説明

半導体装置

【課題】同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】面方位(001)のn型ウェル領域13には、ソース領域14及びドレイン領域15が離隔して形成されている。ソース領域14とドレイン領域15との間のn型ウェル領域13上にはゲート絶縁膜16が形成され、ゲート絶縁膜16上にはゲート電極17が形成されている。ソース領域14とドレイン領域15との間のn型ウェル領域13に形成されるチャネル領域のチャネル長方向は、n型ウェル領域13の方位<100>に設定され、チャネル長方向には引っ張り応力が発生している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関するものであり、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
CMOSを構成するpチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、pMOSトランジスタ)及びnチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、nMOSトランジスタ)の移動度を上げるには、基板面方位・チャネル方向の変更、または格子歪みを与えることが行われる。例えば、pMOSトランジスタにおいては、チャネルとなるシリコンゲルマニウム層が圧縮応力に伴うストレイン効果によって正孔の移動度を増大させ、またnMOSトランジスタにおいては、チャネルとなるシリコン層が引っ張り応力に伴うストレイン効果によって電子の移動度を増大させることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前述した基板面方位・チャネル方向の変更、または格子歪みの印加の方法には以下に挙げる問題点が存在する。
【0004】
(1) 基板面方位の変更
例えば、面方位(011)のウェハを使用した場合、pMOSトランジスタの移動度は上がるが、nMOSトランジスタの移動度は下がってしまう。また、ウェハ上で90度の回転対称性が崩れるため、従来の設計を利用することができなくなり設計時の負荷が非常に大きい。
【0005】
(2) チャネル方向の変更
これも基板の面方位の変更と同様に、nMOSトランジスタ、pMOSトランジスタの移動度を同時に上げることはできないので、両方の移動度を上げるにはnMOSトランジスタ、pMOSトランジスタの作り分けプロセスが必要になり、プロセスが複雑になってしまう。
【0006】
(3) 格子歪みの印加
ローカルな歪みはチャネル方向の一軸応力を発生させるが、通常使用される面方位(001)のウェハでチャネル方向が方位<110>のトランジスタでは、一軸性の圧縮、引っ張り応力を加えた場合の移動度の向上、劣化の方向はnMOSトランジスタ、pMOSトランジスタで異なる。そのため、両方の移動度を上げるためには、nMOSトランジスタ、pMOSトランジスタの作り分けプロセスが必要になり、やはりプロセルが複雑になってしまう。
【0007】
今後、微細化の進行により歩留まりの低下が予想されるこれから先の世代において、移動度向上のために複雑なプロセスを組むことはきわめて難しい。
【特許文献1】特開平11−340337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、この発明の一実施形態の半導体装置は、面方位(001)の半導体領域と、前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域に形成されるチャネル領域のチャネル長方向は前記半導体領域の方位<100>に設定され、前記チャネル長方向には引っ張り応力が発生していることを特徴とする。
【0010】
また、この発明の他の実施形態の半導体装置は、面方位(001)の半導体領域と、前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記ソース領域上、前記ドレイン領域上、及び前記ゲート電極上に形成され、前記半導体領域における前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向に引っ張り応力を発生させる絶縁膜とを具備し、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の他の実施形態の半導体装置は、面方位(001)の半導体領域と、前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体領域に形成されたトレンチ内に、前記ソース領域及び前記ドレイン領域の少なくとも1部分と接するように形成されたシリコン窒化膜を含む素子分離領域とを具備し、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする。
【0012】
この発明の他の実施形態の半導体装置は、面方位(001)の半導体領域と、前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、前記ゲート電極は、熱処理により前記ゲート電極を膨張させる不純物元素を含み、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、この発明の他の実施形態の半導体装置は、面方位(001)のシリコン半導体領域と、前記シリコン半導体領域に離隔して形成され、格子定数がシリコンより小さい元素を含むシリコン化合物から形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記シリコン半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記シリコン半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる半導体装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0016】
[第1の実施形態]
まず、この発明の第1の実施形態の半導体装置が含むpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタについて説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0018】
