基板処理装置および基板処理方法
【課題】薬液の消費量を最小限に抑えつつ基板の表面周縁部および裏面から不要物を良好にエッチング除去することができる基板処理装置および方法を提供する。
【解決手段】スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを略水平姿勢で支持する。基板Wの上方に対向部材5が対向位置に配置された状態で、複数のガス吐出口502およびガス供給路57から基板表面Wfと対向部材5の下面501との間の空間SPに窒素ガスが供給され、基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧される。第1ノズル3を供給位置P31に位置決めして第1ノズル3から塩酸を回転する基板Wの表面周縁部TRに供給するとともに、第2ノズル4を供給位置P41に位置決めして第2ノズル4から硝酸を基板Wの表面周縁部TRに供給することにより、基板表面Wfで塩酸と硝酸が反応してエッチング液が生成される。
【解決手段】スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを略水平姿勢で支持する。基板Wの上方に対向部材5が対向位置に配置された状態で、複数のガス吐出口502およびガス供給路57から基板表面Wfと対向部材5の下面501との間の空間SPに窒素ガスが供給され、基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧される。第1ノズル3を供給位置P31に位置決めして第1ノズル3から塩酸を回転する基板Wの表面周縁部TRに供給するとともに、第2ノズル4を供給位置P41に位置決めして第2ノズル4から硝酸を基板Wの表面周縁部TRに供給することにより、基板表面Wfで塩酸と硝酸が反応してエッチング液が生成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板に薬液やリンス液などの処理液を供給して基板に所定の処理を行う基板処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に対して一連の処理を施す製造プロセスにおいては、基板の表面に各種薄膜を形成するために成膜工程が実行される。この成膜工程では基板の裏面あるいは基板表面の周縁部にも成膜されることがある。しかしながら、一般的には基板において成膜が必要なのは基板表面の中央部の回路形成領域のみであり、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に成膜されてしまうと、次のような問題が起こることがある。すなわち、成膜工程の後工程において、基板表面の周縁部に形成された薄膜が他の装置との接触により剥がれたりすることがある。そして、剥がれた薄膜が基板表面の中央部の回路形成領域や基板処理装置に付着することが原因となって製造品の歩留まりの低下や基板処理装置自体のトラブルを引き起こすことがある。
【0003】
そこで、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に形成された薄膜を除去するために、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に薬液を供給して不要な薄膜をエッチング除去する処理が従来から行われている。
【0004】
ところで、最近の半導体装置の製造プロセスにおいては、白金(Pt)が成膜材料として用いられているが、白金(Pt)は従来エッチング液として用いられていた薬液に溶けにくく、エッチング液として王水(塩酸と硝酸の混合液)が用いられる。以下、王水による白金(Pt)のエッチング除去処理について説明する。
【0005】
王水は、市販の硝酸原液(硝酸濃度60%の水溶液)と、市販の塩酸原液(塩酸濃度35%の水溶液)を1:3の体積比にて混合することにより生成され、王水中では下記に示す反応が起こっている。
HNO3+3HCl→NOCl+Cl2+2H2O (式1)
(式1)の反応により生成した塩化ニトロシル(NOCl)がPtと反応することにより、Ptは塩化白金酸イオン([PtCl6]2−)になって溶解し、Ptのエッチング除去処理が行われる。
【0006】
しかしながら、王水は金属に対する腐食性が非常に強いため、基板処理装置内で王水を調合して保持した場合、基板処理装置を構成する部品を腐食してしまう恐れがある。さらに、王水は塩酸と硝酸を混合してから時間が経つにつれてエッチング能力が低下するという問題もある。そこで、特許文献1に記載された装置では、基板の裏面および基板表面の周縁部に形成された白金を含む金属膜を除去するために、回路が形成される表面を下に向けた状態で基板がステージに保持され、基板を回転させた状態で上側の基板の裏面側から硝酸、塩酸が順に供給される。これにより、基板の裏面および端面付近にまで硝酸および塩酸が供給され、基板上で塩酸と硝酸が混合されることにより王水が生成され、その王水によって基板の裏面および端面付近の不要な金属膜がエッチング除去される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−150571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、基板に対する金属膜の成膜工程では、金属膜は基板の表面に成膜され、基板の裏面には金属がわずかに付着する程度である。すなわち、基板の表面の周縁部に形成されている金属膜の方が基板の裏面に形成される金属膜よりも膜厚が厚い。しかしながら、特許文献1に記載の装置では、基板の裏面(基板の回路が形成されない面)側から塩酸および硝酸を供給し、それらの薬液を基板の表面(基板の回路が形成される面)の周縁部に回り込ませることによって基板の表面周縁部に薬液を供給する構成であるため、塩酸および硝酸が十分に混合された王水が基板の表面周縁部に対して供給されにくく、基板の表面周縁部に形成されている金属膜のエッチング除去に要する時間が長くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の装置では、基板の裏面および表面の周縁部に供給される薬液の量は同等になる。すなわち、基板の表面周縁部に付着している不要な金属膜を除去するために必要なエッチング液とほぼ同量のエッチング液が基板の裏面にも供給されることになるが、基板の裏面に付着している金属膜は基板の表面周縁部に付着している金属膜に比べて膜厚が薄いため、基板の裏面に対して必要以上の薬液が供給されていた。つまり、薬液の消費量が多くなり、製造コストが高くなるという問題もあった。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、薬液の消費量を最小限に抑えつつ基板表面周縁部および基板の裏面の不要物を良好にエッチングすることができる基板処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、基板の表面を上方に向けて基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板を回転させる回転手段と、基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給手段と、を備え、基板保持手段に保持され、回転手段によって回転されている基板の表面周縁部上において、第1薬液供給手段および第2薬液供給手段から供給された第1薬液および第2薬液を混合させることにより腐食性を有するベベルエッチング液を生成し、ベベルエッチング液により基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、基板保持手段に保持された基板が回転手段によって回転されるとともに、第1薬液供給手段および第2薬液供給手段から基板の表面周縁部に向けて第1薬液および第2薬液が供給される。これにより、基板の表面周縁部上において第1薬液および第2薬液が混合され、第1薬液および第2薬液が反応してベベルエッチング液が生成される。そして、このベベルエッチング液により基板の表面周縁部に付着している不要物がエッチングされる。
【0013】
このように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食を防止することができる。さらに、基板の表面周縁部上において第1薬液および第2薬液が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチングされるため、効率的にエッチング処理が行われる。なお、本発明におけるベベルエッチング液とは、第1薬液と第2薬液とが反応することによって生成され、不要物を溶解するエッチング成分を含む液のことである。さらに、この構成によれば、基板の表面周縁部に向けて直接、第1薬液および第2薬液が供給されることにより、第1薬液と第2薬液が基板の表面周縁部上において十分に混合されるため、第1薬液および第2薬液の反応が効率的に行われ、エッチング成分が十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、基板の表面周縁部に付着している不要物をベベルエッチング液によって効率的にエッチングすることができ、エッチング除去に要する時間を短くすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、基板保持手段に保持された基板の裏面に向けて、第1薬液および第2薬液が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液を供給する裏面エッチング液供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、第1薬液と第2薬液が予め希釈混合されることによって生成された裏面エッチング液が基板の裏面に向けて供給されることにより、基板の裏面に付着する不要物が裏面エッチング液によってエッチングされる。また、裏面エッチング液は、第1薬液と第2薬液が予め希釈混合されて生成されているため、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低く調合されている。基板の裏面に付着する不要物は、基板の表面周縁部に付着する不要物よりも膜厚が薄いため、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液を供給することで十分にエッチング除去される。また、裏面エッチング液はエッチング成分の濃度が低いため、予め調合して装置内で保持されていても装置内の部品をほとんど腐食しない。このように、基板の表面周縁部に対しては第1薬液および第2薬液が直接供給されることにより、基板の表面周縁部上で生成されたベベルエッチング液によってエッチング処理が行われる一方、基板の裏面に対しては予め生成され、かつ、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度の低い裏面エッチング液によってエッチング処理が行われることにより、基板の表面周縁部および裏面のそれぞれに付着している不要物を効率的にエッチングすることができる。このように、不要物の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液が使用されるので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。
【0016】
また、第1薬液供給手段は、基板の表面周縁部に対向する第1供給位置から第1薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第1薬液供給ノズルと、第1供給位置と基板の上方から離れた第1待機位置との間で第1薬液供給ノズルを移動させる第1ノズル移動機構とを有し、第2薬液供給手段は、第1供給位置とは異なる位置であって基板の表面周縁部に対向する第2供給位置から第2薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第2薬液供給ノズルと、第2供給位置と基板の上方から離れた第2待機位置との間で第2薬液供給ノズルを移動させる第2ノズル移動機構とを有し、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルを第1および第2供給位置にそれぞれ位置させて、第1薬液および第2薬液を各ノズルから吐出することにより基板の表面周縁部の不要物をエッチングするようにしてもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、第1ノズル移動機構および第2ノズル移動機構は共通のノズル移動機構で構成されており、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルは一体的に移動することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置である。このように、ノズル移動機構が共通に構成されることで、装置構成を簡単にすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、基板保持手段に保持された基板の表面に対向しながら近接配置され、基板の表面周縁部に対向する位置に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成された対向部材をさらに備え、第1および第2ノズル移動機構は複数のノズル挿入孔に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルをそれぞれ挿入することによって各ノズルが第1および第2供給位置に位置されることを特徴とする請求項3または4記載の基板処理装置である。
【0019】
この構成によれば、対向部材が基板表面に対向しながら、近接配置されるので、基板表面を基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断できる。また、対向部材は基板の表面周縁部に対向する位置に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成されているので、各ノズルをノズル挿入孔に挿入することによって基板の表面周縁部に対向して配置させることができる。したがって、基板表面を覆う対向部材によって基板表面の中央部(非処理領域)へ第1および第2薬液が付着するのを防止しながら、基板の表面周縁部に第1薬液および第2薬液が直接に供給されて不要物を良好にエッチングすることができる。また、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルは対向部材のノズル挿入孔に挿入されているため、エッチング処理中に第1および第2薬液が飛散してノズルに大量の第1および第2薬液が付着することがない。このため、ノズル移動時においてノズルから第1および第2薬液が落ちて基板あるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、対向部材は基板保持手段に保持された基板の表面に対向する基板対向面を有し、基板対向面にガス吐出口が形成されており、基板保持手段は、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材に上方に向けて突設され、基板の裏面に当接して基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材と、ガス吐出口から基板対向面と基板の表面とに挟まれた空間にガスを供給することによって基板を支持部材に押圧させるガス供給部とを有することを特徴とする請求項5記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板がその裏面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、ガス供給部から基板表面に供給されるガスによって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材を不要とすることができるため、基板から径方向外側に振り切られる第1および第2薬液が保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。したがって、基板の表面周縁部から不要物を良好にエッチングすることができる。
【0022】
また、第1薬液は塩酸であり、第2薬液は硝酸であってもよい。この場合、塩酸と硝酸が(式1)に示す反応を起こすことにより、ベベルエッチング液または裏面エッチング液中に塩化ニトロシルが生成される。これにより、白金(Pt)を含む金属膜のエッチング処理を行うことができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、基板保持回転工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給工程と、基板保持回転工程および第1薬液供給工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給工程と、第1薬液供給工程により供給された第1薬液と第2薬液供給工程により供給された第2薬液とが基板の表面周縁部上で混合されることにより生成されるベベルエッチング液により、基板の表面周縁部の不要物をエッチングするベベルエッチング工程とを備えることを特徴とする基板処理方法である。
【0024】
