説明

回転センサ

【課題】 回転角度の検出精度を高めながら小型化することができる回転センサを実現する。
【解決手段】 磁気抵抗素子R1〜R8が各磁気抵抗素子の出力信号間に位相差が出るように配置された磁気抵抗素子領域E1と、ホール素子H1,H2が各ホール素子の出力信号間に位相差が出るように配置されたホール素子領域E2とを有し、かつ、磁気抵抗素子領域およびホール素子領域の少なくとも一部同士が重ねられたセンサチップ5と、各ホール素子の各出力レベルと閾値レベルとの比較結果を出す比較部53と、各磁気抵抗素子の各出力信号を用いて相対回転角度θに対応する演算角度φを演算する角度演算部60と、その演算された角度と閾値角度とを比較し、その比較結果と比較部53の比較結果とを用い、相対回転角度に対応する信号を出力する出力部70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気抵抗素子およびホール素子を有し、磁気発生部に対して相対的に回転するセンサチップを備え、かつ、磁気抵抗素子およびホール素子からの各出力信号を用いて磁気発生部に対する相対回転角度を検出する回転センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転センサとして、図30に示すものが知られている(特許文献1)。このものは、図30(a)に示すように、プリント回路板104の表面に1つの磁気センサ100と、ホール素子101とを配置して構成される。磁気センサ100は、永久磁石107から発生し、プリント回路板104の表面に平行な磁界106を検出できるように、永久磁石107の回転面と対向する位置に配置されている。ホール素子101は、永久磁石107から発生し、プリント回路板104の表面に垂直な磁界105を検出できるように、永久磁石107の外側に配置されている。図30(b)に示すように、ホール素子101は、2つの横型ホール素子102,103を備える。横型ホール素子102,103は、磁気センサ100に対して平面方向に角度γで配置されている。
【0003】
そして、永久磁石107が1回転すると、磁気センサ100が、1波長が電気角180°の信号を出力し、各横型ホール素子102,103は、それぞれ1波長が電気角360°の信号を出力する。また、永久磁石107の回転角度αは、磁気センサ100の出力信号に基づいて最大180°の角度範囲で求められ、各横型ホール素子102,103の出力値の大小関係に基づいて、永久磁石107の回転角度αが0°≦α≦90°、90°≦α≦180°、180°≦α≦270°および270°≦α≦360°のうち、どの範囲に属するかが判定される。また、回転角度の範囲の判定精度を高めるためには、磁気センサ100に対する横型ホール素子102,103の配置角度γを90°にすることが望ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−94512号公報(第22〜24段落、図4,5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来のものは、磁気センサ100に対する横型ホール素子102,103の配置角度γを90°に設定しようとすると、各横型ホール素子102,103を永久磁石107の下方かつ中心に配置しなければならない。
しかし、各横型ホール素子102,103が永久磁石107の下方かつ中心に配置された状態では、永久磁石107から発生する磁界105が各横型ホール素子102,103に対して垂直に印加されないため、各横型ホール素子102,103の出力に基づいて永久磁石107の回転角度の範囲を判定することができなくなる。また、磁界105が各横型ホール素子102,103に垂直に印加される配置範囲において角度γを90°にしようとすると、横型ホールの間隔が大きくなり、1チップ化が難しく、プリント回路板104が大きくなるので、回転センサが大型化する。
つまり、従来のものは、回転角度の検出精度を高めながら小型化することが困難であった。
【0006】
そこでこの発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、回転角度の検出精度を高めながら小型化することができる回転センサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明の第1の特徴は、磁気発生部(2)から発生する磁気によって磁気抵抗効果を発生する磁気抵抗素子(R1〜R8)と、前記磁気によってホール効果を発生するホール素子(H1,H2)とを有し、前記磁気抵抗素子およびホール素子からの各出力信号を用いて前記磁気発生部に対する相対回転角度(θ)を検出する回転センサ(1)において、複数の磁気抵抗素子が各磁気抵抗素子の出力信号間に位相差が出るように配置された磁気抵抗素子領域(E1)と、複数のホール素子が各ホール素子の出力信号間に位相差が出るように配置されたホール素子領域(E2)とを有し、かつ、前記磁気抵抗素子領域およびホール素子領域の少なくとも一部同士が重ねられたセンサチップ(5)と、各ホール素子の各出力レベルと閾値レベルとを比較し、ホール素子毎の比較結果を出す比較部(53)と、各磁気抵抗素子の各出力信号を用いて前記相対回転角度に対応する角度(φ)を演算する角度演算部(60)と、前記角度演算部によって演算された演算値と閾値とを比較し、その比較結果と前記比較部の比較結果とを用い、前記相対回転角度に対応する信号を出力する出力部(70)と、を備えることにある。
【0008】
上述の第1の特徴によれば、磁気抵抗素子領域およびホール素子領域の少なくとも一部同士が重ねられているため、回転センサを小型化することができる。
しかも、相対回転角度に対応する信号を出力するときに、各ホール素子の各出力レベルと閾値レベルとの比較結果に加え、角度演算部によって演算された角度と閾値角度との比較結果をも用いるため、相対回転角度の検出精度を高めることができる。
つまり、各ホール素子の各出力レベルと閾値レベルとの比較結果に不安定な部分が存在する場合に、その部分を、角度演算部によって演算された演算値と閾値との比較結果によって補うことができるため、相対回転角度の検出精度を高めることができる。
【0009】
この発明の第2の特徴は、前述した第1の特徴において、前記ホール素子領域(E2)の略全領域が前記磁気抵抗素子領域(E1)と重ねられていることにある。
【0010】
上述の第2の特徴によれば、ホール素子領域の略全領域が磁気抵抗素子領域と重ねられているため、回転センサをより一層小型化することができる。
しかも、磁気発生部の径が異なっても同じ回転センサを共通に用いることができるため、永久磁石の径毎に異なる回転センサを製造する必要がない。
したがって、回転センサの製造コストを低減することができる。
【0011】
この発明の第3の特徴は、前述した第1または第2の特徴において、前記磁気抵抗素子領域(E1)およびホール素子領域(E2)が、前記磁気発生部(2)の相対回転軸(C1)方向に対応する方向に重ねられていることにある。
【0012】
上述の第3の特徴によれば、磁気抵抗素子領域およびホール素子領域が、磁気発生部に対する相対回転軸方向に対応する方向に重ねられているため、相対回転軸の周囲に占める回転センサの占有領域を小さくすることができる。
【0013】
この発明の第4の特徴は、前述した第1ないし第3の特徴のいずれかにおいて、前記磁気抵抗素子領域(E1)およびホール素子領域(E2)が、前記磁気発生部(2)の相対回転面(2c)と略平行に配置されていることにある。
【0014】
上述の第4の特徴によれば、磁気抵抗素子領域およびホール素子領域が、磁気発生部の相対回転面と略平行に配置されているため、各磁気抵抗素子および各ホール素子は、磁気発生部から磁気抵抗素子領域およびホール素子領域に対して略平行に発生する磁気を検出することができる。
【0015】
この発明の第5の特徴は、前述した第1ないし第4の特徴のいずれかにおいて、前記磁気抵抗素子領域(E1)が前記センサチップ(5)の表面(5a)側に、前記ホール素子領域(E2)が前記センサチップの裏面(5b)側にそれぞれ配置されており、前記センサチップの表面が前記磁気発生部(2)の相対回転面(2c)と対向するように配置されていることにある。
【0016】
この発明の第6の特徴は、前述した第1ないし第4の特徴のいずれかにおいて、前記磁気抵抗素子領域(E1)が前記センサチップ(5)の表面(5a)側に、前記ホール素子領域(E2)が前記センサチップの裏面(5b)側にそれぞれ配置されており、前記センサチップの裏面が前記磁気発生部(2)の相対回転面(2c)と対向するように配置されていることにある。
【0017】
上述の第5または第6の特徴によれば、センサチップの表面および裏面のどちらを磁気発生部の相対回転面と対向するように配置しても、相対回転角度を検出することができる。
【0018】
この発明の第7の特徴は、前述した第1ないし第6の特徴のいずれかにおいて、前記磁気発生部(2)は、その相対回転面(2c)の径方向で分割された異なる磁極(2a,2b)を有することにある。
【0019】
上述の第7の特徴によれば、相対回転面の径方向で分割された異なる磁極を有する磁気発生部に対する相対回転角度を検出することができる。
【0020】
この発明の第8の特徴は、前述した第1ないし第6の特徴のいずれかにおいて、前記磁気発生部(2)は、相対回転する回転体(6a)の周方向に配置された異なる磁極(2a,2b)であることにある。
【0021】
上述の第8の特徴によれば、相対回転する回転体の周方向に配置された異なる磁極を有する磁気発生部に対する相対回転角度を検出することができる。
【0022】
この発明の第9の特徴は、前述した第8の特徴において、前記センサチップ(5)が前記異なる磁極(2a,2b)間に配置されていることにある。
【0023】
上述の第9の特徴によれば、センサチップが回転体の外周に配置された異なる磁極間に配置されているため、異なる磁極間に発生する磁気をセンサチップの磁気抵抗素子領域およびホール素子領域に平行に印加することができる。また、回転体およびセンサチップの占有空間を回転体の相対回転軸方向へ圧縮することができる。
【0024】
この発明の第10の特徴は、前述した第1ないし第9の特徴のいずれかにおいて、前記磁気発生部(2)が多極であることにある。
【0025】
この発明の第11の特徴は、前述した第1ないし第10の特徴のいずれかにおいて、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)および各ホール素子(H1,H2)は、前記磁気抵抗素子領域(E1)およびホール素子領域(E2)に対して平行な磁界(B1)の磁束密度の変化を主として検出するように配置されていることにある。
【0026】
上述の第11の特徴によれば、磁気抵抗素子領域に対して平行な磁界の磁束密度の変化を主として検出するため、各磁気抵抗素子における磁気抵抗効果を大きくすることができる。
したがって、磁気発生部に対する相対回転角度の検出精度を高めることができる。
【0027】
この発明の第12の特徴は、前述した第1ないし第11の特徴のいずれかにおいて、前記各ホール素子(H1,H2)は、相互に隣接するホール素子の出力信号間に90°の位相差が出るように配置されていることにある。
【0028】
