説明

回転塗布方法、および回転塗布装置

【課題】塗布液の滴下量を削減しつつ、より広範囲に塗布膜を成膜することが可能な回転塗布方法を提供する。
【解決手段】回転塗布装置100は、回転駆動源により基板を第1の回転数で基板の中央部を中心に基板を回転させながら、塗布液供給部により塗布液を第1の滴下量だけ基板の中央部に滴下し、塗布液を第1の滴下量だけ滴下した後、回転駆動源により第1の回転数よりも小さい第2の回転数で基板を回転させながら、塗布液供給部により塗布液を第2の滴下量だけ基板の中央部に滴下し、塗布液を第2の滴下量だけ滴下した後、回転駆動源により塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で基板を回転させる。第1の回転数は、空気抵抗により第1の滴下量の塗布液が基板に均一に広がらない回転数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を基板に供給し、この基板を回転させて塗布膜を形成する回転塗布方法および回転塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転塗布方法(スピンコーティング法)は、基板上に塗布液を滴下した後、塗布液の膜厚を決定する回転数で基板を回転して塗布膜を形成する方法である。
【0003】
この回転塗布方法の特徴は、膜厚は回転数のみで決定され、膜厚均一性が良く、プロセス時間が短いことである。半導体デバイスや液晶ディスプレーなどの製造工程で汎用的に使用されており、その用途も多い。
【0004】
代表的な用途例の第1は、リソグラフィーによるパターン形成である。半導体デバイス製造における代表的なリソグラフィープロセスは、基板にフォトレジストを回転塗布してホットプレート上で乾燥し、露光し、ホットプレート上でポストベークを行う。そして、現像液で現像して基板上にパターンを形成する。
【0005】
上記露光の際に基板からの光の反射を抑えるため、反射防止膜を回転塗布で形成することも行われる。該反射防止膜には、レジストの下層に設けるものと、上層に設けるものとの2種類がある。フォトレジストからのガスの揮発を抑えたり、また外部環境の汚染物質から保護したりするため、フォトレジスト上に保護膜を回転塗布することも行われる。これは、液浸露光プロセスでは一般的である。
【0006】
また、レジストプロセスは、膜種の層構造で分類できる。例えば、フォトレジスト膜を1層設けたものを単層レジスト、厚い下層膜(有機膜)上にフォトレジストを設けたものを二層レジスト、厚い下層膜(有機膜)上に薄い無機材料系の層を設けてその上部にフォトレジストを積んだものを多層レジストと分類することがある。これらの下層膜や無機材料系の膜も回転塗布方法で形成が可能である。
【0007】
また、材料組成によって、有機系のフォトレジストと無機系のフォトレジストに分類され、無機系では珪素系が主として使用されている。いずれの材料も回転塗布が可能である。これらのフォトレジストは平坦な基板に形成することもあれば、段差の付いた基板に形成することもある。
【0008】
また、微細なパターンをさらに小さくするために、シュリンク材が用いられている。例えば、ホールを形成したレジストパターン上にシュリンク材を塗布して、熱処理後にシュリンク材だけ現像液で除去すると、ホール径を小さくすることができる。これはレジストとシュリンク材が熱反応した部分が現像液に不溶になるからである。
【0009】
第2の用例は、ポリイミド膜の形成である。ポリイミドは熱硬化性樹脂であり、その溶液を基板に回転塗布してホットプレート上で乾燥し、熱処理を行って硬化させて膜にする。用途はパッシベーション膜、層間絶縁膜、ストレスバッファー膜などである。
【0010】
また、感光性ポリイミドを用いてリソグラフィーの手法により各種パターンを形成することも行われる。
【0011】
第3の用例は、スピンオングラス(SOG)や、誘電率が低いlow−k材料による絶縁膜等の形成である。これらの膜は、いずれも珪素を主成分とする材料で、回転塗布した後、熱処理等で酸化される。この酸化された膜は、層間絶縁膜、PMD(Pre−Metal Dielectric)、IMD(Inter−Metal Dielectric)、シャロートレンチ素子分離などに使用される。これらの絶縁膜の材料は、平坦な基板に塗布されることもあれば、段差の付いた基板に塗布されることもある。
【0012】
第4の用例は、ゾルゲル法による薄膜形成である。ゾルゲル法は金属アルコキシドを含む有機溶液を、水分を含む気相中で焼成して、金属酸化物、誘電体膜、強誘電体膜、導電膜などを合成する方法である。すなわち、金属アルコキシド溶液を回転塗布し、ホットプレート上で乾燥し、焼成することで薄膜を形成する。この方法は、例えば、強誘電体メモリーにおける強誘電体膜の形成などに利用される。
【0013】
このような回転塗布方法は、上述用途の他、有機EL材料の塗布、MEMS、光学材料の製造など多方面で使用されている。
【0014】
ここで、代表的な回転塗布方法は、静止した基板の表面中央部に塗布液を滴下してから、基板を回転させて薬液を基板全体に均一に拡散させる方法である。しかし、この方法では、基板1枚を処理するのに、多くの塗布液が必要になる。
【0015】
そこで、従来の回転塗布方法には、半導体基板を低回転数で回転させながら塗布液を滴下した後、塗布液の膜厚を決定する回転数で基板を回転して塗布膜を形成するものがある。
【0016】
上記従来の回転塗布方法は、かなりの量の塗布液を必要とし、基板面積が大きくなると周辺部まで塗れなくなるという問題がある。
【0017】
そこで、従来の他の回転塗布方法には、塗布液滴下時の回転数を膜厚決定の回転数よりも大きくする。これにより、ある程度上記問題を回避でき、大面積基板にも対応できるようになる(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0018】
しかしながら、上記回転塗布方法では、塗布液の使用量は多いという問題がある。
【0019】
