説明

半導体装置の製造方法

【課題】 半導体装置のビアホールにおける残渣物の残留を抑制することができ、かつ、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、GaN系半導体層(11)が設けられたSiC基板(10)の第1主面の反対側の第2主面上にCuあるいはCu合金からなり部分的に開口を有するエッチングマスク(50)を形成する工程と、エッチングマスク(50)を利用したドライエッチングを実施し、底部の厚さ方向にGaN系半導体層(11)が残存したビアホールを形成する第1エッチング工程と、第1エッチング工程の後にエッチングマスク(50)を除去する除去工程と、除去工程の後に残存したGaN系半導体層(11)に対してドライエッチングを実施する第2エッチング工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)−FET(Fieled Effect Transistor)のビアホール形成において、基板側からNiCr(ニッケルクロム)、Au(金)、Ni(ニッケル)の順に積層されたマスクをエッチングマスクとしてエッチングしていた。この方法では、エッチングガスのフッ素系ガス(例えば、SF)とエッチングマスクのNiとが混ざり合って、ビアホールの側壁にNiフッ化物が残渣物として残留してしまう。そこで、Niマスクの代わりにCu(銅)マスクをエッチングマスクとして用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−98456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、Cuが半導体汚染の原因になってしまう。その結果、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等の問題が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、半導体装置のビアホールにおける残渣物の残留を抑制することができ、かつ、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、GaN系半導体層が設けられたSiC基板の第1主面の反対側の第2主面上にCuあるいはCu合金からなり部分的に開口を有するエッチングマスクを形成する工程と、エッチングマスクを利用したドライエッチングを実施し、底部の厚さ方向にGaN系半導体層が残存したビアホールを形成する第1エッチング工程と、第1エッチング工程の後にエッチングマスクを除去する除去工程と、除去工程の後に残存したGaN系半導体層に対してドライエッチングを実施する第2エッチング工程と、を含むことを特徴とするものである。本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体装置のビアホールにおける残渣物の残留を抑制することができ、かつ、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる。
【0007】
第1エッチング工程において、GaN系半導体層が露出する前にエッチング処理を停止してもよい。この場合、GaN系半導体層の汚染がより抑制される。第1エッチング工程において、GaN系半導体層に比べてSiC基板のエッチングレートが高く、第2のエッチング工程において、SiC基板に比べてGaN系半導体層のエッチングレートが高くてもよい。第1エッチング工程において、フッ素系ガスをエッチングガスとして用い、第2エッチング工程において、塩素系ガスをエッチングガスとして用いてもよい。第2エッチング工程を除去工程と同一のエッチング工程で行ってもよい。この場合、工程が簡略化される。
【0008】
SiC基板の第2主面に所定のパターンを有するメタル層をシードメタルとしてメッキ処理を行うことによって、エッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程をさらに含んでいてもよい。シードメタルは、NiあるいはNi合金の層を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体装置のビアホールにおける残渣物の残留を抑制することができ、かつ、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】半導体装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフロー図である。
【図4】図2(d)の工程の詳細を説明するためのフロー図である。
【図5】図2(e)〜図2(f)の工程の詳細を説明するためのフロー図である。
【図6】図2(d)の工程の変形例を説明するためのフロー図である。
【図7】比較例の製造方法で製造した半導体装置の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、半導体装置100の平面図を示している。半導体装置100において、複数のFETがゲート長方向に並列接続されている。各ソース電極101は、ゲート電極102およびドレイン電極103の上を跨ぐソースエアブリッジ104で接続され、外側のソースパッド105がビアホール106を介して裏面のPHS70(第3図参照)と接続している。なお、各ゲート電極102は、ゲートパッド107に接続されており、各ドレイン電極103は、ドレインパッド108に接続されている。図1に示すスクライブライン109に沿って切断することによって、半導体装置100がチップ化される。
