説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板の一方主面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板の他方主面を良好に洗浄処理する。
【解決手段】基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを凍結させることによって、パターンPTの間隙内部に入り込んだDIWが基板表面Wfに付着するDIWと一緒に凝固して凍結膜13fの一部となり、凍結膜13fによってパターンPTが構造的に補強される。そして、基板裏面Wbに対して低温処理液を供給しながら基板裏面Wbに形成される低温処理液の液膜11bに対して超音波振動が付加されて基板裏面Wbが超音波洗浄される。このように、凍結膜13fによりパターンPTが補強された状態のまま基板裏面Wbが超音波洗浄されるため、超音波洗浄によりパターンPTがダメージを受けることなく、基板裏面Wbを超音波洗浄によって良好に洗浄処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、両主面のうち一方主面にパターンが形成された、基板の他方主面を洗浄する基板処理方法および基板処理装置に関するものである。なお、当該基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板(以下、単に「基板」という)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に対する処理のひとつとして基板表面に液膜を付着させた状態で基板を冷却することにより液膜を凍結させる技術が用いられている。例えば特許文献1や特許文献2では、このような凍結技術を基板に対する洗浄処理のひとつとして用いている。この凍結洗浄処理では、基板表面に液体を供給して基板表面に液膜を形成するのに続いて、基板を冷却することにより液膜を凍結させる。これにより、パーティクルが付着している基板表面に凍結膜が生成される。そして、最後に凍結膜へのリンス液供給や音響エネルギー付与などによって基板表面から凍結膜を除去し、これにより基板表面からパーティクルを凍結膜とともに除去している。
【0003】
また、このような凍結技術は基板表面に形成されたホトレジスト膜を除去するためにも用いられることもある。例えば特許文献3では、シリコーンウエハー表面に形成されたホトレジスト膜に対して液体窒素が滴下されてホトレジスト膜が凍結される。そして、その凍結膜を有するシリコーンウエハーがメタノールを貯留した超音波洗浄槽内に浸漬されて超音波洗浄される。
【0004】
【特許文献1】特開2008−71875号公報(図7)
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0015517号明細書
【特許文献3】特開平7−66119号公報(段落0024)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献1では、微細パターンが形成された基板表面のみならず、パターンが形成されていない基板裏面にも凍結膜を形成して基板裏面への凍結洗浄を実行している。しかしながら、このような両面凍結洗浄処理を行った場合には、基板表面側のパターンを倒壊させることなく、基板裏面に付着するパーティクルの除去率を高めることは困難であった。そこで、基板表面については凍結洗浄処理(液膜形成−凍結−除去)を施す一方、基板裏面に対して超音波処理液を供給して超音波洗浄を実行することも考えられるが、凍結膜を除去している間に超音波付与位置の反対側に位置するパターンにダメージが及んでしまうことがあった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の一方主面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板の他方主面を良好に洗浄処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、両主面のうち一方主面にパターンが形成された、基板の他方主面を洗浄する基板処理方法および装置に関するものであり、上記目的を達成するため、次のように構成されている。すなわち、この発明にかかる基板処理方法は、一方主面に液膜を形成する液膜形成工程と、一方主面の液膜を凍結させる凍結工程と、凍結工程により形成された凍結膜が一方主面に存在する状態で他方主面を超音波洗浄する超音波洗浄工程とを備えたことを特徴としている。また、この発明にかかる基板処理装置は、基板の一方主面に形成される液膜を凍結させる凍結手段と、凍結手段により形成された凍結膜が一方主面に存在する状態で他方主面を超音波洗浄する超音波洗浄手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理方法および装置)では、基板の両主面のうち一方主面に液膜が形成され、その液膜を構成する液体はパターンの間隙内部に入り込んでいる。そして、この液膜が凍結されて一方主面に凍結膜が形成される。この際、パターンの間隙内部に入り込んだ液体は一方主面に付着する液体と一緒に凝固して凍結膜の一部となり、凍結膜によってパターンが構造的に補強された状態となる。つまり、基板、パターンおよび凍結膜が一体となった固体と見做せる状態となる。そして、凍結膜が一方主面に存在する状態、つまりパターン補強状態で他方主面が超音波洗浄される。したがって、この超音波洗浄によるパターンのダメージを効果的に防止しながら基板の他方主面を超音波洗浄によって良好に洗浄処理することができる。
【0009】
ここで、超音波洗浄の開始タイミングについては、凍結工程により一方主面の全面に凍結膜が形成された後に行ってもよい。この場合、一方主面に形成された全パターンが凍結膜によって補強されているため、基板の他方主面全体に対して超音波洗浄を施すことができる。
【0010】
また、基板の一方主面全体に対して凍結膜形成を瞬間的に行うことは比較的に難しく、凍結膜形成の開始後、凍結膜は徐々に一方主面全体に広がっていく。そこで、凍結膜形成を行っている間に、超音波洗浄を開始してもよい。これによって凍結処理と超音波洗浄処理が並行して行われてスループットを向上させることが可能となる。ただし、凍結膜が形成されていない領域について超音波洗浄を行うと、パターンにダメージを与えるおそれがあるため、他方主面のうち凍結工程により一方主面に形成された凍結膜の反対側に位置する領域から超音波洗浄を開始する必要がある。
