説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板の表面からリンス液を良好に除去することができる、基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハWの表面に純水が供給され、ウエハWの表面に対するリンス処理(ウエハWの表面を純水で洗い流す処理)が行われた後、純水よりも表面張力の低いIPA液がウエハWの表面に供給される。また、IPA液の供給と並行して、ウエハWの表面と反対側の裏面に温水が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対するリンス処理および乾燥処理のための基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、たとえば、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
たとえば、半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)の表面に対して処理液を用いた処理が行われる。この処理液を用いた処理の後には、ウエハの表面に付着している処理液を純水で洗い流すリンス処理が行われる。そして、リンス処理後には、ウエハの表面を乾燥させる乾燥処理が行われる。乾燥処理では、リンス処理後のウエハが高速回転されることにより、ウエハに付着している純水が振り切られて除去(乾燥)される。
【0003】
ところが、このような乾燥処理の手法では、ウエハの表面に形成されている微細なトレンチや微細なパターン間に入り込んだ純水が振り切られず、そのトレンチやパターン間の底部に純水が残るおそれがある。
そのため、純水によるリンス処理が行われた後のウエハの表面に常温(約25℃)のIPA(イソプロピルアルコール)液を供給して、ウエハの表面のトレンチやパターン間に入り込んだ純水をIPA液と置換して、ウエハの表面を乾燥させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−38595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、常温のIPA液は、微細なトレンチや微細なパターン間に入り込んだ純水と混ざりにくいため、従来の手法では、それらのトレンチやパターン間の底部に純水が残ることがあった。たとえば、パターン間の底部に純水が残ったままにされると、純水が蒸発する際に、純水が有する表面張力によって、パターンの倒壊を生じるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、基板の表面からリンス液を良好に除去することができる、基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、リンス液が付着した基板の表面に前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、前記低表面張力液体供給工程と並行して、前記基板の前記表面と反対側の裏面に温度が調節された温調液を供給する温調液供給工程とを含む、基板処理方法である。
この方法によれば、基板の表面にリンス液が供給され、基板の表面に対するリンス処理(基板の表面をリンス液で洗い流す処理)が行われた後、リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体が基板の表面に供給される。また、低表面張力液体の供給と並行して、基板の表面と反対側の裏面に温調液が供給される。
【0007】
基板の裏面への温調液の供給により、基板を加温することができ、基板を介して、基板の表面に供給された低表面張力液体を加温することができる。これにより、基板の表面上での低表面張力液体の温度を常温以上に上昇させることができ、基板の表面上のリンス液と低表面張力液体との置換効率を向上させることができる。その結果、基板の表面からリンス液を良好に除去することができる。
【0008】
低表面張力液体の温度を上昇させる手法として、低表面張力液体を基板の表面への供給前にヒータなどにより加熱することが考えられる。しかしながら、加熱された低表面張力液体を基板に供給するためには、低表面張力液体を供給するための配管および/またはノズルなどに加熱機構を設ける必要が生じる。その結果、基板処理装置の構成が複雑になり、基板処理装置のコストの上昇を招く。また、ノズルに加熱機構が設けられていない場合、基板への低表面張力液体の供給が開始される時点で、ノズルに温度の低下した低表面張力液体が溜まっていると、その温度の低下した低表面張力液体が基板に供給されてしまう。温度の低下した低表面張力液体は、基板の表面上のリンス液との置換効率が良くないので、基板の表面からリンス液を除去するために、結果として、低表面張力液体の供給量の増大によるコストの上昇や、処理時間が長くなることによる装置のスループットの低下を引き起こす。これに対して、基板を介して低表面張力液体を加温する手法では、低表面張力液体の供給系の加熱機構が不要であるので、基板処理装置の構成の複雑化およびコストの上昇を招くおそれがない。
