説明

半田印刷検査装置及び半田印刷システム

【課題】半田印刷を行うにあたり、生産性の低下抑制等を図ることのできる半田印刷検査装置及び半田印刷システムを提供する。
【解決手段】半田印刷検査装置は、CCDカメラによって撮像された画像データに基づき、2つのランド2a,2bと接する半田ブリッジ3bを検出し、当該半田ブリッジ3bと接する2つのランド2a,2bの間の距離L1をブリッジ距離として算出する。そして、当該距離L1が許容範囲内であるか否かを判定し、当該距離L1が許容範囲内でないと判定した場合に、所定の重欠陥処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に印刷された半田を検査するための半田印刷検査装置及びこれを備えた半田印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に形成された多数のランド上に、半田印刷機によりクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。
【0003】
このような半田付けが行われるにあたり、複数のランド間を短絡させる半田ブリッジが生じることがある。そのため、半田印刷工程を経たプリント基板は、半田が各ランド上に良好に印刷されているか否か検査される(例えば、特許文献1参照)。そして、半田ブリッジが検出された場合には、半田印刷機を停止し、クリーニングやメタルマスクの交換等のメンテナンス作業が行われることとなる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−223281号公報
【特許文献2】特開2002−361830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、半田ブリッジが比較的発生しやすい、ランド間の距離が比較的近い部分のみを検査対象とし、半田ブリッジの有無を検出していた。このような検査により検出される半田ブリッジの中には、半田印刷機の稼働状態の良・不良とは無関係に単発的かつ偶発的に発生する軽微なものも数多く含まれる。そのため、かかる軽微な半田ブリッジを検出する度に一様に半田印刷機を停止させ、点検作業を行っていては、生産ラインを停止させる頻度が多くなり、生産性を著しく低下させるおそれがある。
【0006】
これを防止するため、例えば半田ブリッジの検出個数を記憶していき、当該検出個数が所定数を越えた場合に半田印刷機を停止させる構成とすることも考えられる。しかし、仮にメタルマスクの汚れ等、半田印刷機に何らか重大な異常が発生した場合には、半田ブリッジの発生頻度が著しく増加し、印刷不良となるプリント基板を繰り返し製造するおそれがある。かかる状況下において、当該半田印刷機のメンテナンスが行われないまま半田印刷が継続されると、検出される半田ブリッジの検出個数が所定数に到達するまでの間に、印刷不良となるプリント基板が数多く製造されることとなり、歩留まりが著しく低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、半田印刷を行うにあたり、生産性の低下抑制等を図ることのできる半田印刷検査装置及び半田印刷システムを提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.電子部品を実装するための複数のランドを有した基板上に印刷された半田を検査するための半田印刷検査装置であって、
前記基板に対し光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された基板を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データに基づき、2つの前記ランドと接する半田ブリッジを検出可能な半田ブリッジ検出手段と、
前記半田ブリッジと接する2つのランド同士又は当該ランドに対応して設定される半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士の間の距離をブリッジ距離として算出する距離算出手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内でないと判定した場合に、所定の重欠陥処理を実行する重欠陥処理手段とを備えたことを特徴とする半田印刷検査装置。
【0010】
上記「所定の重欠陥処理」としては、例えば何らかの異常が発生している旨の異常表示等を行う報知処理や、その旨を半田印刷機に対しフィードバックする各種信号の出力処理などが含まれる。
【0011】
上記のようにブリッジ距離が許容範囲を越えている半田ブリッジは、軽微なものではなく、半田印刷機の異常に起因して発生したものである蓋然性が高い。従って、かかる半田ブリッジが検出された場合には、半田印刷機の点検作業を行う必要がある。
【0012】