【0011】
また、超音波洗浄を行う際、その超音波洗浄処理で使用する処理液の温度については、液膜を構成する液体の凝固点以下の温度に設定するのが望ましい。というのも、このような低温の処理液を基板の他方主面に供給して超音波洗浄した場合には、超音波洗浄中に凍結膜が溶けるのを効果的に防止してパターンが凍結膜により補強されている状態を維持することができるからである。
【0012】
また、超音波洗浄については次のようにして行ってもよい。すなわち、処理液を他方主面に供給して処理液の液膜を形成されるが、その液膜に対して処理液を介して超音波振動を伝播させて超音波洗浄することができる。また、上記のように他方主面側からではなく、一方主面側から基板を介して他方主面および他方主面に形成される処理液の液膜に対して超音波振動を伝播させて超音波洗浄を行ってもよい。いずれの超音波洗浄においても、超音波振動を確実に与えて他方主面を良好に超音波洗浄することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、基板の一方主面に形成された液膜を凍結されることでパターンが凍結膜で補強され、その補強状態を維持したまま基板の他方主面が超音波洗浄されるため、パターンへのダメージを抑制しながら基板の他方主面を良好に洗浄処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図であり、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfおよび裏面Wbに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、この基板処理装置は、基板Wの両主面のうち微細パターンが形成されている基板表面Wfについては凍結洗浄を行う一方、パターンが形成されていない裏面Wbについては超音波洗浄を行う装置である。このように、本実施形態では、基板Wの表面Wfが本発明の「一方主面」に相当し、裏面Wbが本発明の「他方主面」に相当する。
【0015】
この基板処理装置は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるためのスピンチャック2を有している。このスピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、本発明の「制御手段」に相当し、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0016】
また、スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。また、各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0017】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0018】
また、上記のように構成されたスピンチャック2の上方には遮断部材9が配置されている。この遮断部材9は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。また、遮断部材9の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。この遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸91は、水平方向に延びるアーム92により、基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94とが接続されている。
【0019】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、制御ユニット4は、遮断部材回転機構93の動作を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させる。
【0020】
遮断部材昇降機構94は、制御ユニット4からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接させたり、逆に離間させる。具体的には、制御ユニット4は、遮断部材昇降機構94の動作を制御して、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材9をスピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に上昇させる一方、基板Wに対して所定の処理を施す際には、遮断部材9をスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0021】
支持軸91は中空になっており、その内部に、遮断部材9の開口に延設されるガス供給管95が挿通されている。このガス供給管95は乾燥ガス供給部65に接続されている。この乾燥ガス供給部65は、窒素ガスを供給するもので、適当なタイミングで遮断部材9と基板Wの表面Wfとの間に形成される空間に向けてガス供給管95から窒素ガスを供給する。なお、この実施形態では、乾燥ガス供給部65から乾燥ガスとして窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを供給するようにしてもよい。
【0022】
ガス供給管95の内部には、液体供給管96が挿通されている。この液体供給管96の下方端部は遮断部材9の開口に延設されるとともに、その先端に液体吐出ノズル97が設けられている。一方、液体供給管96の上方端部は液体供給ユニット62に接続されている。この液体供給ユニット62は、基板表面Wfに液膜を構成する液体およびリンス液を供給するものであり、本実施形態では液膜を構成する液体とリンス液としてDIW(脱イオン水:deionized water)を用いている。
【0023】
また、スピンチャック2の中心軸21は円筒状の空洞を有する中空になっており、中心軸21の内部には、基板Wの裏面Wbに液体を供給するための円筒状の液供給管25が挿通されている。液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面側である裏面Wbに近接する位置まで延びており、その先端に基板Wの下面の中央部に向けて液体を吐出する液吐出ノズル27が設けられている。液供給管25は、上記した液体供給ユニット62に接続されており、基板Wの裏面Wbに向けてDIWをリンス液として供給する。
【0024】
