説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 より優れたソフトエラー耐性を有するSOI基板を用いた高信頼性のCMOS・SRAMセルを備える半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第1導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置であって、前記第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型引出拡散層が形成され、少なくとも前記第1導電型ソース/ドレイン領域上から第2導電型引出拡散層上にわたってシリサイド層が形成されており、シリサイド層に接地電位が与えられてなる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、より詳細には、SOI(Silicon On Insulator)基板上に形成された半導体装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来から使用されている基本的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)・SRAM(スタティク・ランダム・アクセス・メモリ:Static Random Access Memory)セルは、図1に示すように、2個の負荷用PMOSトランジスタ100、101及び2個の駆動用NMOSトランジスタ102、103からなるフリップフロップ回路と2個の転送用NMOSトランジスタ104、105とからなる。
【0003】このようなCMOS・SRAMセルは、図8R>8(a)及び(b)に示すように構成されている。つまり、シリコン基板112内にpウェル領域113とnウェル領域114とが、素子分離酸化膜117を介して形成されており、pウェル領域113内の素子領域にNMOSトランジスタ115が、nウェル領域内の素子領域にPMOSトランジスタ116がそれぞれ形成されている。pウェル領域113とnウェル領域114との表面には、それぞれ、p+拡散層118及びn+拡散層119が形成されている。p+拡散層118を介してpウェル領域113に対してGnd電位が印加され、n+拡散層119を介してnウェル領域114に対してVdd電位が印加され、これにより、pウェル領域113とnウェル領域114との間のpn接合を逆バイアス状態とし、素子分離が実現される。このようなCMOS・SRAMは、α線によるソフトエラーの発生が問題となり、高信頼性デバイスを実現するための課題となっている。
【0004】つまり、CMOS・SRAMが形成されているLSIチップは、通常、樹脂によって封止されて用いられるが、この封止材料である樹脂中に含まれる放射性元素から放出されるα線や宇宙線を起因として発生する中性子が、LSIチップに入射されることがある。これらのα線や中性子は、図8(b)に示したように、電離作用によってシリコン基板112内で電子・正孔対120を発生させる。これらの電子及び正孔は、それぞれ+電位及び−電位に引かれてシリコン基板112内を移動する。例えば、NMOSトランジスタの場合は、+電位にバイアスされたドレイン領域に電子が引き寄せられる。このように、SRAMセルのデータ保持ノードにα線によって生成された電子又は正孔対が侵入すると、ノード電位が反転し、データの書き換わりなどの誤動作が生じることとなる。
【0005】これに対して、SOI・CMOS技術が提案されている。SOI・CMOSセル回路では、図9に示すように、上述のバルクCMOS・SRAMセル回路のように、n+拡散層とp+拡散層との分離のために用いるウェルを形成する必要がなく、MOSトランジスタや拡散層等は、絶縁膜121上に形成され、この絶縁膜121により各素子は基板から完全に分離されることになる。そのため、α線によりバルク基板内で発生した電子・正孔対120は素子へ影響を及ぼすことがなく、データの書き換わりは生じにくい。
【0006】また、特開平7−153854号公報には、互いに隣接する負荷PMOSトランジスタと駆動NMOSトランジスタとのソース/ドレイン領域が直接PN接合を形成するように構成されたSOI・SRAMセルが提案されており、このPN接合により、ウェル素子分離やコンタクト(図8(a)の110d、110gに相当)が不要で、セル面積を縮小することができることが記載されている。
【0007】SOI基板上に作製されるトランジスタは、その構造から完全空乏型と部分空乏型という二種類に分類される。つまり、SOIのチャネル部のシリコン層に導入する不純物の濃度によって、空乏層の幅の最大値(最大空乏層幅)が決定され、チャネル部のシリコン層の厚さよりも最大空乏層幅の方が大きいトランジスタは完全空乏型SOIトランジスタと呼ばれ、チャネル部のシリコン層の厚さよりも最大空乏層幅の方が小さいトランジスタは部分空乏型SOIトランジスタと呼ばれている。
