説明

半導体装置の製造方法

【課題】 半導体装置の製造方法に関し、炭化シリコン薄膜の機械強度を高め、膜の消失や剥離を防止する。
【解決手段】 ポーラスな誘電率低誘電率絶縁膜上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いて炭化シリコン薄膜を形成する工程と、前記炭化シリコン薄膜を所定パターンにエッチングしてハードマスクを形成する工程と、前記ハードマスクをエッチングマスクとして前記低誘電率絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関するものであり、例えば、32nmノード以降のロジック系半導体集積回路装置をはじめとするLow-k膜を用いた高集積度半導体装置の多層配線形成プロセスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の微細化及び高速化にともなって、多層配線の形成には銅を配線用導電材料として用いるダマシン法が広く用いられてきた。それとともに、層間絶縁膜の実効誘電率の低減が求められ、SiCOによるLow-k膜が広く用いられるようになってきた。
【0003】
このようなLow-k膜としては、環状構造をもった原料をCVD装置に導入し、その構造を生かして空孔を形成することにより、低誘電率の膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、図26を参照して従来の埋込配線構造を説明する。図26は従来の埋込配線の概念的断面図であり、ここでは、バリアメタル膜84を介してCuビア85とCu埋込配線86を一括して形成するデュアルダマシン工程による埋込配線として説明する。層間絶縁膜は、SiCN系のCu拡散防止膜81/ポーラスSiCO系のポーラスLow-k膜82/高密度SiCO系のLow-kキャップ膜83からなり、Cu拡散防止膜81はポーラスLow-k膜82のドライエッチングストップ層も兼ねている。
【0005】
しかし、レジストマスクによって配線トレンチをエッチングするプロセスを採用した場合、アッシングによるレジスト除去の際にポーラスLow-k膜82の側壁が変質し、層間絶縁膜の実効誘電率が増加してしまうという問題が生じている。
【0006】
このような問題を解決するために、レジストのパターンをSiC(炭化シリコン)に転写しSiCハードマスクによってLow-k膜をエッチングすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この提案では、Low-k膜の側壁はレジストのアッシングに曝されないので、Low-k膜が変質するおそれがない。
【0007】
また、Low-k材料に比べてエッチングレートの小さいSiCハードマスクを用いることにより、Low-kのエッチング中にハードマスクのパターン形状が変化することが抑制されるので、良好なエッチング形状が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開公報WO2003/019645
【特許文献2】特開2009−004665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年のLow-k材料は誘電率を下げるためにSiCH結合を膜中に増やすという方法をとっているため、Low-k材料の誘電率が低下するにしたがってSiC(炭化シリコン)がハードマスクとして機能しにくくなっているという問題がある。
【0010】
即ち、SiCH結合を増やすとLow-k膜中のC/Si組成比が2に近づく。一方、ハードマスクに用いるストイキオメトリなSiCはC/Si組成比が2であるので、層間絶縁膜とハードマスクのドライエッチングレートが近くなり、Low-kのエッチングの際にハードマスクのSiCもエッチングされることになる。
【0011】
そのため、上述の特許文献2における提案では、エッチングにより形成されるトレンチの形状が悪化し、配線間リークあるいは配線間TDDB(Time Depndent Dielectrics Breakdown)特性の劣化といった問題が懸念される。
【0012】
また、上述のようにCu埋込配線における層間絶縁膜として誘電率の低いSiCOが用いられてきたが、多層配線の信頼性が低下するという問題がある。即ち、従来のSiCO膜は、機械強度が低いために多層配線プロセスにおけるCMP(化学機械研磨)工程や、パッケージの工程におけるワイヤーボンディング工程などで、応力に耐え切れず膜が破壊し膜剥がれが生じてしまう。
【0013】
例えば、上述の特許文献1の提案では、原料の環状構造をそのまま膜中に形成するために低エネルギーで堆積する必要がある。しかし、高い機械強度の膜を形成するには高エネルギーで強固な結合をもつ膜を堆積しなくてはならないため、特許文献1で提案された手法では高い機械強度をもつ膜を形成するのは困難であった。
【0014】
したがって、本発明は、炭化シリコン薄膜の機械強度を高め、膜の消失や剥離を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示する一観点からは、ポーラスな低誘電率絶縁膜上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いて炭化シリコン薄膜を形成する工程と、前記炭化シリコン薄膜を所定パターンにエッチングしてハードマスクを形成する工程と、前記ハードマスクをエッチングマスクとして前記低誘電率絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0016】
また、開示する別の観点からは、下地上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いたプラズマ化学気相成長法により炭化シリコン薄膜をCuに対する拡散防止膜として成膜する工程と、前記拡散防止膜上に前記原料と同じ原料と酸素含有ガスを用いたプラズマ化学気相成長法によりSiCO薄膜を層間絶縁膜として成膜する工程と、前記層間絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