【0009】
請求項2に記載のように、前記温調液は、温度が調節された温水であることが好ましい。
温調液が温水であれば、基板の表面に温水を供給するための供給系に腐食対策などを施す必要がない。そのため、より簡素な構成で、基板の表面からリンス液を良好に除去することができる。
【0010】
請求項3に記載のように、前記低表面張力液体供給工程は、前記温調液供給工程の終了よりも後に終了されることが好ましい。
基板の裏面上に温調液が存在している状態で、基板の表面上から低表面張力液体がなくなると、基板の裏面上の温調液が基板の周端面を伝って表面の周縁部に回り込むおそれがある。温調液の供給終了後にも、基板の表面への低表面張力液体の供給が続けられることにより、温調液が基板の表面の周縁部に回り込むことを防止することができる。その結果、基板の表面の周縁部における温調液の蒸発に伴うパターン倒壊や温調液の乾燥跡の発生などを防止することができる。
【0011】
請求項4に記載のように、前記温調液供給工程は、前記低表面張力液体供給工程の開始と同時に開始されてもよい。
この場合、基板の裏面に温調液が供給されている時間(温調液供給工程の時間)を基板の表面に低表面張力液体が供給されている時間(低表面張力液体供給工程の時間)以下にすることができる。その結果、処理全体に要する時間を短縮することができる。
【0012】
また、請求項5に記載のように、前記温調液供給工程は、前記低表面張力液体供給工程の開始に先立って開始されてもよい。
この場合、基板の表面への低表面張力液体の供給開始に先立ち、基板を加温しておくことができる。これにより、低表面張力液体の供給開始直後から、基板の表面上において、低表面張力液体を加温することができ、低表面張力液体とリンス液との良好な置換を達成することができる。
【0013】
前記基板処理方法は、請求項6に記載のように、前記基板の前記表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断板を前記基板の前記表面に対して間隔を空けて対向配置させつつ、前記基板の前記表面と前記遮断板との間に気体を供給する気体供給工程を含むことが好ましい。
遮断板が基板の表面に対して間隔を空けて対向配置された状態で、基板の表面と遮断板との間に気体が供給されることにより、その供給される気体が基板の表面と遮断板との間に充満する。基板の表面と遮断板との間を所定の気体で充満させることによって、基板の表面に不純物が付着したり、基板の表面に形成されている金属膜などが酸化されたりするのを防止することができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板の表面にリンス液を供給するリンス液供給手段と、前記基板の前記表面に前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給手段と、前記基板の表面と反対側の裏面に温度が調節された温調液を供給する温調液供給手段と、前記リンス液供給手段、前記低表面張力液体供給手段および前記温調液供給手段を制御して、前記基板の前記裏面に前記温調液を供給させつつ、リンス液が付着した前記基板の前記表面に前記低表面張力液体を供給させるための制御手段とを含む、基板処理装置である。
【0015】
この構成により、請求項1に記載の基板処理方法を実施することができる。その結果、請求項1に関連して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
また、請求項8に記載の発明は、前記基板保持手段に保持された前記基板の前記表面に対して間隔を空けて対向配置され、前記基板の前記表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断板と、前記基板の前記表面と前記遮断板との間に気体を供給するための気体供給手段とを含む、請求項7に記載の基板処理装置である。
この構成により、請求項6に記載の基板処理方法を実施することができる。その結果、請求項6に関連して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の図解的な側面図である。
【図2】基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】基板処理装置におけるリンス処理および乾燥処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の図解的な側面図である。
基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、ウエハWをほぼ水平に保持するスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面にリンス液の一例としての純水を供給するためのノズル3と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に薬液を供給するための薬液ノズル33と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面付近の雰囲気をその周囲から遮断するための遮断板4とを備えている。
