説明

半導体装置

【課題】ブートストラップ方式のドライブ回路を有する半導体装置において、ブートストラップダイオードの順バイアス時にp-基板側に流れるホールによるリーク電流を抑制することができる半導体装置を提供することにある。
【解決手段】ブートストラップダイオードDb下にSON構造の空洞3を形成し、ブートストラップダイオードDbとグランド電位(GND)となるGNDp領域4との間のn-エピ層2にその空洞3に達するフローティングp領域5を形成することで、外部のブートストラップコンデンサC1充電時のp-基板1へのホールによるリーク電流を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーデバイスの制御駆動用などに用いられる半導体装置に係り、特に高電圧電源に接続された高耐圧の上アーム出力素子と、接地電位(GND)に接続された高耐圧の下アーム出力素子との直列回路からなる主回路を駆動する主回路駆動回路および外部のブートストラップコンデンサC1を充電するためのブートストラップダイオードDbを同一基板上に集積化した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスは、モータ制御用のインバータのほか、大容量のPDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶パネルなどの電源用途、エアコンや照明といった家電用インバータなど多くの分野で広く利用されている。
【0003】
従来、このパワーデバイスの駆動および制御は、フォトカプラなどの半導体素子やトランスなどの電子部品を組み合わせて構成した電子回路によって行っていた。しかし、近年LSI(大規模集積回路)技術の進歩により、1200Vまでの高耐圧集積回路装置が実用化されている。
【0004】
この高耐圧集積回路装置は、パワーデバイスのハイサイドゲートドライバIC、更には制御回路やパワーデバイスを同一半導体基板上に集積化した構成をしており、系列化され、インバータ装置の高効率化や部品点数削減に貢献している。
【0005】
図11は、モータ制御用インバータを構成するパワーモジュールと主回路駆動回路の要部構成図である(例えば、特許文献1参照)。三相モータ70を駆動するために用いるパワーデバイスはブリッジ回路を構成し、同一パッケージに収納されたパワーモジュール71の構造をしている。
【0006】
この図ではパワーモジュール71はパワーデバイスである絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下、IGBTと称す)とダイオードによって構成されている。また、IGBTの代わりにMOSFETであっても良い。同図ではIGBTはQ1〜Q6、ダイオードはD1〜D6で示されている。
【0007】
主電源VCC2の高電位側VCC2Hは、Q1、Q2、Q3のコレクタに接続し、低電位側VCC2Lは、Q4、Q5、Q6のエミッタに接続する。
各IGBTのゲートは主回路駆動回路72の出力に接続し、主回路駆動回路72の入力端子I/Oは通常のマイクロコンピュータに接続し、パワーモジュール71で構成されるインバータの出力U、V、Wは三相モータ70に接続している。
【0008】
主電源VCC2は、通常AC100〜400Vと高電圧である。特にQ4,Q5,Q6がそれぞれオフ状態で、Q1,Q2,Q3がオン状態の時はQ1,Q2,Q3のエミッタ電位がそれぞれ高電圧になる。
【0009】
そのため、これらのゲートを駆動する場合にエミッタ電位より更に高い電圧で駆動しなければならないので、主回路駆動回路72にはフォトカプラ(PC:Photo Coupler)や高耐圧集積回路装置が用いられる。
【0010】
また、主回路駆動回路72の入出力端子I/O(Input/Output)は通常マイクロコンピュータへ接続され、そのマイクロコンピュータによりパワーモジュール71で構成されるインバータ回路全体の制御がなされる。つぎにこの中の高耐圧集積回路装置について一例を示す。
【0011】
図12は、主回路駆動回路を構成する各要素の要部配置図である。高耐圧集積回路装置を構成する主回路駆動回路72は、入出力端子I/Oを通してマイクロコンピュータと信号のやり取りを行う。主回路駆動回路72は、どのIGBTをオンさせ、オフさせるかの制御信号を発生させる制御回路(以下、CUと称す CU:Control Unit)と、このCUからの信号を、受けてIGBTのゲートを駆動し、またIGBTの過電流、を検出し、異常信号をCUに伝えるゲート駆動回路(以下、GDUと称す。GDU:Gate Driver Unit)とからなる。また、図11のブリッジを構成するIGBTの内、高電位側に接続するQ1,Q2,Q3のゲート信号およびアラーム信号について、VCC2LレベルとVCC2Hレベルとを媒介する働きを担うレベルシフト回路(以下、LSUと称す。LSU:Level Shift Unit)からなる。
【0012】
このGDUはQ1、Q2、Q3と接続するGDU−U、GDU−V、GDU−WとQ4、Q5、Q6と接続するGDU−X、GDU−Y、GDU−Zで構成される。つぎにこの中のLSUについて一例を示す。
【0013】
図13はLSUの基本構成図である。基本構成としては高耐圧nチャネルMOSFET61と抵抗RL1および高耐圧pチャネルMOSFET62と抵抗RL2が用いられる。高耐圧nチャネルMOSFET61はCUからの信号を高電位側VCC2HにあるGDU−U,V,Wへレベルシフトするためのものである、また高耐圧pチャネルMOSFET62は過電流や状態の異常信号を低電位側VCC2LにあるCUへレベルシフトするためのものである。特にQ1,Q2,Q3の過電流検知や過熱検知等の異常信号を出さない場合は、この高耐圧pチャネルMOSFET62は不要となる。
【0014】
このLSUに用いられる高耐圧nチャネルMOSFET61および高耐圧pチャネルMOSFET62は三相モータ70を駆動するIGBT(Q1〜Q6)と同等の600Vから1400V程度の耐圧値が要求される。
【0015】
つぎに、ブートストラップシステムを同一半導体基板上に形成した、従来の高耐圧ゲートドライバーについて説明する(特許文献2を参照)。
図14は、図11の上アームにあるIGBTであるQ1を駆動する図12に示したGDU−UとGDU−X、及びLSU及びブートストラップダイオードDbを1チップ化した場合の回路構成図である。
【0016】
