説明

半導体装置の製造方法

【課題】欠陥を内在する炭化珪素半導体を用いても、大面積半導体装置の高歩留りを安定して実現可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、炭化珪素半導体層表面を研磨する工程と、研磨する工程の後に、炭化珪素半導体層に不純物をイオン注入する工程と、不純物を活性化するための熱処理をする工程と、熱処理をする工程の後に、炭化珪素半導体層表面に第1の熱酸化膜を形成する工程と、第1の熱酸化膜を化学的に除去する工程と、炭化珪素半導体層上に電極層を形成する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素半導体基板を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置では、電流容量を大きくするためにチップ面積を大きくすることが常套手段して行われる。しかしながら、炭化珪素半導体装置においては、未だ基板中の結晶欠陥密度が十分低くできないため、チップ面積を大きくしようとすると途端に歩留りの著しい低下が起こってしまう。このため、大容量素子を高歩留りで製造することが困難であった。
【0003】
結晶欠陥と半導体素子の電気特性との関連は古くから調べられてきた。しかし、特に炭化珪素(SiC)半導体基板のような化合物半導体では、点欠陥、複合欠陥、転位、拡張転位、積層欠陥など欠陥の種類も多い。また、電気特性と一言で言っても不良モードがいくつも存在し、1:1のはっきりした関係が得られにくいのが現状である。
【0004】
非特許文献1には、炭化珪素半導体上に厚い酸化膜を形成する際に発生するピットが、MOSFETの絶縁膜の信頼性を低下させることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.Nakano,T.Nakamura,A.Kamisawa and H.Takasu,“Investigation of Pits Formed at Oxidation on 4H−SiC”,Material Science Forums Vols.600−603(2009)pp377−380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、欠陥を内在する炭化珪素半導体を用いても、大面積半導体装置の高歩留りを安定して実現可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、前記炭化珪素半導体層表面を研磨する工程と、前記研磨する工程の後に、前記炭化珪素半導体層に不純物をイオン注入する工程と、前記不純物を活性化するための熱処理をする工程と、前記熱処理をする工程の後に、前記炭化珪素半導体層表面に第1の熱酸化膜を形成する工程と、前記第1の熱酸化膜を化学的に除去する工程と、前記炭化珪素半導体層上に電極層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記研磨する工程は化学機械研磨(CMP)により行われることが望ましい。
【0009】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記研磨する工程における前記炭化珪素半導体層の研磨量が4μm以上であることが望ましい。
【0010】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記研磨する工程と前記イオン注入する工程との間に、前記炭化珪素半導体層表面に第2の熱酸化膜を形成する工程を有することが望ましい。
【0011】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記第1または第2の熱酸化膜を形成する工程が、水蒸気を含む雰囲気で行われることが望ましい。
【0012】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記研磨する工程の後、前記不純物をイオン注入する工程の前に前記炭化珪素半導体層表面の形状検査を行う工程を有することが望ましい。
【0013】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程の際の成長膜厚を、半導体装置の設計膜厚に対し前記研磨する工程での研磨量を加えた膜厚とすることが望ましい。
【0014】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板上に第1導電型の炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、前記炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、前記欠陥位置に不純物をイオン注入し、第2導電型の不純物層を形成する工程と、前記炭化珪素半導体層上に電極パッドを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記欠陥位置を特定する工程において、導電性原子間力顕微鏡を用いて欠陥位置を特定することが望ましい。
【0016】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記欠陥位置を特定する工程の前に、前記炭化珪素半導体層上に前記電極パッドより面積の小さい複数の金属電極を形成する工程と、前記欠陥位置を特定する工程の後、前記不純物層を形成する工程の前に、前記金属電極を除去する工程を備え、前記欠陥位置を特定する工程において、前記複数の金属電極と前記炭化珪素半導体層間の電流を測定することが望ましい。
【0017】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、前記炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、前記欠陥位置に選択的に絶縁膜を形成する工程と、前記炭化珪素半導体層上および前記絶縁膜上に電極パッドを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記欠陥位置を特定する工程の前に、前記炭化珪素半導体層上に前記電極パッドより面積の小さい複数の金属電極を形成する工程を備え、前記欠陥位置を特定する工程において、前記複数の金属電極と前記炭化珪素半導体層間との電流を測定することが望ましい。
【0019】
