説明

半導体装置

【課題】再開トリガ信号を生成できないことによってリードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうことを防止する。
【解決手段】DLL回路100には、当該DLL回路100を初期起動させるリセット信号RESETと、内部クロック信号LCLKの内部クロック信号ICLKに対する遅延量の制御を当該DLL回路100に再開させる再開トリガ信号RESTARTとが入力され、DLL回路100は、リセット信号RESET又は再開トリガ信号RESTARTが活性化されたことに応じて遅延量の制御を開始し、リセット信RESET号が活性化された後再開トリガ信号RESTARTが活性化される前には、当該DLL回路100のロック後にも遅延量の制御を継続し、再開トリガ信号RESTARTが活性化された後には、当該DLL回路100のロックに応じて遅延量の制御を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にDLL(Delay-Locked Loop)回路を用いてクロック信号を生成する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クロックに同期した動作を行う半導体装置が広く使用されている。例えば、パーソナルコンピュータなどのメインメモリとして用いられるDDR(Double Data Rate)型のシンクロナスメモリなどである。このような半導体装置では、リードデータの出力タイミングを外部クロック信号に対して正確に同期させる必要があることから、外部クロック信号に同期した内部クロック信号を生成するためのDLL回路が用いられる。特許文献1には、このようなDLL回路の例が開示されている。
【0003】
DLL回路は一般に、外部クロック信号と内部クロック信号の位相差及び内部クロック信号のデューティー比に基づいてカウント値が更新されるカウンタ回路と、外部クロック信号を遅延させることにより内部クロック信号を生成するディレイラインとを備え、カウンタ回路のカウント値によってディレイラインの遅延量が決まるよう構成されている。カウント値の更新動作、すなわち遅延量の制御動作は、DLL回路がロックした後、つまり、位相差及びデューティー比がそれぞれ所定値(一般には位相差がゼロ、デューティー比が50%)に達した後も、外部クロック信号に追従すべく継続される。このため、DLL回路はロックした後においても所定の電力を消費し続けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、DLL回路がロックした場合にディレイラインの遅延量の制御動作を止め、一方で必要に応じて制御動作を再開させる技術が考案されている。これによれば、DLL回路の消費電力を低減できる一方、必要時には遅延量制御動作が再開することから、遅延量制御動作を停止させたことによってリードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうことも防止できる。
【0006】
上記技術においては、遅延量制御動作の再開は再開トリガ信号によって行われる。これは、半導体装置内部において、リフレッシュコマンド、カウンタ出力、オシレータ出力などに応じて自動生成される信号であり、DLL回路を初期起動するためのリセット信号とは異なる信号である。再開トリガ信号を用いることにより、例えばリフレッシュ動作の開始タイミングで遅延量制御動作を再開することや、定期的に遅延量制御動作を再開することが実現される。
【0007】
しかしながら、このような再開トリガ信号を利用することは、遅延量制御動作を再開できなくなってしまうリスクを抱えることになる。つまり、再開トリガ信号を必ず生成できるのであれば問題ないが、半導体装置の動作環境(電源電圧や温度など)によっては、再開トリガ信号の生成ができない場合がある。このような場合、初期起動後に一旦DLL回路がロックして遅延量制御動作が停止した後、少なくとも動作環境が変化するまでの間、二度と遅延量制御動作が再開されなくなるため、上述した位相差及びデューティー比が上記所定値から大幅にずれ、リードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうおそれがある。
【0008】
なお、リセット信号が生成できなくなる可能性ももちろんあるが、そのような場合、DLL回路がそもそも全く動作しないことから、リードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が開始されることがない。したがって、同期外れという事象は発生しない。
【0009】