図15は、エピタキシャル基板上にゲート駆動用回路、及びブートストラップダイオードを集積化した場合のHVゲートドライバICの要部断面図である。勿論、GDU−V,GDU−Wも同様の構成をしている。
【0017】
図14は、Q1の過電流検知や過熱検知のための高耐圧pチャネルMOSFET62用のノードは記載しておらず、高耐圧nチャネルMOSFET61のレベルアップ側のレベルシフト回路のノードのみ示している。
【0018】
ここで、ブートストラップ回路の動作について説明する。Vb電圧(HVゲートドライバーのU−OUTピンとU−VCCピン間の電位差)は、ハイサイドドライブ回路に電源を供給している。一般にこのVb電圧は、HVゲートドライバーICがドライブする外部IGBT(ここではQ1,Q2,Q3)、または外部MOSFETを確実にエンハンス(フルオン)するため、15V程度に設定される。
【0019】
このVb電圧はフローティング電源の電圧であり、ほとんどの場合、高周波での方形波となるU−OUT電圧(V−OUT,W−OUTも同様)を基準電位とする。図13に示すように、フローティング電源はブートストラップダイオードDbとブートストラップコンデンサC1の組み合わせによって構成される。
【0020】
ブートストラップ回路が動作するのは、ローサイドIGBT(Q4)のゲートがオン状態のとき、U−OUT電圧がグランド電位まで低下する際(回路の構成により、ローサイドIGBTまたは負荷を通じて)である。このとき、ブートストラップコンデンサC1は、15Vの低電圧電源であるVDD電源からブートストラップダイオードDbを通じて充電される。このようにして、フローティング電源(ハイサイド側の電源)であるC1の電圧は、Vb電圧が保たれるようにVDD電源からコンデンサC1へ電流が供給される。
【0021】
また、逆にハイサイド側のハイサイドIGBT(Q1)のゲートがオンしている期間では、U−OUT電圧は、U−VCC電源電圧または、過渡的にはサージでそれ以上の高電圧になる。そのため、ブートストラップダイオードDbの逆耐圧は、高耐圧nチャネルMOSFET61と同等の600Vから1700V程度の耐圧値が要求される。
【0022】
ここで充電に使用されるブートストラップコンデンサC1は、100nF以上の大容量が必要であるため、集積化は難しく、外付けのタンタルコンデンサ、セラミックコンデンサなどを使用するのが一般的である。
【0023】
特許文献3には、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いてpnダイオードを形成すれば、ダイオードの高耐圧化と基板への正孔リークを減少させることが示唆されている。
【0024】
また、特許文献4では、シリコン基板の表面に複数の溝を2次元的に配列形成した後、シリコン基板に熱処理を施すことによって、複数の溝を1つの平板状の空洞に変えることで、コストの上昇や、信頼性の低下を招かずにSON構造を形成することが開示されている。
【0025】
また、特許文献5では、基板の所望の領域に微小空洞を形成するためのイオンを注入する第1ステップと、前記第1ステップにより微小空洞が形成された基板に熱処理をする第2ステップと、を有し、前記第2ステップには、少なくとも基板を1000℃以上の温度に曝すための高温熱処理ステップがあることで、低コストで高品質なSON半導体基板の製造方法を提供し、また、この半導体基板の製造方法を工程中にすることで高性能な半導体装置を製造することができる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第3941206号公報
【特許文献2】US6825700号公報
【特許文献3】特開2004−200472号公報
【特許文献4】特開2001−144276号公報
【特許文献5】特開2003−332540号公報
【特許文献6】特許第4610786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
図14および図15に示されている構成では、ハイサイドIGBT(Q1)がオフすると、U−OUT電圧はグランド電位まで引き下げられて、ブートストラップコンデンサC1を充電する。ブートストラップダイオードDbは、p-基板上にNepi層であるn-層とn+埋め込み層を設け、アノード拡散領域としてp+拡散を形成した構造をしている。
【0028】
そのため、ブートストラップコンデンサC1を充電する過程で、ブートストラップダイオードDbのアノード電極からVDD電源へ電子を供給する一方、電位の低いカソード電極へホールが供給される。
【0029】
しかし、ブートストラップダイオードDbの順電圧降下(VF電圧)が2V以下の低電圧領域では、多くのホールがn+埋め込み層を貫通し、グランド電位であるp-基板へ流れ込む。その結果、U−OUT電圧がグランド電位まで引き下げられブートストラップコンデンサを充電する期間には、VDD電源の高電位側端子からHVゲートドライバーICのp-基板のGND端子に大きなリーク電流(漏れ電流)が発生し消費電流を増加させる。
【0030】
ホール電流(Ih)経路の様子をデバイスシミュレーションしたホール濃度分布図を図16に示す。このときの条件は、VDD電源電圧が+15V、コンデンサC1に電流供給するU−VCC電圧が+14V、p-基板がグランド電位の印加条件で、ブートストラップダイオードDbのVF電圧(順電圧降下)を1Vである。
【0031】
図16に示したブートストラップダイオードDbのp+領域であるアノード領域側(VDD)からn+埋め込み層を経由して、p-基板にホールが抜け出しリーク電流Ileakとなることが分かる。
【0032】
これは、p+領域であるアノード領域側から注入されたホールがn+領域であるカソード領域側で取り込まれて少数キャリアとして電子と再結合する割合より、電位障壁の低いグランド電位に固定されたp-基板方向へ流れるホール成分の方が多いために起こるもので、結果的にp-基板へのリーク電流となってしまう。
【0033】
図16に示したブートストラップダイオードDbの活性幅W(帯状となるp+領域の長さ)をW=1000μm、活性長L(n+領域とp+領域の間隔)をL=100μmとした構成において、カソード領域であるn+領域の電位を+14Vに固定し、p-基板をグランド電位に固定したとき、アノード領域であるp+領域の電位(VDD電位)を+14Vから+15Vまで電位を上昇させていったときのカソード領域であるn+領域へ流れる電流と、p-基板へ流れる電流をプロットしたグラフを図に示す。ブートストラップダイオードDbのVF電圧が1Vのときには(Anode Voltageが15Vのとき:図の円内)、カソード領域であるn+領域へ100mA電流が流れ込み、p-基板には40mAのリーク電流が流れ込むことが分かる。尚、図中のEはべき数を示し、例えば、1E−1は1×10-1を示す。また、Substrate Currentがp-基板へ流れるホール電流を示す。