上述の第12の特徴によれば、相互に隣接するホール素子の一方から正弦波信号(sin信号)を出力し、他方から余弦波信号(cos信号)を出力することができる。
したがって、上記の正弦波信号および余弦波信号をパルス信号に変換し、両パルス信号の信号レベルの組合せを用いることにより、相対回転角度が0°〜90°、90°〜180°、180°〜270°および270°〜360°のうち、どの象限(角度範囲)に入るかを判定することができる。
【0029】
この発明の第13の特徴は、前述した第1ないし第12の特徴のいずれかにおいて、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)は、相互に隣接する磁気抵抗素子の出力信号間に45°の位相差が出るように配置されていることにある。
【0030】
上述の第13の特徴によれば、相互に隣接する磁気抵抗素子の一方から正弦波信号(sin信号)を出力し、その正弦波信号から位相が45°遅れた余弦波信号(cos信号)を他方から出力することができる。
したがって、上記の正弦波信号および余弦波信号を用いて相対回転角度を演算することができる。
【0031】
この発明の第14の特徴は、前述した第1ないし第13の特徴のいずれかにおいて、相互に隣接する磁気抵抗素子の出力信号間に90°の位相差が出るように磁気抵抗素子をハーフブリッジ接続した第1および第2のハーフブリッジ回路が、両ハーフブリッジ回路の各出力信号間の位相差が45°となるように配置されていることにある。
【0032】
上述の第14の特徴によれば、第1および第2のハーフブリッジ回路の各中点出力は、各ハーフブリッジ回路に供給される電圧の(1/2)を中心に振動するため、環境温度の変化などに起因する出力信号のオフセットを抑制することができる。
【0033】
この発明の第15の特徴は、前述した第14の特徴において、一対の前記第1のハーフブリッジ回路をブリッジ接続した第1のフルブリッジ回路と、一対の前記第2のハーフブリッジ回路をブリッジ接続した第2のフルブリッジ回路とが、両フルブリッジ回路の各出力信号間に45°の位相差が出るように配置されていることにある。
【0034】
上述の第15の特徴によれば、第1および第2のハーフブリッジ回路をそれぞれフルブリッジ回路構成とすることにより、ハーフブリッジ回路構成の場合と比較して、各フルブリッジ回路の出力信号の振幅を2倍にすることができる。
したがって、磁気発生部が発生する弱い磁気をも検出可能となるため、磁気発生部に対する相対回転角度の検出感度を高めることができる。また、磁気発生部とセンサチップとの配置間隔を大きくすることができるため、センサチップの配置位置の自由度が増す。
【0035】
この発明の第16の特徴は、前述した第14または第15の特徴において、前記第1および第2のハーフブリッジ回路を構成する磁気抵抗素子(R1〜R8)が同心円状に交互に配置されていることにある。
【0036】
上述の第16の特徴によれば、第1および第2のハーフブリッジ回路を構成する磁気抵抗素子が同心円状に交互に配置されているため、磁気抵抗素子領域の配置面積を縮小することができる。
【0037】
この発明の第17の特徴は、前述した第12ないし第16の特徴のいずれかにおいて、前記出力部(70)によって作成された信号と、前記各ホール素子(H1,H2)の各出力信号との間にそれぞれ45°の位相差があることにある。
【0038】
ホール素子の出力信号は180°周期のsin信号またはcos信号のアナログ値であり、磁気抵抗素子に比べて感度が小さいため、電圧0V付近、つまり、位相が180°切替わるポイント付近では、電圧オフセットやランダムノイズの影響を受けて電圧が変動し易い。このため、ホール素子の出力信号が0V(閾値レベル)以上のときをハイレベルと判定し、0V未満のときをローレベルと判定してパルス信号(以下、第1パルス信号という)を作成すると、その第1パルス信号において位相が180°切替わるポイント付近の電圧が不安定になるおそれがある。このため、そのような不安定な領域(図13においてハッチングを施した領域)は、相対回転角度の0〜360°を90°毎の角度範囲に分けた場合に、相対回転角度がどの角度範囲の入るかを判定する要素には用いない方が検出精度を高める上で望ましい。
【0039】
一方、高感度な各磁気抵抗素子の出力信号を用いて角度演算部によって演算された角度は、多ビットのデジタル値であるため、演算された角度の1/2を閾値角度とし、演算された角度が閾値角度以上のときをハイレベルと判定し、閾値角度未満のときをローレベルと判定すると、不安定な領域の存在しないパルス信号(以下、第2パルス信号という)を作成することができる。また、演算された角度に対応する信号は、各ホール素子の各出力信号とそれぞれ位相が45°異なるため、第2パルス信号は、第1パルス信号とそれぞれ位相が45°異なる。
【0040】
そこで、相対回転角度がどの角度範囲に入るかを判定する際に、第1パルス信号のうち、中央の90°分に対応する部分の信号レベルを用い、両端の不安定な45°分の信号レベル(計90°分)は用いないようにする。そして、両端の45°分に対応する部分は、第2パルス信号の信号レベルを用いる。
つまり、上述の第17の特徴によれば、相対回転角度の角度範囲を判定する際に、角度範囲の判定精度を高めることができるため、相対回転角度の検出精度を高めることができる。
【0041】
この発明の第18の特徴は、前述した第12ないし第17の特徴のいずれかにおいて、前記相対回転角度(θ)の0〜360°を前記各ホール素子の出力信号間の位相差で除した値をnとし、0〜360°の範囲をnで除することによりn個の角度範囲を設定した場合に、前記比較部(53)および出力部(70)における比較結果の組合せが各角度範囲において総て異なるように構成されていることにある。
【0042】
上述の第18の特徴によれば、相対回転角度の0〜360°を各ホール素子の出力信号間の位相差で除した値をnとし、0〜360°の範囲をnで除することによりn個の角度範囲を設定した場合に、比較部および出力部における比較結果の組合せが各角度範囲において総て異なるように構成されているため、角度範囲の判定精度を高めることができる。 たとえば、各ホール素子の出力信号間の位相差が90°であり(n=4)、相対回転角度を0〜90°、90〜180°、180〜270°および270〜360°の4つの角度範囲に分割した場合に、相対回転角度が180°であるのに、演算した角度として誤って0°を出力するおそれがない。したがって、0〜360°の正確な角度を出力することができる。
【0043】
この発明の第19の特徴は、前述した第1ないし第18の特徴のいずれかにおいて、前記角度演算部(60)は、前記相対回転角度(θ)と、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)から出力される位相差のある複数の出力信号を用いて演算した角度(φ)との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を行って前記相対回転角度に対応する角度を演算することにある。
【0044】
上述の第19の特徴によれば、相対回転角度と演算した角度との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を行って相対回転角度に対応する角度を求めるため、相対回転角度を高精度で演算することができる。
しかも、第1および第2の比較結果と演算した角度とを用いて0〜360°の相対回転角度に対応する角度を出力することができる。
【0045】
この発明の第20の特徴は、前述した第1ないし第19の特徴のいずれかにおいて、前記各ホール素子(H1,H2)は、それぞれ縦型ホール素子であり、各縦型ホール素子の磁気検出面(HP1,HP2)の面方向が前記磁気抵抗素子領域(E1)と交差するように配置されていることにある。
【0046】
上述の第20の特徴によれば、各ホール素子がそれぞれ縦型ホール素子であり、各縦型ホール素子の磁気検出面の面方向が磁気抵抗素子領域と交差するように配置されているため、磁気抵抗素子領域に平行な磁気を各ホール素子の磁気検出面によって検出することができる。
したがって、磁気抵抗素子領域およびホール素子領域を重ねて配置した場合であっても、両素子領域が磁気を検出することができるため、センサチップを平面方向(横幅方向)に小型化することができる。
【0047】
この発明の第21の特徴は、前述した第1ないし第20の特徴のいずれかにおいて、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)および各ホール素子(H1,H2)は、それぞれ半導体基板(10)に作り込まれていることにある。
【0048】
上述の第21の特徴によれば、各磁気抵抗素子および各ホール素子は、それぞれ半導体基板に作り込まれているため、各磁気抵抗素子および各ホール素子を一体化することができる。したがって、各磁気抵抗素子および各ホール素子を個別に位置決めする手間を省くことができる。
【0049】
この発明の第22の特徴は、前述した第1ないし第21の特徴のいずれかにおいて、前記各ホール素子(H1,H2)はCMOSトランジスタ構造であることにある。
【0050】
上述の第22の特徴によれば、各ホール素子はCMOSトランジスタ構造であるため、バイポーラ構造よりも製造工程を簡易化することができるので、回転センサの製造効率を高めることができる。
【0051】
特に、この発明の第23の特徴のように、各ホール素子(H1,H2)を高耐圧CMOSトランジスタ構造とすることにより、N型の半導体領域(Nwell)が深くなり、キャリアの移動度が高くなるため、磁気の検出感度を高めることができる。
【0052】
この発明の第24の特徴は、前述した第22または第23の特徴において、前記ホール素子領域(E2)は、第1導電型の半導体基板(10)と、前記半導体基板内の表層部から所定の深さに形成した第2導電型の半導体領域(91)と、前記第2導電型の半導体領域内において当該第2導電型の半導体領域よりも浅く、前記第2導電型の半導体領域を分割するように形成された第1導電型の半導体領域(92,93,99)と、前記第2導電型の半導体領域の表層部において前記第1導電型の半導体領域を挟んで形成され、電流供給対を構成するコンタクト用の第2導電型の不純物拡散領域(97,98)と、前記第2導電型の半導体領域の表層部に形成され、電圧出力対を構成するコンタクト用の第2導電型の不純物拡散領域(95,96)と、を備えており、前記磁気抵抗素子領域(E1)は、少なくとも一部が絶縁膜(90)を介して前記ホール素子領域に重ねて形成されていることにある。
【0053】
上述の第24の特徴によれば、CMOSトランジスタの製造方法によってホール素子領域を半導体基板に製造した後、ホール素子領域の表面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜の表面に磁気抵抗素子領域を形成することができる。
したがって、ホール素子領域に積層する形で磁気抵抗素子領域を形成することができるため、両素子領域を個別に平面方向(横方向)に形成する場合と比較して、回転センサの製造効率を高めることができる。
【0054】
