周辺表示装置
【課題】1台のステレオカメラで周辺を見る画角を広げることが可能なシステムにおいて、統合処理や画像変換処理の負担を増大させることなく、かつ、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置を提供する。
【解決手段】ステレオカメラSCで撮影された画像データが入力される画像入力部11と、画像入力部11から出力される画像データに基準点および比較点を設定するポイント設定部と、基準点が設定された基準画像データおよび比較点が設定された比較画像データにウインドウを設定するウインドウ設定部13と、ウインドウが設定された画像データに対応点探索処理を施す対応点探索処理部14とを備えている。
【解決手段】ステレオカメラSCで撮影された画像データが入力される画像入力部11と、画像入力部11から出力される画像データに基準点および比較点を設定するポイント設定部と、基準点が設定された基準画像データおよび比較点が設定された比較画像データにウインドウを設定するウインドウ設定部13と、ウインドウが設定された画像データに対応点探索処理を施す対応点探索処理部14とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自走可能な移動体の周辺状況を表示する周辺表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自走可能な移動体、例えば自動車において、複数台のカメラを用いて、前方を含めた周辺の画像を撮像し、車載表示装置に表示させる周辺表示装置が開発されている。
【0003】
このような周辺表示装置において、ステレオカメラを用いて3次元画像を表示させる場合、1台当たりの視野角が重要となる。すなわち、視野角が狭いと、より多くのカメラセットが必要となり、統合処理や画像変換処理の負担が増大することになる。
【0004】
しかし、一般的な広画角レンズを使用した場合、画像全体に対しての歪みの影響が大きくなる点や、必要とする方向(水平方向)の視野角だけでなく、不要な方向(垂直方向)の視野角も同時に大きくなるため、ステレオカメラとして用いる場合は、対応点探索における対応付け精度の低下に繋がるという点で問題がある。
【0005】
つまり、垂直方向の画角については広画角である必要はなく、水平方向のみ広画角で画像を取得できる変倍率のレンズ(変倍レンズ)を用いたシステムが望ましい。
【0006】
変倍率率のレンズを用いて3次元形状や、奥行き情報を非接触に測定するシステムとして、特許文献1には、シリンドリカルレンズを組み合わせることで、視差方向に対する結像倍率を視差方向と垂直な方向に対する結像倍率より高くして分解能の高い画像を得るシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−12915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1で開示されるシステムは、移動体に搭載されるシステムではなく、単純に移動体に搭載しても、周辺表示装置に組み込むことはできない。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、自動車などの自走可能な移動体において、ステレオカメラを用いて周辺の画像を3次元表示させる場合、ステレオカメラにアナモフィックレンズなどの変倍率のレンズ(変倍レンズ)を用いることで、1台のステレオカメラで周辺を見る画角を広げることが可能なシステムにおいて、統合処理や画像変換処理の負担を増大させることなく、かつ、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る周辺表示装置の第1の態様は、自走可能な移動体における周辺の画像データを取得するステレオカメラと、前記画像データから3次元情報を取得する3次元情報取得部とを備え、前記ステレオカメラは、縦横の倍率が異なる変倍レンズを介して前記画像データを取得し、前記3次元情報取得部は、前記画像データの所定の領域に対してウインドウを設定するウインドウ設定部と、前記画像データに対して対応点探索を実行する対応点探索処理部を有し、前記ウインドウ設定部は、前記対応点探索処理部での対応点探索に使用される前記ウインドウのパラメータを、前記変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更する。
【0011】
本発明に係る周辺表示装置の第2の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウの画素数の縦横比である。
【0012】
本発明に係る周辺表示装置の第3の態様は、前記ウインドウの前記画素数の縦横比が、前記ウインドウを物体面に適用した場合に、物体面での縦横比が等方となるように設定される。
【0013】
本発明に係る周辺表示装置の第4の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウ内に乗算される重み付け関数であって、前記重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、前記変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更する。
【0014】
本発明に係る周辺表示装置の第5の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウ内の計算対象領域の画素数の縦横比である。
【0015】
本発明に係る周辺表示装置の第6の態様は、前記変倍レンズとしてアナモフィックレンズを用いる。
【0016】
本発明に係る周辺表示装置の第7の態様は、前記変倍レンズとして中心窩レンズを用いる。
【0017】
本発明に係る周辺表示装置の第8の態様は、前記ウインドウ設定部が、前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化に合わせて、前記ウインドウのパラメータを変化させ、前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータは、前記周辺表示装置内のデータテーブル内に予め格納される。
【0018】
本発明に係る周辺表示装置の第9の態様は、前記対応点探索に、位相限定相関法を用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る周辺表示装置の第1の態様によれば、ステレオカメラに変倍レンズを用いることで、統合処理や画像変換処理の負担を増大させることなく、かつ、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0020】
本発明に係る周辺表示装置の第2の態様によれば、ウインドウの画素数の縦横比をウインドウのパラメータとして変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更することで、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0021】