上記態様の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜を形成する工程において、前記欠陥位置を特定する工程で特定された欠陥位置の金属電極上に選択的に前記絶縁膜を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、欠陥を内在する炭化珪素半導体を用いても、大面積半導体装置の高歩留りを安定して実現可能な半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【図2A】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図2B】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図2C】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図2D】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図2E】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図2F】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】第2の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【図4A】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4B】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4C】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4D】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4E】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4F】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図4G】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5A】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5B】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5C】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5D】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5E】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5F】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す上面図である。
【図5G】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す上面図である。
【図6】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7A】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7B】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7C】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7D】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図8A】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す図である。
【図8B】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す図である。
【図8C】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明者らは、炭化珪素エピタキシャル基板に形成されたダイオードについて、電極パッド下のエピタキシャル層表面に窪みが存在すると逆方向漏れ電流が大きくなることを見出した。そして、逆方向漏れ電流を増大させる窪みの多くは、表面からの深さが数μm以内であることが分かった。
【0023】
また、本願発明者らは、炭化珪素基板について、不純物イオン注入後の活性化熱処理後の冷却工程において、種々の欠陥が発生していることを見つけた。欠陥の発生は、特に4インチ程度の大口径のウェハにおいて顕著である。これは小口径ウェハ使用時と同様の冷却速度となるような冷却工程をおこなっても、ウェハ口径が大きいためにウェハ中心とウェハ周辺での温度差が大口径ウェハ使用時には大きくなる。そして、その大きな温度差によって生ずる熱応力が臨界せん断応力を超えているからのようである。
【0024】
さらに詳細な観察を行うとエピタキシャルウェハ表面に転位ループが多数発生していたり、ショックレー型拡張転位が生成されてSiC/酸化膜界面に達したりしている様子が観察された。これらの転位ループやショックレー型拡張転位は、既にエピタキシャル層表面に存在した窪みが核となって発生していると考えられる。そして、上述のピットのみならず、これらの転位ループやショックレー型拡張転位等の欠陥がMOSFETの酸化膜の信頼性に影響を与えることが判明している。
【0025】
以下、図面を用いて説明する本発明の実施の形態は、上に記載した本願発明者らに見出された知見に基づくものである。
【0026】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、炭化珪素半導体層表面を研磨する工程と、研磨する工程の後に、炭化珪素半導体層に不純物をイオン注入する工程と、不純物を活性化するための熱処理をする工程と、熱処理をする工程の後に、炭化珪素半導体層表面に第1の熱酸化膜を形成する工程と、第1の熱酸化膜を化学的に除去する工程と、炭化珪素半導体層上に電極層を形成する工程と、を有する。
【0027】
以下、半導体装置として接合障壁制御型ショットキーダイオード(以下、単にショットキーダイオードとも記載)を例に説明する。本実施の形態によれば、エピタキシャル層表面の窪みを除去することで、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる。
【0028】
図1は、本実施の形態の製造方法で製造される半導体装置の断面図である。4H−炭化珪素(0001)Si面の窒素を不純物として含むn型基板10上に、n型基板10よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層12が形成されている。n型エピタキシャル層12表面には、複数のp型イオン注入領域14が形成されている。p型イオン注入領域14は、逆バイアス印加時にショットキー接合面を空乏化させ、逆方向漏れ電流を抑制する。
【0029】
また、n型エピタキシャル層12上には、例えばチタンのショットキー電極材16が形成されている。そして、ショットキー電極材16上には、例えば、アルミニウムのパッド電極18が形成されている。
【0030】
図2A〜図2Dは図1の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図2Aに示すように、例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のn型基板10を準備する。そして、n型基板10上に、エピタキシャル成長により、例えば、n型基板10よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層12を形成する。
【0031】
n型エピタキシャル層12の成長膜厚は例えば、10μm〜15μm程度である。エピタキシャル成長の際の成長膜厚は、ショットキーダイオードの耐圧設計から定められる設計膜厚に対し、後の研磨工程での研磨量を加えた膜厚とすることが望ましい。
