説明

地図表示装置及び情報センタ

【課題】 情報センタと地図表示装置において情報の送信または受信を行うかどうかを判定し、判定結果に応じて情報の送信または受信を行うようにする。
【解決手段】 情報センタ(10)から地図データを受信して表示する地図表示装置(15)において、地図データを記憶する記憶手段と、目的地を情報センタへ送信する送信手段と、情報センタから前記送信した目的地に基づいて探索された経路を受信する受信手段と、前記受信した経路に含まれる道路と前記記憶手段に記憶されている地図データの道路を比較して、前記受信した経路に含まれる新設道路があるか否かを判定する判定手段と、該判定手段が新設道路があると判定したとき、該新設道路を報知する報知手段とを備えるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地図表示装置及び情報センタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーション機能を有する車載用地図表示装置においては、車載機のディスクに格納された地図データを利用してナビゲーションシステムの機能である経路探索、経路案内等を行っている。しかし、車載機のディスクが古くなると道路は年々更新されるため、新規に開通される道路や、廃止される道路といったものがディスク中にデータとして格納されていないため、実際の望ましい経路の算出や必要な案内ができなかったり、あるいは最新の高速道路の料金に対応できないといった問題が生じていた。このような問題を解決するために、インターネット上のサーバを経由してサーバ上の最新データを使用することが提案されている。また、通信料金や通信時間を改善するために、取得するデータを制限することも提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来の車載用地図表示装置においては、車載器側のデータとサーバ側のデータを比較して車載器側のデータの新旧を判定し、必要なデータの取得を行ったり、あるいはユーザーが設定した目的地に対し、ルートに沿ったデータを取得することにより取得データに制限を加えて、ネットワーク経由で取得するデータ量の削減を図っている。
【特許文献1】特開2001ー84493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザー側では、取得する情報の有効性が判定できないため、不必要なデータを取得した場合にもその通信費が発生してしまうといった問題が発生する。例えば、ユーザーが設定した目的地に対し、サーバ側で算出するルートと車載器側で算出するルートが全く同じ場合、車載器側のデータが古くても何ら支障が無いのでデータを取得すると無駄に通信費が発生してしまう。同様に一部ルートが異なるような場合でも、そのルートがあまり変わらないような場合はデータを取得すると無駄な通信費等がかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、情報センタと地図表示装置において情報の送信または受信を行うかどうかを判定し、判定結果に応じて情報の送信または受信を行うようにすることを目的とする。
そのために本発明は、情報センタから地図データを受信して表示する地図表示装置において、地図データを記憶する記憶手段と、目的地を情報センタへ送信する送信手段と、情報センタから前記送信した目的地に基づいて探索された経路を受信する受信手段と、前記受信した経路に含まれる道路と前記記憶手段に記憶されている地図データの道路を比較して、前記受信した経路に含まれる新設道路があるか否かを判定する判定手段と、該判定手段が新設道路があると判定したとき、該新設道路を報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、地図表示装置に地図データを送信する情報センタにおいて、複数のバージョンの地図データについて、バージョン間の道路の対応関係を記憶する記憶手段と、前記地図表示装置から目的地を受信する受信手段と、該受信手段により受信した目的地に基づいて経路を探索する探索手段と、前記バージョン間の道路の対応関係に基づいて、前記探索手段により探索した経路に含まれる道路の中で、前記地図表示装置の地図データに記憶されていない新設道路があるか否かを判定する判定手段と、該判定手段により新設道路があると判定された場合、前記地図表示装置へ新設道路を送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、最新の地図における新設道路が報知されるので、ユーザは情報センタからの地図データ取得により受けるメリットが明確になり、納得して情報センタから地図データを取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態の地図表示システムを説明するブロック図である。