【0013】
図2(a)〜図2(f)および図3(a)〜図3(d)は、図1のウェハをA−B方向に切断したときの半導体装置100の断面の製造フロー図を示している。図2(a)に示すように、SiC基板10を準備する。SiC基板10の第1主面にGaN(窒化ガリウム)系半導体層11が形成されている。本実施形態において、GaN系半導体層11として、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等を選択することができる。本実施形態のGaN系半導体層11は、SiC基板10上にi−GaN、n−AlGaN、n−GaNの順に積層された構成(いずれも図示せず)を有している。なお、SiC基板10とGaN系半導体層11との間には、GaN系の半導体以外の材料、例えばAlNあるいはAlGaN等からなるバッファ層を介在させることもできる。
【0014】
SiC基板10の第1主面とは、活性領域、回路等が形成されている面である。図2(a)においては、SiC基板10の下面が第1主面に対応する。GaN系半導体層11の膜厚は、例えば、1μm程度である。GaN系半導体層11のSiC基板10と反対側の面には、表面ソースパッド12が形成されている。表面ソースパッド12は、例えば、GaN系半導体層11側からNi(ニッケル)、Au(金)の順に設けられた構造を有する。
【0015】
次に、図2(b)に示すように、仮止剤30を用いて支持基板20とSiC基板10とを真空熱圧着する。仮止剤としては、例えばワックスを用いることができる。なお、支持基板20にSiC基板10を圧着するのは、SiC基板10の保持性を高めるためである。
【0016】
次いで、図2(c)に示すように、所望のウェハ厚になるまで、SiC基板10の第2主面(第1主面と反対側の面)を研磨または研削する。本実施形態においては、SiC基板10のウェハ厚の狙い値を150μmとする。
【0017】
次に、図2(d)に示すように、SiC基板10の第2主面において、表面ソースパッド12と対向する領域に開口を有するシードメタル40を形成する。シードメタル40は、例えば、SiC基板10側からNiCr(50nm)、Au(200nm)が順に設けられた構造を有する。その他に、シードメタル40の材料としては、Ni、Ta、Ti等も用いることができる。なお、加工性および基板との密着性を考慮すると、NiCrがシードメタル40に好ましい材料である。シードメタル40は、例えば、スパッタリング等の成膜法を用いて成膜することができる。その後、シードメタル40を用いてメッキによってエッチングマスク50を形成する。エッチングマスク50は、Cu(銅)またはCu合金からなる。Cu合金として、例えば、CuMo(モリブデン)、CuW(タングステン)等を用いることができる。エッチングマスク50の膜厚は、例えば、10μm程度である。図2(d)の工程の詳細は、後述する。
【0018】
次に、図2(e)に示すように、SiC基板10に対してドライエッチング処理を施す。この場合のドライエッチングに、ICPエッチング装置等を用いることができる。エッチングガスとして、SFを用いることができる。また、その他に、CFガス、NFガス等のフッ素系ガスを用いることができる。さらに、上記いずれかのフッ素系ガスにO(酸素)ガスおよびAr(アルゴン)ガスを混ぜたものを用いることができる。真空度は、例えば、0.1Pa〜10.0Pa程度とすることができる。ICPエッチング装置の高密度プラズマ形成投入電力は、例えば、100W〜3000W程度とすることができる。ICPエッチング装置のバイアス電力は、例えば、10W〜1000W程度とすることができる。ドライエッチングによって、エッチングマスク50の開口部のSiCがエッチングされて、ビアホールが形成される。図2(e)の工程の詳細は、後述する。
【0019】
次いで、図2(f)に示すように、エッチングマスク50およびシードメタル40を除去した後に、GaN系半導体層11に対してエッチング処理を施す。それにより、表面ソースパッド12が露出し、SiC基板10にビアホールが完成する。GaN系半導体層11に対するエッチングには、例えばICPエッチング装置を用いることができる。GaN系半導体層11に対するエッチングにおいては、エッチングガスとしてSiC基板10へのドライエッチングと同様のエッチングガスを用いることができる。この場合、エッチングマスク50およびGaN系半導体層11のエッチングガスを共通化することができるため、工程が簡略化される。ただし、フッ素系ガスはGaNへのエッチングレートがSiC基板10に比べて低いため、GaN系半導体層11に対するエッチングにおいては、SiC基板10に比べてGaNへのエッチングレートの高いCl(塩素)ガスを用いてもよい。つまり、SiC基板10およびGaN系半導体層11のエッチングにおいて、一方に比べてエッチングの選択比の高いエッチングガスを用いることで、ビアホールを効率よく形成することができる。また、その他の塩素系ガスとして、BCl、SiCl等の塩素系ガスを用いてもよい。図2(f)の工程の詳細は、後述する。