そこで、上記手段1のように、ブリッジ距離が許容範囲を越えている重度の半田ブリッジが1つでも検出された場合に、即座に上述したような各種重欠陥処理を行うようにすれば、半田印刷機が異常を抱えたまま、長期間、生産が継続されるといった事態を防ぐことが可能となる。結果として、不良品の発生を低減し、歩留まりの向上を図ることができる。
【0013】
一方で、本手段では、重度の半田ブリッジを検出した場合にのみ重欠陥処理を行う構成となっているため、ブリッジ距離が許容範囲内にある比較的軽微な半田ブリッジを検出する度にむやみに半田印刷機を停止させ、無駄な点検作業を行うこともない。結果として、生産性の向上を図ることができる。
【0014】
手段2.電子部品を実装するための複数のランドを有した基板上に印刷された半田を検査するための半田印刷検査装置であって、
前記基板に対し光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された基板を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データに基づき、2以上の前記ランドと接する半田ブリッジを検出可能な半田ブリッジ検出手段と、
1つの前記半田ブリッジと接する2以上のランド又は当該ランドに対応して設定される半田印刷領域若しくは半田検査枠のうち、最も遠い位置関係にある2つのランド同士又は半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士を抽出する抽出手段と、
前記抽出された2つのランド同士又は半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士の間の最短距離をブリッジ距離として算出する距離算出手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内でないと判定した場合に、所定の重欠陥処理を実行する重欠陥処理手段とを備えたことを特徴とする半田印刷検査装置。
【0015】
上記手段2では、上記手段1と同様の作用効果が奏されるとともに、特に以下の点において優れる。
【0016】
例えばBGA(ボール・グリッド・アレイ)等のICパッケージを実装する場合、基板上には、小さなランドが非常に狭い間隔で密集して配設されるため、非常に小さな半田ブリッジが発生しやすい状況となる。このようなランドの密集した基板に印刷される半田の状態を従来の検査方法、すなわち隣接する2つのランド間に半田ブリッジが存在するか否かを検出することによってのみ良否判断する方法では、上記「発明が解決しようとする課題」で述べたような不具合がより顕著に現われるおそれがある。
【0017】
これに対し、本手段2では、1つの半田ブリッジと接する複数のランド等の中で最も遠い位置関係にある2つのランド等を抽出する、すなわち複数のランドに跨って存在する比較的重度な半田ブリッジの存在を抽出するとともに、その程度が比較的大きい場合にのみ重欠陥処理を行う構成となっている。結果として、頻繁に半田印刷機を停止させることなく、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
手段3.前記基板の製造に係る各種設計データを記憶する記憶手段を備え、
前記半田ブリッジ検出手段は、前記設計データを基に前記半田ブリッジを検出するためのブリッジ検査枠を設定することを特徴とする手段1又は2に記載の半田印刷検査装置。
【0019】
上記手段3によれば、撮像手段によって撮像された画像データから抽出した各種情報を基に、ブリッジ検査枠の設定を行う構成に比べ、処理手順の簡素化や処理速度の向上を図ることができ、結果として検査効率ひいては生産効率を向上させることができる。
【0020】
上記同様の効果を得るため、例えば「前記基板の製造に係る各種設計データを記憶する記憶手段を備え、前記距離算出手段は、前記設計データを基に前記ブリッジ距離を算出する」こととしてもよいし、また「前記基板の製造に係る各種設計データを記憶する記憶手段を備え、前記抽出手段は、前記設計データを基に、前記最も遠い位置関係にある2つのランド同士又は半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士を抽出する」こととしてもよい。
【0021】
手段4.前記半田ブリッジの検出数を、前記ブリッジ距離の距離別に表示可能な表示手段を備えたことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の半田印刷検査装置。
【0022】
上記手段4によれば、半田ブリッジの検出数をブリッジ距離の距離別に表示することにより、半田ブリッジの発生傾向を把握しやすくなり、かかる傾向情報を半田印刷機の調整等を行う際に役立てることができる。さらに、ブリッジ距離が許容範囲内にない半田ブリッジが検出された場合には、当該半田ブリッジが検出されたことを表示手段を一見するだけで認識することができる。かかる表示処理を上記重欠陥処理としてもよい。加えて、所定時間又は所定検査単位の検出結果を時系列で複数並べて表示可能な構成としてもよい。このようにすれば、半田ブリッジの発生傾向をさらに把握しやすくなる。
