替弁334の第1のポートに接続されている。方向切替弁334の第2のポートがバルブ324及びMFC314を介してエッチングガス供給源304に接続され、第3のポートがバルブ325及びMFC315を介して不活性ガス供給源305に接続されているとともにバルブ326及びMFC316を介してクリーニングガス供給源306に接続されている。方向切替弁334の切替位置は2位置であり、第1の切替位置では、ガス供給管167がバルブ324に通じた状態になり、第2の切替位置では、ガス供給管167がバルブ325及びバルブ326に通じた状態になる。
【0028】
原料ガス供給源301には、モノシランガス(SiH)等その他のシランガスが封入されている。希釈ガス供給源302には、水素ガス、ヘリウムガスその他の希釈ガスが封入されている。原料ガス供給源303には、モノゲルマンガス(GeH)等その他のゲルマンガスが封入されている。エッチングガス供給源304には、塩素ガス、塩化水素ガスその他のエッチングガスが封入されている。不活性ガス供給源305には、窒素ガス、アルゴンガスその他の不活性ガスが封入されている。クリーニングガス供給源306には、三フッ化塩素ガス(ClF)等その他のクリーニングガスが封入されている。
【0029】
MFC311〜316は、それに流れるガスの流量を検出するとともに、流量を調節するガス流量制御装置である。
【0030】
MFC311〜316及びバルブ321〜326にはガス流量制御部235が電気的に接続されており、供給するガスの流量が所望の流量となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。方向切替弁331,333,334にはガス流量制御部235が電気的に接続されており、方向切替弁331,333,334の切替位置がガス流量制御部235によって制御される。
【0031】
マニホールド209にガス排気管231が設けられ、このガス排気管231が筒状空間250に通じている。ガス排気管231の下流側には、圧力検出器としての圧力センサ243及び圧力調整器としてのAPCバルブ242を介して、真空ポンプ等の真空排気装置246が接続されている。圧力センサ243及びAPCバルブ242には、圧力制御部236が電気的に接続されており、圧力センサ243により検出された圧力に基づいてAPCバルブ242の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所望の圧力となるように所望のタイミングにて制御するよう構成されている。
【0032】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238は、操作部、入出力部をも構成し、基板処理装置101全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。これら、ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、主制御部239は、コントローラ240として構成されている。
【0033】
次に、上記構成に係る基板処理装置101の主な動作とともに、半導体デバイスの製造方法について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0034】
基板処理動作について説明する。
工場内搬送装置(図示略)によって複数のカセット110が基板処理装置101内に搬入されると、移載機106はウエハ200をカセット110からボート217に装填(ウエハチャージング)する。ボート217にウエハ200を受け渡した移載機106は、カセット110に戻り後続のウエハ200をボート217に装填する。
【0035】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージング)されると、コントローラ240が駆動制御部237によりボートエレベータ115を上昇動作させる。そうすると、ウエハ200群を保持したボート217がボートエレベータ115の上昇動作により処理炉202内に搬入(ボートローディング)され、マニホールド209の下端の開口がシールキャップ219によって閉塞される。そして、コントローラ240が駆動制御部237によりボートエレベータ115を作動させる。
【0036】
続いて、コントローラ240が圧力制御部236により真空排気装置246を動作させると、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ243で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ242がコントローラ240の圧力制御部236によりフィードバック制御される。
また、コントローラ240が温度制御部238によりヒータ206を発熱させると、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がコントローラ240の温度制御部238によってフィードバック制御される。
続いて、コントローラ240が駆動制御部237によって回転機構254を回転させる。回転機構254により、ボート217が回転されることでウエハ200が回転される。回転機構254の回転はその後も継続される。
【0037】