【0020】
次に、図3(a)に示すように、SiC基板10の第2主面にスパッタリングによってシードメタル60を成膜する。この場合、SiC基板10のビアホール内にもシードメタル60が成膜される。シードメタル60は、SiC基板10側からNiCr(50nm)、Au(200nm)が順に設けられた構造を有する。その後、シードメタル60をパターニングし、半導体装置100ごとに分断する。次に、無電解メッキを実施し、このシードメタル60の表面にPHS(Plated Heat Sink)70を形成する。PHS70として、例えば、Au(1μm〜40μm)を用いることができる。
【0021】
次いで、図3(b)に示すように、支持基板20および仮止剤30からSiC基板10を剥離する。SiC基板10の第1主面側に対して有機洗浄を行うことによって、表面ソースパッド12の表面が洗浄される。次に、図3(c)に示すように、SiC基板10の第2主面にダイサーテープ80を貼り付け、回転によって上下を反転させる。その後、スクライブラインに沿ってSiC基板10の厚み方向にダイシングする。それにより、図3(d)に示すように、複数のチップ化された半導体装置100が完成する。
【0022】
図4(a)〜図4(e)および図5(a)〜図5(c)は、図2(d)〜図2(f)の工程の詳細を説明するためのフロー図である。以下、図4(a)〜図4(e)および図5(a)〜図5(c)を参照しつつ、図2(d)〜図2(f)の工程の詳細について説明する。
【0023】
まず、図4(a)に示すように、SiC基板10の第2主面に、シードメタル40を成膜する。この場合、シードメタル40は、SiC基板10の側面にも形成される。次に、図4(b)に示すように、シードメタル40の第2主面において、表面ソースパッド12に対向する領域にレジストマスク90を形成する。なお、レジストマスク90は、露光処理および現像処理を用いて形成することができる。
【0024】
次いで、図4(c)に示すように、レジストマスク90によって覆われていないシードメタル40の露出部分をシードメタルとして、メッキによってエッチングマスク50を形成する。次に、図4(d)に示すように、レジストマスク90を除去する。その後、図4(e)に示すように、レジストマスク90の除去によって露出したシードメタル40をエッチング処理によって除去する。
【0025】
次に、図5(a)に示すように、SiC基板10に対してドライエッチング処理を施す。この場合、GaN系半導体層11の全部または一部が残るように、ドライエッチング処理を施す。ただし、GaN系半導体層11が露出する前にドライエッチング処理を停止することが好ましい。すなわち、SiC基板10の一部がGaN系半導体層11上に残存するようにドライエッチング処理を停止することが好ましい。CuによるGaN系半導体層11への汚染がより抑制されるからである。
【0026】
次いで、図5(b)に示すように、エッチングマスク50およびシードメタル40を除去する。また、シードメタル40は、除去しなくてもよい。他の工程(図3(a))において、シードメタル40上にPHS70を形成する場合に用いることができる。まず、エッチングマスク50に対するエッチング処理において、エッチング液として熱濃硫酸あるいは硝酸等を用いる。エッチング時間は、5分程度である。その後、水洗処理を施し、スピンドライヤ等を用いて乾燥処理を施す。次に、シードメタル40のAuに対するエッチング処理において、エッチング液としてAu系エッチング液等を用いる。エッチング時間は、5分程度である。その後、水洗処理を施し、スピンドライヤ等を用いて乾燥処理を施す。次いで、シードメタル40のNiCrに対するエッチング処理において、エッチング液として濃塩酸等を用いる。エッチング時間は、5分程度である。その後、水洗処理を施し、スピンドライヤ等を用いて乾燥処理を施す。
【0027】
なお、Cuのフッ化物は薬液に溶かすことができるため、図5(a)の工程においてビアホール内壁にCuのフッ化物の残渣物が付着していたとしても、図5(b)のエッチング処理によって除去される。次に、図5(c)に示すように、GaN系半導体層11に対してエッチング処理を施す。この場合、ビアホールに残存するSiCが除去された後にGaN系半導体層11がエッチングされる。
【0028】
なお、GaN系半導体層11へのエッチング工程で用いるエッチングガスがCuに対してエッチング能力を有していれば、エッチングマスク50のエッチング工程とGaN系半導体層11のエッチング工程とを同一工程で行うことができる。例えば、GaNに比較してCuに対して高いエッチングレートを有するエッチングガスを用いることによって、GaN系半導体層11の露出前にエッチングマスク50を除去し、その後にGaN系半導体層11に対してエッチングすることができる。この場合、工程が簡略化される。
【0029】