【0034】
特許文献1〜4では、SON(Silicon On Nothing)半導体基板またはSOI(Silicon On Insulator)半導体基板にブートストラップダイオードを形成し、このブートストラップダイオードと基板電位をとるためのGNDp領域の間にフローティングp領域を設けてホールによるp-基板へのリーク電流を抑制することについては記載されていない。
【0035】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、ブートストラップダイオードを集積化した半導体装置において、ブートストラップダイオードの順バイアス時にp-基板側に流れるホールによるリーク電流を抑制することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、p型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成されるn型の半導体層と、前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、島領域を区分するp型の分離領域と、前記島領域内の表面層に形成されたn型のカソード領域と、前記分離領域と前記カソード領域との間で両者と離れて前記島領域内の表面層に形成されたp型のアノード領域と、少なくとも前記カソード領域、前記アノード領域および前記カソード領域と前記アノード領域の間の下方に位置し、前記半導体層と前記半導体基板との界面に形成された絶縁分離領域と、前記分離領域と前記アノード領域との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第1フローティング領域と、前記島領域内の前記カソード領域より内側で前記半導体層の表面に形成された半導体素子と、前記半導体基板および前記分離領域は前記アノード領域および前記カソード領域よりも低い電位が与えられる半導体装置とする。
【0037】
また、特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記絶縁分離領域が前記分離領域まで延在しているとよい。
また、特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明において、前記絶縁分離領域が空洞であるとよい。
【0038】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の発明において、前記カソード領域と前記半導体素子との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第2フローティング領域を備えるとよい。
【0039】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の発明において、前記第1フローティング領域と前記分離領域との間の前記半導体層の表面層にn型のコンタクト領域を備えるとよい。
【0040】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明において、前記アノード領域に与える電位と同じ電位を前記コンタクト領域に与えるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項7に記載の発明によれば、p型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成されるn型の半導体層と、前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、第1島領域を区分するp型の第1分離領域と、前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、前記第1島領域と離れて第2島領域を区分するp型の第2分離領域と、前記第1島領域内の表面層に形成されたn型のカソード領域と、前記第1分離領域と前記カソード領域との間で両者と離れて前記第1島領域内の表面層に形成されたp型のアノード領域と、少なくとも前記カソード領域、前記アノード領域および前記カソード領域と前記アノード領域の間の下方に位置し、前記半導体層と前記半導体基板との界面に形成された絶縁分離領域と、前記第1分離領域と前記アノード領域との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第1フローティング領域と、前記第2島領域内で前記半導体層の表面に形成された半導体素子と、前記半導体基板および前記第1分離領域は前記アノード領域および前記カソード領域よりも低い電位が与えられる半導体装置とする。
【0041】
また、特許請求の範囲の請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の発明において、前記絶縁分離領域が前記第1分離領域まで延在しているとよい。
また、特許請求の範囲の請求項9に記載の発明によれば、請求項7または8に記載の発明において、前記絶縁分離領域が空洞であるとよい。
【0042】
また、特許請求の範囲の請求項10に記載の発明によれば、請求項7ないし9のいずれか一項に記載の発明において、前記カソード領域と前記半導体素子とを電気的に接続するボンディングワイヤを備えるとよい。
【0043】
また、特許請求の範囲の請求項11に記載の発明によれば、請求項7ないし10のいずれか一項に記載の発明において、前記第1フローティング領域と前記分離領域との間の前記半導体層の表面層にn型のコンタクト領域を備えるとよい。
【0044】
また、特許請求の範囲の請求項12に記載の発明によれば、請求項11に記載の発明において、前記アノード領域に与える電位と同じ電位を前記コンタクト領域に与えるとよい。
【発明の効果】
【0045】