ここで、基板と塗布液との間の濡れ性が悪い場合には、塗布液がはじかれてしまい塗布むらが発生するとともに、膜厚均一性が悪化する。この膜厚均一性の悪化を防止するため、塗布前に溶媒(溶剤)で基板を濡らすプレコート処理方法が、提案されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0020】
この回転塗布方法は、溶剤を基板の表面に回転塗布した後に、塗布液を滴下して回転塗布する方法(プレコート法)である。
【0021】
このプレコート法は、塗布液を少量化することができるとともに、均一な膜厚を得ることができる。このため、最先端のフォトレジスト工程で広く使われている。
【0022】
このプレコート法の短所として、溶剤の供給機構が新たに必要になり、溶剤の使用量が多くなる。また、段差を有する基板や、基板に様々な材料が使用されている場合など、溶剤を滴下することで塗布むらを誘発する場合もあると考えられる。
【0023】
そこで、さらに他の回転塗布方法には、塗布液を基板に滴下する際、第1の回転数で塗布液を滴下し、続いて第2の回転数で滴下する方法ある(例えば、特許文献5参照。)。すなわち、塗布液の滴下を2段階以上に分けて途中で回転数を変えるやり方である。
【0024】
この回転塗布方法では、第1の回転数が低いため、塗布液が基板全体に広がりにくく塗布残りが発生する可能性がある。
【0025】
一方、高速の第1の回転数で塗布液を滴下し、続いて低速の第2の回転数で滴下する回転塗布方法がある(例えば、特許文献6、7、8参照。)。
【0026】
特許文献7に記載の回転塗布方法では、第1の回転数で塗布液を基板全面に広げている。
【0027】
これに対し、特許文献6、8に記載の回転塗布方法では、塗布液が、基板全面に到達する前に第1から第2の回転数に移行するようにしているが、第1の滴下量は基板全体を覆うに十分な塗布液量で、さらに第2の滴下により過剰の塗布液を使用する。また、滴下後の回転数(膜厚決定の回転数など)を滴下時の回転数よりも高く設定しているため、高回転時に過剰の塗布液が基板外に排出される。
【0028】
半導体デバイスの製造では、円形な基板を用い、フォトマスク基板や液晶ディスプレーの製造等の場合には四角い基板を用いるといった違いがある。
【0029】
しかし、回転塗布方法はいずれの基板に対しても用いられる。それらの中でも段差の付いた基板への塗布は、平坦な基板への塗布と比較して塗布液の使用量が多くなる。
【0030】
また、基板の大口径化・装置の大型化に伴って、基板回転時の乱流の影響が大きくなり、また高回転で廻すと基板が飛んでしまう恐れが生じる。
【0031】
そのため、回転数の最大値は旧タイプの装置よりも低くなり、プロセス上の制約が多くなる。
【特許文献1】特開平8-330206号公報
【特許文献2】特開2004-64071号公報
【特許文献3】特開平5-123632号公報
【特許文献4】特開平5-243140号公報
【特許文献5】特許2638969号
【特許文献6】特開2000-157922
【特許文献7】特開2000-279874
【特許文献8】特開2006-156565
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、塗布液の滴下量を削減しつつ、より広範囲に塗布膜を成膜することが可能な回転塗布方法および回転塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の一態様に係る実施例に従った回転塗布方法は、
塗布液を基板に供給し、この基板を回転させて塗布膜を形成する回転塗布方法であって、
前記基板を第1の回転数で前記基板の中央部を中心に回転させながら、前記塗布液を第1の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を前記第1の滴下量だけ滴下した後、前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数で前記基板を回転させながら、前記塗布液を第2の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を第2の滴下量だけ滴下した後、前記塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で前記基板を回転させる、ことを含み、
前記第1の回転数は、空気抵抗により前記第1の滴下量の前記塗布液が前記基板に均一に広がらない回転数であることを特徴とする。
【0034】
本発明の他の態様に係る実施例に従った回転塗布装置は、
塗布液を基板に供給し、この基板を回転させて塗布膜を形成する回転塗布装置であって、
前記基板を載置して水平に保持する保持部と、
前記保持部を鉛直方向に平行な回転軸線まわりに回転駆動することにより、前記基板を回転させる回転駆動源と、
前記保持部に保持される前記基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、を備え、
前記回転駆動源により前記基板を第1の回転数で前記基板の中央部を中心に前記基板を回転させながら、前記塗布液供給部により前記塗布液を第1の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を前記第1の滴下量だけ滴下した後、前記回転駆動源により前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数で前記基板を回転させながら、前記塗布液供給部により前記塗布液を第2の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を第2の滴下量だけ滴下した後、前記回転駆動源により前記塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で前記基板を回転させ、
前記第1の回転数は、空気抵抗により前記第1の滴下量の前記塗布液が前記基板に均一に広がらない回転数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の回転塗布方法および回転塗布装置によれば、塗布液の滴下量を削減しつつ、より広範囲に塗布膜を成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