【0032】
次に、n型エピタキシャル層12表面を、例えば化学機械研磨(CMP)により研磨する。この研磨は、n型エピタキシャル層12表面に形成される窪みを除去するために行われる。
【0033】
研磨後に生じる加工歪層が少ないこと、研磨後の平坦度が高いことから研磨方法として化学機械研磨を用いることが好ましい。もっとも、化学機械研磨にかえて、例えば機械研磨等の別の方法を採用することも可能である。研磨量が多い場合は、機械研磨等の表面除去速度が速い方法と、化学機械研磨を組み合わせることも有効である。
【0034】
この研磨工程は、熱処理等の工程により、例えば、歪みを核とする新たな欠陥が生じることを避けるため、エピタキシャル成長直後に行うことが望ましい。
【0035】
ここで、研磨する工程における研磨量は、歪を除去する観点から2μm以上であることが望ましい。そして、4μm以上であることがより望ましく、4.5μm以上であればさらに望ましい。
【0036】
研磨量の上限は、歪を除去する観点から特に定められるものではない。しかし、生産性の観点からは、研磨量は10μm以下であることが望ましい。
【0037】
研磨する工程の後、炭化珪素半導体層表面の形状検査を行う工程を有することが望ましい。この形状検査は、公知の欠陥カウンター等を用いて行うことが可能である。形状検査によりウェハの窪み数をカウントする。検査工程を設けることで、追加の研磨の要否の判断や、不良ウェハ抜き取りの判断を行うことが可能である。
【0038】
次に、図2Bに示すように、窪みを除去したn型エピタキシャル層12の表面に熱酸化膜20を形成する。熱酸化膜20は、例えば、水蒸気を含む雰囲気下で、1050℃、2時間の熱処理条件で行う。この熱酸化膜20はいわゆる犠牲酸化膜である。
【0039】
この熱酸化膜20の形成により、研磨後の加工歪層を除去する。もっとも、熱酸化膜20の形成後、ウェハ表面のうねりが、形成前に比べて大きくなり半導体素子特性への影響が懸念される。
【0040】
熱処理条件を水蒸気雰囲気下での処理とすることが、熱酸化膜20形成後のうねりを軽減する上で有効である。したがって、水蒸気雰囲気下での熱酸化膜20の形成を行うことが望ましい。
【0041】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱酸化膜形成時の窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0042】
次に、図2Cに示すように形成した熱酸化膜20を、化学的に除去する。例えば、弗化アンモニウム水溶液で溶解除去する。
【0043】
次に、図2Dに示すように、n型エピタキシャル層12の表面に、p型イオン注入領域14を形成する。このp型イオン注入領域14は、例えば、アルミニウムを不純物として含有する。p型イオン注入領域14は、例えば、アルミニウムの多段イオン注入により形成する。
【0044】
次に、n型エピタキシャル層12の表面をグラファイトキャプ(図示せず)で被覆した後、イオン注入により導入された不純物を活性化するための熱処理を行う。この熱処理は、例えば、アルゴン雰囲気下で、1650℃、10分の熱処理条件で行う。その後、グラファイトキャップを酸素気流中で除去する。
【0045】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱処理時に窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0046】
次に、図2Eに示すように、n型エピタキシャル層12の表面に熱酸化膜22を形成する。熱酸化膜22は、例えば、水蒸気を含む雰囲気下で、1150℃の熱処理条件で約40nm形成する。この熱酸化膜22もいわゆる犠牲酸化膜である。
【0047】
この熱酸化膜22の形成は、イオン注入によるダメージ層を除去する。もっとも、上述のように、熱酸化膜22の形成後、ウェハ表面のうねりが、形成前に比べて大きくなり半導体素子特性への影響が懸念される。
【0048】
熱処理条件を水蒸気雰囲気下での処理とすることが、熱酸化膜22形成後のうねりを軽減する上でも有効である。したがって、水蒸気雰囲気下での熱酸化膜22の形成を行うことが望ましい。
【0049】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱酸化膜形成時に窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0050】
次に、図2Fに示すように形成した熱酸化膜20を、化学的に除去する。例えば、弗化アンモニウム水溶液で溶解除去する。
【0051】
その後、n型エピタキシャル層12の表面にショットキー電極材16を形成し、さらに、その上に、電極パッド18を形成する。
【0052】
例えば、まず、n型エピタキシャル層12の表面にチタンをスパッタ法にて成膜する。次に、その上に、アルミニウムをスパッタ法で成膜する。
【0053】
その後、フォトレジストを塗布し、ブリベイクを施しフォトマスクを用いて露光する。そして、現像後にポストベイクを行う。このようにしてパターン形成したフォトレジストをマスク材に用いて、フォトレジストのない部分のアルミニウム膜を塩素系ドライエッチング装置によりエッチングし、引き続き弗素系ドライエチングでチタンをショットキー電極面にだけ残るようにする。
【0054】
その後、フォトレジストを除去する。このようにして、図1に示す接合障壁制御型ショットキーダイオードが製造される。
【0055】
本実施の形態によれば、エピタキシャル層表面の窪みを除去することで、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる。
【0056】
以下に、本発明の実施例を説明する。まず、4H−炭化珪素の(0001)Si面の3インチウェハのn型基板を準備した。そして、このn+型基板上に、エピタキシャル成長により、n型基板よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層を成長させた。その後、n型エピタキシャル層表面を、研磨量を変えて化学機械研磨(CMP)により研磨した。
【0057】
それぞれの研磨量について、カンデラインスツルメンツ製の光学式自動ウェハ検査装置を欠陥カウンターとして用いて欠陥数を測定した。上述のように、研磨量(表面除去厚み)を変化させるために化学機械研磨を時間管理の下で一旦停止して、その都度検出された欠陥数を調べた。ここでは検出された欠陥が何に起因するものかは特に区別を行なわなかったため、結晶欠陥に起因する種々の表面モフォロジーやピットなども含まれている。結果を表1に示す。
【0058】
(表1)
表面除去厚み(mm) 検出された欠陥数(個)
0.0 73
1.0 51
2.0 36
3.0 26
3.5 23
4.0 20
4.5 18
【0059】
研磨を行わない場合に73個あった欠陥が、2μm削ることで約半分になった。また、4μm削ることで、減少率が飽和しはじめ、特に良好なデバイス特性を実現する上での経験的な判断基準である20個以下の水準を満たすことが分かった。
【0060】