本実施形態のシステムは、例えば、目的地データを情報センタへ送信する送信手段と、目的地までの経路を探索する探索手段と、情報センタから地図データを受信するか否かを判定する判定手段と、受信すると判定したとき情報センタへ地図データを送信要求する要求手段とを備えた地図表示装置(車載端末装置)と、受信した目的地データに基づいて経路を探索する探索手段と、地図表示装置から送信要求があったとき地図データを地図表示装置へ送信する送信手段とを備えた情報センタとからなり、判定手段が探索した経路と情報センタから受信した経路を比較して地図データを受信するか否かを判定するようにしたものである。
【0008】
情報センタ10は、経路探索処理や通信する端末特定処理等を行う制御装置11、最新の地図データを含む地図データベース12、送受信手段13を有していて、ネットワーク14を介して各車載端末装置15と通信可能であり、車載端末装置からの要求があると、要求に応じて最新の地図データや探索経路を提供するサービスを行っている。地図データベース12は更新された道路、新規に開通された道路、最新の有料道路の料金といった道路に関するあらゆる最新情報が格納されており、車載端末装置からの要求に応じて制御装置11が地図データベース12を検索して経路探索を行って提供している。また、制御装置11は登録された車載端末の識別データを保持していて、この識別データに基づいて端末を特定し、地図データを提供する。
【0009】
車載端末装置15はディスクに地図データを格納しており、目的地を入力すると目的地までの経路探索を行い、探索した経路を地図に表示して案内する機能を有している地図表示装置である。ディスクの地図データは新しいものに交換しない限り古いデータのままであるため、場合によってはユーザーが望むルートが探索されない場合がある。このような場合、ディスクを買い換えるユーザーもいれば、ディスクの買い換えまではしたくないユーザーもおり、ディスク交換までしたくはないがより良いルートが欲しいというユーザーの場合、後述するように、例えば出発地(現在位置検出装置が検出した車両現在位置やユーザーが入力した地点)や目的地をネットワークを通して情報センタ10に送って最新の地図データを要求すると、情報センタ10では経路の探索を行い、ユーザーの受信の意志が確認されると、例えば地図データや探索経路が車載端末装置15にダウンロードされる。
【0010】
図2は車載端末装置が有する地図データの構成を示す図である。
地図データは、全データを管理するための全データ管理情報と、各機能ごとに分類されたデータを参照するための表示データ管理情報、案内データ管理情報、探索データ管理情報、検索データ管理情報等と、表示データ(地図表示装置上に表示するための道路データ等)、案内データ(交差点名称、注意点データ、道路名称データ、道路名称音声データ等)、探索データ(探索に使った道路のネットワークデータ)、検索データ(施設名、電話番号、住所等)等の実データで構成されている。
【0011】
次に、車載端末装置のディスクの地図データが古いため、情報センタから新しい地図データを取得する形態について以下に説明する。
図3はネットワークデータ取得領域の説明図である。
ネットワークデータとは情報センタ側が有している地図データを意味しており、地図の実データ単位は、図示するように、例えば、実世界を矩形領域で分割した範囲内のデータが記述されている。従って、車載端末装置から出発地、目的地の情報をセンタ側に送信し、この出発地、目的地を含む領域(図の実線で囲んだ領域)の地図データ(表示データ、案内データ、探索データ、検索データ等)を情報センタから取得すれば、車載端末装置において経路探索して案内を行うことが可能である。この場合、例えば探索は情報センタ側で行い、このデータを受信して車載端末装置側では案内のみ行うような機能分担も可能である。すなわち、情報センタで探索を行った後、その探索経路を車載端末装置に送信し、さらに、図3で示すデータ取得領域に対して案内データのみ情報センタから車載端末装置に対して送信することにより、案内を行うことができる。
【0012】
図4は情報センタ側が保持しているデータと車載端末装置側で既に取得している場合のデータの取得方法を説明する図である。
既に取得した領域A(破線で示す矩形領域)は、以前に情報センタよりデータの取得を行った領域を示しており、車載端末装置では情報センタから取得した道路をハードディスクやメモリ等の記憶手段にデータのバージョン情報とともに保持する。そして、出発地と目的地の情報を送って新規に情報センタから情報の取得を行う場合、車載端末装置においてバージョン情報(日付、型番等)の比較を行い、同一のバージョン、同一の領域のデータとなる部分の地図データの取得は行わず、バージョンが異なる、或いは領域が異なる場合のみ異なる部分の地図データの更新を行う。図示の例では出発地と目的地を含む実線で示す矩形の領域Bが取得候補であった場合、破線の領域Aと重なる領域のデータのバージョンが同じ場合、領域AとBの重ならない領域Cのデータ、つまりデータの差分のみ取得を行う。このような取得方法とすることにより、データ量が削減できるので、通信費の削減や通信レスポンスの向上、あるいは探索レスポンス、案内レスポンスの向上が期待できる。