この発明では、ブートストラップダイオード下にSON構造の空洞やSOI基板の酸化膜などで絶縁分離領域を形成し、ブートストラップダイオードとグランド電位となるGNDp領域との間のn-エピ層にその絶縁分離領域に達するフローティングp領域を形成することで、外部のブートストラップコンデンサ充電時のp-基板へのホールによるリーク電流を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1実施例の高耐圧集積回路装置100の要部断面図である。
【図2】図1のブートストラップダイオードDb付近の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【図3】高耐圧集積回路装置100を構成する主回路駆動回路およびブートストラップ回路の要部ブロック図である。
【図4】空洞3をGNDp領域4に接するように形成した高耐圧集積回路装置の要部断面図を示す。
【図5】ハイサイド側にあるロジック部がGNDp領域4の外側に配置された高耐圧集積回路装置の要部平面図である。
【図6】この発明の第2実施例の高耐圧集積回路装置200の要部断面図である。
【図7】この発明の第3実施例の高耐圧集積回路装置300の要部断面図である。
【図8】この発明の第4実施例の高耐圧集積回路装置400の要部断面図である。
【図9】この発明の第5実施例の高耐圧集積回路装置500の要部断面図である。
【図10】この発明の第6実施例の高耐圧集積回路装置600の要部断面図である。
【図11】モータ制御用インバータを構成するパワーモジュールと主回路駆動回路の要部構成図である
【図12】主回路駆動回路を構成する各要素の要部配置図である。
【図13】LSUの基本構成図である。
【図14】図11の上アームにあるIGBTであるQ1を駆動する図12に示したGDU−UとGDU−X、及びLSU及びブートストラップダイオードDbを1チップ化した場合の回路構成図である。
【図15】エピタキシャル基板上にゲート駆動用回路、及びブートストラップダイオードを集積化した場合のHVゲートドライバICの要部断面図である。
【図16】従来の高耐圧集積回路装置を構成する主回路駆動回路部の要部断面図である。
【図17】ブートストラップダイオードDbのアノード電圧とホール電流の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0048】
図1から図3は、この発明の実施例1に関係する図であり、図1はロジック部を含めた要部断面図、図2は図1の点線51で囲まれた箇所のブートストラップダイオードの構成図、図3は主回路を含めた全体の回路ブロック図である。図3の点線52で囲まれた箇所の一部の断面図が図1の断面図である。つぎにこれらの図を詳細に説明をする。
【0049】
図1は、この発明の第1実施例の高耐圧集積回路装置100の要部断面図である。この図はU相部分のGDUの一部とブートストラップダイオードに関係する箇所の断面図である。
【0050】
図1において、高耐圧集積回路装置100は、p-基板1上に形成されるn-エピ層2(エピタキシャル成長層)の表面層に形成されるpチャネルMOSFET31とpオフセット領域と、pオフセット領域21内に形成されるnチャネルMOSFET32とを備えている。この半導体素子であるpチャネルMOSFET31とnチャネルMOSFET32でGDU内のCMOS回路33が形成される。このCMOS回路33はロジック回路である。
【0051】
また、n-エピ層2の表面層にCMOS回路33と離して形成されるn+領域7と、n+領域7と離して形成されるp+領域6と、このp+領域6と離して形成されるフローティングp領域5からなる。このn+領域7とp+領域6でブートストラップダイオードDbが形成され、n+領域7がカソード領域、p+領域6がアノード領域となる。
【0052】
また、フローティングp領域5と離して形成されるGNDp領域4と、p-基板1の表面層に形成されフローティングp領域5と接し、さらにカソード領域であるn+領域7下まで延在するSON構造35を構成する空洞3からなる。このGNDp領域4とは、p-基板1をGND電位に固定するためのp+領域のことである。
【0053】
この高耐圧集積回路装置100の製造方法を説明する。p-基板1の表面に微細なホールトレンチを複数形成し、水素雰囲気で1000℃以上の温度で熱処理することでp-基板1の表面層にSON構造35が形成される。このSON構造35が形成されたp-基板1の上面全域にn-エピ層2を形成する。その後で、フローティングp領域5、GNDp領域4、ブートストラップダイオードDbおよびCMOS回路33などをn-エピ層2に形成する。
【0054】
このn-エピ層2を形成するときに、p-基板1の表面層がn型に反転してn-半導体層2dになる。SON構造35を構成する空洞3上の半導体層(CAP層と呼ばれる層)もn-半導体層2aとなり、このn-半導体層2aはn-半導体層2dに含まれる。尚、n-エピ層2は本来はn-半導体層2bであるが、ここでは説明の都合上n-半導体層2dを含めn-半導体層2bとn-半導体層2dを合わせた層とする。
【0055】
空洞3上の全体のn-半導体層2cはn-半導体層2aとn-半導体層2bを合せた層となる。もし、CAP層が厚くn-半導体層2aが空洞3に達しない場合やn-半導体層2dの不純物濃度をn-半導体層2bより高くしたい場合には、n-半導体層2dに高濃度のn型不純物を拡散すればよい。
【0056】
前記のGNDp領域4はGND端子11に接続し、p+領域6はVDD端子12に接続する。n+領域7はU−VCC端子13に接続し、U−VCC端子13は外付けのブートストラップコンデンサC1の高電位側に接続し、さらにCMOS回路33を構成するpチャネルMOSFET31のpソース領域18に接続する。C1の低電位側はCMOS回路33を構成するnチャネルMOSFET32のnソース領域22に接続し、さらに、U−OUT端子14に接続する。pチャネルMOSFET31のpドレイン領域19とnチャネルMOSFET32のnドレイン領域23が接続し、U−GATE端子15に接続する。前記のCMOS回路33はハイサイド回路であり、高電位の浮遊電位領域内に形成される。VDD端子12はローサイド回路を駆動する制御電源の高電位側端子であり、制御電源は低電圧電源である。U−VCC端子13は、ハイサイド回路を駆動する制御電源の高電位側端子であり、U−OUT端子14の中間電位を基準にしたVDD電源16の高電位側電位とほぼ等しくなる。U−OUT端子14の中間電位は主回路電源である高圧電源VCC2の高電位側電位VCC2H〜低電位側電位VCC2Lの間で変動する。前記したことは、U相について説明したがV相およびW相についても同様である。