この方法により、請求項1記載の発明と同様な効果を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、基板Wの表面Wfの周縁部に存在する薄膜(不要物)または該周縁部および基板裏面Wbに存在する薄膜をエッチング除去する装置である。処理対象となっている基板Wには、白金で構成された金属膜が基板表面Wfまたは表裏面Wf,Wbに形成されている。そこで、基板表面Wfのみに薄膜が形成されている場合には、基板表面Wfの周縁部TR(処理領域)に薬液および純水やDIWなどのリンス液(以下、薬液およびリンス液を総称して「処理液」という)を供給して周縁部TRから薄膜をエッチング除去するとともに、基板裏面Wbに処理液を供給して裏面Wbを洗浄する。また、基板Wの表裏面Wf,Wbに薄膜が形成されている場合には、表面周縁部TRおよび裏面Wbに処理液を供給して表面周縁部TRおよび裏面Wbから薄膜をエッチング除去する。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはデバイスパターンが形成されるデバイス形成面(基板の回路が形成される面)をいう。
【0026】
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1(本発明の「基板保持手段」に相当)と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液を供給する下面処理ノズル2と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給する第1ノズル3と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給する第2ノズル4と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された対向部材5とを備えている。
【0027】
スピンチャック1は中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13(本発明の「回転手段」に相当)の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転中心A0を中心に回転する。このように、この実施形態では、スピンベース15が本発明の「回転部材」として機能する。
【0028】
中空の回転支軸11には処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21は薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、薬液として塩酸と硝酸が予め混合されて生成された裏面エッチング液またはリンス液としてDIWが選択的に供給される。このように、この実施形態では、下面処理ノズル2、処理液供給管21および薬液供給ユニット16が本発明の「裏面エッチング液供給手段」として機能する。また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット18と接続されており、基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面とに挟まれた空間に窒素ガスを供給できる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット18から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
【0029】
図3はスピンベース15を上方から見た平面図である。スピンベース15の中心部には開口が設けられている。また、スピンベース15の周縁部付近には複数個(この実施形態では6個)の第1支持ピンF1〜F6と、複数個(この実施形態では6個)の第2支持ピンS1〜S6が本発明の「支持部材」として、鉛直方向に昇降自在に設けられている。第1支持ピンF1〜F6は回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されているとともに、第2支持ピンS1〜S6が円周方向に沿って各第1支持ピンF1〜F6の間に位置するように、回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されている。つまり、第1および第2支持ピンからなる一対の支持ピンが円周方向に沿って回転中心A0を中心として放射状に6対、スピンベース15の周縁部に上方に向けて設けられている。
【0030】
第1支持ピンF1〜F6および第2支持ピンS1〜S6の各々は基板裏面Wbと当接することによって、スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを略水平姿勢で支持可能となっている。これらのうち、周方向に沿って1つ置きに配置された6個の第1支持ピンF1〜F6は第1支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。一方で、残る6個の第2支持ピンS1〜S6は第2支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。なお、基板Wを水平に支持するためには、各支持ピン群が有する支持ピンの個数は少なくとも3個以上であればよいが、各支持ピン群が有する支持ピンの個数を6個とすることで安定して基板Wを支持できる。
【0031】
図4は支持ピンの構成を示す部分拡大図である。なお、支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はいずれも同一構成を有しているため、ここでは1つの支持ピンF1の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。支持ピンF1は、基板Wの下面に離当接可能な当接部61と、当接部61を昇降可能に支持する可動ロッド62と、この可動ロッド62を昇降させるモータ等を含む昇降駆動部63と、可動ロッド62を取り囲むように設けられ可動ロッド62と昇降駆動部63とを外部雰囲気から遮断するベローズ64とを有している。ベローズ64は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)より形成され、薬液等により基板Wを処理する際に、ステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム等から形成される可動ロッド62を保護する。また、当接部61は耐薬性を考慮して、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)で形成されるのが好ましい。ベローズ64の上端部は当接部61の下面側に固着される一方、ベローズ64の下端部はスピンベース15の上面側に固着されている。
【0032】
上記した構成を有する支持ピンF1〜F6,S1〜S6では、昇降駆動部63が制御ユニット8からの駆動信号に基づき図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド62を1〜数mmのストロークで駆動させることにより、次のように基板Wを支持する。すなわち、昇降駆動部63を駆動させない状態では、所定の高さ位置(基板処理位置)で基板Wを支持するように支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はコイルばね等の付勢手段(図示せず)によって上向きに付勢されており、基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群と、支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により支持される。一方で、支持ピンS1〜S6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンS1〜S6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持される。また、支持ピンF1〜F6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンF1〜F6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持される。
【0033】
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック1の上方には、支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持された基板Wに対向する円盤状の対向部材5が水平に配設されている。対向部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には対向部材回転機構53が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて対向部材回転機構53のモータを駆動させることで対向部材5を回転中心A0を中心に回転させる。制御ユニット8は対向部材回転機構53をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で対向部材5を回転駆動できる。
【0034】
また、対向部材5は対向部材昇降機構55と接続され、対向部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、対向部材5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット8は対向部材昇降機構55を駆動させることで、基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、スピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に対向部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対してエッチング処理などの所定の処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで対向部材5を下降させる。これにより、対向部材5の下面501(本発明の基板対向面に相当する)と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
【0035】
対向部材5の中心の開口および回転支軸51の中空部は、ガス供給路57を形成している。ガス供給路57はガス供給ユニット18(本発明の「ガス供給部」に相当)と接続されており、基板表面Wfと対向部材5の下面501とに挟まれた空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。
【0036】
図5は対向部材5の底面図である。対向部材5の下面501の平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。このため、対向部材5が対向位置に配置されると基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。また、対向部材5の周縁部には対向部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する、略円筒状の内部空間を有するノズル挿入孔5A,5Bが形成されており、第1および第2ノズル3,4を個別に挿入可能となっている。ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に同一形状に形成されている。一方で、第1ノズル3と第2ノズル4は同一のノズル外径を有している。このため、両ノズル3,4をそれぞれノズル挿入孔5A,5Bのいずれにも挿入可能となっている。
【0037】
また、対向部材5の下面501には複数のガス吐出口502が形成されている。複数のガス吐出口502はスピンチャック1に保持される基板Wの表面中央部、つまり表面周縁部TRより径方向内側の非処理領域NTRに対向する位置に、回転中心A0を中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503(図1)に連通しており、ガス流通空間503に窒素ガスが供給されると、複数のガス吐出口502を介して窒素ガスが空間SPに供給される。
【0038】
そして、対向部材5が対向位置に位置決めされた状態で、複数のガス吐出口502およびガス供給路57から空間SPに窒素ガスが供給されると、空間SPの内部圧力を高めて基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧する。これによって、制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピンF1〜F6,S1〜S6との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、空間SPに供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。
【0039】
図1に戻って説明を続ける。第1ノズル3は薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて薬液供給ユニット16またはDIW供給ユニット17から薬液として塩酸またはリンス液としてDIWが第1ノズル3に選択的に供給される。この実施形態では、白金で構成される薄膜を基板Wからエッチング除去するため、比較的高濃度の塩酸(例えば、塩酸濃度35%の水溶液である市販の塩酸原液)が準備される。このように、薬液供給ユニット16および第1ノズル3が本発明の「第1薬液供給手段」に相当し、第1ノズル3が「第1薬液供給ノズル」に相当し、塩酸が「第1薬液」に相当する。
【0040】
第1ノズル3は水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。また、ノズルアーム31の他方端は第1ノズル移動機構33に接続されている。第1ノズル移動機構33は第1ノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第1ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第1ノズル移動機構33が駆動されることで、第1ノズル3を対向部材5のノズル挿入孔5A(または5B)に挿入して表面周縁部TRに塩酸またはDIWを供給可能な供給位置P31(本発明の「第1供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P32とに移動させることができる。
【0041】
また、第2ノズル4も薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて薬液供給ユニット16またはDIW供給ユニット17から薬液として硝酸またはリンス液としてDIWが第2ノズル4に選択的に供給される。この実施形態では、白金で構成される薄膜を基板Wからエッチング除去するため、比較的高濃度の硝酸(例えば、硝酸濃度60%の水溶液である市販の硝酸原液)が準備される。このように、薬液供給ユニット16および第2ノズル4が本発明の「第2薬液供給手段」に相当し、第2ノズル4が「第2薬液供給ノズル」に相当し、硝酸が「第2薬液」に相当する。なお、リンス液に用いられる液としては、DIWの他、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水および希薄濃度の塩酸などであってもよい。
【0042】
第2ノズル4を駆動する第2ノズル移動機構43は第1ノズル移動機構33と同様な構成を有している。すなわち、第2ノズル移動機構43はノズルアーム41の先端に取り付けられた第2ノズル4を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第2ノズル4を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第2ノズル移動機構43が駆動されることで、第2ノズル4を対向部材5のノズル挿入孔5B(または5A)に挿入して表面周縁部TRに硝酸またはDIWを供給可能な供給位置P41(本発明の「第2供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P42とに移動させることができる。
【0043】
ここで、ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に形成されており、平面視で回転中心A0から供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から供給位置P41に延びる方向とが形成する角度は180°となっている。
【0044】
上記の構成により、制御ユニット8が薬液供給ユニット16、DIW供給ユニット17を制御しながら第1および第2ノズル移動機構33,43を駆動させることで、供給位置P31に位置決めした第1ノズル3から回転する基板Wの表面周縁部TRに塩酸を供給しつつ、第2ノズル4を供給位置P41に位置決めして基板Wの表面周縁部TRに硝酸を供給する。
【0045】
次に、第1および第2ノズル3,4および対向部材5に設けられたノズル挿入孔5A,5Bの構成について説明する。なお、両ノズル3,4は同一に構成されている。また、両ノズル挿入孔5A,5Bは対向部材5に同一形状で、しかも回転中心A0に対して対称位置に形成されている。このため、第1ノズル3およびノズル挿入孔5Aの構成のみを図6を参照しつつ説明する。
【0046】