【0013】
次に、データの取得に際して必要な通信費用、通信時間をユーザーに提示し、データの取得を行うかどうか判定する手段を有する例について説明する。
図5は情報センタからデータを取得する場合に予測される、通信費用と通信時間をユーザーに提示する画面例を示す図、図6は通信パラメータ設定画面を示す図である。
図5に示すように、車載端末装置の画面には、通信費用、通信時間が表示され、ユーザーは、通信する場合の料金と時間が分かるため、事前にデータを通信で取得すべきか否かの判定を行うことができる。同時に画面上には「通信してもよろしいですか?」のメッセージとともに、「YES」、「NO」が表示されるので、取得するかしないかを選択することができる。また、通信パラメータ(通信費用、通信速度等)は時代の変遷とともに変化するため、図6に示すような1分当たりの通信費用、通信速度を設定する画面を用意しておく。なお、この設定はユーザーが行うようにしても、或いは情報センタから自動的に設定されるようにしてもよい。そして、このパラメータが設定されると、通信データ量から通信費用、通信時間が求められる。
【0014】
図7は新設または廃止道路がある場合のデータ取得を説明する図、図8はデータバージョン間の道路対応を説明する図である。
情報センタ側の地図データは常に最新のデータに書き換えられているので、更新したり新設した道路はあるものの、廃止道路はなく、一方、車載端末装置側の地図データには更新したり新設した道路はなく、廃止道路はある場合がある。このような場合、車載端末装置から出発地と目的地の情報をセンタ側に送り、情報センタ側で経路探索を行って車載端末装置側に送信し、車載端末装置側では受信した経路と所有する地図データの道路を比較、或いは車載端末装置側でも経路探索して受信した経路と自身で探索した経路とを比較して情報センタにあって車載端末装置には無い道路、或いは情報センタには無く、車載端末装置にはある道路を明示的に提示し、ユーザーに情報センタからのデータ取得を選択させるようにする。
【0015】
すなわち、車載端末装置から送信された出発地と目的地の情報から情報センタ側で探索を行い、探索経路、すなわち経路上の道路属性、道路形状等を通信経由で車載端末装置に転送する。情報センタより受信した探索経路に関する道路の種別、属性、形状等の道路を特定するためのデータと、車載端末装置が所有する地図データの道路の種別、属性、形状等を比較し、もっともふさわしい道路があれば一致道路とし、ふさわしい道路が無い場合、その道路を新設あるいは廃止道路とし、或いは車載端末装置が探索した経路と受信した探索経路とを比較し、異なる経路上の道路をルート上に他のルートと区別して表示する。このような比較により、図7では新設道路が区別して表示されている。一致する道路の検索は、このように道路の形状、属性の比較でも可能であるが、各種データを管理するようなサーバがあれば、そのサーバに対して道路の問い合わせを行うことでも可能である。例えば、図8に示すように、サーバ側で、データA、データB、データCのようなディスクバージョン番号と各道路番号データの対応関係のデータをもっていれば、経路中の道路の中で、車載端末装置のディスクに格納されているデータにとって新設あるいは廃止となる道路の検索をサーバ側で行い、その道路を車載端末装置に通信することにより、図7の表示を行うようにしてもよい。
【0016】
図9は情報センタ側と車載端末装置側の両者で経路探索を行って両者の経路を比較し、データを取得するか否かを選択する例を説明する図である。
車載端末装置から出発地と目的地を情報センタへ送信し、情報センタ側と車載端末装置側の両者で同一出発地と目的地で経路探索を行う。そして、両者の探索経路の主要路線、経路に含まれる有料道路の料金、到着予想時間、行程距離等の特徴(ルート概要)を取得して表示し、これらの表示データに基づいてルート比較を行う。図のネット側と表示しているものは情報センタが探索した経路についてのデータを車載端末装置側で受信したもの、ナビ側と表示しているものは車載端末装置で探索した経路についてのデータである。そして、ルート比較とともに、画面上には「通信してもよろしいですか?」のメッセージとともに、「YES」、「NO」が表示されて取得するかしないかを選択することができる。このように、地図データとしてルート概要を対比して報知するため、ユーザーは料金、時間、行程距離等を比較することにより、通信により受けるメリットが明らかになり、納得して通信することができる。
【0017】
図10は情報センタ側と車載端末装置側の探索結果を統一するために、必要な条件やパラメータを両者間でやりとりする例を示す図である。
