説明

基板保持装置

【課題】基板の温度を精密かつ均一に制御することができる基板保持装置の実現。
【解決手段】基板保持装置100は、基板を保持する基板保持機構105と、前記基板保持機構の下部に配設される加熱機構106と、前記基板保持機構と前記加熱機構との間に接触した状態で介装されて、当該加熱機構で発生した熱を前記基板保持機構へ伝える熱伝導性部材107,207と、を有し、前記熱伝導性部材の断面形状を、前記基板側に開口する凹状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板温度を均一に制御する基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造においては集積回路の高集積化が進んでいる。集積回路の生産性を向上させるには、基板温度を精密かつ均一な制御および良好な再現性が要求される。
【0003】
例えば、スパッタリング法によるアルミニウム(Al)の薄膜形成では、微細孔にAlを埋め込むために400〜500℃の温度範囲で処理が行われる。この温度範囲で微細孔内にボイドを発生させることなくAlを埋め込むためには、精密で均一な温度制御が重要である。
【0004】
また、CVD法によって基板上にタングステン(W)膜や窒化チタニウム(TiN)膜を形成する場合は、300〜600℃の温度範囲で処理が行われる。この場合にも、基板温度の精密で均一な制御は薄膜の電気的特性や膜厚分布などの諸性質を決定する上で重要な因子となる。今後、基板の大径化が進むにつれて、基板温度の均一化は歩留まりの維持および向上のために、より一層重要となる。
【0005】
これに関連する技術として、例えば、特許文献1には、抵抗発熱体により加熱される載置台と冷却ジャケットとを熱伝導性シートを介して熱結合し、載置台からの熱を冷却ジャケットを介して室外に放出するプラズマ処理装置が記載されている。また、特許文献2には、静電チャックと冷却台座との間に変形能を有するシートを設けた静電チャックデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−299288号公報
【特許文献2】特開2000−299371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術によっても、基板温度の精密かつ均一な制御は困難である。特に加熱機構を備えた基板保持装置では、加熱時に熱歪みが生じて、基板保持機構と熱伝導性部材と加熱機構との密着性が低下し、基板温度を精密かつ均一に保持することができなくなる場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、基板温度を精密かつ均一に制御できる基板保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の基板保持装置は、基板を保持する基板保持機構105と、前記基板保持機構の下部に配設される加熱機構106と、前記基板保持機構と前記加熱機構との間に接触した状態で介装されて、当該加熱機構で発生した熱を前記基板保持機構へ伝える熱伝導性部材107,207と、を有し、前記熱伝導性部材の断面形状を、前記基板側に開口する凹状に形成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板保持機構と加熱機構との間に介装された熱伝導性部材の断面形状を凹状に形成したので、加熱機構に熱歪みが生じても、加熱機構と熱伝導性部材と基板保持機構との密着性を維持できる。よって、基板温度を精密かつ均一に制御できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態の基板保持装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の熱伝導性シートを示す上面図(A)および(A)のi−i矢視断面図(B)である。
【図3】比較例の熱伝導性シートの非加熱状態を示す図(A)および加熱状態を示す図(B)である。
【図4】本実施形態の熱伝導性シートの非加熱状態を示す図(A)および加熱状態を示す図(B)である。
【図5】本実施形態の静電吸着板の外周部における板バネの配置を示す図である。
【図6】本実施形態の板バネを示す断面図である。
【図7】実施例の熱伝導性シートを示す上面図(A)および(A)のii−ii矢視断面図(B)である。
【図8】本実施形態の実験に用いた基板保持装置の構成を示す図である。
【図9】各実験条件での基板の温度分布を示す図である。
【図10】図4(A)に示す熱伝導性シートに設けられるガス流路の拡大図である。
【図11】マイクロベローズの平面図(A)および側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
[装置構成]図1を参照して、本実施形態の基板保持装置100の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る実施形態の基板保持装置の構成を示す図である。図1に示すように、基板保持装置100は、基板103を保持する基板保持機構105と、基板保持機構105の下部に配設された加熱機構133と、基板保持機構105と加熱機構133との間に介装された熱伝導性部材107と、を有する。