【0018】
スピンチャック2は、ほぼ鉛直に延びるスピン軸5の上端に、円板状のスピンベース6がほぼ水平に取り付けられた構成を有している。スピンベース6の上面には、複数個の挟持部材7がスピン軸5の中心軸線を中心とする円周にほぼ等間隔で配置されている。複数個の挟持部材7は、ウエハWの端面を互いに異なる複数の位置で挟持することにより、そのウエハWをほぼ水平な姿勢で保持することができる。
【0019】
スピン軸5には、モータ8が結合されている。モータ8が発生する回転力により、スピン軸5をその中心軸線まわりに回転させることができる。そして、複数の挟持部材7によってウエハWを保持した状態で、スピン軸5を回転させることにより、ウエハWをスピンベース6とともに回転させることができる。
また、スピン軸5は、中空に形成されている。スピン軸5の内部には、温調液流通管9が挿通されている。温調液流通管9には、温水供給管32が接続されている。この温水供給管32を通して、温調液の一例としての約80℃の温水が温調液流通管9に供給されるようになっている。温水供給管32の途中部には、温水バルブ10が介装されている。また、温調液流通管9は、スピンチャック2(複数個の挟持部材7)に保持されたウエハWの裏面(下面)中央に近接する位置まで延びていて、その先端には、温調液流通管9に供給される温水を吐出する裏面ノズル11が設けられている。裏面ノズル11から吐出される温水は、たとえば、スピンチャック2に保持されたウエハWの裏面中央に対してほぼ垂直に入射する。
【0020】
なお、温水は、基板処理装置1と別置された温水生成キャビネットにおいて、純水を加熱することにより生成され、この温水生成キャビネットから温水供給管32に供給されてもよいし、基板処理装置1が設置される工場に温水が流通する温水ラインが設けられている場合には、その温水ラインから温水供給管32に供給されてもよい。
ノズル3は、スピンチャック2の上方に設けられたアーム12の先端に取り付けられている。アーム12は、スピンチャック2の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸13に支持されており、このアーム支持軸13からほぼ水平に延びている。アーム支持軸13には、アーム駆動機構14が結合されている。アーム駆動機構14からアーム支持軸13に駆動力を入力して、アーム支持軸13を所定角度範囲内で回動させることにより、アーム12を所定角度範囲内で揺動させることができるようになっている。
【0021】
ノズル3には、純水供給管15が接続されている。純水供給管15の途中部には、純水バルブ16が介装されている。純水バルブ16が開かれると、純水供給管15からノズル3に純水が供給される。
薬液ノズル33は、スピンチャック2の上方で、吐出口をウエハWの回転中心に向けて配置されている。薬液ノズル33には、薬液供給管34が接続されている。薬液供給管34の途中部には、薬液バルブ35が介装されている。薬液バルブ35が開かれると、薬液供給管34から薬液ノズル33に薬液が供給される。
【0022】
遮断板4は、ウエハWとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成され、スピンチャック2の上方でほぼ水平に配置されている。遮断板4の上面には、スピンチャック2のスピン軸5と共通の鉛直軸線を中心とする回転軸17が固定されている。回転軸17は、中空に形成されている。回転軸17の内部には、低表面張力液体流通管18が挿通されている。
【0023】
低表面張力液体流通管18には、IPA供給管19が接続されている。このIPA供給管19を通して、低表面張力液体の一例としての常温(約25℃)のIPA(イソプロピルアルコール)液が低表面張力液体流通管18に供給されるようになっている。IPA供給管19の途中部には、IPAバルブ20が介装されている。また、低表面張力液体流通管18は、遮断板4の下面にまで延びており、その先端は、IPA液を吐出するためのIPAノズル21を形成している。
【0024】
また、回転軸17の内壁面と低表面張力液体流通管18との間は、窒素ガスが流通する窒素ガス流通路22を形成している。窒素ガス流通路22には、窒素ガス供給管23が接続されている。この窒素ガス供給管23を通して、図示しない供給源からの窒素ガスが窒素ガス流通路22に供給されるようになっている。窒素ガス供給管23の途中部には、窒素ガスバルブ24が介装されている。窒素ガス流通路22は、遮断板4の下面において、IPAノズル21の周囲で環状に開口して、窒素ガスを吐出するための窒素ガス吐出口25を形成している。
【0025】