図示の例では、探索条件としては、出発地と目的地の座標、有料優先、フェリー使用可等であり、探索パラメータ(リンクの重み)は、高速、有料、県道、一般道等の重み付けを示す係数、また、探索パラメータ(リンク間の重み付け)は、信号の重み付け、右折の重み付け、左折の重み付けを距離に換算したものである。このような条件やパラメータは車載端末装置の機能やターゲットとしているユーザー層によって変わる可能性があるため、情報センタ側で探索を行う場合、車載端末装置側と同じ条件とすることが望ましい。そのため、図10に示すような探索条件やパラメータを情報センタ側に送信することにより、情報センタ側の探索を車載端末装置側の探索と同一条件で行うことができる。これにより、両者の探索経路を比較したりすることができる。また、情報センタの探索ルートのみを示す場合にも、車載端末装置側との整合性が必要となるため、探索条件やパラメータのやりとりは不可欠となる。なお、このやりとりの通信は、車載端末装置から情報センタ側だけでなく、情報センタ側から車載端末装置側に返信し、車載端末装置側を情報センタ側に合わせるようにしてもよい。
【0018】
図11は条件やパラメータを車載端末装置と情報センタ間でのやりとりを説明する図である。
1.車載端末装置は目的地データを情報センタに送信する時に、車載端末装置のナビゲーション・プログラムの識別情報(プログラムのバージョン情報)を併せて送信する。
2.情報センタは、記憶しているナビゲーション・プログラムの識別情報と、受信した車載端末装置のナビゲーション・プログラムの識別情報を比較し、探索パラメータを同一のものにすべきか否か判断する。
3.探索パラメータを同一のものにすべきであると判断すると、情報センタから車載端末装置へ探索パラメータを送信するように指示する。
4.この指示を受信すると、車載端末装置は情報センタへ探索パラメータを送信する。
5.情報センタは受信した探索パラメータを使って経路探索する。
【0019】
なお、上記ステップ2の探索パラメータを同一のものにすべきか否かの判断は、車載端末装置が行ってもよい。つまり、情報センタから受信したプログラムの識別情報と車載端末装置が備えるプログラムの識別情報を車載端末装置が比較するようにしてもよい。また、図11の場合と逆に、車載端末装置が情報センタの探索パラメータや探索プログラムに合わせるようにしてもよい。この場合は、車載端末装置へ情報センタは探索パラメータや探索プログラムを送信し、車載端末装置は受信した情報に基づいて経路探索を行う。また、情報センタと車載端末装置間で同一にするのは、パラメータでなくプログラムでもよい。プログラムの場合には、マッチングプログラム、地図表示プログラム等と共に送信してもよいし、探索プログラムだけ送信するようにしてもよい。
【0020】
図12は図3、図4で説明した地図データ取得に関連した処理フローを説明する図である。
サーバー(情報センタ)での地図ディスクバージョンをサーバーから取得し(ステップS1)、出発地、目的地付近のデータでサーバーと同じバージョンのデータが車載器(車載端末装置)にあるか否か判断する(ステップS2)。同じバージョンのデータがあれば、車載器のみでの経路探索を行う(ステップS3)。ステップS2において、同じバージョンのデータがなければ、サーバーのデータで経路探索し(ステップS4)、車載器側ではサーバーの探索経路を受信する(ステップS5)。次いで、サーバーで使用した地図データの通信量を取得し、単価を乗算して地図データを受信した場合の費用を表示する(ステップS6、S7)。次いで、サーバーの地図データを受信するか否かのユーザー選択を待ち(ステップS8)、受信しないことが選択されると処理は終了し、受信することが選択されると、サーバーで使用した地図データのうち、車載器に未受信の部分を受信する(ステップS9)。
【0021】
また、ステップS5〜S9における探索経路を受信して地図データを得るか否かを判断し、選択したときに地図データを受信するのに代えて、探索経路のルート概要(経路に含まれる有料道路の料金や到着予想時間、行程距離等)を受信し、ルート概要から受信するか否か判断し、受信する場合には地図データのうちの探索経路の地図データ(図2の表示データ、案内データ)を受信するようにしてもよい。
【0022】
図13は図9で説明した地図データ取得に関連した処理フローを説明する図である。
サーバーでの地図ディスクバージョンをサーバーから取得し(ステップS11)、出発地、目的地付近のデータでサーバーと同じバージョンのデータが車載器にあるか否か判断する(ステップS12)。同じバージョンのデータがあれば、車載器のみでの経路探索を行う(ステップS13)。ステップS12において、同じバージョンのデータがなければ、サーバーのデータで経路探索し(ステップS14)、車載器側ではサーバーの探索経路を受信する(ステップS15)。次いで、車載器の経路とサーバーの経路との距離、走行時間などを表示する(ステップS16)。なお、距離や走行時間については差分のみ表示してもよい。次いで、サーバーの地図データを受信するか否かのユーザー選択を待ち(ステップS17)、受信しないことが選択されると処理は終了し、受信することが選択されると、サーバーで使用した地図データのうち、車載器に未受信の部分を受信する(ステップS18)。