【0008】SOI基板上に作製されるトランジスタは、ドレイン−基板間の寄生容量(接合容量)を低減できるとともに、特に、シリコン層の厚さを50nm程度以下に薄膜化した完全空乏型SOIトランジスタの場合は、短チャネル効果(ゲート長の減少に伴うしきい値の低下、サブスレッショルド係数の増加)を抑制でき、基板浮遊効果が発生しにくくなる。このため、一般にボディ部の接続が必要な部分空乏型トランジスタに比べ、ボディコンタクトが不要で、レイアウト面積をより縮小でき、微細ルールでの先端デバイスほど完全空乏型SOIトランジスタのメリットが大きい。
【0009】しかし、さらにメモリセルの縮小化、低電圧化が進むと、メモリセルに供給できる電流が減少するため、ソフトエラー耐性を確保するのが厳しくなる。特に、基板表面の浅い領域で電子・正孔対を発生させる低エネルギーのα線の入射に対しては、SOI構造によっても、一般の1/1000レベルの超高信頼性の要求を満足させるに不充分であり、これは、より薄膜のボディ領域を有する完全空乏型SOI構造でも同様である。
【0010】SOI構造では、SOI基板のシリコン層は電気的にフローティング状態になっているため、このシリコン層に形成されるMOSトランジスタには寄生バイポーラトランジスタが生じる。例えば、NMOSトランジスタは、p型のチャネル領域とn型ソース/ドレイン領域とによって、npn型の寄生バイポーラトランジスタが生じている。
【0011】例えば、図10に示したように、データを保持しているときにα線によってチャネル領域に電子・正孔対120が発生した場合には、npn型の寄生バイポーラトランジスタでは、電子がドレインに引き抜かれる。ところが正孔はチャネル領域に蓄積した状態になる。このチャネル領域はnpn型の寄生バイポーラトランジスタのベースに相当する。このため、蓄積した正孔によってベースのポテンシャルが上昇して、npn型の寄生バイポーラトランジスタが動作する。この結果、NMOSトランジスタが導通状態になって、データ保持ノードの電位が低下し、保持されていたデータが反転する。本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、より優れたソフトエラー耐性を有するSOI基板を用いた高信頼性のCMOS・SRAMセルを備える半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第1導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置であって、前記第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型引出拡散層が形成され、少なくとも前記第1導電型ソース/ドレイン領域上から第2導電型引出拡散層上にわたってシリサイド層が形成されており、シリサイド層に接地電位が与えられてなる半導体装置が提供される。
【0013】また、本発明によれば、SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第1導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置であって、前記第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型引出拡散層が形成され、該第2導電型引出拡散層に隣接して第1導電型不純物拡散層が形成され、該第1導電型不純物拡散層に接地電位が与えられてなる半導体装置が提供される。
【0014】さらに、本発明によれば、同一SOI基板上にCMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、(a)SOI基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成し、(b)第2導電型引出拡散層の形成領域及び第2導電型MOSトランジスタ形成領域に開口を有するレジストマスクを形成し、該マスクを用いて第2導電型不純物をイオン注入して第2導電型ソース/ドレイン領域及び第2導電型引出拡散層を形成し、(c)第1導電型MOSトランジスタ形成領域に、第1導電型不純物をイオン注入して第1導電型ソース/ドレイン領域を形成することからなる半導体装置の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の半導体装置は、SOI基板上に形成されたゲート絶縁膜、ゲート電極及び第1導電型のソース/ドレイン領域とから構成され、さらに、第2導電型引出拡散層が形成されている。SOI基板としては、例えば、張り合わせSOI(BESOI)基板、SIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)型基板等として用いられるものが使用され、通常、支持基板上に埋め込み絶縁膜、その上に表面半導体層が形成されて構成されている。