開示の半導体装置の製造方法によれば、環状構造を分解し、炭化シリコン薄膜中の−C−の強固なネットワークにより高い機械強度が実現でき、膜の消失や剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の半導体装置の基本的製造工程の説明図である。
【図2】低誘電率絶縁膜に対するエッチング選択比のC/Si組成比依存性の説明図である。
【図3】本発明の炭化シリコン薄膜の誘電率のRFパワー依存性の説明図である。
【図4】本発明の各実施例に用いるプラズマCVD装置の概念的構成図である。
【図5】本発明の実施例1の半導体装置の製造工程の途中までの説明図である。
【図6】本発明の実施例1の半導体装置の製造工程の図5以降の説明図である。
【図7】本発明の実施例1の製造工程を適用した半導体装置の概念的構成図である。
【図8】本発明の実施例2の半導体装置の製造工程の途中までの説明図である。
【図9】本発明の実施例2の半導体装置の製造工程の図8以降の説明図である。
【図10】本発明の実施例2の構造による誘電率低減効果の説明図である。
【図11】本発明の実施例3の半導体装置の製造工程の途中までの説明図である。
【図12】本発明の実施例3の半導体装置の製造工程の図11以降の説明図である。
【図13】本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜のエッチング選択比の酸素濃度依存性の説明図である。
【図14】本発明の実施例3のビア歩留りの酸素濃度依存性の説明図である。
【図15】本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜中の酸素濃度の酸素流量比依存性の説明図である。
【図16】本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜の機械的強度の説明図である。
【図17】本発明の実施例4の半導体装置の製造工程の説明図である。
【図18】本発明の実施例4の製造工程のタイムチャートである。
【図19】本発明の実施例4におけるSi-Hピーク強度の後処理時間依存性の説明図である。
【図20】本発明の実施例4におけるSi-OHピーク強度の大気放置時間依存性の説明図である。
【図21】本発明の実施例4における誘電率変化の大気放置時間依存性の説明図である。
【図22】本発明の実施例4におけるSi-Hピーク強度の酸素添加依存性の説明図である。
【図23】本発明の実施例4におけるSi-OHピーク強度の紫外線処理依存性の説明図である。
【図24】本発明の実施例4における誘電率変化の紫外線処理依存性の説明図である。
【図25】本発明の実施例4におけるキュア効果のモデル図である。
【図26】従来の埋込配線の概念的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態の半導体装置の製造工程を説明する。図1は、本発明の実施の形態の半導体装置の製造工程の説明図であり、ここではシングルダマシン工程として説明する。まず、図1(a)に示すように、下地1の上に拡散防止膜2、ポーラスな低誘電率絶縁膜3を成膜したのち、本発明の特徴点である炭化シリコン薄膜4を成膜する。下地1は例えば、高密度SiCO系のLow-kキャップ膜等からなり、また、ポーラスな低誘電率絶縁膜3は、典型的にはポーラスSiCO膜である。
【0020】
炭化シリコン薄膜4は、−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料、典型的には、1−1、ジビニール−1−シラシクロペンタン(DVScP:1−1,divinyl-silacyclopentane)を用いたプラズマCVD法によって成膜する。
【0021】
次いで、図1(b)に示すように、炭化シリコン薄膜4を所定パターンにエッチングしてハードマスク5とする。次いで、図1(c)に示すように、ハードマスク5をエッチングマスクとして低誘電率絶縁膜3をドライエッチングして配線形成用溝6を形成する。
【0022】
次いで、図1(d)に示すように、ハードマスク5を除去する工程を利用して、拡散防止膜2の露出部を除去する。以降は、バリアメタル膜を介してCu埋込層により配線形成用溝6を埋め込んだのち、CMP(化学機械研磨)法により、低誘電率絶縁膜3の表面が露出するまで研磨することにより埋込配線を形成する。
【0023】
従来のSiC膜は-Si-CH-Si-といったネットワークにより形成されるためC/Si組成比が2に近づくのに対し、本発明では-Si-CH-CH-Siといったネットワークが主体なので、炭化シリコン薄膜4中のC/Si比が4に近づく。このため、各種の低誘電率絶縁膜とはC/Si組成比が大きく異なり、エッチングレートが大きく異なることになる。
【0024】
図2は、低誘電率絶縁膜に対するエッチング選択比のC/Si組成依存性の説明図である。図2(a)は、各SiC膜の組成説明図であり、SiCは、本発明による炭化シリコン薄膜(誘電率:3.5)であり、SiCは、DMDMOS(ジメチルヂメトキシシラン:Si(CH(OCH)によるSiCO膜(誘電率:3.7)である。また、SiCは、4MS(テトラメチルシラン:Si(CH)とCOによるSiCO膜(誘電率:4.5)であり、SiCは、4MSとNHによるSiCO膜(誘電率:5.5)である。
【0025】
図2(b)は、CFガス、Cガス及びCガスによるエッチングにおける低誘電率絶縁膜に対する各SiC膜のエッチング選択比を示したものである。図から明らかなように、C/Si組成比の大きい材料はエッチレートが小さく、Low-kとのエッチング選択比が大きい。つまり、エッチング選択比はC/Si組成比で大きく異なり、本発明によりC/Si比を大きくすることでエッチング選択比を大きくすることができる。
【0026】
ここで、
配線形成用溝6の深さをt
ハードマスク5の厚さをt