本発明に係る周辺表示装置の第3の態様によれば、物体面に対して演算の周波数特性が等方となる。
【0022】
本発明に係る周辺表示装置の第4の態様によれば、重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更することで、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0023】
本発明に係る周辺表示装置の第5の態様によれば、ハードウエア構成が複雑化することを防止できる。
【0024】
本発明に係る周辺表示装置の第6の態様によれば、水平方向のみ広画角で画像を取得できる。
【0025】
本発明に係る周辺表示装置の第7の態様によれば、端縁部を大幅に圧縮させた画像を取得できる。
【0026】
本発明に係る周辺表示装置の第8の態様によれば、変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータをデータテーブル内に有するので、レンズが決まれば、自動的に、ウインドウの縦横比を変化させることができる。
【0027】
本発明に係る周辺表示装置の第9の態様によれば、対応点探索に位相限定相関法を用いるので、画像の振幅成分を除去し画像の位相成分のみで相関演算が行われるため、輝度変動やノイズの影響を抑制して参照画像上の対応点を精度良く探索できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アナモフィックレンズの特性を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る周辺表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】基準点設定部における設定動作を模式的に示す図である。
【図4】基準点設定部における設定動作を説明するフローチャートである。
【図5】基準ウインドウ設定部における設定動作を模式的に示す図である。
【図6】位相限定相関法を用いた対応点探索処理を説明するための図である。
【図7】位相限定相関法を用いた処理結果を示す図である。
【図8】撮影対象となる物体面を表す図である。
【図9】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面を表す図である。
【図10】物体面に対して等方的なウインドウを設定した図である。
【図11】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面に発明に係るウインドウを設定した図である。
【図12】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面に等方的なウインドウを設定した図である。
【図13】物体面に対して非等方的なウインドウを設定した図である。
【図14】中心窩レンズの各位置でのウインドウサイズの一例を模式的に示す図である。
【図15】一般的な窓関数を示す図である。
【図16】本発明に適用する窓関数を示す図である。
【図17】本発明に適用する窓関数を示す図である。
【図18】ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更する例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施の形態>
<装置構成>
図1は、アナモフィックレンズの特性を模式的に示す図である。アナモフィックレンズとは変倍率レンズの一種であり、シリンダーレンズ、円柱レンズとも呼称され、シネマスコープなどに用いられる。
【0030】
構造的には、光軸に沿った前後両面が軸を平行とする2つの円筒形の曲面で形成されており、凸型と凹型とがある。撮影の際にこのレンズを用いることで、円筒の軸と垂直な方向のみを圧縮することが可能である。
【0031】
図1に示すアナモフィックレンズALは、円筒の軸(Y軸方向)と垂直な方向(X軸方向)に画像を圧縮するように構成されており、被写体A1をアナモフィックレンズALを通して撮影することで、画面PN上にはX軸方向に圧縮された画像A2が映されることになる。
【0032】
図2は、本発明に係る周辺表示装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように周辺表示装置100は、ステレオカメラSCと、ステレオカメラSCで得られた画像データの画像処理を行う画像処理装置10と、画像処理装置10から出力される処理済みの画像データを表示する表示部20とを主たる構成として備えている。
【0033】
ステレオカメラSCは、アナモフィックレンズをレンズ系に有し、基準画像を撮影するカメラ1aと、アナモフィックレンズをレンズ系に有し、参照画像を撮影するカメラ1bとで構成され、カメラ1aで撮影された基準画像の画像データ(基準画像データ)は、画像入力部11内の基準画像入力部11aに画素単位で与えられ、カメラ1bで撮影された参照画像の画像データ(参照画像データ)は、画像入力部11内の参照画像入力部11bに画素単位で与えられる。
【0034】
基準画像入力部11aおよび参照画像入力部11bのそれぞれからは、画像データがポイント設定部12の基準点設定部12aおよび比較点設定部12bに与えられる。基準点設定部12aでは、対応点探索を行うための基準点が設定され、比較点設定部12bでは基準点に対応する比較点が設定される。
【0035】
基準点が設定された基準画像データおよび比較点が設定された比較画像データは、それぞれウインドウ設定部13の、基準点ウインドウ設定部13aおよび比較点ウインドウ設定部13bに与えられて、基準点を中心とするウインドウ、および比較点を中心とするウインドウが設定される。
【0036】
ウインドウが設定された画像データは、対応点探索処理部14に与えられて、対応点探索処理が実行される。なお、対応点探索処理については後に説明する。なお、ポイント設定部12、ウインドウ設定部13および対応点探索処理部14は、画像データに基づいて3次元情報を取得するので3次元情報取得部と総称する。
【0037】
対応点探索処理が終了した後は、算出された対応点に対して、平行化、歪補正、3次元再構成等の処理を行うことで3次元情報を取得し、当該3次元情報に基づいて3次元画像データを算出する。なお、これらの処理を行う構成については従来的ものであれば良く、本願発明との関係が薄いので、図示および説明は省略する。そして、3次元画像データは、表示部20において3次元画像として表示される。
【0038】
次に、各構成について以下にさらに説明する。
【0039】
<ポイント設定部12>
図3は、ポイント設定部12の基準点設定部12aにおける設定動作を模式的に示す図である。
【0040】
図3において、基準画像データD1上の注目画素PXを決め、対応点探索処理を行って対応する参照画像データ上の対応点を求める。そして、対応点が求まると、次の注目画素P1を設定し、同様に対応点探索処理を行う。なお、注目画素の設定は、画像列を一方の端から他方の端に向けてスキャンするように行い、他方の端に達すると、下段の画素列の一方の端に移動する。このような動作を、基準画像データD1上で、注目画素P2、P3と設定しながら繰り返して行い、探索対象画素が無くなれば、当該基準画像データD1に関する処理が終わる。
