説明

可変界磁モータの制御装置

【課題】電気自動車を降りて押す場合の取り回し性を向上する。
【解決手段】イグニッションキーの操作位置として、オン/オフ/ハンドルロックの3位置を判別するイグニッションON判定回路32・イグニッションOFF判定回路33・ハンドルロック判定回路34と、オン/オフ位置判定でモータMのコイル9を短絡状態にするステータコイル短絡回路35とを設ける。オン位置では通常のモータ駆動制御を行い、オフ位置では回転子と固定子との相対距離を最大として鉄損の最も小さい状態とすることにより、人力で電気自動車を押す場合のモータにおける抵抗が小さくなり、取り回し性が向上する。ハンドルロック位置では、回転子と固定子との相対距離を最小値として鉄損とコギングトルクとが最も大きい状態にして、坂道などの駐車における動き出しを抑制し得ると共に、電機子コイルを短絡状態にしてモータの電磁ブレーキ効果により盗難を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子と固定子との相対距離が可変である可変界磁モータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータにおいて、ステータとロータとの有効磁束を通す部分となる対向面積を増減させることで出力を調整可能にしたものがあり、例えばロータ側の磁気部材を軸線方向に移動させてロータとステータとの両磁気部材間の互いに重なり合う面積を増減させるようにしたもの(例えば特許文献1・2参照)や、ロータとステータとの対向面間のギャップ(間隙)を調整するようにしたものがあった(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−300712号公報
【特許文献2】特開平6−141401号公報
【特許文献3】特開2004−80847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、電気自動車であって例えば自動二輪車などにあっては、軽量のため、降りて押しながら移動することができる。そのような場合には、イグニッションキーの操作位置をイグニッション・オフ位置にすることが考えられるが、インホイールモータのように駆動輪と直結構造の場合にはモータのコギングトルクが抵抗となる。
【0004】
特に、上記可変界磁モータを用いた電気自動車にあっては、停止する場合には大きな回生力を発生させるべく最も界磁の強い状態にして停止するため、停車時には最も界磁が強い状態すなわち磁石の磁極面と固定子の磁極面に対峙する対峙面とが最大に重なった状態になっている。その状態のモータにあっては最も鉄損が大きい状態となるため、モータに通電しないで人力で押す場合の取り回し時においてモータの抵抗が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、電気自動車を降りて押す場合の取り回し性を向上するために本発明に於いては、複数の磁石及び複数の電機子コイルの一方が周方向に配設されかつ車輪と連動するように設けられた回転子と、前記複数の磁石及び複数の電機子コイルの他方が周方向に配設された固定子とを備えるモータと、電源と前記モータとの間で駆動電流を流すように設けられたパワー素子回路と、前記回転子と前記固定子との相対距離を可変にするべく前記回転子と前記固定子とのいずれか一方を前記回転子の回転軸の軸線方向に変位可能にするアクチュエータと、前記パワー素子回路を制御すると共に前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を変えて界磁を制御する制御装置とを備える可変界磁モータの制御装置であって、イグニッションキーの操作位置がイグニッション・オン位置とイグニッション・オフ位置とハンドルロック位置との3位置のいずれかを判別するイグニッションキー位置判別手段と、前記複数の電機子コイルを前記パワー素子回路との接続状態または前記パワー素子から切りなされて互いに短絡された短絡状態にするコイル状態切替回路とを有し、前記制御装置は、前記イグニッション・オン位置であると判定された場合には前記接続状態にすると共に前記パワー素子回路を制御すると共に前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を変えて界磁を制御し、前記イグニッションキー位置判別手段により前記イグニッション・オフ位置であると判定された場合には前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を最大値とするように制御し、前記イグニッションキー位置判別手段により前記ハンドルロック位置であると判定された場合には前記短絡状態にすると共に前記回転子と前記固定子との相対距離を最小値とするように制御するものとした。
【0006】