また、中心軸21の内壁面と液供給管25の外壁面との隙間は、横断面リング状のガス供給路29になっている。このガス供給路29は上記乾燥ガス供給部65に接続されており、乾燥ガス供給部65からガス供給路29を介してスピンベース23と基板Wの裏面Wbとの間に形成される空間に窒素ガスが供給される。
【0025】
この第1実施形態にかかる基板処理装置では、冷却ガス吐出ノズル3がスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて液膜凍結用冷却ガスを吐出可能に設けられている。また、このノズル3を駆動するためにノズル駆動機構31が設けられている。このノズル駆動機構31では、回転モータ32がスピンチャック2の周方向外側に設けられている。この回転モータ32の回転軸33にはアーム34が水平方向に延びるように接続され、さらに当該アーム34の先端に上記冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ32が駆動されると、アーム34が回転軸33回りに揺動し、ノズル3が以下のように移動する。
【0026】
図3は冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図で、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。制御ユニット4からの動作指令に基づき回転モータ32が駆動されてアーム34が揺動すると、冷却ガス吐出ノズル3は、基板Wの表面Wfに対向した状態で、図3(b)に示すように、移動軌跡Tに沿って移動する。この移動軌跡Tは、回転中心位置Pcから端縁位置Peに向かう軌跡である。ここで、回転中心位置Pcは基板Wの上方で、かつ基板Wの回転中心A0の上に位置し、端縁位置Peは基板Wの外周端の上方に位置する。すなわち、回転モータ32は、冷却ガス吐出ノズル3を基板Wの表面Wfに沿って基板Wに対して相対移動させる。また、冷却ガス吐出ノズル3は、移動軌跡Tの延長線上であって基板Wの対向位置から側方に退避した待機位置Psに移動可能となっている。
【0027】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部64に接続されている。この冷却ガス供給部64は、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガスを冷却ガス吐出ノズル3に供給するものである。冷却ガス吐出ノズル3が基板Wの表面Wfの対向位置に配置され、冷却ガス供給部64から冷却ガスが冷却ガス吐出ノズル3に供給されると、冷却ガス吐出ノズル3から基板Wの表面Wfに向けて局部的に冷却ガスが吐出される。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出している状態で、スピンチャック2が基板Wを回転させながら、回転モータ32が冷却ガス吐出ノズル3を移動軌跡Tに沿って移動させると、冷却ガスが基板Wの表面Wfの全体にわたって供給されることとなる。したがって、液体吐出ノズル97からのDIWにより液膜11fが形成された基板表面Wfに対して上記のようにして冷却ガスを供給することで液膜11fの全体が凍結し、基板Wの表面Wfの全面に凍結膜13fが生成される。
【0028】
基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さは、冷却ガスの供給量によっても異なるが、例えば50mm以下、好ましくは数mm程度に設定される。このような基板Wの表面Wfからの冷却ガス吐出ノズル3の高さおよび冷却ガスの供給量は、(1)冷却ガスが有する冷熱を液膜11fに効率的に付与する観点、(2)冷却ガスにより液膜11fの液面が乱れることがないように液膜11fを安定して凍結する観点などから実験的に定められる。
【0029】
冷却ガスは、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを構成する液体の凝固点、すなわちこの実施形態では0゜Cより低い温度を有する。この冷却ガスは、例えば、タンクに貯留されている液体窒素内を通るパイプに窒素ガスを流すことにより生成され、この実施形態では例えば−100゜Cに冷却されている。なお、窒素ガスに代えて、酸素ガスや清浄なエア等を用いてもよい。このように冷却ガスを用いているため、基板Wの表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を通すことによって、冷却ガスに含まれる汚染物質を容易に除去することができ、液膜11fを凍結させる際に基板Wの表面Wfが汚染されるのを防止できる。このように、この実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3が本発明の「冷却ガス吐出手段」に相当し、回転モータ32が本発明の「相対移動機構」に相当する。
【0030】
図1に戻って、説明を続ける。この実施形態では、スピンチャック2の周囲には、受け部材51が固定的に取り付けられている。この受け部材51には、円筒状の仕切り部材が3個立設されて3つの空間が排液槽として形成されている。また、これらの排液槽の上方にはスプラッシュガード52がスピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスピンチャック2の回転軸に対して昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード52は回転軸に対して略回転対称な形状を有しており、スピンチャック2と同心円状に径方向内側から外側に向かって配置された3つのガードを備えている。そして、ガード昇降機構(図示省略)の駆動によりスプラッシュガード52を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する液膜形成用DIW、リンス液や次に説明する処理液などを分別して排液させることが可能となっている。
【0031】
このように構成されたスプラッシュガード52のうち最外部のガード521の最上部にノズル取付部材522が設けられるとともに、吐出口71をスピンチャック2の回転軸に向けた状態で超音波洗浄ノズル7が当該ノズル取付部材522に取り付けられている。そして、図1に示すようにスプラッシュガード52を最も低い位置に降下させると、超音波洗浄ノズル7はスピンチャック2に保持された基板Wの裏面Wbよりも低い位置に位置決めされるとともに、超音波洗浄ノズル7の吐出口71がスピンチャック2の外周側から基板裏面Wbの中央部に向いている。この位置決め状態で処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7に対して処理液を圧送すると、吐出口71から処理液が基板裏面Wbに供給されて基板裏面Wbに処理液の液膜(図4の符号11b)が形成される。