【0041】
上記動作を図4のフローチャートに示す。図4に示すように、処理を開始すると、基準画像データD1上をスキャンするように注目画素を設定し(ステップS1)、設定した注目画素についての対応点探索演算を実行する(ステップS2)。そして、設定した注目画素についての対応点探索演算が終了すると、ステップS1に戻って、次の注目画素を設定する。探索対象画素が無くなり、スキャンが終了すると一連の処理が終了する。
【0042】
比較点設定部12bでは、基準点設定部12aで設定された注目画素に対応する画素を探すために、基準点設定部12aと同様のスキャン動作により設定を行う。
【0043】
<ウインドウ設定部13>
図5は、ウインドウ設定部13の基準ウインドウ設定部13aにおける設定動作を模式的に示す図である。
【0044】
図5において、基準点設定部12aで設定された注目画素PXを基準点とし、演算対象領域を規定するウインドウWDを設定する。
【0045】
ここで、当該ウインドウWDは、画像データがアナモフィックレンズを介して取得されているので、アナモフィックレンズのパラメータにより決定される。
【0046】
例えば、垂直方向に対する水平方向の比率(圧縮比)が1/4となるレンズを使用する場合は、ウインドウWDの縦(Y軸方向)横(X軸方向)の比率を4対1となるように設定し、垂直方向に対する水平方向の比率が1/2となるレンズを使用する場合は、ウインドウWDの縦横の比率が2対1となるように設定する。
【0047】
なお、比較点ウインドウ設定部13bにおいては、比較点設定部12bで設定された注目画素を基準点とし、演算対象領域を規定するウインドウを設定するが、ウインドウの設定方法は上記と同様である。
【0048】
ここで、レンズ特性については、例えば、画像処理装置10内に、予め種々のカメラ(変倍率率レンズを含んだ)に対するレンズ特性をデータテーブル等に記憶させておき、ステレオカメラSC(図2)と画像処理装置10とを接続したときに、画像処理装置10がステレオカメラSCを構成するカメラの種類を判別して、上記データテーブルからレンズ特性を読み出してウインドウ設定部13に情報を与えるようにすれば良い。また、ステレオカメラSCを構成するカメラから、レンズ特性を画像処理装置10に与えるような構成であれば、ウインドウ設定部13で、その情報を受けるようにすれば良い。
【0049】
なお、上記のようにアナモフィックレンズの特性が判明している場合は、それに合わせてウインドウの縦横比を設定すれば良いが、特性が判らない場合は、縦方向が長くなるようなウインドウサイズ、例えば縦横の比率を2対1に一律に設定する構成を採れば、精度低下を軽減できる。
【0050】
<対応点探索処理部14>
図6および図7を用いて、対応点探索処理部14での対応点探索処理について説明する。対応点探索処理部14では、対応点探索処理に位相限定相関法(POC:Phase Only Correlation)を用いる。
【0051】
図6は、位相限定相関法を用いた対応点探索処理を説明するための図である。位相限定相関法を用いた対応点探索処理では、まず基準画像上のウインドウ内の画像と、参照画像上のウインドウ内の画像とが抽出される。これらの画像については、次の数式のように表されるものとする。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、上記の数式におけるf(n1,n2)およびg(n1,n2)は、基準画像上のウインドウ内の画像および参照画像上のウインドウ内の画像を示している。また、N1およびN2は、例えばN1=2M1+1、N2=2M2+1と設定されている。
【0054】
次に、基準画像および参照画像のウインドウ内の各画像に対し、次の数式に示す演算式を用いた2次元のフーリエ変換処理T1a、T1bを行う。
【0055】
【数2】
【0056】
なお、上記の数式のただし書におけるWの添字Pには、N1、N2が代入され、またkの添字sには、1、2が代入される。
【0057】
このようなフーリエ変換処理T1a、T1bが施された各画像に対しては、次の数式に示す演算式を用いて、画像の振幅成分を除去するための規格化処理T2a、T2bが行われる。
【0058】
【数3】
【0059】
規格化処理T2a、T2bが完了すると、次の数式に示す演算式を用いた合成処理T3が行われる。
【0060】
【数4】
【0061】
合成処理T3とともに、次の数式に示す演算式を用いた2次元の逆フーリエ変換処理T4が行われる。これにより、各画像間の相関演算が実施されることとなり、その結果(POC値)が出力される。
【0062】
【数5】
【0063】
以上の位相限定相関法を用いた処理により、例えば図7に示すような結果が得られる。この図7においては、ウインドウ(N1×N2)内で相関が高い箇所のPOC値が大きくなっており、POC値のピークJcに対応する参照画像上のウインドウ内の位置が、基準画像上のウインドウの中心点(指定点)に対応した参照画像上の対応点に相当することとなる。
【0064】
以上のような位相限定相関法を用いた対応点探索処理によれば、画像の振幅成分を除去し画像の位相成分のみで相関演算が行われるため、輝度変動やノイズの影響を抑制して参照画像上の対応点を精度良く探索できる。
【0065】
なお、本願では、先に説明したように、ウインドウの設定に特徴を有している。
【0066】
<ウインドウ設定の具体例>
次に、図8〜図13を用いて、ウインドウ設定の具体例について説明する。
【0067】
図8は、撮影対象となる物体面を表しており、自車両MVの運転席から前方を見た状態を表している。
【0068】
図9は、図8に示す物体面のうち、枠線で囲まれた領域RIについてアナモフィックレンズを介して撮影された画像面を表しており、水平方向が圧縮されて、垂直方向に伸長していることが判る。
【0069】
ここで、対応点探索を行うために、図10に示すように、物体面に対して演算の周波数特性が等方となるように等方的なウインドウW1を設定した場合、アナモフィックレンズを介して得られた画像面上では、物体面と同様の周波数特性を含むように演算領域を設定するために、図11に示すウインドウW2のように垂直方向に伸長したウインドウサイズとすることが望ましい。このときに、先に説明したように、ウインドウ設定部13では、アナモフィックレンズのレンズ特性に基づいてウインドウの縦横比を設定することで、対応付け精度の低下を防止することができる。
【0070】
一方、図12に示すように、図11に示したウインドウW2と同じ面積(画素数)を有し、等方的に設定されたウインドウW3を画像面上に設定した場合、ウインドウW2と同レベルの情報量を含んでいるため、図11の場合と同精度での対応点探索が可能となるが、画像面上で等方的なウインドウを設定すると、物体面上でのウインドウは図13に示すウインドウW4のように、縦横比が大きく変わり、算出可能な周波数特性が大きく異なることとなる。この結果、対応点算出領域における被写体パターンの姿勢依存性が大きくなることとなり、望ましくはない。