回転塗布方法では、基板が大口径化するに従って、基板回転時に大気の影響を受けやすくなる。特に、基板外周部では大気抵抗が大きくなるので、回転数の増大に依存して塗布液が広がりにくくなる。
【0037】
ここで、図1Aは、基板が低速回転する場合に、基板中央に塗布液を滴下した直後の塗布液の分布を示す断面図である。また、図1Bおよび図1Cは、図1Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【0038】
低速回転で塗布した場合、図1Aに示す状態から図1Bに示す状態を経て、図1Cに示すように基板全面に均一に塗布することができる。
【0039】
しかし、高速回転させた場合は、塗布液の広がり方が上記の低速回転の場合とは異なる。
【0040】
図2Aは、基板が高速回転する場合に、基板中央に塗布液を滴下した直後の塗布液の分布を示す断面図である。また、図2Bないし図2Fは、図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【0041】
高速回転の場合における塗布液の広がり方は、塗布液滴下直後は低速回転の場合と似ている。すなわち、図2Aに示す状態から図2Bに示す状態に塗布液が広がる。
【0042】
しかし、塗布液が基板外周部に到達する前に大気の抵抗を受けて、塗布液端部が盛り上がる(図2C)。
【0043】
そして、基板が高速回転している状態では、塗布液は図2Cに示す状態よりも基板上を移動することができず、塗布液が基板外周部あるいは基板外へ飛散することになる。さらに、回転時間を長くしても、塗布液を移動させて基板上にさらに広げることはできない。
【0044】
したがって、最終的には、図2Dないし図2Fに示したように飛散した塗布液が外周部に溜まったり、全くつかなかったりする。
【0045】
ここで、図3Aは、図2Dに示す状態の基板を上方から見た平面図である。また、図3Bは、図2Fに示す状態の基板を上方から見た平面図である。
【0046】
図3Aに示すように、基板外周部では空気抵抗の痕を示すように塗布液の筋が入っている場合もある。また、図3Bに示すように、基板外周部と塗布部の境界から塗布部に入った内側は、飛散した液で塗布液が盛り上がった状態になる場合もある。
【0047】
このように、低回転時には基板全面に塗布するのに十分な滴下量でも、高速回転すると実質的に基板全面に塗布液を広げることはできない。
【0048】
そこで、本発明の実施形態では、(1)塗布液を基板中央部に滴下し、塗布液が基板全体に実質的に広がりえない第1の回転数Nにて基板を回転させながら塗布液を第1の滴下量Mだけ滴下する。
【0049】
基板の回転数は、塗布液が基板外周部で十分な空気抵抗を受けるだけの速度であることが必要である。例えば、300mm基板の場合には3000rpm以上が望ましい。
【0050】
このプロセスにより外周部は実質的に塗布されない状態を作り出すことができる。回転数が速ければ塗布されない限界点に到達する時間が短くなり、かつ端部での塗布液の盛り上がり量を大きくすることができる。第1の滴下量Mは、低回転時においても基板全体に塗布できないような少量であることが望ましい。
【0051】
次に、(2)第1の回転数Nよりも小さい第2の回転数Nにて基板を回転させながら塗布液を第2の滴下量Mだけ滴下する。(1)の滴下と(2)の滴下は連続的に行われることが望ましい。
【0052】
第1の回転数で基板の途中まで進んでいた塗布液は、第2の滴下により外周部へ向けて押し出されることになる。その際、第2の回転数を第1の回転数より落とすことで外周部における空気抵抗が弱まり、塗布液は外周部へ向けて移動しやすくなる。
【0053】
また、塗布液端部の盛り上がりが低くなりながら移動できるので、盛り上がった部分で外周部を塗布することができる。
【0054】
そのため、第2の滴下量を多くする必要はなく、第2の滴下量Mは第1の滴下量M未満でかまわない。このようにして、塗布液を基板全面または基板外周部近傍まで広げる。
【0055】
次に、(3)塗布液の膜厚を決定する回転数で基板を回転することにより、塗布液の膜厚を所定値に制御する。
【0056】
なお、(3)の基板の回転前に、例えば、100rpm程度の非常に低い回転数で数秒間リフローを行ってもかまわない。
【0057】
次に、エッジカットを行い、ベークにより溶媒を蒸発して塗布膜の形成が完成する。
【0058】
これより、少ない滴下量で基板全面に塗布液を塗布することができる。
【0059】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0060】
図4は、本発明の一態様である実施例1に係る回転塗布装置100の要部の構成を示す図である。
【0061】
図4に示すように、回転塗布装置100は、基板であるウエハ1を載置して水平に保持する保持部2と、保持部2を鉛直方向に平行な回転軸線3まわりに回転駆動することにより、ウエハ1を回転させる回転駆動源であるモータ4と、保持部2に保持されるウエハ1に塗布液を供給する塗布液供給部5と、制御部10と、を備える。
【0062】
図4に示すように、本実施例の回転塗布方法は、例えば、ウエハ1の厚み方向一方側の表面部(以後、単に表面部と称する)に、塗布液を滴下し、塗布膜6を形成するために用いられる。
【0063】
なお、本実施例による回転塗布方法は、例えば、粘度が0.1mPa・s以上1000mPa・s以下の有機材料、無機材料等から構成される塗布液を塗布する場合に、特に好適に用いられる。粘度はこの範囲外であってもかまわない。
【0064】
ウエハ1は、表面部の反対側(以後、単に裏面部と称する)が保持部2に接するように保持部2に保持される。本実施例で用いられるウエハ1は、円形状の基板であり、その直径は、例えば300mmである。ウエハ1の形状は、これに限定されず、矩形状などの多角形状であってもよい。なお、ウエハ1は回転軸線3が中央部分に位置するように保持部2に載置される。
【0065】
保持部2には、吸引源8が真空ライン9を介して接続されている。保持部2に載置されたウエハ1は、裏面部を、吸引源8による吸引力で真空吸着することによって、保持される。
【0066】
モータ4は、回転軸7を有する。この回転軸7には保持部2が固定されている。モータ4は、回転速度を可変できる。