再開トリガ信号の生成ができないのは一種の不良であるが、電源電圧や温度などの条件が一定である製造工程でのテストでは必ずしも検出できず、実機に搭載して初めて判明する場合もある。したがって、再開トリガ信号を生成できないことによってリードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうことの防止策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による半導体装置は、第1のクロック信号を遅延させてなる第2のクロック信号を生成するDLL回路を備える半導体装置であって、前記DLL回路には、当該DLL回路を初期起動させるリセット信号と、前記第2のクロック信号の前記第1のクロック信号に対する遅延量の制御を当該DLL回路に再開させる再開トリガ信号とが入力され、前記DLL回路は、前記リセット信号又は前記再開トリガ信号が活性化されたことに応じて前記遅延量の制御を開始し、前記リセット信号が活性化された後前記再開トリガ信号が活性化される前には、当該DLL回路のロック後にも前記遅延量の制御を継続し、前記再開トリガ信号が活性化された後には、当該DLL回路のロックに応じて前記遅延量の制御を停止することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の一側面による半導体装置は、第1のクロック信号を遅延させてなる第2のクロック信号を生成する機能を有し、前記第1のクロック信号の位相と前記第2のクロック信号に基づいて生成される参照クロック信号の位相とが一致するよう、前記第2のクロック信号の前記第1のクロック信号に対する遅延量を制御するDLL回路を備える半導体装置であって、前記DLL回路には、第1及び第2のDLL更新信号がこの順で順次入力され、前記DLL回路は、前記第1のDLL更新信号を受けて前記遅延量の制御を開始し、その後前記第1のクロック信号の位相と前記参照クロック信号の位相とが実質的に一致した後にも前記遅延量の制御を継続し、前記第2のDLL更新信号を受けた後、前記第1のクロック信号の位相と前記参照クロック信号の位相とが実質的に一致したことに応じて前記遅延量の制御を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リセット信号(第1のDLL更新信号)が活性化されたことに応じて開始される遅延量の制御がDLL回路のロック後にも停止されないので、仮に再開トリガ信号(第2のDLL更新信号)がいつまでも活性化されなかったとしても、DLL回路のロック状態を維持できる。したがって、再開トリガ信号を生成できないことによってリードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい実施形態による半導体装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましいの実施の形態によるDLL回路の回路構成を示す図である。
【図3】本発明の好ましいの実施の形態によるDLL回路において使用される各種信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置10の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施形態による半導体装置10はDDR型のSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)であり、外部端子として、クロック端子11a,11b、コマンド端子12a〜12e、アドレス端子13及びデータ入出力端子14を備えている。その他、電源端子やデータストローブ端子なども備えられているが、これらについては図示を省略してある。
【0017】
クロック端子11a,11bは、それぞれ外部クロック信号CK,/CKが供給される端子であり、供給された外部クロック信号CK,/CKは、クロック入力回路21に供給される。本明細書において信号名の先頭に「/」が付されている信号は、対応する信号の反転信号又はローアクティブな信号であることを意味する。したがって、外部クロック信号CK,/CKは互いに相補の信号である。クロック入力回路21は、外部クロック信号CK,/CKに基づいて単相の内部クロック信号ICLKを生成し、これをDLL回路100に供給する。
【0018】
DLL回路100は、内部クロック信号ICLKを受けて、外部クロック信号CK,/CKに対して位相制御され、かつデューティー制御された内部クロック信号LCLKを生成するクロック生成回路である。生成された内部クロック信号LCLKは、データ入出力回路70に供給される。図1に示すように、DLL回路100には、ディレイライン110、遅延量制御回路120、再開トリガ信号生成回路130、及び起動回路140が含まれている。DLL回路100の詳細について後述する。
【0019】