【0014】
基板保持機構105は、基板103を載置して静電力(引力)により吸着保持する静電吸着板(静電チャック)を構成する。静電吸着板105における基板103を載置する上面部には凸部105aおよび凹状溝部105bが形成されている。静電吸着板105の凸部105aには基板103が接触した状態で載置され、凹状溝部105bにより基板103と静電吸着板105との間には所定の空間102が形成される。また、基板103の裏面に不活性ガス(例えば、Ar)を供給・循環させて基板103の温度を制御するため、静電吸着板105の凹状溝部105bの底面部にはガス流路125bに連通する複数のガス噴出口(外周側)125aが開口している。なお、凹状溝部105bおよびガス流路125bは、静電吸着板105の外周側および/または中央部に形成されている。
【0015】
基板保持機構105の内部には、基板103を支持して、上下動可能なリフトピン104が設けられており、基板103を搬送する際には、リフトピン104により持ち上げられた基板103を、搬送ロボット(不図示)が搬送するための隙間を形成することができる。
【0016】
静電吸着板105は、本実施形態では単極吸着方式が適用され、円盤形状の誘電体板を構成し、内部に単一の電極部106を有する。電極部106は単極吸着方式により導体棒(不図示)を介して、静電吸着用の直流電圧を印加するための静電吸着用直流電源(不図示)に電気的に接続されており、所定の電圧値で正極あるいは負極の電圧を供給する。静電吸着板105は、セラミックスなどの誘電体材料で形成され、電極部106への印加電圧により静電力を発生し、基板103を静電吸着して保持する。なお、本実施形態において、静電吸着板105の吸着方式は単極式に限定されず、双極式の静電チャックを適用してもよい。
【0017】
静電吸着板105の外側面を取り囲むように、略環状の石英リング部材109が配設されている。石英リング部材109はシールド111をフローティングする。さらに、石英リング部材109の外側面を取り囲むように、チャンバシールド113が配設されている。石英リング部材109の上面には、フローティング電位となるシールド111が形成されている。
【0018】
静電吸着板105の下面部には、シート状の熱伝導性部材(以下、熱伝導性シート)107としての熱伝導性シート107が接触した状態で装着される。また、この熱伝導性シート107の下面部には、加熱機構としてのヒータユニット133が接触した状態で配設されている。ヒータユニット133の内部には、基板103を加熱するためのヒータ127,131が設けられている。熱伝導性シート107は、ヒータユニット133で発生した熱を静電吸着板105に効率よく伝導するための機能を有する。
【0019】
静電吸着板105の外縁部は、後述する係止部材としての板バネ112によりヒータユニット133に固定される。
【0020】
また、ヒータユニット133の内部におけるヒータ127,131の上方には、ヒータユニット133の基板103側の界面温度を検出するための熱電対129が全面にわたって複数配置されている。
【0021】
[熱伝導性シート]次に、図2を参照して、熱伝導性シート107の詳細な形状について詳述する。図2は、本実施形態の熱伝導性シートを示す上面図(A)および(A)のi−i矢視断面図(B)である。図2に示すように、熱伝導性シート107は、円盤状の熱伝導性シート部107bの上面外周部に、リング状の熱伝導性シート部107aを積層して構成されている。これにより熱伝導性シート107の上面外周部に凸部117a、上面内周部に凹部117bが形成される。なお、熱伝導性シート107は外形が円形状のものに限定されず、四角形や五角形などの多角形状であってもよい。
【0022】
リング状の熱伝導性シート部107aは、弾性を有する熱伝導性材料で構成されていることが好ましい。弾性を有する熱伝導性材料としては、例えば、カーボン、金属(銅、銀および合金など)などの高熱伝導性素材を練りこんだゴム(例えば、シリコンゴム)やスポンジなどを用いることができる。
【0023】
円盤状の熱伝導性シート部107bは、熱伝導性材料で形成したシート状、プレート状または箔状の部材を用いることができる。円盤状の熱伝導性シート部107bとしては、例えば、カーボンシート、窒化アルミニウムシート、カーボン含有のゴムシート、またはカーボン含有のスポンジシートなどを用いることができる。上記カーボンシートは黒鉛を含有して成形されたシートであり、例えば、黒鉛を酸処理することで膨張化黒鉛とした後、シート状に圧延することによって作製される。
【0024】
熱伝導性シート107の凸部107aおよび凹部107bは、一体的に成形される構造であってもよく、また両者を接着剤などを利用して接着して一体構造としてもよい。
【0025】
また、円盤状の熱伝導性シート部107bとリング状の熱伝導性シート部107aとが積層された部分を貫通するように、不活性ガスの流路となるガス流路125bが形成されている。
【0026】
図2(B)にも示すように、熱伝導性シート107は、外周部に凸部117a、内周部に凹部117bを有している。すなわち、熱伝導性シート107の外周部の凸部117aは、リング状の熱伝導性シート部107aが円盤状の熱伝導性シート部107bに重ね合わされて構成され、上記静電吸着板105の下面部と接触する。また、熱伝導性シート107の内周部の凹部117bは、リング状の熱伝導性シート部107aとは重ならず、静電吸着板105と接触しない間隙を形成している。