図6は第1ノズル3および対向部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの構成を示す図である。第1ノズル3は対向部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの形状に合わせて略円筒状に形成され、ノズル挿入孔5Aに挿入されることで、第1ノズル3の先端側が表面周縁部TR(図1)に対向して配置される。第1ノズル3の内部には液供給路301が形成されており、液供給路301の先端部(下端部)が第1ノズル3の吐出口301aを構成している。第1ノズル3のノズル外径は必要以上にノズル挿入孔5Aの孔径を大きくすることのないように、例えばφ5〜6mm程度に形成される。第1ノズル3は、略円筒状に形成されたノズル胴部の断面積がノズル先端側と後端側で異なるように構成されている。具体的には、ノズル先端側の胴部302の断面積がノズル後端側の胴部303の断面積より小さくなるように構成されており、ノズル先端側の胴部302とノズル後端側の胴部303との間に段差面304が形成されている。すなわち、ノズル先端側の胴部302の外周面(側面)とノズル後端側の胴部303の外周面(側面)は段差面304を介して結合されている。段差面304はノズル先端側の胴部302を取り囲むように、しかもスピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成されている。
【0047】
ノズル挿入孔5Aの内壁には第1ノズル3の段差面304と当接可能な円環状の当接面504が形成されている。そして、第1ノズル3がノズル挿入孔5Aに挿入されると、段差面304と当接面504とが当接することで、第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされる。第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされた状態で、第1ノズル3の吐出口301a周囲の先端面は対向部材5の対向面501と面一になっている。当接面504は対向部材5の対向面501と略平行に、つまり基板表面Wfと略平行に形成されており、第1ノズル3の段差面304と面接触するようになっている。このため、第1ノズル3を供給位置P31に位置決めする際に、第1ノズル3が対向部材5に当接して位置固定され、第1ノズル3を安定して位置決めすることができる。
【0048】
第1ノズル3の吐出口301aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口301aから塩酸またはDIWを表面周縁部TRに吐出可能になっている。液供給路301はノズル後端部において薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17に接続されており、塩酸またはDIWを選択的に吐出可能になっている。このため、薬液供給ユニット16から塩酸が液供給路301に圧送されると、第1ノズル3から塩酸が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに供給された塩酸は基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。したがって、塩酸の供給位置よりも径方向内側の非処理領域NTRには塩酸は供給されず、基板Wの端面から内側に向かって一定の幅(表面周縁部TR)の薄膜部分に塩酸が供給される(図8(a))。また、DIW供給ユニット17からDIWが液供給路301に圧送されると、第1ノズル3からDIWが基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに付着している塩酸などの薬液成分がDIWで洗い流される。また、第2ノズル4の吐出口についても第1ノズル3と同様にして基板Wの径方向外側に向けて開口しており、該吐出口から表面周縁部TRに硝酸またはDIWを吐出可能となっている(図8(b))。
【0049】
図7は、薬液供給ユニット16を模式的に示す図である。
【0050】
薬液供給ユニット16には、塩酸(塩酸濃度35%の水溶液である市販の塩酸原液)を貯留する塩酸タンク161、硝酸(硝酸濃度60%の水溶液である市販の硝酸原液)を貯留する硝酸タンク162、および、塩酸と硝酸を混合して生成される混合液を貯留する混合液タンク163が備えられている。塩酸タンク161には配管164が接続され、配管164には配管165が分岐して接続されており、塩酸タンク161に窒素ガスが圧送されることによって第1ノズル3または混合液タンク163に塩酸が供給可能とされている。すなわち、配管164、165のそれぞれにはバルブ166、167が介装されており、バルブ167が閉じられ、バルブ166が開けられることにより塩酸が第1ノズル3に供給される一方、バルブ166が閉じられ、バルブ167が開けられることにより、塩酸が混合液タンク163に供給される。硝酸タンク162も塩酸タンク161と同様、配管168が接続され、配管168には配管169が分岐して接続されており、硝酸タンク162に窒素ガスが圧送されることによって第2ノズル4または混合液タンク163に硝酸が供給可能とされている。すなわち、配管168、169のそれぞれにはバルブ170、171が介装されており、バルブ171が閉じられるとともにバルブ170が開けられることにより、硝酸が第2ノズル4に供給される一方、バルブ170が閉じられるとともにバルブ171が開けられることにより、硝酸が混合液タンク163に供給される。混合液タンク163には、塩酸、硝酸およびDIWが供給され、各液が混合されることにより、裏面エッチング液が生成されて貯留される。この実施形態では、塩酸と硝酸の混合割合が体積比で塩酸:硝酸=3:1となるように塩酸と硝酸が供給される。さらに、DIWが供給されることにより、塩酸と硝酸の混合液(王水)が2倍に希釈された状態で混合液タンク163に貯留される。塩酸と硝酸の混合液(王水)は金属に対する腐食性が非常に強く、基板処理装置を構成する部品を腐食してしまう恐れがあるが、この実施形態のように、王水をDIWで希釈した状態で保持しておくことにより、装置が腐食することを防止することができる。
【0051】
混合液タンク163には配管172が接続されており、配管172に介装されたポンプが駆動されることにより、裏面エッチング液が下面処理ノズル2に供給される。
【0052】
図8はノズル挿入孔5A,5Bにそれぞれ第1および第2ノズル3,4が挿入された場合の断面図である。ノズル挿入孔5A,5Bの孔径は第1および第2ノズル3,4の外径よりも大きく形成されている。このため、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間で第1および第2ノズル3,4を水平方向に互いに異なる位置に位置決めすることが可能となっている。ノズル挿入孔5A,5Bの孔径としては、第1および第2ノズル3,4の外径に対して1〜2mm程度大きく形成することが好ましい。この場合、供給位置P31と供給位置P41は基板Wの周端面からの径方向の距離が0.2〜0.5mm程度異なるように設定することが可能となっている。なお、この実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41を基板Wの周端面からの径方向の距離が同一となるように設定されている。
【0053】
また、対向部材5のノズル挿入孔5A,5Bの内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503を介してガス供給ユニット18に連通している。したがって、ガス供給ユニット18から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、第1および第2ノズル3,4が待機位置P32、P42に位置決めされた状態、つまり、第1および第2ノズル3,4がノズル挿入孔5A,5Bに未挿入の状態では、ノズル挿入孔5A,5Bの上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔5A,5Bにノズルが未挿入の状態でも、処理液がノズル挿入孔5A,5Bの内壁に付着するのが防止される。
【0054】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図9および図10を参照しつつ説明する。図9は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。図10は薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【0055】
この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット8が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の膜除去処理(薬液処理工程+リンス工程+乾燥工程)が実行される。ここで、基板表面Wfには白金を含む金属膜から成る薄膜TF(図8)が形成されている。つまり、基板表面Wfが薄膜形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入される。なお、対向部材5は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0056】
未処理の基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に載置されると、離間位置にある対向部材5のガス吐出口502から窒素ガスを吐出させるとともに、ガス供給路57から窒素ガスを吐出する(ステップ1)。次に、対向部材5を回転させて、ノズル挿入孔5Aおよび5Bが所定位置となるように対向部材5を回転方向に関して位置決めする(ステップ2)。その後、対向部材5が対向位置まで降下され基板表面Wfに近接配置される(ステップS3)。これによって、対向部材5の下面501と基板表面Wfとに挟まれた空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧されてスピンベース15に保持される。また、基板表面Wfは対向部材5の下面501に覆われて、基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断される。なお、上記のように基板Wはすべての支持ピンF1〜F6,S1〜S6で支持してもよいし、支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持してもよく、あるいは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持してもよい。
【0057】
次に、対向部材5を停止させた状態で基板Wを回転させる(ステップS4;本発明の基板保持回転工程に相当)。このとき、支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧された基板Wは支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板裏面Wbとの間に発生する摩擦力でスピンベース15に保持されながらスピンベース15とともに回転する。続いて、第1ノズル3が待機位置P32から供給位置P31に位置決めされる(ステップS5)。具体的には、第1ノズル3を水平方向に沿って対向部材5のノズル挿入孔5Aの上方位置に移動させる。そして、第1ノズル3を降下させてノズル挿入孔5Aに挿入する。また、第1ノズル3が供給位置P31へ位置決めされるのと同時に、第2ノズル4もまた待機位置P42から供給位置P41に位置決めされる(ステップS5)。
【0058】
そして、基板Wの回転速度が所定速度(例えば600rpm)に達すると、薬液供給ユニット16が作動され、回転する基板Wの表面周縁部TRに第1ノズル3および第2ノズル4から薬液が同時に吐出され、それぞれ塩酸および硝酸が連続的に供給される。これにより、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分から薄膜が全周にわたってエッチング除去される(ステップS6)。
【0059】
詳細には、白金を含む金属膜が形成された表面周縁部TRに塩酸のみが付着している状態、もしくは硝酸のみが付着している状態では、白金は塩酸および硝酸のいずれにも不溶であるため、表面周縁部TRの薄膜TFはエッチング除去されない。しかし、図10に示すように第1薬液供給工程として微小領域SRに対して第1ノズル3から塩酸が供給された後、基板Wが回転することによって、塩酸が付着した微小領域SRに対して第2薬液供給工程として第2ノズル4から硝酸が供給される。これにより、微小領域SRにおいて塩酸と硝酸が混合され、塩酸および硝酸が反応することによりベベルエッチング液が生成される。ベベルエッチング液には塩酸と硝酸の反応により生成された白金を溶解可能なエッチング成分、すなわち塩化ニトロシルが含まれているため、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分に形成されている不要物としての薄膜TFはベベルエッチング液に溶解してエッチング除去される。このように本実施形態では、微小領域SRに対して第1ノズル3からの塩酸の供給および第2ノズル4からの硝酸の供給が繰り返し行われるため、微小領域SRにおいて腐食性を有するベベルエッチング液が生成され、エッチング処理が実行される。
【0060】
また、本実施形態のように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食が防止される。さらに、薄膜TFの除去を行いたい基板の表面周縁部TR上において塩酸および硝酸が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチングされるため、効率的にエッチング除去が行われる。さらに、この構成によれば、第1および第2ノズル3、4から基板の表面周縁部TRに向けて直接、塩酸および硝酸が供給されることにより、塩酸と硝酸が基板の表面周縁部TR上において十分に混合されるため、塩酸および硝酸の反応が効率的に行われ、エッチング成分である塩化ニトロシルが十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、薄膜TFを効率的にエッチング除去することができる。
【0061】
こうして、所定時間のベベルエッチング工程によるエッチング処理が完了すると、塩酸および硝酸の供給が同時に停止される。次に、DIW供給ユニット17が作動され、第1ノズル3および第2ノズル4からDIWが供給されて、表面周縁部TRおよび基板Wの端面に対してリンス処理が実行される(ステップS7)。第1ノズル3および第2ノズル4から所定時間DIWを供給し、リンス処理が完了すると、DIWの供給が同時に停止される。なお、リンス処理は第1ノズル3または第2ノズル4のいずれか一方のノズルからDIWを供給することで実行されてもよいが、両ノズルからDIWを供給することによってリンス処理に要する時間が短縮される。
【0062】
リンス処理が完了した後、第1ノズル3が供給位置P31から待機位置P32に位置決めされる(ステップS8)。同様に、第2ノズル4も供給位置P41から待機位置P42に位置決めされる(ステップS8)。
【0063】
続いて、スピンベース15の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に対向部材5を回転させる(ステップS9)。その後、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbに処理液が供給され、基板裏面Wbに対して裏面洗浄処理が実行される(ステップS10)。具体的には、薬液供給ユニット16が作動され、下面処理ノズル2から基板裏面Wbの中央部に向けて処理液として裏面エッチング液が供給されることにより、基板裏面Wb全体と裏面Wbに連なる基板端面部分がエッチングされる。裏面エッチング液は、予め混合液タンク163にて混合された塩酸、硝酸がDIWで希釈されることにより生成されるため、表面周縁部TR上で生成されるベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低く調整されている。基板Wの裏面には白金を含む金属膜が付着しているが、その膜厚は基板表面Wfに形成されている薄膜TFよりも薄い状態である。したがって、塩酸と硝酸が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液が供給されることにより、十分にエッチング除去される。このように、本実施形態ではエッチング除去されるべき金属膜の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液を使用しているので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。下面処理ノズル2から所定時間裏面エッチング液が供給された後、DIW供給ユニット17が作動され、リンス液としてDIWが所定時間供給されることにより、基板裏面Wb全体と裏面Wbに連なる基板端面部分が洗浄される。
【0064】
また、基板Wとともに対向部材5を回転させることで、対向部材5に付着する処理液がプロセスに悪影響を及ぼすのを防止できる。また、基板Wと対向部材5との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを抑制して基板表面Wfへのミスト状の処理液の巻き込みを防止できる。
