説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】 基板へのダメージを抑制しつつ、基板の表面に対して超音波による洗浄処理を施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】 基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック10と、スピンチャック10に保持された基板Wの上面に第1処理液(HFE)、第2処理液(気体溶存水)をそれぞれ供給する第1処理液供給ノズル20、第2処理液供給ノズル17を備えている。スピンチャック10に保持された基板Wの上面にHFEおよび気体溶存水が供給され、基板Wの上面にHFEの液膜が形成され、さらにその上層に気体溶存水の液膜が形成される。この状態で気体溶存水とHFEの液膜に超音波振動が付与される。これにより、気体溶存水の液膜でのみ発生したキャビテーションによる衝撃エネルギーがHFEの液膜で緩和されつつ、基板Wの洗浄処理が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対して処理液を用いた処理を施すための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程の中で、たとえば、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの表面に洗浄処理を施す工程は重要な工程の1つである。洗浄処理工程を実施する装置の中には、基板の表面に超音波振動が付与された洗浄液(以下「超音波洗浄液」という。)を供給し、その超音波洗浄液で基板の表面を洗浄するものがある。
【0003】
基板を1枚ずつ超音波洗浄液で洗浄する枚葉型の超音波洗浄装置では、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の表面に超音波洗浄液を供給するための超音波ノズルとが備えられている。そして、スピンチャックによって基板を水平面内で回転させる一方で、超音波ノズルを基板の上方で往復移動させつつ、その超音波ノズルから基板の表面に超音波洗浄液を供給することにより、基板の表面の全域に超音波洗浄液が供給される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−318148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、超音波洗浄液に対して超音波振動を付与する際、超音波振動の出力コントロールが非常に難しく、基板の表面のデバイスパターンが微細化するにつれて、超音波洗浄液による洗浄処理においてデバイスパターンが倒壊するといったパターンへのダメージが増加し、半導体装置の製造工程での歩留まり低下を引き起こしていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基板へのダメージを抑制しつつ、基板の表面に対して超音波による洗浄処理を施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平に保持する基板保持手段(10、200)と、前記基板保持手段に保持された基板に対して第1処理液を供給し、基板の表面に第1液膜を形成する第1液膜形成手段(20)と、前記基板保持手段に保持された基板に対して前記第1処理液とは異なる処理液であり、前記第1処理液よりも溶存気体量が多い第2処理液を供給し、前記第1液膜を介在させて基板の表面に第2液膜を形成する第2液膜形成手段(17)と、前記第1および第2液膜に対して、超音波振動を付与する超音波振動付与手段(14、3、104、111)とを含むことを特徴とする基板処理装置(1、100)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
ここで、本発明における超音波洗浄のメカニズムについて説明する。処理液に超音波が付与されると、処理液中でキャビテーションが発生し、このキャビテーションによって基板の表面のパーティクルが除去されるなどの物理洗浄効果が得られる。このキャビテーションによる物理洗浄効果をさらに具体的に説明すると、処理液に超音波振動が付与されると、処理液中の圧力が減少することにより微小気泡が形成される。そして、この微小気泡が膨張・圧縮を繰り返すことにより気泡が成長し、その成長気泡が圧壊(瞬間的に気泡が消滅する現象)する。この気泡が圧壊するときに生じる衝撃エネルギーが基板の表面に作用することによって物理洗浄効果が得られると考えられている。しかしながら、基板の表面のデバイスパターンが微細化するにつれて、この衝撃エネルギーによって、パーティクルが除去されるといった物理洗浄効果が得られるとともにデバイスパターンが倒壊するといった、基板へのダメージが生じてしまうことがある。
【0009】
本発明によれば、基板保持手段に保持された基板の表面に第1液膜が形成され、さらに第1液膜を介在させて第2液膜が形成される。そして、この第1および第2液膜に対して超音波振動付与手段により超音波振動が付与される。
【0010】
そして、第1および第2液膜に対して付与した超音波振動により、第2液膜中でのみキャビテーションが発生する。ここで、第2液膜は第1液膜を介在させて基板の表面に形成されているため、このキャビテーションによって発生した衝撃エネルギーは、基板の表面に到達する前に、キャビテーションが発生しない第1液膜によって緩和される。したがって、キャビテーションによる衝撃エネルギーは、基板の表面に形成されたデバイスパターンには直接作用しないため、パターンダメージが発生することを抑制することができる。したがって、本発明によれば基板の表面のダメージを抑制しつつ、基板の表面の洗浄処理を行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記第2処理液に対して気体を溶存させる気体溶存手段(18)と、前記気体溶存手段による前記第2処理液中への溶存気体量を制御する制御手段(4)とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置である。