【0071】
また、図12に示すウインドウW3のように、水平方向に長いウインドウを設定すると、水平方向に圧縮された画像面では、遠近競合が生じ、遠近の判別が難しくなるという問題もある。
【0072】
<アナモフィックレンズ以外のレンズへの適用>
以上の説明においては、変倍率レンズとしてアナモフィックレンズを使用して画像を取得する例について説明したが、変倍率レンズ以外のレンズで、撮像面の中央部と周辺部とで像倍率の変化が小さくなるように歪曲収差を補正している一般的な撮像レンズとは別に、負の歪曲収差を意図的に発生させることにより、中心画像に比べて端縁部の画像を大幅に圧縮させる特性有している中心窩レンズや魚眼レンズを用いる場合にも、上述したウインドウの設定方法は有効である。
【0073】
このようなレンズを使用する場合、設定されるウインドウのサイズは、画像中心に近いほど等方的なサイズに設定し、中心から離れるに従って、設定されるウインドウのサイズをその部分の圧縮比に合わせて変形させる。
【0074】
図14には、中心窩レンズFVLと、中心窩レンズFVLの各位置でのウインドウサイズの一例を模式的に示している。
【0075】
図14に示すように、中心窩レンズFVLの中心部分では設定されるウインドウW11は等方的な形状を有しているが、中心から離れるに従って、Y軸方向への伸長度が大きくなる形状となっている。
【0076】
また、アナモフィックレンズにおいても、円筒面の中心軸から離れるに従って、設定されるウインドウの縦横比を変化させるようにしても良い。
【0077】
これらの、レンズ面上での位置による倍率の変化のデータは、例えば画像処理装置10内のテーブル等に、レンズの種類ごとに予め格納しておくことで、レンズが決まれば、自動的に、ウインドウの縦横比を変化させることができる。
【0078】
<ウインドウ設定の変形例1>
位相限定相関法では、対応点探索を行う際に、信頼性の低い高周波成分を除去するために、設定したウインドウ内に、ガウス関数などの重み付け関数(窓関数)を乗算するが、この重み付け関数の形状を縦横で変える構成としても良い。この場合は、ウインドウの形状はレンズの圧縮率に応じて縦横で変える必要はない。このような構成を採ることで、本来のウインドウ設定そのものの形状を変える必要がなく、ハードウエア化を行った際でも複雑な構成にならない。
【0079】
図15には、一般的な窓関数を示しており、X軸には横方向の位置、Y軸には縦方向の位置を示し、Z軸には重み量を示している。
【0080】
通常、このような窓関数の形状は縦横で同じであるが、図16および図17にそれぞれ示さるように、横方向および縦方向で輪郭形状を変えた構成とすることで、ウインドウの縦横比を変えた場合と同様に、対応付け精度の低下を防止することができる。
【0081】
図16はウインドウの横方向に適用される関数の形状を表しており、図17はウインドウの縦方向に適用される関数の形状を表している。図16と図17とを比較して、縦方向では、比較的緩やかなカーブを描く関数となっており、横方向では、図15と同様のガウス関数を表す形状となっている。このように設定することで、レンズによる圧縮を受ける横方向については位置ごとに細かな重み付けが可能となり、圧縮を受けない縦方向については大まかな重み付けで済ませることができる。
【0082】
なお、窓関数は、図15に示すガウス関数に限定されるものではなく、ハニング窓やハミング窓などの関数を使用しても良い。
【0083】
<ウインドウ設定の変形例2>
図5を用いて説明したウインドウ設定部13での設定動作では、ウインドウの縦横比を変えて設定する例を示したが、ウインドウ自身は等方的なウインドウとした状態で、ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更するという方法を採っても良い。
【0084】
図18には、ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更する例を模式的に示している。図18において、等方ウインドウIW内において、計算対象領域CRは縦方向に長く、横方向に短い長方形状に設定されている。
【0085】
対応点探索処理をハードウエアで実現する場合、レンズ特性に応じたウインドウサイズの変更などの処理を加えることは、ハードウエア構成が複雑化する原因となる。そこで、ウインドウ自身は変更せずに、ウインドウ内の対象位置に応じて計算の有無を設定することで、ハードウエア構成が複雑化することを防止できる。
【符号の説明】
【0086】
11 画像入力部
12 ポイント設定部
13 ウインドウ設定部
14 対応点探索処理部
SC ステレオカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は自走可能な移動体の周辺状況を表示する周辺表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自走可能な移動体、例えば自動車において、複数台のカメラを用いて、前方を含めた周辺の画像を撮像し、車載表示装置に表示させる周辺表示装置が開発されている。
【0003】
このような周辺表示装置において、ステレオカメラを用いて3次元画像を表示させる場合、1台当たりの視野角が重要となる。すなわち、視野角が狭いと、より多くのカメラセットが必要となり、統合処理や画像変換処理の負担が増大することになる。
【0004】
しかし、一般的な広画角レンズを使用した場合、画像全体に対しての歪みの影響が大きくなる点や、必要とする方向(水平方向)の視野角だけでなく、不要な方向(垂直方向)の視野角も同時に大きくなるため、ステレオカメラとして用いる場合は、対応点探索における対応付け精度の低下に繋がるという点で問題がある。
【0005】
つまり、垂直方向の画角については広画角である必要はなく、水平方向のみ広画角で画像を取得できる変倍率のレンズ(変倍レンズ)を用いたシステムが望ましい。
【0006】
変倍率率のレンズを用いて3次元形状や、奥行き情報を非接触に測定するシステムとして、特許文献1には、シリンドリカルレンズを組み合わせることで、視差方向に対する結像倍率を視差方向と垂直な方向に対する結像倍率より高くして分解能の高い画像を得るシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−12915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1で開示されるシステムは、移動体に搭載されるシステムではなく、単純に移動体に搭載しても、周辺表示装置に組み込むことはできない。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、自動車などの自走可能な移動体において、ステレオカメラを用いて周辺の画像を3次元表示させる場合、ステレオカメラにアナモフィックレンズなどの変倍率のレンズ(変倍レンズ)を用いることで、1台のステレオカメラで周辺を見る画角を広げることが可能なシステムにおいて、統合処理や画像変換処理の負担を増大させることなく、かつ、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る周辺表示装置の第1の態様は、自走可能な移動体における周辺の画像データを取得するステレオカメラと、前記画像データから3次元情報を取得する3次元情報取得部とを備え、前記ステレオカメラは、縦横の倍率が異なる変倍レンズを介して前記画像データを取得し、前記3次元情報取得部は、前記画像データの所定の領域に対してウインドウを設定するウインドウ設定部と、前記画像データに対して対応点探索を実行する対応点探索処理部を有し、前記ウインドウ設定部は、前記対応点探索処理部での対応点探索に使用される前記ウインドウのパラメータを、前記変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更する。