【0065】
ここで、裏面洗浄処理中に支持ピンF1〜F6,S1〜S6を基板裏面Wbから少なくとも1回以上、離間させることで支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板裏面Wbの当接部分にも処理液を回り込ませて当該部分を洗浄できる。例えば、裏面エッチング液の供給、またはリンス液の供給処理途中にそれぞれ1回、支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群と支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態から第1支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第2支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。その後、両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態に移行させた後に、第2支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第1支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。これにより、基板Wと支持ピンF1〜F6,S1〜S6との間の当接部分のすべてに処理液を回り込ませて裏面全体の洗浄処理を行うことができる。
【0066】
こうして、裏面洗浄処理が完了すると、基板Wおよび対向部材5を高速(例えば1500rpm)に回転させる。これにより、基板Wの乾燥が実行される(ステップS11)。このとき、基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せてガス供給路23からも窒素ガスを供給して基板Wの表裏面に窒素ガスを供給することで、基板Wの乾燥処理が促進される。
【0067】
基板Wの乾燥処理が終了すると、対向部材5の回転を停止させると同時に、基板Wの回転を停止させる(ステップS12)。そして、対向部材5が上昇された後(ステップ13)、ガス供給路57およびガス吐出口502からの窒素ガスの供給を停止する(ステップS14)。これにより、基板Wの支持ピンF1〜F6,S1〜S6への押圧保持が解除され、処理済の基板Wが装置から搬出される。
【0068】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの表面周縁部TRに向けて塩酸と硝酸が直接供給され、表面周縁部TR上においてベベルエッチング液が生成される。このように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食を防止することができる。さらに、基板の表面周縁部TR上において塩酸および硝酸が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチング処理が行われる。また、基板の表面周縁部TRに向けて直接、塩酸および硝酸が供給されることにより、塩酸と硝酸が基板の表面周縁部上において十分に混合されるため、エッチング成分(塩化ニトロシル)が十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、基板の表面周縁部TRに付着している白金を含む金属膜がベベルエッチング液によって効率的にエッチング除去され、エッチング除去に要する時間を短くすることができる。
【0069】
また、塩酸と硝酸が予め希釈混合されることによって生成され、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液によって、基板の裏面に付着する白金を含む金属膜がエッチングされる。このように、基板の表面周縁部TRに対しては塩酸および硝酸が直接供給されることにより、基板の表面周縁部TR上で生成されたベベルエッチング液によってエッチング処理が行われる一方、基板の裏面に対しては予め生成され、かつ、ベベルエッチング液よりもエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液でエッチング処理が行われることにより、基板の表面周縁部TRおよび裏面のそれぞれに付着している白金を含む金属膜が効率的にエッチング除去される。このように、エッチング除去される金属膜の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液を使用しているので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。
【0070】
また、この実施形態によれば、第1および第2ノズル3,4が供給位置P31,P41に位置決めされる際には、第1および第2ノズル3,4は対向部材5のノズル挿入孔5A,5Bに挿入されている。このため、エッチング処理中に処理液が飛散してノズル(第1および第2ノズル3,4)に向けて跳ね返ってくるような場合でも処理液は対向部材5の下面501に遮られる。これにより、ノズルに大量の処理液が付着するようなことがない。したがって、ノズル移動時においてノズルから処理液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。
【0071】
また、この実施形態では、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を設けていない。したがって、回転する基板Wから径方向外側に振り切られる処理液が保持部材に当たって基板表面Wfへ跳ね返ることがない。また、上記保持部材は基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因となり得るが、この要因が存在しないことからミスト状の処理液の基板表面Wf側への巻き込みが軽減される。さらに、この実施形態では、ガス供給路57およびガス吐出口502から基板表面Wfと対向部材5の下面とに挟まれた空間SPに供給される窒素ガスにより表面中央部の非処理領域NTRへの薬液の入り込みが防止されている。したがって、表面周縁部TRの全周にわたって均一に金属膜をエッチング除去できる。
【0072】
なお、上記実施形態では、基板処理装置は第1ノズル3と第2ノズル4の2本を装備しているが、ノズルの本数は2本に限定されない。3本以上のノズルを装備する場合も、塩酸を供給するノズルおよび硝酸を供給するノズルがそれぞれ少なくとも1本あればよい。
【0073】
<第2実施形態>
図11はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態における第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41を示す図である。この第2実施形態にかかる基板処理装置は以下の点で第1実施形態と相違する。すなわち、上記第1実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41が平面視で回転中心A0から第1ノズル3の供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から第2ノズル4の供給位置P41に延びる方向とが形成する角度を180°としていたのに対し、この実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41とが隣接するように配置されている。具体的には、第1ノズル3および第2ノズル4の各吐出口間の距離が約15mmとなるように配置されている。また、第1ノズル3の供給位置P31が第2ノズル4の供給位置P41よりも基板Wの回転方向Rにおいて下流側に位置するように配置されている。
【0074】
また、第1および第2ノズル3、4は共通のノズルアームARの遊端側から第2ノズル4と第1ノズル3の順に取り付けられており、このノズルアームARに接続された共通のノズル移動機構(図示せず)が駆動されることにより、一体的に移動させることができる。ノズル移動機構を駆動することにより、第1および第2ノズル3,4がそれぞれ対向部材5のノズル挿入孔5A、5Bに挿入され、第1供給位置P31および第2供給位置P41に位置する。このように、第1および第2ノズル3,4の供給位置P31、P41が隣接している場合、第1および第2ノズルを共通のノズル移動機構にすることにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0075】
このような構成の装置において、回転する基板Wの表面周縁部TRに第1ノズル3および第2ノズル4からそれぞれ塩酸および硝酸が連続的に供給される。これにより、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分から薄膜が全周にわたってエッチング除去される。このように、本実施形態では、塩酸および硝酸の供給位置が隣接しているため、塩酸と硝酸をより効率的に混合させることができる。また、図11に示すように微小領域SRに対しては第2ノズル4から硝酸が供給された後、基板Wが回転することによって、硝酸が付着した微小領域SRに対して第1ノズル3から塩酸が供給される。これにより、微小領域SRにおいて塩酸と硝酸が混合され、塩酸および硝酸が反応することによりベベルエッチング液が生成される。
【0076】
白金と反応して溶解する塩化ニトロシル(すなわちエッチング成分)を、上記の(式1)の反応により効率的に生成させるためには、上述したように市販の硝酸原液(硝酸濃度60%の水溶液)と市販の塩酸原液(塩酸濃度35%の水溶液)を体積比で硝酸:塩酸=1:3となるように混合することが好ましい。すなわち、硝酸よりも塩酸の割合が多い状態においてエッチング成分が効率的に生成される。この構成によれば、回転している基板Wの表面周縁部TRに向けて塩酸および硝酸が供給される際に、塩酸の供給位置P31が硝酸の供給位置P41よりも基板の回転方向Rにおいて下流側に位置されるので、微小領域SRに着目すると、まず硝酸が供給され、硝酸が付着した後に塩酸が供給される。これにより、付着している硝酸の一部が塩酸によって押しのけられて基板Wの表面周縁部TR上から除去され、塩酸が供給された後の基板Wの表面周縁部TRの微小領域SRにおいては塩酸の割合が硝酸よりも多くなるため、ベベルエッチング液中においてエッチング成分、すなわち塩化ニトロシルが効率的に生成される。したがって、ベベルエッチング液によって基板Wの表面周縁部TRに付着している白金を含む金属膜を効率的にエッチングすることができる。
【0077】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0078】
上記の第1実施形態では、平面視で回転中心A0から第1ノズル3の供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から第2ノズル4の供給位置P41に延びる方向とが形成する角度を180°としているが、該角度はこれに限定されず、90°、120°など180°以外の任意の角度に設定されてもよい。この際に、第1ノズル3の供給位置P31が第2ノズル4の供給位置P41よりも基板の回転方向において下流側に配置されることが好ましい。
【0079】
また、その他の変形例として、薬液供給ユニット16において第1ノズル3に供給される塩酸または第2ノズル4に供給される硝酸の少なくともいずれか一方を加熱する加熱手段がさらに設けられてもよい。これにより、表面周縁部TRに供給される薬液の温度が上がるので、ベベルエッチング液の金属膜を溶解する速度が高くなり、ベベルエッチング液によるエッチング処理に要する時間をより短縮することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、第1および第2ノズル3,4を表面周縁部TRに薬液を供給可能な供給位置に位置決めする際に、対向部材5に形成されたノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入しているが、ノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入することは必ずしも必要でない。例えば基板Wの平面サイズよりも小さな平面サイズを有する対向部材を基板表面Wfに対向配置して、第1および第2ノズル3,4を該対向部材の側壁に近接して配置してもよい。
【0081】
また、対向部材5のノズル挿入孔についても、上記実施形態では、第1および第2ノズル3,4に対応して対向部材5に2つのノズル挿入孔を形成しているが、3つ以上のノズル挿入孔を形成してもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、第1薬液として塩酸、第2薬液として硝酸を用いているが、その他の複数の薬液を混合して生成される腐食性の高い薬液も用いる処理に対しても、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板などを含む各種基板の表面に対してベベルエッチング処理を施す基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】スピンベースを上方から見た平面図である。
【図4】支持ピンの構成を示す部分拡大図である。
【図5】対向部材の底面図である。
【図6】第1ノズルおよび対向部材に設けられたノズル挿入孔の構成を示す図である。
【図7】薬液処理ユニットを模式的に示す図である。
【図8】第1および第2ノズルの外径とノズル挿入孔の孔径との関係を説明するための断面図である。
【図9】図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【図11】第2実施形態における薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…スピンチャック
3…第1ノズル
4…第2ノズル
5…対向部材
5A、5B…ノズル挿入孔
15…スピンベース
18…ガス供給ユニット
33…第1ノズル移動機構
43…第2ノズル移動機構
501…対向部材の下面
502…ガス吐出口
A0…(基板の)回転中心
F1〜F6…支持ピン
P31…供給位置
P41…供給位置
R…(基板の)回転方向
S1〜S6…支持ピン
SP…(基板対向面と基板表面とに挟まれた)空間
TR…表面周縁部
W…基板
Wb…基板裏面
Wf…基板表面
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板に薬液やリンス液などの処理液を供給して基板に所定の処理を行う基板処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に対して一連の処理を施す製造プロセスにおいては、基板の表面に各種薄膜を形成するために成膜工程が実行される。この成膜工程では基板の裏面あるいは基板表面の周縁部にも成膜されることがある。しかしながら、一般的には基板において成膜が必要なのは基板表面の中央部の回路形成領域のみであり、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に成膜されてしまうと、次のような問題が起こることがある。すなわち、成膜工程の後工程において、基板表面の周縁部に形成された薄膜が他の装置との接触により剥がれたりすることがある。そして、剥がれた薄膜が基板表面の中央部の回路形成領域や基板処理装置に付着することが原因となって製造品の歩留まりの低下や基板処理装置自体のトラブルを引き起こすことがある。
【0003】
そこで、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に形成された薄膜を除去するために、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に薬液を供給して不要な薄膜をエッチング除去する処理が従来から行われている。
【0004】
ところで、最近の半導体装置の製造プロセスにおいては、白金(Pt)が成膜材料として用いられているが、白金(Pt)は従来エッチング液として用いられていた薬液に溶けにくく、エッチング液として王水(塩酸と硝酸の混合液)が用いられる。以下、王水による白金(Pt)のエッチング除去処理について説明する。
【0005】
王水は、市販の硝酸原液(硝酸濃度60%の水溶液)と、市販の塩酸原液(塩酸濃度35%の水溶液)を1:3の体積比にて混合することにより生成され、王水中では下記に示す反応が起こっている。
HNO3+3HCl→NOCl+Cl2+2H2O (式1)
(式1)の反応により生成した塩化ニトロシル(NOCl)がPtと反応することにより、Ptは塩化白金酸イオン([PtCl6]2−)になって溶解し、Ptのエッチング除去処理が行われる。
【0006】