コマンド端子12a〜12eは、それぞれロウアドレスストローブ信号/RAS、カラムアドレスストローブ信号/CAS、ライトイネーブル信号/WE、チップセレクト信号/CS、及びオンダイターミネーション信号ODTが供給される端子である。これらのコマンド信号CMDは、コマンド入力回路31に供給される。コマンド入力回路31に供給されたこれらコマンド信号CMDは、コマンドデコーダ32に供給される。コマンドデコーダ32は、コマンド信号の保持、デコード及びカウントなどを行うことによって、各種内部コマンドICMDを生成する回路である。生成された内部コマンドICMDは、ロウ系制御回路51、カラム系制御回路52、モードレジスタ53、データ入出力回路70及びDLL回路100などに供給される。
【0020】
アドレス端子13は、アドレス信号ADDが供給される端子であり、供給されたアドレス信号ADDは、アドレス入力回路41に供給される。アドレス入力回路41の出力は、アドレスラッチ回路42に供給される。アドレスラッチ回路42にラッチされたアドレス信号ADDのうち、ロウアドレスについてはロウ系制御回路51に供給され、カラムアドレスについてはカラム系制御回路52に供給される。また、モードレジスタセットにエントリしている場合には、アドレス信号ADDはモードレジスタ53に供給され、これによってモードレジスタ53の内容が更新される。
【0021】
ロウ系制御回路51は、アドレスラッチ回路42より供給されるロウアドレスをロウデコーダ61に供給する回路である。また、ロウ系制御回路51にはリフレッシュカウンタ51aが含まれる。リフレッシュカウンタ51aのカウント値はリフレッシュ対象のロウアドレス(リフレッシュアドレス)を示しており、内部コマンドICMDの一種であるリフレッシュ信号が活性化されたタイミングで、ロウアドレスとしてロウデコーダ61に供給される。
【0022】
ロウデコーダ61は、メモリセルアレイ60に含まれるいずれかのワード線WLを選択する回路である。メモリセルアレイ60内においては、複数のワード線WLと複数のビット線BLが交差しており、その交点にはメモリセルMCが配置されている(図1では、1本のワード線WL、1本のビット線BL及び1個のメモリセルMCのみを示している)。メモリセルMCに記憶されたデータを保持するためにはリフレッシュ動作(メモリセルの情報の再更新)が必要であり、リフレッシュ対象のアドレスは、ロウ系制御回路51から入力される上記リフレッシュアドレスによって指定される。ビット線BLは、センス回路63内の対応するセンスアンプSAに接続されている。
【0023】
カラム系制御回路52の出力は、カラムデコーダ62に供給される。カラムデコーダ62は、センス回路63に含まれるいずれかのセンスアンプSAを選択する回路である。カラムデコーダ62によって選択されたセンスアンプSAは、メインI/O線MIOを介してデータアンプ64に接続される。データアンプ64は、リード動作時においてはセンスアンプSAによって増幅されたリードデータをさらに増幅し、リードライトバスRWBSを介してこれをデータ入出力回路70に供給する。一方、ライト動作時においては、リードライトバスRWBSを介してデータ入出力回路70から供給されるライトデータを増幅し、これをセンスアンプSAに供給する。
【0024】
データ入出力端子14は、リードデータDQの出力及びライトデータDQの入力を行うための端子であり、データ入出力回路70に接続されている。データ入出力回路70には出力バッファ71が含まれており、リード動作時においては内部クロック信号LCLKに同期して出力バッファ71からリードデータDQが出力される。なお、図1にはデータ入出力端子14を1つだけ示しているが、データ入出力端子14の数が1つである必要はなく、複数個設けても構わない。
【0025】
以上が本実施形態による半導体装置10の全体構成である。次に、DLL回路100について詳細に説明する。
【0026】
図2は、DLL回路100の回路構成を示す図である。上述したように、DLL回路100は、内部クロック信号ICLK(第1のクロック信号)に基づいて内部クロック信号LCLK(第2のクロック信号)を生成する機能を有する。内部クロック信号LCLKは内部クロック信号ICLKを所与の遅延量だけ遅延させてなる信号であり、その周期は内部クロック信号ICLKの周期と同一である。
【0027】
ディレイライン110は、内部クロック信号ICLKを遅延させることによって出力用の内部クロック信号LCLKを生成する遅延回路であり、その遅延量は、内部クロック信号LCLKの位相及びデューティーを制御することを目的として、遅延量制御回路120によって調整される。特に限定されるものではないが、ディレイライン110には、相対的に粗い調整ピッチで内部クロック信号ICLKを遅延させるコースディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチで内部クロック信号ICLKを遅延させるファインディレイラインを含んでいることが好ましい。
【0028】
