説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】圧電振動片とICチップとを重ねて配置する構成の圧電デバイスの小型化。
【解決手段】水晶振動片30と、ICチップ20と、水晶振動片30及びICチップ20をベース部11にマウントし、内部に収容するパッケージ10とを備え、パッケージ10は、ベース部11にICチップ20の一主面21側がマウントされ、ベース部11の底面11aから水晶振動片30のマウント面15a1,15b1までの高さL1が、底面11aからICチップ20の他主面22までの高さL2より低く形成され、水晶振動片30が平面視においてICチップ20と重なるように配置され、水晶振動片30のICチップ20と重なる部分が、水晶振動片30の一端部37側から他端部38側に行くにつれてICチップ20の他主面22から遠ざかるように傾斜して、水晶振動片30の一端部37がマウント面15a1,15b1にマウントされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器などに代表される圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器、移動体通信機器などの様々な電子機器に用いられる圧電発振器などの圧電デバイスには、電子機器の小型化に伴い、更なる小型薄型化が要求されている。
この要求に応えるために、圧電デバイスの小型薄型化を目的とした、下記のような圧電デバイスの構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この圧電デバイスは、半導体集積回路(以下、ICチップという)と圧電振動子(以下、圧電振動片という)とがパッケージに内蔵されている。そして、圧電デバイスは、圧電振動片が、ICチップをまたいだ状態で、パッケージのベース部にマウントされている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−274653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧電デバイスは、圧電振動片が、ICチップに対して接触することなく平行に保持されるように、一端部とICチップをまたいだ他端部との両方で、パッケージのベース部にマウントされている(特許文献1の図1、図3参照)。
これにより、圧電デバイスは、パッケージのベース部のICチップを挟んだ両側に、圧電振動片をマウントするスペースが必要なことから、圧電振動片の一端部のみをマウントする場合と比較して、パッケージの平面サイズが大きくなるという問題がある。
【0005】
また、圧電デバイスは、圧電振動片が、ICチップをまたいだ状態で一端部と他端部との両方で、パッケージのベース部にマウントされていることから、圧電振動片の一端部と他端部とを結ぶ方向の長さを、ICチップの外形サイズより短くすることができない。
これにより、圧電デバイスは、圧電振動片の小型化が制限されることから、圧電振動片の更なる小型化により圧電ウエハ1枚からの取り数を更に多くして、圧電振動片の価格を低下させることが困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスは、圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし、内部に収容するパッケージとを備え、前記パッケージの前記ベース部の底面に前記ICチップの一主面側がマウントされ、前記ベース部は、前記ベース部の前記底面から前記ベース部の前記圧電振動片がマウントされた面までの高さが、前記底面から前記ICチップの他主面までの高さより低く形成されており、前記圧電振動片の一部が平面視において前記ICチップの少なくとも一部と重なるように配置され、平面視において前記圧電振動片の前記ICチップと重なる部分が、前記圧電振動片の一端部側から他端部側に行くにつれて前記ICチップの前記他主面から遠ざかるように傾斜して、前記圧電振動片の前記一端部が前記ベース部にマウントされていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、圧電デバイスは、圧電振動片のICチップと重なる部分が、一端部側から他端部側に行くにつれてICチップの他主面から遠ざかるように傾斜して、圧電振動片の一端部がパッケージのベース部にマウントされている。
これにより、圧電デバイスは、従来のような圧電振動片の一端部と他端部との両方をパッケージのベース部にマウントする必要がないことから、ベース部を小さくできるので、パッケージの平面サイズを小さくすることができる。従って、圧電デバイスは、平面サイズを従来より小型化することができる。
なお、マウントされているとは、搭載され且つ固定されている状態をいう。
【0009】