しかしながら、王水は金属に対する腐食性が非常に強いため、基板処理装置内で王水を調合して保持した場合、基板処理装置を構成する部品を腐食してしまう恐れがある。さらに、王水は塩酸と硝酸を混合してから時間が経つにつれてエッチング能力が低下するという問題もある。そこで、特許文献1に記載された装置では、基板の裏面および基板表面の周縁部に形成された白金を含む金属膜を除去するために、回路が形成される表面を下に向けた状態で基板がステージに保持され、基板を回転させた状態で上側の基板の裏面側から硝酸、塩酸が順に供給される。これにより、基板の裏面および端面付近にまで硝酸および塩酸が供給され、基板上で塩酸と硝酸が混合されることにより王水が生成され、その王水によって基板の裏面および端面付近の不要な金属膜がエッチング除去される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−150571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、基板に対する金属膜の成膜工程では、金属膜は基板の表面に成膜され、基板の裏面には金属がわずかに付着する程度である。すなわち、基板の表面の周縁部に形成されている金属膜の方が基板の裏面に形成される金属膜よりも膜厚が厚い。しかしながら、特許文献1に記載の装置では、基板の裏面(基板の回路が形成されない面)側から塩酸および硝酸を供給し、それらの薬液を基板の表面(基板の回路が形成される面)の周縁部に回り込ませることによって基板の表面周縁部に薬液を供給する構成であるため、塩酸および硝酸が十分に混合された王水が基板の表面周縁部に対して供給されにくく、基板の表面周縁部に形成されている金属膜のエッチング除去に要する時間が長くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の装置では、基板の裏面および表面の周縁部に供給される薬液の量は同等になる。すなわち、基板の表面周縁部に付着している不要な金属膜を除去するために必要なエッチング液とほぼ同量のエッチング液が基板の裏面にも供給されることになるが、基板の裏面に付着している金属膜は基板の表面周縁部に付着している金属膜に比べて膜厚が薄いため、基板の裏面に対して必要以上の薬液が供給されていた。つまり、薬液の消費量が多くなり、製造コストが高くなるという問題もあった。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、薬液の消費量を最小限に抑えつつ基板表面周縁部および基板の裏面の不要物を良好にエッチングすることができる基板処理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、基板の表面を上方に向けて基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板を回転させる回転手段と、基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給手段と、を備え、基板保持手段に保持され、回転手段によって回転されている基板の表面周縁部上において、第1薬液供給手段および第2薬液供給手段から供給された第1薬液および第2薬液を混合させることにより腐食性を有するベベルエッチング液を生成し、ベベルエッチング液により基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、基板保持手段に保持された基板が回転手段によって回転されるとともに、第1薬液供給手段および第2薬液供給手段から基板の表面周縁部に向けて第1薬液および第2薬液が供給される。これにより、基板の表面周縁部上において第1薬液および第2薬液が混合され、第1薬液および第2薬液が反応してベベルエッチング液が生成される。そして、このベベルエッチング液により基板の表面周縁部に付着している不要物がエッチングされる。
【0013】
このように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食を防止することができる。さらに、基板の表面周縁部上において第1薬液および第2薬液が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチングされるため、効率的にエッチング処理が行われる。なお、本発明におけるベベルエッチング液とは、第1薬液と第2薬液とが反応することによって生成され、不要物を溶解するエッチング成分を含む液のことである。さらに、この構成によれば、基板の表面周縁部に向けて直接、第1薬液および第2薬液が供給されることにより、第1薬液と第2薬液が基板の表面周縁部上において十分に混合されるため、第1薬液および第2薬液の反応が効率的に行われ、エッチング成分が十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、基板の表面周縁部に付着している不要物をベベルエッチング液によって効率的にエッチングすることができ、エッチング除去に要する時間を短くすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、基板保持手段に保持された基板の裏面に向けて、第1薬液および第2薬液が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液を供給する裏面エッチング液供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、第1薬液と第2薬液が予め希釈混合されることによって生成された裏面エッチング液が基板の裏面に向けて供給されることにより、基板の裏面に付着する不要物が裏面エッチング液によってエッチングされる。また、裏面エッチング液は、第1薬液と第2薬液が予め希釈混合されて生成されているため、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低く調合されている。基板の裏面に付着する不要物は、基板の表面周縁部に付着する不要物よりも膜厚が薄いため、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液を供給することで十分にエッチング除去される。また、裏面エッチング液はエッチング成分の濃度が低いため、予め調合して装置内で保持されていても装置内の部品をほとんど腐食しない。このように、基板の表面周縁部に対しては第1薬液および第2薬液が直接供給されることにより、基板の表面周縁部上で生成されたベベルエッチング液によってエッチング処理が行われる一方、基板の裏面に対しては予め生成され、かつ、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度の低い裏面エッチング液によってエッチング処理が行われることにより、基板の表面周縁部および裏面のそれぞれに付着している不要物を効率的にエッチングすることができる。このように、不要物の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液が使用されるので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。
【0016】
また、第1薬液供給手段は、基板の表面周縁部に対向する第1供給位置から第1薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第1薬液供給ノズルと、第1供給位置と基板の上方から離れた第1待機位置との間で第1薬液供給ノズルを移動させる第1ノズル移動機構とを有し、第2薬液供給手段は、第1供給位置とは異なる位置であって基板の表面周縁部に対向する第2供給位置から第2薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第2薬液供給ノズルと、第2供給位置と基板の上方から離れた第2待機位置との間で第2薬液供給ノズルを移動させる第2ノズル移動機構とを有し、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルを第1および第2供給位置にそれぞれ位置させて、第1薬液および第2薬液を各ノズルから吐出することにより基板の表面周縁部の不要物をエッチングするようにしてもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明は、第1ノズル移動機構および第2ノズル移動機構は共通のノズル移動機構で構成されており、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルは一体的に移動することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置である。このように、ノズル移動機構が共通に構成されることで、装置構成を簡単にすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、基板保持手段に保持された基板の表面に対向しながら近接配置され、基板の表面周縁部に対向する位置に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成された対向部材をさらに備え、第1および第2ノズル移動機構は複数のノズル挿入孔に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルをそれぞれ挿入することによって各ノズルが第1および第2供給位置に位置されることを特徴とする請求項3または4記載の基板処理装置である。
【0019】
この構成によれば、対向部材が基板表面に対向しながら、近接配置されるので、基板表面を基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断できる。また、対向部材は基板の表面周縁部に対向する位置に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成されているので、各ノズルをノズル挿入孔に挿入することによって基板の表面周縁部に対向して配置させることができる。したがって、基板表面を覆う対向部材によって基板表面の中央部(非処理領域)へ第1および第2薬液が付着するのを防止しながら、基板の表面周縁部に第1薬液および第2薬液が直接に供給されて不要物を良好にエッチングすることができる。また、第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルは対向部材のノズル挿入孔に挿入されているため、エッチング処理中に第1および第2薬液が飛散してノズルに大量の第1および第2薬液が付着することがない。このため、ノズル移動時においてノズルから第1および第2薬液が落ちて基板あるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、対向部材は基板保持手段に保持された基板の表面に対向する基板対向面を有し、基板対向面にガス吐出口が形成されており、基板保持手段は、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材に上方に向けて突設され、基板の裏面に当接して基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材と、ガス吐出口から基板対向面と基板の表面とに挟まれた空間にガスを供給することによって基板を支持部材に押圧させるガス供給部とを有することを特徴とする請求項5記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、基板がその裏面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、ガス供給部から基板表面に供給されるガスによって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材を不要とすることができるため、基板から径方向外側に振り切られる第1および第2薬液が保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。したがって、基板の表面周縁部から不要物を良好にエッチングすることができる。
【0022】
また、第1薬液は塩酸であり、第2薬液は硝酸であってもよい。この場合、塩酸と硝酸が(式1)に示す反応を起こすことにより、ベベルエッチング液または裏面エッチング液中に塩化ニトロシルが生成される。これにより、白金(Pt)を含む金属膜のエッチング処理を行うことができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、基板保持回転工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給工程と、基板保持回転工程および第1薬液供給工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給工程と、第1薬液供給工程により供給された第1薬液と第2薬液供給工程により供給された第2薬液とが基板の表面周縁部上で混合されることにより生成されるベベルエッチング液により、基板の表面周縁部の不要物をエッチングするベベルエッチング工程とを備えることを特徴とする基板処理方法である。
【0024】
この方法により、請求項1記載の発明と同様な効果を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、基板Wの表面Wfの周縁部に存在する薄膜(不要物)または該周縁部および基板裏面Wbに存在する薄膜をエッチング除去する装置である。処理対象となっている基板Wには、白金で構成された金属膜が基板表面Wfまたは表裏面Wf,Wbに形成されている。そこで、基板表面Wfのみに薄膜が形成されている場合には、基板表面Wfの周縁部TR(処理領域)に薬液および純水やDIWなどのリンス液(以下、薬液およびリンス液を総称して「処理液」という)を供給して周縁部TRから薄膜をエッチング除去するとともに、基板裏面Wbに処理液を供給して裏面Wbを洗浄する。また、基板Wの表裏面Wf,Wbに薄膜が形成されている場合には、表面周縁部TRおよび裏面Wbに処理液を供給して表面周縁部TRおよび裏面Wbから薄膜をエッチング除去する。なお、この実施形態では、基板表面Wfとはデバイスパターンが形成されるデバイス形成面(基板の回路が形成される面)をいう。
【0026】
この基板処理装置は、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック1(本発明の「基板保持手段」に相当)と、スピンチャック1に保持された基板Wの下面(裏面Wb)の中央部に向けて処理液を供給する下面処理ノズル2と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給する第1ノズル3と、基板表面側からスピンチャック1に保持された基板Wの表面周縁部TRに処理液を供給する第2ノズル4と、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された対向部材5とを備えている。
【0027】
スピンチャック1は中空の回転支軸11がモータを含むチャック回転機構13(本発明の「回転手段」に相当)の回転軸に連結されており、チャック回転機構13の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。この回転支軸11の上端部にはスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット8からの動作指令に応じてチャック回転機構13を駆動させることによりスピンベース15が回転中心A0を中心に回転する。このように、この実施形態では、スピンベース15が本発明の「回転部材」として機能する。
【0028】
中空の回転支軸11には処理液供給管21が挿通されており、その上端に下面処理ノズル2が結合されている。処理液供給管21は薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、薬液として塩酸と硝酸が予め混合されて生成された裏面エッチング液またはリンス液としてDIWが選択的に供給される。このように、この実施形態では、下面処理ノズル2、処理液供給管21および薬液供給ユニット16が本発明の「裏面エッチング液供給手段」として機能する。また、回転支軸11の内壁面と処理液供給管21の外壁面の隙間は、環状のガス供給路23を形成している。このガス供給路23はガス供給ユニット18と接続されており、基板裏面Wbと該基板裏面Wbに対向するスピンベース15の上面とに挟まれた空間に窒素ガスを供給できる。なお、この実施形態では、ガス供給ユニット18から窒素ガスを供給しているが、空気や他の不活性ガスなどを吐出するように構成してもよい。
【0029】
図3はスピンベース15を上方から見た平面図である。スピンベース15の中心部には開口が設けられている。また、スピンベース15の周縁部付近には複数個(この実施形態では6個)の第1支持ピンF1〜F6と、複数個(この実施形態では6個)の第2支持ピンS1〜S6が本発明の「支持部材」として、鉛直方向に昇降自在に設けられている。第1支持ピンF1〜F6は回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されているとともに、第2支持ピンS1〜S6が円周方向に沿って各第1支持ピンF1〜F6の間に位置するように、回転中心A0を中心として放射状に略等角度間隔でスピンベース15から上方に向けて突設されている。つまり、第1および第2支持ピンからなる一対の支持ピンが円周方向に沿って回転中心A0を中心として放射状に6対、スピンベース15の周縁部に上方に向けて設けられている。
【0030】
第1支持ピンF1〜F6および第2支持ピンS1〜S6の各々は基板裏面Wbと当接することによって、スピンベース15から所定距離だけ上方に離間させた状態で基板Wを略水平姿勢で支持可能となっている。これらのうち、周方向に沿って1つ置きに配置された6個の第1支持ピンF1〜F6は第1支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。一方で、残る6個の第2支持ピンS1〜S6は第2支持ピン群を構成し、これらは連動して基板Wを支持し、または基板裏面Wbから離間してその支持を解除するように動作する。なお、基板Wを水平に支持するためには、各支持ピン群が有する支持ピンの個数は少なくとも3個以上であればよいが、各支持ピン群が有する支持ピンの個数を6個とすることで安定して基板Wを支持できる。