低誘電率絶縁膜3のエッチングレートをr
ハードマスク5のエッチングレートをr
とすると、ハードマスク5がエッチングマスクとして機能するためには、
/r<t/r
の関係が必要である。
【0027】
エッチング選択比sは、
s=r/r
であるので、
/t<s
の関係が成り立つ。ハードマスク5は最終的に除去しないといけないので、ハードマスク5の除去の際に低誘電率絶縁膜3にダメージが生じないためには、ハードマスク5は薄いほうが好ましい。つまり、tは小さいことが好ましい。この点、本発明ではsが大きくなるのでtを小さくすることが可能である。
【0028】
エッチング中にハードマスク5がなくならないためには、低誘電率絶縁膜3とのエッチング選択比sは少なくとも5であることが望まれる。本発明による炭化シリコン薄膜4は図2(b)に示したようにエッチング選択比が大きく、フロロカーボン系ガスのエッチング条件を最適化することにより選択比5を確保することができる。なお、エッチングレートは、エッチング時の反応室圧力やRFパワーよりもエッチングガスに依存するので、少なくともCガスを使う限りは容易に選択比が確保できる。
【0029】
また、本発明においては、拡散防止膜2も炭化シリコン薄膜4と同じ成膜方法で成膜しても良く、この場合も、拡散防止膜2をハードマスク5と同時にエッチングすることができる。特に、本発明の炭化シリコン薄膜4は上述のように他の拡散防止膜に比べて誘電率が低いので、層間絶縁膜全体の誘電率を低下することができる。
【0030】
図3は、本発明の炭化シリコン薄膜の誘電率のRFパワー依存性の説明図であり、ここでは、13MHzRFパワーを変化させた時の炭化シリコン薄膜の誘電率を示している。なお、他の成膜条件としては、DVScP流量は30cc/分、Heキャリアガス流量は70cc/分、チャンバー圧力は1.0Torr、成膜温度は350℃である。この成膜条件内では、炭化シリコン薄膜4の膜中のC/Si組成比は4を保つ。
【0031】
図3に示すように、誘電率はRFパワーの増大と共に増加することがわかる。したがって、C/Si組成比を4に保ったままで誘電率を変えることができるので、低誘電率絶縁膜3に対するエッチング選択比を変えずに炭化シリコン薄膜4の誘電率を調整することが可能になる。
【0032】
また、−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料、典型的には、1−1、ジビニール−1−シラシクロペンタン(DVScP:1−1,divinyl-silacyclopentane)と酸化ガスを用いたプラズマCVD法によって低誘電率絶縁膜3を成膜しても良い。酸化ガスはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコールでも良いが、典型的にはOガスである。
【0033】
因みに、DVScPとOガスを用いる場合には、O/DVScPの流量比を4以上するとともに、成膜温度を350℃とする。流量比を4以上にすることによって、ビア形成時の歩留まりが大幅に向上し、また、成膜温度を350℃以上にすることによって、同じ屈折率の膜でも機械的強度を高めることができる。
【0034】
この場合は、低誘電率絶縁膜3と炭化シリコン薄膜4とを同一反応室で一連の工程で成膜すれば良い。また、拡散防止膜2も本発明の炭化シリコン薄膜とする場合には、拡散防止膜2も同一反応室で一連の工程で成膜すれば良い。
【0035】
また、炭化シリコン薄膜を拡散防止膜2として用いる場合には、拡散防止膜2の成膜のちに、酸化系のガスでプラズマ処理を行ったり或いは紫外線照射処理を行っても良い。このような処理を行うことによって、拡散防止膜2誘電率の経時的劣化を大幅に低減することが可能になる。
【0036】
なお、この場合も、成膜とプラズマ処理或いは紫外線照射処理を同じ反応室で行えば良い。また、この場合の酸化ガスとしては、酸化反応が穏やかなメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコールを用いることが望ましい。
【0037】
紫外線照射処理の基板温度としては、200℃以上とすることがのぞましい。また、誘電率の経時的変化を大幅に低減するためには、紫外線照射処理のちの炭化シリコン薄膜の収縮率が3%以上になる条件で行うことが望ましく、そのためには、雰囲気としては、酸化性雰囲気、例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気を用いることが望ましい。
【実施例1】
【0038】
以上を前提として、次に、図4乃至図7を参照して、本発明の実施例1の半導体装置の製造方法を説明する。図4は、本発明の各実施例に用いるプラズマCVD装置の概念的構成図であり、このプラズマCVD装置は、枚葉式の一般的な平行平板型の真空チャンバーである。具体的には、真空チャンバー11内には、被処理基板13を載置するとともに加熱する下部電極を兼ねるウェーハステージ12と上部電極を兼ねるシャワーヘッド14が収容されている。
【0039】
この平行平板型の電極には、例えば、27MHzの高周波RF発振機15と例えば、400KHzの低周波RF発振機16とが接続されている。なお、27MHzの高周波のRF発振機15は必要に応じて13MHzのRF発振機に切り替える。
【0040】
原料配管19からは、例えば、常温で液体であるDVScPが原料として気化器17に供給され、気化器17において加熱されて気化される。気化されたDVScPガスは、Heガス配管18から供給されるHeガスをキャリアガスとしてシャワーヘッド14に供給される。なお、Oガス配管20は、SiCO等のOを含む膜を成膜する時や、プラズマ処理や紫外線照射処理を酸化性雰囲気中で行う場合に使用する。
【0041】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の実施例1の半導体装置の製造工程を説明する。ここでは、hp(ハイパフォーマンス)32nmノードのデバイス相当のダマシン工程として説明する。まず、図5(a)に示すように、下地となる高密度SiCOからなるLow-kキャップ膜21上に、トリメチルシラン(Si(CH)とNHガスを用いたプラズマCVD法により、SiCNからなる厚さが、例えば、25nmのCuバリア膜22を成膜する。