遅延量制御回路120は、内部クロック信号ICLK,LCLKを受け、これらに基づいて、リードデータDQの出力タイミングが内部クロック信号ICLKと同期し、かつ内部クロック信号LCLKのデューティー比が所定値(通常は50%)となるよう、ディレイライン110の遅延量を制御する回路である。図2に示すように、遅延量制御回路120は、バッファ121、レプリカ回路122、位相・デューティー判定回路123、制御回路124、分周回路125、カウンタ回路126、ディレイ回路127、及び更新停止・再開回路128を有している。以下、これらの回路について一つ一つ説明する。
【0029】
バッファ121は、図1に示した出力バッファ71と実質的に同一の回路構成を有している。また、レプリカ回路122は、DLL回路100からデータ入出力端子14に至るまでのその他の回路と実質的に同一の回路構成を有している。したがって、バッファ121とレプリカ回路122とによって、DLL回路100からデータ入出力端子14に至るまでの回路のレプリカ回路が実現されている。なお、バッファ121及びレプリカ回路122にはトランジスタが含まれるが、そのサイズを対応するトランジスタのサイズと同一にする必要はない。すなわち、インピーダンスが実質的に同じである限り、バッファ121及びレプリカ回路122にはシュリンクしたトランジスタを用いても構わない。
【0030】
バッファ121には内部クロック信号LCLKが入力されており、レプリカ回路122にはバッファ121の出力(バッファ121を通過した内部クロック信号LCLK)が入力される。レプリカ回路122は、入力された内部クロック信号LCLKに同期してフィードバッククロック信号fbCLK(参照クロック信号)を生成し、位相・デューティー判定回路123に出力する。バッファ121及びレプリカ回路122がDLL回路100からデータ入出力端子14に至るまでの回路のレプリカ回路となっていることから、フィードバッククロック信号fbCLKの位相及びデューティーは、データ入出力端子14の出力信号(リードデータDQ)の位相及びデューティーと正確に一致する。
【0031】
位相・デューティー判定回路123、制御回路124、及びカウンタ回路126は、協働して、フィードバッククロック信号fbCLKと内部クロック信号ICLKとの位相差、及びフィードバッククロック信号fbCLKのデューティー比のいずれか少なくとも一方に基づいてカウント値COUNTの更新動作を行う。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0032】
まず、位相・デューティー判定回路123は、内部クロック信号ICLKとフィードバッククロック信号fbCLKとの位相差を検出し、内部クロック信号ICLKに対してフィードバッククロック信号fbCLKの位相が進んでいるか或いは遅れているかを判定するとともに、フィードバッククロック信号fbCLKのデューティー比も検出し、検出したデューティー比が所定値に比べて大きいか小さいかも判定する。判定は内部クロック信号ICLKの毎周期ごとに行われ、その結果は判定信号PDとして制御回路124に供給される。
【0033】
制御回路124は、判定信号PDに基づいてアップダウン信号U/Dを更新する。この更新は、サンプリングクロック信号SYNCLKに同期して行われる。ここで、サンプリングクロック信号SYNCLKは、分周回路125によって生成される信号である。分周回路125は、内部クロック信号ICLKを分周することによって、より周波数の低いサンプリングクロック信号SYNCLKを生成する機能を有する。特に限定されるものではないが、分周数は16又は32に設定することが好適である。したがって、例えば、分周回路125が内部クロック信号ICLKを16分周する場合には、内部クロック信号ICLKの16サイクルごとにサンプリングクロック信号SYNCLKが活性化することになる。この場合、アップダウン信号U/Dの更新周期は16クロックサイクルとなる。制御回路124によって生成されたアップダウン信号U/Dは、カウンタ回路126に供給される。
【0034】
カウンタ回路126は、アップダウン信号U/Dに基づいてカウントアップ又はカウントダウンする機能を有する。このカウントアップ又はカウントダウンは、上述したサンプリングクロック信号SYNCLKがディレイ回路127を通過することによって得られる遅延サンプリングクロック信号SYNCLKDに同期して行われる。カウンタ回路126のカウント値COUNTはディレイライン110に供給され、これによってディレイライン110の遅延量が定められる。
【0035】
更新停止・再開回路128は、カウント値COUNTに基づいて当該DLL回路100がロックしているか否かを判定する機能を有し、ロックしていると判定した場合には、遅延量制御回路120による遅延量の制御を停止する。具体的には、停止指示信号STPを活性化することにより、バッファ121及び分周回路125の動作を停止する。これにより、遅延量制御回路120による遅延量の制御動作が停止する。なお、更新停止・再開回路128は、起動回路140から入力される起動信号SS(後述)が非活性状態である場合に限り、停止指示信号STPを活性化する処理を行う。