また、圧電デバイスは、上記のように圧電振動片の一端部のみが、パッケージのベース部にマウントされていることから、圧電振動片をICチップの外形サイズに関係なく小型化することが可能になる。
このことから、圧電デバイスは、圧電振動片の更なる小型化により圧電ウエハ1枚からの取り数を更に多くして圧電振動片の価格を低下させることができる。従って、圧電デバイスは、従来より低価格を実現することが可能となる。
【0010】
加えて、圧電デバイスは、圧電振動片が上記のように傾斜してマウントされていることから、例えば、外部からの衝撃により圧電振動片の他端部がICチップ側に撓んだ場合でも、圧電振動片の他端部とICチップの他主面との隙間を充分確保することができる。これにより、圧電デバイスは、圧電振動片のICチップへの衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
【0011】
また、圧電デバイスは、圧電振動片が上記のように傾斜してマウントされていることから、例えば、外部からの衝撃により圧電振動片がICチップ側に撓む際に、一端部と他端部との間の部分がICチップの他主面の外縁部と当接する。これにより、圧電デバイスは、ICチップの外縁部がストッパとなることで、圧電振動片の他端部の撓み量が低減することから、圧電振動片の他端部のICチップへの衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記圧電振動片と前記ICチップとが接合材を介して接合されていることが好ましい。
【0013】
これによれば、圧電デバイスは、圧電振動片とICチップとが接合材を介して接合されている。このことから、圧電デバイスは、例えば、外部から衝撃が加わったときに、圧電振動片とICチップの上記外縁部との衝突が発生しにくいことから、両者の衝突による損傷を回避することができる。このことから、圧電デバイスは、耐衝撃性を向上させることができる。
【0014】
また、圧電デバイスは、圧電振動片が接合材によりICチップに接合されていることから、周辺の温度変化に伴う圧電振動片の温度変化とICチップの温度変化との差が、両者が接合されていない場合と比較して、小さくなる。
これにより、圧電デバイスは、例えば、ICチップに温度センサと温度特性補償回路を内蔵し、圧電振動片の温度変化に起因する所定周波数に対する発振周波数のずれを補正するときに、圧電振動片とICチップとの温度差が小さいことから、発振周波数の補正精度が向上する。
【0015】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記ICチップの前記他主面の領域のうち平面視して前記圧電振動片と重なる部分に、弾性を有する突起部が設けられていることが好ましい。
【0016】
これによれば、圧電デバイスは、ICチップの他主面に弾性を有する突起部が設けられていることから、例えば、外部から衝撃が加わり圧電振動片がICチップ側に撓んだ場合、圧電振動片が突起部に当接する。これにより、圧電デバイスは、突起部が緩衝材となって圧電振動片の撓み量を低減することができる。このことから、圧電デバイスは、圧電振動片のICチップへの衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
【0017】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記ICチップの前記他主面に接続電極が設けられ、前記ICチップの前記接続電極と前記圧電振動片とが接続部材を介して接続されていることが好ましい。
【0018】
これによれば、圧電デバイスは、ICチップの他主面に接続電極が設けられ、ICチップの接続電極と圧電振動片とが接続部材を介して接続されていることから、パッケージのベース部にICチップと圧電振動片とを接続する配線が不要となる。
【0019】
[適用例5]本適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし、内部に収容するパッケージとを備え、前記パッケージの前記ベース部の底面に前記ICチップの一主面側がマウントされ、前記ベース部は、前記ベース部の前記底面から前記ベース部の前記圧電振動片がマウントされた面までの高さが、前記底面から前記ICチップの他主面までの高さより低く形成されており、前記圧電振動片の一部が平面視において前記ICチップの少なくとも一部と重なるように配置され、平面視において前記圧電振動片の前記ICチップと重なる部分が、前記圧電振動片の一端部側から他端部側に行くにつれて前記ICチップの前記他主面から遠ざかるように傾斜して、前記圧電振動片の前記一端部が前記ベース部にマウントされている圧電デバイスの製造方法であって、前記圧電振動片を、前記ICチップの前記他主面の前記圧電振動片と重なる外縁部で支持し、前記圧電振動片の前記一端部を、前記ベース部へマウントする圧電振動片マウント工程を有することを特徴とする。