【0011】
本発明に係る周辺表示装置の第2の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウの画素数の縦横比である。
【0012】
本発明に係る周辺表示装置の第3の態様は、前記ウインドウの前記画素数の縦横比が、前記ウインドウを物体面に適用した場合に、物体面での縦横比が等方となるように設定される。
【0013】
本発明に係る周辺表示装置の第4の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウ内に乗算される重み付け関数であって、前記重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、前記変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更する。
【0014】
本発明に係る周辺表示装置の第5の態様は、前記ウインドウの前記パラメータが、前記ウインドウ内の計算対象領域の画素数の縦横比である。
【0015】
本発明に係る周辺表示装置の第6の態様は、前記変倍レンズとしてアナモフィックレンズを用いる。
【0016】
本発明に係る周辺表示装置の第7の態様は、前記変倍レンズとして中心窩レンズを用いる。
【0017】
本発明に係る周辺表示装置の第8の態様は、前記ウインドウ設定部が、前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化に合わせて、前記ウインドウのパラメータを変化させ、前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータは、前記周辺表示装置内のデータテーブル内に予め格納される。
【0018】
本発明に係る周辺表示装置の第9の態様は、前記対応点探索に、位相限定相関法を用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る周辺表示装置の第1の態様によれば、ステレオカメラに変倍レンズを用いることで、統合処理や画像変換処理の負担を増大させることなく、かつ、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0020】
本発明に係る周辺表示装置の第2の態様によれば、ウインドウの画素数の縦横比をウインドウのパラメータとして変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更することで、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0021】
本発明に係る周辺表示装置の第3の態様によれば、物体面に対して演算の周波数特性が等方となる。
【0022】
本発明に係る周辺表示装置の第4の態様によれば、重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更することで、対応点探索における対応付け精度を低下させることのない周辺表示装置が得られる。
【0023】
本発明に係る周辺表示装置の第5の態様によれば、ハードウエア構成が複雑化することを防止できる。
【0024】
本発明に係る周辺表示装置の第6の態様によれば、水平方向のみ広画角で画像を取得できる。
【0025】
本発明に係る周辺表示装置の第7の態様によれば、端縁部を大幅に圧縮させた画像を取得できる。
【0026】
本発明に係る周辺表示装置の第8の態様によれば、変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータをデータテーブル内に有するので、レンズが決まれば、自動的に、ウインドウの縦横比を変化させることができる。
【0027】
本発明に係る周辺表示装置の第9の態様によれば、対応点探索に位相限定相関法を用いるので、画像の振幅成分を除去し画像の位相成分のみで相関演算が行われるため、輝度変動やノイズの影響を抑制して参照画像上の対応点を精度良く探索できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アナモフィックレンズの特性を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る周辺表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】基準点設定部における設定動作を模式的に示す図である。
【図4】基準点設定部における設定動作を説明するフローチャートである。
【図5】基準ウインドウ設定部における設定動作を模式的に示す図である。
【図6】位相限定相関法を用いた対応点探索処理を説明するための図である。
【図7】位相限定相関法を用いた処理結果を示す図である。
【図8】撮影対象となる物体面を表す図である。
【図9】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面を表す図である。
【図10】物体面に対して等方的なウインドウを設定した図である。
【図11】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面に発明に係るウインドウを設定した図である。
【図12】アナモフィックレンズを介して撮影された画像面に等方的なウインドウを設定した図である。
【図13】物体面に対して非等方的なウインドウを設定した図である。
【図14】中心窩レンズの各位置でのウインドウサイズの一例を模式的に示す図である。
【図15】一般的な窓関数を示す図である。
【図16】本発明に適用する窓関数を示す図である。
【図17】本発明に適用する窓関数を示す図である。
【図18】ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更する例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施の形態>
<装置構成>
図1は、アナモフィックレンズの特性を模式的に示す図である。アナモフィックレンズとは変倍率レンズの一種であり、シリンダーレンズ、円柱レンズとも呼称され、シネマスコープなどに用いられる。
【0030】
構造的には、光軸に沿った前後両面が軸を平行とする2つの円筒形の曲面で形成されており、凸型と凹型とがある。撮影の際にこのレンズを用いることで、円筒の軸と垂直な方向のみを圧縮することが可能である。