【0036】
ロックしているか否かの判定動作について説明する。DLL回路100がロック状態になると、フィードバッククロック信号fbCLKの位相と内部クロック信号ICLKの位相とが実質的に一致し、かつフィードバッククロック信号fbCLKのデューティー比が予め定められた目標値と実質的に一致することになる。「実質的に一致する」とは、完全に一致している場合の値を挟んで揺らいでいる場合を含むという意味である。この場合、カウント値COUNTは隣接する2つの値の間を行ったり来たりするようになる。更新停止・再開回路128は、カウント値COUNTの変化パターンを検出できるように構成されており、上記のように2つの値の間を行ったり来たりする変化パターンを検出した場合に、DLL回路100がロックしていると判定する。
【0037】
更新停止・再開回路128はまた、起動信号SSが活性化したことに応じて、停止指示信号STPを非活性化する機能も有する。停止指示信号STPが非活性化されると、バッファ121及び分周回路125が動作を開始し、遅延量制御回路120による遅延量の制御が開始される。
【0038】
以上、遅延量制御回路120内の各回路について説明した。
【0039】
次に、再開トリガ信号生成回路130は、遅延量制御回路120による遅延量の制御を再開させることを示す再開トリガ信号RESTARTを生成する回路である。再開トリガ信号RESTARTは、リフレッシュ信号REFB(上述したロウ系制御回路51に入力されるリフレッシュ信号と同じ信号)が活性化したことに応じて活性化する信号としてもよいし、オシレータの出力や何らかのカウント回路のカウント値に基づいて活性化する信号としてもよい。オシレータの出力に基づいて再開トリガ信号RESTARTを生成する場合、再開トリガ信号RESTARTは定期的に(一定周期で)活性化されることになる。
【0040】
起動回路140は、上述した再開トリガ信号RESTART又は内部コマンドICMDの一種であるリセット信号RESETが活性化されたことに応じて起動信号SSを活性化するとともに、再開トリガ信号RESTARTが非活性化されたことに応じて起動信号SSを非活性化する回路である。リセット信号RESETは、DLL回路100を初期起動させるために外部から入力される信号であり、通常は半導体装置10の電源投入時に活性化される。起動回路140は、リセット信号RESETが非活性化されたことに応じた起動信号SSの非活性化は行わない。
【0041】
起動回路140は、具体的には、図2に示すように、フリップフロップ141及びオア回路142を有している。フリップフロップ141は、D,S(Set),CLKの各入力及びQ出力を有して構成される。D入力には常にロウが入力され、S入力にはリセット信号RESETが入力され、CLK入力には再開トリガ信号RESTARTが入力される。オア回路142には、再開トリガ信号RESTARTとフリップフロップ141のQ出力とが入力され、オア回路142の出力は上述した起動信号SSとなる。
【0042】
起動回路140の動作により、DLL回路100では、リセット信号RESET又は再開トリガ信号RESTARTが活性化されたことに応じて遅延量の制御が開始される。また、リセット信号RESETが活性化された後再開トリガ信号RESTARTが活性化される前には、当該DLL回路100のロック後にも遅延量の制御が継続され、再開トリガ信号RESTARTが活性化された後には、当該DLL回路100のロックに応じて遅延量の制御が停止される。以下、各信号のタイミング図を参照しながら、このようなDLL回路100の動作について、詳しく説明する。
【0043】
図3は、リセット信号RESET、再開トリガ信号RESTART、フリップフロップ141のQ出力から出力される信号、起動信号SS、停止指示信号STPのタイミング図である。同図では、各信号をハイアクティブな信号としている。同図に示すように、遅延量制御回路120による遅延量の制御が行われる期間は、停止指示信号STPが非活性化状態である期間に一致する。
【0044】
図3に示すように、リセット信号RESET及び再開トリガ信号RESTARTはいずれもパルス状の信号である。リセット信号RESETはDLL回路100の初期起動時に一度だけ活性化され、再開トリガ信号RESTARTは、初期起動後必要に応じて何度も活性化される。再開トリガ信号RESTARTの具体的な活性化タイミングは、上述したように再開トリガ信号生成回路130によって決定される。
【0045】