【0016】支持基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体基板、GaAs、InGaAs等の化合物半導体基板等、種々の基板を用いることができる。なかでも単結晶シリコン基板が特に好ましい。半導体基板の場合には比較的低抵抗(例えば20Ωcm程度以下、好ましくは10Ωcm程度)であるものが好ましい。埋め込み絶縁膜としては、例えば、SiO2膜、SiN膜等が挙げられ、なかでもSiO2膜が好ましい。この膜厚は、得ようとする半導体装置の特性、得られた半導体装置を使用する際の印加電圧の高さ等を考慮して、適宜調整することができるが、例えば50〜1000nm程度が挙げられる。
【0017】半導体層は、トランジスタを形成するための活性層として機能する半導体薄膜であり、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、GaAs、InGaAs等の化合物半導体等の薄膜により形成することができる。なかでもシリコン薄膜が好ましく、このシリコン薄膜は単結晶であることが好ましい。半導体層の膜厚は得ようとする半導体装置の構成から考慮して、適宜調整することができ、例えば30〜1000nm程度が挙げられ、特に、30〜100nm程度が、完全空乏化の半導体装置を得るために好ましい。ゲート絶縁膜及びゲート電極は、通常MOSトランジスタ等の半導体装置と同様の材料及び同様の方法によって形成されるものであれば、特に限定されるものではない。
【0018】第1導電型のソース/ドレイン領域とは、通常MOSトランジスタ等の半導体装置として形成されるソース/ドレイン領域と同様の方法によって形成されるものであれば、その大きさ、不純物濃度及び接合深さ等は特に限定されるものではない。例えば、表面半導体層と同様の接合深さを有するものが好ましく、不純物濃度は、1×1021cm-3程度が適当である。なお、ここで、第1導電型とは、N型又はP型のいずれかを意味し、N型の場合にはボロン又はBF2、P型の場合には砒素又はリン等が挙げられる。また、ソース/ドレイン領域は、LDD構造、DDD構造であってもよい。
【0019】本発明の半導体装置においては、第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型の引出拡散層が形成されている。ここでの引出拡散層とは、活性領域(チャネル領域)における正孔又は電子、好ましくは正孔を引き出すための拡散層を意味する。第2導電型とは、ソース/ドレイン領域がN型の場合にはP型を意味し、ソース/ドレイン領域がP型の場合にはN型を意味する。なかでも、チャネル領域での蓄積が問題となる正孔を引き出して除去するために、ソース/ドレイン領域がN型で、引出拡散層がP型であることが好ましい。引出拡散層の大きさは特に限定されず、チャネル領域内で発生した正孔を引き出すために十分な大きさであることが必要である。また、引出拡散層の形成位置は、特に限定されないが、従来は素子分離領域として形成されていた領域に形成することにより、セル面積の増大を招くことはない。
【0020】引出拡散層の不純物濃度は、特に限定されるものではなく、ソース/ドレイン領域と同程度の濃度が挙げられる。引出拡散層は、ソース/ドレイン領域の一方に接するように1つの領域としてのみ形成されていてもよいし、一方のソース/ドレイン領域の両端に2つ以上接するように形成されていてもよい。
【0021】第2導電型の引出拡散層は、第1導電型のソース/ドレイン領域上からその上面にわたってシリサイド層で被覆されていることが好ましい。シリサイド層としては、TiSi2、CoSi2、WSi2、PtSi、MoSi2、Pd2Si、TaSi2等が挙げられる。シリサイド層の膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば、5〜100nm程度が挙げられる。なお、シリサイド層は、少なくとも引出拡散層の一部を被覆していればよく、全部を被覆していることが好ましい。また、シリサイド層は、ソース/ドレイン領域上の全領域及びゲート電極上に形成されていてもよい。
【0022】シリサイド層が形成されている場合には、シリサイド層には接地電位、電源電位あるいは任意の電位が与えられていることが好ましい。シリサイド層に接地電位等を与える方法としては、シリサイド層に接続される配線を、当該分野で公知の導電膜により形成する方法が挙げられる。これにより、例えば、半導体装置のチャネル領域に蓄積した正孔又は電子(好ましくは正孔)が、引出拡散層上のシリサイド層を通して引き出され、除去することができる。