【0067】
塗布液供給部5は、アーム5aを有する。このアーム5aには、塗布液供給管5bを介して塗布液供給源5cが接続される。アーム5aの遊端部5a1には、保持部2側に向けて、すなわち、図4の紙面に向かって下向きに開口したノズル5dが設けられている。
【0068】
アーム5aには、図示しないアーム移動機構が接続される。このアーム移動機構は、ノズル5dを、ウエハ1から離れたところにある図示しないノズル5dの保管場所から、塗布液の滴下位置であるウエハ中央部まで移動運動をする機能を有し、該滴下位置でノズル5dの高さ調節を行う機能を有する。
【0069】
塗布液供給源5cとアーム5aとの間には、塗布液の流量を調整する吐出制御装置5eが設けられる。吐出制御装置5eは、例えば圧送式ポンプなどの装置などによって実現される。
【0070】
塗布液供給源5cから供給される塗布液としては、例えば、塗布膜6としてレジスト膜を形成する場合には、フォトレジストが用いられる。
【0071】
また、塗布液には、上記フォトレジストの他に、反射防止材料、フォトレジスト保護材料、レジストパターンシュリンク材料、液浸露光用保護材料、ポリイミド、SOG、low−k材料、ゾルゲル材料等が選択される。
【0072】
また、塗布液は、フォトレジスト下層材料、フォトレジスト上層材料でもよい。また、塗布液は、平坦化材料、または、埋め込み材料でもよい。
【0073】
制御部10は、コンピューターなどを備え、回転塗布装置100の各部の動作を制御するとともに、例えば操作者がプログラミングすることでウエハ処理を円滑に行うことが出来る機能を有する。また回転塗布装置100の動作を監視する機能も付けることができる。具体的には、制御部10は、保持部2を回転駆動するモータ4の速度や回転時間の制御などを行う。また、制御部10は、塗布液供給部5のアーム5aへの塗布液の供給量を調整する吐出制御装置5eの動作を制御する。
【0074】
さらに、制御部10は、塗布液供給部5のアーム5aの動作を制御する。
【0075】
次に、以上のような構成を有する回転塗布装置100による回転塗布方法の各条件の一例について説明する。
【0076】
図5は、本実施例1に係る回転塗布方法のレシピの一例を示す図である。また、図6は、図5に示すレシピで回転塗布装置100を動作させるシーケンスの一例を示す図である。また、図7は、図5に示すレシピで回転塗布装置100を動作させるシーケンスの他の例を示す図である。なお、本実施例の実験においては、塗布材料として、粘度1mPa・sの材料を選択した。
【0077】
なお、図6においては、第1の回転数N>第2の回転数Nに設定されている。また、図7においては、第1の回転数N<第2の回転数Nに設定されている。
【0078】
図6または図7に示すように、先ず、第1の回転数Nでウエハを回転させながら、塗布液を滴下する(ステップS1)。
【0079】
すなわち、回転塗布装置100は、モータ4によりウエハ1を第1の回転数Nでウエハ1の中央部を中心にウエハ1を回転させながら、塗布液供給部5により塗布液を第1の滴下量Mだけウエハ1の中央部に滴下する。
【0080】
ここで、第1の回転数Nは、空気抵抗により第1の滴下量Mの塗布液が基板全体に均一に広がらない回転数に設定される。例えば、基板(ウエハ)が300mmの直径を有する場合、後述のように、第1の回転数Nが3000rpm、第1の滴下量Mが0.4mlに設定される。なお、空気抵抗により第1の滴下量Mの塗布液が基板全体に均一に広がらない状態とは、例えば、既述の図2Dないし図2Fに示すような状態である。
【0081】
次に、第2の回転数Nにて 更に塗布液を滴下する(ステップS2)。なお、塗布液の滴下は、ステップS1とステップS2との間で連続して実施してもよい。
【0082】
すなわち、図6では、回転塗布装置100は、塗布液を第1の滴下量Mだけ滴下した後、モータ4により第1の回転数Nよりも小さい第2の回転数Nでウエハ1を回転させながら、塗布液供給部5により塗布液を第2の滴下量Mだけウエハ1の中央部に滴下する。一方、図7では、回転塗布装置100は、塗布液を第1の滴下量Mだけ滴下した後、モータ4により第1の回転数Nよりも大きい第2の回転数Nでウエハ1を回転させながら、塗布液供給部5により塗布液を第2の滴下量Mだけウエハ1の中央部に滴下する。
【0083】
その後、回転数Nでリフロー処理を行なう(ステップS3)。このリフロー処理により、ウエハ1上に塗布された塗布液の膜厚の均一性が向上する。
【0084】
その後、回転数Nで膜厚を決定する処理を行なう(ステップS4)。
【0085】
すなわち、回転塗布装置100は、塗布液を第2の滴下量Mだけ滴下した後、塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で、モータ4によりウエハ1を回転させる。これにより、ウエハ1上に成膜された塗布膜の膜厚が所望の値に制御される。
【0086】
以上のようにして塗布液を基板に塗布した後、回転塗布装置100には図示していないシンナーでエッジカットを行ない、基板をホットプレートに自動搬送してベークしてから冷却する。
【0087】
ここで、基板の回転速度を変化させた場合における塗布特性の変化について分析した結果を説明する。
【0088】
図5に示すレシピの条件のうち、第1の回転数N、塗布液を滴下する時間Tと、第2の回転数N、塗布液を滴下する時間Tと、変更して、図6、図7に示すフローにより得られた塗布膜を分析した。
【0089】
図8は、第1、第2の回転数N、Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【0090】
なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。また、ステップS3の回転数Nを100rpm、ステップS4の回転数Nを694rpmに固定した。また、塗布時間は、ステップS1で時間0.4秒(滴下量0.4ml)、ステップS2で時間0.3秒(滴下量0.3ml)、合計で時間0.7秒(総滴下量0.7ml)に設定した。
【0091】
図8に示すように、第1の回転数Nを大きくして、第2の回転数Nを小さくすると、塗布むらが解消されウエハエッジまで塗布できる。特に、第1の回転数Nと第2の回転数Nとの差が大きくなると、膜厚の面内均一性が向上する。