初めに時刻Tでリセット信号RESET(第1のDLL更新信号)が活性化されると、フリップフロップ141のQ出力及び起動信号SSが相次いで活性化される。したがって、停止指示信号STPが非活性化され、遅延量制御回路120による遅延量の制御が開始される。時刻Tでリセット信号RESETが非活性化されてもフリップフロップ141のQ出力は活性化された状態のまま維持されるので、起動信号SSは非活性化されず、遅延量制御回路120による遅延量の制御は継続される。
【0046】
次に、時刻Tで再開トリガ信号RESTART(第2のDLL更新信号)が活性化すると、フリップフロップ141のQ出力が非活性化する。これは、D入力に入力されているロウがQ出力に出力されるようになるからであるが、これによりオア回路142の一方の入力であるQ出力が非活性化されることになる。しかし一方で、オア回路142の他方の入力である再開トリガ信号RESTARTが活性化されるので、結果的にオア回路142の出力である起動信号SSは、図3に示すように活性状態を維持する。したがって、遅延量制御回路120による遅延量の制御は継続される。言い換えれば、再開トリガ信号RESTART(第2のDLL更新信号)が活性化されるタイミングで、改めて遅延量制御回路120による遅延量の制御が開始される。フリップフロップ141のQ出力は、この後、再開トリガ信号RESTARTの状態にかかわらず非活性状態のまま維持される。
【0047】
その後、時刻Tで再開トリガ信号RESTART(第2のDLL更新信号)が非活性化すると、そのタイミングで起動信号SSが非活性化される。したがって、次にDLL回路100がロックしたタイミング(時刻T)で停止指示信号STPが活性化し、遅延量制御回路120による遅延量の制御動作が停止する。
【0048】
続いて、時刻Tで次の再開トリガ信号RESTART(第3のDLL更新信号)が活性化した場合には、オア回路142の動作により、起動信号SSが、再開トリガ信号RESTARTと同様のパルス状に活性化される。こうして起動信号SSが一時的に活性化されたことによって停止指示信号STPが非活性化し、遅延量制御回路120による遅延量の制御が開始される。そして、時刻TでDLL回路100がロック状態に到達すると、停止指示信号STPが活性化し、遅延量の制御は停止される。これ以降、再開トリガ信号RESTARTが活性化する都度、同様の処理が繰り返される。
【0049】
このように、DLL回路100では、リセット信号RESETが非活性化されても起動信号SSを非活性化しないようにしている。言い換えれば、リセット信号RESETが非活性化されたことに応じた起動信号SSの非活性化を行わないようにしているので、再開トリガ信号RESTARTが活性化するまでの間は、DLL回路100のロック後にも遅延量の制御が継続される。したがって、仮に再開トリガ信号RESTARTが全く生成されない状況となってしまった場合であっても、DLL回路100のロック状態は維持される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態による半導体装置10によれば、リセット信号RESETの活性化後、仮に再開トリガ信号RESTARTがいつまでも活性化しなかったとしても、DLL回路100のロック状態を維持できる。したがって、再開トリガ信号RESTARTを生成できないことによってリードデータの出力タイミングと外部クロック信号の同期が外れてしまうことが防止されている。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、位相とデューティの両方を制御するDLL回路に本発明を適用した例を取り上げて説明したが、いずれか一方のみを制御するDLL回路にも本発明は適用可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では、SDRAMに本発明を適用した例を取り上げたが、本発明は、外部クロック信号に同期したリードデータ出力を行う半導体装置であれば、メモリ用、ロジック用を問わず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 半導体装置
11a,11b クロック端子
12a〜12e コマンド端子
13 アドレス端子
14 データ入出力端子
21 クロック入力回路
31 コマンド入力回路
32 コマンドデコーダ
41 アドレス入力回路
42 アドレスラッチ回路
51 ロウ系制御回路
51a リフレッシュカウンタ
52 カラム系制御回路
53 モードレジスタ
60 メモリセルアレイ
61 ロウデコーダ
62 カラムデコーダ
63 センス回路
64 データアンプ
70 データ入出力回路
71 出力バッファ
100 DLL回路
110 ディレイライン
120 遅延量制御回路
121 バッファ
122 レプリカ回路
123 位相・デューティー判定回路
124 制御回路
125 分周回路
126 カウンタ回路
127 ディレイ回路
128 更新停止・再開回路
130 再開トリガ信号生成回路