【0023】また、第2導電型の引出拡散層は、さらに、上記第1導電型のソース/ドレイン領域とは別の第1導電型不純物拡散層と隣接していてもよい。この第1導電型不純物拡散層は、第2導電型の引出拡散層に隣接する位置に、この目的のためのみに形成される領域でもよい。この場合の第1導電型の不純物濃度は、例えば、1×1021cm-3程度が適当である。また、別の半導体装置(又は素子)等を構成する第1導電型の不純物拡散層を利用するものであってもよい。例えば、上記第1導電型のソース/ドレイン領域とは異なる半導体装置(又は素子)のソース/ドレイン領域として形成されるものであってもよい。つまり、2つの半導体装置(又は素子)の間で、各半導体装置(又は素子)のソース/ドレイン領域に接するように第2導電型の引出拡散層が形成されていてもよい。また、第2導電型の引出拡散層は、さらに別の2つ以上の第1導電型不純物拡散層と隣接してもよい。つまり、第2導電型の引出拡散層を中心に複数の半導体装置(又は素子)が放射状に、各半導体装置(又は素子)のソース/ドレイン領域を第2導電型の引出拡散層に接するように形成されていてもよい(例えば、図7等参照)。この場合、第1導電型不純物拡散層には、接地電位又は任意の電位が与えられていることが好ましく、接地電位であることがより好ましい。接地電位等を与える方法としては、第1導電型不純物拡散層に接続される配線を形成する方法が挙げられる。これにより、上述したように、半導体装置のチャネル領域に蓄積した正孔又は電子(好ましくは正孔)が、引出拡散層から第1導電型不純物拡散層を通して引き出され、除去することができる。
【0024】第2導電型の引出拡散層が第1導電型不純物拡散層に接続されている場合には、これらの領域上にシリサイド層が形成されていなくてもよいが、少なくとも、上述したように、第1導電型のソース/ドレイン領域上から第2導電型の引出拡散層の一部又は全部の上にわたっては、シリサイド層が形成されていることが好ましい。
【0025】本発明の半導体装置は、特にNMOS又はPMOSトランジスタを含むものであれば、いずれのトランジスタにも使用することができ、さらに、DRAM、SRAM、不揮発性RAM、連想メモリ(CAM)、論理付メモリ、EPROM、EEPROM、フリップフロップ回路、シフトレジスタあるいは一般に当該分野で使用される種々の論理回路等に適用することができる。
【0026】本発明の半導体装置は、PMOS又はNMOSを単独で形成する場合には、第1導電型のソース/ドレイン領域の形成のためのイオン注入の前又は後に、ソース/ドレイン領域に隣接する位置であって、第2導電型引出拡散層の形成領域にのみ開口を有するマスクを用いて、第2導電型の不純物をイオン注入することにより、容易に形成することができる。また、同一SOI基板上にCMOSを形成する場合には、まず、工程(a)において、当該分野で公知の方法により、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する。
【0027】次いで、工程(b)において、第2導電型引出拡散層の形成領域及び第2導電型MOSトランジスタ形成領域に開口を有するレジストマスクを形成し、マスクを用いて第2導電型不純物をイオン注入して、第2導電型MOSトランジスタ形成領域に第2導電型ソース/ドレイン領域と、第2導電型引出拡散層とを形成する。つまり、第2導電型引出拡散層は、追加マスクを形成することなく、第2導電型MOSトランジスタのソース/ドレイン領域の形成のために行うイオン注入を利用することができるために、第2導電型引出拡散層を形成するためのさらなる工程は必要としない。
【0028】さらに、工程(c)において、第1導電型MOSトランジスタ形成領域に、第1導電型不純物をイオン注入して第1導電型ソース/ドレイン領域を形成する。第1導電型ソース/ドレイン領域は、公知の方法、例えば、第2導電型MOSトランジスタ形成領域と第2導電型引出し拡散層の形成領域とを被覆するマスクを形成し、このマスクを用いて第1導電型不純物をイオン注入することにより形成することができる。なお、この工程(c)は、工程(b)の前に行ってもよい。
【0029】また、これらの工程の後、第1導電型ソース/ドレイン領域上から第2導電型引出拡散層上にわたって、シリサイド層を形成することが好ましい。シリサイド層は、例えば、Ti、Co、W、Pt、Mo、Pd、Ta等の金属膜を、膜厚5〜100nm程度で、スパッタ法、真空蒸着法、EB法等により形成し、300〜1000℃程度の温度範囲で、ランプアニール、炉アニール、RTA等の方法により熱処理した後、未反応の金属膜を、例えば酸又はアルカリ溶液をエッチャントとして用いたウェットエッチングにより除去することにより、形成することができる。
【0030】なお、第2導電型引出拡散層に隣接する第1導電型不純物拡散層は、上記工程(c)において、例えば、第1導電型不純物拡散層に開口を有するマスクを用いて、上記のようなイオン注入と同時に形成することができる。また、本発明においては、上記工程の後、通常半導体プロセスで行われる層間絶縁膜、コンタクトホール、配線層、保護膜の形成等を行ってもよいし、さらに、イオン注入、サイドウォールスペーサの形成、熱処理等の工程を追加して行ってもよい。以下に、本発明の半導体装置及びその製造方法の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0031】本発明の半導体装置であるCMOS・SRAMセルは、図1に示すように、2個の負荷用PMOSトランジスタ100、101と、2個の駆動用NMOSトランジスタ102、103からなるフリップフロップ回路と2個の転送用NMOSトランジスタ104、105とで構成されている。つまり、2つの負荷用PMOSトランジスタのソース端子は、電源(Vdd)線に接続されており、ドレイン端子は、駆動用NMOSトランジスタのドレイン端子に、それぞれ接続されており、ゲート端子は、駆動用NMOSトランジスタのゲート端子に、それぞれ接続されている。また、2つの駆動用NMOSトランジスタのソース端子は、接地(Gnd)線に接続されている。このように、2つの負荷用PMOSトランジスタと2つの駆動用NMOSトランジスタとにより、2組のCMOSインバータを構成している。これらの2組のCMOSインバータは、それぞれ一方の入力端子と他方の出力端子とが互いに接続されており、いわゆるフリップフロップを構成している。