【0032】
この処理液供給ユニット63は、DIWにアルコール、例えばIPA(isopropyl alcohol:イソプロピルアルコール)を混合して凝固点がDIWの凝固点以下に降下した混合液を処理液として貯留するタンクを有している。また、処理液供給ユニット63では、タンクから送り出される処理液を熱交換器(図示省略)によってDIWの凝固点以下の温度に調整した後、この温調済の処理液(以下「低温処理液」という)が超音波洗浄ノズル7の導入口72を介してノズル内部に圧送される。
【0033】
このノズル内部には振動子73が配置されて低温処理液に対して超音波振動が付与される。より詳しくは、振動子73は図1に示すように吐出口71から吐出される低温処理液の吐出方向(図中の符号74)において吐出口71の反対側に配置されている。そして、制御ユニット4からの制御信号に基づき超音波発振器75からパルス信号が振動子73に出力されると、振動子73が超音波振動する。これにより低温処理液を介して基板裏面Wbに形成される低温処理液の液膜11b(図4(c)参照)に対して超音波振動が伝播して裏面Wbが超音波洗浄される。また、超音波発振器75からのパルス信号の出力を停止しながら処理液供給ユニット63を作動させると、超音波振動を付与しない状態のまま低温処理液を基板裏面Wbに供給することが可能となっている。
【0034】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図4を参照しつつ説明する。図4は基板の表面および裏面に対する洗浄処理を模式的に示す図である。同図および後で説明する図5、7および9において、低温処理液中の超音波振動が伝播しているか否かを明確にするため、超音波伝播を伴う低温処理液については、特に「超音波低温処理液」と称する一方、低温処理液を伴わない低温処理液については、単に「低温処理液」と称する。この基板処理装置では、図1に示すように、基板搬入時には、遮断部材9はスピンチャック2の上方の離間位置に退避して基板Wとの干渉を防止しており、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。また、この実施形態では、この基板搬入時、つまり次に説明する液膜形成前において、制御ユニット4は熱交換器を作動させて処理液供給ユニット63内で低温処理液を準備している。
【0035】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、制御ユニット4はスプラッシュガード52を上昇させてスピンチャック2に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲をスプラッシュガード52により包囲する。また、遮断部材9が基板表面Wfと対向する対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させる。また、ノズル97からDIWを基板表面Wfに供給する。ここでは、基板Wを所定の回転速度で回転させることで基板表面Wfに供給されたDIWを基板Wの径方向外向きに均一に広げるとともに、その一部を基板外に振り切る。これによって、基板表面Wfの全面にわたって液膜の厚みを均一にコントロールして、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(DIWからなる膜)11fが形成される(図4(a))。その結果、基板表面Wfに付着するパーティクルと基板表面Wfとの隙間がDIWで満たされるとともに、基板表面Wfに形成されたパターンPTの間隙内部にもDIWが入り込む。なお、基板Wを静止したままDIWを供給して液膜11fを形成してもよい。
【0036】
こうして、液膜形成処理が終了すると、液膜11fを有する基板Wに対して凍結処理を実行する。すなわち、制御ユニット4は遮断部材9を離間位置に配置させるとともに、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psから冷却ガス供給開始位置、つまり基板Wの回転中心位置Pcに移動させる。そして、回転駆動されている基板Wの表面Wfに向けて冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置Peに向けて移動させていく。これにより、図3に示すように基板表面Wfに形成された液膜11fが局部的に凍結して凍結膜13fが形成され、さらにノズル3の移動に応じて凍結膜13fが基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられる。そして、ノズル3のスキャン完了により、基板表面Wfに形成された液膜11fの全体が凍結し、基板表面Wfの全面に凍結膜13fが形成される。
【0037】
このようにして凍結処理が実行されると、基板表面Wfと該基板表面Wfに付着するパーティクルの間に入り込んでいる液膜11fの体積が増加し、パーティクルが微小距離だけ基板表面Wfから離れる。また図4(b)に示すように、パターンPTの間隙内部に入り込んだDIWも基板表面Wfに付着するDIWと一緒に凝固して凍結膜13fの一部となり、凍結膜13fによってパターンPTが構造的に補強された状態となる。つまり、基板W、パターンPTおよび凍結膜13fが一体となった固体と見做せる状態となる。
【0038】
液膜11fの凍結が完了すると、制御ユニット4は冷却ガス吐出ノズル3を待機位置Psに移動させる。続いて、制御ユニット4は図1に示すようにスプラッシュガード52を最も低い位置に降下させた後、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7に対して低温処理液を圧送し、吐出口71から低温処理液を基板裏面Wbに供給する。これによって基板裏面Wbに低温処理液の液膜11bが形成される。また、低温処理液の供給とともに、制御ユニット4は超音波発振器75を作動させて振動子73にパルス信号を与え、振動子73を超音波振動させる。これにより低温処理液を介して液膜11bに対して超音波振動が伝播して裏面Wbの全面が超音波洗浄される(図4(c))。この超音波洗浄中において基板Wに供給される低温処理液はDIWの凝固点(0゜C)よりも低い温度を有しているため、凍結膜13fは凍結したままであり、パターンPTが補強された状態のまま超音波洗浄処理が実行される。なお、この裏面超音波洗浄処理においては、基板Wの回転速度を、低温処理液がスピンチャック2の周囲に飛び散らない程度の回転速度に減速するのが望ましい。