回転軸17は、ほぼ水平に延びたアーム26の先端付近から垂下した状態に取り付けられている。そして、このアーム26には、遮断板4をスピンチャック2の上方に大きく離間した位置(図1に実線で示す位置)とスピンチャック2に保持されたウエハWの表面に微小な間隔を隔てて近接する位置(図1)に破線で示す位置)との間で昇降させるための遮断板昇降駆動機構27が結合されている。さらに、アーム26に関連して、遮断板4をスピンチャック2によるウエハWの回転にほぼ同期させて回転させるための遮断板回転駆動機構28が設けられている。
【0026】
また、スピンチャック2は、有底円筒容器状のカップ29に収容されている。カップ29の底部には、廃液ライン30が接続されている。この廃液ライン30を介して、カップ29の底部に集められた液体(純水、温水およびIPA液)を廃棄することができる。
図2は、基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御部31を備えている。マイクロコンピュータには、CPU、RAMおよびROMなどが含まれる。
【0027】
制御部31は、予め定められたプログラムに従って、モータ8、アーム駆動機構14、遮断板昇降駆動機構27および遮断板回転駆動機構28の駆動を制御し、IPAバルブ20、窒素ガスバルブ24、純水バルブ16、薬液バルブ35および温水バルブ10の開閉を制御する。
図3は、基板処理装置における処理を説明するためのタイミングチャートである。
【0028】
まず、図示しない搬送ハンドにより、基板処理装置1内に未処理のウエハWが搬入され、スピンチャック2に受け渡される。このとき、遮断板3は、ウエハWの搬入の妨げにならないように、スピンチャック2の上方に大きく離間した位置に退避されている。また、ノズル3(アーム12)は、ウエハWの搬入の妨げにならないように、スピンチャック2の上方から退避されている。
【0029】
スピンチャック2にウエハWが保持されると、モータ8が駆動されて、ウエハWの回転が開始される。ウエハWの回転速度は、たとえば、1000rpmである。
そして、薬液バルブ35が開かれて、薬液ノズル33から回転中のウエハWの表面の中央に向けて、薬液が供給される。薬液としては、たとえば、ふっ酸が供給される。ウエハWの表面中央に供給された薬液は、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの周縁部に拡がり、ウエハWの表面の全域に供給される。その結果、ウエハWの表面全域が薬液により処理(ふっ酸により洗浄)される(薬液処理)。ウエハWの表面に薬液が所定時間にわたって供給されると、薬液バルブ35が閉じられて、薬液処理が終了する。次に、アーム駆動機構14の駆動が制御されて、ノズル3がスピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置される。
【0030】
そして、純水バルブ16が開かれて、スピンチャック2によりウエハWが回転されつつ、そのウエハWの表面にノズル3から純水が供給される。また、純水の供給時には、アーム12が所定の角度範囲内で揺動される。これにより、ウエハWの表面における純水の着液位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動する。その結果、純水がウエハWの表面の全域にむらなく供給され、ウエハWの表面に付着している薬液が純水で洗い流される(リンス処理)。
【0031】
ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWから飛散した純水は、カップ29の底部に集められ、廃液ライン30を介して廃棄される。
なお、純水の供給時に、ノズル3がウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に移動せずに、ノズル3がウエハWの上方に固定された状態でウエハWに純水を供給してもよい。
【0032】
純水バルブ16が開かれてから予め定める時間が経過すると、純水バルブ16が閉じられる(時刻T1)。そして、アーム駆動機構14の駆動が制御されて、ノズル3(アーム12)がスピンチャック2の上方から退避される。
次いで、ウエハWを乾燥させるための乾燥処理が行われる。まず、遮断板昇降駆動機構27の駆動が制御されて、遮断板4がウエハWの表面に近接する位置に下降される(時刻T2)。そして、遮断板回転駆動機構28の駆動が制御されて、遮断板4がウエハWと同方向に同じ回転速度で回転される。その一方で、窒素ガスバルブ24が開かれて、窒素ガス吐出口25からウエハW(の表面)と遮断板4との間に窒素ガスが供給される(時刻T2)。また、IPAバルブ20が開かれて、IPAノズル21からウエハWの表面にIPA液が供給される(時刻T2)。また、温水バルブ10が開かれて、裏面ノズル11からウエハWの裏面に温水が供給される(時刻T2)。
【0033】
ウエハWの裏面への温水の供給により、ウエハWが加温される。この加温されたウエハWの表面にIPA液が供給されることにより、IPA液は、ウエハWを介して加温される。これにより、ウエハWの表面上でのIPA液の温度がIPAの沸点(約82.5℃)程度まで上昇し、ウエハWの表面上の純水がIPA液と良好に置換される。