【0032】また、2つの転送用NMOSトランジスタは、一方のソース/ドレイン端子が2組のCMOSインバータの出力端子にそれぞれ接続され、他方のソース/ドレイン端子は2つのビット線B又はBBにそれぞれ接続されており、転送用NMOSトランジスタのゲート端子は、いずれもワード線WLに接続されている。なお、ビット線BBには、ビット線Bに入力される信号の反転信号が入力される。
【0033】このような構成のCMOS・SRAMセルでは、ワード線WLの電位がHighの時には、2つの転送用NMOSトランジスタがオンとなり、ビット線B及びBBを介して伝達されてきた相補信号により、フリップフロップ回路にデータを書き込まれ又はフリップフロップ回路からデータを読み出される。一方、ワード線WLの電位がLowの時には、2つの転送用NMOSトランジスタがオフとなり、フリップフロップ回路は直前に書き込まれたデータが保持される。
【0034】実施の形態1この実施の形態におけるCMOS・SRAMは、図2に示したように、SOI基板の素子領域上に、ゲート電極2、3、4が形成され、素子領域上にコンタクト孔5a〜5fが形成され、ゲート電極2、3上にコンタクト孔5g、5hが形成されて構成されている。なお、図2では、ゲート電極2、3、4より上の配線のレイアウトは省略している。また、素子領域とは、MOSトランジスタのソース及びドレインとチャネル領域とが形成される領域を意味する。
【0035】ゲート電極2と、ソース及びドレインであるp+拡散層6及び7は、PMOSトランジスタ100を構成しており、ゲート電極2と、ソース及びドレインであるn+拡散層8及び9は、NMOSトランジスタ102を構成している。また、ゲート電極3と、ソース及びドレインであるp+拡散層6及び10は、PMOSトランジスタ101を構成しており、ゲート電極3と、ソース及びドレインであるn+拡散層8及び11は、NMOSトランジスタ103を構成している。さらに、ゲート電極4と、ソース及びドレインであるn+拡散層9及び12は、NMOSトランジスタ104を構成しており、ゲート電極4と、ソース及びドレインであるn+拡散層11及び13は、NMOSトランジスタ105を構成している。なお、NMOSトランジスタ104及び105は、それぞれのソース及びドレインを特定せず使用される。
【0036】コンタクト孔5aは、金属配線(図示せず)を介して電源(Vdd)線に接続され、コンタクト孔5bは、金属配線(図示せず)を介して接地(Gnd)線に接続される。すなわち、p+拡散層6は、電源線に接続されてVdd電位が与えられ、n+拡散層8は、接地配線に接続されてGnd電位が与えられる。p+拡散層7及びn+拡散層9は隣接して一つの拡散層を構成するように配置しており、この拡散層は、コンタクト孔5c、5dに接続される金属配線(図示せず)を介してゲート電極3に接続されている。また、p+拡散層10及びn+拡散層11は隣接して一つの拡散層を構成するように配置しており、この拡散層は、コンタクト孔5e及び5fに接続される金属配線(図示せず)を介してゲート電極2に接続されている。また、コンタクト孔5g及び5hは金属配線(図示せず)を介してビット線B及びBBにそれぞれ接続され、ゲート電極4は、ワード線WLを構成する。
【0037】このSOI・CMOSは、図3に示すように、p型シリコン基板17上に埋込酸化膜18、表面シリコン層がこの順に積層されたSOI基板上に形成されており、それぞれのMOSトランジスタが、埋め込み酸化膜18によって基板17と電気的に分離されており、PMOSトランジスタのp+拡散層7とNMOSトランジスタのn+拡散層9とは直接接触しているため、タイプの異なるMOSトランジスタを電気的に分離するためのウェルが不要である。
【0038】さらに、駆動用NMOSトランジスタのp型ボディ領域14からの引出p+拡散層15が、ソースであるn+拡散層8に隣接して形成され、n+拡散層9とゲート電極2との上面及び引出p+拡散層15からn+拡散層8にわたる上面が、低抵抗化のためのサリサイド層16で覆われ、引出p+拡散層15とn+拡散層8とが電気的に直接接続されている。このため、α線によってボディ中に発生した正孔の引き抜きを確実に行うことができる。