次に、上記結果に基づき、第1の実施の形態で説明した製造方法に従い、接合障壁制御型ショットキーダイオードを製造した。なお、化学機械研磨の研磨量は4.5μm、犠牲酸化はドライ酸化で行っている。比較のため、化学機械研磨を行わない比較例も準備した。
【0061】
そして、実施例、比較例それぞれの逆方向漏れ電流を評価し、歩留まりを求めた。歩留まりを決定するための基準として、逆方向漏れ電流が50A/cmを越えた時の電圧が1900V以上のものを1700V耐圧品の合格と判断してその良品率を歩留まりと定義した。ウェハによるばらつきがあるものの、逆方向の電流-電圧特性を測定した結果、比較例では8−22%の歩留まりであったものが、実施例では86−89%と大きく改善された。
【0062】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、縦型パワーMOSFETの製造方法である。図3は、本実施の形態の製造方法で製造される半導体装置の断面図である。
【0063】
4H−炭化珪素の(0001)Si面のn型基板30の主表面上には、n型基板30よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層32が形成されている。
【0064】
n型エピタキシャル層32の表層部には、例えば、不純物濃度が1×1017/cmのp型ベース領域34が形成されている。また、p型ベース領域34の表層部に、p型ベース領域34よりも浅いn型ソース領域36を有する。そして、p型ベース領域34に挟まれたn型エピタキシャル層32の表層部には、n型表面チャネル層38が形成されている。また、p型ベース領域34の表層部には、p型コンタクト領域35が形成されている。
【0065】
n型エピタキシャル層32のn型表面チャネル層38を含む表面には、例えば熱酸化膜で形成されるゲート酸化膜40が形成されている。ゲート酸化膜40上にゲート電極42が形成されている。そして、ゲート電極42は、たとえば、SiOの層間絶縁膜44で覆われる。
【0066】
層間絶縁膜44上にn型ソース領域36とp型ベース領域34(p型コンタクト領域35)とが電気的に接続されるソース電極46を備えている。また、n+型基板30の裏面には、ドレイン電極48を備えている。
【0067】
図4A〜図4Gは図3の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図4Aに示すように、例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のn型基板30を準備する。そして、n型基板30上に、エピタキシャル成長により、例えば、n型基板30よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層32を形成する。
【0068】
n型エピタキシャル層32の成長膜厚は例えば、10μm〜15μm程度である。エピタキシャル成長の際の成長膜厚は、縦型パワーMOSFETの特性から定められる設計膜厚に対し、後の研磨工程での研磨量を加えた膜厚とすることが望ましい。
【0069】
次に、n型エピタキシャル層32表面を、例えば化学機械研磨(CMP)により研磨する。この研磨は、n型エピタキシャル層32表面に形成される窪みを除去するために行われる。
【0070】
研磨後に生じる加工歪層が少ないこと、研磨後の平坦度が高いことから研磨方法として化学機械研磨を用いることが好ましい。もっとも、化学機械研磨にかえて、例えば機械研磨等の別の方法を採用することも可能である。研磨量が多い場合は、機械研磨等の表面除去速度が速い方法と、化学機械研磨を組み合わせることも有効である。
【0071】
この研磨工程は、熱処理等の工程により新たな欠陥が生じることを避けるため、エピタキシャル成長直後に行うことが望ましい。
【0072】
ここで、研磨する工程における研磨量は、歪を除去する観点から3μm以上であることが望ましい。そして、4μm以上であることがより望ましく、4.5μm以上であればさらに望ましい。
【0073】
研磨量の上限は、歪を除去する観点から特に定められるものではない。しかし、生産性の観点からは10μm以下であることが望ましい。
【0074】
研磨する工程の後、炭化珪素半導体層表面の形状検査を行う工程を有することが望ましい。この形状検査は、公知の欠陥カウンター等を用いて行うことが可能である。形状検査によりウェハの窪み数をカウントする。検査工程を設けることで、追加の研磨の要否の判断や、不良ウェハ抜き取りの判断を行うことが可能である。
【0075】
次に、図4Bに示すように、窪みを除去したn型エピタキシャル層32の表面に熱酸化膜50を形成する。熱酸化膜50は、例えば、水蒸気を含む雰囲気下で、1050℃、2時間の熱処理条件で行う。この熱酸化膜50はいわゆる犠牲酸化膜である。
【0076】
この熱酸化膜50の形成は、研磨後の加工歪層を除去する。もっとも、熱酸化膜50の形成後、ウェハ表面のうねりが、形成前に比べて大きくなり半導体素子特性、特にMOSFETのゲート絶縁膜40の信頼性への影響が懸念される。
【0077】
熱処理条件を水蒸気雰囲気下での処理とすることが、熱酸化膜50形成後のうねりを軽減する上で有効である。したがって、水蒸気雰囲気下での熱酸化膜50の形成を行うことが望ましい。
【0078】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱酸化膜形成時に窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0079】
次に、図4Cに示すように形成した熱酸化膜50を、化学的に除去する。例えば、弗化アンモニウム水溶液で溶解除去する。
【0080】
次に、n型エピタキシャル層32の表面に、p型ベース領域34を形成する。より詳細には、n型エピタキシャル層32上にフォトレジストを塗布する。そして、プリベイクを行った後、アライメントマークを形成するためにガラスマスクを用いて露光し、現像する。そして、ポストベイクを行った後、反応性イオンエッチングを行い、アライメントマークをパターニングする。
【0081】
その後、フォトレジストを除去してから、CVD法でSiO膜を堆積させた後に再度フォトレジストを塗布する。プリベイクを行った後に、このSiO膜をパターニングするためにガラスマスクを用いて露光し、現像する。そして、ポストベイクを行った後、反応性イオンエッチングを行い、後にp型ベース領域34となる領域を露出させる。
【0082】
この状態でp型不純物である、例えばアルミニウム(Al)を、SiO膜をマスク材としてイオン注入する。この時の条件は、基板温度を500℃とし、ドーズ量を3×1014/cmとする。このようにして、p型ベース領域34が形成される。その後、マスク材として用いたSiO膜は除去する。
【0083】
次に、n型ソース領域36を形成する。より詳細には、CVD法でSiO膜を堆積させた後に再度フォトレジストを塗布する。プリベイクを行った後に、このSiO膜をパターニングするためにガラスマスクを用いて露光し、現像する。そして、ポストベイクを行った後、反応性イオンエッチングを行い、後にn型ソース領域36となる領域を露出させる。
【0084】
この状態でn型不純物である、例えばリン(P)を、SiO膜をマスク材としてイオン注入する。この時の条件は、基板温度を500℃とし、ドーズ量を1×1015/cmとする。このようにして、n型ソース領域36が形成される。その後、マスク材として用いたSiO膜は除去する。