【0057】
尚、図中の符号で、8,9,10,26,27,29,30は各領域に接続する電極であり25,28はゲート電極である。また、20,24はnコンタクト領域およびpコンタクト領域である。また、GNDp領域4の表面層はコンタクト領域としてのp+領域が形成されている。また、アノード領域のp+領域6は、p領域の表面層にコンタクト領域のp+領域が形成された構造をしており、カソード領域のn+領域7は、n領域の表面層にコンタクト領域のn+領域が形成された構造をしている。
【0058】
図2は、GDUとそれを囲む耐圧構造部にブートストラップダイオードDbが形成された図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【0059】
-基板1とn-エピ層2の間に部分的に空洞3が形成され、この空洞3に接するようにフローティングp領域5が形成され、このフローティングp領域5に囲まれてアノード領域となるp+領域6およびこのp+領域6に囲まれてカソード領域となるn+領域7が形成される。また、p-基板1に達するGNDp領域4が形成され、フローティングp領域5がこのGNDp領域4で取り囲こまれる。また、ハイサイド側のロジック部(図ではLogicと書かれている)はカソード領域であるn+領域7で取り囲まれる。このロジック部は図1のCMOS回路33などで構成され、図3のGDU−Uの回路が含まれる。
【0060】
-エピ層2の表面にLOCOS41が形成され、このLOCOS41の開口部にGNDp領域4と接続するGND電極8、p+領域6と接続するアノード電極9、n+領域7と接続するカソード電極10が形成される。GND電極8にGND端子11が接続し、アノード電極9にVDD端子12が接続し、カソード電極10にU−VCC端子13が接続する。
【0061】
図3は、高耐圧集積回路装置100を構成する主回路駆動回路およびブートストラップ回路の要部ブロック図である。図3では主回路を構成する上アーム出力素子Q1(U相)と下アーム出力素子Q4(X相)およびそれらと逆並列接続するダイオードD1,D4も示した。
【0062】
図3において、主回路駆動回路は、HVゲートドライバICと称せられる高耐圧集積回路装置100に形成され、主回路(ここでは3相インバータ回路のU相とX相を示す)を構成する上アーム出力素子Q1と下アーム出力素子Q4のゲートを駆動する回路である。上アーム出力素子Q1と下アーム出力素子Q4の接続点は主回路の中間点端子OUTであり、高耐圧集積回路装置100のU−OUT端子14に接続し、また図示しない負荷(モータなど)に接続する。U−OUT端子14(OUT端子)は中間電位にあり、主回路電源である高圧電源VCCの高電位側電位VCC2H〜低電位側電位VCC2Lの間で変動する。
【0063】
外付けの上アーム出力素子Q1、下アーム出力素子Q4として、それぞれ、IGBTを用いた場合の例で説明する。このIGBTの代わりにMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、サイリスタ、SIT(静電誘導型トランジスタ)、SI(静電誘導)サイリスタ等の他の出力素子を用いても構わない。
【0064】
上アーム出力素子Q1のコレクタ電極は高圧電源VCC2のVCC2H端子に、下アーム出力素子Q4のエミッタ電極は接地電位にあるGND端子(VCC2L端子)に接続されている。そして上アーム出力素子Q1のエミッタ電極と、下アーム出力素子Q4のコレクタ電極とが、中間電位となる中間点端子OUTに接続され、この中間点端子OUTは図示していない負荷と接続される。各相の中間点端子OUTには図11に示すようにU−OUT端子,V−OUT端子,W−OUT端子に接続する。
【0065】
上アーム出力素子Q1には上アームダイオードD1(還流ダイオード)が、下アーム出力素子Q4には下アームダイオードD4(還流ダイオード)が逆並列接続されている。
図3に示すように、上アーム出力素子Q1は、フローティング状態(浮遊電位状態)の上アームドライバGDU−Uにより駆動される。つまり外付けの上アーム出力素子Q1の制御電極にはHVゲートドライバICの上アームドライバGDU−Uの出力端子U−GATEが接続される。
【0066】
一方、外付けの下アーム出力素子Q4の制御電極にはHVゲートドライバICの下アームドライバGDU−Xの出力端子X−GATEが接続される。上アームドライバGDU−Uは内部電源であるU−VCC電源の高電位側端子(U−VCC端子13)と中間点端子OUT(U−OUT端子14)間に接続され、所定の電源電圧(C1電圧=VDD電圧)が供給される。前記の上アームドライバGDU−Uは高電位で浮遊電位にあるハイサイド回路であり、下アームドライバGDU−Xは低電位で固定電位にあるローサイド回路である。
【0067】
また、下アームドライバGDU−Xは低電圧電源であるVDD電源16の高電位側端子であるVDD端子12と接地電位にあるGND端子11間に接続され、所定の電源電圧(VDD電圧)が供給される。図12、図13に示すように、上アームドライバGDU−UにはLSUにある高耐圧nチャネルMOSFET61を介して、制御回路部CUから上アーム用制御信号が、下アームドライバGDU−Xには制御回路部CUから直接下アーム用制御信号が入力される。
【0068】
図示していないが、上アームドライバGDU−Uは上アームCMOSインバータと上アーム・バッファアンプおよび上アーム・コントロールロジックから構成されている。一方、下アームドライバGDU−Xは下アームCMOSインバータと、下アーム・バッファアンプおよび下アーム・コントロールロジックとから構成されている。
【0069】
図3に示す構成において、上アーム出力素子Q1および下アーム出力素子Q4は、上アームドライバGDU−Uおよび下アームドライバGDU−Xにより駆動され、それぞれ交互にオン/オフを行う。
【0070】
したがって中間点端子OUTの電位(中間電位)は上アーム出力素子Q1および下アーム出力素子Q4の交互のオン/オフに伴って、接地電位(GND=VCC2L)と高圧電源VCC2の高電位側電位(VCC2H)の間で上昇・下降を繰り返す。上アーム出力素子Q1と下アーム出力素子Q4との交互のオン/オフの際のブートストラップ回路(ブートストラップダイオードDbとブートストラップコンデンサC1)の動作については、前記したように、ブートストラップコンデンサC1は、上アーム出力素子Q1がオフの場合でかつ、中間点端子OUTの電位がグランド電位まで下げられた時のみ充電するため、ローサイドスイッチ(下アーム出力素子Q4)のオンタイム(あるいはハイサイドスイッチ(上アーム出力素子Q1)のオフタイム)は、ハイサイドドライバGDU−UによってブートストラップコンデンサC1から引き出される電荷が完全に補充されるのに十分な長さにしなければならない。