【0042】
次いで、プラズマCVD法を用いてCuバリア膜22上に厚さが、例えば、60nmのポーラスSiCOからなるポーラスLow-k膜23と、高密度SiCOからなる厚さが、例えば、40nmのLow-kキャップ膜24を順次成膜する。
【0043】
次いで、DVScPを用いたプラズマCVD法により、Low-kキャップ膜24の上にハードマスクとなる厚さが、例えば、20nmの炭化シリコン薄膜25を成膜する。この時の成膜条件としては、13MHzRFパワーを500mW/cm、400KHzのRFパワーを80W/cmとし、DVScP流量は30cc/分、Heキャリアガス流量は70cc/分、チャンバー圧力は1.0Torr、成膜温度は350℃とする。
【0044】
次いで、図5(b)に示すように、レジストパターン26をマスクとして炭化シリコン薄膜25をエッチングしてハードマスク27を形成する。次いで、図5(c)に示すようにレジストパターン26をアッシングにより除去してハードマスク27を露出させる。この時、ポーラスLow-k膜23はLow-kキャップ膜24で覆われており酸素プラズマに暴露されないので、アッシングでは変質しない。
【0045】
次いで、図5(d)に示すように、ハードマスク27をマスクとするとともにCをエッチングガスとしてLow-kキャップ膜24及びポーラスLow-k膜23を順次選択的にエッチングしてトレンチ28を形成する。
【0046】
次いで、図6(e)に示すように、ハードマスク27をドライエッチングにより除去する。この時、Cuバリア膜22の露出部も同時にエッチングにより除去される。
【0047】
次いで、図6(f)に示すように、スパッタ法により、Ta/TaNからなるバリアメタル膜29を形成する。次いで、無電解CuめっきによりCuめっきシード層を形成したのち、電解めっき法によりCu膜をめっきすることによって、トレンチ28をCu埋込層30により完全に埋め込む。
【0048】
次いで、図6(g)に示すように、CMP法により、Low-kキャップ膜24が露出するまで研磨して余分なバリアメタル膜29及びCu埋込層30を除去して、埋込配線31を形成する。次いで、図6(h)に示すように、再び、プラズマCVD法を用いてSiCNからなるCuバリア膜32を設けることにより一層分の埋込配線構造が完成する。
【0049】
このように、本発明の実施例1においては、ハードマスクとしてC/Si組成比が4の炭化シリコン薄膜を用いているので、ポーラスLow-k膜23に対するエッチング選択比sを5以上にすることができ、それによって、精度の高いトレンチ28の形成が可能になる。
【0050】
また、エッチング選択比sが大きくなることによって、炭化シリコン薄膜25の膜厚を薄くすることができ、それによって、ハードマスク27の除去工程において、ポーラスLow-k膜23に生じるダメージを小さくすることができる。
【0051】
図7は、本発明の実施例1の製造工程を適用した半導体装置の概念的構成図である。まず、シリコン基板41に素子分離絶縁膜42を形成したのち、素子分離絶縁膜42で囲まれた素子形成領域の表面にゲート絶縁膜43を形成する。次いで、ゲート電極材料を堆積させた後、所定幅にエッチングしてゲート電極44を形成する。
【0052】
次いで、ゲート電極44をマスクとして不純物を導入することによってエクステンション領域45を形成する。次いで、全面に絶縁膜を堆積させた後、異方性エッチングによりサイドウォール46を形成し、このサイドウォール46をマスクとして不純物を導入することによって、ソース領域47及びドレイン領域48を形成する。
【0053】
次いで、層間絶縁膜49を形成したのち、ソース領域47及びドレイン領域48に達するビアホールを形成する(なお、図においては、ドレイン領域48側のみを示している)。次いで、TiNからなるバリアメタル50を介してW膜を設け、CMP法で研磨して平坦化することによってWプラグ51を形成する。
【0054】
次いで、図5乃至図6に示した製造工程を適用して埋込配線31を形成する。次いで、デュアルダマシン工程を用いて、Cuビア52とCu埋込配線53を同時に形成する。なお、この場合のCu埋込配線53を埋め込む層間絶縁膜の層構造は埋込配線31を埋め込む層間絶縁膜と同じ積層順位とする。
【0055】
次いで、このようなデュアルダマシン工程を必要とする層数分繰り返したのち、その表面をCuバリア膜32で覆うことによって、多層配線構造の形成工程が完了する。なお、図においては、各Cu埋込配線53とCuビア52との接続を同じ箇所で行っているが、実際には異なった位置で行っている。
【実施例2】
【0056】
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施例2の半導体装置の製造方法を説明するが、この実施例2は実施例1におけるCuバリア膜をDVScPを用いて成膜した炭化シリコン薄膜に置き換えたものである。また、ここでも、hpの32nmノードのデバイス相当のダマシン工程として説明する。
【0057】
まず、図8(a)に示すように、下地となる高密度SiCOからなるLow-kキャップ膜21上に、DVScPを用いたプラズマCVD法により、Cuバリア膜となる厚さが、例えば、15nmの炭化シリコン薄膜54を成膜する。この場合の成膜条件は、実施例1における炭化シリコン薄膜25の成膜条件と同じにする。
【0058】
以降は、実施例1と同様に、プラズマCVD法を用いて炭化シリコン薄膜54上に厚さが、例えば、60nmのポーラスSiCOからなるポーラスLow-k膜23と、高密度SiCOからなる厚さが、例えば、40nmのLow-kキャップ膜24を順次成膜する。次いで、DVScPを用いたプラズマCVD法により、Low-kキャップ膜24の上にハードマスクとなる厚さが、例えば、20nmの炭化シリコン薄膜25を成膜する。