【0027】
なお、本実施形態において熱伝導性シート107を円形にしているのは、基板103や静電吸着板105が円形状であるからであり、矩形状や楕円状等でも構わない。
【0028】
上述したように、熱伝導性シート107に形成されたガス流路125bは、静電吸着板105のガス噴出口(外周側)125と連通している。図2(B)において、熱伝導性シート107の凸部117aの厚さD1は、例えば、0.2〜0.6mmであることが好ましい。また、熱伝導性シート107の全体の厚みD2は、例えば、2mm以下であることが好ましい。
【0029】
[熱伝導性シートの作用]
次に、図3および図4を参照して、熱伝導性シート107の上面の外周部を凸状に内周部を凹状に形成した理由について説明する。図3は比較例の熱伝導性シートの非加熱状態の図(A)および加熱状態の図(B)である。図4は本実施形態の熱伝導性シートの非加熱状態の図(A)および加熱状態の図(B)である。
【0030】
図3(A)に示す比較例では、熱伝導性シート107’は円盤状で、全面にわたって静電吸着板105の下面部と接触するように平坦に形成されている。本願発明者が鋭意検討を行ったところ、図3(B)に示すように、ヒータユニット133は、加熱時と非加熱時の温度差から、静電吸着板105と熱伝導性シート107’との接触界面側に凸となる歪みを発生することが判明された。つまり、ヒータユニット133の熱歪みにより、熱伝導性シート107’の外周部に、静電吸着板105との非接触部分が発生していた。これが原因となって、熱伝導性シート107’から静電吸着板105へ均一に熱が伝わらず、基板103の温度分布が不均一となっていた。また、ヒータユニット133の熱歪みによって、熱伝導性シート107’の外周部に形成されたガス流路125bからガス漏れが発生していた。
【0031】
そこで、本実施形態では、図4(A)に示すように、ヒータユニット133の熱歪みによる非接触部分を補うために、熱伝導性シート107の上面の外周部を凸状として全体として凹状に形成している。これにより、図4(B)に示すように、ヒータユニット133の加熱時においても熱伝導性シート107の外周部の凸部117aおよび内周部の凹部117bの両方について静電吸着板105に対する接触状態を保持し、基板103の温度の均一化を実現している。
【0032】
さらに、静電吸着板105とヒータユニット133に挟持された熱伝導性シート107の外周部の凸部117aを貫通してガス流路125bを形成することにより、熱歪みに起因するガス漏れも防止することができる(図4(B)参照)。すなわち、熱伝導性シート107の弾性変型により、図4(B)に示すように、熱歪みが発生しても、熱伝導性シート107の外周部の凸部117aが静電吸着板105の下面部に対して接触状態を保持する。
【0033】
なお、熱伝導性シート107は、必ずしも円盤状の熱伝導性シート部107bとリング状の熱伝導性シート部107aの2枚のシートで構成する必要はなく、シートの内周部に凹部を有するように一体的に成形した1枚のシート部材として構成してもよい。
【0034】
図5は、本実施形態の静電吸着板の外周部をヒータユニットに固定するための係止部材を示す図である。図6は、本実施形態の係止部材を示す断面図である。
【0035】
図5および図6に示すように、静電吸着板105の外周部には、弾性を有する複数の係止部材が放射線状に配置されている。係止部材は板バネ112およびネジ114からなり、板バネ112の一端部を静電吸着板105の外縁部に係止させ、他端部をネジ114によりヒータユニット133に固定することによって静電吸着板105を保持している。また、板バネ112は、静電吸着板105に対して円周方向に等間隔に配置されており、その間隔は50mm以下であることが好ましい。これにより、静電吸着板105とヒータユニット133との密着性を高め、基板103の均一な温度制御をより一層向上させることができる。
【0036】
前述したように、ガス噴出口125aは、静電吸着板105、熱伝導性シート部107a,107b、およびヒータユニット133を貫通し、基板保持装置の外部に延出されたガス配管125に接続されている。ガス噴出口125aは、P.C.D.(pitch circle diameter)が240mm±10mmの範囲に略円周上に均等に配置され、隣接するガス噴出口125aとの間隔は70mm以下である。また、ガス噴出口125aの数は、12個〜24個であり、開口径は0.5〜1.5mmである。
【0037】
図1に戻り、ガス噴出口125は、下流側からエアーオペレートバルブ121、基板裏面のガス圧力を調整するための圧力制御バルブ115、およびエアーオペレートバルブ120の順でArガス供給源(不図示)に接続されている。エアーオペレートバルブ121と120の間のガス配管126は、排気制御バルブ122を介して基板裏面のガスやチャンバー内を排気するための排気ポンプ119に接続されている。
【0038】