この発明の第25の特徴は、前述した第1ないし第24の特徴のいずれかにおいて、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)は、NiFeの薄膜よりなることにある。
【0055】
この発明の第26の特徴は、前述した第1ないし第24の特徴のいずれかにおいて、前記各磁気抵抗素子(R1〜R8)は、NiCoの薄膜よりなることにある。
【0056】
上述の第25または第26の特徴によれば、微弱な磁界を検知することができるため、相対回転角度の検出精度を高めることができる。
【0057】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態の回転センサの主要構成をブロックで示す説明図である。
【図2】図1に示すセンサチップの使用状態の一例を示す説明図であり、(a)はセンサチップおよび永久磁石の縦断面図、(b)は(a)に示す永久磁石の平面図である。
【図3】図2(a)に示す永久磁石が180°回転した状態を示す縦断面図である。
【図4】センサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図5】(a)は、磁気抵抗素子領域E1およびホール素子領域E2の平面図であり、(b)は、ホール素子H1,H2の配置角度を示す説明図である。
【図6】AMRセンサM1の構造を模式的に示す平面図である。
【図7】AMRセンサM2の構造を模式的に示す平面図である。
【図8】AMRセンサM1の等価回路である。
【図9】AMRセンサM2の等価回路である。
【図10】AMRセンサM1,M2およびホール素子H1,H2の各出力信号を示す説明図である。
【図11】ホール素子H2の説明図であり、(a)はホール素子H2およびその周辺の一部を示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図12】回転センサ1の主な電気的構成をブロックで示す説明図であり、図1に対応する図である。
【図13】ホール素子などの出力波形を示す説明図であり、(a)はホール素子H1の出力波形、(b)は比較回路53aの出力波形、(c)はホール素子H2の出力波形、(d)は比較回路53bの出力波形、(e)は角度演算部60から出力される演算角度の出力波形、(f)は(e)に示す演算角度φと閾値角度φthとの比較結果を示す波形、(g)は出力ロジック回路71の出力波形である。
【図14】比較回路53a,53bから出力される第1および第2パルス信号VH1,VH2の信号レベルと、演算角度φと閾値角度φthとの比較結果との組合せと、相対回転角度θの角度範囲との関係を示す説明図であり、(a)はホール素子H1,H2を+45°ずらした場合、(b)はホール素子H1,H2を−45°ずらした場合である。
【図15】第2実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図16】第2実施形態の回転センサ1の主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図17】第2実施形態におけるホール素子などの出力波形を示す説明図であり、図13に対応する図である。
【図18】第3実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は相対回転角度0°の基準方向を+45°ずらした場合の説明図、(b)は相対回転角度0°の基準方向を−45°ずらした場合の説明図である。
【図19】(a)および(b)は、第4実施形態の回転センサに備えられたホール素子の配置を示す説明図である。
【図20】(a)および(b)は、第5実施形態の回転センサに備えられたセンサチップおよび永久磁石の縦断面図である。
【図21】第6実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの使用状態の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図22】(a)および(b)は、第6実施形態の変更例の回転センサに備えられたセンサチップおよび回転体の平面図である。
【図23】(a)および(b)は、第7実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの使用状態の一例を示す断面図である
【図24】第8実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図25】第9施形態の回転センサに備えられたAMRセンサの等価回路である。
【図26】第10実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図27】第10実施形態の回転センサの主な電気的構成を一部省略してブロックで示す説明図である。
【図28】第11実施形態の回転センサに備えられた角度演算部60の構成をブロックで示す説明図である。
【図29】第12実施形態の回転センサの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図30】従来の回転センサの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
〈第1実施形態〉
この発明の実施形態について図を参照して説明する。図1は、この実施形態の回転センサの主要構成をブロックで示す説明図である。図2は、図1に示すセンサチップの使用状態の一例を示す説明図であり、(a)はセンサチップおよび永久磁石の縦断面図、(b)は(a)に示す永久磁石の平面図である。図3は、図2(a)に示す永久磁石が180°回転した状態を示す縦断面図である。
【0060】
[主要構成]
この実施形態の回転センサの主要構成について説明する。図1に示すように、この実施形態の回転センサ1は、センサチップ5と、このセンサチップ5と電気的に接続された検出回路50とを備える。センサチップ5は、磁気抵抗素子から成る2つの異方性磁気抵抗センサ(以下、AMRセンサという)M1,M2と、2つのホール素子H1,H2とを備える。
【0061】
図2(a)に示すように、センサチップ5は、検出対象の永久磁石(磁気発生部)2の径に沿った相対回転面2cと対向する位置に配置される。また、センサチップ5は、支持部材(図示せず)によって支持されており、配置位置が変化しないように固定されている。図2(b)に示すように、永久磁石2は、円板形状を成しており、相対回転面2cの径方向で分割された異なる磁極を有する。この実施形態では、永久磁石2は、相対回転面2cの径方向で同じ大きさに2分されており、一方がN極の永久磁石2aに、他方がS極の永久磁石2bになっている。図2(a)に示すように、永久磁石2は、回転シャフト3の先端に取付けられており、矢印F1で示す方向に回転する。
【0062】
また、永久磁石2は、N極の永久磁石2aからS極の永久磁石2bに向けて磁界を発生し、そのうち、センサチップ5の表面5aに平行な磁界B1を発生する。図示の例では、磁界B1はホール素子H1からホール素子H2を貫通している。永久磁石2が図2(a)に示す状態から図3に示すように180°回転すると、磁界B1の向きが180°変化する。図示の例では、磁界B1はホール素子H2からH1を貫通している。
【0063】
図1に示すように、検出回路50は、増幅部51,52と、角度演算部60と、比較部53と、出力部70とを備える。増幅部51は、AMRセンサM1,M2から出力される出力信号を増幅する。角度演算部60は、増幅部51から出力される増幅信号を用い、永久磁石2の相対回転角度(以下、入力角度ともいう)θを演算する。増幅部52は、ホール素子H1,H2から出力される出力信号を増幅する。比較部53は、増幅部52から出力されるホール素子毎の増幅信号の出力レベルと閾値レベル(0V)とを比較し、その比較結果に対応するパルス信号をホール素子毎に出力する。
【0064】
出力部70は、角度演算部60によって演算された角度(以下、演算角度という)φと閾値角度(請求項1に記載の閾値に対応する)φthとを比較し、その比較結果と比較部53の比較結果とを用い、相対回転角度θが0≦θ≦90°、90°≦θ≦180°、180°≦θ≦270°および270°≦θ≦360°の4つの象限のうち、どの象限に入っているかを判定する。そして、その判定結果と、角度演算部60から出力される演算角度(請求項1に記載の演算値に対応する)φとを用い、0〜360°の相対回転角度θに対応する出力角度を示す信号Voを出力する。
【0065】
[センサチップの構造]
センサチップ5の構造について説明する。図4は、センサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図5(a)は、磁気抵抗素子領域E1およびホール素子領域E2の平面図であり、(b)は、ホール素子H1,H2の配置角度を示す説明図である。なお、各図では、ホール素子H1,H2の配置状態を分かり易くするため、実際の寸法よりも大きく描いてある。また、磁気抵抗素子の形状も、素子の形成方向を分かり易くするため、実際の寸法よりも大きく描いてある。
【0066】
図4に示すように、センサチップ5は、シリコン基板10と、このシリコン基板10の表面に形成された絶縁膜90と、この絶縁膜90の表面に形成されたAMRセンサM1,M2と、シリコン基板10に作り込まれたホール素子H1,H2とを備える。AMRセンサM1は、磁気抵抗素子R1〜R4を備えており、AMRセンサM2は、磁気抵抗素子R5〜R8を備える。ホール素子H1,H2は、絶縁膜90を介して磁気抵抗素子R1〜R8の下方に重ねて配置されている。
【0067】
図5(b)に示すように、ホール素子H1,H2は、各磁気検出部HPの磁気検出面HP1,HP2の成す角度が90°となるように配置されている。つまり、ホール素子H1,H2は、出力信号間の位相差が90°となるように配置されている。センサチップ5の相対回転中心P1から磁気抵抗素子R2の方へ水平に延ばした線を基準線L3とし、基準線L3の位置を基準角度0°とすると、ホール素子H1は、自身の磁気検出面HP1と基準線L3とが成す角度αが45°となるように配置されている。
【0068】
また、ホール素子H2も自身の磁気検出面HP2と基準線L3とが成す角度が45°となるように配置されている。また、ホール素子H1,H2の各磁気検出面HP1,HP2と、基準角度0°に配置された磁気抵抗素子R2の磁化容易軸とがそれぞれ45°の角度を成している。つまり、ホール素子H1は、相対回転角度θに対して位相が45°進んだsin(θ+45°)信号を出力し、ホール素子H2は、ホール素子H1に対して位相が90°異なるcos(θ+45°)信号を出力する。
【0069】
ここで、磁気抵抗素子R1〜R8が配置された領域を磁気抵抗素子領域E1とし、ホール素子H1,H2が配置された領域をホール素子領域E2とする。図5(a)は、図4(a)に基づいて作成したものである。磁気抵抗素子領域E1は、四角形を呈しており、その面積は、磁気抵抗素子R1〜R8を配置するために必要な最小面積に略等しい。また、ホール素子領域E2は、T字形を呈しており、その面積は、ホール素子H1,H2を配置するために必要な最小面積に略等しい。
【0070】
図示のように、ホール素子領域E2の全部が磁気抵抗素子領域E1の下方に重ねられており、ホール素子領域E2の一部も磁気抵抗素子領域E1の端部から、はみ出ていない。また、磁気抵抗素子領域E1の対角線L1,L2の交点がセンサチップ5の相対回転中心P1と一致している。また、対角線L2が、ホール素子領域E2のうち、T字形の縦の領域を長手方向に2分している。