【0059】
次いで、図8(b)に示すように、レジストパターン26をマスクとして炭化シリコン薄膜25をエッチングしてハードマスク27を形成する。次いで、図8(c)に示すようにレジストパターン26をアッシングにより除去してハードマスク27を露出させる。
【0060】
次いで、図8(d)に示すように、ハードマスク27をマスクとするとともにCをエッチングガスとしてLow-kキャップ膜24及びポーラスLow-k膜23を順次選択的にエッチングしてトレンチ28を形成する。
【0061】
次いで、図9(e)に示すように、ハードマスク27をドライエッチングにより除去する。この時、炭化シリコン薄膜54の露出部も同時にエッチングにより除去される。次いで、図9(f)に示すようにTa/TaNからなるバリアメタル膜29を形成したのち、Cu膜をめっきすることによって、トレンチ28をCu埋込層30により完全に埋め込む。
【0062】
次いで、図9(g)に示すように、CMP法により埋込配線31を形成する。次いで、図9(h)に示すように、再び、DVScPを用いたプラズマCVD法によりCuバリア膜となる炭化シリコン薄膜55を設けることにより一層分の埋込配線構造が完成する。以降は、同様の工程を繰り返すことによって図7に示した半導体装置と同様の積層構造が得られる。
【0063】
このように、本発明の実施例2においては、ハードマスクとCuバリア膜を同じ炭化シリコン薄膜で形成しているので、同時にドライエッチングで除去することが容易になる。90nmから65nm、45nmそして32nmノードと集積化がすすむなかで、Cuバリア膜の膜厚は常にトレンチ28の深さのほぼ5分の1を保ってきた。
【0064】
即ち、一般に、Cu埋込配線の側面と底面はバリアメタル膜で保護されているが、上面は保護されていない。そのためCuバリア膜はCuの性能を保つために密度の高い膜、例えば、高密度SiCN膜を使い、配線工程における水分や様々なガスからCuを保護している。しかし、密度が高いと配線間容量が増大するので、トレンチ深さの5分の1程度にとどめている。
【0065】
しかし、炭化シリコン薄膜を用いた場合には誘電率が低いので、膜厚を厚くして保護性能を高めても配線間容量の増加が抑制される。一方、膜厚を薄いままにしておくと、配線間容量をさらに低減することができるので、この事情を図10を参照して説明する。
【0066】
図10は、本発明の実施例2の構造による誘電率低減効果の説明であり、図10(a)は多層配線構造の概念的断面図であり、図10(b)は配線間容量の誘電率依存性の説明図である。図10(a)に示すように、ここでは、プラズマSiO膜61上にSiCN-Cuバリア膜62を介して埋込配線63を形成し、ついで、本発明のCuバリア膜64を設ける。その上にポーラスLow-k膜66,65及びLow-kキャップ膜67を設け、このポーラスLow-k膜65に直行する幅50nmで間隔50nmのCuからなる埋込配線68を設ける。
【0067】
次いで、本発明のCuバリア膜69を介してポーラスLow-k膜72を設け、次いで、その上に埋込配線73を形成し、最後に、本発明のCuバリア膜74を設ける。本発明のCuバリア膜64,69,74について、Cuバリア膜69で代表して説明する。右側の拡大図にしめすように、Cuバリア膜69は、密着層となる誘電率が5.5で厚さが、例えば、5nmのSiCN膜70と、DVScPを用いて成膜した炭化シリコン薄膜71の二層構造になっている。
【0068】
図10(b)は、Cuバリア膜の上層の膜の膜厚を10nm及び20nmにした場合の配線間容量を上層の誘電率を変えてプロットしてある。例えば、厚さが20nmで誘電率が4.5のSiCO膜を、誘電率が3.5の本発明による炭化シリコン薄膜を用いて10nmの厚さに変えると、配線間容量を4.3%低減することができる。
【0069】
仮に、ポーラスLow-k膜の誘電率のみを低減させて同様の配線間容量の低減をするには、誘電率を2.4から2.1以下に変える必要があるが、誘電率の低減に伴う機械強度の低下により、多層配線の機械強度が低下することが懸念される。一方、本発明の実施例2では、Cuバリア膜に炭化シリコン薄膜を用いることで、ポーラスLow-k膜の誘電率を変えることなく配線間容量の低減が可能になる。
【実施例3】
【0070】
次に、図11乃至図16を参照して、本発明の実施例3の半導体装置の製造方法を説明するが、この実施例3は実施例2におけるポーラスLow-k膜及びLow-kキャップ膜をDVScPを用いたSiCO系Low-k膜に置き換えたものである。また、ここでも、hpの32nmノードのデバイス相当のダマシン工程として説明する。
【0071】
まず、図11(a)に示すように、本発明のDVScPを用いたSiCO系Low-k膜56からなる下地上に、DVScPを用いたプラズマCVD法により、Cuバリア膜となる厚さが、例えば、15nmの炭化シリコン薄膜54を成膜する。この場合の成膜条件は、実施例1における炭化シリコン薄膜25の成膜条件と同じにする。
【0072】
引き続いて、同じ真空チャンバーにおいて、厚さが、例えば、80nmのDVScPを用いたSiCO系Low-k膜57とハードマスクとなる厚さが、例えば、15nmの炭化シリコン薄膜25を順次成膜する。
【0073】
SiCO系Low-k膜56,57の成膜条件は、例えば、DVSCP流量を20cc/分、酸素を80cc/分、真空チャンバーの圧力を1Torr、高周波RFRバイアスを27MHzで1.0W/cmとする。また、成膜温度は350℃以上、例えば、390℃とする。
【0074】
次いで、図11(b)に示すように、レジストパターン26をマスクとして炭化シリコン薄膜25をエッチングしてハードマスク27を形成する。次いで、図11(c)に示すようにレジストパターン26をアッシングにより除去してハードマスク27を露出させる。
【0075】
次いで、図11(d)に示すように、ハードマスク27をマスクとするとともにCをエッチングガスとしてSiCO系Low-k膜57を選択的にエッチングしてトレンチ28を形成する。
【0076】