[他の実施形態]次に、図7を参照して、他の実施形態の熱伝導性シートについて説明する。図7は、本発明に係る他の実施形態の熱伝導性シートを示す上面図(A)および(A)のii−ii矢視断面図(B)である。図7に示すように、熱伝導性シート207は、基板103や静電吸着板105等が矩形状の場合に適用される。熱伝導性シート207は、矩形状の熱伝導性シート部207b上に、枠体状の熱伝導性シート部207aを重ね合わせて構成される。枠体状の熱伝導性シート部207aは、矩形状の熱伝導性シート部207bの中央部を矩形状にくり抜いて形成される。
【0039】
図7(B)に示すように、熱伝導性シート207を断面から見ると、熱伝導性シート108の外周部に凸部217a、内周部に凹部217bが形成され、全体として凹状に形成されている。よって、上述した熱伝導性シート107と同様に、ヒータユニット133の加熱時に、熱伝導性シート207の外周部の凸部217aおよび内周部の凹部217bの両方の静電吸着板105に対する接触状態を保持し、基板103の温度の均一化を実現している。
【0040】
さらに、静電吸着板105とヒータユニット133に挟持された熱伝導性シート207の外周部の凸部217aを貫通してガス流路125bを形成することにより、熱歪みに起因するガス漏れも防止することができる。
【0041】
上述した各実施形態によれば、熱伝導性シート107,207の断面形状を全体として基板側に開口する凹状に形成した。これにより、ヒータユニット133の加熱時においても、ヒータユニット133と熱伝導性シート107,207と静電吸着板105との密着性を維持できる。このため、基板103の温度を精密かつ均一に制御することができる。
【0042】
また、静電吸着板105とヒータユニット133に挟持された熱伝導性シート107,207の外周部の凸部117a、217aにガス流路を形成したことにより、基板103の下面部に供給される不活性ガスのガス漏れを防止することができる。
【実施例】
【0043】
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る実施例の基板保持装置を用いた基板温度分布に関する実験結果について説明する。
【0044】
図8は、本実施例の基板保持装置200の構成を示す図である。なお、以下では、図1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、基板保持装置200は、図1に示した基板保持装置100のガス噴出口125aに加えて、基板103の裏面の中央部の空間102に連通するガス噴出口(内周側)123aが設けられている。また、基板103上には、基板温度を検出するための熱電対101が基板103の全面にわたって複数配置されている。
【0046】
図9は、本実施例の基板保持装置200の条件A〜Dでの実験結果を示す図である。
【0047】
図9に示すように、横軸(A、B、C、D)は、基板保持装置200の構成要素(実験条件)を表している。すなわち、各条件は、ガス噴出口(内周側)123aの数、ガス噴出口(外周側)125aの数、通常の平坦円板状(凹凸なし)の熱伝導性シート107’または凹状熱伝導性シート107のいずれかを変更した場合である。縦軸は、熱電対101により測定された各条件(A、B、C、D)における基板温度分布を示している。
【0048】
条件A(比較例)は、ガス噴出口(内周側)123aの数が3個、ガス噴出口(外周側)125aの数が0個で、平坦円板状の熱伝導性シート107’を使用している。
【0049】
条件B(比較例)は、ガス噴出口(内周側)123aの数が4個、ガス噴出口(外周側)125aの数が12個で、平坦円板状の熱伝導性シート107’を使用している。
【0050】
条件C(比較例)は、ガス噴出口(内周側)123aの数が0個、ガス噴出口(外周側)125aの数が12個で、平坦円板状の熱伝導性シート107’を使用している。
【0051】
条件D(本実施例)は、ガス噴出口(内周側)123aの数が0個、ガス噴出口(外周側)125aの数が12個で、凹状の熱伝導性シート107を使用している。
【0052】
図9の実験結果では、比較例としての、条件Aの温度分布が400℃±8℃、条件Bの温度分布が400℃±11℃、条件Cの温度分布が400℃±7.7℃であった。これに対し、本実施例の条件Dは最も均一な基板温度分布(400℃±4.1℃)となった。
【0053】
また、比較例である条件Aと条件Cとを比較すると、不活性ガスのガス導入口を内周側から外周側へ変更することにより、0.3℃の温度分布の改善がみられた。
【0054】
さらに、熱伝導性シートの構造のみが異なる比較例の条件Cの基板の温度分布が400℃±7.7℃であるのに対し、本実施例の条件Dの基板の温度分布は400±4.1℃である。すなわち、平坦円板状の熱伝導性シートに代えて内周部が凹状の熱伝導性シートを使用することにより、3.6℃の改善がみられた。
【0055】
以上の実験結果から、静電吸着板105とヒータユニット133との間に、内周部が凹状の熱伝導性シートを介装することにより、基板の温度分布のばらつきが大幅に改善されることがわかる。
【0056】
[ガス流路の構成]