【0085】
次に、n型表面チャネル層38を形成する。より詳細には、CVD法でSiO膜を堆積させた後に再度フォトレジストを塗布する。プリベイクを行った後に、このSiO膜をパターニングするためにガラスマスクを用いて露光し、現像する。そして、ポストベイクを行った後、反応性イオンエッチングを行い、後にn型表面チャネル層38となる領域を露出させる。
【0086】
この状態でn型不純物である、例えば窒素(N)を、SiO膜をマスク材としてイオン注入する。この時の条件は、例えば、基板温度を500℃とし、ドーズ量を4×1014/cmとする。このようにして、n型表面チャネル層38が形成される。その後、マスク材として用いたSiO膜は除去する。
【0087】
次に、p型ベース領域34の表層部にp型コンタクト領域35を形成する。より詳細には、CVD法でSiO膜を堆積させた後に再度フォトレジストを塗布する。プリベイクを行った後に、このSiO膜をパターニングするためにガラスマスクを用いて露光し、現像する。そして、ポストベイクを行った後、反応性イオンエッチングを行い、後にp型ベース領域34内でソース電極36と接触することになる領域のみを露出させる。
【0088】
この状態でp型不純物である、例えばアルミニウムを、SiO膜をマスク材としてイオン注入する。この時の条件は、基板温度を500℃とし、ドーズ量を1×1015/cmとする。このようにして、p型コンタクト領域35が形成される。その後、マスク材として用いたSiO膜は除去する。
【0089】
次に、n型エピタキシャル層32にイオン注入された不純物を活性化させる。まず、n型エピタキシャル層22の表面をグラファイトキャプ(図示せず)で被覆する。グラファイトキャプは、表面にフォトレジストを塗布した後にプリベイクによって溶剤を除去して硬化させてから、800℃で60分保持してグラファイト化することによって形成する。
【0090】
その後、イオン注入により導入された不純物を活性化するための熱処理を行う。この熱処理は、例えば、アルゴン雰囲気下で、1650℃、10分の熱処理条件で行う。その後、グラファイトキャップを酸素気流中で除去した後、酸素アッシングを行って残渣が残らないようにする。
【0091】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱処理時に窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0092】
次に、図4Dに示すように、n型エピタキシャル層32の表面に熱酸化膜52を形成する。熱酸化膜52は、例えば、水蒸気を含む雰囲気下で、1150℃の熱処理条件で約40nm形成する。この熱酸化膜52もいわゆる犠牲酸化膜である。
【0093】
この熱酸化膜52の形成は、イオン注入によるダメージ層を除去する。もっとも、上述のように、熱酸化膜52の形成後、ウェハ表面のうねりが、形成前に比べて大きくなり半導体素子特性への影響が懸念される。
【0094】
熱処理条件を水蒸気雰囲気下での処理とすることが、熱酸化膜52形成後のうねりを軽減する上でも有効である。したがって、水蒸気雰囲気下での熱酸化膜52の形成を行うことが望ましい。
【0095】
先の研磨工程において、表面の窪みが除去されているため、この熱酸化膜形成時に窪みを核とする欠陥の発生が抑制される。
【0096】
次に、図4Eに示すように形成した熱酸化膜50を、化学的に除去する。例えば、弗化アンモニウム水溶液で溶解除去する。
【0097】
次に、図4Fに示すように、n型エピタキシャル層32の表面にゲート絶縁膜40を形成する。ゲート絶縁膜40は、例えば、ドライ雰囲気下で、1100℃の熱処理条件で形成する。温度を下げる際に、例えば、水素と酸素によるパイロジェニック法によってウェット雰囲気にすることで、効果的に酸化膜の界面準位密度が減少し、チャネル移動度を高くすることができる。
【0098】
次に、ゲート絶縁膜40の上に、減圧CVD法によって、ポリシリコンを基板温度600℃で堆積する。ポリシリコンをパターニングすることで、ゲート電極42を形成する。
【0099】
その後、図4Gに示すように、ゲート絶縁膜40の不要部分を除去した後、ゲート絶縁膜40上に、低温堆積酸化膜、例えばSiOよりなる層間絶縁膜44を堆積する。その後、1000℃のアニールを行う。
【0100】
その後、室温でのスパッタによりソース電極46とドレイン電極を形成した後、1000℃でシンターする。このようにして、図3に示す縦型パワーMOSFETが製造される。
【0101】
本実施の形態によれば、エピタキシャル層表面の窪みを除去することで、後の熱処理中に発生する表面近傍の転位ループや拡張転位などの核となる欠陥を低減させる。したがって、特にゲート絶縁膜の信頼性に優れた縦型パワーMOSFETを製造することが可能となる。
【0102】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板上に第1導電型の炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、欠陥位置に不純物をイオン注入し、第2導電型の不純物層を形成する工程と、炭化珪素半導体層上に電極パッドを形成する工程と、を有する。
【0103】
以下、半導体装置として接合障壁制御型ショットキーダイオード(以下、単にショットキーダイオードとも記載)を例に説明する。本実施の形態によれば、製造工程中に、素子形成後に漏れ電流(リーク電流)源となる欠陥位置を特定する。そして、製造工程中にこの箇所を不活性化する。すなわち素子領域として機能しないようにする。これにより、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる。
【0104】
なお、素子形成後に漏れ電流(リーク電流)源となる欠陥とは、例えば、結晶欠陥や、この結晶欠陥等に起因する炭化珪素半導体層表面の凹凸である。
【0105】
図5A〜図5Eは、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図5F、図5Gは、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す上面図である。まず、図5Aに示すように、例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のNを不純物として含むn型基板60を準備する。そして、n型基板60上に、エピタキシャル成長により、例えば、n+型基板60よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層62を形成する。
【0106】
n型エピタキシャル層62の成長膜厚は例えば、10μm〜15μm程度である。エピタキシャル成長の際の成長膜厚は、ショットキーダイオードの耐圧設計から定められる設計膜厚を基に設定される。
【0107】
その後、n型エピタキシャル層62上に、例えば、公知のリソグラフィー技術およびRIE技術を用いて合わせマークを形成する。
【0108】
次に、炭化珪素半導体層であるn型エピタキシャル層62のリーク電流源となる欠陥位置を特定する工程を、導電性原子間力顕微鏡を用いて行う。例えば、n型エピタキシャル層62の表面を導電性原子間力顕微鏡の探針を走査してn型エピタキシャル層62との容量をモニタし、異常個所を素子形成後に漏れ電流(リーク電流)源となる欠陥位置として特定する。欠陥位置は、例えば、合わせマークからの座標によって特定する。これにより、電流マッピングデータを形成する。