【0071】
つまり、センサチップ5の相対回転中心P1は、永久磁石2の相対回転軸C1(図2(a))の延長線上に位置しており、センサチップ5の相対回転中心P1および永久磁石2の相対回転中心は同軸上に存在する。このため、永久磁石2が回転していない状態においてセンサチップ5を相対回転中心P1を中心にして相対回転させた場合でも、永久磁石2に対するセンサチップ5の相対回転角度を検出することができる。
【0072】
センサチップ5は、上記の構造であるため、AMRセンサおよびホール素子を半導体基板の基板面方向に配置した従来の回転センサと比較して、センサチップ5の基板面方向の大きさ(横幅)を小さくすることができる。
また、磁気抵抗素子領域E1およびホール素子領域E2は、永久磁石2の相対回転軸C1(図2(a))に対応する方向に重ねられている。
【0073】
したがって、センサチップ5を永久磁石2の回転中心方向に縮小することができるため、永久磁石2の回転面2cと対向する空間を有効活用することができる。
また、センサチップ5の面積は、磁気抵抗素子領域E1に依存するため、磁気抵抗素子領域E1の面積に基づいてセンサチップ5の面積を決定することができる。
【0074】
(AMRセンサの構造)
次に、AMRセンサM1,M2の構造について説明する。図6は、AMRセンサM1の構造を模式的に示す平面図である。図7は、AMRセンサM2の構造を模式的に示す平面図である。図8は、AMRセンサM1の等価回路であり、図9は、AMRセンサM2の等価回路である。図10は、AMRセンサM1,M2およびホール素子H1,H2の各出力信号を示す説明図である。
【0075】
磁気抵抗素子R1〜R8は、帯状領域を複数回折り返した形状、つまり、メアンダ状(蛇行状)に形成されている。磁気抵抗素子R1〜R8は、主としてシリコン基板10の表面に平行な磁界の強さおよび向きにより抵抗値が変化し、抵抗値に応じたレベルの信号を出力する。つまり、磁気抵抗素子R1〜R8は、異方性磁気抵抗効果を発生する素子である。
この実施形態では、磁気抵抗素子R1〜R8は、強磁性体の金属薄膜により形成されている。強磁性体としては、NiFe(パーマロイ)やNiCoなどを用いることができる。また、強磁性体の金属薄膜は、スパッタ法や蒸着法により成膜することができる。
【0076】
図6に示すように、AMRセンサM1は、4つの磁気抵抗素子R1〜R4を備える。磁気抵抗素子R1〜R4は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。換言すると、磁気抵抗素子R1〜R4は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R1,R4およびR2,R3の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0077】
図8に示すように、磁気抵抗素子R1およびR4は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout1を取出すための出力端子31が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R2およびR3も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout2を取出すための出力端子32が電気的に接続されている。
【0078】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、cos2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子30と、グランドG1と電気的に接続するための端子33とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R1およびR2は、(R0−ΔRcos2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R3およびR4は、(R0+ΔRcos2θ)信号を出力する。ここで、R0は、無磁界中における磁気抵抗素子の抵抗値であり、ΔRは、抵抗値変化量である。
【0079】
各中点出力Vout1,Vout2は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化などに起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。
また、出力端子31,32は、差動増幅回路(図12において符号51aで示す)に接続され、中点出力Vout1,Vout2が差動増幅される。このため、AMRセンサM1を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、AMRセンサM1の出力振幅を2倍にすることができるため、磁気の検出感度を高めることができる。
【0080】
図7に示すように、AMRセンサM2は、4つの磁気抵抗素子R5〜R8を備える。磁気抵抗素子R5〜R8は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。換言すると、磁気抵抗素子R5〜R8は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R5,R7およびR8,R6の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0081】
図9に示すように、磁気抵抗素子R5およびR7は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout3を取出すための出力端子37が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R8およびR6も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout4を取出すための出力端子38が電気的に接続されている。
【0082】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、sin2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子36と、グランドG2と電気的に接続するための端子39とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R5およびR6は、(R0+ΔRsin2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R7およびR8は、(R0−ΔRsin2θ)信号を出力する。
【0083】
各中点出力Vout3,Vout4は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化などに起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。
また、出力端子37,38は、差動増幅回路(図12において符号51bで示す)に接続され、中点出力Vout3,Vout4が差動増幅される。このため、AMRセンサM2を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、AMRセンサM2の出力振幅を2倍にすることができるため、磁気の検出感度を高めることができる。
【0084】
図4(a)に示すように、AMRセンサM1,M2の各磁気抵抗素子は同心円状に交互に配置されており、隣り合うAMRセンサM1の磁気抵抗素子R1〜R4と、AMRセンサM2の磁気抵抗素子R5〜R8とが、電流の方向(磁化容易軸)が45°の角度を成すように配置されている。異方性磁気抵抗素子の電気抵抗の変化量ΔRは、自身の金属薄膜に流れる電流の方向(磁化容易軸)と、磁界の方向との成す角度が90°および270°のときに最大になり、0°および180°のときに最小になる。
【0085】
したがって、図10に示すように、AMRセンサM1は、1波長が電気角180°のcos信号を出力し、AMRセンサM2は、AMRセンサM1との位相差が45°で、1波長が電気角180°のsin信号を出力する。
【0086】
図4(b)に示すように、AMRセンサM1,M2を構成する磁気抵抗素子R1〜R8は、絶縁膜90を解してシリコン基板10の表層部に配置されている。AMRセンサM1,M2は、磁気抵抗素子領域E1、つまり、シリコン基板10に対して平行な磁界B1の磁束密度の変化を主として検出する。ホール素子H1,H2は、シリコン基板10に作り込まれており、絶縁膜90を解して磁気抵抗素子R1〜R8の下方に重ねて配置されている。この実施形態では、ホール素子H1,H2は、それぞれCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造の縦型ホール素子である。また、絶縁膜90はシリコン酸化膜である。
【0087】
ホール素子H1,H2は、出力信号間の位相差が90°となるように配置されている。このため、図10に示すように、永久磁石2が360°回転すると、ホール素子H1は、1波長が電気角360°のsin信号を出力し、ホール素子H2は、1波長が電気角360°のcos信号を出力する。
【0088】
(ホール素子の構造)
次に、ホール素子H1,H2の構造について説明する。なお、ホール素子H1,H2は同一の構造であるため、ここでは、ホール素子H2を例に挙げて説明する。図11は、ホール素子H2の説明図であり、(a)はホール素子H2およびその周辺の一部を示す平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【0089】
ホール素子H2は、高耐圧CMOSトランジスタ(HVCMOS)構造を有する。ホール素子H2は、P型(第1導電型)のシリコン基板(P−sub)10と、このシリコン基板10の表層部から深さ方向に形成されたN型(第2導電型)の半導体領域(Nwell)91と、この半導体領域91の全周を囲むP型(第1導電型)の拡散層(Pwell)92と、シリコン基板10の表層部から深さ方向に形成され、半導体領域91の表層部から所定深さまでの領域を3つの半導体領域91a,91b,91cに分割するP型(第1導電型)の拡散層(Pwell)93,99と、半導体領域91a,91b,91cの各表層部に形成されたコンタクト領域(N+拡散層(不純物拡散領域))94〜98とを備える。
【0090】
コンタクト領域94〜98には、配線を介して端子S,V1,V2,G3,G4が電気的に接続されている。端子S,G3,G4は、駆動電流を供給するための端子であり、端子V1,V2は、ホール電圧信号を取出すための端子である。つまり、コンタクト領域97,98が電流供給対であり、コンタクト領域95,96が電圧出力対である。したがって、図4(a)に示したホール素子H1,H2は、電流供給対を結ぶ線が直交するように配置されていることになる。また、電圧出力対を結ぶ線が直交するように配置されていることになる。
【0091】