【0012】
この発明によれば、気体溶存手段によって第2処理液に気体が溶存され、さらにその溶存気体量が制御手段によって制御される。第2液膜で発生するキャビテーション量は、その液中に溶存する気体量によって変化する。したがって、第2液膜中で発生する気泡の数は、第2処理液に溶存させる気体量を制御することによって調節することができ、基板の表面に対する物理洗浄能力を調節することができる。したがって、この発明によれば、基板の表面に形成されたデバイスパターンの種類に応じて基板の表面に対する物理洗浄能力を変化させることができ、様々な種類の基板に対して、ダメージを与えることなく良好な洗浄処理を施すことができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記第1処理液は前記第2処理液に対して不溶性であり、かつ前記第2処理液よりも比重が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置である。
【0014】
この発明によれば、第1処理液および第2処理液が基板に供給されると、基板の表面において、第1処理液が第2処理液よりも下層に位置するように分離する。したがって、基板の表面に第1処理液による第1液膜が形成され、第1液膜を介在させるようにして第2処理液による第2液膜が形成される。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記第1液膜形成手段および前記第2液膜形成手段は、基板の表面に前記第1処理液および前記第2処理液を供給した後、所定時間経過させることにより、前記第1処理液および前記第2処理液を比重の差で分離させることによって、基板の表面に前記第1液膜および前記第2液膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置である。
【0016】
この発明によれば、第1処理液および第2処理液が基板の表面に供給された後、所定時間経過することにより、基板の表面において、各処理液の比重の差によって第1処理液が第2処理液の下層となるように第1および第2処理液が分離して、第1液膜および第2液膜が形成される。したがって、基板の表面に第1液膜および第2液膜を容易に形成することができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記超音波振動付与手段は、前記第1および第2液膜が形成された基板の表面の反対側に設けられ、前記超音波振動付与手段が設けられた側の基板の表面に、前記超音波振動付与手段による超音波振動が付与される伝播液膜を形成する伝播液膜形成手段(15)をさらに含み、前記超音波振動付与手段により付与された超音波振動は、前記伝播液膜および基板を透過して前記第1および第2液膜に付与されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置である。
【0018】
この発明によれば、超音波振動付与手段が設けられた側の基板の表面には伝播液膜が形成される。そして、超音波振動付与手段から発せられた超音波振動は、この伝播液膜と基板を透過して第1および第2液膜に付与される。これにより、超音波振動が第2液膜に直接付与されないので、第2液膜で発生するキャビテーションが抑制され、パターンダメージの発生をさらに抑制することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、基板を水平に保持する基板保持工程(S1、S101)と、前記基板保持工程で保持された基板に対して第1処理液を供給し、基板の表面に第1液膜を形成する第1液膜形成工程(S4、S6、S104、S106)と、前記基板保持工程で保持された基板に対して前記第1処理液とは異なる処理液であり、前記第1処理液よりも溶存気体量が多い第2処理液を供給し、前記第1液膜を介在させて基板の表面に第2液膜を形成する第2液膜形成工程(S4、S6、S104、S106)と、前記第1および第2液膜に対して、超音波振動を付与する超音波振動付与工程(S8、S108)とを含むことを特徴とする基板処理方法である。
【0020】
この発明によれば、請求項1に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、前記第2処理液に対して気体を溶存させる気体溶存工程(S4、S104)と、前記気体溶存工程において前記第2処理液への溶存気体量を制御する制御工程(S4、S104)と、をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法である。
【0022】
この発明によれば、請求項2に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記第1処理液は前記第2処理液に対して不溶性であり、かつ前記第2処理液よりも比重が大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の基板処理方法である。
【0024】
この発明によれば、請求項3に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0025】
請求項9に係る発明は、前記第1液膜形成工程および前記第2液膜形成工程は、基板の表面に前記第1処理液および前記第2処理液を供給した後、所定時間経過させることにより、前記第1処理液および前記第2処理液を比重の差で分離させることによって、基板の表面に前記第1液膜および前記第2液膜を形成することを特徴とする請求項8に記載の基板処理方法である。
【0026】
この発明によれば、請求項4に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0027】