【0039】なお、引出p+拡散層15はゲート電極2及び3の間のスペース領域に配置させるので、セル面積を増加させることなく追加でき、SRAMチップサイズを増加させることはない。また、引出p+拡散層15は、PMOSトランジスタのソース及びドレインのためのp+拡散層6、7、10の形成工程と同時に行うことができるため、工程を増やすことなく、低コストで高信頼性のSRAMセルを得ることができる。
【0040】このCMOS・SRAMにより、従来のSOI・SRAMセルではデバイスのソフトエラー率が30FIT(failures in time)であったのに対して、0.8FIT程度に軽減することができる。このCMOS・SRAMは、以下のように製造することができる。
【0041】まず、シリコン基板17上に、埋め込み絶縁膜18及び表面シリコン層を形成し、LOCOS酸化法で素子分領域を形成する。なお、この際の表面シリコン層の膜厚は、完全空乏化を実現できる膜厚、例えば、膜厚50nm程度とする。その後、公知の方法により、NMOS及びPMOSトランジスタのチャネル注入を行い、ゲート絶縁膜を介して、ゲート電極2を形成し、LDD領域形成のための注入工程を行った後、ゲート電極2の側壁にサイドウォールスペーサを形成する。
【0042】次いで、PMOSトランジスタ領域を被覆するレジストパターン(図示せず)を形成し、このレジストパターンをマスクとしてn型不純物をイオン注入し、その後、図4(a)に示したように、引出p+拡散層15を形成する領域及びPMOSトランジスタ領域に開口を有し、NMOSトランジスタ領域を被覆するレジストパターン19を形成し、このレジストパターン19をマスクとして、p型の不純物、例えば、BF2+を、30keV、3〜5×1015cm-2のドーズでイオン注入する。
【0043】続いて、図4(b)に示すように、活性化アニールを行うことにより、p+拡散層6、7、n+拡散層8、9及びは引出p+拡散層15を形成する。その後、ゲート電極2、p+拡散層6、7、n+拡散層8、9及びは引出p+拡散層15上に、公知の方法により、サリサイド層16を形成し、層間絶縁膜、コンタクトホール、配線層、保護膜等を順次形成し、半導体記憶装置の前半プロセスを完了する。このような半導体記憶装置の製造方法では、特別な工程を一切追加することなく引出p+拡散層15を形成することができる。
【0044】実施の形態2この実施の形態のCMOS・SRAMセルは、図5に示したように、駆動用NMOSトランジスタのボディ領域の引出p+拡散層15が、駆動用NMOSトランジスタが隣接する両サイドに形成されている。これにより、正孔の引き抜き効率を2倍に向上させることができ、よりソフトエラー耐性の高いSRAMセルを得ることができる。
【0045】実施の形態3この実施の形態のCMOS・SRAMセルは、図6に示したように、駆動用NMOSトランジスタのボディ領域に加え、転送用NMOSトランジスタのボディ領域にも引出p+拡散層15を接続している。つまり、転送用NMOSトランジスタは双方向で使われ、ソース/ドレインが固定されないため、転送用NMOSトランジスタのボディ領域の引出p+拡散層15は、いずれかのソース/ドレイン領域につなげるのではなく、Gnd端子につながるn拡散層8に直接接続している。
【0046】これにより、駆動用NMOSトランジスタの誤動作を防ぐと共に、転送用NMOSトランジスタの誤動作も防ぐことができ、よりソフトエラー耐性の高いSRAMセルを得ることができる。なお、このような構成では、転送用NMOSトランジスタにバックゲート電圧がかかることになり、しきい値が高くなって転送用NMOSトランジスタのドライブ能力が低下することもあるが、得ようとする半導体記憶装置に要求されるソフトエラー耐性と動作スピードとの兼ね合いで適用することが可能となる。
【0047】実施の形態4この実施の形態のCMOS・SRAMセルは、図7に示したように、実施の形態2及び3の特長を同時に採用した例である。これにより、両者のメリットが同時に得られ、非常にソフトエラー耐性の高いSRAMセルを得ることができる。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、ソース/ドレイン領域に接して引出拡散層を設けることにより、ソフトエラーにより発生し、チャネル領域に蓄積した正孔/電子を有効に引出し、除去することが可能となる。しかも、特別な領域に形成する必要がなく、従来は素子分離領域として用いていた領域に配置させることができるため、セル面積を増大させることなく、信頼性の高い半導体装置を得ることが可能となる。しかも、引出拡散層を形成するための工程は、従来の製造プロセスのうちのイオン注入をそのまま利用することができるため、高信頼性のデバイスを、製造工程を追加することなく、簡便かつ確実に製造することが可能となり、ひいては製造コストの低下を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体記憶装置の等価回路を示す図である。
【図2】本発明の半導体記憶装置の実施の形態を示す要部の概略平面図である。
【図3】図2におけるA−A’線断面図である。
【図4】図2の半導体記憶装置を製造する方法を説明するための要部の概略断面図である。