131 フリップフロップ
132 オア回路
140 起動回路
CK,/CK 外部クロック信号
COUNT カウント値
fbCLK フィードバッククロック信号(参照クロック信号)
ICLK 内部クロック信号(第1のクロック信号)
LCLK 内部クロック信号(第2のクロック信号)
RESET リセット信号
RESTART 再開トリガ信号
SS 起動信号
STP 停止指示信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号を遅延させてなる第2のクロック信号を生成するDLL回路を備える半導体装置であって、
前記DLL回路には、当該DLL回路を初期起動させるリセット信号と、前記第2のクロック信号の前記第1のクロック信号に対する遅延量の制御を当該DLL回路に再開させる再開トリガ信号とが入力され、
前記DLL回路は、
前記リセット信号又は前記再開トリガ信号が活性化されたことに応じて前記遅延量の制御を開始し、
前記リセット信号が活性化された後前記再開トリガ信号が活性化される前には、当該DLL回路のロック後にも前記遅延量の制御を継続し、
前記再開トリガ信号が活性化された後には、当該DLL回路のロックに応じて前記遅延量の制御を停止する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記再開トリガ信号は、前記リセット信号が活性化された後、複数回にわたって活性化される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記リセット信号は、当該半導体装置の電源投入時に活性化される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記DLL回路は、
前記第1のクロック信号を前記遅延量だけ遅延させて前記第2のクロック信号を生成するディレイラインと、
前記リセット信号又は前記再開トリガ信号が活性化されたことに応じて起動信号を活性化する起動回路と、
前記起動信号が活性化したことに応じて前記遅延量の制御を開始する一方、前記起動信号が非活性状態であり、かつ当該DLL回路がロックしている場合に前記遅延量の制御を行わない遅延量制御回路と
を備え、
前記起動回路は、前記再開トリガ信号が非活性化されたことに応じて前記起動信号を非活性化する一方、前記リセット信号が非活性化されたことに応じた前記起動信号の非活性化を行わない
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記遅延量制御回路は、前記第2のクロック信号に基づいて生成される参照クロック信号と前記第1のクロック信号との位相差、及び前記参照クロック信号のデューティー比のいずれか少なくとも一方に基づいてカウント値の更新動作を行い、該カウント値に基づいて当該DLL回路がロックしているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1のクロック信号を遅延させてなる第2のクロック信号を生成する機能を有し、前記第1のクロック信号の位相と前記第2のクロック信号に基づいて生成される参照クロック信号の位相とが一致するよう、前記第2のクロック信号の前記第1のクロック信号に対する遅延量を制御するDLL回路を備える半導体装置であって、
前記DLL回路には、第1及び第2のDLL更新信号がこの順で順次入力され、
前記DLL回路は、前記第1のDLL更新信号を受けて前記遅延量の制御を開始し、その後前記第1のクロック信号の位相と前記参照クロック信号の位相とが実質的に一致した後にも前記遅延量の制御を継続し、前記第2のDLL更新信号を受けた後、前記第1のクロック信号の位相と前記参照クロック信号の位相とが実質的に一致したことに応じて前記遅延量の制御を停止する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記DLL回路には、前記第2のDLL更新信号に続いて第3のDLL更新信号が入力され、
前記DLL回路は、前記第3のDLL更新信号を受けて前記遅延量の制御を開始し、前記第1のクロック信号の位相と前記参照クロック信号の位相とが実質的に一致したことに応じて前記遅延量の制御を停止する
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のDLL更新信号は、当該半導体装置の電源投入時に前記DLL回路に入力される
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−94205(P2012−94205A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239194(P2010−239194)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】