【0092】
したがって、ウエハ全面に(より広範囲に)塗布するためには、第1の回転数N>第2の回転数Nに設定することが有効であると考えられる。
【0093】
次に、塗布液の吐出速度を変化させた場合における塗布特性の変化について分析した結果を説明する。
【0094】
図5に示すレシピの条件のうち、ステップS1の吐出速度Vと、ステップS2の吐出速度Vとを、変更して、図6に示すフローにより得られた塗布膜を分析した。
【0095】
図9は、第1、第2の吐出速度V、Vを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【0096】
なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。また、塗布液を滴下する際の吐出速度(滴下速度)をステップS1、ステップS2でそれぞれ0.5ml/秒、1.0ml/秒、2.0ml/秒に変更している。また、塗布条件は、ステップS1で回転数Nを3000rpm、滴下量0.6mlとし、ステップS2で回転数Nを1500rpm、滴下量0.4ml、ステップS3の回転数Nを100rpm、ステップS4の回転数Nを694rpmと設定した。
【0097】
図9に示すように、ステップS1の吐出速度Vを2.0ml/秒、ステップS2の吐出速度Vを1.0ml/秒に設定すると、ウエハのエッジ部分まで塗布液を塗布できる。さらに、この設定では、膜厚の面内均一性が最も良い。
【0098】
すなわち、ステップS1の吐出速度Vは、塗布むらや膜厚の面内均一性へ影響を与えない。しかし、ステップS2の吐出速度Vを上げるほど、塗布むらがなくなり膜厚均一性が良くなる。
【0099】
次に、塗布液の滴下量(吐出量)を変化させた場合における塗布特性の変化について分析した結果を説明する。
【0100】
図5に示すレシピの条件のうち、ステップS1の第1の滴下量Mと、ステップS2の第2の滴下量Mとを、変更して、図6に示すフローにより得られた塗布膜を分析した。
【0101】
図10は、第1、第2の滴下量M、Mを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。また、図11は、第1、第2の滴下量M、Mを変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【0102】
なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。また、第1の回転数N時に0.2〜0.5mlの塗布液を滴下し、第2の回転数N時に0.2〜0.5mlの塗布液を滴下した。合計の滴下量は0.7mlに設定した。なお、第1の回転数Nを3000rpm、第2の回転数Nを1500rpmに設定した。
【0103】
図10に示すように、第1の滴下量Mを少なく、第2の滴下量Mを多く設定すると、ウエハのエッジ部分まで塗布膜を成膜できなかった。
【0104】
一方、第1の滴下量Mを多く、第2の滴下量Mを少なく設定すると、ウエハのエッジ部分まで塗布膜を成膜できる。特に、第1の滴下量Mを0.4ml、第2の塗布液Mを0.3mlとした条件では、目視、膜厚の面内均一性において最も良い結果が出た。
【0105】
このように、ウエハ全面に(より広範囲に)塗布液を塗布するためには、時間T>時間T、すなわち、第1の滴下量Mは、第2の滴下量Mよりも多く設定する必要がある。
【0106】
次に、塗布液の吐出の加速度、減速度を変化させた場合における塗布特性の変化について分析した結果を説明する。
【0107】
図5に示すレシピの条件のうち、ステップS1の塗布液の吐出の加速度・減速度と、ステップS2の塗布液の吐出の加速度・減速度とを、変更して、図6に示すフローにより得られた塗布膜を分析した。
【0108】
図12は、塗布液の吐出の加速度・減速度を変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。また、図13は、塗布液の吐出の加速度・減速度を変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【0109】
なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。また、第1の回転数N時に0.4秒間塗布液を滴下する時に、吐出時の加速度を40ml/秒に設定し、吐出停止の減速度をゼロ(減速しない)、または40ml/秒と設定した。続いて、第2の回転数N時に、吐出時の加速度を80 ml/秒または40ml/秒と設定し、減速度を40 ml/秒に設定した。また、第1の回転数Nを3000rpm、第2の回転数Nを1500rpmに設定した。
【0110】
図12に示すように、数値上には大きな差は出なかったが、目視では、ステップS1の吐出停止を減速せずステップS2で吐出加速度を大きくする(すなわち連続的にスムーズな吐出にする)方が周辺部での塗布むらが少なくなった。
【0111】
ここで、第1の滴下量Mを固定して、第1の回転数Nを変化させた場合における塗布膜の膜厚の変化について分析した結果について説明する。
【0112】
図14は、第1の回転数Nを変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。
【0113】
なお、図14においては、第1の回転数N3000、3500、4000rpmの3種類について記載している。また、塗布液の滴下量(第1の滴下量M)は、既述の条件で最適であった滴下量0.4ml、塗布時間0.4秒である。また、塗布膜の膜厚は、塗布液を滴下した後、溶媒を除くためにベーク処理した後の塗布膜の膜厚である。
【0114】
図14に示すように、滴下量を0.4mlとした場合、回転数が大きくなるにしたがって、塗布膜の端部が外周へ移動することがわかる。しかし、基板全面に塗布膜は行き渡らない。
【0115】
ここで、第1の滴下量Mを固定して、第1の回転数Nを変化させた場合における塗布膜の膜厚の変化について分析した結果について説明する。
【0116】
上述のように、第1の回転数Nを3000rpmまたは4000rpmで塗布液を0.4mlシリコン基板上に滴下した後、そのまま同じ回転数で基板を10秒以上回転し続けてからベークした。