本実施形態においては、フッ素系ガスを用いたドライエッチングの際、エッチングマスクの上面はCuで構成され、Niはその側面に露出するのみとなる。このため、薬液に溶けにくいNiフッ化物のビアホール内壁への付着を抑制することができる。なお、エッチングマスク50を構成するCuのフッ化物がビアホール内壁に付着することが考えられる。しかしながら、Cuのフッ化物は、Niフッ化物に比べて容易に除去できるため、その後の薬液処理の工程や、引き続いて行われるGaN系半導体層11のエッチング工程の際にCuのフッ化物の残留は効果的に抑制される。したがって、ビアホール内壁の残渣物の残留を抑制することができる。
【0030】
また、GaN系半導体層11のエッチングの際には、エッチングマスク50が除去されている。それにより、CuによるGaN系半導体層11への汚染が抑制される。その結果、半導体装置100のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる。
【0031】
以上のことから、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、ビアホール内壁の残渣物の残留を抑制することができるとともに、半導体装置のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる。
【0032】
(変形例)
図6(a)〜図6(f)は、図4(a)〜図4(e)の工程の変形例を示すフロー図である。以下、図6(a)〜図6(f)を参照しつつ、図4(a)〜図4(e)の変形例について説明する。
【0033】
まず、図6(a)に示すように、SiC基板10の第2主面に、シードメタル40を成膜する。この場合、シードメタル40は、SiC基板10の側面にも形成される。次に、図6(b)に示すように、シードメタル40の第2主面に、表面ソースパッド12と対向する領域に開口を有するレジストマスク90aを形成する。なお、レジストマスク90aは、露光処理および現像処理を用いて形成することができる。次に、図6(c)に示すように、レジストマスク90aによって覆われていないシードメタル40の露出部分に対してエッチング処理を施す。
【0034】
その後、図6(d)に示すように、レジストマスク90aを除去することによって、表面ソースパッド12と対向する領域に開口を有するシードメタル40が形成される。次に、図6(e)に示すように、シードメタル40をシードメタルとして、メッキによってCuからなるエッチングマスク50を形成する。図6(f)は、シードメタル40の開口部分の拡大図である。図6(f)に示すように、シードメタル40の露出する部分はエッチングマスク50を構成するCuによって覆われる。
【0035】
図6(a)〜図6(e)の工程では、シードメタル40のパターニングを行った後に、エッチングマスク50の材料(Cu)をメッキ成長している。図4(a)〜図4(e)の工程では、エッチングマスク50の形成後、レジストマスク90の除去や、シードメタル40の除去工程が続くので、これら工程を実施する装置がエッチングマスク50の材料であるCuで汚染される場合がある。しかしながら、本実施形態においては、エッチングマスク50を形成した時点でマスクが完成するので、図4(a)〜図4(e)の実施形態に比較して、プロセス装置のCu汚染を抑制することができる。その結果、半導体装置100のデバイス特性不良、信頼性不良等を抑制することができる。
【0036】
また、図6(f)に示すようにシードメタル40がエッチングマスク50によって覆われることから、SiC基板10へのドライエッチング処理の際に、シードメタル40のNi成分とフッ素系ガスとの反応が抑制される。それにより、Niフッ化物の残渣物の残留をより抑制することができる。
【実施例】
【0037】
以下、上記実施形態に係る半導体装置の製造方法に従って半導体装置を製造し、その信頼性を調べた。
【0038】
(実施例)
実施例においては、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法に従って半導体装置を製造した。エッチングマスク50として、シードメタル40上にメッキ形成されたCuマスク(10μm)を用いた。シードメタル40として、Au(200nm)/NiCr(50nm)を用いた。
【0039】
図2(e)の工程におけるドライエッチング処理の条件は、下記の通りである。ドライエッチング装置には、ICPエッチング装置を用いた。エッチングガスとして、SFガスを用いた。真空度は、0.1Pa〜10.0Paとした。ICPエッチング装置の高密度プラズマ形成投入電力は、100W〜3000Wとした。ICPエッチング装置のバイアス電力は、10W〜1000Wとした。また、図2(e)の工程においては、GaN系半導体層11の露出前にドライエッチング処理を停止した。
【0040】
エッチングマスク50に対するエッチング処理においては、エッチング液として硝酸を用いた。シードメタル40のAuに対するエッチング処理においては、エッチング液としてAu系エッチング液を用いた。シードメタル40のNiCrに対するエッチング処理においては、エッチング液として濃塩酸を用いた。
【0041】
(比較例)
比較例においては、エッチングマスク50の代わりにニッケルからなるエッチングマスクを用いた。図2(e)および図2(f)の工程におけるエッチング条件は、実施例と同様である。
【0042】