【0031】
図1に示すアナモフィックレンズALは、円筒の軸(Y軸方向)と垂直な方向(X軸方向)に画像を圧縮するように構成されており、被写体A1をアナモフィックレンズALを通して撮影することで、画面PN上にはX軸方向に圧縮された画像A2が映されることになる。
【0032】
図2は、本発明に係る周辺表示装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように周辺表示装置100は、ステレオカメラSCと、ステレオカメラSCで得られた画像データの画像処理を行う画像処理装置10と、画像処理装置10から出力される処理済みの画像データを表示する表示部20とを主たる構成として備えている。
【0033】
ステレオカメラSCは、アナモフィックレンズをレンズ系に有し、基準画像を撮影するカメラ1aと、アナモフィックレンズをレンズ系に有し、参照画像を撮影するカメラ1bとで構成され、カメラ1aで撮影された基準画像の画像データ(基準画像データ)は、画像入力部11内の基準画像入力部11aに画素単位で与えられ、カメラ1bで撮影された参照画像の画像データ(参照画像データ)は、画像入力部11内の参照画像入力部11bに画素単位で与えられる。
【0034】
基準画像入力部11aおよび参照画像入力部11bのそれぞれからは、画像データがポイント設定部12の基準点設定部12aおよび比較点設定部12bに与えられる。基準点設定部12aでは、対応点探索を行うための基準点が設定され、比較点設定部12bでは基準点に対応する比較点が設定される。
【0035】
基準点が設定された基準画像データおよび比較点が設定された比較画像データは、それぞれウインドウ設定部13の、基準点ウインドウ設定部13aおよび比較点ウインドウ設定部13bに与えられて、基準点を中心とするウインドウ、および比較点を中心とするウインドウが設定される。
【0036】
ウインドウが設定された画像データは、対応点探索処理部14に与えられて、対応点探索処理が実行される。なお、対応点探索処理については後に説明する。なお、ポイント設定部12、ウインドウ設定部13および対応点探索処理部14は、画像データに基づいて3次元情報を取得するので3次元情報取得部と総称する。
【0037】
対応点探索処理が終了した後は、算出された対応点に対して、平行化、歪補正、3次元再構成等の処理を行うことで3次元情報を取得し、当該3次元情報に基づいて3次元画像データを算出する。なお、これらの処理を行う構成については従来的ものであれば良く、本願発明との関係が薄いので、図示および説明は省略する。そして、3次元画像データは、表示部20において3次元画像として表示される。
【0038】
次に、各構成について以下にさらに説明する。
【0039】
<ポイント設定部12>
図3は、ポイント設定部12の基準点設定部12aにおける設定動作を模式的に示す図である。
【0040】
図3において、基準画像データD1上の注目画素PXを決め、対応点探索処理を行って対応する参照画像データ上の対応点を求める。そして、対応点が求まると、次の注目画素P1を設定し、同様に対応点探索処理を行う。なお、注目画素の設定は、画像列を一方の端から他方の端に向けてスキャンするように行い、他方の端に達すると、下段の画素列の一方の端に移動する。このような動作を、基準画像データD1上で、注目画素P2、P3と設定しながら繰り返して行い、探索対象画素が無くなれば、当該基準画像データD1に関する処理が終わる。
【0041】
上記動作を図4のフローチャートに示す。図4に示すように、処理を開始すると、基準画像データD1上をスキャンするように注目画素を設定し(ステップS1)、設定した注目画素についての対応点探索演算を実行する(ステップS2)。そして、設定した注目画素についての対応点探索演算が終了すると、ステップS1に戻って、次の注目画素を設定する。探索対象画素が無くなり、スキャンが終了すると一連の処理が終了する。
【0042】
比較点設定部12bでは、基準点設定部12aで設定された注目画素に対応する画素を探すために、基準点設定部12aと同様のスキャン動作により設定を行う。
【0043】
<ウインドウ設定部13>
図5は、ウインドウ設定部13の基準ウインドウ設定部13aにおける設定動作を模式的に示す図である。
【0044】
図5において、基準点設定部12aで設定された注目画素PXを基準点とし、演算対象領域を規定するウインドウWDを設定する。
【0045】
ここで、当該ウインドウWDは、画像データがアナモフィックレンズを介して取得されているので、アナモフィックレンズのパラメータにより決定される。
【0046】
例えば、垂直方向に対する水平方向の比率(圧縮比)が1/4となるレンズを使用する場合は、ウインドウWDの縦(Y軸方向)横(X軸方向)の比率を4対1となるように設定し、垂直方向に対する水平方向の比率が1/2となるレンズを使用する場合は、ウインドウWDの縦横の比率が2対1となるように設定する。
【0047】
なお、比較点ウインドウ設定部13bにおいては、比較点設定部12bで設定された注目画素を基準点とし、演算対象領域を規定するウインドウを設定するが、ウインドウの設定方法は上記と同様である。
【0048】
ここで、レンズ特性については、例えば、画像処理装置10内に、予め種々のカメラ(変倍率率レンズを含んだ)に対するレンズ特性をデータテーブル等に記憶させておき、ステレオカメラSC(図2)と画像処理装置10とを接続したときに、画像処理装置10がステレオカメラSCを構成するカメラの種類を判別して、上記データテーブルからレンズ特性を読み出してウインドウ設定部13に情報を与えるようにすれば良い。また、ステレオカメラSCを構成するカメラから、レンズ特性を画像処理装置10に与えるような構成であれば、ウインドウ設定部13で、その情報を受けるようにすれば良い。
【0049】
なお、上記のようにアナモフィックレンズの特性が判明している場合は、それに合わせてウインドウの縦横比を設定すれば良いが、特性が判らない場合は、縦方向が長くなるようなウインドウサイズ、例えば縦横の比率を2対1に一律に設定する構成を採れば、精度低下を軽減できる。
【0050】
<対応点探索処理部14>
図6および図7を用いて、対応点探索処理部14での対応点探索処理について説明する。対応点探索処理部14では、対応点探索処理に位相限定相関法(POC:Phase Only Correlation)を用いる。
【0051】
図6は、位相限定相関法を用いた対応点探索処理を説明するための図である。位相限定相関法を用いた対応点探索処理では、まず基準画像上のウインドウ内の画像と、参照画像上のウインドウ内の画像とが抽出される。これらの画像については、次の数式のように表されるものとする。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、上記の数式におけるf(n1,n2)およびg(n1,n2)は、基準画像上のウインドウ内の画像および参照画像上のウインドウ内の画像を示している。また、N1およびN2は、例えばN1=2M1+1、N2=2M2+1と設定されている。
【0054】