【0023】
手段5.半田の印刷を行う半田印刷機と、
手段1乃至4のいずれかに記載の半田印刷検査装置とを備えた半田印刷システムであって、
前記重欠陥処理手段は、前記重欠陥処理として、前記半田印刷機に対し所定の異常信号を出力し、
前記半田印刷機は、前記異常信号を入力した場合には、所定の処理を実行することを特徴とする半田印刷システム。
【0024】
上記手段5によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏される。なお、「所定の処理」としては、例えば「半田の印刷動作を停止する処理」や、「印刷用スクリーン(メタルマスク)をクリーニングする処理」などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プリント基板の製造ラインの一部を模式的に示す概略図である。
【図2】プリント基板の構成を説明するための模式図である。
【図3】半田印刷検査装置を模式的に示す概略構成図である。
【図4】半田印刷システムの電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図5】半田ブリッジ検査の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図6】半田印刷領域、半田検査枠及びブリッジ検査枠を説明するための模式図である。
【図7】半田ブリッジ及びブリッジ距離を説明するための模式図である。
【図8】半田ブリッジ及びブリッジ距離を説明するための模式図である。
【図9】モニタの表示内容の一例を説明するための図である。
【図10】別の実施形態に係るブリッジ距離を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、プリント基板の製造ラインの一部を模式的に示す概略図である。
【0027】
まずプリント基板の構成について説明する。図2に示すように、プリント基板(以下、「基板」と称す)1は、複数のランド2を有する。ランド2上には、粘性を有するクリーム半田(以下、「半田」と称す)3が印刷されるとともに、半田3上にチップ等の電子部品4が搭載されている。電子部品4は複数の電極やリード(図示せず)を備えており、各電極やリードがそれぞれ所定の半田3に対して接合されている。なお、図2等では、便宜上、半田3を示す部分に散点模様を付している。
【0028】
次に基板1の製造システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態の基板製造システム10は、製造ラインに沿って、その上流側(図の左側)から順に、半田印刷システム11、部品実装機14及びリフロー装置15を備えている。
【0029】
半田印刷システム11は、クリーム半田印刷機12及び半田印刷検査装置13を備えている。
【0030】
クリーム半田印刷機(以下、「半田印刷機」と称す)12は、基板1のランド2上に所定量の半田3を印刷するためのものである。より詳しくは、半田印刷機12は、基板1上の各ランド2に対応する位置に開口部の形成されたメタルマスク(図示せず)を備えており、当該メタルマスクを用いて基板1に対し半田3をスクリーン印刷する。
【0031】
半田印刷検査装置13は、印刷された半田3を検査するためのものである。半田印刷検査装置13の詳細については後述する。
【0032】
部品実装機14は、印刷された半田3上に電子部品4を実装するためのものであり、リフロー装置15は、半田3を加熱溶融させてランド2と電子部品4の電極やリードとを接合するためのものである。
【0033】
図3に示すように、半田印刷検査装置13は、基板1を載置するための載置台31と、照射手段(三次元計測用照射手段)としての照明装置32と、撮像手段としてのCCDカメラ33と、各種制御や画像処理、演算処理等を行うための制御装置41とを備えている。
【0034】
載置台31には、回転軸がそれぞれ直交するモータ34,35が設けられている。当該モータ34,35が制御装置41によって駆動制御されることによって、載置台31に載せられた基板1が任意の方向(X軸方向及びY軸方向)へスライド移動させられるようになっている。これにより、CCDカメラ33の視野を相対移動させることができるようになっている。
【0035】
照明装置32は、基板1の表面に対し斜め上方から所定の光パターンを照射可能に構成されている。
【0036】
CCDカメラ33は、基板1の真上に配置され、基板1上の前記光パターンの照射された部分を撮像可能となっている。当該CCDカメラ33によって撮像された画像データは、CCDカメラ33内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置41に入力される。そして、制御装置41は、当該画像データを基に、後述するような画像処理や検査処理等を実施する。