図7(a)は、比較例の製造方法で製造した半導体装置のビアホール内壁のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図7(a)に示すように、比較例においては、ビアホール内壁に残渣物が付着していることがわかる。この残渣物に対してX線回折測定を行ったところ、Niフッ化物が検出された。したがって、比較例の製造方法ではニッケルが残渣物として残留することがわかった。これに対して、実施例においては、残渣物がほとんど確認されなかった。これは、GaN系半導体層11のエッチング処理等によって残渣物が薬液に溶けたからであると考えられる。
【0043】
ビアホール内壁に残渣物が残留していると、ビアホールの内壁とPHS70との密着が悪くなり、温度変化に伴うビアホール内のPHS70の熱膨張・熱収縮に起因して表面ソースパッド12が変形および断線する。そこで、表面ソースパッド12を顕微鏡で観察した。図7(b)は、比較例の製造方法で製造した半導体装置の表面ソースパッド12の表面側の金属顕微鏡写真である。図7(b)に示すように、ビアホールの輪郭が線で確認された。これは、表面ソースパッド12が変形および断線したからであると考えられる。図7(c)は、比較例の製造方法で製造した半導体装置の表面ソースパッド12のSEM写真である。図7(c)に示すように、表面ソースパッド12がビアホール側に陥落、断線している箇所が確認された。この陥落、断線は、PHS70の熱膨張・熱収縮に起因すると考えられる。
【0044】
次に、温度サイクル試験(−65℃〜150℃ 500サイクル)を行った試作チップの表面ソースパッドを観察することによって、表面ソースパッド12の断線発生箇所の個数を調べた。実施例および比較例のいずれにおいても、300個の表面ソースパッド12を観察した。下記表1は、観察結果を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、比較例においては、300個の表面ソースパッドのうち261個の表面ソースパッドで断線が確認された。これに対して、実施例においては、表面ソースパッド12の断線は確認されなかった。この結果から、実施例に係る製造方法を用いることによって、半導体装置のビアホールにおける残渣物の残留を抑制することができることがわかった。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 SiC基板
11 GaN系半導体層
12 表面ソースパッド
20 支持基板
30 仮止剤
40 シードメタル
50 エッチングマスク
60 シードメタル
70 PHS
80 ダイサーテープ
90 レジストマスク
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系半導体層が設けられたSiC基板の第1主面の反対側の第2主面上に、CuあるいはCu合金からなり部分的に開口を有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記エッチングマスクを利用したドライエッチングを実施し、底部の厚さ方向に前記GaN系半導体層が残存したビアホールを形成する第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程の後に前記エッチングマスクを除去する除去工程と、
前記除去工程の後に前記残存したGaN系半導体層に対してドライエッチングを実施する第2エッチング工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1エッチング工程において、前記GaN系半導体層が露出する前に前記ドライエッチング処理を停止することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1エッチング工程において、前記GaN系半導体層に比べて前記SiC基板のエッチングレートが高く、
前記第2のエッチング工程において、前記SiC基板に比べて前記GaN系半導体層のエッチングレートが高いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1エッチング工程において、フッ素系ガスをエッチングガスとして用い、
前記第2エッチング工程において、塩素系ガスをエッチングガスとして用いることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2エッチング工程を前記除去工程と同一のエッチング工程で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記SiC基板の前記第2主面に所定のパターンを有するメタル層をシードメタルとしてメッキ処理を行うことによって、前記エッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記シードメタルは、NiあるいはNi合金の層を含むことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77434(P2011−77434A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229508(P2009−229508)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】