図11(c)に示すように、コンタクト領域95,96によって挟まれる領域が、磁気検出部(ホールプレート)HPとなる。また、その磁気検出部HPのうち、コンタクト領域95,96を結ぶラインと平行な両面がそれぞれ磁気検出面HP2となる。つまり、ホール素子H2は、その磁気検出面HP2から磁気検出部HPに印加される磁界に対応するホール電圧信号を端子V1,V2から出力する。
図11(b)に示すように、端子Sから端子G3へ、さらに、端子Sから端子G4へそれぞれ一定の駆動電流iを流すと、その駆動電流iは、コンタクト領域94から磁気検出部HP、そして拡散層93,98の下方の半導体領域91を通じてコンタクト領域97,98へとそれぞれ流れる。
【0092】
つまり、磁気検出部HPには、基板表面(センサチップ表面)に垂直な成分を含む駆動電流が流れる。このため、その駆動電流を流した状態において、基板表面(センサチップ表面)に平行な成分を含む磁界(たとえば、図11(c)において矢印B1で示す磁界)が磁気検出部HPに印加されると、ホール効果によって端子V1,V2間にその磁界に対応するホール電圧VHが発生する。ホール電圧VHは、磁気検出面HP2と磁界の方向とが成す角度、つまり、磁気検出面HP2に対する磁界の入射角度に応じて変化する。
【0093】
図2(a),図3に示したように、ホール素子H1,H2は、各磁気検出面HP1,HP2がシリコン基板10の表面に対して垂直となるように配置されているため、永久磁石2から発生し、シリコン基板10の表面に平行な磁界B1が各磁気検出面HP1,HP2を垂直に貫通する。図示の状態では、磁界B1は、ホール素子H2の磁気検出面HP2に垂直に貫通しているが、永久磁石2が図示の位置から90°回転すると、磁界B1は、ホール素子H1の磁気検出面HP1に垂直に貫通する。つまり、ホール素子H1,H2は、シリコン基板10の表面に平行な磁界B1の磁束密度の変化を主として検出する。
【0094】
N型の半導体領域91は、低耐圧CMOSトランジスタ構造におけるN型の半導体領域よりも深く形成されており、それに伴い、P型の拡散層92,93,98も、低耐圧CMOSトランジスタ構造におけるP型の拡散層よりも深く形成されている。この実施形態では、P型の拡散層92,93,98は、それぞれN型の半導体領域91の略半分の深さに形成されている。
【0095】
このようにホール素子H1は、N型の半導体領域91を深く形成しているため、キャリア移動度が高くなり、ホール効果を大きくすることができるため、ホール電圧VHを高くすることができるので、磁界に対する検出感度を高めることができる。
また、ホール素子H1は、CMOS工程で製造するため、バイポーラ工程で製造する縦型ホール素子よりもコスト的に有利である。
【0096】
[電気的構成]
次に、回転センサ1の主な電気的構成について説明する。図12は、回転センサ1の主な電気的構成をブロックで示す説明図であり、図1に対応する図である。図13は、ホール素子などの出力波形を示す説明図であり、(a)はホール素子H1の出力波形、(b)は比較回路53aの出力波形、(c)はホール素子H2の出力波形、(d)は比較回路53bの出力波形、(e)は角度演算部60から出力される演算角度の出力波形、(f)は(e)に示す演算角度φと閾値角度φthとの比較結果を示す波形、(g)は出力ロジック回路71の出力波形である。
【0097】
(増幅部51および角度演算部60)
増幅部51は、AMRセンサM1の出力信号sin2θを差動増幅する差動増幅回路51aと、AMRセンサM2の出力信号cos2θを差動増幅する差動増幅回路51bとを備える。角度演算部60は、トラッキングループ型デジタル角度変換回路であり、乗算回路61,62と、減算回路63と、ウインドウコンパレータ64と、アップダウンカウンタ65と、cos2φ出力回路66と、D/A変換器(DAC)67と、sin2φ出力回路68と、D/A変換器(DAC)69とを備える。
【0098】
cos2φ出力回路66は、アップダウンカウンタ65から出力されるデジタルの演算角度φに対応するデータcos2φを出力する。たとえば、cos2φ出力回路66は、演算角度φとデータcos2φとを対応付けたテーブルが記憶されたROMを備えており、演算角度φに対応付けられているデータcos2φをそのROMから読出して出力する。D/A変換器67は、cos2φ出力回路66から出力されたデータcos2φをアナログの信号cos2φに変換する。
【0099】
sin2φ出力回路68は、アップダウンカウンタ65から出力されるデジタルの演算角度φに対応するデータsin2φを出力する。たとえば、sin2φ出力回路68は、演算角度φとデータsin2φとを対応付けたテーブルが記憶されたROMを備えており、演算角度φに対応付けられているデータsin2φをそのROMから読出して出力する。D/A変換器69は、sin2φ出力回路68から出力されたデータsin2φをアナログの信号sin2φに変換する。
【0100】
乗算回路61は、差動増幅回路51aから出力された信号sin2θおよびcos2φ出力回路66から出力された信号cos2φを乗算し、信号sin2θcos2φを出力する。乗算回路62は、差動増幅回路51bから出力された信号cos2θおよびsin2φ出力回路68から出力された信号sin2φを乗算し、信号cos2θsin2φを出力する。
【0101】
減算回路63は、乗算回路61から出力された信号sin2θcos2φから、乗算回路62から出力された信号cos2θsin2φを減算し、sin(2θ−2φ)を演算する。つまり、cos2φ出力回路66、D/A変換器67、sin2φ出力回路68、D/A変換器69、乗算回路61,62および減算回路63は、sin2θcos2φ−cos2θsin2φ=sin(2θ−2φ)を演算し、制御偏差ε=sin(2θ−2φ)を求めるための回路である。
【0102】
ウインドウコンパレータ64は、減算回路63から出力されたsin(2θ−2φ)を大きさの異なる2つの閾値と比較し、sin(2θ−2φ)が大きい方の閾値よりも大きいときは、次段のアップダウンカウンタ65をカウントアップさせるためのアップ信号(たとえば、正極性のパルス信号)を出力する。また、ウインドウコンパレータ64は、減算回路63から出力されたsin(2θ−2φ)が小さい方の閾値よりも小さいときは、次段のアップダウンカウンタ65をカウントダウンさせるためのダウン信号(たとえば、負極性のパルス信号)を出力する。
【0103】
アップダウンカウンタ65は、ウインドウコンパレータ64からアップ信号を入力する毎に(たとえば、正極性のパルス数をカウントする毎に)カウント値を1つ加算し、ウインドウコンパレータ64からダウン信号を入力する毎に(たとえば、負極性のパルス数をカウントする毎に)カウント値を1つ減算する。そして、アップダウンカウンタ65は、カウント値を演算角度φとして、cos2φ出力回路66およびsin2φ出力回路68へ出力する。
【0104】
アップダウンカウンタ65から出力されたカウント値は、出力ロジック回路71においてラッチされる。角度演算部60は、制御偏差ε=sin(2θ−2φ)の絶対値が閾値以下となるまで、たとえば、ε=0になるまで演算角度φをフィードバックして制御偏差εの演算を繰返す。
【0105】
(増幅部52および比較部53)
増幅部52は、ホール素子H1から出力されるsin(θ+45°)信号を増幅する増幅回路52aと、ホール素子H2から出力されるcos(θ+45°)信号を増幅する増幅回路52bとを備える。比較部53は、増幅回路52aから出力される信号レベルと閾値レベルとを比較し、その比較結果に対応する第1パルス信号を出力する比較回路53aと、増幅回路52bから出力される信号レベルと閾値レベルとを比較し、その比較結果に対応する第2パルス信号を出力する比較回路53bとを備える。比較回路53a,53bは、パルス化回路と呼ぶこともできる。
【0106】
この実施形態では、0Vが閾値レベルに設定されており、各比較回路は、入力される信号が正極性のときはハイレベル(H)信号を、負極性のときはローレベル(L)信号をそれぞれ出力する。このため、図13(b)に示すように、比較回路53aからは、相対回転角度θが0〜180°の間はハイレベルを維持し、相対回転角度θが180〜360°の間はローレベルを維持する第1パルス信号VH1が出力される。図13(d)に示すように、比較回路53bからは、相対回転角度θが90〜270°の間はハイレベルを維持し、相対回転角度θが270〜90°の間はローレベルを維持する第2パルス信号VH2が出力される。比較回路53aおよび53bから出力される第1および第2パルス信号VH1,VH2は、出力ロジック回路71へ出力される。
【0107】
(出力部)
出力部70は、出力ロジック回路71を備える。図14(a)は、比較回路53a,53bから出力される第1および第2パルス信号VH1,VH2の信号レベル(ハイレベル(H)およびローレベル(L))と、演算角度φと閾値角度φthとの比較結果(ハイレベル(H)およびローレベル(L))との組合せと、相対回転角度θの角度範囲との関係を示す説明図である。なお、図14(a)に示す表中の符号(A)〜(H)は、図13に記載した符号A〜Hに対応する。
【0108】
出力ロジック回路71は、制御偏差εが閾値以下となったときにラッチしたカウント値を演算角度φとして出力する。この演算角度φを信号で表すと、図13(e)に示すように、相対回転角度θが0°および180°のときに最大になる1波長の電気角が180°の信号(図示の例では鋸波)になる。
【0109】
続いて、出力ロジック回路71は、そのデジタル値である演算角度φと、同じくデジタル値である閾値角度φthとをデジタル領域で比較し、その比較結果を出す。この実施形態では、閾値角度φthは、演算角度φの最大値の1/2に設定されており、図13(f)に示すように、演算角度φが閾値角度φth以上のときにハイレベル(H)に変化し、演算角度φが閾値角度φth未満のときにローレベル(L)に変化するパルス信号VM1が比較結果として作られる。
【0110】
また、出力ロジック回路71は、第1および第2パルス信号VH1,VH2の各信号レベルと、パルス信号VM1の信号レベルとを判定する。そして、出力ロジック回路71は、第1および第2パルス信号VH1,VH2の各信号レベルの判定結果と、パルス信号VM1の信号レベルの判定結果VMtとを用い、相対回転角度θが、0〜360°の相対回転角度θを90°単位で分割した4つの象限のうち、どの象限(角度範囲)に入るかを判定する。
【0111】
ところで、ホール素子H1,H2の出力信号は、電圧オフセットやランダムノイズの影響を受けると、位相が180°切替わるポイント付近の電圧が不安定になるおそれがある。このため、そのような不安定な領域(図13においてハッチングを施した領域)は、相対回転角度の0〜360°を90°毎の角度範囲に分けた場合に、相対回転角度がどの角度範囲の入るかを判定する要素には用いない方が検出精度を高める上で望ましい。この実施形態では、第1および第2のパルス信号の位相が180°切替わる両ポイントからそれぞれ45°の範囲(両端を合わせて計90°分)を不安定な領域と見込んでいる。その一方、パルス信号VM1は、デジタル値である演算角度φに基づいて作成されたものであるため、電圧オフセットやランダムノイズの影響を受けないので、安定している。
【0112】