次いで、図12(e)に示すように、ハードマスク27をドライエッチングにより除去する。この時、Cuバリア膜となる炭化シリコン薄膜54の露出部も同時にエッチングにより除去される。次いで、図12(f)に示すようにTa/TaNからなるバリアメタル膜29を形成したのち、Cu膜をめっきすることによって、トレンチ28をCu埋込層30により完全に埋め込む。
【0077】
次いで、図12(g)に示すように、CMP法により埋込配線31を形成する。次いで、図12(h)に示すように、再び、DVScPを用いたプラズマCVD法によりCuバリア膜となる炭化シリコン薄膜55を設けることにより一層分の埋込配線構造が完成する。以降は、同様の工程を繰り返すことによって図7に示した半導体装置と同様の積層構造が得られる。
【0078】
このように、本発明の実施例3においては、ポーラスLow-k膜もDVScPを用いたプラズマCVD法により形成しているので、同じ原料を用いてCuバリア膜、ポーラスLow-k膜及びハードマスクを一連の成膜工程で形成することが可能になる。
【0079】
また、ポーラスLow-k膜は、−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料であるDVScPを用いて、従来より高エネルギーな条件で成膜している。その結果、高強度なSi−(CH−Siのネットワークによる機械的に高強度なポーラスSiCO膜が成膜できる。
【0080】
図13は、本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜のエッチング選択比の酸素濃度依存性の説明図である。ここでは、エッチングガスとしてCFとArの混合ガスを用い、50mTorrの圧力下で、13MHzで0.6W/cmのRFパワーを印加した場合のポーラスSiCO膜中の酸素濃度〔atm%〕とSiCのエッチングレートに対する比をプロットしている。図に示すように、エッチング選択比はポーラスSiCO膜中の酸素濃度に対してリニア−な関係にある。
【0081】
図14は、本発明の実施例3のビア歩留りの酸素濃度依存性の説明図である。ここでは、SiCの膜厚を25nmとし、ポーラスSiCO膜の膜厚を100nmとし、バリアメタルをTa/TaNの積層構造とした140nmピッチのCu二層配線を作成した場合の、ビアの歩留まりの関係を示している。
【0082】
図13に示すように、酸素濃度が低いとエッチング選択比が小さいためオーバーエッチング量が大きくなり、その結果、図14に示すように、バリアメタルの被覆性が悪化しビアの歩留まりが低下する。一方、本発明によるポーラスSiCO膜は、後述するように従来のLow-k膜より機械的強度が高いので、バリアメタルのCMP工程のオーバーポリッシュによりキズなどの機械的なダメージが少ないため歩留まりが向上する。
【0083】
図15は、本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜中の酸素濃度の酸素流量比依存性の説明図である。このとき、真空チャンバーの圧力は1Torrで、RFバイアスは27MHzで1.0W/cmである。図から明らかなように、酸素流量比を4倍以上に調整することにより、ポーラスSiCO膜中の酸素濃度を40atom%以上に調整することができる。その結果、図14に示したように、ビアの歩留りが100%になる。
【0084】
図16は、本発明の実施例3のSiCO系Low-k膜の機械的強度の説明図である。従来のLow-k膜は、原料ガスとしてTMS(テトラメチルシラン)とCOガスを用いたプラズマCVD法により、成膜温度を390℃、圧力を4Torr、RFバイアスを13MHzで1.0W/cmの条件下で成膜したポーラスSiCO膜である。一方、本発明では、上述のようにDVScP流量を20cc/分、酸素を80cc/分、真空チャンバーの圧力を1Torr、高周波RFバイアスは27MHzで1.0W/cmとする。また、成膜温度は350℃と390℃とした。
【0085】
図16から明らかなように、本発明のポーラスLow-k膜は従来のポーラスSiCO膜に比べて高い機械強度を得ることができる。実際、上記の図7のように4層の配線を作成すると、誘電率2.7の従来のLow-k膜と従来の誘電率3.7のSiCO膜を用いた構造では一層目のLow-k膜とCuバリア膜との界面でハガレが生じた。しかし、本発明で誘電率2.5のポーラスSiCOLow-k膜と誘電率3.5の炭化シリコン薄膜からなるCuバリア膜を同じプラズマCVD装置内で連続して成膜すると、全くハガレがみられなかった。
【実施例4】
【0086】
次に、図17乃至図25を参照して、本発明の実施例4の半導体装置の製造方法を説明するが、ここでは、上述の実施例2におけるSiC系のCuバリア膜の成膜工程の後処理工程として説明する。図17(a)に示すように、上記の図9(h)と同様に埋込配線を炭化シリコン薄膜55からなるCuバリア膜で覆う。この場合の成膜条件は、図18のタイムチャートに示すように、DVScP流量を50cc/分、真空チャンバーの圧力を1Torr、高周波RFバイアスは27MHzで700mW/cm、低周波RFバイアスは400KHzで80W/cmとする。また、成膜温度は350℃とする。
【0087】
引き続いて、同じ真空チャンバーにおいて、CHOHを70cc/分流して0.7Torrにした状態で高周波RFバイアスを27MHzで500mW/cm、低周波RFバイアスを400KHzで80W/cm印加してプラズマを発生させる。発生させたCHOH雰囲気58中に基板を30秒程度晒す。その結果、図17(c)に示すように、炭化シリコン薄膜55は、SiCO膜59に変換される。
【0088】
図19は、本発明の実施例4におけるSi-Hピーク強度の後処理時間依存性の説明図である。図から明らかなように、FT-IRでのSi-Hピーク強度は後処理時間とともに減少し、30秒間の後処理によりFT-IRでのSi-Hピーク強度は消失する。
【0089】