【0117】
図15は、塗布液を0.4mlに設定して塗布液を塗布した状態の基板を上方から見た平面図である。また、図16Aは、第1の回転数Nが3000rpmで回転時間を変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。また、図16Bは、第1の回転数Nが4000rpmで回転時間を変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。
【0118】
第1の回転数Nが3000rpmまたは4000rpmであっても、図15に示すような塗布膜が形成され、外周部は空気抵抗の影響を受けて筋が入っていた。
【0119】
また、図16Aに示すように、第1の回転数Nが3000rpmの時のウエハの外周部においては、膜がついていないか、または端部から飛散した液が外周部に溜まって中央部より膜厚が厚くなったように観察された。
【0120】
また、図16Bに示すように、第1の回転数Nが4000rpmの時のウエハの外周部においては、端部から飛散した液が外周部に溜まって中央部より膜厚が厚くなったように観察された。
【0121】
このように、これらの回転数では、そのまま回転し続けても塗布液で基板全面を実質的に覆うことはできないと考えられる。
【0122】
次に、パターンが形成されたウエハに塗布液を塗布する場合における、塗布むらと面内均一性とについて分析した結果を説明する。
【0123】
チップ数が280個(周辺部において欠損があるチップ72個を含む)ある段差(パターン)を有するウエハを対象に、品質工学の手法(田口メソッド)で回転数、薬液滴下量、吐出速度、吐出時の加速減速度の最適解を求めた。
【0124】
実験には、L18直行表を用いた。図17は、L18直行表の割り付けを示す図である。ここでは、ステップS2における吐出減速度は40ml/秒、塗布液の総滴下量は1mlとした。また、ウエハは、直径300mmの円形なシリコン基板を下地として用いた。
【0125】
ここで、図18は、塗布むらが発生したチップ数を望小特性で解析したSN比の要因効果図である。なお、図18において、横軸は図17における因子記号と水準を表す。図18では、SN比が大きい方が、塗布むらが少ないことを意味する。
【0126】
図18に示すように、回転数はN、Nともに大きい方が、滴下量はステップS1で多くした方が、そしてステップS1とステップS2の間の薬液滴下を連続的に行った方が、塗布むらが少なくなる(すなわち、基板の外周部まで塗布膜が成膜される)。
【0127】
回転数については、既述の条件で、第1の回転数Nを大きくし、第2の回転数Nを小さくした方が塗布むらは少なくなったことと、矛盾している。これは、既述の条件が、平坦な(パターンが形成されていない)基板を使用しているので、パターンが形成された基板を使用した条件と傾向が異なるためと考えられる。
【0128】
なお、基板のパターンの有無に拘わらず、第1の回転数N>第2の回転数Nに設定することにより、より広範囲に塗布膜を基板上に形成することができると考えられる。
【0129】
また、図18に示すように、吐出速度はステップS1、S2ともに遅い方が、塗布むらが少なくなる。吐出速度についても、パターンが形成されていない基板に対して行った実験結果とつじつまが合わない。ここでは、パターンが形成された基板を用いたことが影響していると考えられる。
【0130】
このように、回転数や吐出速度については、使用する基板の表面状態に合わせて適宜最適化するのがよい。
【0131】
ここで、図19は、段差の凹部における膜厚均一性を望小特性で解析したSN比の要因効果図である。図19において、横軸は図17における因子記号と水準を表す。図19では、SN比が大きい方が、膜厚均一性が良好であることを意味している。
【0132】
図19に示すように、回転数は第1、第2の回転数N、Nともに小さい方が、膜厚均一性が向上する。滴下量はステップS1を少なくした方が、膜厚均一性が向上する。そしてステップS1とステップS2との間の薬液滴下を断続的に行った方が、膜厚均一性が向上する。吐出速度はステップS1、S2ともに速い方が、膜厚均一性が向上する。
【0133】
既述のパターンが形成されていない基板に対しては、ステップS1の吐出速度は膜厚均一性に影響しない。また、パターンが形成されていない基板に対しては、ステップS2の吐出速度が速い方が、膜厚均一性が向上していた。すなわち、図19の品質工学の結果とつじつまが合っていない。これは、図19の実験ではパターンが形成された基板を用いたことが影響していると考えられる。
【0134】
このように、吐出速度については使用する基板の表面状態に合わせて適宜最適化する方がよい。
【0135】
図18と図19を比較すると、塗布むらを少なくする方向と膜厚均一性を良くする方向とが一致していないことが分かる。すなわち、塗布むらを少なくするためには、第1、第2の回転数N、Nを大きくし、第1の滴下量Mを多くし(第2の滴下量Mを少なくし)、第1、第2の吐出速度V1、V2を遅くするのが良い。膜厚均一性を良くするには、塗布むらとは反対に、第1、第2の回転数N、Nを小さくし、第1の滴下量Mを少なくし(第2の滴下量Mを多くし)、第1、第2の吐出速度V1、V2を速くするのが良い。そこで、実際のパラメーターを決定するためには、膜厚均一性が許容される範囲内で、塗布むらを生じさせないように、各パラメーターを適宜、最適化する必要がある。
【0136】
次に、上記のようにして最適化したパラメーターを、パターン基板へ適用した例を示す。直径300mmの円形なシリコン基板を下地ウエハとして用いた。この基板に、パターン段差500nmで50nm以上のスペース寸法50nmを有するパターンを作成し、塗布液を塗布した。なお、ここでは、ステップS1の第1の回転数Nを3500rpmで滴下量0.4ml、塗布時間0.4秒、ステップS2の第2の回転数Nを1500rpmで滴下量0.4ml、塗布時間0.4秒(滴下量はM=M2であり、総滴下量は0.8ml)、膜厚を決定する回転数Nを1563rpmとした。第1の回転数Nは塗布むらへの影響が大きいのでなるべく高くなるように設定し、第2の回転数N、膜厚均一性を考慮して低めに設定した。一方、第1の滴下量と第2の滴下量は、膜厚均一性を考慮して第1と第2で等しい値に設定した。また、ウエハは、直径300mmの円形なシリコン基板を下地として用いた。