続いて、コントローラ240がガス流量制御部235によって方向切替弁331の切替位置を切り替え、方向切替弁331によってガス供給管165がバルブ321,322に通じた状態になる。同様に、方向切替弁333,334の切り替え位置が切り替えられ、方向切替弁333によってガス供給管166がバルブ323に通じた状態になり、方向切替弁334によってガス供給管167がバルブ324に通じた状態になる。
【0038】
そして、コントローラ240がガス流量制御部235によってMFC311〜314の設定流量を設定した後、バルブ321〜324を開く。そうすると、シランガスと希釈ガスとの混合ガスがガス供給管165を流通して処理室201内に導入され、ゲルマンガスがガス供給管166を流通して処理室201内に導入され、エッチングガスがガス供給管167を流通して処理室201内に導入される。処理室201内に導入された各種ガスは、インナーチューブ204の中空212内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出してガス排気管231から排気される。これらガスが処理室201内を通過する際にウエハ200と接触することにより、ウエハ200の表面上にEpi−SiGe膜が選択成長する。また、ボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205等にも膜(例えば、Epi−SiGe膜)が成長し、ガス供給管165,166,167の内壁にも膜が成長する。
なお、コントローラ240がバルブ323を開かず、バルブ321,322,324のみを開いてもよい。これにより、ゲルマンガスが処理室201内に導入されないから、ウエハ200の表面上にEpi−Si膜が選択成長する。そのため、基板処理装置101がウエハ200にEpi−Si膜を形成するためだけの装置であれば、原料ガス供給源303、MFC313、バルブ323、方向切替弁333及びガス供給管166が設けられていない。
また、コントローラ240がバルブ324を開かず、バルブ321,322,323を開いてもよい。そうすると、エッチングガスが処理室201内に導入されないから、ウエハ200の表面上にpoly−SiGe膜が堆積(デポジション)される。
また、コントローラ240がバルブ323,324を開かず、バルブ321,322を開いてもよい。そうすると、エッチングガス及びゲルマンガスが処理室201内に導入されないから、ウエハ200の表面上にEpi−Si膜が堆積(デポジション)される。
【0039】
ガス導入後、予め設定された時間が経過すると、コントローラ240がバルブ321〜324を閉じる。そして、コントローラ240が方向切替弁331,333,334の切替位置を切り替える。そうすると、方向切替弁331によってガス供給管165がバルブ325に通じた状態になり、方向切替弁333によってガス供給管166がバルブ325に通じた状態になり、方向切替弁334によってガス供給管167がバルブバルブ325に通じた状態になる。
【0040】
そして、コントローラ240がMFC315の設定流量を設定した後、バルブ325を開く。そうすると、不活性ガス供給源305内の不活性ガスがガス供給管165,166,167を流通して処理室201内に導入される。これにより、処理室201内が不活性ガスで置換されると共に、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0041】
続いて、コントローラ240が駆動制御部237により回転機構254を停止させるとともにボートエレベータ115を下降動作させる。シールキャップ219及びボート217がボートエレベータ115の下降動作により下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、ウエハ200を保持したボート217が処理室201の外部に搬出(ボートアンローディング)される。続いて移載機106により、処理済ウエハ200がボート217からカセット110に移載される。処理済ウエハ200が載置されたカセット110は、工場内搬送装置(図示略)によって基板処理装置101から取り出される。
【0042】
以後、上述の基板処理動作が繰り返されることで、ウエハ200が次々に処理されていく。そして、上述の基板処理動作が繰り返されている際に、処理炉202のクリーニング処理動作が行われる。クリーニング処理動作は、上述の基板処理動作が1回又は複数回行われる毎に行われる。以下、クリーニング処理動作について具体的に説明する。
【0043】
処理済ウエハ200がカセット110に移載された後、ボート217にウエハ200が載置されてない状態で、コントローラ240がボートエレベータ115を上昇動作させる。
【0044】
次に、コントローラ240が方向切替弁331,333,334の切替位置を切り替える。そうすると、方向切替弁331によってガス供給管165がバルブ325,326に通じた状態になり、方向切替弁333によってガス供給管166がバルブ325,326に通じた状態になり、方向切替弁334によってガス供給管167がバルブ325,326に通じた状態になる。
【0045】
次に、コントローラ240がバルブ325を開放状態にする。更に、コントローラ240が圧力センサ243による検出圧力を入力して、その検出圧力基づいてAPCバルブ242の開度を調節するフィードバック制御を行う。そうすると、不活性ガスが処理室201内に導入されて処理室201内が不活性ガス雰囲気になるとともに、処理室201内の圧力が50〜500Paになる。