【0039】
裏面Wbの超音波洗浄が完了すると、振動子73へのパルス信号の出力を停止するとともに、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7への低温処理液の圧送を停止する。この後、スプラッシュガード52を元の位置に上昇させてスピンチャック2に保持された基板Wの周囲を包囲する。また、遮断部材9を対向位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材9を回転させる。さらに、凍結膜13fが融解しないうちにノズル97およびノズル27からDIWをそれぞれ、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、Wbに供給する。これにより、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、WbへのDIWの供給が開始され、DIWによる凍結膜13fの解凍処理と表面Wfおよび裏面Wbのリンス処理が実行される。その結果、パーティクルを含む凍結膜13fが融解するとともに基板表面Wfからリンス除去されるとともに、裏面Wbに付着する処理液がリンス除去される(図4(d))。なお、この実施形態では、リンス処理を行っている間、制御ユニット4は基板Wとスピンベース23および基板Wと遮断部材9との間の空間に窒素ガスを供給して基板Wの周辺雰囲気を不活性ガス雰囲気としている。
【0040】
そして、リンス処理後、制御ユニット4はチャック回転機構22および遮断部材回転機構53のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させる。これにより、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行される。基板Wの乾燥処理後は基板Wおよび遮断部材9の回転を停止するとともに基板Wへの窒素ガスの供給を停止する。その後、処理済の基板Wが搬出される。
【0041】
以上のように、第1実施形態によれば、基板Wの表面Wfに形成された液膜11fを凍結させることによって、パターンPTの間隙内部に入り込んだDIWが基板表面Wfに付着するDIWと一緒に凝固して凍結膜13fの一部となる。そのため、凍結膜13fによってパターンPTは構造的に補強された状態となる。そして、基板裏面Wbに対して低温処理液を供給しながら基板裏面Wbに形成される低温処理液の液膜11bに対して超音波振動を付加して基板裏面Wbを超音波洗浄している。このように、凍結膜13fによりパターンPTを補強した状態で基板裏面Wbを超音波洗浄しているため、超音波洗浄によりパターンPTがダメージを受けることなく、基板裏面Wbを超音波洗浄によって良好に洗浄処理することができる。
【0042】
また、超音波洗浄に用いる処理液の温度を基板表面側の液膜11fを構成する液体(この実施形態ではDIW)の凝固点以下の温度に設定しているため、超音波洗浄中に凍結膜13fが溶けるのを効果的に防止することができる。つまり、低温処理液を用いることで超音波洗浄処理の開始から終了までの間、パターンPTを凍結膜13fにより確実に補強することができ、基板裏面Wbの超音波洗浄処理を良好に行うことができる。
【0043】
<第2実施形態>
ところで、上記第1実施形態では凍結膜13fが形成された後に低温処理液を基板裏面Wbに供給しているが、超音波振動の付加を禁止した状態で液膜形成時や液膜凍結時に低温処理液を基板裏面Wbに供給してもよく、これはスループットの向上に寄与する。この実施形態について、図5を参照しつつ説明する。
【0044】
図5はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す模式図である。この第2実施形態は図1の基板処理装置と同一構成を有しており、低温処理液の供給態様についてのみ相違している。以下、相違点を中心に第2実施形態について説明する。
【0045】
この第2実施形態では、スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、制御ユニット4は図1に示すようにスプラッシュガード52を最も低い位置に降下させる。また、遮断部材9が基板表面Wfと対向する対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル97からDIWを基板表面Wfに供給して基板表面WfにDIWの液膜11fを形成する。また、これと並行して、制御ユニット4は、振動子73へのパルス信号の出力を行わず、つまり超音波振動の発生を禁止した状態で、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7に対して低温処理液を圧送し、吐出口71から低温処理液を基板裏面Wbに供給する(図5(a))。すなわち、ノズル7から基板裏面Wbに低温処理液を供給して低温処理液の液膜11bを形成して基板Wおよび液膜11fの温度を低下させる一方、当該液膜11bへの超音波振動の付与はなされていない。
【0046】
また、同図(b)に示すように、基板裏面Wbへの低温処理液の供給は液膜形成処理後も継続され、基板Wおよび液膜11fの冷却を続けられたまま第1実施形態と同様にして凍結処理が実行される。そして、基板表面Wfの全面に凍結膜13fが形成されてパターンPTの補強が完了すると、振動子73へのパルス信号の出力が開始され、低温処理液を介して基板裏面Wbの液膜11bに超音波振動が与えられて基板裏面Wbの超音波洗浄が開始される(同図(c))。
【0047】
この超音波洗浄処理の開始以降については、第1実施形態と同様に、裏面Wbの超音波洗浄の完了を待って振動子73へのパルス信号の出力を停止するとともに、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7への低温処理液の圧送を停止する。また、スプラッシュガード52を元の位置に上昇させてスピンチャック2に保持された基板Wの周囲を包囲した後、遮断部材9を対向位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材9を回転させながら、DIWによる凍結膜13fの解凍処理と表面Wfおよび裏面Wbのリンス処理が実行される。さらに、基板Wの乾燥処理(スピンドライ)が実行された後、処理済基板Wが搬出される。