【0037】
次に、この制御装置41について詳しく説明する。図4に示すように、制御装置41は、画像メモリ42、三次元計測部43、検査枠設定手段としての検査枠設定部44、半田領域抽出部45、半田ブリッジ抽出部46、記憶手段としての入力データメモリ47、演算処理部48、及び、検査結果及び統計データメモリ49を備えている。
【0038】
画像メモリ42は、CCDカメラ33により撮像された画像データを順次記憶するものである。
【0039】
三次元計測部43は、画像メモリ42に記憶された画像データを基に、基板1に印刷された半田3の三次元計測(主として高さ計測)を行うものである。本実施形態では、このように取得された半田3の高さデータ等を基に、半田3の印刷状態を検査する。なお、三次元計測を行うに際し、本実施形態では位相シフト法を採用しているが、この他にも光切断法、空間コード法、合焦法等、任意の計測方法を採用することができる。
【0040】
検査枠設定部44は、半田3の印刷状態の検査を行うに際し、画像メモリ42に記憶された画像データ上に各種検査枠を設定する機能を有する。例えば、半田3の位置ズレやかすれ等を検査するため、各ランド2に対応する位置には、半田印刷領域W1に合わせて半田検査枠W2が設定される(図6参照)。また、複数のランド2間に跨って存在する半田ブリッジ3b(図7,8等参照)の有無を調べるため、1組のランド2上の半田印刷領域W1間には、ブリッジ検査枠W3が設定される。各種検査枠の設定は、予め入力データメモリ47に記憶されたガーバデータ等の基板設計データに基づき行われる。
【0041】
半田領域抽出部45は、ブリッジ検査枠W3内において、所定の高さレベル以上でかつ一定以上の面積を有する半田塊を検出する機能を有する。
【0042】
半田ブリッジ抽出部46は、ブリッジ検査枠W3内の半田塊が半田ブリッジ3bであるか否かを判定する機能を有する。半田ブリッジ3bの検出は、例えば2つのランド2にそれぞれ設定された半田検査枠W2の両者と接する一繋がりの半田塊が存在するか否かにより行われる。勿論、この方法に限らず、半田ブリッジ3bの検出方法として他の方法を採用してもよい。
【0043】
三次元計測部43、検査枠設定部44、半田領域抽出部45及び半田ブリッジ抽出部46等の機能により、本実施形態における半田ブリッジ検出手段が構成される。
【0044】
入力データメモリ47は、基板1の製造に係る各種設計データなど、予め入力された各種データを記憶するものである。入力データメモリ47には、設計データとして、例えば基板1上のランド2の位置や大きさ、半田印刷領域W1、理想的な印刷状態における半田3のサイズ、基板1の大きさ等が記憶されている。
【0045】
演算処理部48は、検査に係る各種演算処理や判定処理を行うものである。例えば、演算処理部48は、後述するように、1つの半田ブリッジ3bと接する複数のランド2を抽出する処理や、これら2つのランド2間の最短距離であるブリッジ距離Lxを算出する処理、当該ブリッジ距離Lxが許容範囲内にあるか否かを判定する処理などを行う。
【0046】
検査結果及び統計データメモリ49は、画像データに関する座標等のデータ、演算処理部48による演算結果、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。
【0047】
また、制御装置41は、表示手段としてのモニタ51、データ入力手段としてのキーボード52、半田印刷機12などと接続されており、これらとの間で各種データや信号の入出力制御を行う機能を有する。かかる機能により、例えば画像メモリ42に記憶された画像データや、検査結果及び統計データメモリ49に記憶された各種データなどを適宜モニタ51に表示させることができる。また、後述するように、半田印刷機12との間で各種信号を送受信することができる。
【0048】
次に、半田印刷検査装置13によって行われる各種半田検査のうち、半田ブリッジ検査について図5を参照して詳しく説明する。図5は、半田ブリッジ検査の内容を示すフローチャートである。
【0049】
同図に示すように、まず、ステップS101において、検査対象となる基板1の画像データを取得する。詳しくは、照明装置32から所定の光パターンを照射しつつ、モータ34,35により基板1を順次移動させ、CCDカメラ33を用いて基板1全体を撮像し、その画像データを画像メモリ42に記憶する。
【0050】
次に、ステップS102において、画像メモリ42に記憶された画像データを基に、基板1に印刷された半田3の三次元計測を行う。これにより、各座標に対する高さデータが検査結果及び統計データメモリ49に記憶される。
【0051】
ステップS103では、上記画像データ及び高さデータを基に、半田領域(半田塊)抽出処理を行う。詳しくは、まず入力データメモリ47に記憶されたガーバデータ等の設計データに基づき、図6に示すように、画像データに対し、任意のランド2(半田印刷領域W1)間にブリッジ検査枠W3を設定する。次に、上記高さデータに対し、所定の高さレベルを閾値とした二値化処理を行う。そして、これらの処理結果を基に、所定の高さレベル以上のものについて塊処理を行い、ブリッジ検査枠W3内において一定以上の面積を有する半田塊を検出する。