【0046】
次に、コントローラ240が温度制御部238によってヒータ206を発熱させ、処理室201及びその内部のガス供給管165,166,167がヒータ206によって加熱される。ここで、コントローラ240は、温度センサ263による検出温度を入力することによって、ヒータ206による昇温速度を10〜30℃/minにフィードバック制御する。処理室201の温度が加熱開始後30分間で750〜800℃に達することが好ましい。
【0047】
加熱処理中、コントローラ240が温度センサ263による検出温度を上閾値(上閾値は600〜900℃の範囲内であり、好ましくは750〜800℃範囲内である。)と比較する。そして、処理室201及びガス供給管165,166,167が600〜900℃、好ましくは750〜800℃にまで昇温して、コントローラ240が温度センサ263による検出温度が上閾値に達したことを認識したら、ヒータ206による加熱を停止するか又はヒータ206の発熱量を低下させる。そうすると、処理室201及びガス供給管165,166,167の温度が降温する。このように、ガス供給管165,166,167が600〜900℃にまで加熱されると、ガス供給管165,166,167内に形成された薄膜にクラックが生じ、これによりガス供給管165,166,167に生じた残留応力が緩和される。同様に、ボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205の表面に形成された膜にもクラックが生じ、ボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205の表面の残留応力が緩和される。
【0048】
降温処理中、コントローラ240が温度センサ263による検出温度を下閾値(下閾値は350〜550℃の範囲内である。)と比較する。そして、処理室201及びガス供給管165,166,167が350〜550℃まで低下し、コントローラ240が温度センサ263による検出温度が下閾値に達したことを認識したら、MFC315の設定流量を1000〜4500sccmに設定するとともに、MFC316の設定流量を500〜2500sccmに設定する。更に、コントローラ240がバルブ325,326を開放状態にする。
【0049】
これにより、クリーニングガス及び不活性ガスがガス供給管165,166,167を流通して、処理室201内に導入される。クリーニングガスがガス供給管165,166,167を流通することで、ガス供給管165,166,167内に形成された膜がドライエッチングされて除去される。上記のように予め加熱処理されて膜にクラックが生じているから、膜がエッチングされても、ガス供給管165,166,167の残留応力が急激に変化することはない。そのため、膜のエッチングによるガス供給管165,166,167の破損を防止することができる。
【0050】
処理室201内に導入されたクリーニングガス及び不活性ガスはインナーチューブ204の中空212内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出してガス排気管231から排気される。処理室201内をクリーニングガスが流動することで、ボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205の表面に形成された膜がエッチングされる。
【0051】
クリーニングガス及び不活性ガスが導入されている際に、クリーニングガスの流量がMFC316によって設定流量(500〜2500sccm)に調整され、不活性ガスの流量がMFC315によって設定流量(1000〜4500sccm)に調整される。なお、不活性ガスはクリーニングガスを希釈するためのものである。
【0052】
また、クリーニングガス及び不活性ガスが導入されている際に、コントローラ240が圧力センサ243による検出圧力を入力して、その検出圧力に基づいてAPCバルブ242の開度を調節するフィードバック制御を行う。これにより、処理室201内の圧力が50〜500Paに保たれる。
【0053】
また、クリーニングガス及び不活性ガスが導入されている際に、コントローラ240が温度センサ263による検出温度を入力して、その検出温度に基づきヒータ206の通電具合を調整するフィードバック制御(等温度制御)を行う。これにより、処理室201の温度が350〜550℃に保たれる。
【0054】
コントローラ240がバルブ325,326を開放状態にして、クリーニングガス及び不活性ガスが導入され始めた時から予め設定された時間が経過すると、コントローラ240がバルブ326を閉じた状態にする。これにより、クリーニングガスの供給が止まり、不活性ガスのみが処理室201内に導入されることで、処理室201内が不活性ガスで置換されるとともに、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0055】
続いて、基板処理装置101内の石英部品(インナーチューブ204、アウターチューブ205、ボート217、ノズルを含むガス供給管165,166,167)にSiコーティングを行う。これは、処理時に石英が基板に対して汚染するのを防止する為である。
【0056】