p型シリコン半導体基板11には、素子分離領域12が配置されている。p型半導体基板11は、面方位(001)のウェハから成る。素子分離領域12は、例えば、p型半導体基板11に形成されたトレンチ内にシリコン酸化膜などを埋め込んだSTI(Shallow Trench Isolation)からなり、p型半導体基板11上に形成される素子(トランジスタ)間を電気的に絶縁分離して、素子が形成される素子領域を定める。
【0019】
以下に、pMOSトランジスタの構造について述べる。
【0020】
p型シリコン半導体基板11上には、n型ウェル領域13が形成されている。素子領域におけるn型ウェル領域13の表面領域には、p+型半導体領域からなるソース領域14と、同じくp+型半導体領域からなるドレイン領域15とが離隔して形成されている。さらに、ソース領域14とドレイン領域15との間には、ソース領域14及びドレイン領域15より不純物濃度が低いp−型半導体領域からなるエクステンション領域14A、15Aが形成されている。ソース領域14とドレイン領域15との間のn型ウェル領域13上には、ゲート絶縁膜16が形成されている。このゲート絶縁膜16上にはゲート電極17が形成されている。ゲート電極17下のn型ウェル領域13には、チャネル領域が形成されており、このチャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)は、p型半導体基板11の方位<100>に設定されている。
【0021】
ゲート電極17の側面には、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜が積層された側壁絶縁膜18が形成されている。さらに、ソース領域14上、ドレイン領域15上、ゲート電極17上、側壁絶縁膜18上、及び素子分離領域12上には、ライナー膜19が形成されている。このライナー膜は、チャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)に対して引っ張り応力を加える働きを持つ絶縁膜、例えばシリコン窒化膜等からなる。このような引っ張り応力を加えるシリコン窒化膜には、例えば、HCD(Hexa-chloro-disilane)/NHの混合ガスを用いて熱CVD法により成膜されたSiN膜(HCD−SiN膜)、やプラズマCVD法により成膜され、N−H結合が少なく、Si−H結合が多く形成されたSiN膜などが用いられる。
【0022】
以下に、nMOSトランジスタの構造について述べる。
【0023】
p型シリコン半導体基板11上には、p型ウェル領域23が形成されている。素子領域におけるp型ウェル領域23の表面領域には、n+型半導体領域からなるソース領域24と、同じくn+型半導体領域からなるドレイン領域25とが離隔して形成されている。さらに、ソース領域24とドレイン領域25との間には、n型半導体領域からなるエクステンション領域24A、25Aが形成されている。ソース領域24とドレイン領域25との間のp型ウェル領域23上には、ゲート絶縁膜26が形成されている。このゲート絶縁膜26上にはゲート電極27が形成されている。ゲート電極27下のp型ウェル領域23には、チャネル領域が形成されており、このチャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)は、p型半導体基板11の方位<100>に設定されている。
【0024】
ゲート電極27の側面には、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜が積層された側壁絶縁膜28が形成されている。さらに、ソース領域24上、ドレイン領域25上、ゲート電極27上、側壁絶縁膜28上、及び素子分離領域12上には、前述したライナー膜19が形成されている。このライナー膜は、同様に、チャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)に対して引っ張り応力を加える働きを持つ絶縁膜、例えばシリコン窒化膜等からなる。
【0025】
前述したpMOSトランジスタでは、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつソース領域上及びドレイン領域上に形成されたライナー膜(例えば、シリコン窒化膜)により、チャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。
【0026】
pMOSトランジスタにおける一軸応力(横軸)と正孔移動度(縦軸)との関係を図2に示す。図2に示すように、チャネル長方向が方位<100>である場合、正孔の移動度は引っ張り応力が増加しても変化せずほぼ一定、あるいはわずかながら増加している。一方、従来ではチャネル長方向が方位<110>である場合が多く、この場合、正孔の移動度は引っ張り応力が増加するに従って低下してしまう。したがって、第1の実施形態のpMOSトランジスタにおいては、面方位(001)のシリコン半導体基板を用い、チャネル長方向を半導体基板の方位<100>に設定することにより、チャネル長方向に引っ張り応力が加わっても正孔の移動度は劣化せず、引っ張り応力が印加されていない状態あるいは引っ張り応力が印加されている状態のチャネル長方向が方位<110>である場合に比べて正孔の移動度が高い。なお、引っ張り応力が印加されている状態では、引っ張り応力が印加されていない状態よりも、移動度の向上効果は大きい。以上により、チャネル長方向に引っ張り応力を加えても、pMOSトランジスタのトランジスタ特性が劣化することはない。。
【0027】
また、nMOSトランジスタでも、同様に、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつソース領域上及びドレイン領域上に形成されたライナー膜(例えば、シリコン窒化膜)によりチャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。
【0028】
nMOSトランジスタにおける一軸応力(横軸)と電子移動度(縦軸)との関係を図3に示す。図3に示すように、チャネル長方向が方位<100>である場合、電子の移動度は引っ張り応力が増加するに従って増加していく。一方、従来例のチャネル長方向が方位<110>である場合も、電子の移動度は引っ張り応力が増加するに従って同様に増加している。よって、第1の実施形態のnMOSトランジスタにおいては、チャネル長方向を半導体基板の方位<100>に設定しても、電子の移動度は劣化せず、ほぼチャネル長方向が方位<110>である場合と同等のトランジスタ特性を維持することができる。