【0023】
また、ステップS15〜S18における探索経路を受信して地図データを得るか否かを判断し、選択したときに地図データを受信するのに代えて、探索経路のルート概要(経路に含まれる有料道路の料金や到着予想時間、行程距離等)を受信し、ルート概要から受信するか否か判断し、受信する場合には経路データ(図2の表示データ、案内データ)を受信するようにしてもよい。
【0024】
ところで、情報センタ側(サーバー側)と車載端末装置(車載器)側で独自に経路探索を行うと、図14に示すように、ネットワーク側ルートと、車載器側ルートが異なる場合がある。サーバー側では最新のデータの更新を頻繁に行うことができるが、車載器側ではディスク等からデータを得るため、ディスク等が調査の対象となる時期(格納した時期)の道路のみしか探索に考慮できないためである。そこで、車載器側とサーバー側の両者で探索を行い、サーバーから新規データを取得するのに必要な費用やレスポンスと、サーバーと車載器の両者で独自に算出したルートとを比較し、サーバーからデータを取得するか否かを自動判定し、取得すると判定した場合にデータ要求する例について以下に説明する。
【0025】
まず、探索ルートの重みについて図15により説明する。
図15において、a、b、c、d、e、fはノードと呼ばれ、通常交差点を表現している。aーb間をリンクと呼び、道路を表現している。重みとは、道路の距離を基本とし、高速、国道、県道といった道路の種別や、道路の幅員等を考慮し、ある乗算係数をかけたものであり、また、交差点信号機や右左折など交差点を通過する際にスピードを落とす必要があるため、あるペナルティを加えている。この例では、aーb間は重み10、bーc間は重み15、bーd間は重み25、cーd間は重み12、cーe間は重み30、dーe間は重み15である。経路探索はこのような重み付けを基本として最短経路を求めることになる。図のルート1はa、b、c、e、fを通るため重みの積算が60、ルート2はa、b、d、e、fを通過するため、重みの積算が55となり、ルート2の方が重みが小さくなるため、ルート2が選ばれる。
【0026】
サーバーで探索を行って求められたルートの重み付け(重みS)と、車載器側で求められたルートの重み付け(重みC)の比較を行う場合、サーバー上で求められたルートの重みの方がずいぶんと小さい時には、通信を行うメリットが大きいので、この場合のみ通信を行う(データを取得する)方が望ましい。そのため、通信することのデメリットを重みに換算する。
【0027】
通信料金換算重み=A×料金T
通信時間換算重み=B×時間T
ここで料金Tや時間Tは情報センタから取得するデータ量により決まり、A、Bは重みの換算係数である。通信パラメータについては図6の設定画面で設定可能であるが、ルート設定する場合の料金、時間、行程距離等の換算係数は、例えば図16に示すようなルート設定画面で設定する。図の例では、料金1円は0.3mの距離に換算され、時間1秒は5.0mに換算され、行程距離の差1mは0.5mに換算される。この換算係数は経路探索においてユーザーが何を重視するかに依存する。こうして、実際に通信を行う場合には、次の式で通信を行うか否かを判定する。
【0028】
通信料金換算重み+通信時間換算重み<重みC−重みS
すなわち、(重みC−重みS)はデータ取得のメリットを表しており、これが料金と時間の換算重みより大きければ通信を行う方が良いことになる。
【0029】
さらには、通信料金のデメリットを有料道路の料金の改善効果との比較により判定を行うことができる。つまり、サーバー上のルートの料金(料金S)、車載器で求められたルートの料金(料金C)とすると、次の判定が考えられる。
【0030】
料金T<料金C−料金S
(料金C−料金S)はデータ取得による支出の低減であり、これがデータ取得の料金より大きければ通信を行う方が良いことになる。
【0031】
さらには、通信時間のデメリットを目的地までの到着予想時間の改善効果との比較により判定を行うことができる。つまり、サーバー上の到着予想時間(時間S)、車載器で求められたルートの到着予想時間(時間C)とすると、次の判定が考えられる。
【0032】
時間T<時間C−時間S
(時間C−時間S)は到着予想時間の改善効果であり、これがデータを取得するための通信時間より大きければ通信を行う方が良いことになる。
【0033】
これまでの判定をまとめると、次の判定で一般化できる。
【0034】
A*((料金C−料金S)−料金T)+B*((時間C−時間S)−時間T) <(重みC−重みS)
すなわち、データ取得によるルートのメリットが、料金と時間の換算重みより大きければ通信を行うメリットがあるということであり、この条件を満たすと判定できた場合に、情報センタに対してデータ要求する。なお、条件を満たすと判定した場合に自動的に要求することに代え、判定結果を報知してユーザーがデータ要求を選択できるようにしてもよい。
【0035】