次に、基準画像および参照画像のウインドウ内の各画像に対し、次の数式に示す演算式を用いた2次元のフーリエ変換処理T1a、T1bを行う。
【0055】
【数2】
【0056】
なお、上記の数式のただし書におけるWの添字Pには、N1、N2が代入され、またkの添字sには、1、2が代入される。
【0057】
このようなフーリエ変換処理T1a、T1bが施された各画像に対しては、次の数式に示す演算式を用いて、画像の振幅成分を除去するための規格化処理T2a、T2bが行われる。
【0058】
【数3】
【0059】
規格化処理T2a、T2bが完了すると、次の数式に示す演算式を用いた合成処理T3が行われる。
【0060】
【数4】
【0061】
合成処理T3とともに、次の数式に示す演算式を用いた2次元の逆フーリエ変換処理T4が行われる。これにより、各画像間の相関演算が実施されることとなり、その結果(POC値)が出力される。
【0062】
【数5】
【0063】
以上の位相限定相関法を用いた処理により、例えば図7に示すような結果が得られる。この図7においては、ウインドウ(N1×N2)内で相関が高い箇所のPOC値が大きくなっており、POC値のピークJcに対応する参照画像上のウインドウ内の位置が、基準画像上のウインドウの中心点(指定点)に対応した参照画像上の対応点に相当することとなる。
【0064】
以上のような位相限定相関法を用いた対応点探索処理によれば、画像の振幅成分を除去し画像の位相成分のみで相関演算が行われるため、輝度変動やノイズの影響を抑制して参照画像上の対応点を精度良く探索できる。
【0065】
なお、本願では、先に説明したように、ウインドウの設定に特徴を有している。
【0066】
<ウインドウ設定の具体例>
次に、図8〜図13を用いて、ウインドウ設定の具体例について説明する。
【0067】
図8は、撮影対象となる物体面を表しており、自車両MVの運転席から前方を見た状態を表している。
【0068】
図9は、図8に示す物体面のうち、枠線で囲まれた領域RIについてアナモフィックレンズを介して撮影された画像面を表しており、水平方向が圧縮されて、垂直方向に伸長していることが判る。
【0069】
ここで、対応点探索を行うために、図10に示すように、物体面に対して演算の周波数特性が等方となるように等方的なウインドウW1を設定した場合、アナモフィックレンズを介して得られた画像面上では、物体面と同様の周波数特性を含むように演算領域を設定するために、図11に示すウインドウW2のように垂直方向に伸長したウインドウサイズとすることが望ましい。このときに、先に説明したように、ウインドウ設定部13では、アナモフィックレンズのレンズ特性に基づいてウインドウの縦横比を設定することで、対応付け精度の低下を防止することができる。
【0070】
一方、図12に示すように、図11に示したウインドウW2と同じ面積(画素数)を有し、等方的に設定されたウインドウW3を画像面上に設定した場合、ウインドウW2と同レベルの情報量を含んでいるため、図11の場合と同精度での対応点探索が可能となるが、画像面上で等方的なウインドウを設定すると、物体面上でのウインドウは図13に示すウインドウW4のように、縦横比が大きく変わり、算出可能な周波数特性が大きく異なることとなる。この結果、対応点算出領域における被写体パターンの姿勢依存性が大きくなることとなり、望ましくはない。
【0071】
また、図12に示すウインドウW3のように、水平方向に長いウインドウを設定すると、水平方向に圧縮された画像面では、遠近競合が生じ、遠近の判別が難しくなるという問題もある。
【0072】
<アナモフィックレンズ以外のレンズへの適用>
以上の説明においては、変倍率レンズとしてアナモフィックレンズを使用して画像を取得する例について説明したが、変倍率レンズ以外のレンズで、撮像面の中央部と周辺部とで像倍率の変化が小さくなるように歪曲収差を補正している一般的な撮像レンズとは別に、負の歪曲収差を意図的に発生させることにより、中心画像に比べて端縁部の画像を大幅に圧縮させる特性有している中心窩レンズや魚眼レンズを用いる場合にも、上述したウインドウの設定方法は有効である。
【0073】
このようなレンズを使用する場合、設定されるウインドウのサイズは、画像中心に近いほど等方的なサイズに設定し、中心から離れるに従って、設定されるウインドウのサイズをその部分の圧縮比に合わせて変形させる。
【0074】
図14には、中心窩レンズFVLと、中心窩レンズFVLの各位置でのウインドウサイズの一例を模式的に示している。
【0075】
図14に示すように、中心窩レンズFVLの中心部分では設定されるウインドウW11は等方的な形状を有しているが、中心から離れるに従って、Y軸方向への伸長度が大きくなる形状となっている。
【0076】
また、アナモフィックレンズにおいても、円筒面の中心軸から離れるに従って、設定されるウインドウの縦横比を変化させるようにしても良い。
【0077】
これらの、レンズ面上での位置による倍率の変化のデータは、例えば画像処理装置10内のテーブル等に、レンズの種類ごとに予め格納しておくことで、レンズが決まれば、自動的に、ウインドウの縦横比を変化させることができる。
【0078】
<ウインドウ設定の変形例1>
位相限定相関法では、対応点探索を行う際に、信頼性の低い高周波成分を除去するために、設定したウインドウ内に、ガウス関数などの重み付け関数(窓関数)を乗算するが、この重み付け関数の形状を縦横で変える構成としても良い。この場合は、ウインドウの形状はレンズの圧縮率に応じて縦横で変える必要はない。このような構成を採ることで、本来のウインドウ設定そのものの形状を変える必要がなく、ハードウエア化を行った際でも複雑な構成にならない。
【0079】
図15には、一般的な窓関数を示しており、X軸には横方向の位置、Y軸には縦方向の位置を示し、Z軸には重み量を示している。
【0080】
通常、このような窓関数の形状は縦横で同じであるが、図16および図17にそれぞれ示さるように、横方向および縦方向で輪郭形状を変えた構成とすることで、ウインドウの縦横比を変えた場合と同様に、対応付け精度の低下を防止することができる。
【0081】
図16はウインドウの横方向に適用される関数の形状を表しており、図17はウインドウの縦方向に適用される関数の形状を表している。図16と図17とを比較して、縦方向では、比較的緩やかなカーブを描く関数となっており、横方向では、図15と同様のガウス関数を表す形状となっている。このように設定することで、レンズによる圧縮を受ける横方向については位置ごとに細かな重み付けが可能となり、圧縮を受けない縦方向については大まかな重み付けで済ませることができる。
【0082】
なお、窓関数は、図15に示すガウス関数に限定されるものではなく、ハニング窓やハミング窓などの関数を使用しても良い。
【0083】
<ウインドウ設定の変形例2>
図5を用いて説明したウインドウ設定部13での設定動作では、ウインドウの縦横比を変えて設定する例を示したが、ウインドウ自身は等方的なウインドウとした状態で、ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更するという方法を採っても良い。