【0048】
以上のように、第2実施形態によれば、凍結膜13fによってパターンPTを構造的に補強した状態で基板裏面Wbの超音波洗浄処理を行っているため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、図5(a)および(b)に示すように、液膜凍結処理前および処理中に低温処理液を基板裏面Wbに供給して基板Wおよび液膜11fを冷却しているため、液膜11fが凍結するのに要する時間が第1実施形態に比べて短縮される。したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態に比べてスループットを向上させることができる。
【0049】
<第3実施形態>
図6はこの発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図であり、図7は図6の基板処理装置の動作を示す模式図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、低温処理液の供給態様および供給タイミングである。すなわち、第3実施形態では、液供給管25は超音波洗浄ノズル7の吐出口71と接続されている。また、この超音波洗浄ノズル7の導入口72は液体供給ユニット62および処理液供給ユニット63に接続されており、液体供給ユニット62からのDIWの供給および処理液供給ユニット63からの低温処理液の供給が選択的に実行される。したがって、DIWが導入口72を介してノズル内部に圧送されると、ノズル7の吐出口71、液供給管25およびノズル27を介してDIWがリンス液として基板裏面Wbの中央部に供給される。一方、低温処理液が導入口72を介してノズル内部に圧送されると、ノズル7の吐出口71、液供給管25およびノズル27を介して低温処理液が基板裏面Wbの中央部に供給される。また、低温処理液の供給と並行して振動子73にパルス信号が与えられると、超音波振動が低温処理液を介して基板裏面Wbに形成される低温処理液の液膜11bに与えられて基板裏面Wbの超音波洗浄が実行される。なお、その他の基本構成は第1実施形態と同一であるため、同一構成については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0050】
次に、図7を参照しつつ第3実施形態における洗浄動作について説明する。この第3実施形態においては、第1実施形態と同様にして基板搬入、液膜形成および液膜凍結が実行される(図7(a))が、液膜凍結処理中に超音波洗浄が開始される。すなわち、液膜凍結の初期段階では、同図(b)に示すように、凍結膜13fが基板表面Wfの中央部に形成される。そして、ノズル3の移動に応じて凍結膜13fが基板表面Wfの中央部から周縁部へと広げられ、液膜凍結の後期ではノズル3のスキャン完了により基板表面Wfに形成された液膜11fの全体が凍結し、基板表面Wfの全面に凍結膜13fが形成される。このように凍結膜13fが形成される範囲は時間経過とともに変化していく。そこで、第3実施形態では、制御ユニット4は液膜凍結処理中にノズル7に対して低温処理液を選択的に圧送して低温処理液を基板裏面Wbの中央部に供給するが、低温処理液の流量や基板Wの回転速度などを制御して基板裏面Wbでの低温処理液の供給領域が基板表面Wfに形成された凍結膜13fの反対側に位置する領域以内となるように制御している。したがって、同図(b)に示すように、液膜凍結の初期段階では凍結膜13fは基板表面Wfの中央部付近しか形成されないため、低温処理液の液膜11bも基板裏面Wbの中央部付近にのみ形成される。また、制御ユニット4から動作指令に応じて超音波発振器75からパルス信号が振動子73に与えられて低温処理液を介して液膜11bに超音波振動が与えられ、基板裏面Wbの中央部に対して超音波洗浄が実行される。
【0051】
また、液膜凍結処理の進行に伴って、同図(c)に示すように、制御ユニット4は凍結膜13fの形成範囲が広がるのに応じて低温処理液の流量や基板Wの回転速度などを増大させて低温処理液の液膜11bの領域を広げていく(ただし、液膜11bの範囲は上記したように凍結膜13fの反対側に位置する領域以内に制限されている)。これによって超音波洗浄される基板裏面範囲が中央部から周縁部に広がっていき、基板表面Wf全体に凍結膜13fが形成されるのに応じて基板裏面Wb全体が超音波洗浄される。なお、この第3実施形態では裏面中央部の下方に配置されたノズル27から超音波低温処理液を基板裏面Wbの中央部に供給するため、スピンチャック2に保持された基板Wの周囲をスプラッシュガード52により包囲した状態のまま基板裏面Wbに対する超音波洗浄を行うことができる。
【0052】
こうして裏面Wbの超音波洗浄が完了すると、振動子73へのパルス信号の出力を停止するとともに、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7への低温処理液の圧送を停止する。この後、スプラッシュガード52を元の位置に上昇させてスピンチャック2に保持された基板Wの周囲を包囲する。また、遮断部材9を対向位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材9を回転させる。さらに、ノズル7にDIWが供給されるように切り替え、凍結膜13fが融解しないうちにノズル97およびノズル27からDIWをそれぞれ、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、Wbに供給する。これにより、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、WbへのDIWの供給が開始され、DIWによる凍結膜13fの解凍処理と表面Wfおよび裏面Wbのリンス処理が実行される。その結果、パーティクルを含む凍結膜13fが融解するとともに基板表面Wfからリンス除去されるとともに、裏面Wbに付着する処理液がリンス除去される(同図(d))。
【0053】
それに続いて、制御ユニット4はチャック回転機構22および遮断部材回転機構53のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させて基板Wの乾燥処理(スピンドライ)を実行した後、処理済の基板Wが搬出される。
【0054】