図10は、図4(A)の熱伝導性シート107に設けられたガス流路125bの拡大図である。図11は、図10のマイクロベローズの平面図(A)および側面図(B)である。図10および図11に示すように、熱伝導性シート107に形成されたガス流路123b,125bの内壁部には、弾性部材としてのマイクロベローズ140が配設される。マイクロベローズ140は、図中の高さ方向に伸縮自在な金属製の蛇腹状の筒状部材である。マイクロベローズ140は、高融点の金属、例えばニッケル(Ni)などを電着処理することによって形成することができる。なお、マイクロベローズ140の構成材料は高融点金属に限定されず、合成ゴムや合成樹脂等も用いることができるが、高温下で用いる場合は金属製であることが好ましい。
【0057】
マイクロベローズ140は、熱伝導性シート部107a,107bを重ね合わせた厚さD2よりも高さ方向に長く形成され、弾性変形させた(縮められた)状態で、ガス流路123b,125bの内壁部に配設される。また、マイクロベローズ140の中空部141は、ヒータユニット133と静電吸着板105を連通させ、ガス流路123b,125bの一部を構成する。マイクロベローズ140の端部が位置するヒータユニット133側の部分にはザグリ穴134が形成され、このザグリ穴134にマイクロベローズ140の端部を加締めて嵌め込まれる。
【0058】
なお、弾性部材としては、マイクロベローズ6のように蛇腹形状である必要はなく、筒状の板バネ等であってもよい。また、弾性部材は、不活性ガスをシールするのに十分な圧力を発生できる程度の弾性力を有している必要はなく、ヒータユニット133と静電吸着板105の隙間の変化(熱伝導性シート107の変形)に追従できれば十分である。また、ヒータユニット133と静電吸着板105との隙間の変化への追従性を良くするため、弾性部材は熱伝導性シート107よりも弾性係数が小さいことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る基板保持装置は、スパッタ装置、ドライエッチング装置、プラズマアッシャ装置、CVD装置および液晶ディスプレイ製造装置等のプラズマ処理装置の処理チャンバ内に配設される形態であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
100、200 基板保持装置
101 熱電対
103 基板
105 静電吸着板(基板保持機構)
107、207 熱伝導性シート
107a,207a リング状熱伝導性シート
107b,207b 円盤状熱伝導性シート
207a 枠体状熱伝導性シート
207b 矩形状熱伝導性シート
112 板バネ(係止部材)
114 ネジ(係止部材)
123a ガス噴出口(内周側)
125a ガス噴出口(外周側)
125b ガス流路
125 ガス配管
127 ヒータ(内周側)
131 ヒータ(外周側)
133 ヒータユニット(加熱機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持機構と、
前記基板保持機構の下部に配設される加熱機構と、
前記基板保持機構と前記加熱機構との間に接触した状態で介装されて、当該加熱機構で発生した熱を前記基板保持機構へ伝える熱伝導性部材と、を有し、
前記熱伝導性部材の断面形状を、前記基板側に開口する凹状に形成したことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記基板保持機構の外縁部は、弾性を有する複数の係止部材によって前記加熱機構に固定されることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記基板保持機構は、前記基板を静電力により吸着保持することを特徴とする請求項1または2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記熱伝導性部材は、円盤状のシート部に、中央部がくり抜かれたリング状のシート部を重ね合わせて構成され、その外周部に凸部、内周部に凹部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記熱伝導性部材は、矩形状のシート部に、中央部がくり抜かれた枠体状のシート部を重ね合わせて構成され、その外縁部に凸部、中央部に凹部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記基板保持機構の上面部には、前記基板が置かれた状態で当該基板の裏面との間に空間を形成する凹状溝部が設けられ、
前記熱伝導性部材の外周部の凸部には、前記凹状溝部に連通して前記基板の裏面の空間に不活性ガスを供給するガス流路が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記凹状溝部およびガス流路は、前記基板保持機構の外周側および/または中央部に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の基板保持装置。
【請求項8】
前記ガス流路の内壁部には、伸縮自在の弾性を有する筒状部材が介装されていることを特徴とする請求項6に記載の基板保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−302508(P2009−302508A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38453(P2009−38453)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】