【0020】
これによれば、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片を、ICチップの他主面の圧電振動片と重なる外縁部で支持し、圧電振動片の一端部を、マウント面へマウントする。
これにより、圧電デバイスの製造方法は、圧電振動片を、マウント面とICチップの他主面の外縁部との2箇所で支持することで、圧電振動片の傾斜角度が自ずと決まることから、圧電振動片マウント時に圧電振動片を支持する支持治具が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、圧電デバイスの実施形態について図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1は、圧電デバイスの一例としての水晶発振器の概略構成を示す構成図である。図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。なお、図1の平面図及び以下の各平面図では、理解を容易にするためにリッド(蓋)部を省略し、リッド部の外形を2点鎖線で表している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の水晶発振器1は、パッケージ10、IC(Integrated Circuit)チップ20、圧電振動片としての水晶振動片30などから構成されている。
【0023】
パッケージ10は、ベース部11、リッド部12、接合部13から構成されている。
ベース部11には、セラミックグリーンシートを成形して積層し、焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。
ベース部11の底面11aには、複数の接合端子14が形成されている。接合端子14は、タングステンなどのメタライズ層にニッケル、金などの各被膜をメッキなどにより積層した金属被膜からなる。
【0024】
ベース部11には、水晶振動片30のマウント部11bが形成され、マウント部11bには、上記金属被膜からなるマウント電極15a,15bが形成されている。マウント電極15a,15bは、図示しない内部配線により接合端子14の内の、それぞれ14a,14bに接続されている。
ベース部11の外面には、上記金属被膜からなる実装端子11c,11dが形成されている。この実装端子11c,11dは、図示しない内部配線により接合端子14に接続されている。水晶発振器1は、実装端子11c,11dにより外部の電子機器に実装される。
【0025】
リッド部12は、コバールなどの金属からなり、パッケージ10内にICチップ20、水晶振動片30が収容された状態で、コバールなどの金属からなる接合部13にシーム溶接されている。なお、接合部13は、ろう付けなどによりベース部11に接合されている。これにより、水晶発振器1のパッケージ10内は、気密に封止されている。
なお、パッケージ10の内部は、真空または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが封入されている。
【0026】
パッケージ10のベース部11には、ICチップ20がマウントされている。
ICチップ20は、シリコン基板などからなり、水晶振動片30を励振し、発振信号をインバータなどにより増幅して出力する発振回路を有する。なお、ICチップ20は、発振回路に加えて、水晶振動片30の周波数の温度特性を補償する温度特性補償回路などを有してもよい。
ICチップ20は、一主面21側に上記回路と接続されている複数の回路端子24を有し、他主面22側に絶縁層23を有する。
【0027】
複数の回路端子24の内、回路端子24a,24bは、水晶振動片30との接続用端子であり、その他は、出力用端子、電源用端子、アース用端子、検査用端子などである。なお、回路端子24は、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属被膜からなる。
絶縁層23には、ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの絶縁性を有する材料が用いられている。なお、絶縁層23は、水晶振動片30とICチップ20の他主面22との接触に起因するショートなどの不具合がなければ、設けなくてもよい。
【0028】
ICチップ20は、フリップチップ実装により、一主面21側が接合端子14と対向してパッケージ10のベース部11にマウントされるとともに、回路端子24が接合端子14に金バンプ40などを用いた熱圧着(バンプ接着)により接続されている。このとき、回路端子24a,24bは、それぞれ接合端子14a,14bに接続されている。
ICチップ20とベース部11との間には、樹脂41が充填され、上記接続部分が保持及び保護されている。なお、樹脂41には、エポキシ樹脂などが用いられている。また、樹脂41は、充填されなくてもよい。