【0052】
ステップS104では、半田ブリッジ抽出処理を行う。ここでは、複数のランド2(半田検査枠W2)間に跨って存在する半田塊を半田ブリッジ3b(図7,8等参照)として抽出する。
【0053】
ステップS105では、半田ブリッジ3bの有無を判定する。ここで、基板1上に半田ブリッジ3bが1つも存在しないと判定された場合には、そのまま半田ブリッジ検査を終了する。
【0054】
一方、基板1上に1つでも半田ブリッジ3bが存在すると判定された場合には、ステップS106において、1つの半田ブリッジ3bと接する2以上のランド2のうち、最も遠い位置関係にある2つのランド2を抽出する処理を行う。当該処理に係る機能が特に本実施形態における抽出手段を構成する。
【0055】
続くステップS107では、ブリッジ距離演算処理を行う。当該処理に係る機能が特に本実施形態における距離算出手段を構成する。ここでは、ステップS106において抽出した2つのランド2間の最短距離をブリッジ距離Lxとして算出する。
【0056】
例えば、図7に示す例では、2つのランド2a,2bが最も遠い位置関係にあるランドに相当し、当該ランド2a,2bの最短距離L1をブリッジ距離Lxとして算出する。また、図8に示す例では、3つのランド2c,2d,2eのうち、左右のランド2c,2eが、最も遠い位置関係にあるランドに相当し、当該ランド2c,2eの最短距離L2をブリッジ距離Lxとして算出する。なお、1枚の基板1につき、複数の半田ブリッジ3bが存在する場合には、半田ブリッジ3bの数だけこの処理を繰り返す。
【0057】
続くステップS108では、上記ブリッジ距離Lxが判定基準値Lo以上であるか否かを判定する。当該処理に係る機能が特に本実施形態における距離判定手段を構成する。本実施形態では、判定基準値Loは200μmに設定されている。
【0058】
ここで、ブリッジ距離Lxが判定基準値Lo未満と判定された場合には、ステップS110にて通常ブリッジ不良処理を実行した後、半田ブリッジ検査を終了する。
【0059】
通常ブリッジ不良処理では、製造ライン途中に設けられた所定の排出機構(図示せず)に対して、印刷不良を抱えた基板1に関する不良情報を送信する。これを受信した排出機構は、当該不良情報に係る基板1を不良品として製造ラインから排除する。
【0060】
併せて、通常ブリッジ不良処理では、半田ブリッジ検査の進行に伴い検査結果及び統計データメモリ49に順次記憶されていくブリッジ不良の発生数、及び、モニタ51における当該ブリッジ不良の発生数の表示内容を更新する処理が行われる。例えば、モニタ51では、ブリッジ不良の発生数がブリッジ距離Lxの距離別(例えば20μm刻み)でヒストグラム表示されている(図9参照)。
【0061】
一方、上記ステップS108において、ブリッジ距離Lxが判定基準値Lo以上であると判定された場合には、ステップS109にてブリッジ不良重欠陥処理を実行した後、上記同様、ステップS110にて通常ブリッジ不良処理を実行し、半田ブリッジ検査を終了する。ステップS109のブリッジ不良重欠陥処理が本実施形態における重欠陥処理に相当し、当該処理を実行する機能が特に重欠陥処理手段を構成する。
【0062】
ブリッジ不良重欠陥処理では、半田印刷機12に対し異常信号としてのメンテナンス要求信号を送信する。これを受信した半田印刷機12は、半田印刷動作を停止させる。併せて、ブリッジ不良重欠陥処理では、ブリッジ距離Lxが判定基準値Lo以上となる重度の半田ブリッジ3bが発生した旨を報知すべく、図9に示すように、モニタ51にて「重欠陥発生」の文字を表示する処理を行う。この報知表示により重度の半田ブリッジ3bの発生、ひいては半田印刷機12の停止を知った作業者は、メタルマスクが汚れていないか確認するなど、半田印刷機12の点検作業を行う。そして、半田印刷機12に生じていた種々の不具合を解消した後、当該半田印刷機12を再起動することにより、再度、基板1の製造ラインが稼働する。半田印刷機12が再起動された場合には、半田印刷機12から半田印刷検査装置13に対しメンテナンス済み信号が送信され、半田ブリッジ検査が再び開始される。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態では、半田ブリッジ3bの有無を検出するとともに、検出された半田ブリッジ3bの程度を判定し、当該半田ブリッジ3bが比較的軽微のものであれば、半田印刷機12を停止させることなく生産を継続し、比較的重度のものが検出された場合のみ、半田印刷機12を停止させ、点検作業を行う。このような構成とすることで、半田印刷機12が重大な異常を抱えたまま、長期間、生産が継続されるといった事態を防止するとともに、一方で、軽微な半田ブリッジ3bを検出する度にむやみに半田印刷機12を停止させ、無駄な点検作業を行う必要がない。