【0031】
図4は支持ピンの構成を示す部分拡大図である。なお、支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はいずれも同一構成を有しているため、ここでは1つの支持ピンF1の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。支持ピンF1は、基板Wの下面に離当接可能な当接部61と、当接部61を昇降可能に支持する可動ロッド62と、この可動ロッド62を昇降させるモータ等を含む昇降駆動部63と、可動ロッド62を取り囲むように設けられ可動ロッド62と昇降駆動部63とを外部雰囲気から遮断するベローズ64とを有している。ベローズ64は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)より形成され、薬液等により基板Wを処理する際に、ステンレス鋼(SUS)またはアルミニウム等から形成される可動ロッド62を保護する。また、当接部61は耐薬性を考慮して、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)で形成されるのが好ましい。ベローズ64の上端部は当接部61の下面側に固着される一方、ベローズ64の下端部はスピンベース15の上面側に固着されている。
【0032】
上記した構成を有する支持ピンF1〜F6,S1〜S6では、昇降駆動部63が制御ユニット8からの駆動信号に基づき図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド62を1〜数mmのストロークで駆動させることにより、次のように基板Wを支持する。すなわち、昇降駆動部63を駆動させない状態では、所定の高さ位置(基板処理位置)で基板Wを支持するように支持ピンF1〜F6,S1〜S6の各々はコイルばね等の付勢手段(図示せず)によって上向きに付勢されており、基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群と、支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により支持される。一方で、支持ピンS1〜S6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンS1〜S6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持される。また、支持ピンF1〜F6を付勢力に抗して下降駆動させると、支持ピンF1〜F6の当接部61は基板裏面Wbから離間して基板Wは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持される。
【0033】
図1に戻って説明を続ける。スピンチャック1の上方には、支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持された基板Wに対向する円盤状の対向部材5が水平に配設されている。対向部材5はスピンチャック1の回転支軸11と同軸上に配置された回転支軸51の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この回転支軸51には対向部材回転機構53が連結されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて対向部材回転機構53のモータを駆動させることで対向部材5を回転中心A0を中心に回転させる。制御ユニット8は対向部材回転機構53をチャック回転機構13と同期するように制御することで、スピンチャック1と同じ回転方向および同じ回転速度で対向部材5を回転駆動できる。
【0034】
また、対向部材5は対向部材昇降機構55と接続され、対向部材昇降機構55の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで、対向部材5をスピンベース15に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット8は対向部材昇降機構55を駆動させることで、基板処理装置に対して基板Wが搬入出される際には、スピンチャック1から上方に十分に離れた離間位置に対向部材5を上昇させる。その一方で、基板Wに対してエッチング処理などの所定の処理を施す際には、スピンチャック1に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで対向部材5を下降させる。これにより、対向部材5の下面501(本発明の基板対向面に相当する)と基板表面Wfとが近接した状態で対向配置される。
【0035】
対向部材5の中心の開口および回転支軸51の中空部は、ガス供給路57を形成している。ガス供給路57はガス供給ユニット18(本発明の「ガス供給部」に相当)と接続されており、基板表面Wfと対向部材5の下面501とに挟まれた空間SPに窒素ガスを供給可能となっている。
【0036】
図5は対向部材5の底面図である。対向部材5の下面501の平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。このため、対向部材5が対向位置に配置されると基板表面全体を覆って基板表面Wf上の雰囲気を外部雰囲気から遮断可能となっている。また、対向部材5の周縁部には対向部材5を上下方向(鉛直軸方向)に貫通する、略円筒状の内部空間を有するノズル挿入孔5A,5Bが形成されており、第1および第2ノズル3,4を個別に挿入可能となっている。ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に同一形状に形成されている。一方で、第1ノズル3と第2ノズル4は同一のノズル外径を有している。このため、両ノズル3,4をそれぞれノズル挿入孔5A,5Bのいずれにも挿入可能となっている。
【0037】
また、対向部材5の下面501には複数のガス吐出口502が形成されている。複数のガス吐出口502はスピンチャック1に保持される基板Wの表面中央部、つまり表面周縁部TRより径方向内側の非処理領域NTRに対向する位置に、回転中心A0を中心とする円周に沿って等角度間隔に形成されている。これらのガス吐出口502は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503(図1)に連通しており、ガス流通空間503に窒素ガスが供給されると、複数のガス吐出口502を介して窒素ガスが空間SPに供給される。
【0038】
そして、対向部材5が対向位置に位置決めされた状態で、複数のガス吐出口502およびガス供給路57から空間SPに窒素ガスが供給されると、空間SPの内部圧力を高めて基板Wをその裏面Wbに当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧する。これによって、制御ユニット8の動作指令に応じてスピンベース15が回転すると、基板裏面Wbと支持ピンF1〜F6,S1〜S6との間に発生する摩擦力によって基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に支持されながらスピンベース15とともに回転する。なお、空間SPに供給された窒素ガスは基板Wの径方向外側へと流れていく。
【0039】
図1に戻って説明を続ける。第1ノズル3は薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて薬液供給ユニット16またはDIW供給ユニット17から薬液として塩酸またはリンス液としてDIWが第1ノズル3に選択的に供給される。この実施形態では、白金で構成される薄膜を基板Wからエッチング除去するため、比較的高濃度の塩酸(例えば、塩酸濃度35%の水溶液である市販の塩酸原液)が準備される。このように、薬液供給ユニット16および第1ノズル3が本発明の「第1薬液供給手段」に相当し、第1ノズル3が「第1薬液供給ノズル」に相当し、塩酸が「第1薬液」に相当する。
【0040】
第1ノズル3は水平方向に延びるノズルアーム31の一方端に取り付けられている。また、ノズルアーム31の他方端は第1ノズル移動機構33に接続されている。第1ノズル移動機構33は第1ノズル3を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第1ノズル3を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第1ノズル移動機構33が駆動されることで、第1ノズル3を対向部材5のノズル挿入孔5A(または5B)に挿入して表面周縁部TRに塩酸またはDIWを供給可能な供給位置P31(本発明の「第1供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P32とに移動させることができる。
【0041】
また、第2ノズル4も薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17と接続されており、制御ユニット8からの動作指令に応じて薬液供給ユニット16またはDIW供給ユニット17から薬液として硝酸またはリンス液としてDIWが第2ノズル4に選択的に供給される。この実施形態では、白金で構成される薄膜を基板Wからエッチング除去するため、比較的高濃度の硝酸(例えば、硝酸濃度60%の水溶液である市販の硝酸原液)が準備される。このように、薬液供給ユニット16および第2ノズル4が本発明の「第2薬液供給手段」に相当し、第2ノズル4が「第2薬液供給ノズル」に相当し、硝酸が「第2薬液」に相当する。なお、リンス液に用いられる液としては、DIWの他、炭酸水、水素水、希薄濃度(例えば1ppm程度)のアンモニア水および希薄濃度の塩酸などであってもよい。
【0042】
第2ノズル4を駆動する第2ノズル移動機構43は第1ノズル移動機構33と同様な構成を有している。すなわち、第2ノズル移動機構43はノズルアーム41の先端に取り付けられた第2ノズル4を水平方向に所定の回動軸回りに揺動させるとともに、第2ノズル4を昇降させることができる。このため、制御ユニット8からの動作指令に応じて第2ノズル移動機構43が駆動されることで、第2ノズル4を対向部材5のノズル挿入孔5B(または5A)に挿入して表面周縁部TRに硝酸またはDIWを供給可能な供給位置P41(本発明の「第2供給位置」に相当)と、基板Wから離れた待機位置P42とに移動させることができる。
【0043】
ここで、ノズル挿入孔5Aとノズル挿入孔5Bは回転中心A0に対して対称位置に形成されており、平面視で回転中心A0から供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から供給位置P41に延びる方向とが形成する角度は180°となっている。
【0044】
上記の構成により、制御ユニット8が薬液供給ユニット16、DIW供給ユニット17を制御しながら第1および第2ノズル移動機構33,43を駆動させることで、供給位置P31に位置決めした第1ノズル3から回転する基板Wの表面周縁部TRに塩酸を供給しつつ、第2ノズル4を供給位置P41に位置決めして基板Wの表面周縁部TRに硝酸を供給する。
【0045】
次に、第1および第2ノズル3,4および対向部材5に設けられたノズル挿入孔5A,5Bの構成について説明する。なお、両ノズル3,4は同一に構成されている。また、両ノズル挿入孔5A,5Bは対向部材5に同一形状で、しかも回転中心A0に対して対称位置に形成されている。このため、第1ノズル3およびノズル挿入孔5Aの構成のみを図6を参照しつつ説明する。
【0046】
図6は第1ノズル3および対向部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの構成を示す図である。第1ノズル3は対向部材5に設けられたノズル挿入孔5Aの形状に合わせて略円筒状に形成され、ノズル挿入孔5Aに挿入されることで、第1ノズル3の先端側が表面周縁部TR(図1)に対向して配置される。第1ノズル3の内部には液供給路301が形成されており、液供給路301の先端部(下端部)が第1ノズル3の吐出口301aを構成している。第1ノズル3のノズル外径は必要以上にノズル挿入孔5Aの孔径を大きくすることのないように、例えばφ5〜6mm程度に形成される。第1ノズル3は、略円筒状に形成されたノズル胴部の断面積がノズル先端側と後端側で異なるように構成されている。具体的には、ノズル先端側の胴部302の断面積がノズル後端側の胴部303の断面積より小さくなるように構成されており、ノズル先端側の胴部302とノズル後端側の胴部303との間に段差面304が形成されている。すなわち、ノズル先端側の胴部302の外周面(側面)とノズル後端側の胴部303の外周面(側面)は段差面304を介して結合されている。段差面304はノズル先端側の胴部302を取り囲むように、しかもスピンチャック1に保持された基板表面Wfに略平行に形成されている。
【0047】
ノズル挿入孔5Aの内壁には第1ノズル3の段差面304と当接可能な円環状の当接面504が形成されている。そして、第1ノズル3がノズル挿入孔5Aに挿入されると、段差面304と当接面504とが当接することで、第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされる。第1ノズル3が供給位置P31に位置決めされた状態で、第1ノズル3の吐出口301a周囲の先端面は対向部材5の対向面501と面一になっている。当接面504は対向部材5の対向面501と略平行に、つまり基板表面Wfと略平行に形成されており、第1ノズル3の段差面304と面接触するようになっている。このため、第1ノズル3を供給位置P31に位置決めする際に、第1ノズル3が対向部材5に当接して位置固定され、第1ノズル3を安定して位置決めすることができる。
【0048】
第1ノズル3の吐出口301aは基板Wの径方向外側に向けて開口しており、吐出口301aから塩酸またはDIWを表面周縁部TRに吐出可能になっている。液供給路301はノズル後端部において薬液供給ユニット16およびDIW供給ユニット17に接続されており、塩酸またはDIWを選択的に吐出可能になっている。このため、薬液供給ユニット16から塩酸が液供給路301に圧送されると、第1ノズル3から塩酸が基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに供給された塩酸は基板Wの径方向外側に向かって流れ、基板外に排出される。したがって、塩酸の供給位置よりも径方向内側の非処理領域NTRには塩酸は供給されず、基板Wの端面から内側に向かって一定の幅(表面周縁部TR)の薄膜部分に塩酸が供給される(図8(a))。また、DIW供給ユニット17からDIWが液供給路301に圧送されると、第1ノズル3からDIWが基板Wの径方向外側に向けて吐出される。これにより、表面周縁部TRに付着している塩酸などの薬液成分がDIWで洗い流される。また、第2ノズル4の吐出口についても第1ノズル3と同様にして基板Wの径方向外側に向けて開口しており、該吐出口から表面周縁部TRに硝酸またはDIWを吐出可能となっている(図8(b))。
【0049】
図7は、薬液供給ユニット16を模式的に示す図である。
【0050】
薬液供給ユニット16には、塩酸(塩酸濃度35%の水溶液である市販の塩酸原液)を貯留する塩酸タンク161、硝酸(硝酸濃度60%の水溶液である市販の硝酸原液)を貯留する硝酸タンク162、および、塩酸と硝酸を混合して生成される混合液を貯留する混合液タンク163が備えられている。塩酸タンク161には配管164が接続され、配管164には配管165が分岐して接続されており、塩酸タンク161に窒素ガスが圧送されることによって第1ノズル3または混合液タンク163に塩酸が供給可能とされている。すなわち、配管164、165のそれぞれにはバルブ166、167が介装されており、バルブ167が閉じられ、バルブ166が開けられることにより塩酸が第1ノズル3に供給される一方、バルブ166が閉じられ、バルブ167が開けられることにより、塩酸が混合液タンク163に供給される。硝酸タンク162も塩酸タンク161と同様、配管168が接続され、配管168には配管169が分岐して接続されており、硝酸タンク162に窒素ガスが圧送されることによって第2ノズル4または混合液タンク163に硝酸が供給可能とされている。すなわち、配管168、169のそれぞれにはバルブ170、171が介装されており、バルブ171が閉じられるとともにバルブ170が開けられることにより、硝酸が第2ノズル4に供給される一方、バルブ170が閉じられるとともにバルブ171が開けられることにより、硝酸が混合液タンク163に供給される。混合液タンク163には、塩酸、硝酸およびDIWが供給され、各液が混合されることにより、裏面エッチング液が生成されて貯留される。この実施形態では、塩酸と硝酸の混合割合が体積比で塩酸:硝酸=3:1となるように塩酸と硝酸が供給される。さらに、DIWが供給されることにより、塩酸と硝酸の混合液(王水)が2倍に希釈された状態で混合液タンク163に貯留される。塩酸と硝酸の混合液(王水)は金属に対する腐食性が非常に強く、基板処理装置を構成する部品を腐食してしまう恐れがあるが、この実施形態のように、王水をDIWで希釈した状態で保持しておくことにより、装置が腐食することを防止することができる。
【0051】