【0029】
パッケージ10のベース部11のマウント部11bには、図1(a)に示すように、水晶振動片30が平面視において、ICチップ20と重なるように配置されてマウントされている。
水晶振動片30は、発振周波数に応じた所定の厚みに研磨された水晶ウエハから形成されている。なお、本実施形態では、水晶振動片30をATカット水晶振動片としている。
水晶振動片30の一方の主面31には、励振電極33が形成され、他方の主面32には、励振電極34が形成されている。励振電極33,34からは、それぞれ引き出し電極35,36が延設され、水晶振動片30の一端部37において両主面31,32に回り込むように形成されている。なお、励振電極33,34、引き出し電極35,36は、クロム、ニッケル、金などの各被膜が積層された金属被膜からなる。
【0030】
水晶振動片30は、一端部37がマウント部11bのマウント電極15a,15bに、接合材としての導電性接着剤42を介してマウントされている。これにより、水晶振動片30の引き出し電極35,36の両主面31,32に回り込んでいる部分と、マウント電極15a,15bとが接続されている。
【0031】
これらにより、水晶振動片30との接続用端子であるICチップ20の回路端子24a,24bは、ベース部11の接合端子14a,14b、マウント電極15a,15b、導電性接着剤42を経由して、それぞれ水晶振動片30の引き出し電極35,36と電気的に接続されている。
【0032】
ここで、図1(b)に示すように、パッケージ10は、ベース部11の底面11aから水晶振動片30のマウント面であるマウント電極15a,15bの上面15a1,15b1(以下、マウント面15a1,15b1という)までの高さL1が、底面11aからICチップ20の他主面22までの高さL2より低く形成されている。
これにより、水晶振動片30は、ICチップ20と重なる部分が、一端部37側から他端部38側に行くにつれて、ICチップ20の他主面22から遠ざかるように傾斜してマウントされている。
なお、水晶振動片30の傾斜角度θは、各構成部品との隙間寸法などから適宜設定されるが、ICチップ20の他主面22に対して1°〜3°程度が好ましい。
【0033】
上述したように、本実施形態の水晶発振器1は、水晶振動片30のICチップ20と重なる部分が、一端部37側から他端部38側に行くにつれてICチップ20の他主面22から遠ざかるように傾斜して、水晶振動片30の一端部37がパッケージ10のベース部11にマウントされている。
これにより、水晶発振器1は、従来のような水晶振動片30の一端部37と他端部38との両方をパッケージ10のベース部11にマウントする必要がないことから、ベース部11を小さくできるので、パッケージ10の平面サイズを小さくすることができる。従って、水晶発振器1は、平面サイズを従来より小型化することができる。
【0034】
また、水晶発振器1は、上記のように水晶振動片30の一端部37のみが、パッケージ10のベース部11にマウントされていることから、水晶振動片30をICチップ20の外形サイズに関係なく小型化することが可能になる。
このことから、水晶発振器1は、水晶振動片30の更なる小型化により、水晶ウエハ1枚からの取り数を更に多くして水晶振動片30の価格を低下させることができる。従って、水晶発振器1は、従来より低価格を実現することが可能となる。
【0035】
加えて、水晶発振器1は、水晶振動片30が上記のように傾斜してマウントされていることから、外部からの衝撃により水晶振動片30の他端部38側がICチップ20側に撓んだ場合でも、水晶振動片30の他端部38とICチップ20の他主面22との隙間を充分確保することができる。これにより、水晶発振器1は、水晶振動片30のICチップ20への衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
【0036】
また、水晶発振器1は、水晶振動片30が上記のように傾斜してマウントされていることから、外部からの衝撃により水晶振動片30がICチップ20側に撓む際に、一端部37と他端部38との間の部分がICチップ20の他主面22の外縁部25と当接する。これにより、水晶発振器1は、ICチップ20の外縁部25がストッパとなることで、水晶振動片30の他端部38の撓み量が低減することから、水晶振動片30の他端部38のICチップ20への衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
【0037】
ここで、本実施形態の水晶発振器1の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態の水晶発振器1の製造方法を示す説明図である。なお、図2では、理解を容易にするためにICチップ20の絶縁層23、水晶振動片30の電極類を省略してある。