【0109】
次に、図5Bに示すように、後の不純物イオン注入のマスクとなるシリコン酸化膜64を、例えばCVD法により、例えば、1.5μm程度堆積する。そして、ラインアンドスペース状のフォトレジスト(図示せず)を公知のステッパにより、パターン形成する。このパターンは接合障壁制御型ショットキーダイオード構造におけるp型イオン注入領域のパターンとなる。このフォトレジストをマスクに、シリコン酸化膜64を、例えば、RIE法によりエッチングする。
【0110】
次に、フォトレジストを剥離する。その後、図5Cに示すように、先に得られた電流マッピングデータに基づき、ステッパを用いて、特定された欠陥位置を、例えば、直径10μmの丸いパターンで開口するように、フォトレジスト66をパターニングする。このパターニングは、例えば、10μm角程度の開口部を有するマスクを準備し、このマスクを開口部のサイズと同じピッチで移動させて行き、特定された欠陥個所の部分においてのみ露光することで形成することが可能である。
【0111】
その後、このフォトレジスト66をマスクに、シリコン酸化膜64を、例えば、RIE法によりエッチングする。そして、フォトレジストマスク66を剥離する。
【0112】
なお、ここではp型イオン注入領域のパターンと、欠陥位置のパターンとを別のフォトレジストをマスクに形成している。しかし、例えば、同一のフォトレジストを2重露光することで両方のパターンを単一のフォトレジストで形成すれば、リソグラフィー工程を一つにできる。また、RIEも一度でシリコン酸化膜54をエッチングができるため、工程の簡略化を図ることが可能になる。
【0113】
次に、図5Dに示すように、シリコン酸化膜64をマスクに、例えば、アルミニウムを多段イオン注入する。これにより、接合障壁ショットキーダイオード構造のためのp型イオン注入領域68と、欠陥位置を不活性化するためのp型の不純物層70を形成する
【0114】
図5Fは、p型イオン注入領域68とp型の不純物層70のパターンの上面図である。p型イオン注入領域68とp型の不純物層70は、例えば、1×1017/cmの濃度となっている。なお、p型の不純物層70のパターンは、必ずしも、図5Fに示すように円形である必要はない。例えば、図5Gに示すようなライン状のパターンであっても構わない。
【0115】
次に、図5Eに示すように、シリコン酸化膜64を除去し、n型エピタキシャル層62の表面にショットキー電極材72を形成し、さらに、その上に、電極パッド74を形成する。
【0116】
例えば、まず、n型エピタキシャル層62の表面にチタンをスパッタ法にて成膜する。次に、その上に、アルミニウムをスパッタ法で成膜する。
【0117】
その後、フォトレジストを塗布し、ブリベイクを施しフォトマスクを用いて露光する。そして、現像後にポストベイクを行う。このようにしてパターン形成したフォトレジストをマスク材に用いて、フォトレジストのない部分のアルミニウム膜を塩素系ドライエッチング装置によりエッチングし、引き続き弗素系ドライエチングでチタンをショットキー電極面にだけ残るようにする。
【0118】
その後、フォトレジストを除去する。このようにして本実施の形態の接合障壁制御型ショットキーダイオードが製造される。
【0119】
本実施の形態によれば、製造工程中に漏れ電流源となる欠陥位置にp型不純物層を形成することで、この箇所が不活性化される。このため、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる。
【0120】
実施例として、上記製造工程により、活性領域が10mm×10mmの大面積接合障壁制御型ショットキーダイオードを製造した。この歩留りは80%以上となった。これに対し、比較例として、欠陥位置を特定する工程と、その欠陥位置に不純物層を形成する工程を省略して製造した大面積接合障壁制御型ショットキーダイオードの歩留りは0%であった。したがって、本実施の形態により、大幅な歩留り向上が実現できることが明らかになった。
【0121】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第3の実施の形態が導電性原子間力顕微鏡で欠陥位置を特定するのと異なり、炭化珪素半導体層上に設けられる金属電極を用いて欠陥位置を特定する。すなわち、欠陥位置を特定する工程の前に、炭化珪素半導体層上に接合障壁制御型ショットキーダイオードの電極パッドより面積の小さい複数の金属電極を形成する工程を備え、欠陥位置を特定する工程において、複数の金属電極と炭化珪素半導体層間との電流を測定する。以下、第3の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0122】
図6は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のNを不純物として含有するn型基板60を準備する。そして、n型基板50上に、エピタキシャル成長により、例えば、n型基板60よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層62を形成する。その後、例えば、n型エピタキシャル層62の表面にアルミニウムをスパッタ法で成膜する。その後、フォトレジストを塗布し、ブリベイクを施しフォトマスクを用いて露光する。そして、現像後にポストベイクを行う。
【0123】
このようにしてパターン形成したフォトレジストをマスク材に用いて、フォトレジストのない部分のアルミニウム膜を塩素系ドライエッチング装置によりエッチングする。このようにして、上に接合障壁制御型ショットキーダイオードの電極パッドより面積の小さい複数の金属電極76を形成する。
【0124】
次に、複数の金属電極76と炭化珪素半導体層であるn型エピタキシャル層62間との電流を測定する。具体的には、例えば、金属電極76の一つを一方の電極とし、n型基板60を他方の電極として、電流を測定する。この測定により電流値の異常個所を欠陥位置として特定する。この測定により、電流マッピングデータを形成する。
【0125】
その後、金属電極76をエッチングにより除去する。その後、特定した欠陥位置に不活性化のためのp型不純物層を設ける工程については、第3の実施の形態と同様である。
【0126】
なお、本実施の形態においては、欠陥位置を同定するための金属電極76の形成が、後のデバイス特性に与える影響を最小化すること望ましい。すなわち、金属電極76形成によりn型エピタキシャル層62表面に生じた凹凸や、ダメージを除去することが望ましい。
【0127】
したがって、金属電極76をエッチングにより除去した後に、犠牲酸化を例えば、50nm程度行うことが望ましい。または、化学的機械研磨(CMP)により表面を研磨することが望ましい。
【0128】