また、ウエハWの表面にIPA液が供給されている間、ウエハWは、予め定める回転速度(たとえば、1000rpm)で回転されている。これにより、IPA液がウエハWの表面の全域にむらなく行き渡り、ウエハWの表面の全域において、純水とIPA液との良好な置換が達成される。
【0034】
温水バルブ10が開かれてから予め定める時間が経過すると、温水バルブ10が閉じられる(時刻T3)。温水バルブ10が閉じられた後も、ウエハWの表面へのIPA液の供給は継続されている。そのため、ウエハWの裏面への温水の供給停止後に、ウエハWの裏面に残留する温水が周端面を伝って表面の周縁部に回り込むことを防止することができる。その結果、基板の表面の周縁部における温水の蒸発に伴うパターン倒壊や温水の乾燥跡の発生などを防止することができる。
【0035】
温水バルブ10が閉じられてから予め定める時間が経過すると、IPAバルブ20が閉じられる(T4)。そして、モータ8の駆動が制御されて、ウエハWの回転速度が予め定める回転速度(たとえば、3000rpm)に上げられる。これにより、ウエハWの表面に付着しているIPA液およびウエハWの裏面に付着している温水が遠心力により振り切られて除去される。ウエハWから除去されたIPA液および温水は、カップ29の底部に集められ、廃液ライン30を介して廃棄される。
【0036】
IPAの供給停止から予め定める時間が経過すると、窒素ガスバルブ24が閉じられる(時刻T5)。また、モータ8の駆動が停止されて、ウエハWの回転が停止される(時刻T5)。さらに、遮断板昇降駆動機構27の駆動が制御されて、遮断板4がウエハWの表面に近接する位置からスピンチャック2の上方に大きく離間した位置に上昇される(時刻T5)。これにより、ウエハWに対するリンス処理および乾燥処理が終了する。そして、ウエハWは、図示しない搬送ハンドによって、基板処理装置1から搬出される。
【0037】
以上のように、ウエハWの表面に純水が供給され、ウエハWの表面に対するリンス処理(ウエハWの表面を純水で洗い流す処理)が行われた後、純水よりも表面張力の低いIPA液がウエハWの表面に供給される。また、IPA液の供給と並行して、ウエハWの表面と反対側の裏面に温水が供給される。
ウエハWの裏面への温水の供給により、ウエハWを加温することができ、ウエハWを介して、ウエハWの表面に供給されたIPA液を加温することができる。これにより、ウエハWの表面上でのIPA液の温度を常温以上に上昇させることができ、ウエハWの表面上の純水とIPA液との置換効率を向上させることができる。その結果、ウエハWの表面から純水を良好に除去することができる。
【0038】
また、ウエハWを介してIPA液を加温するため、IPA液をウエハWの表面への供給前に加熱する構成と異なり、IPA液の供給系に加熱機構を設ける必要がない。よって、基板処理装置1の構成の複雑化およびコストの上昇を招くおそれがない。
また、温調液として温水を用いているので、ウエハWの表面に温水を供給するための供給系に腐食対策などを施す必要がない。そのため、より簡素な構成で、ウエハWの表面から純水を良好に除去することができる。
【0039】
また、ウエハWへの温水の供給終了後に、ウエハWの表面へのIPA液の供給が続けられることにより、温水供給停止後にウエハWの裏面に残留する温水がウエハWの表面の周縁部に回り込むことを防止することができる。その結果、ウエハWの表面の周縁部における温水の蒸発に伴うパターン倒壊や温水の乾燥跡の発生などを防止することができる。
また、ウエハWの裏面への温水の供給は、ウエハWの表面へのIPA液の供給開始と同時に開始される。そのため、ウエハWの裏面に温水が供給されている時間をウエハWの表面にIPA液が供給されている時間以下にすることができる。その結果、処理全体に要する時間を短縮することができる。
【0040】
また、遮断板4がウエハWの表面に対して間隔を空けて対向配置された状態で、ウエハWの表面と遮断板4との間に窒素ガスが供給されることにより、その窒素ガスがウエハWの表面と遮断板4との間に充満する。ウエハWの表面と遮断板4との間を窒素ガスで充満させることによって、ウエハWの表面に不純物が付着したり、ウエハWの表面に形成されている金属膜などが酸化されたりするのを防止することができる。
【0041】
なお、前述の実施形態では、温水の供給開始とIPAの供給開始とは、同じタイミング(時刻T2)で行われたが、純水の供給停止(時刻T1)後、IPAの供給開始(時刻T2)に先立って、温水の供給が開始(図3に破線で示す時刻T6)されてもよい。この場合、ウエハWの表面へのIPA液の供給開始(時刻T2)に先立ち、ウエハWを加温しておくことができる。これにより、IPA液の供給開始直後から、ウエハWの表面上において、IPA液を加温することができ、IPA液と純水との良好な置換を達成することができる。
【0042】
また、ウエハWの表面と遮断板4との間に窒素ガスが供給されるとしたが、ウエハWの表面と遮断板4との間に、窒素ガスに代えて、IPAベーパ(IPA蒸気)またはドライエア(水分が除去された空気)が供給されてもよい。