【0029】
このように面方位(001)のウェハを用いた、チャネル長方向が方位<100>のpMOSトランジスタでは、図2に示したように、引っ張り応力により生じた歪みによる移動度変調効果は少なく、正孔移動度はチャネル長方向が方位<110>のpMOSトランジスタより高い。また、面方位(001)のウェハを用いた、チャネル長方向が方位<100>のnMOSトランジスタでは、チャネル長方向が方位<110>のnMOSトランジスタと比べて、図3に示したように、引っ張り応力によって生じた歪みにより同等以上の移動度向上効果が得られる。
【0030】
以上説明したようにこの第1の実施形態よれば、面方位(001)の半導体基板を用い、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつソース領域上及びドレイン領域上に形成されたライナー膜によって、チャネル領域のチャネル長方向に引っ張り応力を発生させることにより、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
次に、この発明の第2の実施形態の半導体装置が含むpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタについて説明する。前記第1の実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付してその説明は省略し、以下に異なる構成部分のみを説明する。
【0032】
図4は、第2の実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【0033】
p型シリコン半導体基板11上のn型ウェル領域13及びp型ウェル領域23には、STI(Shallow Trench Isolation)から形成された素子分離領域が配置されている。このSTIは、p型半導体基板11またはn型ウェル領域13、p型ウェル領域23に形成されたトレンチ内に、シリコン窒化膜12A、及びシリコン酸化膜12Bを埋め込んだものであり、以下のような構造を有する。p型シリコン半導体基板11にはトレンチが形成され、トレンチ内のシリコン領域が露出した面にはシリコン窒化膜12Aが形成されている。詳述すると、シリコン窒化膜12Aは、ソース領域14、24、ドレイン領域15、25、n型ウェル領域13、及びp型ウェル領域23などのシリコン領域の少なくとも1部分と接触するように、トレンチ内に形成されている。トレンチ内のシリコン窒化膜12A上には、トレンチ内を埋め込むようにシリコン酸化膜12Bが形成されている。pMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタのその他の構造は、前記第1の実施形態と同様である。
【0034】
第2の実施形態におけるSTIは、シリコン半導体領域の少なくとも1部分に接するシリコン窒化膜を有している。このようなSTIが配置されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタでは、チャネル領域からSTIへ向かって応力が発生する。これにより、チャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)に対して引っ張り応力が加えられる。なお、STIは、シリコン窒化膜のみで埋められていても良い。
【0035】
第2の実施形態のpMOSトランジスタでは、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつシリコン領域と接したシリコン窒化膜を有するSTIにより、チャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。pMOSトランジスタにおける一軸応力(横軸)と正孔移動度(縦軸)との関係は、第1の実施形態と同様に、図2に示したようになる。pMOSトランジスタのチャネルにおける正孔の移動度は、引っ張り応力が増加しても変化せずほぼ一定、あるいはわずかながら増加している。したがって、正孔の移動度は、引っ張り応力が印加されていない状態あるいは引っ張り応力が印加されている状態のチャネル長方向が方位<110>である場合と比べて向上する。これにより、チャネル長方向に引っ張り応力を加えても、pMOSトランジスタのトランジスタ特性が劣化することはない。
【0036】
また、第2の実施形態のnMOSトランジスタでも、同様に、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつシリコン領域と接したシリコン窒化膜を有するSTIにより、チャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。nMOSトランジスタにおける一軸応力(横軸)と電子移動度(縦軸)との関係は、第1の実施形態と同様に、図3に示したようになる。nMOSトランジスタのチャネルにおける電子の移動度は、引っ張り応力が増加するに従って増加していき、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様に推移する。これにより、nMOSトランジスタにおいて、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様のトランジスタ特性を維持することができる。
【0037】
以上説明したようにこの第2の実施形態よれば、面方位(001)の半導体基板を用い、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつシリコン領域と接したシリコン窒化膜を有するSTIによって、チャネル領域のチャネル長方向に引っ張り応力を発生させることにより、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる。
【0038】
[第3の実施形態]
次に、この発明の第3の実施形態の半導体装置が含むpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタについて説明する。前記第1の実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付してその説明は省略し、以下に異なる構成部分のみを説明する。
【0039】
図5は、第3の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0040】