本実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0129】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第3の実施の形態がp型不純物層により漏れ電流源となる欠陥位置を不活性化するのに対し、絶縁膜を欠陥位置に選択的に形成することで、欠陥位置を不活性化する点で異なっている。すなわち、炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、欠陥位置に選択的に絶縁膜を形成する工程と、炭化珪素半導体層上および絶縁膜上に電極パッドを形成する工程と、を有する。以下、第3の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0130】
図7A〜図7Dは、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図7Aに示すように、例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のNを不純物として含有するn型基板60を準備する。そして、n型基板60上に、エピタキシャル成長により、例えば、n型基板60よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層62を形成する。
【0131】
その後、n型エピタキシャル層62上に、例えば、公知のリソグラフィー技術およびRIE技術を用いて合わせマークを形成する。
【0132】
次に、炭化珪素半導体層であるn型エピタキシャル層62のリーク電流源となる欠陥位置を特定する工程を、導電性原子間力顕微鏡を用いて行う。
【0133】
次に、後の不純物イオン注入のマスクとなるシリコン酸化膜64を、例えばCVD法により、例えば、1.5μm程度堆積する。そして、ラインアンドスペース状のフォトレジスト(図示せず)を公知のステッパにより、パターン形成する。このパターンは接合障壁制御型ショットキーダイオード構造におけるp型イオン注入領域のパターンとなる。このフォトレジストをマスクに、シリコン酸化膜64を、例えば、RIE法によりエッチングする。
【0134】
その後、このフォトレジストをマスクに、シリコン酸化膜64を、例えば、RIE法によりエッチングする。そして、フォトレジストマスク66を剥離する。
【0135】
次に、図7Bに示すように、シリコン酸化膜64をマスクに、例えば、アルミニウムを多段イオン注入する。これにより、接合障壁制御型ショットキーダイオード構造のためのp型イオン注入領域68を形成する。
【0136】
その後、図7Cに示すように、先に得られた電流マッピングデータに基づき、特定された欠陥位置に例えば、シリコン酸化膜の絶縁膜78を形成する。この絶縁膜78の形成は、例えば、インクジェット方式により、欠陥位置上をシリコン酸化膜で被覆することで形成される。
【0137】
なお、絶縁膜78の形成は、インクジェット方式に限らず、例えば、n型エピタキシャル層62上にCVD法で堆積した、例えばシリコン酸化膜を、特定された欠陥位置だけ残してパターニングすることでも形成可能である。
【0138】
例えば、ステッパを用いて、特定された欠陥位置を、例えば、10μm□のパターンで残すように、フォトレジスト66をパターニングする。このパターニングは、例えば、10μm角程度の開口部を有するマスクを準備し、このマスクを10μm程度のピッチで移動させ、特定された欠陥個所の部分においてのみ露光しないことで形成することが可能である。
【0139】
次に、図7Dに示すように、n型エピタキシャル層62上および絶縁膜78上にショットキー電極材72を形成し、さらに、その上に、電極パッド74を形成する。
【0140】
その後、ショットキー電極材72と電極パッド74をパターニングして本実施の形態の接合障壁制御型ショットキーダイオードが製造される。
【0141】
本実施の形態によれば、製造工程中に漏れ電流源となる欠陥位置に絶縁膜選択的に形成することで、この箇所が不活性化される。このため、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる
【0142】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第4の実施の形態が漏れ電流源となる欠陥位置を同定するために製造工程途中で用いた、複数の金属電極を除去することなく、最終的なデバイス構造として利用する点で異なっている。また、欠陥位置を不活性化するために用いる絶縁膜を炭化珪素半導体層表面ではなく金属電極上に形成する。すなわち、絶縁膜を形成する工程において、欠陥位置を特定する工程で特定された欠陥位置の金属電極上に絶縁膜を選択的に形成する。以下、第4、第5の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0143】
図8A〜図8Cは、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す図である。それぞれの図において、上図は断面図、下図は上面図である。なお、上図は下図のA−A断面図である。ここでは、10mm×10mm程度の大面積接合障壁型ショットキーダイオード80を形成する場合を例に説明する。
【0144】
まず、図8Aに示すように、例えば、4H−炭化珪素の(0001)Si面のNを不純物として含有するn型基板60を準備する。そして、n型基板60上に、エピタキシャル成長により、例えば、n型基板60よりも低い窒素濃度のn型エピタキシャル層62を形成する。
【0145】
この、n型エピタキシャル層62上に公知の方法で、大面積接合障壁型ショットキーダイオード80の形成される領域に、例えば、300μm〜1mm□程度の小さな接合障壁型ショットキーダイオード82を形成する。図示はしないが、この接合障壁型ショットキーダイオード82には、個々にRESURFやガードリング等の接合終端構造が作りこまれる。
【0146】
また、図示しないが、大面積接合障壁型ショットキーダイオード80の周辺部には、チャネルストップ層としてn型のP(リン)のイオン注入層が形成される。このチャネルストップ層により、大面積接合障壁型ショットキーダイオード80の耐圧劣化を防止している。
【0147】
次に、それぞれの金属電極84と炭化珪素半導体層であるn型エピタキシャル層62間との逆方向電流を測定する。具体的には、例えば、金属電極84の一つを一方の電極とし、n型基板60を他方の電極として、逆方向電流を測定する。この測定により、接合障壁型ショットキーダイオード82を良品素子82aと不良品素子82bに選別する。この不良品素子82bが、漏れ電流源となる欠陥位置である。
【0148】
その後、図8Bに示すように、先に得られた良品素子82aと不良品素子82bの情報に基づき、特定された欠陥位置である不良品素子82bの金属電極84上に、例えば、シリコン酸化膜の絶縁膜78を形成する。この絶縁膜78の形成は、例えば、インクジェット方式により、欠陥位置上をシリコン酸化膜で被覆することで形成される。
【0149】
なお、絶縁膜78の形成は、インクジェット方式に限らず、例えば、金属電極84上にCVD法で堆積した例えばシリコン酸化膜を、特定された欠陥位置だけ残してパターニングすることでも形成可能である。
【0150】
例えば、ステッパを用いて、特定された欠陥位置を、接合障壁型ショットキーダイオード82と同サイズのパターンで残すように、フォトレジスト66をパターニングする。このパターニングは、例えば、接合障壁型ショットキーダイオード82と同サイズの開口部を有するマスクを準備し、このマスクを接合障壁型ショットキーダイオード82と同サイズのピッチでステップアンドリピートし、特定された欠陥個所すなわち不良品素子82bの部分においてのみ露光しないことで形成することが可能である。