なお、上記の例においては車載器側でデータを取得するか否かの判定を行うようにしたが、この判断機能を情報センタ側にもたせてデータ取得のメリットと料金と時間の換算重みとを比較し、データ取得を行うべきか否かを自動判定するようにしてもよい。この場合、車載器側では単に目的地データと探索経路とを送信するだけで自動的にデータ取得のメリットがあるか否か判定されるので、車載器側の処理負担を軽減させることができる。また、上記判定方法に加えて、地図表示装置の経路に含まれる有料道路の料金と情報センタの経路に含まれる有料道路の料金を比較して情報センタの経路による改善料金を求め、その改善料金と情報センタの経路を受信することに要する通信料金を比較して地図データの取得によるメリットがあるか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
図17は車載端末装置の実施形態を示す図である。
出発地や目的地等の経路案内に関する情報を入力する入力装置1、自車両の現在位置に関する情報を検出する現在位置検出装置2、地図データ、経路の探索に必要なナビゲーション用データ、経路案内に必要な表示/音声の案内データ、さらに地図の表示、経路探索、音声案内等の案内を行うためのプログラム(アプリケーション及び/又はOS)等が記録されている情報記憶装置3、ナビゲータ処理手段として地図の表示処理、経路探索処理、経路案内に必要な表示/音声案内処理、さらにシステム全体の制御を行う中央処理装置4、車両の走行に関する情報である、例えば道路情報、交通情報を送受信したり、車両の現在位置に関する情報を検出したり、さらに現在位置に関する情報を送受信したりする情報送受信装置5、経路案内に関する情報を出力するディスプレイやスピーカその他の出力装置6から構成されている。
【0037】
入力装置1は、地図を選択して目的地を入力したり、運転者の意志によりナビゲーション処理を中央処理装置4に指示する機能を備えている。その機能を実現するための手段として、目的地を電話番号や地図上の座標などにて入力したり、経路案内をリクエストしたりするタッチスイッチやジョグダイアル等のリモートコントローラ等を用いることができる。また、入力装置としては音声入力による対話を行うための装置を備えており、音声入力装置として機能する。また、ICカードや磁気カードに記録されたデータを読み取るための記録カード読み取り装置を付加することもできる。また、ナビゲーションに必要なデータを蓄積し、運転者の要求により通信回線を介して情報提供する情報センターや、地図データや目的地データ、簡易地図、建造物形状地図などのデータを有する携帯型の電子装置等の情報源との間でデータのやりとりを行うためのデータ通信装置を付加することもできる。
【0038】
現在位置検出装置2は、衛星航法システム(GPS)を利用して高さ情報を含む車両の現在位置情報を入手するもの、車両の進行方位を、例えば地磁気を利用することにより絶対方位で検出する絶対方位センサ、車両の進行方位を、例えばステアリングセンサ、ジャイロセンサを利用することにより相対方位で検出する相対方位センサ、例えば車輪の回転数から車両の走行速度及び走行距離を検出する速度・距離センサ、車両の加速度を検出して高さ情報を含む現在位置情報を検出するセンサ等から構成される。
【0039】
情報記憶装置3は、ナビゲーション用のプログラム及びデータを記憶した外部記憶装置で、例えばCD−ROM、DVD−ROM等の光ディスク、フロッピィディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、MO等の光磁気ディスク等からなっている。プログラムは、経路探索などの処理を行うためのプログラム、本実施例記載のフローチャートに示されるような処理プログラムや経路案内に必要な表示出力制御、音声入力により対話的に案内を行うためのプログラム及びそれに必要なデータ、音声案内に必要な音声出力制御を行うためのプログラム及びそれに必要なデータが格納されている。記憶されるデータとしては、地図データ、道路データ、行政区画名や地域の名称を含む地名データ、探索データ、探索したルートのデータ、案内データ、マップマッチングデータ、目的地データ、メモリ地点データ、走行履歴データ、施設データ、交差点等分岐点の画像データ、ジャンル別データ、ランドマークデータ等のファイルからなり、ナビゲーション装置に必要なすべてのデータが記憶されている。そして、これらのデータは情報センタからダウンロードして更新可能である。なお、情報記憶装置にはデータのみ格納し、プログラムは中央処理装置に格納するタイプのものとしてもよい。
【0040】