そこで、この実施形態では、第1および第2のパルス信号VH1,VH2と、パルス信号VM1との位相が45°異なるように構成されており、上記の不安定な領域をパルス信号VM1によって補うことができるようになっている。図13に示すように、第1および第2のパルス信号が不安定な領域の45°の範囲と、第1および第2のパルス信号のパルス幅とが対応しており、上記の不安定な領域では、パルス信号VM1の信号レベルを判定に用いることができる。
【0113】
出力ロジック回路71は、図14に示すように、VH1がハイレベル(H)、かつ、VMtがローレベル(L)の場合は、相対回転角度θは、0°≦θ<90°の象限(角度範囲)に存在すると判定する。また、VH2がハイレベル(H)、かつ、VMtもハイレベル(H)の場合は、相対回転角度θは、90°≦θ<180°の象限に存在すると判定する。また、VH1がローレベル(L)、かつ、VMtもローレベル(L)の場合は、相対回転角度θは、180°≦θ<270°の象限に存在すると判定する。また、VH2がハイレベル(H)、かつ、VMtもハイレベル(H)の場合は、相対回転角度θは、270°≦θ<360°の象限に存在すると判定する。
【0114】
このように、VH1,VH2,VMtの各判定結果の組合せが、各象限において総て異なるため、相対回転角度θが存在する象限(角度範囲)を正確に判定することができる。特に、MREが高感度であり、その出力信号に基いて演算された演算角度はデジタル値であるため、高精度に(1LSBの範囲で)象限を判定することができる。
しかも、VH1,VH2のうち、不安定になるおそれのある判定結果を用いないため、電圧オフセットやランダムノイズが発生した場合であっても、相対回転角度θが存在する象限(角度範囲)をより一層正確に判定することができる。
また、図13(e)に示すように、電圧VMが0Vになる場合として、相対回転角度θが0°の場合および180°の場合の2つ存在するが、上記の判定結果の組合せを参照することにより、相対回転角度θが0°か180°かを正確に判定することができる。
【0115】
つまり、VH1がハイレベル(H)、かつ、VMtがローレベル(L)の場合は、相対回転角度θは、0°であると判定する。また、VH1がローレベル(L)、かつ、VMtもローレベル(L)の場合は、相対回転角度θは、180°であると判定する。これにより、永久磁石2が、電圧VMが0Vになるような位置から回転を開始した場合であっても、その回転を開始したときの相対回転角度θが0°であるか180°であるかを判定することができる。
【0116】
したがって、出力ロジック回路71は、相対回転角度θに対応する正確な演算角度φを出力することができる。また、出力ロジック回路71は、演算角度φを360°周期のアナログ信号に変換し、図13(g)に示すように、相対回転角度θの0°から360°の変化に対応して電圧Voが直線的に上昇する360°周期の角度信号を出力することができる。
【0117】
また、ホール素子と磁気抵抗素子とを磁界の感度で比較すると磁気抵抗素子の方が大きいため、磁気抵抗素子により得られる信号をリニア出力の信号として利用することにより、高精度な回転センサを構成できる。また、永久磁石の強度(磁界の大きさ)が小さいものでも使えるため、永久磁石のコストを下げることができる。
【0118】
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について図を参照して説明する。
図15は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図16は、この実施形態の回転センサ1の主な電気的構成をブロックで示す説明図である。図17は、この実施形態におけるホール素子などの出力波形を示す説明図であり、図13に対応する図である。なお、この実施形態に係る回転センサは、ホール素子H1,H2の配置位置以外は前述の第1実施形態に係る回転センサと同じ構成であるため、同じ構成については同一符号を用い、説明を省略する。
【0119】
図15に示すように、ホール素子H1,H2は、第1実施形態の回転センサ1に備えられたホール素子と比較して、左方向に90°回転した位置に配置されている。つまり、ホール素子H1,H2は、第1実施形態のホール素子の出力信号と比較して位相が90°遅れるように配置されている。
このため、ホール素子H1は、相対回転角度θに対して位相が45°遅れたsin(θ−45°)信号を出力し、ホール素子H2は、ホール素子H1に対して位相が90°異なるcos(θ−45°)信号を出力する。
【0120】
回転センサの主な電気的構成は、図16に示すように、ホール素子H1,H2の出力信号が異なる以外は、図12に示した第1実施形態の電気的構成と同じである。
図14(b)は、第1実施形態における図14(a)に対応する説明図である。図示ように、第1および第2パルス信号VH1,VH2の信号レベルの組合せが異なる以外は、第1実施形態と同じである。
【0121】
上述したように、第2実施形態に係る回転センサは、ホール素子H1,H2の出力信号の位相が相対回転角度θに対して45°遅れている以外は、第1実施形態の回転センサ1と同じ構成であるため、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0122】
〈第3実施形態〉
次に、この発明の第3実施形態について図を参照して説明する。
図18(a)に示すように、ホール素子H1,H2を第1実施形態の配置位置から図面左方向に45°回転させた位置の配置し、基準角度0°も第1実施形態の位置から図面左方向に45°回転させた位置に設定することもできる。この構成の場合も、第1実施形態と同じように、ホール素子H1,H2の各出力信号は、それぞれsin(θ+45°)、cos(θ+45°)となるため、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0123】
また、図18(b)に示すように、ホール素子H1,H2を第1実施形態の配置位置から図面左方向に45°回転させた位置の配置し、基準角度0°は第1実施形態の位置から図面右方向に45°回転させた位置に設定することもできる。この構成の場合も、第2実施形態と同じように、ホール素子H1,H2の各出力信号は、それぞれsin(θ−45°)、cos(θ−45°)となるため、第2実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0124】
つまり、ホール素子H1,H2の各出力信号が、相対回転角度θに対して±45°の位相差を持つ構成であれば良く、そのためには、第1および第2実施形態のように、ホール素子H1,H2の配置位置を工夫する手法を用いても良く、第3実施形態のように、電気的に基準角度0°の設定位置を工夫する手法を用いても良い。
【0125】
〈第4実施形態〉
次に、この発明の第4実施形態について図を参照して説明する。
図19(a)に示すように、一方のホール素子H1は、その中心がセンサチップ5の相対回転中心P1と一致するように配置されている。また、他方のホール素子は、2つのホール素子H2−1,H2−2から成り、ホール素子H1の両側に配置されている。ホール素子H2−1,H2−2は、それぞれ同じ大きさおよび形状に形成されており、同じ強度の磁界が同じ入射角度で印加された場合にそれぞれ同じホール電圧を発生する。
【0126】
ホール素子H2−1,H2−2は、相対回転中心P1を通る線L4と直交する線L5が自身の中心を通るように配置されており、相対回転中心P1から同じ距離隔てて配置されている。また、ホール素子H1の磁気検出面と、ホール素子H2−1,H2−2の各磁気検出面とが90°の角度を成している。
【0127】
ホール素子H2−1,H2−2の各出力信号は加算され、1つの出力信号として出力され、比較回路53b(図12)に入力される。つまり、出力信号を加算することにより、ホール素子H2−1,H2−2からなる領域の中心を相対回転中心P1と擬似的に一致させる。
【0128】
上述したように、各ホール素子の中心を相対回転中心P1と一致させることができるため、永久磁石2から発生する磁界B1は、ホール素子の配置位置が原因で偏ることがなくなる。したがって、各ホール素子は、相対回転角度θの変化に応じた形状の整った信号を出力するため、相対回転角度θの象限の判定精度を高めることができる。
【0129】
図19(b)に示すように、ホール素子H1−1,H1−2およびホール素子H2−1,H2−2は、それぞれ同じ大きさおよび形状に形成されており、同じ強度の磁界が同じ入射角度で印加された場合にそれぞれ同じホール電圧を発生する。ホール素子H1−1,H1−2は、相対回転中心P1を通る線L4上に配置されており、ホール素子H2−1,H2−2は、相対回転中心P1を通り、かつ、線L4と直交する線L5上に配置されている。また、ホール素子H1−1,H1−2は、線L4が自身の中心を通るように配置されており、ホール素子H2−1,H2−2は、線L5が自身の中心を通るように配置されている。
【0130】
さらに、ホール素子H1−1,H1−2は、相対回転中心P1から同じ距離隔てて配置されており、ホール素子H2−1,H2−2も相対回転中心P1から同じ距離隔てて配置されている。さらに、相対回転中心P1からの距離は、4つのホール素子において総て同じである。また、ホール素子H1−1,H1−2の各磁気検出面と、ホール素子H2−1,H2−2の各磁気検出面とが90°の角度を成している。
【0131】
ホール素子H1−1,H1−2の各出力信号は加算され、1つの出力信号として出力され、比較回路53a(図12)に入力される。つまり、出力信号を加算することにより、ホール素子H1−1,H1−2からなる領域の中心を相対回転中心P1と擬似的に一致させる。また、ホール素子H2−1,H2−2の各出力信号は加算され、1つの出力信号として出力され、比較回路53b(図12)に入力される。つまり、出力信号を加算することにより、ホール素子H2−1,H2−2からなる領域の中心を相対回転中心P1と擬似的に一致させる。
【0132】
上述したように、各ホール素子の中心を相対回転中心P1と一致させることができるため、永久磁石2から発生する磁界B1は、ホール素子の配置位置が原因で偏ることがなくなる。したがって、各ホール素子は、相対回転角度θの変化に応じた形状の整った信号を出力するため、相対回転角度θの象限の判定精度を高めることができる。
【0133】
〈第5実施形態〉
次に、この発明の第5実施形態について説明する。図20(a),(b)は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップおよび永久磁石の縦断面図である。
【0134】
この回転センサは、前述の第1実施形態の回転センサ1に備えられたセンサチップ5の表裏面を逆にして配置したセンサチップ5を備える。つまり、ホール素子領域E2が永久磁石2の相対回転面2cと対向する側に配置されており、磁気抵抗素子領域E1がホール素子領域E2の下方に配置されている。このような構造のセンサチップ5においても、図示のように、永久磁石2から発生したセンサチップ5の表面5aに平行な磁界B1が、ホール素子H1,H2およびAMRセンサM1,M2に印加されるため、永久磁石2の相対回転角度θを検出することができる。
【0135】
〈第6実施形態〉