特に、回転子と前記固定子との相対距離の最小値は、前記磁石の磁極面と、前記固定子の前記磁極面に対峙する対峙面とが、前記回転子の回転軸の軸線方向について完全に重なった状態になること、または、前記回転子と前記固定子との相対距離の最大値は、前記磁石の磁極面と、前記固定子の前記磁極面に対峙する対峙面とが、前記回転子の回転軸の軸線方向について重なっていない状態になると良い。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、例えば可変界磁モータを用いた電気自動車にあって、イグニッション操作でイグニッション・オン位置では通常のモータ駆動制御を行い、降りて押すためにイグニッション・オフ位置にした場合には回転子と固定子との相対距離を最大値とすることから、鉄損とコギングトルクとが最も小さい状態となり、モータに通電しないで人力で電気自動車を押す場合のモータにおける抵抗も小さく、電気自動車を降りて押す場合の取り回し性が向上する。そして、車両から離れる場合のようにキーを抜いたハンドルロック位置にした場合には回転子と固定子との相対距離を最小値とすることから、上記とは逆に鉄損とコギングトルクとが最も大きい状態になり、例えば坂道での駐車において傾斜により動き出してしまうことを抑制し得るばかりでなく、さらに電機子コイルを短絡状態にすることから、盗もうとして押して行こうとしてもモータが電磁ブレーキとなって、盗難防止効果が大となる。
【0008】
特に、回転子と前記固定子との相対距離の最小値を磁極面と対峙面とが完全に重なった状態とし、最大値を重なっていない状態とすることにより、それぞれにおいて鉄損による影響の有無を最も強く受ける状態にすることができ、上記効果を最大限に発揮し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は電気自動車の駆動輪Wに適用された例を示す模式的断面図である。電気自動車としては自動二輪車であって例えばスクーターであって良い。図において、車体1に固定支持軸2が側方に突出するように固定されており、その固定支持軸2には一対の軸受3a・3bを介してモータのアウタロータとなるロータ4が回転自在に支持されている。ロータ4の外周部にはホイールを介して駆動輪Wが取り付けられている。
【0010】
ロータ4は、有底円筒形状をなしかつその中心部にボス部を有する形状であり、ボス部を形成する小径周壁部4aと、その小径周壁部を同軸に外囲する大径周壁部4bとを有する。図に示されるように、ロータ4の両周壁部4a・4b間の空間が車体1側に開放されている。大径周壁部4bの内周面には周方向にN・S極を並べた永久磁石としての複数のマグネット5が配設されている。また、両周壁部4a・4bによる空間に受容されるようにステータ6が設けられている。
【0011】
固定支持軸2の車体1に固設された部分には外向フランジが形成されており、その外向フランジには小径周壁部4aを外囲するガイド部材7が固設されている。ガイド部材7には例えばセレーションにより固定支持軸2の軸線方向に移動自在にされたスライド部材8が支持されている。スライド部材8の外周面には半径方向外向きの鍔が突設されており、その鍔に例えばビス止めされたブラケットを介してステータ6が支持されている。
【0012】
ステータ6は、積層鋼板により形成された環状部分及びその環状部分から半径方向外向きに突出する複数のティースからなるコア6aと、それらティースに巻回されたコイル巻線からなるコイル9とを有し、上記したようにスライド部材8と一体のブラケットにコア6aの環状部分が適所でねじ止めされている。このようにして構成されたステータ6と上記ロータ4とにより本発明が適用される可変界磁モータMが構成されている。
【0013】
スライド部材8は、回転モータを駆動源とするアクチュエータ11により上記固定支持軸2の軸線方向に往復駆動されるようになっており、一体のステータ6も同様に往復移動する。図示例では、固定支持軸2の外向フランジにブラケットを介してアクチュエータ11が固定されている。また、スライド部材8の移動方向に延在するように設けられた駆動軸12が固定支持軸2の外向フランジ及び上記ブラケットにより軸支されている。そして、アクチュエータ11のモータ軸からなる回転軸に設けられた大ギアと、駆動軸12に設けられた小ギアとが噛み合わされている。また、駆動軸12のスライド部材8側には例えば台形ねじ部12aが設けられており、その台形ねじ部12aに螺合するナット部材13がスライド部材8の鍔に固着されている。
【0014】
モータ駆動アクチュエータ11には回転検出センサ11aが内蔵されている。そのモータにあっては、公知のパルスセンサを内蔵するモータと同様であって良い。なお、ナット部材13の可動範囲は図示されない機械的ストッパにより規制されている。この機械的ストッパは単純なブラケットやブロック状部材を固定支持軸2のフランジ部に固設して設けるなどしたものであって良く、何等特別なものではないためその図示および説明を省略する。
【0015】