【0151】
次に、図8Cに示すように逆スパッタで表面を清浄化した後、例えばアルミニウムの電極パッド74をスパッタとその後のパターニングで形成する。このようにして、本実施の形態の大面積接合障壁制御型ショットキーダイオード80が製造される。
【0152】
本実施の形態によれば、製造工程中に漏れ電流源となる欠陥位置に絶縁膜選択的に形成することで、この箇所が不活性化される。このため、ショットキーダイオードの逆方向漏れ電流が抑制され、高い歩留まりのショットキーダイオードを製造することが可能となる。
【0153】
また、本実施の形態では、最終製品とほぼ同様のデバイス特性が評価可能な接合障壁型ショットキーダイオードを形成して、欠陥位置を同定する。すなわち、良品素子である接合障壁型ショットキーダイオードをだけを集めてワンチップモジュール化する構成となっている。したがって、極めて高い確度で製品時に漏れ電流源となる欠陥位置を排除することが可能となる。よって、高い製品歩留りを実現することが可能となる。
【0154】
また、通常の大面積接合障壁型ショットキーダイオードの製造方法と比較しても、増加する製造工程が少ないため、製造コストの上昇も最小限に抑制することが可能となる。
【0155】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、半導体装置、半導体装置の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる半導体装置、半導体装置の製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0156】
例えば、ショットキー電極材としてチタンを例に説明したが、別の金属材料であるニッケル、タングステンやモリブデンなどを適用することも可能である。
【0157】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置、半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0158】
10 n型基板
12 n型エピタキシャル層
20 熱酸化膜
22 熱酸化膜
30 n型基板
32 n型エピタキシャル層
50 熱酸化膜
52 熱酸化膜
60 n型基板
62 n型エピタキシャル層
70 p型の不純物層
74 電極パッド
76 金属電極
78 絶縁膜
80 大面積接合障壁型ショットキーダイオード
82 接合障壁型ショットキーダイオード
84 金属電極
82a 良品素子
82b 不良品素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、
前記炭化珪素半導体層表面を研磨する工程と、
前記研磨する工程の後に、前記炭化珪素半導体層に不純物をイオン注入する工程と、
前記不純物を活性化するための熱処理をする工程と、
前記熱処理をする工程の後に、前記炭化珪素半導体層表面に第1の熱酸化膜を形成する工程と、
前記第1の熱酸化膜を化学的に除去する工程と、
前記炭化珪素半導体層上に電極層を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨する工程は化学機械研磨(CMP)により行われることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨する工程における前記炭化珪素半導体層の研磨量が4μm以上であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記研磨する工程と前記イオン注入する工程との間に、前記炭化珪素半導体層表面に第2の熱酸化膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1または第2の熱酸化膜を形成する工程が、水蒸気を含む雰囲気で行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記研磨する工程の後、前記不純物をイオン注入する工程の前に前記炭化珪素半導体層表面の形状検査を行う工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程の際の成長膜厚を、半導体装置の設計膜厚に対し前記研磨する工程での研磨量を加えた膜厚とすることを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
炭化珪素半導体基板上に第1導電型の炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、
前記炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、
前記欠陥位置に不純物をイオン注入し、第2導電型の不純物層を形成する工程と、
前記炭化珪素半導体層上に電極パッドを形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記欠陥位置を特定する工程において、導電性原子間力顕微鏡を用いて欠陥位置を特定することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記欠陥位置を特定する工程の前に、前記炭化珪素半導体層上に前記電極パッドより面積の小さい複数の金属電極を形成する工程と、
前記欠陥位置を特定する工程の後、前記不純物層を形成する工程の前に、前記金属電極を除去する工程を備え、
前記欠陥位置を特定する工程において、前記複数の金属電極と前記炭化珪素半導体層間の電流を測定することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
炭化珪素半導体基板上に炭化珪素半導体層をエピタキシャル成長する工程と、
前記炭化珪素半導体層の漏れ電流源となる欠陥位置を特定する工程と、
前記欠陥位置に選択的に絶縁膜を形成する工程と、
前記炭化珪素半導体層上および前記絶縁膜上に電極パッドを形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記欠陥位置を特定する工程の前に、前記炭化珪素半導体層上に前記電極パッドより面積の小さい複数の金属電極を形成する工程を備え、
前記欠陥位置を特定する工程において、前記複数の金属電極と前記炭化珪素半導体層間との電流を測定することを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁膜を形成する工程において、前記欠陥位置を特定する工程で特定された欠陥位置の金属電極上に選択的に前記絶縁膜を形成することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。




【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公開番号】特開2011−60939(P2011−60939A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207940(P2009−207940)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】