図20は、本発明の実施例4におけるSi-OHピーク強度の大気放置時間依存性の説明図である。図から明らかなように、後処理をしない場合には、FT-IRでのSi-OHピーク強度は経時的に増加する。一方、実施例4のように30秒間の後処理を行った場合には、FT-IRでのSi-OHピーク強度は消失し、経時的変化が見られない。なお、このSi-OHピーク強度は、膜に付着した水分の量を表している。
【0090】
図21は、本発明の実施例4における誘電率変化の大気放置時間依存性の説明図である。
図から明らかなように、後処理をしない場合には、誘電率は経時的に増大するが、30秒間の後処理をした場合には、誘電率の経時的変化は殆どみられなかった。図20と図21に示した結果を合わせて考察すると、後処理により水分の吸着量が抑制され、誘電率の経時的変化が抑制されたことがわかる。
【0091】
RFプラズマ後処理のプラズマあるいは加熱温度による下地のダメージを気にする場合、紫外線照射によるUVキュアが有効である。即ち、UVキュアのエネルギーを利用すれば処理温度を低減できる。UVキュアの場合はエネルギーが大きいので、酸化の強い酸素を用いるとSi−Hの結合をSi−O−Siのネットワークに変えることも可能である。
【0092】
図22は、本発明の実施例4におけるSi-Hピーク強度の酸素添加依存性の説明図である。UVキュアおける圧力は50Torrで、窒素に対して5%の酸素を含ませたところ、炭化シリコン薄膜の収縮率(シュリンケージ)が3%以上でSi−Hのピークが消失したが、酸素がなく窒素だけだと、完全にSi−Hのピークは消失しない。
【0093】
図23は、本発明の実施例4におけるSi-OHピーク強度の紫外線処理依存性の説明図である。図に示すように酸素含有雰囲気中でUVキュアを行うと、酸素雰囲気によりSi−H結合がなくなるので、水分の付着が減っている効果が見える。
【0094】
図24は、本発明の実施例4における誘電率変化の紫外線処理依存性の説明図である。図に示すように、酸素雰囲気によりSi−H結合がなくなるので、水分の付着が減って誘電率の上昇がおさえられている。
【0095】
図25は、本発明の実施例4におけるキュア効果のモデル図である。その後の配線工程のエッチングやウエット処理によりSi−H結合がSi−OHになり、そこに水分が吸着して誘電率が上昇する等の悪影響をおよぼす。しかし、本発明の実施例4においては、酸素を含む雰囲気中でのUV処理により、Si−H結合はSi−O−Si結合となり、その後の配線工程のエッチングやウエット処理により変化せず、配線の性能は安定することになる。
【0096】
本発明の炭化シリコン薄膜は、多くの水素を含む構造のために低誘電率の絶縁膜を形成するが、極度に誘電率を下げていくと膜中にはC−H結合のみならずSi−H結合が増加する。Si−H結合は上述のように大気雰囲気中ではSi−OHとなり水分を吸着し、誘電率が増大する。このような大気雰囲気中での特性劣化を防ぐためには、後処理プラズマ処理によりSi−H結合をなくすことが有効であることがわかった。
【0097】
ここで、実施例1乃至実施例4を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を開示する。
(付記1)ポーラスな低誘電率絶縁膜上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いて炭化シリコン薄膜を形成する工程と、
前記炭化シリコン薄膜を所定パターンにエッチングしてハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクをエッチングマスクとして前記低誘電率絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記2)前記炭化シリコン薄膜を、Cuに対する拡散防止膜としても成膜する工程を有する付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)前記拡散防止膜をエッチングする工程において、前記ハードマスクを同時に除去する付記2に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)前記原料が、1−1、ジビニール−1−シラシクロペンタンである付記1乃至付記3のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)前記ハードマスクが酸素を含有しておらず、且つ、前記低誘電率絶縁膜と合わせた等価誘電率が5以下である付記1乃至付記3のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)前記低誘電率絶縁膜のエッチ工程におけるエッチングガスとして、フロロカーボンガスを用いる付記1乃至付記5のいずれか1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)前記フロロカーボンガスが、CFガスである付記6に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)下地上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いたプラズマ化学気相成長法により炭化シリコン薄膜をCuに対する拡散防止膜として成膜する工程と、
前記拡散防止膜上に前記原料と同じ原料と酸素含有ガスを用いたプラズマ化学気相成長法によりSiCO薄膜を層間絶縁膜として成膜する工程と、
前記層間絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記9)前記拡散防止膜と前記層間絶縁膜を同一反応室で成膜する付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)前記原料が、1−1、ジビニール−1−シラシクロペンタンであり、且つ、前記酸素含有ガスが酸素であり、前記酸素ガスの流量を前記原料の流量の4倍以上として成膜する付記8または付記9に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)前記層間絶縁膜の成膜工程における成膜温度を、350℃以上とした付記8乃至付記10のいずれか1に記載の半導体装置。