【図5】本発明の半導体記憶装置の別の実施の形態を示す要部の概略平面図である。
【図6】本発明の半導体記憶装置のさらに別の実施の形態を示す要部の概略平面図である。
【図7】本発明の半導体記憶装置のさらに別の実施の形態を示す要部の概略平面図である。
【図8】従来の半導体記憶装置の平面図及び断面図である。
【図9】従来のSOI基板に形成された半導体記憶装置の断面図である。
【図10】従来のSOI基板に形成された半導体記憶装置の問題を説明するための断面図である。
【符号の説明】
2、3、4 ゲート電極
5a〜5f コンタクト孔
6、7、10 p+拡散層
8、9、11 n+拡散層
14 ボディ領域
15 引出p+拡散層
16 サリサイド層
17 シリコン基板
18 埋込酸化膜
19 レジストパターン
100、101 負荷用PMOSトランジスタ
102、103 駆動用NMOSトランジスタ
104、105 転送用NMOSトランジスタ
B、BB ビット線
WL ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第1導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置であって、前記第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型引出拡散層が形成され、少なくとも前記第1導電型ソース/ドレイン領域上から第2導電型引出拡散層上にわたってシリサイド層が形成されており、シリサイド層に接地電位が与えられてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 シリサイド層が、TiSi2、CoSi2、WSi2、PtSi、MoSi2、Pd2Si又はTaSi2である請求項1に記載の装置。
【請求項3】 SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第1導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置であって、前記第1導電型ソース/ドレイン領域の双方又は一方に接して第2導電型引出拡散層が形成され、該第2導電型引出拡散層に隣接してさらに第1導電型不純物拡散層が形成され、該第1導電型不純物拡散層に接地電位が与えられてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】 第2導電型引出拡散層がp型不純物拡散層である請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】 第1導電型不純物拡散層が、第2導電型引出拡散層に隣接するソース/ドレイン領域とは異なる半導体装置のソース/ドレイン領域として形成されてなる請求項3に記載の装置。
【請求項6】 第1導電型不純物拡散層が、第2導電型引出拡散層を中心に放射状に複数個、前記第2導電型引出拡散層に隣接するように形成されてなる請求項3〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】 SOI基板の表面半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、該ゲート電極の両側の表面半導体層に形成された第2導電型ソース/ドレイン領域とから構成される半導体装置とともにCMOSトランジスタを構成する請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】 同一SOI基板上にCMOSトランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、(a)SOI基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成し、(b)第2導電型引出拡散層の形成領域及び第2導電型MOSトランジスタ形成領域に開口を有するレジストマスクを形成し、該マスクを用いて第2導電型不純物をイオン注入して第2導電型ソース/ドレイン領域及び第2導電型引出拡散層を形成し、(c)第1導電型MOSトランジスタ形成領域に、第1導電型不純物をイオン注入して第1導電型ソース/ドレイン領域を形成することからなる請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】 さらに、少なくとも第1導電型ソース/ドレイン領域上から第2導電型引出拡散層上にわたってシリサイド層を形成することからなる請求項8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2003−8021(P2003−8021A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−185548(P2001−185548)
【出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】