【0084】
図18には、ウインドウ内の計算対象領域を縦、横で変更する例を模式的に示している。図18において、等方ウインドウIW内において、計算対象領域CRは縦方向に長く、横方向に短い長方形状に設定されている。
【0085】
対応点探索処理をハードウエアで実現する場合、レンズ特性に応じたウインドウサイズの変更などの処理を加えることは、ハードウエア構成が複雑化する原因となる。そこで、ウインドウ自身は変更せずに、ウインドウ内の対象位置に応じて計算の有無を設定することで、ハードウエア構成が複雑化することを防止できる。
【符号の説明】
【0086】
11 画像入力部
12 ポイント設定部
13 ウインドウ設定部
14 対応点探索処理部
SC ステレオカメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な移動体における周辺の画像データを取得するステレオカメラと、
前記画像データから3次元情報を取得する3次元情報取得部と、を備え、
前記ステレオカメラは、縦横の倍率が異なる変倍レンズを介して前記画像データを取得し、
前記3次元情報取得部は、
前記画像データの所定の領域に対してウインドウを設定するウインドウ設定部と、
前記画像データに対して対応点探索を実行する対応点探索処理部を有し、
前記ウインドウ設定部は、
前記対応点探索処理部での対応点探索に使用される前記ウインドウのパラメータを、前記変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更することを特徴とする、周辺表示装置。
【請求項2】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウの画素数の縦横比である、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項3】
前記ウインドウの前記画素数の縦横比は、前記ウインドウを物体面に適用した場合に、物体面での縦横比が等方となるように設定される、請求項2記載の周辺表示装置。
【請求項4】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウ内に乗算される重み付け関数であって、
前記重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、前記変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更する、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項5】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウ内の計算対象領域の画素数の縦横比である、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項6】
前記変倍レンズとしてアナモフィックレンズを用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項7】
前記変倍レンズとして中心窩レンズを用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項8】
前記ウインドウ設定部は、
前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化に合わせて、前記ウインドウのパラメータを変化させ、
前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータは、前記周辺表示装置内のデータテーブル内に予め格納される、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項9】
前記対応点探索は、位相限定相関法を用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項1】
自走可能な移動体における周辺の画像データを取得するステレオカメラと、
前記画像データから3次元情報を取得する3次元情報取得部と、を備え、
前記ステレオカメラは、縦横の倍率が異なる変倍レンズを介して前記画像データを取得し、
前記3次元情報取得部は、
前記画像データの所定の領域に対してウインドウを設定するウインドウ設定部と、
前記画像データに対して対応点探索を実行する対応点探索処理部を有し、
前記ウインドウ設定部は、
前記対応点探索処理部での対応点探索に使用される前記ウインドウのパラメータを、前記変倍レンズの縦横の倍率比に合わせて変更することを特徴とする、周辺表示装置。
【請求項2】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウの画素数の縦横比である、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項3】
前記ウインドウの前記画素数の縦横比は、前記ウインドウを物体面に適用した場合に、物体面での縦横比が等方となるように設定される、請求項2記載の周辺表示装置。
【請求項4】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウ内に乗算される重み付け関数であって、
前記重み付け関数の縦方向および横方向での形状を、前記変倍レンズによる画像の光学的な変形に合わせて変更する、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項5】
前記ウインドウの前記パラメータは、
前記ウインドウ内の計算対象領域の画素数の縦横比である、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項6】
前記変倍レンズとしてアナモフィックレンズを用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項7】
前記変倍レンズとして中心窩レンズを用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項8】
前記ウインドウ設定部は、
前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化に合わせて、前記ウインドウのパラメータを変化させ、
前記変倍レンズ上の位置による倍率の変化のデータは、前記周辺表示装置内のデータテーブル内に予め格納される、請求項1記載の周辺表示装置。
【請求項9】
前記対応点探索は、位相限定相関法を用いる、請求項1記載の周辺表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−27496(P2011−27496A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172048(P2009−172048)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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