以上のように、第3実施形態によれば、液膜凍結中に超音波洗浄処理を介しているため、第1実施形態に比べてスループットを向上させることができる。また、低温処理液の流量や基板Wの回転速度などが制御されることで、基板裏面Wbでの低温処理液の供給領域が基板表面Wfに形成された凍結膜13fの反対側に位置する領域以内となっているため、超音波洗浄される領域(液膜11bの形成範囲)の反対側には常に凍結膜13fが存在してパターンPTが構造的に補強されている。したがって、超音波洗浄によりパターンPTにダメージが与えられるのを確実に防止することができる。
【0055】
また、第3実施形態では、第1および第2実施形態と異なり、洗浄処理中、スピンチャック2に保持された基板Wの周囲をスプラッシュガード52により常に包囲しているため、超音波洗浄中に低温処理液が装置周辺に飛散するのを確実に防止することができる。
【0056】
<第4実施形態>
図8はこの発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図であり、図9は図8の基板処理装置の動作を示す模式図である。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は超音波振動を基板表面側から与えている点である。すなわち、第4実施形態では、液供給管25は液体供給ユニット62のみならず処理液供給ユニット63にも接続されており、液体供給ユニット62からのDIWの供給および処理液供給ユニット63からの低温処理液の供給が選択的に実行される。また、超音波洗浄ノズル7がスピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて超音波低温処理液を吐出可能に設けられている。また、このノズル7を駆動するためにノズル駆動機構81が設けられている。このノズル駆動機構81では、回転モータ82がスピンチャック2の周方向外側に設けられている。この回転モータ82の回転軸83にはアーム84が水平方向に延びるように接続され、さらに当該アーム84の先端に上記超音波洗浄ノズル7が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて回転モータ82が駆動されると、アーム84が回転軸83回りに揺動し、冷却ガス吐出ノズル3と同様に移動する。なお、その他の基本構成は第1実施形態と同一であるため、同一構成については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0057】
次に、図9を参照しつつ第4実施形態における洗浄動作について説明する。この第4実施形態においては、第1実施形態と同様にして基板搬入、液膜形成および液膜凍結が実行される(図7(a)、(b))。そして、同図(c)に示すように、液膜凍結処理が完了すると、制御ユニット4は液供給管25に対して低温処理液を選択的に圧送して低温処理液をノズル27から基板裏面Wbの中央部に供給し、基板裏面全体に行き渡らせて低温処理液の液膜11bを形成する。一方、基板表面Wf側では、ノズル7から低温処理液が基板表面Wfに供給されるとともに、制御ユニット4から動作指令に応じて超音波発振器75からパルス信号が振動子73に与えられて低温処理液、凍結膜13fおよび基板Wを介して液膜11bに超音波振動が与えられ、基板裏面Wbに対して超音波洗浄が実行される。なお、この第4実施形態では基板表面Wf側より超音波低温処理液を供給するため、第3実施形態と同様に、スピンチャック2に保持された基板Wの周囲をスプラッシュガード52により包囲した状態のまま基板裏面Wbに対する超音波洗浄を行うことができる。このように、第4実施形態では、ノズル27が本発明の「第1ノズル」に相当し、当該ノズル27から供給される低温処理液が本発明の「第1処理液」に相当する一方、ノズル7が本発明の「第2ノズル」に相当し、当該ノズル7から供給される超音波低温処理液が本発明の「第2処理液」に相当している。
【0058】
こうして裏面Wbの超音波洗浄が完了すると、振動子73へのパルス信号の出力を停止するとともに、処理液供給ユニット63から超音波洗浄ノズル7への低温処理液の圧送を停止する。この後、遮断部材9を対向位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材9を回転させる。さらに、ノズル7にDIWが供給されるように切り替え、凍結膜13fが融解しないうちにノズル97およびノズル27からDIWをそれぞれ、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、Wbに供給する。これにより、回転駆動されている基板Wの表裏面Wf、WbへのDIWの供給が開始され、DIWによる凍結膜13fの解凍処理と表面Wfおよび裏面Wbのリンス処理が実行される。その結果、パーティクルを含む凍結膜13fが融解するとともに基板表面Wfからリンス除去されるとともに、裏面Wbに付着する処理液がリンス除去される(同図(d))。
【0059】
それに続いて、制御ユニット4はチャック回転機構22および遮断部材回転機構53のモータの回転速度を高めて基板Wおよび遮断部材9を高速回転させて基板Wの乾燥処理(スピンドライ)を実行した後、処理済の基板Wが搬出される。
【0060】
以上のように、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様に、凍結膜13fによってパターンPTを構造的に補強した状態で基板裏面Wbの超音波洗浄処理を行っているため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第4実施形態では、第1実施形態と異なり、洗浄処理中、スピンチャック2に保持された基板Wの周囲をスプラッシュガード52により常に包囲しているため、超音波洗浄中に低温処理液が装置周辺に飛散するのを確実に防止することができる。
【0061】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、本発明の液膜を形成する液体としてDIWを用いているが、これに限られず、例えば純水、炭酸水、水素水、脱気水、溶存酸素や溶存窒素などの溶存気体成分を調整した純水、SC1溶液(アンモニア水と過酸化水素水との混合水溶液)等の薬液などを用いてもよい。
【0062】