続いて、コントローラ240が圧力制御部236により真空排気装置246を動作させると、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ243で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ242がコントローラ240の圧力制御部236によりフィードバック制御される。
また、コントローラ240が温度制御部238によりヒータ206を発熱させると、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がコントローラ240の温度制御部238によってフィードバック制御される。
続いて、コントローラ240が駆動制御部237によって回転機構254を回転させる。回転機構254により、ボート217が回転されることでウエハ200が回転される。回転機構254の回転はその後も継続される。
【0057】
続いて、コントローラ240がガス流量制御部235によって方向切替弁331の切替位置を切り替え、方向切替弁331によってガス供給管165がバルブ321,322に通じた状態になる。そして、コントローラ240がガス流量制御部235によってMFC311,312の設定流量を設定した後、バルブ321,322を開く。そうすると、シランガスと希釈ガスとの混合ガスがガス供給管165を流通して処理室201内に導入される。処理室201内に導入されたシランガスと希釈ガスは、インナーチューブ204の中空212内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出してガス排気管231から排気される。これらのガスが処理室201内を通過する際に基板処理装置101内の石英部品と接触することにより、石英部品にSiをコーティングする。
【0058】
続いて、コントローラ240がボートエレベータ115を下降動作させる。そうすると、シールキャップ219及びボート217がボートエレベータ115によって下降される。
【0059】
その後、上述の基板処理動作が再び行われる。
【0060】
以上に示された本発明の実施形態によれば、クリーニングガス導入前に昇温処理を行うことによって、原料ガスによってガス供給管165,166,167に形成された膜にクラックが導入され、ガス供給管165,166,167の応力が緩和される。このため、その後、ガス供給管165,166,167内の膜がクリーニングガスによって急激にエッチングされても、ガス供給管165,166,167の応力の解放が急激でない。そのため、ガス供給管165,166,167の破損及び劣化を防止できる。従って、ガス供給管165,166,167の破損によるパーティクル発生を防止できるとともに、ガス供給管165,166,167の交換頻度を減少させることができる。そのため、基板処理装置101のメンテナンス性が向上するとともに、メンテナンスに要するコスト及び時間も低減することができる。
【0061】
また、ガス供給管165,166,167と同様に、エッチングによるボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205の表面の破損及び劣化を防止することができる。
【0062】
本実施形態ではSi系ポリシリコン膜成膜後のClFガスクリーニングについて示したが、気相反応と表面反応を利用して成膜するCVD法を用いて成膜したSiN系膜や、ALD法を用いて成膜したSiN系膜成膜後のFガスクリーニング工程にも適用可能である。
【0063】
また、ガス供給管165,166,167にヒータを固着させ、クリーニングガス導入前の加熱処理においてそのヒータによってガス供給管165,166,167を直接加熱するようにしてもよい。温度センサについても、ガス供給管165,166,167に固着してもよい。同様に、ボート217、インナーチューブ204及びアウターチューブ205の表面にヒータ又は温度センサを固着してもよい。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の好ましい第1の態様によれば、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内のガス供給管に原料ガスを供給して前記処理室内に前記原料ガスを導入し、前記処理室内の基板にシリコン又はシリコン化合物の膜を形成する工程と、
前記処理室内から基板を搬出する工程と、
前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記処理室内の温度を低下させる降温工程と、
前記降温工程後、前記ガス供給管にクリーニングガスを供給して前記処理室内に前記クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0065】
好ましくは、前記第1の態様において、
前記加熱工程において前記処理室内の温度を600〜900℃まで加熱し、
前記降温工程において前記処理室内の温度を350〜550℃に低下させ、
前記クリーニングガス導入工程において前記処理室内の温度を350〜550℃とする。
【0066】
本発明の好ましい第2の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内に設置されたガス供給管と、
少なくともクリーニングガスを前記ガス供給管に供給し、前記クリーニングガスを前記処理室内に導入させるガス供給系と、