次に、この発明の第6実施形態について説明する。図21は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの使用状態の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0136】
マグネットロータ6は、ロータボディ6aを有する。この実施形態では、ロータボディ6aは有底の円筒形状に形成されている。ロータボディ6aの周方向に立設された外周壁の内壁面には、N極の永久磁石2aおよびS極の永久磁石2bが相対向して取付けられている。回転体6の底部の中心には、回転シャフト3の先端が取付けられている。回転シャフト3が、その相対回転軸C1を中心にして回転すると、回転体6も相対回転軸C1を中心にして回転シャフト3と同じ方向に回転する。
【0137】
相対向する永久磁石2a,2b間であって、ロータボディ6aの相対回転中心には、センサチップ5が、永久磁石2a,2bと離間して配置されている。センサチップ5は永久磁石2a,2b間に発生する磁界B1がセンサチップ5の表面5aに平行となるように配置されている。つまり、磁界B1の向きが、AMRセンサM1,M2と平行になり、かつ、ホール素子H1,H2の各磁気検出面HP1,HP2と垂直になるように配置されている。また、センサチップ5は、支持部材(図示せず)によって支持されており、配置位置が変化しないように固定されている。
【0138】
上記のように配置されたセンサチップ5は、その表面に平行な磁界B1の磁束密度の変化を検出することができるため、ロータボディ6aの相対回転角度θを検出することができる。また、センサチップ5は、磁気抵抗素子領域E1およびホール素子領域E2を重ねた構造であるため、センサチップ5を平面方向に小型化することができる。したがって、ロータボディ6aの径を小さくすることができる。なお、図20に示したように、センサチップ5の表裏面を逆にして配置することもできる。
【0139】
[変更例]
次に、上述した第6実施形態の変更例について説明する。図22は、その変更例の回転センサに備えられたセンサチップおよび回転体の平面図である。図22(a)および(b)において、センサチップ5の断面構造は、図2(a)に示した構造と同じである。また、図20に示したように、センサチップ5の表裏面を逆にして配置することもできる。
【0140】
図22(a)に示すように、ロータボディ6aの内壁面には、N極の永久磁石2aおよびS極の永久磁石2bを相対向して配置した永久磁石対が2対取付けられている。ロータボディ6aの相対回転中心には、センサチップ5が配置されている。このように、N極およびS極が2対の場合でも、その磁界が磁気抵抗素子領域E1と平行となるようにセンサチップ5を配置することにより、ロータボディ6aの相対回転角度θを検出することができる。
【0141】
また、図22(b)に示すように、ロータボディ6aの内壁面には、N極の永久磁石2aおよびS極の永久磁石2bを相対向して配置した永久磁石対が3対以上取付けられている。つまり、多極の永久磁石が取付けられている。このように、N極およびS極が3対以上の場合でも、その磁界が磁気抵抗素子領域E1と平行となるようにセンサチップ5を配置することにより、ロータボディ6aの相対回転角度θを検出することができる。
【0142】
〈第7実施形態〉
次に、この発明の第7実施形態について説明する。図23は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの使用状態の一例を示す断面図である。図23(a)および(b)において、センサチップ5の断面構造は、図2(a)に示した構造と同じである。また、図20に示したように、センサチップ5の表裏面を逆にして配置することもできる。また、永久磁石2の構造および形状は、図2に示した永久磁石と同じである。
【0143】
図23(a)に示すように、センサチップ5が永久磁石2の回転周面2dの側方に配置されている。このような配置でも、永久磁石2からは、センサチップ5の磁気抵抗素子領域E1に平行な磁界B1を検出することができるため、永久磁石2の相対回転角度θを検出することができる。したがって、永久磁石2の相対回転面2cと対向する空間にセンサチップ5を配置することができない場合であっても、図示のように、センサチップ5を永久磁石2の回転周面2dの側方に配置することにより、永久磁石2の相対回転角度θを検出することができる。
【0144】
図23(b)に示すように、センサチップ5が永久磁石2の相対回転面2cと対向する位置であって、回転シャフト3の側方に配置されている。このような配置でも、永久磁石2からは、センサチップ5の磁気抵抗素子領域E1に平行な磁界B1を検出することができるため、永久磁石2の相対回転角度θを検出することができる。したがって、永久磁石2の回転周面2dの側方にセンサチップ5を配置することができない場合であっても、図示のように、センサチップ5を永久磁石2の相対回転面2cと対向する位置であって、回転シャフト3の側方に配置することにより、永久磁石2の相対回転角度θを検出することができる。
【0145】
〈第8実施形態〉
次に、この発明の第8実施形態について説明する。図24は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0146】
AMRセンサM1は、磁気抵抗素子R2,R3を直列接続したハーフブリッジ回路を有する。AMRセンサM2は、磁気抵抗素子R6,R8を直列接続したハーフブリッジ回路を有する。磁気抵抗素子R2,R3は、磁気抵抗素子からの出力信号の位相差が90°となるように配置されている。磁気抵抗素子R6,R8も、磁気抵抗素子からの出力信号の位相差が90°となるように配置されている。磁気抵抗素子R2,R3,R6,R8は、AMRセンサM1の出力端子32からの出力信号と、AMRセンサM2の出力端子38からの出力信号との位相差が45°となるように交互に配置されている。
【0147】
このように、AMRセンサM1,M2をそれぞれハーフブリッジ回路で構成することにより、磁気抵抗素子領域E1の面積を小さくすることができるため、センサチップ5を小型化することができる。
【0148】
〈第9実施形態〉
次に、この発明の第9実施形態について説明する。図25は、この実施形態の回転センサに備えられたAMRセンサの等価回路である。
【0149】
AMRセンサM1を構成する磁気抵抗素子は、R3の1つのみであり、AMRセンサM2を構成する磁気抵抗素子は、R8の1つのみである。磁気抵抗素子R3,R8は、磁気抵抗素子の出力信号間に45°の位相差が出るように配置されている。磁気抵抗素子R3,R8には、それぞれ定電流源72が接続されている。
【0150】
このように、AMRセンサM1,M2をそれぞれ磁気抵抗素子1つのみで構成することにより、磁気抵抗素子領域E1の面積を小さくすることができるため、センサチップ5を小型化することができる。
【0151】
〈第10実施形態〉
次に、この発明の第10実施形態について説明する。図26は、この実施形態の回転センサに備えられたセンサチップの構造を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。図27は、回転センサの主な電気的構成を一部省略してブロックで示す説明図である。
【0152】
図26(a)に示すように、ホール素子H1,H2は、ホール素子からの出力信号間に45°の位相差が出るように配置されている。ホール素子H1は、相対回転角度θに対して1波長が電気角360°のsinθ信号を出力する。ホール素子H2は、ホール素子H1の出力信号と45°の位相差を有する信号、つまり、1波長が電気角360°のsin(45°+θ)信号を出力する。
【0153】
図27に示すように、増幅部52および比較部53の間にsinθcosθ演算部54が電気的に接続されている。sinθcosθ演算部54は、増幅部52から出力されるsinθ信号と、sin(45°+θ)信号とを用い、sinθ信号およびcosθ信号を取出す。つまり、sinθcosθ演算部54は、増幅部52から出力されるsin(45°+θ)信号を(sinθ+cosθ)/21/2 信号に変換し、この信号と、sinθ信号とをを用い、sinθ信号およびcosθ信号を取出す。
【0154】
〈第11実施形態〉
次に、この発明の第11実施形態について説明する。図28は、この実施形態の回転センサに備えられた角度演算部60の構成をブロックで示す説明図である。
【0155】
角度演算部60は、AMRセンサM1から出力されるsin2θ信号およびAMRセンサM2から出力されるcos2θ信号に基づいて、sin2θおよびcos2θの逆正接(アークタンジェント)演算を行い、演算角度φ=tan−1(sin2θ/cos2θ)を求める機能を有する。角度演算部60は、A/D変換器81,82と、DSP(Digital Signal Processor)83と、D/A変換器84と、増幅回路85とを備える。DSP83は、平均化部83aと、温特補正部83bと、角度計算部83cとを備える。
【0156】
AMRセンサM1から出力されるsin2θ信号は、A/D変換器81により、所定のサンプリング間隔でデジタル値に変換され、AMRセンサM2から出力されるcos2θ信号は、A/D変換器81により、所定のサンプリング間隔でデジタル値に変換される。サンプリング間隔は、CPU(図示せず)から角度演算部60に供給されるクロック信号のクロック周波数に基づいて発生するサンプリング周波数により決定される。
【0157】
DSP83の平均化部83aは、所定のサンプリング期間においてA/D変換器81により変換されたsin2θのデジタル値の平均値を算出し、かつ、所定のサンプリング期間においてA/D変換器82により変換されたcos2θのデジタル値の平均値を算出する。永久磁石2および回転センサ1は、環境温度の変化に応じて特性が変化するため、演算角度に誤差が発生する。そこで、温特補正部83bは、平均化部83aにより算出された各平均値に対して、永久磁石2および回転センサ1の温度特性に基づく補正を行い、演算角度の誤差を小さくする。
【0158】
角度計算部83cは、温特補正部83bによって補正されたデジタル値のsin2θおよびcos2θを用い、sin2θおよびcos2θの逆正接演算を行い、演算角度φを算出する。角度計算部83cから出力された演算角度φは、D/A変換器84によってアナログ信号に変換され、増幅回路85によって増幅され、演算角度φを示す信号として出力される。
【0159】
〈第12実施形態〉
次に、この発明の第12実施形態について説明する。図29は、この実施形態の回転センサの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【0160】
検出回路50は、補正部55,56を備える。補正部55は、増幅部51から出力されるsin2θ信号およびcos2θ信号の振幅差、オフセットおよび初期位相誤差を補正する。また、補正部56は、増幅部52から出力されるsinθ信号およびcosθ信号の振幅差、オフセットおよび初期位相誤差を補正する。
このように、この実施形態の回転センサは、AMRセンサM1,M2およびホール素子H1,H2から出力される信号の振幅差、オフセットおよび初期位相誤差を補正することができるため、相対回転角度θの検出精度を高めることができる。
【0161】
〈他の実施形態〉