結果として、不良品の発生を低減し、歩留まりの向上を図るとともに、生産性の向上を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、1つの半田ブリッジ3bと接する複数のランド2の中で最も遠い位置関係にある2つのランド2を抽出するとともに、当該ランド2間の最短距離をブリッジ距離Lxとして算出し、当該ブリッジ距離Lxを基に、半田ブリッジ3bの程度の判定を行っている。このような構成とすることで、予め入力データメモリ47に記憶されたガーバデータ等の基板設計データを基にブリッジ距離Lxの算出を行うことができる。そのため、仮にCCDカメラ33により撮像された画像データから抽出した各種情報を基に半田ブリッジ3bの長さ等を計算するよりも、処理手順の簡素化や処理速度の向上を図ることができる。結果として検査効率ひいては生産効率を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、半田検査枠W2及びブリッジ検査枠W3の設定もガーバデータ等の基板設計データに基づいて行っているため、上記同様、処理手順の簡素化や処理速度の向上を図り、検査効率ひいては生産効率を向上させることができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、モニタ51において、ブリッジ不良の発生数をブリッジ距離Lxの距離別でヒストグラム表示する構成となっている。これにより、半田ブリッジ3bの発生傾向を把握しやすくなり、かかる傾向情報を半田印刷機12の調整等を行う際に役立てることができる。さらに、ブリッジ距離Lxが許容範囲内にない半田ブリッジ3bが検出された場合には、当該半田ブリッジ3bが検出されたことをモニタ51を一見するだけで認識することができる。
【0067】
尚、上述した実施の形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0068】
(a)上記実施形態では、ブリッジ不良重欠陥処理(重欠陥処理)として、半田印刷機12に対し、半田印刷動作を停止させる旨のメンテナンス要求信号を送信する処理や、モニタ51において、重度の半田ブリッジ3bが発生した旨を報知する報知表示処理が行われる構成となっている。重欠陥処理はこれらの処理に限定されるものではない。例えば、半田印刷機12がメタルマスクを自動にクリーニングするクリーニング機構等を備えている場合には、半田印刷機12に対しクリーニング要求信号を送信する構成としてもよいし、半田印刷検査装置13が音声発生手段等を備えていれば、当該音声発生手段により警告音を発する処理などを行う構成としてもよい。
【0069】
(b)上記実施形態では、三次元計測により半田ブリッジ3bを検出する構成となっているが、これに限らず、二次元計測により半田ブリッジ3bを検出する構成としてもよい。例えば、CCDカメラ33により撮像された画像データに対し、所定の輝度値を閾値として二値化処理を行い、半田3の占める領域を抽出することにより、半田ブリッジ3bを検出する構成としてもよい。
【0070】
(c)上記実施形態では、予め記憶した設計データの位置情報等を基にブリッジ距離Lx(ランド2間の最短距離)を算出している。ブリッジ距離Lxの算出方法は、これに限定されるものではない。例えば、CCDカメラ33により撮像された画像データから各ランド2の位置データを取得し、当該位置データに基づき各ランド2の距離を算出するようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、2つのランド2の相対向した2辺間の距離をブリッジ距離Lx(ランド2間の最短距離)として算出しているが、これに限らず、例えば図10に示すように、ランド2上の所定点(例えば重心位置やコーナー部)間のX座標軸方向における距離ΔX又はY座標軸方向における距離ΔYのうち、大きい方の値をブリッジ距離Lxとして算出してもよい。勿論、所定点間の距離(ΔX2+ΔY21/2をブリッジ距離Lxとして算出してもよい。
【0072】
また、ランド2間の距離に代えて、当該ランド2に対応して設定される半田印刷領域W1同士又は半田検査枠W2同士の間の距離をブリッジ距離Lxとして算出する構成としてもよい。
【0073】
(d)上記実施形態では、設計データに基づき、半田検査枠W2及びブリッジ検査枠W3の設定を行う構成となっているが、これに限らず、CCDカメラ33により撮像された画像データを基に、ブリッジ検査枠W3等の設定を行う構成としてもよい。
【0074】
(e)上記実施形態では、基板1上の全ての半田ブリッジ3bについて、その程度を判定する構成となっているが、これに限らず、重度な半田ブリッジ3bを検出した時点で、その他残余の半田ブリッジ3bに関する判定処理を中止する構成としてもよい。このようにすれば、検査効率の向上を図ることができる。
【0075】