ソース領域13とドレイン領域14との間のn型ウェル領域13上には、ゲート絶縁膜15が形成され、このゲート絶縁膜15上にはゲート電極29が形成されている。また、ソース領域24とドレイン領域25との間のp型ウェル領域23上には、ゲート絶縁膜26が形成され、このゲート絶縁膜26上にはゲート電極30が形成されている。
【0041】
ゲート電極29、30は、例えばポリシリコンからなる。このポリシリコンには、熱処理が施されることにより、ポリシリコンが膨張する所定の不純物元素(例えば、ヒ素(AS))がイオン注入法などにより導入されている。このため、ポリシリコンへの熱処理によって、ポリシリコンからなるゲート電極29、30が膨張する。これにより、ゲート電極29、30下のn型ウェル領域13及びp型ウェル領域23(チャネル領域)に、チャネル長方向(ソース−ドレイン方向)に対して引っ張り応力が発生する。
【0042】
第3の実施形態のpMOSトランジスタでは、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつ熱処理によりゲート電極を膨張させる不純物がゲート電極に導入されている。このため、熱処理によるゲート電極の膨張により、チャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。pMOSトランジスタのチャネルにおける正孔の移動度は、第1の実施形態と同様、図2に示したように、引っ張り応力が増加しても変化せずほぼ一定、あるいはわずかながら増加している。したがって、正孔の移動度は、引っ張り応力が印加されていない状態あるいは引っ張り応力が印加されている状態のチャネル長方向が方位<110>である場合と比べて向上する。これにより、チャネル長方向に引っ張り応力を加えても、pMOSトランジスタのトランジスタ特性が劣化することはない。
【0043】
また、第3の実施形態のnMOSトランジスタでも、同様に、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつ熱処理によりゲート電極を膨張させる不純物がゲート電極に導入されている。このため、熱処理によるゲート電極の膨張により、チャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられている。nMOSトランジスタのチャネルにおける電子の移動度は、第1の実施形態と同様、図3に示したように、引っ張り応力が増加するに従って増加していき、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様に推移する。これにより、nMOSトランジスタにおいて、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様のトランジスタ特性を維持することができる。
【0044】
以上説明したようにこの第3実施形態よれば、面方位(001)の半導体基板を用い、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつ熱処理が施されることでゲート電極を膨張させる不純物を含んだゲート電極を備えることによって、チャネル領域のチャネル長方向に引っ張り応力を発生させる。これにより、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる。
【0045】
[第4の実施形態]
次に、この発明の第4の実施形態の半導体装置が含むpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタについて説明する。前記第1の実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付してその説明は省略し、以下に異なる構成部分のみを説明する。
【0046】
図6は、第4の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0047】
pMOSトランジスタにおいて、n型ウェル領域13の表面領域には、n型半導体領域からなるソース領域31とドレイン領域32とが離隔して形成されている。また、nMOSトランジスタにおいて、p型ウェル領域23の表面領域には、p型半導体領域からなるソース領域33とドレイン領域34とが離隔して形成されている。
【0048】
ソース領域31、33及びドレイン領域32、34は、以下のような製造方法により形成される。ゲート電極17、27の側面に側壁絶縁膜18、28が形成された後、等方性エッチング法により側壁絶縁膜18、28の横のn型ウェル領域13、p型ウェル領域23がエッチングされ、溝が形成される。続いて、選択性エピタキシャル成長法により、溝内にソース領域またはドレイン領域となるエピタキシャル層が形成される。
【0049】
ソース領域31、33及びドレイン領域32、34は、シリコン中にシリコンより格子定数が小さい元素を含むシリコン化合物、例えば炭化ケイ素(SiC)から形成されている。このように、ソース領域31、33及びドレイン領域32、34が炭化ケイ素を含む場合、ソース領域にはチャネル領域近傍からソース領域中央部に向かって応力が発生し、またドレイン領域にはチャネル領域近傍からドレイン領域中央部に向かって応力が発生する。これにより、pMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおけるチャネル領域のチャネル長方向(ソース−ドレイン方向)に対して引っ張り応力が加えられる。
【0050】
第4の実施形態のpMOSトランジスタでは、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつソース領域及びドレイン領域がシリコンより格子定数の小さい元素を含むシリコン化合物から形成されている。この場合、ソース領域及びドレイン領域に自ら縮む力が発生し、これによりチャネル領域のチャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられる。pMOSトランジスタのチャネルにおける正孔の移動度は、第1の実施形態と同様、図2に示したように、引っ張り応力が増加しても変化せずほぼ一定、あるいはわずかながら増加している。したがって、正孔の移動度は、引っ張り応力が印加されていない状態あるいは引っ張り応力が印加されている状態のチャネル長方向が方位<110>である場合と比べて向上する。これにより、チャネル長方向に引っ張り応力を加えても、pMOSトランジスタのトランジスタ特性が劣化することはない。