【0071】
また、高耐圧ブートストラップダイオードDbの逆耐圧は、前記主回路の電源電圧VCC2Hに前記下アーム出力素子のゲートに制御信号を伝送する低電圧電源の電源電圧VDDを加算した電圧以上に高い電圧にする。
【0072】
図2において、ブートストラップダイオードDbは、pnダイオードであり、Dbのn+領域7とp+領域6およびフローティングp領域5は空洞3上のn-半導体層2cに形成される。SON構造35を構成する空洞3上のn-半導体層2aの厚さが2〜6μm程度で、例えば4μmであり、その上のn-半導体層2bの厚さは5〜50μm程度で、例えば10μmである。つまり、空洞3上の全体のn-半導体層2cの厚さは、空洞3上のn-半導体層2aとその上のn-半導体層2bを加えた厚さであり、例えば14μm程度である。空洞3の厚さQが大きく、幅Pが広くなるほど空洞3は潰れやすくなるので、空洞3の厚さQは6μm程度以下に、幅Pは100μm〜200μm程度以下とするとよい。
【0073】
また、1200Vクラスの高耐圧レベルシフタを想定した場合、p-基板1としては比抵抗率250〜400Ω・cm程度のものを用いる。
つぎに、SON構造35の空洞3の形成方法を説明する。支持基板であるp-基板1にマスク酸化膜(熱酸化)を形成し、トレンチホールのパターニング後にドライエッチングでトレンチのエッチングを行う。
【0074】
つぎに、エッチング後はウェットエッチングでマスク酸化膜を除去し、1000〜1200℃高温下の不活性ガス雰囲気(例えば水素ガス)でアニール処理を行う。
このアニール後はトレンチホールパターンの上部が塞がり空洞3が形成される。
【0075】
ここで、電解エッチングなどでポーラスシリコンを形成し、高温下の不活性ガス雰囲気でアニール処理を行い、空洞3を形成してもよい。空洞3形成後、n-エピ層2の成長をさせる。n-エピ層2の不純物濃度は1×1014〜1×1016/cm3程度である。
【0076】
図2に示されているように、空洞3に接するフローティングp領域5、GND端子11に接続するGNDp領域4および空洞3上にDbのp+領域6とn+領域7をそれぞれ形成するために、パターニング後にリン・ボロンのイオン注入を行う。ドーズ量は次の通りである。Dbのp+領域6は1×1012〜1×1014/cm2、Dbのn+領域7は1×1015/cm2、フローティングp領域5は1×1012〜5×1014/cm2、GNDp領域4は1×1012〜1×1014/cm2程度である。
【0077】
フローティングp領域5を空洞3にまで拡散させ、かつGNDp領域4をp-基板1に達するように拡散させるため、イオン注入後に1100〜1200℃程度で10時間ほどアニール処理をする。このフローティングp領域5によって、VDD端子12に接続されたDbのp+領域6からGND端子11に接続するp-基板1への正孔によるリーク電流を抑えることができる。
【0078】
ここでDbのp+領域6とn+領域7が空洞3にまで拡散してもかまわない。但し、Dbのp+領域6、フローティングp領域5およびGNDp領域4同士が接続しないように、互いに隙間を設ける。Dbのp+領域6とn+領域7の間隔は100μm程度に設定し、p+領域6とフローティングp領域5の間はVDD電源電圧(例えば、15V程度)でパンチスルーしない広さに空ける。
【0079】
図1に示すように、半導体層の表面構造は、p+領域6であるアノード領域とアノード電極9(VDD端子12に接続)、n+領域7であるカソード領域とカソード電極10(U−VCC端子13に接続)、p+領域であるGNDp領域4とGND電極8、図2(b)に示すように、フィールド酸化膜であるLOCOS41、TEOS(テトラエトキシシラン)やBPSG(ボロン・リンガラス)などのシリコン酸化膜である層間絶縁膜42およびシリコン窒化膜であるパッシベーション膜43により構成されている。
【0080】
ここで、空洞3形成後にn-エピ層2ではなくp-エピ層を成長させ、リン不純物を注入し拡散することで、図2(b)のGNDp領域4とフローティングp領域5の間のn領域と、フローティングp領域5からDbのカソード領域であるn+領域7までの間のn領域を形成してもよい。不純物注入後、1100〜1200℃で10時間ほどアニール処理を行い、これらのn領域を空洞の深さまで拡散させる。このとき、これらのn領域の濃度は1×1014〜1×1017/cm3程度である。この場合、図2(b)のフローティングp領域5はp-エピ層2に置き換わる。または、n-エピ層2ではなくp-エピ層を成長させ、GNDp領域4からn+領域7までの間のn領域を一体として形成し、その後にGNDp領域4を形成してもよい。
【0081】
また、図4に示すように、前記の空洞3をGNDp領域4に接するように形成しても良い。
第1実施例で示したようにフローティングp領域5を設けることで、外付けのブートストラップコンデンサC1を充電する時に、p-基板1へのホールによるリーク電流を抑えることができる。また、ホールによるリーク電流を抑えることで、消費電力が小さく高機能なゲートドライブ回路を有する高耐圧集積回路装置100を実現できる。
【0082】
また、ブートストラップダイオードDbをp-基板1に形成すること(内蔵化)によって、このブートストラップダイオードDbを外付けした場合に比べてプリント基板など導電パターン付絶縁基板の省面積化ができる。
【0083】
また、空洞3はブートストラップダイオードDbの島領域(帯状のリング領域)に部分的に形成すればよいので、ウェハ(p-基板1)の反りに与える影響は少ない。
また、部分SON形成には、トレンチホール形成工程(マスク酸化,パターニング,トレンチエッチング)・水素アニール工程・エピ成長工程を加えるだけでよいので、第5実施例に示すSOI基板を用いる場合より製造コストを抑えることができる。
【0084】
図5は、ハイサイド側にあるロジック部がGNDp領域4の外側に配置された要部平面図である。