【0137】
一方、比較のため、従来の回転塗布方法(滴下時の回転数を1200rpm、滴下量2.0ml)で、同様のパターン段差を有する基板に対して塗布液を塗布したサンプルも作成した。
【0138】
上記条件の場合、本実施例の回転塗布方法の総滴下量は0.8mlであり、従来の回転塗布方法では総滴下量は2.0mlである。このように、本実施例の回転塗布方法は、塗布液の滴下量が従来よりも少ないにも拘わらず、従来の塗布方法と同様に基板全面で膜厚均一性が良く、かつ塗布むらのない塗布膜を形成することができた。
【0139】
(比較例1)
比較例1として、従来の回転塗布方法で、塗布の滴下量(吐出時間)を変更して実験した。
【0140】
図20は、比較例1の回転塗布方法の塗布シーケンスを示す図である。なお、この比較例1では、第1の回転数Nは1200rpm、膜厚を決定する回転数Nは694rpmに設定した。なお、ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。
【0141】
図21は、比較例1の塗布シーケンスで塗布液の滴下量を変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。図22は、比較例1の塗布シーケンスで塗布液の滴下量を変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【0142】
図21に示すように、滴下量(吐出時間)を変更しても、膜厚と膜厚均一性に違いは認められなかった。しかし、滴下量が1.0ml(吐出時間が1.0秒)以下では、ウエハのエッジ部分まで塗布膜を成膜できなかった。なお、既述のように、本実施例では、総滴下量が、例えば、0.7mlでウエハのエッジ部分まで塗布膜を成膜できる。
【0143】
このように、従来の回転塗布方法では、滴下量が本実施例よりも多くても、ウエハ全面に塗布膜を成膜できない。
【0144】
(比較例2)
また、比較例2として、比較例1と同様の図20に示す塗布シーケンスで、滴下量Mを0.7mlとして第1の回転数Nを変更した実験を行った。ウエハには、パターンが形成されていない、直径300mmの円形なシリコン基板を用いた。
【0145】
図23は、図20に示す塗布シーケンスで第1の回転数Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。図24は、図20に示す塗布シーケンスで第1の回転数Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【0146】
図23に示すように、どの回転数においても、エッジ部分まで塗布することができなかった。その上、第1の回転数Nを大きくするほど膜厚均一性は悪化した。
【0147】
また、図24に示すように、ウエハ中央部での膜厚は第1の回転数Nによらずほとんど変わらない。しかし、塗布膜の端部ではNが大きくなるに従って膜厚が厚く盛り上がるという、お椀型の膜厚変化を示した。
【0148】
このように、従来の回転塗布方法では、本実施例と同様に総滴下量を例えば0.7mlに設定した場合、基板の回転数を変化させても、ウエハ全面に塗布膜を成膜できない。
【0149】
以上のように、本実施例に係る回転塗布方法および回転塗布装置によれば、塗布液の滴下量を削減しつつ、より広範囲に塗布膜を成膜することができる。
【0150】
なお、既述のように、本実施例の実験においては、塗布材料として、粘度1mPa・sの材料を選択した。
【0151】
しかし、25℃における粘度が0.1mPa・s以上1000mPa・s以下の材料から構成される塗布材料を選択しても、同様の作用・効果が得られる。粘度はこの範囲外であってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1A】基板が低速回転する場合に、基板中央に塗布液を滴下した直後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図1B】図1Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図1C】図1Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2A】基板が高速回転する場合に、基板中央に塗布液を滴下した直後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2B】図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2C】図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2D】図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2E】図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図2F】図2Aの状態から或る時間経過後の塗布液の分布を示す断面図である。
【図3A】図2Dに示す状態の基板を上方から見た平面図である。
【図3B】図2Fに示す状態の基板を上方から見た平面図である。
【図4】本発明の一態様である実施例1に係る回転塗布装置100の要部の構成を示す図である。
【図5】図5は、本実施例1に係る回転塗布方法のレシピの一例を示す図である。
【図6】図5に示すレシピで回転塗布装置100を動作させるシーケンスの一例を示す図である。
【図7】図5に示すレシピで回転塗布装置100を動作させるシーケンスの他の例を示す図である。