(1)第1実施形態において、出力ロジック回路71を角度演算部60と同じ基板上に設けないで、出力ロジック回路71の出力を使用する側(たとえば、車両に備えられたECU側)に設けることもできる。
(2)検出回路50をシリコン基板10に形成し、センサチップ5および検出回路50を一体化することもできる。
(3)ホール素子H1またはH2のパルス出力の数をカウントし、多回転(360°以上)を検出することもできる。
【0162】
(4)シリコン基板10に代えてGaAs、InAs、InSbなどの化合物半導体により形成された基板を用いることもできる。
(5)永久磁石に代えて、磁気インクを塗布した部材を用いることもできる。また、導電性部材の表面に着磁した部材を用いることもできる。
(6)横型ホール素子を磁気検出面が磁気抵抗素子に対して垂直になるように、磁気抵抗素子領域に重ねて配置して用いることもできる。
(7)出力ロジック回路71が、0〜360°の相対回転角度θに対応する出力角度を示すデジタル値を出力するようにしても良い。
(8)比較回路53a,53bの各出力をA/D変換し、その変換されたデジタル値とデジタルの閾値とを比較し、その比較結果を出力するようにしても良い。
(9)アップダウンカウンタ65が出力する演算角度φとデジタルの閾値とを比較し、その比較結果を出力するようにしても良い。この構成によれば、パルス信号VM1を作成する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
この発明に係る回転センサ1は、検出対象が相対回転するものであれば、適用用途は限定されない。たとえば、内燃機関に設けられたクランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ、カムシャフトのカム角を検出するカム角センサ、車両に設けられた操舵装置の操舵角を検出する操舵角センサ、車両に設けられた各種モータの回転角を検出するセンサなどに適用することができる。また、ロボットに設けられた関節の角度を検出するセンサなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1・・回転センサ、2・・磁石(磁気発生部)、5・・センサチップ、
10・・シリコン基板、E1・・磁気抵抗素子領域、E2・・ホール素子領域、
H1,H2・・ホール素子、M1,M2・・AMRセンサ、
R1〜R8・・磁気抵抗素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気発生部から発生する磁気によって磁気抵抗効果を発生する磁気抵抗素子と、前記磁気によってホール効果を発生するホール素子とを有し、前記磁気抵抗素子およびホール素子からの各出力信号を用いて前記磁気発生部に対する相対回転角度を検出する回転センサにおいて、
複数の磁気抵抗素子が各磁気抵抗素子の出力信号間に位相差が出るように配置された磁気抵抗素子領域と、複数のホール素子が各ホール素子の出力信号間に位相差が出るように配置されたホール素子領域とを有し、かつ、前記磁気抵抗素子領域およびホール素子領域の少なくとも一部同士が重ねられたセンサチップと、
各ホール素子の各出力レベルと閾値レベルとを比較し、ホール素子毎の比較結果を出す比較部と、
各磁気抵抗素子の各出力信号を用いて前記相対回転角度に対応する角度を演算する角度演算部と、
前記角度演算部によって演算された演算値と閾値とを比較し、その比較結果と前記比較部の比較結果とを用い、前記相対回転角度に対応する信号を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする回転センサ。
【請求項2】
前記ホール素子領域の略全領域が前記磁気抵抗素子領域と重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の回転センサ。
【請求項3】
前記磁気抵抗素子領域およびホール素子領域が、前記磁気発生部の相対回転軸方向に対応する方向に重ねられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転センサ。
【請求項4】
前記磁気抵抗素子領域およびホール素子領域が、前記磁気発生部の相対回転面と略平行に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項5】
前記磁気抵抗素子領域が前記センサチップの表面側に、前記ホール素子領域が前記センサチップの裏面側にそれぞれ配置されており、前記センサチップの表面が前記磁気発生部の相対回転面と対向するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項6】
前記磁気抵抗素子領域が前記センサチップの表面側に、前記ホール素子領域が前記センサチップの裏面側にそれぞれ配置されており、前記センサチップの裏面が前記磁気発生部の相対回転面と対向するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項7】
前記磁気発生部は、その相対回転面の径方向で分割された異なる磁極を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項8】
前記磁気発生部は、相対回転する回転体の周方向に配置された異なる磁極であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項9】
前記センサチップが前記異なる磁極間に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の回転センサ。
【請求項10】
前記磁気発生部は多極であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項11】
前記各磁気抵抗素子および各ホール素子は、前記磁気抵抗素子領域およびホール素子領域に対して平行な磁界の磁束密度の変化を主として検出するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項12】
前記各ホール素子は、相互に隣接するホール素子の出力信号間に90°の位相差が出るように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項13】
前記各磁気抵抗素子は、相互に隣接する磁気抵抗素子の出力信号間に45°の位相差が出るように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項14】
相互に隣接する磁気抵抗素子の出力信号間に90°の位相差が出るように磁気抵抗素子をハーフブリッジ接続した第1および第2のハーフブリッジ回路が、両ハーフブリッジ回路の各出力信号間の位相差が45°となるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項15】
一対の前記第1のハーフブリッジ回路をブリッジ接続した第1のフルブリッジ回路と、一対の前記第2のハーフブリッジ回路をブリッジ接続した第2のフルブリッジ回路とが、両フルブリッジ回路の各出力信号間に45度の位相差が出るように配置されていることを特徴とする請求項14に記載の回転センサ。
【請求項16】
前記第1および第2のハーフブリッジ回路を構成する磁気抵抗素子が同心円状に交互に配置されていることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の回転センサ。
【請求項17】
前記信号作成部によって作成された信号と、前記各ホール素子の各出力信号との間にそれぞれ45°の位相差があることを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項18】
前記相対回転角度の0〜360°を前記各ホール素子の出力信号間の位相差で除した値をnとし、0〜360°の範囲をnで除することによりn個の角度範囲を設定した場合に、前記比較部および出力部における比較結果の組合せが各角度範囲において総て異なるように構成されていることを特徴とする請求項12ないし請求項17のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項19】
前記角度演算部は、
前記相対回転角度と、前記各磁気抵抗素子から出力される位相差のある複数の出力信号を用いて演算した角度との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を行って前記相対回転角度に対応する角度を演算することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項20】
前記各ホール素子は、それぞれ縦型ホール素子であり、各縦型ホール素子の磁気検出面の面方向が前記磁気抵抗素子領域と交差するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項21】
前記各磁気抵抗素子および各ホール素子は、それぞれ半導体基板に作り込まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項22】
前記各ホール素子はCMOSトランジスタ構造であることを特徴とする請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項23】
前記各ホール素子は高耐圧CMOSトランジスタ構造であることを特徴とする請求項22に記載の回転センサ。
【請求項24】
前記ホール素子領域は、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板内の表層部から所定の深さに形成した第2導電型の半導体領域と、
前記第2導電型の半導体領域内において当該第2導電型の半導体領域よりも浅く、前記第2導電型の半導体領域を分割するように形成された第1導電型の半導体領域と、
前記第2導電型の半導体領域の表層部において前記第1導電型の半導体領域を挟んで形成され、電流供給対を構成するコンタクト用の第2導電型の不純物拡散領域と、
前記第2導電型の半導体領域の表層部に形成され、電圧出力対を構成するコンタクト用の第2導電型の不純物拡散領域と、を備えており、
前記磁気抵抗素子領域は、
少なくとも一部が絶縁膜を介して前記ホール素子領域に重ねて形成されていることを特徴とする請求項22または請求項23に記載の回転センサ。
【請求項25】
前記各磁気抵抗素子は、NiFeの薄膜よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項24のいずれか1つに記載の回転センサ。
【請求項26】
前記各磁気抵抗素子は、NiCoの薄膜よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項24のいずれか1つに記載の回転センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−180001(P2011−180001A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45175(P2010−45175)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】