ブートストラップダイオードDbのカソード領域であるn+領域7はボンディングワイヤ45でハイサイド側にあるロジック部と接続される。このハイサイド側にあるロジック部もまたブートストラップダイオードDbを取り囲むGNDp領域4とは別のGNDp領域4で取り囲まれている。このロジック部は図1のCMOS回路33などで構成され、図3のGDU−Uが含まれる。
【0085】
また、空洞3を形成する範囲は、最小でフローティングp領域5からn+領域7である。また、これより広くしてハイサイド側のロジック部下まで形成しても構わない。空洞3が広いほどp-基板1へのホールによるリーク電流が小さくなる。
【0086】
つぎに、前記の空洞3の厚さについて説明する。一般にリサーフ(RESURF)効果を損なわないときの誘電体分離半導体装置の耐圧Vbrはポアソン式を変換して式(1)で表される。
【0087】
Vbr=Ecr×(d/2+Tox×εsi/εox)・・・(1)
ここでEcrは臨界電界、dはn-型半導体層の厚さ、Toxは誘電体層の厚さ、εsiはシリコンの比誘電率、εoxは誘電体の比誘電率である。
【0088】
誘電体層が空洞3の場合、εoxに対応する空洞3の誘電率εcabityは1となり、Ecr=3×105(V/cm),d=10μm,εsi=11.7で、Toxに対応する空洞3の厚さTcabity=4μmを代入するとVbr=1550Vとなる。この空洞3の厚さはSOI基板を用いるときの酸化膜の厚さの1/4程度になる。
【0089】
一般に高耐圧集積回路装置100に搭載されるレベルシフタLSUや高耐圧ブートストラップダイオードDbの耐圧は1200V製品仕様の場合にはn-半導体層(n-エピ層2)の比抵抗バラツキ、空洞3の厚さバラツキ、さらに外付け部品のパワートランジスタQ1,Q4の実耐圧などを加味すると最低でも1500V程度の耐圧が要求される。(1)式から、誘電体分離半導体装置の高耐圧化にはn-半導体層(n-エピ層2)、または誘電体層の厚膜化を行えばよいことがわかるが、誘電体層を空洞3とした場合、空洞3を厚くしてしまうと、空洞3が潰れてしまう。よって空洞3の厚さは4〜6μm程度が好適である。
【0090】
また、空洞3にアノード領域となるp+領域6およびカソード領域となるn+領域7を接するように形成しても構わない。
【実施例2】
【0091】
図6は、この発明の第2実施例の高耐圧集積回路装置200の要部断面図である。これは、フローティングp領域5とGNDp領域4の間にあるn-エピ層2をコンタクト領域であるn+領域37を介してVDD端子12に接続した場合の断面構造図である。
【0092】
フローティングp領域5とGND端子11に接続されたGNDp領域4の間に挟まれたn-エピ層2をコンタクト領域であるn+領域37を介してVDD端子12に接続する。
こうすることで、実施例1の効果に加えて、VDD端子12に正電圧サージが入力したときに、GNDp領域4とn-エピ層2のpn接合のアバランシェで発生する電子がフローティングp領域5に入りことを防止する。これによってフローティングp領域5の電位低下が防止され通常動作でフローティングp領域5とこのフローティングp領域5とp+領域6の間にあるn-エピ層2とで構成されるpn接合38がアバランシェを起こすことが防止される。その結果、通常動作時の消費電流を減少させることができる。
【実施例3】
【0093】
図7は、この発明の第3実施例の高耐圧集積回路装置300の要部断面図である。これは、Dbのn+領域7であるカソード領域側にもフローティングp領域39を形成した場合である。
【0094】
この構成とすることで、ホールがDbのp+領域6(アノード領域)からp-基板1へ流れる正孔によるリーク電流を防ぐことができる。
【実施例4】
【0095】
図8は、この発明の第4実施例の高耐圧集積回路装置400の要部断面図である。これは、Dbのn+領域7であるカソード領域側にもフローティングp領域5を形成した場合である。
【0096】
実施例3との違いは、フローティングp領域5とGND端子11に接続されたGNDp領域4の間に挟まれたn-エピ層2をコンタクト領域であるn+領域37を介してVDD端子12に接続した点である。こうすることで、実施例3の効果に加えて、VDD端子12に正電圧サージが入力したときに、GNDp領域4とn-エピ層2のpn接合のアバランシェで発生する電子がフローティングp領域5に入ることを防止する。これによってフローティングp領域5の電位低下が防止され、通常動作でフローティングp領域5とn-エピ層2のpn接合38がアバランシェを起こすことが防止される。その結果、通常動作時の消費電流を減少させることができる。
【実施例5】
【0097】
図9は、この発明の第5実施例の高耐圧集積回路装置500の要部断面図である。図1との違いは、部分SON構造35の代わりに部分SOI基板40を用いた点である。この場合の絶縁膜である酸化膜40aの厚さは、1500V程度の耐圧では15μm(εox=3.9で計算)程度必要となりSON構造の空洞3の場合に比べて4倍程度厚く製造コストが増大する。また、全面が酸化膜であるSOI基板を用いても構わない。
【実施例6】
【0098】
図10は、この発明の第6実施例の高耐圧集積回路装置500の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のZ−Z線で切断した要部断面図である。
これはロジック部とレベルシフト回路を形成した領域の平面図である。ブートストラップダイオードDbはロジック部を挟んでレベルシフト回路と反対側に形成されている。
【0099】
GNDp領域4は全体を取り囲んでいる。フローティングp領域5は、ブートストラップダイオードDbとロジック部をレベルシフト回路側を除いて取り囲んでいる。カソード領域であるn+領域7はフローティングp領域5に対向して形成される。アノード領域であるp+領域6はn+領域7に対向してX−X線上に形成しその長さはn+領域7より大幅に短くする。
【0100】
また、レベルシフト回路形成領域下にもSON構造の空洞3をGNDp領域4に接するように形成する。また、空洞3は、n+領域7からフローティングp領域5との間のp-基板1とn-エピ層2の界面に形成される。空洞3は、ロジック回路を囲むように環状に形成することが望ましい。また、空洞3をGNDp領域4内全面に形成してもよい。
【0101】