前記ヒータにより前記処理室内を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に前記ヒータの発熱を停止し、又は前記ヒータの発熱量を低下させる降温工程と、前記降温工程後に前記ガス供給系により前記クリーニングガスを前記ガス供給管に供給するクリーニングガス供給工程と、を行う制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0067】
好ましくは、前記第2の態様において、
前記基板処理装置が前記処理室内の温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部が、前記加熱工程において前記温度検出部による検出温度を600〜900℃と認識したら、前記降温工程を行い、前記降温工程において前記温度検出部による検出温度を350〜550℃と認識したら、前記クリーニングガス供給工程を行う。
【0068】
本発明の好ましい第3の態様によれば、
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設置されたガス供給管と、クリーニングガスを前記ガス供給管に供給し、前記クリーニングガスを前記処理室内に導入させるガス供給系と、を備える基板処理装置をクリーニングする方法において、
前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記処理室内の温度を低下させる降温工程と、
前記降温工程後、前記ガス供給管にクリーニングガスを供給して前記処理室内に前記クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む基板処理装置のクリーニング方法が提供される。
【0069】
好ましくは、前記第3の態様において、
前記加熱工程において前記処理室内の温度を600〜900℃まで加熱し、
前記降温工程において前記処理室内の温度を350〜550℃に低下させ、
前記クリーニングガス導入工程において前記処理室内の温度を350〜550℃とする。
【0070】
本発明の第4の態様によれば、
基板を処理する処理室と、前記処理室内に設置されたガス供給管と、クリーニングガスを前記ガス供給管に供給し、前記クリーニングガスを前記処理室内に導入させるガス供給系と、を備える基板処理装置をクリーニングする方法において、
前記ガス供給管を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記ガス供給管の温度を低下させる降温工程と、
前記降温工程後、前記ガス供給管にクリーニングガスを供給して前記処理室内に前記クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む基板処理装置のクリーニング方法が提供される。
【0071】
好ましくは、前記第4の態様において、
前記加熱工程において前記ガス供給管の温度を600〜900℃まで加熱し、
前記降温工程において前記ガス供給管の温度を350〜550℃に低下させ、
前記クリーニングガス導入工程において前記処理室内の温度を350〜550℃とする。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】基板処理装置の概略構成図である。
【図2】処理炉の概略構成図である。
【符号の説明】
【0073】
101 基板処理装置
165〜167 ガス供給管
200 基板
201 処理室
203 プロセスチューブ
204 インナーチューブ
205 アウターチューブ
206 ヒータ
240 コントローラ
263 温度センサ
300 ガス供給系
301 原料ガス供給源
302 希釈ガス供給源
303 原料ガス供給源
304 エッチングガス供給源
305 不活性ガス供給源
306 クリーニングガス供給源
311〜316 MFC
321〜326 バルブ
331、333、334 方向切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内のガス供給管に原料ガスを供給して前記処理室内に前記原料ガスを導入し、前記処理室内の基板にシリコン又はシリコン化合物の膜を形成する工程と、
前記処理室内から基板を搬出する工程と、
前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後、前記処理室内の温度を低下させる降温工程と、
前記降温工程後、前記ガス供給管にクリーニングガスを供給して前記処理室内に前記クリーニングガスを導入するクリーニングガス導入工程と、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において前記処理室内の温度を600〜900℃まで加熱し、
前記降温工程において前記処理室内の温度を350〜550℃に低下させ、
前記クリーニングガス導入工程において前記処理室内の温度を350〜550℃とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−93023(P2010−93023A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260630(P2008−260630)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】