上記実施形態では、液膜を構成する液体(実施形態ではDIW)に当該液体と固溶体を形成しない溶質(実施形態ではIPA)を溶かして凝固点を液体よりも低くしているが、処理液を構成する液体成分は任意であり、上記液体の凝固点以下の温度を有する液体成分であればよく、例えばSC1などの薬液や純水、炭酸水、水素水、脱気水、溶存酸素や溶存窒素などの溶存気体成分を調整した純水などを用いることができる。また、上記した凝固点降下以外の現象を利用してもよく、例えば液膜11fを構成する液体(実施形態ではDIW)と同一の過冷状態の液体を処理液として使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの基板において、一方主面に形成されたパターンにダメージを与えることなく、他方主面を超音波洗浄する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】冷却ガス吐出ノズルの動きを示す図である。
【図4】基板の表面および裏面に対する洗浄処理を模式的に示す図である。
【図5】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す模式図である。
【図6】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図7】図6の基板処理装置の動作を示す模式図である。
【図8】この発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図である。
【図9】図8の基板処理装置の動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
3…冷却ガス吐出ノズル(冷却ガス吐出手段)
7…超音波洗浄ノズル
11b,11f…液膜
13f…凍結膜
22…チャック回転機構
27…ノズル
31…回転モータ(相対移動機構)
73…振動子
W…基板
Wf…基板表面(一方主面)
Wb…基板裏面(他方主面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面のうち一方主面にパターンが形成された、基板の他方主面を洗浄する基板処理方法において、
前記一方主面に液膜を形成する液膜形成工程と、
前記一方主面の前記液膜を凍結させる凍結工程と、
前記凍結工程により形成された凍結膜が前記一方主面に存在する状態で前記他方主面を超音波洗浄する超音波洗浄工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記超音波洗浄工程は、前記凍結工程により前記一方主面の全面に凍結膜が形成された後に実行される請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記超音波洗浄工程は前記凍結工程の実行中に開始され、前記他方主面のうち前記凍結工程により前記一方主面に形成された凍結膜の反対側に位置する領域から超音波洗浄を開始する工程である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記超音波洗浄工程は、前記液膜を構成する液体の凝固点以下の温度を有する処理液を前記他方主面に供給して超音波洗浄する工程である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記超音波洗浄工程は前記処理液を介して前記他方主面に形成される前記処理液の液膜に対して超音波振動を伝播させて超音波洗浄する工程である請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記超音波洗浄工程は前記一方主面側から前記基板を介して前記他方主面および前記他方主面に形成される前記処理液の液膜に対して超音波振動を伝播させて超音波洗浄する工程である請求項4記載の基板処理方法。
【請求項7】
両主面のうち一方主面にパターンが形成された、基板の他方主面を洗浄する基板処理装置において、
前記基板の一方主面に形成される液膜を凍結させる凍結手段と、
前記凍結手段により形成された凍結膜が前記一方主面に存在する状態で前記他方主面を超音波洗浄する超音波洗浄手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記超音波洗浄手段は、
前記液膜を構成する液体の凝固点以下の温度を有する処理液を前記他方主面に供給するノズルと、
前記ノズルから前記他方主面に向けて吐出される前記処理液に超音波振動を付与することで前記他方主面に形成される前記処理液の液膜に対して超音波振動を伝播させて超音波洗浄する振動子と
を有する請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ノズルから供給された前記処理液により前記他方主面に形成される液膜の範囲を制御する制御手段をさらに備え、
前記超音波洗浄手段は前記凍結手段による液膜凍結中に前記ノズルからの前記処理液の供給を開始するとともに、
前記制御手段は前記他方主面での前記処理液の液膜範囲を前記凍結手段により前記一方主面に形成される凍結膜の範囲以内に制御する請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記超音波洗浄手段は、
前記液膜を構成する液体の凝固点以下の温度を有する第1処理液を前記他方主面に供給する第1ノズルと、
前記液膜を構成する液体の凝固点以下の温度を有する第2処理液を前記一方主面に供給する第2ノズルと、
前記第2ノズルから前記一方主面に向けて吐出される前記第2処理液に超音波振動を付与することで前記基板を介して前記他方主面に形成される前記第1処理液の液膜に対して超音波振動を伝播させて超音波洗浄する振動子と
を有する請求項7記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記凍結手段は、
前記一方主面に形成される前記液膜を構成する液体の凝固点より低い温度を有する冷却ガスを前記一方主面に向けて局部的に吐出する冷却ガス吐出部と、
前記冷却ガス吐出部を前記一方主面に沿って前記基板に対して相対移動させる相対移動機構とを備え、
前記冷却ガス吐出部から冷却ガスを吐出させながら前記相対移動機構により前記冷却ガス吐出部を前記基板に対して相対移動させて前記一方主面に形成された液膜を凍結させる請求項7ないし10のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−27816(P2010−27816A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186636(P2008−186636)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】