このアクチュエータ11により、モータMの界磁(有効磁束の大きさ)を調整することができる。すなわち、アクチュエータ11の回転駆動により駆動軸12が回転し、そのねじ部12aに螺合しているナット部材13が駆動軸12の軸線方向に移動するため、スライド部材8と一体のコア6aが駆動軸12と平行になる固定支持軸2(ロータ4の回転軸)の軸線方向に移動し得る。これにより、コア6aのティース突出端面がマグネット5の磁極面と重なる量が変化し、マグネット5とコア6aとの間の磁束が増減するため、可変界磁型のモータが構成される。
【0016】
次に、本発明に基づく制御要領について、図2のブロック回路図を参照して示す。なお、図示例のモータMの基本形にあっては3相のブラシレスモータと同様のものであって良い。
【0017】
図示例では、電源としての車載バッテリBTに、FETを用いたブリッジ回路が構成されたパワー素子回路としてのインバータ21を介してモータMの各相コイル9が接続されている。モータMにはロータ4の回転角度を検出する回転センサ22が設けられており、その回転角度信号が制御回路ECU内の回転角度検出回路23に入力し、回転角度検出回路23ではロータ4のステータ6に対する回転(角度)位置が算出される。
【0018】
また、制御回路ECU内には、アクセル操作部24とイグニッションキー操作部25とを備える運転操作回路26が設けられている。アクセル操作部24には外部の図示されないアクセルからの操作量に応じた変位信号が入力しており、イグニッションキー操作部25には外部の図示されないイグニッションキースイッチからのキー操作に応じた位置信号が入力している。
【0019】
アクセル操作部24からの出力信号は電流比較回路27に入力する。電流比較回路27には、バッテリBTの電源線に設けられた電流検出センサ28からの電流検出信号が電流検出回路29を介して入力する。電流比較回路27は、アクセル操作部24からの操作信号と電流検出回路29からの電流検出信号とを比較し、その比較結果をデューティ指示信号として出力Duty決定回路30に出力する。
【0020】
出力Duty決定回路30は、電流比較回路27から出力されるデューティ指示信号に基づいてインバータ21のPWM制御におけるデューティ比DUTYを決定し、そのDUTY信号をPWM信号生成回路31に出力する。PWM信号生成回路31は、DUTY信号と上記した回転角度検出回路23からの回転角度信号とに応じてモータMの各相(図示例ではU・V・W相)に対応したPWM信号をインバータ21に出力する。このPWM信号によるモータMに対するPWM制御にあっては、ブラシレスモータにおける公知のPWM制御であって良いため、その詳しい説明を省略する。
【0021】
上記したイグニッションキー操作部25からはイグニッションキーの操作位置に応じて、イグニッション・オン位置とイグニッション・オフ位置とハンドルロック位置との3位置を示す3つの信号が出力されるようになっている。イグニッション・オン位置信号はイグニッション・ON判定回路32に、イグニッション・オフ位置信号はイグニッション・OFF判定回路33に、ハンドルロック位置信号はハンドルロック判定回路34にそれぞれ入力する。これらによりイグニッションキー位置判別手段が構成されている。
【0022】
なお、イグニッション・オン位置とは、モータMを駆動制御して電気自動車を走行させる場合に選択されるキー位置である。イグニッション・オフ位置とは、モータMの駆動制御が禁止される位置である。また、ハンドルロック位置とは、車両から離れるために盗難防止用にハンドルを操舵できないように固定する場合に選択される位置である。
【0023】
イグニッションON判定回路32から出力されるオン判定信号はコイル状態切替回路としてのステータコイル短絡回路35に出力される。本図示例のステータコイル短絡判定回路35は、図2に示されるように、各コイル9のインバータ21との接続線からそれぞれ分岐した各分岐線に接続されたリレーRY1・RY2・RY3と、各リレーRY1〜RY3のコイルに駆動電流を選択的に流す制御を行うためのトランジスタTrとにより構成されている。上記オン判定信号は、イグニッション・オン位置が判定された場合に所定の高レベル信号として出力され、それによりトランジスタTrがオンする。
【0024】
図示例の三相モータの場合には図に示されるように3つのリレーRY1〜RY3が設けられている。リレーRY1〜RY3は、常時閉接点型のものであって良く、非励磁状態では図に示されるように接地側に接続されている。これにより、非励磁状態では、各コイル9は接地ラインを介して互いに短絡される。なお、リレーRY1〜RY3の常時開接点は開放されており、リレーRY1〜RY3の励磁状態では各コイル9のステータコイル短絡回路35側は開放される。
【0025】
イグニッションOFF判定回路33から出力されるオフ判定信号は、イグニッション・オフ位置が判定された場合に所定の高レベル信号として出力され、ステータ位置制御回路36に入力すると共にダイオードD1を介してトランジスタTrを駆動する。また、ハンドルロック判定回路34から出力されるハンドルロック判定信号は、ステータ位置制御回路36に入力する。