中央処理装置4は、種々の演算処理を実行するCPU、情報記憶装置3からプログラムを読み込んで格納するフラッシュメモリ、フラッシュメモリのプログラムチェック、更新処理を行うプログラム(プログラム読み込み手段)を格納したROM、設定された目的地の地点座標、道路名コードNo.等の探索された経路案内情報や演算処理中のデータを一時的に格納するRAMからなっている。また、この他にもディスプレイ等の出力装置に表示するためのデータを格納するフレームメモリ、入力装置1からの音声入力による対話処理を行ったり、CPUからの音声出力制御信号に基づいて情報記憶装置3から読み出した音声、フレーズ、1つにまとまった文章、音等を合成してアナログ信号に変換してスピーカに出力する音声プロセッサ、通信による入出力データのやり取りを行う通信インタフェースおよび現在位置検出装置2のセンサ信号を取り込むためのセンサ入力インタフェース、内部ダイアグ情報に日付や時間を記入するための時計などを備えている。なお、前記した更新処理を行うプログラムを外部記憶装置に格納しておいてもよい。
【0041】
本実施形態に係るプログラム、その他ナビゲーションを実行するためのプログラムは全て、外部記憶装置に格納されてもよいし、それらプログラムの一部または全てが本体側のROMに格納されていてもよい。この外部記憶装置に記憶されたデータやプログラムが外部信号としてナビゲーション装置本体の中央処理装置に入力されて演算処理されることにより、種々のナビゲーション機能が実現される。
【0042】
また、本実施形態に係るプログラム、その他ナビゲーションを実行するためのプログラム、地図データの一部または全ては情報センター(インターネットサーバー、ナビゲーション用サーバー)から複数の基地局(インターネットのプロバイダー端末や車両と通信で繋がる通信局)に送信され、端末側の中央処理装置4は基地局から送られてくる情報を情報送受信装置によって受信し、中央処理装置4内の読み書き可能なメモリ(例えばRAMやフラッシュメモリやハードディスク)にダウンロードしてプログラムを実行することにより、種々のナビゲーション機能を実現させるようにしてもよい。ここで、プログラムはフラッシュメモリに格納し、地図データはRAMに格納する如くプログラムと地図データを別の読み書き可能なメモリに格納するようにしてもよいし、同じ読み書き可能なメモリに格納するようにしてもよい。あるいは、家庭内のパソコンで情報センターからプログラム、地図データの一部または全てを取り外し可能な記憶媒体(例えばICカード、磁気カードやフロッピーディスク)へダウンロードし、その記憶媒体を中央処理装置4につなげて、記憶媒体内のプログラムを実行することにより、種々のナビゲーション機能を実現させるようにしてもよい。
【0043】
本実施形態のナビゲーション装置は、上記のように外部記憶装置からプログラムを読み込んだり、情報センター等からダウンロードしたプログラムを読み込むための比較的大容量のフラッシュメモリ、CDの立ち上げ処理を行うプログラム(プログラム読み込み手段)を格納した小容量のROMを内蔵する。フラッシュメモリは、電源が切断しても記憶情報が保持される、つまり不揮発性の記憶手段である。そして、CDの立ち上げ処理として、プログラム読み込み手段であるROMのプログラムを起動してフラッシュメモリに格納したプログラムチェックを行い、情報記憶装置3に格納されているディスク管理情報等を読み込む。プログラムのローディング処理(更新処理)は、この情報とフラッシュメモリの状態から判断して行われる。
【0044】
情報送受信装置5は、衛星航法システム(GPS)を利用して情報を入手するGPS受信装置、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコン等を利用して情報を入手するためのVICS(道路交通情報通信システム)受信装置、携帯電話、パソコン等を利用することにより、情報センターや他車両と情報を双方向に通信するためのデータ送受信装置等から構成される。
【0045】
出力装置6は、運転者が必要な時に案内情報を音声および/または画面により出力したり、中央処理装置4でナビゲーション処理されたデータなどをプリント出力する機能を備えている。そのための手段として、中央処理装置4で処理したデータや情報記憶装置3に格納されたデータを画面表示するために展開、描画するメモリ、メモリに描画したイメージデータを表示するディスプレイ、中央処理装置4で処理したデータや情報記憶装置3に格納されたデータをプリント出力するプリンタ、経路案内を音声で出力するスピーカなどを備えている。
【0046】
ディスプレイは、簡易型の液晶表示器等により構成されており、中央処理装置4が処理する地図の表示データや案内データに基づき展開、描画された交差点拡大図画面、目的地名、時刻、距離、進行方向矢印等を表示する。ディスプレイに表示する画像データは、2値画像データ(ビットマップデータ)であり、中央処理装置4が処理する地図の表示データや案内データをシリアル通信等で使用する通信線を使用し、また、他の通信線を兼用して受信し、出力装置6内でメモリに展開、描画した後、指示された表示範囲をディスプレイの画面に表示する。
【0047】