+領域6からn-エピ層2に注入された正孔はn+領域7に大部分は吸い取られが多少はn+領域7とフローティングp領域5に挟まれ、下側は空洞3があるn-エピ層2を長い距離(高い抵抗R)流れて行く。この箇所は抵抗が高いため、その少ない正孔もn+領域7に吸い取られる。また、フローティングp領域5が無いレベルシフト回路形成領域下には空洞3が形成されているため、p-基板1への正孔による漏れ電流は極めて小さくなる。
【0102】
尚、図中の符号で53,54,55はレベルシフト回路を構成するMOSFETのドレイン、ソース、ゲートである。
【符号の説明】
【0103】
1 p-基板
2 n-エピ層
3 空洞
4 GNDp領域
5,39 フローティングp領域
6 p+領域(アノード領域)
7 n+領域(カソード領域)
8 GND電極
9 アノード電極
10 カソード電極
11 GND端子
12 VDD端子
13 U−VCC端子
14 U−OUT端子
15 U−GATE端子
16 VDD電源
18 pソース領域
19 pドレイン領域
20 nコンタクト領域
21 pオフセット領域
22 nソース領域
23 nドレイン領域
24 pコンタクト領域
25,28 ゲート電極
26,29 ソース電極
27,30 ドレイン電極
31 pチャネルMOSFET
32 nチャネルMOSFET
33 CMOS回路
35 SON構造
40 部分SOI基板
41 LOCOS
42 層間絶縁膜
43 パッシベーション膜
45 ボンディングワイヤ
51,52 点線
53 ドレイン
54 ソース
55 ゲート
100,200,300,400,500 高耐圧集積回路装置
Db ブートストラップダイオード
C1 ブートストラップコンデンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されるn型の半導体層と、
前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、島領域を区分するp型の分離領域と、
前記島領域内の表面層に形成されたn型のカソード領域と、
前記分離領域と前記カソード領域との間で両者と離れて前記島領域内の表面層に形成されたp型のアノード領域と、
少なくとも前記カソード領域、前記アノード領域および前記カソード領域と前記アノード領域の間の下方に位置し、前記半導体層と前記半導体基板との界面に形成された絶縁分離領域と、
前記分離領域と前記アノード領域との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第1フローティング領域と、
前記島領域内の前記カソード領域より内側で前記半導体層の表面に形成された半導体素子と、
前記半導体基板および前記分離領域は前記アノード領域および前記カソード領域よりも低い電位が与えられる半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁分離領域が前記分離領域まで延在していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁分離領域が空洞であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記カソード領域と前記半導体素子との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第2フローティング領域を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1フローティング領域と前記分離領域との間の前記半導体層の表面層にn型のコンタクト領域を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記アノード領域に与える電位と同じ電位を前記コンタクト領域に与えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
p型の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されるn型の半導体層と、
前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、第1島領域を区分するp型の第1分離領域と、
前記半導体層の表面から前記半導体基板との界面にかけて前記半導体層内部に形成され、前記第1島領域と離れて第2島領域を区分するp型の第2分離領域と、
前記第1島領域内の表面層に形成されたn型のカソード領域と、
前記第1分離領域と前記カソード領域との間で両者と離れて前記第1島領域内の表面層に形成されたp型のアノード領域と、
少なくとも前記カソード領域、前記アノード領域および前記カソード領域と前記アノード領域の間の下方に位置し、前記半導体層と前記半導体基板との界面に形成された絶縁分離領域と、
前記第1分離領域と前記アノード領域との間で両者と離れて前記半導体層の表面から前記絶縁分離領域にかけて前記半導体層内部に形成されたp型の第1フローティング領域と、
前記第2島領域内で前記半導体層の表面に形成された半導体素子と、
前記半導体基板および前記第1分離領域は前記アノード領域および前記カソード領域よりも低い電位が与えられる半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁分離領域が前記第1分離領域まで延在していることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁分離領域が空洞であることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記カソード領域と前記半導体素子とを電気的に接続するボンディングワイヤを備えることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1フローティング領域と前記分離領域との間の前記半導体層の表面層にn型のコンタクト領域を備えることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記アノード領域に与える電位と同じ電位を前記コンタクト領域に与えることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−227300(P2012−227300A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92568(P2011−92568)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】