混合液タンク163には配管172が接続されており、配管172に介装されたポンプが駆動されることにより、裏面エッチング液が下面処理ノズル2に供給される。
【0052】
図8はノズル挿入孔5A,5Bにそれぞれ第1および第2ノズル3,4が挿入された場合の断面図である。ノズル挿入孔5A,5Bの孔径は第1および第2ノズル3,4の外径よりも大きく形成されている。このため、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間で第1および第2ノズル3,4を水平方向に互いに異なる位置に位置決めすることが可能となっている。ノズル挿入孔5A,5Bの孔径としては、第1および第2ノズル3,4の外径に対して1〜2mm程度大きく形成することが好ましい。この場合、供給位置P31と供給位置P41は基板Wの周端面からの径方向の距離が0.2〜0.5mm程度異なるように設定することが可能となっている。なお、この実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41を基板Wの周端面からの径方向の距離が同一となるように設定されている。
【0053】
また、対向部材5のノズル挿入孔5A,5Bの内壁には、ガス導入口505が開口されており、ガス導入口505からノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスを供給可能となっている。ガス導入口505は対向部材5の内部に形成されたガス流通空間503を介してガス供給ユニット18に連通している。したがって、ガス供給ユニット18から窒素ガスが圧送されると、ノズル挿入孔5A,5Bの内部空間に窒素ガスが供給される。これにより、第1および第2ノズル3,4が待機位置P32、P42に位置決めされた状態、つまり、第1および第2ノズル3,4がノズル挿入孔5A,5Bに未挿入の状態では、ノズル挿入孔5A,5Bの上下双方の開口から窒素ガスが噴出される。このため、ノズル挿入孔5A,5Bにノズルが未挿入の状態でも、処理液がノズル挿入孔5A,5Bの内壁に付着するのが防止される。
【0054】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図9および図10を参照しつつ説明する。図9は図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。図10は薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【0055】
この装置では、未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット8が装置各部を制御して該基板Wに対して一連の膜除去処理(薬液処理工程+リンス工程+乾燥工程)が実行される。ここで、基板表面Wfには白金を含む金属膜から成る薄膜TF(図8)が形成されている。つまり、基板表面Wfが薄膜形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが装置内に搬入される。なお、対向部材5は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0056】
未処理の基板Wが支持ピンF1〜F6,S1〜S6に載置されると、離間位置にある対向部材5のガス吐出口502から窒素ガスを吐出させるとともに、ガス供給路57から窒素ガスを吐出する(ステップ1)。次に、対向部材5を回転させて、ノズル挿入孔5Aおよび5Bが所定位置となるように対向部材5を回転方向に関して位置決めする(ステップ2)。その後、対向部材5が対向位置まで降下され基板表面Wfに近接配置される(ステップS3)。これによって、対向部材5の下面501と基板表面Wfとに挟まれた空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面(裏面Wb)に当接する支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧されてスピンベース15に保持される。また、基板表面Wfは対向部材5の下面501に覆われて、基板周囲の外部雰囲気から確実に遮断される。なお、上記のように基板Wはすべての支持ピンF1〜F6,S1〜S6で支持してもよいし、支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群のみにより支持してもよく、あるいは支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群のみにより支持してもよい。
【0057】
次に、対向部材5を停止させた状態で基板Wを回転させる(ステップS4;本発明の基板保持回転工程に相当)。このとき、支持ピンF1〜F6,S1〜S6に押圧された基板Wは支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板裏面Wbとの間に発生する摩擦力でスピンベース15に保持されながらスピンベース15とともに回転する。続いて、第1ノズル3が待機位置P32から供給位置P31に位置決めされる(ステップS5)。具体的には、第1ノズル3を水平方向に沿って対向部材5のノズル挿入孔5Aの上方位置に移動させる。そして、第1ノズル3を降下させてノズル挿入孔5Aに挿入する。また、第1ノズル3が供給位置P31へ位置決めされるのと同時に、第2ノズル4もまた待機位置P42から供給位置P41に位置決めされる(ステップS5)。
【0058】
そして、基板Wの回転速度が所定速度(例えば600rpm)に達すると、薬液供給ユニット16が作動され、回転する基板Wの表面周縁部TRに第1ノズル3および第2ノズル4から薬液が同時に吐出され、それぞれ塩酸および硝酸が連続的に供給される。これにより、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分から薄膜が全周にわたってエッチング除去される(ステップS6)。
【0059】
詳細には、白金を含む金属膜が形成された表面周縁部TRに塩酸のみが付着している状態、もしくは硝酸のみが付着している状態では、白金は塩酸および硝酸のいずれにも不溶であるため、表面周縁部TRの薄膜TFはエッチング除去されない。しかし、図10に示すように第1薬液供給工程として微小領域SRに対して第1ノズル3から塩酸が供給された後、基板Wが回転することによって、塩酸が付着した微小領域SRに対して第2薬液供給工程として第2ノズル4から硝酸が供給される。これにより、微小領域SRにおいて塩酸と硝酸が混合され、塩酸および硝酸が反応することによりベベルエッチング液が生成される。ベベルエッチング液には塩酸と硝酸の反応により生成された白金を溶解可能なエッチング成分、すなわち塩化ニトロシルが含まれているため、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分に形成されている不要物としての薄膜TFはベベルエッチング液に溶解してエッチング除去される。このように本実施形態では、微小領域SRに対して第1ノズル3からの塩酸の供給および第2ノズル4からの硝酸の供給が繰り返し行われるため、微小領域SRにおいて腐食性を有するベベルエッチング液が生成され、エッチング処理が実行される。
【0060】
また、本実施形態のように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食が防止される。さらに、薄膜TFの除去を行いたい基板の表面周縁部TR上において塩酸および硝酸が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチングされるため、効率的にエッチング除去が行われる。さらに、この構成によれば、第1および第2ノズル3、4から基板の表面周縁部TRに向けて直接、塩酸および硝酸が供給されることにより、塩酸と硝酸が基板の表面周縁部TR上において十分に混合されるため、塩酸および硝酸の反応が効率的に行われ、エッチング成分である塩化ニトロシルが十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、薄膜TFを効率的にエッチング除去することができる。
【0061】
こうして、所定時間のベベルエッチング工程によるエッチング処理が完了すると、塩酸および硝酸の供給が同時に停止される。次に、DIW供給ユニット17が作動され、第1ノズル3および第2ノズル4からDIWが供給されて、表面周縁部TRおよび基板Wの端面に対してリンス処理が実行される(ステップS7)。第1ノズル3および第2ノズル4から所定時間DIWを供給し、リンス処理が完了すると、DIWの供給が同時に停止される。なお、リンス処理は第1ノズル3または第2ノズル4のいずれか一方のノズルからDIWを供給することで実行されてもよいが、両ノズルからDIWを供給することによってリンス処理に要する時間が短縮される。
【0062】
リンス処理が完了した後、第1ノズル3が供給位置P31から待機位置P32に位置決めされる(ステップS8)。同様に、第2ノズル4も供給位置P41から待機位置P42に位置決めされる(ステップS8)。
【0063】
続いて、スピンベース15の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に対向部材5を回転させる(ステップS9)。その後、下面処理ノズル2から回転する基板Wの裏面Wbに処理液が供給され、基板裏面Wbに対して裏面洗浄処理が実行される(ステップS10)。具体的には、薬液供給ユニット16が作動され、下面処理ノズル2から基板裏面Wbの中央部に向けて処理液として裏面エッチング液が供給されることにより、基板裏面Wb全体と裏面Wbに連なる基板端面部分がエッチングされる。裏面エッチング液は、予め混合液タンク163にて混合された塩酸、硝酸がDIWで希釈されることにより生成されるため、表面周縁部TR上で生成されるベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低く調整されている。基板Wの裏面には白金を含む金属膜が付着しているが、その膜厚は基板表面Wfに形成されている薄膜TFよりも薄い状態である。したがって、塩酸と硝酸が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液が供給されることにより、十分にエッチング除去される。このように、本実施形態ではエッチング除去されるべき金属膜の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液を使用しているので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。下面処理ノズル2から所定時間裏面エッチング液が供給された後、DIW供給ユニット17が作動され、リンス液としてDIWが所定時間供給されることにより、基板裏面Wb全体と裏面Wbに連なる基板端面部分が洗浄される。
【0064】
また、基板Wとともに対向部材5を回転させることで、対向部材5に付着する処理液がプロセスに悪影響を及ぼすのを防止できる。また、基板Wと対向部材5との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを抑制して基板表面Wfへのミスト状の処理液の巻き込みを防止できる。
【0065】
ここで、裏面洗浄処理中に支持ピンF1〜F6,S1〜S6を基板裏面Wbから少なくとも1回以上、離間させることで支持ピンF1〜F6,S1〜S6と基板裏面Wbの当接部分にも処理液を回り込ませて当該部分を洗浄できる。例えば、裏面エッチング液の供給、またはリンス液の供給処理途中にそれぞれ1回、支持ピンF1〜F6からなる第1支持ピン群と支持ピンS1〜S6からなる第2支持ピン群との両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態から第1支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第2支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。その後、両方の支持ピン群により基板Wを支持した状態に移行させた後に、第2支持ピン群のみにより基板Wを支持した状態に切り換え、基板Wと第1支持ピン群との間の当接部分に処理液を回り込ませる。これにより、基板Wと支持ピンF1〜F6,S1〜S6との間の当接部分のすべてに処理液を回り込ませて裏面全体の洗浄処理を行うことができる。
【0066】
こうして、裏面洗浄処理が完了すると、基板Wおよび対向部材5を高速(例えば1500rpm)に回転させる。これにより、基板Wの乾燥が実行される(ステップS11)。このとき、基板表面Wfへの窒素ガス供給と併せてガス供給路23からも窒素ガスを供給して基板Wの表裏面に窒素ガスを供給することで、基板Wの乾燥処理が促進される。
【0067】
基板Wの乾燥処理が終了すると、対向部材5の回転を停止させると同時に、基板Wの回転を停止させる(ステップS12)。そして、対向部材5が上昇された後(ステップ13)、ガス供給路57およびガス吐出口502からの窒素ガスの供給を停止する(ステップS14)。これにより、基板Wの支持ピンF1〜F6,S1〜S6への押圧保持が解除され、処理済の基板Wが装置から搬出される。
【0068】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの表面周縁部TRに向けて塩酸と硝酸が直接供給され、表面周縁部TR上においてベベルエッチング液が生成される。このように、腐食性の強いエッチング液によってエッチング処理が行われる場合でも、基板処理装置内で予めエッチング液が生成されて保持されることなく、基板表面においてエッチング液が生成されることにより、エッチング液による装置の部品の腐食を防止することができる。さらに、基板の表面周縁部TR上において塩酸および硝酸が混合されることにより、混合された直後のエッチング能力の高いエッチング液によってエッチング処理が行われる。また、基板の表面周縁部TRに向けて直接、塩酸および硝酸が供給されることにより、塩酸と硝酸が基板の表面周縁部上において十分に混合されるため、エッチング成分(塩化ニトロシル)が十分に含まれたベベルエッチング液が生成される。これにより、基板の表面周縁部TRに付着している白金を含む金属膜がベベルエッチング液によって効率的にエッチング除去され、エッチング除去に要する時間を短くすることができる。
【0069】
また、塩酸と硝酸が予め希釈混合されることによって生成され、ベベルエッチング液よりも実質的にエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液によって、基板の裏面に付着する白金を含む金属膜がエッチングされる。このように、基板の表面周縁部TRに対しては塩酸および硝酸が直接供給されることにより、基板の表面周縁部TR上で生成されたベベルエッチング液によってエッチング処理が行われる一方、基板の裏面に対しては予め生成され、かつ、ベベルエッチング液よりもエッチング成分の濃度が低い裏面エッチング液でエッチング処理が行われることにより、基板の表面周縁部TRおよび裏面のそれぞれに付着している白金を含む金属膜が効率的にエッチング除去される。このように、エッチング除去される金属膜の膜厚に対応してエッチング成分の濃度の異なるエッチング液を使用しているので、薬液が効率的に使用され、薬液の消費量を抑えることができる。
【0070】
また、この実施形態によれば、第1および第2ノズル3,4が供給位置P31,P41に位置決めされる際には、第1および第2ノズル3,4は対向部材5のノズル挿入孔5A,5Bに挿入されている。このため、エッチング処理中に処理液が飛散してノズル(第1および第2ノズル3,4)に向けて跳ね返ってくるような場合でも処理液は対向部材5の下面501に遮られる。これにより、ノズルに大量の処理液が付着するようなことがない。したがって、ノズル移動時においてノズルから処理液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。
【0071】
また、この実施形態では、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を設けていない。したがって、回転する基板Wから径方向外側に振り切られる処理液が保持部材に当たって基板表面Wfへ跳ね返ることがない。また、上記保持部材は基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因となり得るが、この要因が存在しないことからミスト状の処理液の基板表面Wf側への巻き込みが軽減される。さらに、この実施形態では、ガス供給路57およびガス吐出口502から基板表面Wfと対向部材5の下面とに挟まれた空間SPに供給される窒素ガスにより表面中央部の非処理領域NTRへの薬液の入り込みが防止されている。したがって、表面周縁部TRの全周にわたって均一に金属膜をエッチング除去できる。
【0072】
なお、上記実施形態では、基板処理装置は第1ノズル3と第2ノズル4の2本を装備しているが、ノズルの本数は2本に限定されない。3本以上のノズルを装備する場合も、塩酸を供給するノズルおよび硝酸を供給するノズルがそれぞれ少なくとも1本あればよい。
【0073】
<第2実施形態>