ここでは、水晶発振器1の製造方法について、圧電振動片マウント工程としての水晶振動片マウント工程を中心に説明する。
【0038】
[水晶振動片マウント工程]
まず、図2(a)に示すように、パッケージ10のベース部11にICチップ20をフリップチップ実装した後、マウント部11bのマウント電極15a,15bに導電性接着剤42をディスペンサなどを用いて塗布する。
【0039】
ついで、図2(b)に示すように、水晶振動片30をマウント電極15a,15b及びICチップ20に位置合わせして、水晶振動片30の他方の主面32を、ICチップ20の他主面22の水晶振動片30と重なる外縁部25で支持し、水晶振動片30の一端部37を、マウント面15a1,15b1に導電性接着剤42を介してマウントする。
ここで、上述したように、水晶振動片30のマウント面15a1,15b1の高さL1は、ICチップ20の他主面22の高さL2より低い。
これにより、水晶振動片30は、ICチップ20と重なる部分が、一端部37側から他端部38側に行くにつれてICチップ20の他主面22から遠ざかるように傾斜してマウントされる。
【0040】
ここで、水晶振動片30のマウント時の傾斜角度θは、水晶振動片30をマウント面15a1,15b1とICチップ20の外縁部25との2箇所で支持することで、自ずと決まる。なお、傾斜角度θの調整は、水晶振動片30のマウント位置を移動して、水晶振動片30の一端37aからICチップ20の外縁部25までの距離L3を変更することで行う。なお、水晶振動片30は、導電性接着剤42の硬化時の収縮などにより、ICチップ20の外縁部25から離れる場合がある。傾斜角度θは、この点も考慮して設定される。
【0041】
ついで、図2(c)に示すように、接合部13を介して、リッド部12をベース部11にシーム溶接などで接合し、水晶発振器1を得る。なお、接合部13は、予めベース部11にろう付けなどで接合しておくのが好ましい。
【0042】
上述したように、水晶発振器1の製造方法は、水晶振動片30をICチップ20の外縁部25で支持し、水晶振動片30の一端部37を、マウント面15a1,15b1へマウントする。
これにより、水晶発振器1の製造方法は、水晶振動片30を、マウント面15a1,15b1とICチップ20の外縁部25とで支持することで、水晶振動片30の傾斜角度θが自ずと決まることから、水晶振動片30のマウント時に水晶振動片30を支持する支持治具が不要となる。
【0043】
ここで、上記実施形態の水晶発振器1における変形例を説明する。なお、変形例はこれらに限定するものではなく、様々な態様が可能である。
【0044】
(変形例1)
図3は、変形例1の水晶発振器の概略構成を示す構成図である。図3(a)は平面図、図3(b)は、図3(a)のB−B線での断面図である。なお、上記実施形態との共通部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、変形例1の水晶発振器101は、上記実施形態の水晶発振器1と比較して、導電性接着剤42の塗布範囲が異なる。以下、導電性接着剤42の塗布範囲を中心に説明する。
【0046】
水晶発振器101は、導電性接着剤42がベース部11のマウント面15a1,15b1と、水晶振動片30と重なるICチップ20の他主面22の外周部26a,26bとに亘って塗布されている。
導電性接着剤42には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを基材とした、塗布時に周辺に広がりにくい粘度のものが用いられている。これにより、導電性接着剤42は、ベース部11のマウント面15a1,15b1からICチップ20の他主面22の外周部26a,26bまで途切れることなく塗布されている。
【0047】
水晶発振器101は、上記のように塗布された導電性接着剤42を介して、水晶振動片30が、ベース部11のマウント面15a1,15b1にマウントされ、且つICチップ20の他主面22の外周部26a,26bに接合されている。
なお、ICチップ20の他主面22は、絶縁層23により絶縁されていることから、他主面22を介してのICチップ20と水晶振動片30とのショート、水晶振動片30の引き出し電極35、引き出し電極36間のショートなどは発生しない。
【0048】
上述したように、水晶発振器101は、導電性接着剤42が、マウント面15a1,15b1とICチップ20の他主面22とに亘って塗布されている。これにより、水晶発振器101は、水晶振動片30が導電性接着剤42を介してマウント面15a1,15b1にマウントされ、且つICチップ20の他主面22に接合されている。
このことから、水晶発振器101は、外部から衝撃が加わったときに、水晶振動片30とICチップ20の外縁部25との衝突が発生しないことから、両者の衝突による損傷を回避することができる。このことから、水晶発振器101は、耐衝撃性を向上させることができる。