このディスプレイは、運転席近傍のインストルメントパネル内に設けられており、運転者はこれを見ることにより自車両の現在地を確認したり、またこれからの経路についての情報を得ることができる。また、このディスプレイの案内画面を自動車のフロントガラスに埋め込んだハーフミラーを通して運転者の目線を下げずに見えるようにするヘッドアップディスプレイを備えるようにしてもよい。また、ディスプレイの表示画面にタッチパネル、タッチスクリーン等を含むタブレットを使用し、画面に触れる、或いは画面をなぞることにより、地点入力、道路入力等を行えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、ユーザは情報センタからの地図データを納得して取得することができるので、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態の地図表示システムを説明するブロック図である。
【図2】車載端末装置が有する地図データの構成を示す図である。
【図3】ネットワークデータ取得領域の説明図である。
【図4】情報センタ側が保持しているデータと車載端末装置側で既に取得しているデータの取得方法を説明する図である。
【図5】情報センタからデータを取得する場合に予測される、通信費用と通信時間をユーザーに提示する画面例を示す図である。
【図6】通信パラメータ設定画面を示す図である。
【図7】新設または廃止道路がある場合のデータ取得を説明する図である。
【図8】データバージョン間の道路対応を説明する図である。
【図9】情報センタ側と車載端末装置側の両者で経路探索を行って両者の経路を比較し、データを取得するか否かを選択する例を説明する図である。
【図10】情報センタ側と車載端末装置側の探索結果を統一するために、必要な条件やパラメータを両者間でやりとりする例を示す図である。
【図11】条件やパラメータを車載端末装置と情報センタ間でのやりとりを説明する図である。
【図12】地図データ取得に関連した処理フローを説明する図である。
【図13】地図データ取得に関連した処理フローを説明する図である。
【図14】サーバー側と車載機側で独自に経路探索を行ったときの異なるルートを示す図である。
【図15】ルート探索における重みを説明する図である。
【図16】換算係数設定画面を示す図である。
【図17】車載端末装置の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10…情報センタ、11…制御装置、12…地図データベース、13…送受信手段、14…ネットワーク、15…車載端末装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報センタから地図データを受信して表示する地図表示装置において、
地図データを記憶する記憶手段と、
目的地を情報センタへ送信する送信手段と、
情報センタから前記送信した目的地に基づいて探索された経路を受信する受信手段と、
前記受信した経路に含まれる道路と前記記憶手段に記憶されている地図データの道路を比較して、前記受信した経路に含まれる新設道路があるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段が新設道路があると判定したとき、該新設道路を報知する報知手段とを備えることを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記報知手段は、前記情報センタから受信した経路を表示し、該表示された経路上において前記新設道路を区別して表示することを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】
地図表示装置に地図データを送信する情報センタにおいて、
複数のバージョンの地図データについて、バージョン間の道路の対応関係を記憶する記憶手段と、
前記地図表示装置から目的地を受信する受信手段と、
該受信手段により受信した目的地に基づいて経路を探索する探索手段と、
前記バージョン間の道路の対応関係に基づいて、前記探索手段により探索した経路に含まれる道路の中で、前記地図表示装置の地図データに記憶されていない新設道路があるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により新設道路があると判定された場合、前記地図表示装置へ新設道路を送信する送信手段とを備えることを特徴とする情報センタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−106001(P2006−106001A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308348(P2005−308348)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【分割の表示】特願2001−392303(P2001−392303)の分割
【原出願日】平成13年12月25日(2001.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】