【0051】
また、第4の実施形態のnMOSトランジスタでも、同様に、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつソース領域及びドレイン領域がシリコンより格子定数の小さい元素を含むシリコン化合物から形成されている。この場合、ソース領域及びドレイン領域に自ら縮む力が発生し、これによりチャネル領域のチャネル長方向に一軸性の引っ張り応力が加えられる。nMOSトランジスタのチャネルにおける電子の移動度は、第1の実施形態と同様、図3に示したように、引っ張り応力が増加するに従って増加していき、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様に推移する。これにより、nMOSトランジスタにおいて、チャネル長方向が方位<110>である場合とほぼ同様のトランジスタ特性を維持することができる。
【0052】
以上説明したようにこの第4の実施形態よれば、面方位(001)の半導体基板を用い、チャネル長方向が半導体基板の方位<100>に設定され、かつシリコンより格子定数の小さい元素を含むシリコン化合物から形成されたソース領域及びドレイン領域を備えることによって、チャネル領域のチャネル長方向に引っ張り応力を発生させる。これにより、同一半導体基板上に形成されたpMOSトランジスタ及びnMOSトランジスタにおける移動度を向上させることができる。
【0053】
また、前述した各実施形態はそれぞれ、単独で実施できるばかりでなく、適宜組み合わせて実施することも可能である。さらに、前述した各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の第1の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施形態のpMOSトランジスタにおける引っ張り応力と移動度との関係を示す図である。
【図3】この発明の実施形態のnMOSトランジスタにおける引っ張り応力と移動度との関係を示す図である。
【図4】この発明の第2の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図5】この発明の第3の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図6】この発明の第4の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
11…p型シリコン半導体基板、12…素子分離領域、12A…シリコン窒化膜、12B…シリコン酸化膜、13…n型ウェル領域、14…ソース領域、15…ドレイン領域、14A、15A…エクステンション領域、16…ゲート絶縁膜、17…ゲート電極、18…側壁絶縁膜、19…ライナー膜、23…p型ウェル領域、24…ソース領域、25…ドレイン領域、24A、25A…エクステンション領域、26…ゲート絶縁膜、27…ゲート電極、28…側壁絶縁膜、29、30…ゲート電極、31…ソース領域、32…ドレイン領域、33…ソース領域、34…ドレイン領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方位(001)の半導体領域と、
前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域に形成されるチャネル領域のチャネル長方向は前記半導体領域の方位<100>に設定され、前記チャネル長方向には引っ張り応力が発生していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
面方位(001)の半導体領域と、
前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記ソース領域上、前記ドレイン領域上、及び前記ゲート電極上に形成され、前記半導体領域における前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向に引っ張り応力を発生させる絶縁膜とを具備し、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
面方位(001)の半導体領域と、
前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記半導体領域に形成されたトレンチ内に、前記ソース領域及び前記ドレイン領域の少なくとも1部分と接するように形成されたシリコン窒化膜を含む素子分離領域とを具備し、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
面方位(001)の半導体領域と、
前記半導体領域に離隔して形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、
前記ゲート電極は、熱処理により前記ゲート電極を膨張させる不純物元素を含み、前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
面方位(001)のシリコン半導体領域と、
前記シリコン半導体領域に離隔して形成され、格子定数がシリコンより小さい元素を含むシリコン化合物から形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記シリコン半導体領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを具備し、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とを結ぶチャネル長方向は、前記シリコン半導体領域の方位<100>に設定されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−165335(P2006−165335A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355775(P2004−355775)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月1日 社団法人応用物理学会発行の「2004年(平成16年)秋季 第65回 応用物理学会学術講演会講演予稿集 第2分冊」に発表
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】