【0049】
また、水晶発振器101は、導電性接着剤42が、ベース部11のマウント面15a1,15b1とICチップ20の他主面22とに亘って塗布されていることから、ICチップ20のベース部11へのマウント強度を補強する効果がある。
【0050】
また、水晶発振器101は、水晶振動片30が導電性接着剤42によりICチップ20に接合されていることから、周辺の温度変化に伴う水晶振動片30の温度変化とICチップ20の温度変化との差が、両者が接合されていない場合と比較して、小さくなる。
これにより、水晶発振器101は、ICチップ20に図示しない温度センサと温度特性補償回路を内蔵し、水晶振動片30の温度変化に起因する所定周波数に対する発振周波数のずれを補正するときに、水晶振動片30とICチップ20との温度差が小さいことから、発振周波数の補正精度が向上する。
【0051】
なお、導電性接着剤42は、マウント面15a1,15b1と、ICチップ20の他主面22の外周部26a,26bとに、別々に塗布されていてもよい。この場合、ICチップ20の他主面22の外周部26a,26bに塗布される接着剤は、導電性を有していなくてもよい。
【0052】
(変形例2)
図4は、変形例2の水晶発振器の概略構成を示す構成図である。図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のC−C線での断面図である。なお、上記実施形態との共通部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図4に示すように、変形例2の水晶発振器201は、上記実施形態の水晶発振器1と比較して、平面視して水晶振動片30と重なるICチップ20の他主面22部分に、弾性を有する突起部43が設けられている点が異なる。以下、突起部43を中心に説明する。
【0054】
突起部43は、シリコーン樹脂などの弾性を有する材料からなる。突起部43は、水晶振動片30と重なるICチップ20の他主面22部分の外縁部25寄りに設けられている。
突起部43は、平面形状が略矩形で、断面形状が略半円形のかまぼこ状に形成され、ICチップ20の他主面22から水晶振動片30に向かって突出している。
ICチップ20の他主面22からの突起部43の高さは、外部から衝撃が加わり水晶振動片30がICチップ20側へ撓んだときに、水晶振動片30がICチップ20の外縁部25より先に突起部43へ当接するように設定されている。
【0055】
上述したように、水晶発振器201は、ICチップ20の他主面22に弾性を有する突起部43が設けられていることから、外部から衝撃が加わり水晶振動片30がICチップ20側へ撓んだ場合、水晶振動片30が突起部43に当接する。これにより、水晶発振器201は、突起部43が緩衝材となって水晶振動片30の撓み量を低減することができる。このことから、水晶発振器201は、水晶振動片30のICチップ20への衝突による損傷を回避でき、耐衝撃性を向上させることができる。
なお、突起部43の形状は、上記の形状に限定するものではなく、平面形状が略円形、略楕円形などでもよく、断面形状が略矩形などでもよい。また、突起部43は、水晶振動片30の他端部38と重なるICチップ20の他主面22部分に設けられていてもよい。
【0056】
(変形例3)
図5は、変形例3の水晶発振器の概略構成を示す構成図である。図5(a)は平面図、図5(b)は、図5(a)のD−D線での断面図である。なお、上記実施形態との共通部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、変形例3の水晶発振器301は、上記実施形態の水晶発振器1と比較して、ベース部11のマウント部11bのマウント電極15a,15b(図1参照)が削除され、ICチップ20の他主面22に、ICチップ20と水晶振動片30との接続電極27a,27bが設けられている点などが異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0058】
ICチップ20の接続電極27a,27bは、図示しない内部配線によりICチップ20内の発振回路の、水晶振動片30との接続部と電気的に接続されている。なお、接続電極27a,27bは、ニッケル、銅、金などの各被膜が積層された金属被膜からなる。
【0059】
接続電極27a,27bは、水晶振動片30がマウントされているマウント部11bのマウント面11eと接続電極27a,27bとに亘って塗布されている、接続部材としての導電性接着剤42を介して、水晶振動片30の引き出し電極35,36と電気的に接続されている。
これにより、水晶発振器301は、ICチップ20と水晶振動片30とが、接続電極27a,27bを介して電気的に接続されている。
【0060】