図11はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態における第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41を示す図である。この第2実施形態にかかる基板処理装置は以下の点で第1実施形態と相違する。すなわち、上記第1実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41が平面視で回転中心A0から第1ノズル3の供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から第2ノズル4の供給位置P41に延びる方向とが形成する角度を180°としていたのに対し、この実施形態では、第1ノズル3の供給位置P31と第2ノズル4の供給位置P41とが隣接するように配置されている。具体的には、第1ノズル3および第2ノズル4の各吐出口間の距離が約15mmとなるように配置されている。また、第1ノズル3の供給位置P31が第2ノズル4の供給位置P41よりも基板Wの回転方向Rにおいて下流側に位置するように配置されている。
【0074】
また、第1および第2ノズル3、4は共通のノズルアームARの遊端側から第2ノズル4と第1ノズル3の順に取り付けられており、このノズルアームARに接続された共通のノズル移動機構(図示せず)が駆動されることにより、一体的に移動させることができる。ノズル移動機構を駆動することにより、第1および第2ノズル3,4がそれぞれ対向部材5のノズル挿入孔5A、5Bに挿入され、第1供給位置P31および第2供給位置P41に位置する。このように、第1および第2ノズル3,4の供給位置P31、P41が隣接している場合、第1および第2ノズルを共通のノズル移動機構にすることにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0075】
このような構成の装置において、回転する基板Wの表面周縁部TRに第1ノズル3および第2ノズル4からそれぞれ塩酸および硝酸が連続的に供給される。これにより、表面周縁部TRおよび該表面周縁部TRに連なる基板端面部分から薄膜が全周にわたってエッチング除去される。このように、本実施形態では、塩酸および硝酸の供給位置が隣接しているため、塩酸と硝酸をより効率的に混合させることができる。また、図11に示すように微小領域SRに対しては第2ノズル4から硝酸が供給された後、基板Wが回転することによって、硝酸が付着した微小領域SRに対して第1ノズル3から塩酸が供給される。これにより、微小領域SRにおいて塩酸と硝酸が混合され、塩酸および硝酸が反応することによりベベルエッチング液が生成される。
【0076】
白金と反応して溶解する塩化ニトロシル(すなわちエッチング成分)を、上記の(式1)の反応により効率的に生成させるためには、上述したように市販の硝酸原液(硝酸濃度60%の水溶液)と市販の塩酸原液(塩酸濃度35%の水溶液)を体積比で硝酸:塩酸=1:3となるように混合することが好ましい。すなわち、硝酸よりも塩酸の割合が多い状態においてエッチング成分が効率的に生成される。この構成によれば、回転している基板Wの表面周縁部TRに向けて塩酸および硝酸が供給される際に、塩酸の供給位置P31が硝酸の供給位置P41よりも基板の回転方向Rにおいて下流側に位置されるので、微小領域SRに着目すると、まず硝酸が供給され、硝酸が付着した後に塩酸が供給される。これにより、付着している硝酸の一部が塩酸によって押しのけられて基板Wの表面周縁部TR上から除去され、塩酸が供給された後の基板Wの表面周縁部TRの微小領域SRにおいては塩酸の割合が硝酸よりも多くなるため、ベベルエッチング液中においてエッチング成分、すなわち塩化ニトロシルが効率的に生成される。したがって、ベベルエッチング液によって基板Wの表面周縁部TRに付着している白金を含む金属膜を効率的にエッチングすることができる。
【0077】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0078】
上記の第1実施形態では、平面視で回転中心A0から第1ノズル3の供給位置P31に延びる方向と回転中心A0から第2ノズル4の供給位置P41に延びる方向とが形成する角度を180°としているが、該角度はこれに限定されず、90°、120°など180°以外の任意の角度に設定されてもよい。この際に、第1ノズル3の供給位置P31が第2ノズル4の供給位置P41よりも基板の回転方向において下流側に配置されることが好ましい。
【0079】
また、その他の変形例として、薬液供給ユニット16において第1ノズル3に供給される塩酸または第2ノズル4に供給される硝酸の少なくともいずれか一方を加熱する加熱手段がさらに設けられてもよい。これにより、表面周縁部TRに供給される薬液の温度が上がるので、ベベルエッチング液の金属膜を溶解する速度が高くなり、ベベルエッチング液によるエッチング処理に要する時間をより短縮することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、第1および第2ノズル3,4を表面周縁部TRに薬液を供給可能な供給位置に位置決めする際に、対向部材5に形成されたノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入しているが、ノズル挿入孔5A,5Bに第1および第2ノズル3,4を挿入することは必ずしも必要でない。例えば基板Wの平面サイズよりも小さな平面サイズを有する対向部材を基板表面Wfに対向配置して、第1および第2ノズル3,4を該対向部材の側壁に近接して配置してもよい。
【0081】
また、対向部材5のノズル挿入孔についても、上記実施形態では、第1および第2ノズル3,4に対応して対向部材5に2つのノズル挿入孔を形成しているが、3つ以上のノズル挿入孔を形成してもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、第1薬液として塩酸、第2薬液として硝酸を用いているが、その他の複数の薬液を混合して生成される腐食性の高い薬液も用いる処理に対しても、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の基板などを含む各種基板の表面に対してベベルエッチング処理を施す基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】スピンベースを上方から見た平面図である。
【図4】支持ピンの構成を示す部分拡大図である。
【図5】対向部材の底面図である。
【図6】第1ノズルおよび対向部材に設けられたノズル挿入孔の構成を示す図である。
【図7】薬液処理ユニットを模式的に示す図である。
【図8】第1および第2ノズルの外径とノズル挿入孔の孔径との関係を説明するための断面図である。
【図9】図1の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【図11】第2実施形態における薬液による薄膜のエッチング除去作用を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…スピンチャック
3…第1ノズル
4…第2ノズル
5…対向部材
5A、5B…ノズル挿入孔
15…スピンベース
18…ガス供給ユニット
33…第1ノズル移動機構
43…第2ノズル移動機構
501…対向部材の下面
502…ガス吐出口
A0…(基板の)回転中心
F1〜F6…支持ピン
P31…供給位置
P41…供給位置
R…(基板の)回転方向
S1〜S6…支持ピン
SP…(基板対向面と基板表面とに挟まれた)空間
TR…表面周縁部
W…基板
Wb…基板裏面
Wf…基板表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を上方に向けて基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を回転させる回転手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給手段と、
を備え、
前記基板保持手段に保持され、前記回転手段によって回転されている基板の表面周縁部上において、前記第1薬液供給手段および前記第2薬液供給手段から供給された第1薬液および第2薬液を混合させることにより腐食性を有するベベルエッチング液を生成し、前記ベベルエッチング液により基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段に保持された基板の裏面に向けて、第1薬液および第2薬液が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液を供給する裏面エッチング液供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1薬液供給手段は、基板の表面周縁部に対向する第1供給位置から第1薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第1薬液供給ノズルと、
前記第1供給位置と前記基板の上方から離れた第1待機位置との間で前記第1薬液供給ノズルを移動させる第1ノズル移動機構とを有し、
前記第2薬液供給手段は、第1供給位置とは異なる位置であって基板の表面周縁部に対向する第2供給位置から第2薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第2薬液供給ノズルと、
前記第2供給位置と前記基板の上方から離れた第2待機位置との間で前記第2薬液供給ノズルを移動させる第2ノズル移動機構とを有し、
前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルを前記第1および第2供給位置にそれぞれ位置させて、第1薬液および第2薬液を各ノズルから吐出することにより基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1ノズル移動機構および前記第2ノズル移動機構は共通のノズル移動機構で構成されており、前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルは一体的に移動することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持手段に保持された基板の表面に対向しながら近接配置され、基板の表面周縁部に対向する位置に前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成された対向部材をさらに備え、
前記第1および第2ノズル移動機構は前記複数のノズル挿入孔に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルをそれぞれ挿入することによって各ノズルが第1および第2供給位置に位置されることを特徴とする請求項3または4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記対向部材は前記基板保持手段に保持された基板の表面に対向する基板対向面を有し、前記基板対向面にガス吐出口が形成されており、
前記基板保持手段は、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、前記回転部材に上方に向けて突設され、基板の裏面に当接して基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材と、前記ガス吐出口から前記基板対向面と基板の表面とに挟まれた空間にガスを供給することによって基板を支持部材に押圧させるガス供給部とを有することを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1薬液は塩酸であり、前記第2薬液は硝酸であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、
前記基板保持回転工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給工程と、
前記基板保持回転工程および前記第1薬液供給工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給工程と、
前記第1薬液供給工程により供給された第1薬液と前記第2薬液供給工程により供給された第2薬液とが基板の表面周縁部上で混合されることにより生成される腐食性を有するベベルエッチング液により、基板の表面周縁部の不要物をエッチングするベベルエッチング工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項1】
基板の表面を上方に向けて基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を回転させる回転手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給手段と、
を備え、
前記基板保持手段に保持され、前記回転手段によって回転されている基板の表面周縁部上において、前記第1薬液供給手段および前記第2薬液供給手段から供給された第1薬液および第2薬液を混合させることにより腐食性を有するベベルエッチング液を生成し、前記ベベルエッチング液により基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段に保持された基板の裏面に向けて、第1薬液および第2薬液が予め希釈混合されることにより生成された裏面エッチング液を供給する裏面エッチング液供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1薬液供給手段は、基板の表面周縁部に対向する第1供給位置から第1薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第1薬液供給ノズルと、
前記第1供給位置と前記基板の上方から離れた第1待機位置との間で前記第1薬液供給ノズルを移動させる第1ノズル移動機構とを有し、
前記第2薬液供給手段は、第1供給位置とは異なる位置であって基板の表面周縁部に対向する第2供給位置から第2薬液を基板の表面周縁部に向けて供給する第2薬液供給ノズルと、
前記第2供給位置と前記基板の上方から離れた第2待機位置との間で前記第2薬液供給ノズルを移動させる第2ノズル移動機構とを有し、
前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルを前記第1および第2供給位置にそれぞれ位置させて、第1薬液および第2薬液を各ノズルから吐出することにより基板の表面周縁部の不要物をエッチングすることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1ノズル移動機構および前記第2ノズル移動機構は共通のノズル移動機構で構成されており、前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルは一体的に移動することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持手段に保持された基板の表面に対向しながら近接配置され、基板の表面周縁部に対向する位置に前記第1薬液供給ノズルおよび前記第2薬液供給ノズルがそれぞれ挿入される複数のノズル挿入孔が形成された対向部材をさらに備え、
前記第1および第2ノズル移動機構は前記複数のノズル挿入孔に第1薬液供給ノズルおよび第2薬液供給ノズルをそれぞれ挿入することによって各ノズルが第1および第2供給位置に位置されることを特徴とする請求項3または4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記対向部材は前記基板保持手段に保持された基板の表面に対向する基板対向面を有し、前記基板対向面にガス吐出口が形成されており、
前記基板保持手段は、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、前記回転部材に上方に向けて突設され、基板の裏面に当接して基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材と、前記ガス吐出口から前記基板対向面と基板の表面とに挟まれた空間にガスを供給することによって基板を支持部材に押圧させるガス供給部とを有することを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1薬液は塩酸であり、前記第2薬液は硝酸であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、
前記基板保持回転工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第1薬液を供給する第1薬液供給工程と、
前記基板保持回転工程および前記第1薬液供給工程と並行して行われ、基板の表面周縁部に向けて第2薬液を供給する第2薬液供給工程と、
前記第1薬液供給工程により供給された第1薬液と前記第2薬液供給工程により供給された第2薬液とが基板の表面周縁部上で混合されることにより生成される腐食性を有するベベルエッチング液により、基板の表面周縁部の不要物をエッチングするベベルエッチング工程と
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−244381(P2008−244381A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86352(P2007−86352)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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