また、IPA液は、ウエハWの表面への供給前に、常温以上沸点以下に加温されていてもよい。IPA液が加温されていることで、温水との温度差が小さくなり、温水によるウエハWおよびIPA液の加温効率を向上させることができる。
【0043】
また、窒素ガスは、ウエハWの表面と遮断板4との間への供給前に、適当な温度に加温されていてもよい。これにより、IPA液の温度が、窒素ガスによって下げられることを防止することができる。
なお、上記の実施形態において、低表面張力液体の一例として、IPA液を例示したが、低表面張力液体としては、IPA、HFE(ハイドロフロロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を用いることができる。また、低表面張力液体としては、単体成分のみからなる場合だけでなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPA液と純水の混合液であってもよいし、IPA液とHFEの混合液であってもよい。
【0044】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板保持手段)
4 遮断板
9 温調液流通管(温調液供給手段)
10 温水バルブ(温調液供給手段)
15 供給管(リンス液供給手段)
16 純水バルブ(リンス液供給手段)
18 低表面張力液体流通管(低表面張力液体供給手段)
19 IPA供給管(低表面張力液体供給手段)
20 IPAバルブ(低表面張力液体供給手段)
21 IPAノズル(低表面張力液体供給手段)
22 窒素ガス流通路(気体供給手段)
23 窒素ガス供給管(気体供給手段)
24 窒素ガスバルブ(気体供給手段)
25 窒素ガス吐出口(気体供給手段)
31 制御部
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンス液が付着した基板の表面に前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、
前記低表面張力液体供給工程と並行して、前記基板の前記表面と反対側の裏面に温度が調節された温調液を供給する温調液供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記温調液は、温度が調節された温水である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記低表面張力液体供給工程は、前記温調液供給工程の終了よりも後に終了される、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記温調液供給工程は、前記低表面張力液体供給工程の開始と同時に開始される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記温調液供給工程は、前記低表面張力液体供給工程に先立って開始される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板の前記表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断板を前記基板の前記表面に対して間隔を空けて対向配置させつつ、前記基板の前記表面と前記遮断板との間に気体を供給する気体供給工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の表面にリンス液を供給するリンス液供給手段と、
前記基板の前記表面に前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給手段と、
前記基板の表面と反対側の裏面に温度が調節された温調液を供給する温調液供給手段と、
前記リンス液供給手段、前記低表面張力液体供給手段および前記温調液供給手段を制御して、前記基板の前記裏面に前記温調液を供給させつつ、リンス液が付着した前記基板の前記表面に前記低表面張力液体を供給させるための制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持手段に保持された前記基板の前記表面に対して間隔を空けて対向配置され、前記基板の前記表面上の空間をその周囲から遮断するための遮断板と、
前記基板の前記表面と前記遮断板との間に気体を供給するための気体供給手段とを含む、請求項7に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−156561(P2012−156561A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115813(P2012−115813)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2008−53815(P2008−53815)の分割
【原出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】