(付記12)前記酸素含有ガスが、メチルアルコール、エチルアルコール或いはイソプロピルアルコールのいずれかである付記8または付記9に記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)前記層間絶縁膜をエッチングする工程において、エッチングマスクとして、−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いてSiCを主とする組成の炭化シリコン薄膜からなるハードマスクを用いる付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14)前記ハードマスクとなる炭化シリコン薄膜の成膜後に、前記炭化シリコン薄膜を酸化系のガス雰囲気中でプラズマ処理して前記炭化シリコン薄膜を酸化する工程を有する付記1または付記13に記載の半導体装置の製造方法。
(付記15)前記炭化シリコン薄膜の成膜工程と、前記酸化系ガス中でのプラズマ処理とを、同一の反応室で行う付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16)前記酸化系のガスが、メチルアルコール、エチルアルコール或いはイソプロピルアルコールのいずれかである付記14または付記15に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17)下地上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いたプラズマ化学気相成長法により炭化シリコン薄膜を成膜する工程と、
前記炭化シリコン薄膜を酸化性ガス雰囲気中で紫外線処理する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記18)前記酸化性ガス雰囲気が、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気である付記17に記載の半導体装置の製造方法。
(付記19)前記紫外線処理工程における基板温度を200℃以上とする付記17または付記18に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0098】
1 下地
2 拡散防止膜
3 低誘電率絶縁膜
4 炭化シリコン薄膜
5 ハードマスク
6 配線形成用溝
11 真空チャンバー
12 ウェーハステージ
13 被処理基板
14 シャワーヘッド
15 高周波のRF発振機
16 低周波のRF発振機
17 気化器
18 Heガス配管
19 原料配管
20 Oガス配管
21 Low-kキャップ膜
22,32 Cuバリア膜
23 ポーラスLow-k膜
24 Low-kキャップ膜
25 炭化シリコン薄膜
26 レジストパターン
27 ハードマスク
28 トレンチ
29 バリアメタル膜
30 Cu埋込層
31 埋込配線
41 シリコン基板
42 素子分離絶縁膜
43 ゲート絶縁膜
44 ゲート電極
45 エクステンション領域
46 サイドウォール
47 ソース領域
48 ドレイン領域
49 層間絶縁膜
50 バリアメタル
51 Wプラグ
52 Cuビア
53 Cu埋込配線
54,55 炭化シリコン薄膜
56,57 SiCO系Low-k膜
58 CHOH雰囲気
59 SiCO膜
61 プラズマSiO
62 SiCN−Cuバリア膜
63,68,73 埋込配線
64,69,74 Cuバリア膜
65,66,72 ポーラスLow-k膜
67 Low-kキャップ膜
70 SiCN膜
71 炭化シリコン薄膜
81,87 Cu拡散防止膜
82 ポーラスLow-k膜
83 Low-kキャップ膜
84 バリアメタル膜
85 Cuビア
86 Cu埋込配線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスな低誘電率絶縁膜上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いて炭化シリコン薄膜を形成する工程と、
前記炭化シリコン薄膜を所定パターンにエッチングしてハードマスクを形成する工程と、
前記ハードマスクをエッチングマスクとして前記低誘電率絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記炭化シリコン薄膜を、Cuに対する拡散防止膜としても成膜する工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記原料が、1−1、ジビニール−1−シラシクロペンタンである請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
下地上に−CH−結合が環状になってSiと結合し且つ二重結合を含む官能基を有する原料を用いたプラズマ化学気相成長法により炭化シリコン薄膜をCuに対する拡散防止膜として成膜する工程と、
前記拡散防止膜上に前記原料と同じ原料と酸素含有ガスを用いたプラズマ化学気相成長法によりSiCO薄膜を層間絶縁膜として成膜する工程と、
前記層間絶縁膜をエッチングして配線形成用溝或いはビアホールの少なくとも一方を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ハードマスクとなる炭化シリコン薄膜の成膜後に、前記炭化シリコン薄膜を酸化系のガス雰囲気中でプラズマ処理して前記炭化シリコン薄膜を酸化する工程を有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−151057(P2011−151057A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8829(P2010−8829)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】