上述したように、水晶発振器301は、ICチップ20の他主面22にICチップ20と水晶振動片30との接続電極27a,27bが設けられ、ICチップ20と水晶振動片30とが接続電極27a,27bを介して接続されている。このことから、水晶発振器301は、パッケージ10のベース部11にICチップ20と水晶振動片30とを接続する配線が、マウント電極15a,15bを含めて不要となる。
また、水晶発振器301は、ICチップ20と水晶振動片30とが接続電極27a,27bを介して接続されていることで、ICチップ20と水晶振動片30との接続距離を、上記実施形態と比較して短くできることから、浮遊容量、ノイズなどを低減することができる。
【0061】
なお、上記実施形態、変形例1〜変形例3では、水晶振動片30をATカット水晶振動片としたが、音叉型水晶振動片、弾性表面波水晶振動片などとしてもよい。また、圧電振動片の材料として、水晶以外にタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の水晶発振器の概略構成を示す構成図。
【図2】本実施形態の水晶発振器の製造方法を示す説明図。
【図3】変形例1の水晶発振器の概略構成を示す構成図。
【図4】変形例2の水晶発振器の概略構成を示す構成図。
【図5】変形例3の水晶発振器の概略構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0063】
1…圧電デバイスとしての水晶発振器、10…パッケージ、11…ベース部、11a…底面、15a1,15b1…マウント面、20…ICチップ、21…一主面、22…他主面、30…圧電振動片としての水晶振動片、37…一端部、38…他端部、L1…ベース部の底面から水晶振動片のマウント面までの高さ、L2…ベース部の底面からICチップの他主面までの高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし、内部に収容するパッケージとを備え、
前記パッケージの前記ベース部の底面に前記ICチップの一主面側がマウントされ、
前記ベース部は、前記ベース部の前記底面から前記ベース部の前記圧電振動片がマウントされた面までの高さが、前記底面から前記ICチップの他主面までの高さより低く形成されており、
前記圧電振動片の一部が平面視において前記ICチップの少なくとも一部と重なるように配置され、
平面視において前記圧電振動片の前記ICチップと重なる部分が、前記圧電振動片の一端部側から他端部側に行くにつれて前記ICチップの前記他主面から遠ざかるように傾斜して、前記圧電振動片の前記一端部が前記ベース部にマウントされていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、前記圧電振動片と前記ICチップとが接合材を介して接合されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電デバイスにおいて、前記ICチップの前記他主面の領域のうち平面視して前記圧電振動片と重なる部分に、弾性を有する突起部が設けられていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイスにおいて、前記ICチップの前記他主面に接続電極が設けられ、前記ICチップの前記接続電極と前記圧電振動片とが接続部材を介して接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
圧電振動片と、ICチップと、前記圧電振動片及び前記ICチップをベース部にマウントし、内部に収容するパッケージとを備え、
前記パッケージの前記ベース部の底面に前記ICチップの一主面側がマウントされ、
前記ベース部は、前記ベース部の前記底面から前記ベース部の前記圧電振動片がマウントされた面までの高さが、前記底面から前記ICチップの他主面までの高さより低く形成されており、
前記圧電振動片の一部が平面視において前記ICチップの少なくとも一部と重なるように配置され、
平面視において前記圧電振動片の前記ICチップと重なる部分が、前記圧電振動片の一端部側から他端部側に行くにつれて前記ICチップの前記他主面から遠ざかるように傾斜して、前記圧電振動片の前記一端部が前記ベース部にマウントされている圧電デバイスの製造方法であって、
前記圧電振動片を、前記ICチップの前記他主面の前記圧電振動片と重なる外縁部で支持し、前記圧電振動片の前記一端部を、前記ベース部へマウントする圧電振動片マウント工程を有することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−213003(P2009−213003A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55874(P2008−55874)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】