【0026】
ステータ位置制御回路36にあっては、上記したオフ判定信号またはハンドルロック判定信号が入力された場合にステータ6を最も抜いた最大離間位置を目標とする最大離間位置信号をステータ位置駆動回路37に出力する。ステータ位置駆動回路37は、その最大離間位置信号に応じたアクチュエータ駆動信号をアクチュエータ11に出力する。
【0027】
なお、ステータ位置制御回路36にあっては、図示されないステータ手動操作部からの操作信号が入力されるようになっていても良い。その操作信号によりステータ位置制御回路36にてステータ6(コア6a)の設定位置(目標位置)を算出し、それに応じた位置制御信号が位置駆動回路37からアクチュエータ11に出力され、アクチュエータ11によりステータ6(コア6a)を駆動しかつ上記目標位置で停止状態にする。これにより、上記したようにマグネット5の磁極面とコア6aのティース突出端面との重なり量(互いに対向する部分の面積;以下、対向面積と称する)が増減し、対向面積を通ることになる磁束が増減するため、モータMの特性を、対向面積を大きくした場合には低回転・高トルク型とし、対向面積を小さくした場合には高回転・低トルク型とすることができる。
【0028】
このようにして制御装置が構成されている。なお、図2における各回路はICを用いて構成されるものと、CPUのプログラム制御により構成されるものとを含むものであって良い。また、図示された回路名称及び信号線により理解される部分についてはその詳しい説明を省略する。
【0029】
次に、図3のフロー図を参照して本発明に基づく制御要領について以下に示す。まずステップST1でイグニッションキーの状態を読み込む。イグニッションキーの状態は上記した3位置のいずれかとする。
【0030】
次のステップST2ではステップST1で読み込まれたイグニッションキーの状態がハンドルロック位置であるか否かを判別する。上記回路にあってはハンドルロック判定回路34からハンドルロック判定信号(高レベル信号)が出力されているか否かとなる。ハンドルロック位置であると判定された場合にはステップST3に進み、ハンドルロック信号に応じてステータ位置制御回路36からステータ位置駆動回路37にステータ6(コア6a)を、図1の実線の状態すなわち上記対向面積が最大(例えば重なり量100%)となるように変位させる制御信号を出力する。
【0031】
次のステップST4では全リレーRY1〜RY3を非励磁状態(=接点閉)にしてステップST1に戻る。このステップST4に進む場合としては、ハンドルロック判定回路34からハンドルロック判定信号が出力されている場合であり、その場合にはイグニッションON判定回路32とイグニッションOFF判定回路33とからは各判定信号(高レベル信号)が出力されていないことになる。それにより、全リレーRY1〜RY3は非励磁状態(=接点閉)となる。
【0032】
これにより、ハンドルロック位置であると判定された場合には、ステータ6が完全にマグネット5と対峙した100%界磁状態となると共に各コイル9間が短絡されるため、モータMにより最大限の電磁ブレーキ力が発生し得る。そのため、スクーターなどの自動二輪車においてイグニッションキーを抜いて離れた駐車中の車両を盗もうとして押して走行させた場合に、モータMすなわち駆動輪Wに大きな制動力が発生するため、押して行くことが困難になり、盗難防止効果が促進される。なお、モータMの制動力発生により、駐車状態で坂道など路面の傾斜で動き出してしまうことを防止できる。
【0033】
また、上記ステップST2でハンドルロック位置ではないと判定された場合にはステップST5に進み、そこでイグニッション・オフ位置であるか否かを判別する。イグニッション・オフ位置であると判定された場合にはステップST6に進み、そこでオフ判定信号に応じてステータ位置制御回路36からステータ位置駆動回路37にステータ6(コア6a)を、図1の二点鎖線の状態すなわち上記対向面積が最小(例えば重なり量50%)となるように変位させる制御信号を出力する。
【0034】
次のステップST7では全リレーRY1〜RY3を励磁状態(=接点開)にしてステップST1に戻る。このステップST7に進む場合としては、イグニッションOFF判定回路33からオフ判定信号が出力されている場合であり、その場合にはオフ判定信号(高レベル信号)が出力されるため、全リレーRY1〜RY3は励磁状態(=接点開)となる。
【0035】
これにより、イグニッション・オフ位置であると判定された場合には、各コイル9が通常のインバータ21との接続状態となり、短絡状態からは開放されるため電磁ブレーキ力は発生しない。また、ステータ6がマグネット5に対して最も離間した位置になるためモータMの界磁が最も弱い状態になり、車両から降りて押しながら走行させる場合にはモータMの抵抗が減少されるため、取り回し性が容易になると共に静かになる。