【図8】第1、第2の回転数N、Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図9】第1、第2の吐出速度V、Vを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図10】第1、第2の滴下量M、Mを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図11】第1、第2の滴下量M、Mを変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【図12】塗布液の吐出の加速度・減速度を変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図13】塗布液の吐出の加速度・減速度を変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【図14】第1の回転数Nを変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。
【図15】図15は、塗布液を0.4mlに設定して塗布液を塗布した状態の基板を上方から見た平面図である。
【図16A】第1の回転数Nが3000rpmで回転時間を変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。
【図16B】第1の回転数Nが4000rpmで回転時間を変化させた場合における、塗布膜の膜厚と測定位置との関係を示す図である。
【図17】L18直行表の割り付けを示す図である。
【図18】塗布むらが発生したチップ数を望小特性で解析したSN比の要因効果図である。
【図19】段差の凹部における膜厚均一性を望小特性で解析したSN比の要因効果図である。
【図20】比較例1の回転塗布方法の塗布シーケンスを示す図である。
【図21】比較例1の塗布シーケンスで塗布液の滴下量を変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図22】比較例1の塗布シーケンスで塗布液の滴下量を変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【図23】図20に示す塗布シーケンスで第1の回転数Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚の面内均一性3σ/<x>と目視結果とを示す図である。
【図24】図20に示す塗布シーケンスで第1の回転数Nを変化させて成膜した塗布膜の膜厚とウエハ面内の測定位置との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0153】
1 ウエハ(基板)
2 保持部
3 回転軸線
4 モータ(回転駆動源)
5 塗布液供給部
5a アーム
5a1 遊端部
5b 塗布液供給管
5c 塗布液供給源
5d ノズル
5e 吐出制御装置
6 塗布膜
7 回転軸
8 吸引源
9 真空ライン
10 制御部
100 回転塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を基板に供給し、この基板を回転させて塗布膜を形成する回転塗布方法であって、
前記基板を第1の回転数で前記基板の中央部を中心に回転させながら、前記塗布液を第1の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を前記第1の滴下量だけ滴下した後、前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数で前記基板を回転させながら、前記塗布液を第2の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を第2の滴下量だけ滴下した後、前記塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で前記基板を回転させる、ことを含み、
前記第1の回転数は、空気抵抗により前記第1の滴下量の前記塗布液が前記基板に均一に広がらない回転数である
ことを特徴とする回転塗布方法。
【請求項2】
前記第1の滴下量は、前記第2の滴下量以上であることを特徴とする請求項1に記載の回転塗布方法。
【請求項3】
前記基板上にパターンが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液は、フォトレジスト、反射防止材料、フォトレジスト保護材料、レジストパターンシュリンク材料、液浸露光用保護材料、ポリイミド、SOG、low−k材料、ゾルゲル材料の何れかである
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の回転塗布方法。
【請求項5】
塗布液を基板に供給し、この基板を回転させて塗布膜を形成する回転塗布装置であって、
前記基板を載置して水平に保持する保持部と、
前記保持部を鉛直方向に平行な回転軸線まわりに回転駆動することにより、前記基板を回転させる回転駆動源と、
前記保持部に保持される前記基板に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、を備え、
前記回転駆動源により前記基板を第1の回転数で前記基板の中央部を中心に前記基板を回転させながら、前記塗布液供給部により前記塗布液を第1の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を前記第1の滴下量だけ滴下した後、前記回転駆動源により前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数で前記基板を回転させながら、前記塗布液供給部により前記塗布液を第2の滴下量だけ前記基板の中央部に滴下し、
前記塗布液を第2の滴下量だけ滴下した後、前記回転駆動源により前記塗布液の膜厚を決定するための第3の回転数で前記基板を回転させ、
前記第1の回転数は、空気抵抗により前記第1の滴下量の前記塗布液が前記基板に均一に広がらない回転数である
ことを特徴とする回転塗布装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−207997(P2009−207997A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53404(P2008−53404)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】