(f)上記実施形態では、ブリッジ不良重欠陥処理(重欠陥処理)として、半田印刷機12に対し、半田印刷動作を停止させる旨のメンテナンス要求信号を送信する構成となっているが、必ずしもこの段階で半田印刷機12を停止させる必要はなく、報知表示のみ行い、作業者が半田印刷機12を停止させるか否かの判断を行う構成としてもよい。
【0076】
(g)モニタ51における表示内容は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、所定時間又は所定検査単位のブリッジ不良の発生状況(図9に示したような表示内容)を時系列に複数並べて表示可能な構成としてもよい。このようにすれば、半田ブリッジ3bの発生傾向をさらに把握しやすくなる。
【符号の説明】
【0077】
1…基板、2…ランド、3…半田、3b…半田ブリッジ、11…半田印刷システム、12…半田印刷機、13…半田印刷検査装置、32…照明装置、33…CCDカメラ、41…制御装置、43…三次元計測部、44…検査枠設定部、45…半田領域抽出部、46…半田ブリッジ抽出部、47…入力データメモリ、48…演算処理部、49…検査結果及び統計データメモリ、51…モニタ、Lo…判定基準値、Lx…ブリッジ距離、W1…半田印刷領域、W3…ブリッジ検査枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装するための複数のランドを有した基板上に印刷された半田を検査するための半田印刷検査装置であって、
前記基板に対し光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された基板を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データに基づき、2つの前記ランドと接する半田ブリッジを検出可能な半田ブリッジ検出手段と、
前記半田ブリッジと接する2つのランド同士又は当該ランドに対応して設定される半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士の間の距離をブリッジ距離として算出する距離算出手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内でないと判定した場合に、所定の重欠陥処理を実行する重欠陥処理手段とを備えたことを特徴とする半田印刷検査装置。
【請求項2】
電子部品を実装するための複数のランドを有した基板上に印刷された半田を検査するための半田印刷検査装置であって、
前記基板に対し光を照射可能な照射手段と、
前記光の照射された基板を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データに基づき、2以上の前記ランドと接する半田ブリッジを検出可能な半田ブリッジ検出手段と、
1つの前記半田ブリッジと接する2以上のランド又は当該ランドに対応して設定される半田印刷領域若しくは半田検査枠のうち、最も遠い位置関係にある2つのランド同士又は半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士を抽出する抽出手段と、
前記抽出された2つのランド同士又は半田印刷領域同士若しくは半田検査枠同士の間の最短距離をブリッジ距離として算出する距離算出手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内であるか否かを判定する距離判定手段と、
前記ブリッジ距離が許容範囲内でないと判定した場合に、所定の重欠陥処理を実行する重欠陥処理手段とを備えたことを特徴とする半田印刷検査装置。
【請求項3】
前記基板の製造に係る各種設計データを記憶する記憶手段を備え、
前記半田ブリッジ検出手段は、前記設計データを基に前記半田ブリッジを検出するためのブリッジ検査枠を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の半田印刷検査装置。
【請求項4】
前記半田ブリッジの検出数を、前記ブリッジ距離の距離別に表示可能な表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半田印刷検査装置。
【請求項5】
半田の印刷を行う半田印刷機と、
請求項1乃至4のいずれかに記載の半田印刷検査装置とを備えた半田印刷システムであって、
前記重欠陥処理手段は、前記重欠陥処理として、前記半田印刷機に対し所定の異常信号を出力し、
前記半田印刷機は、前記異常信号を入力した場合には、所定の処理を実行することを特徴とする半田印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−180058(P2011−180058A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46318(P2010−46318)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】