【0036】
また、上記ステップST5でイグニッション・オフ位置でないと判定された場合にはステップST8進む。なお、フロー上はイグニッション・オフ位置でないと判定するとしたが、回路上はイグニッションON判定回路からオン判定信号が出力された場合である。その場合には当然イグニッションOFF判定回路33からのオフ判定信号は出力されない。
【0037】
ステップST8では、オン判定信号により上記したように全リレーRY1〜RY3が励磁状態(=接点開)になるため、通常のPWM制御によるモータ駆動制御が行われる。なお、オフ判定信号もハンドルロック信号も出力されないことからステータ6は他の信号による自由な制御状態となり、可変界磁制御も任意に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる可変界磁モータの制御装置は、車両のイグニッションキーを抜いたときにモータによるブレーキ力を発生させることができることから、スクーターのみならず軽量の車両における盗難防止効果等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】電気自動車の駆動輪Wに適用された例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に基づく制御要領を示すブロック回路図である。
【図3】本発明に基づく制御要領を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0040】
4 ロータ
5 マグネット
6 ステータ
11 アクチュエータ
21 インバータ
25 イグニッションキー操作部
32 イグニッションON判定回路
33 イグニッションOFF判定回路
34 ハンドルロック判定回路
35 ステータコイル短絡回路
ECU 制御回路
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石及び複数の電機子コイルの一方が周方向に配設されかつ車輪と連動するように設けられた回転子と、前記複数の磁石及び複数の電機子コイルの他方が周方向に配設された固定子とを備えるモータと、
電源と前記モータとの間で駆動電流を流すように設けられたパワー素子回路と、前記回転子と前記固定子との相対距離を可変にするべく前記回転子と前記固定子とのいずれか一方を前記回転子の回転軸の軸線方向に変位可能にするアクチュエータと、前記パワー素子回路を制御すると共に前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を変えて界磁を制御する制御装置とを備える可変界磁モータの制御装置であって、
イグニッションキーの操作位置がイグニッション・オン位置とイグニッション・オフ位置とハンドルロック位置との3位置のいずれかを判別するイグニッションキー位置判別手段と、前記複数の電機子コイルを前記パワー素子回路との接続状態または前記パワー素子から切りなされて互いに短絡された短絡状態にするコイル状態切替回路とを有し、
前記制御装置は、
前記イグニッション・オン位置であると判定された場合には前記接続状態にすると共に前記パワー素子回路を制御すると共に前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を変えて界磁を制御し、
前記イグニッションキー位置判別手段により前記イグニッション・オフ位置であると判定された場合には前記アクチュエータにより前記回転子と前記固定子との相対距離を最大値とするように制御し、
前記イグニッションキー位置判別手段により前記ハンドルロック位置であると判定された場合には前記短絡状態にすると共に前記回転子と前記固定子との相対距離を最小値とするように制御することを特徴とする可変界磁モータの制御装置。
【請求項2】
前記回転子と前記固定子との相対距離の最小値は、前記磁石の磁極面と、前記固定子の前記磁極面に対峙する対峙面とが、前記回転子の回転軸の軸線方向について完全に重なった状態になることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可変界磁モータの制御装置。
【請求項3】
前記回転子と前記固定子との相対距離の最大値は、前記磁石の磁極面と、前記固定子の前記磁極面に対峙する対峙面とが、前記回転子の回転軸の軸線方向について重なっていない状態になることを特徴とする請求項1に記載の可変界磁モータの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−213316(P2009−213316A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55753(P2008−55753)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】