請求項10に係る発明は、第1および第2液膜が形成された基板の表面の反対側の基板の表面に、超音波振動を伝播する伝播液膜を形成する伝播液膜形成工程(S2)をさらに含み、前記超音波振動付与工程は、超音波振動が前記伝播液膜に対して付与され、前記超音波振動は前記伝播液膜および基板を透過して前記第2液膜に付与されることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の基板処理方法である。
【0028】
この発明によれば、請求項5に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば基板の表面のダメージを抑制しつつ、基板の表面の洗浄処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスピンチャックの斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による処理動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置による洗浄処理のメカニズムを説明する図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の図解的な側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置による処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解的な断面図である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック10と、スピンチャック10に保持された基板Wの上面に第1処理液、第2処理液をそれぞれ供給する第1処理液供給ノズル20、第2処理液供給ノズル17を備えている。
【0032】
スピンチャック10は、鉛直方向に沿って配置された回転軸11と、この回転軸11の上端にほぼ水平に固定されて処理対象の基板Wに対向する円板状のベース部材12と、このベース部材12の周縁部に立設されたほぼ円筒形状の堰部材13と、この堰部材13の内方において、ベース部材12の表面に配置された超音波振動板14と、超音波振動板14の上面に設けられ、処理対象の基板W(たとえば半導体ウエハのような円形基板)を保持するための基板支持部材16とを備えている。
【0033】
回転軸11は中空軸であって、この回転軸11の内部を挿通するように、伝播液供給ノズル15が配置されている。この伝播液供給ノズル15は、ベース部材12および超音波振動板14にそれぞれ形成された貫通孔を貫通していて、超音波振動板14の上面中央から露出して上方(処理対象の基板Wの下面中央)に向けられた吐出口15aを有している。なお、本実施形態では、伝播液として純水が用いられている。伝播液供給ノズル15には、伝播液供給源としての純水供給源30からの純水が、脱気ユニット24および伝播液供給バルブ23を介して供給されるようになっている。脱気ユニット24は、純水供給源30から供給された純水中に溶存している気体を純水中から除去する。これにより、脱気ユニット24から伝播液供給ノズル15へ供給される純水は、溶存気体を含まない純水となる。
【0034】
また、回転軸11は、モータ等を含む回転駆動機構2に結合されている。この回転駆動機構2によって回転軸11を鉛直軸線まわりに回転駆動させているので、ベース部材12、堰部材13および超音波振動板14を、基板支持部材16に保持された基板Wとともに鉛直軸線まわりに回転させることができる。
【0035】
堰部材13は、処理対象の基板Wを内部に収容することができる筒状に形成されている。たとえば、基板Wが半導体ウエハのような円形基板である場合には、堰部材13は円筒状に形成されることが好ましい。また、基板Wが液晶表示装置用ガラス基板のような角形基板であれば、それに応じて、堰部材13は平面視における形状が矩形の四角筒状に形成されることが好ましい。この実施形態では、図2に示されているように、堰部材13は円形基板に対応した円筒状に形成されている。この円筒状の堰部材13の上端より所定距離だけ下方の付近には、堰部材13内の伝播液を堰部材13の外部へ排出させるための切欠き13aが形成されている。この実施形態では、堰部材13の上端より所定距離だけ下方の付近には、周方向に間隔をあけて複数個(図2の例では等角度間隔で4個)の切欠き13aが形成されている。また、この切欠き13aの下端の高さは、基板支持部材16に保持された基板Wの下面の高さより低くされている。
【0036】
堰部材13の内周面であって、超音波振動板14の上面には、処理対象の基板W(たとえば半導体ウエハのような円形基板)の下面の周縁部に接触して、この基板Wを超音波振動板14の上面から一定距離だけ離隔した位置に保持するための基板支持部材16が設けられている。この基板支持部材16は、たとえば、基板Wの周縁部に複数箇所で接触するように、堰部材13の周方向に間隔をあけて、複数箇所(たとえば3箇所)に設けられている。
【0037】
超音波振動板14は石英で構成されており、その内部には、超音波振動子14aが内蔵されている。超音波振動子14aには、この超音波振動子14aに給電して超音波振動を発生させるためのドライバ回路3が接続されている。
【0038】
この基板支持部材16によって保持されることになる基板Wの上方には、第1処理液供給ノズル20が配置されている。この第1処理液供給ノズル20は、基板Wのほぼ中心に向けて第1処理液を吐出するように配置されている。本実施形態では、第1処理液としてたとえばHFE(ハイドロフルオロエーテル)が用いられている。第1処理液供給ノズル20には、第1処理液供給源としてのHFE供給源22からのHFEが、第1処理液供給バルブ21を介して供給されるようになっている。
【0039】
この基板支持部材16によって保持されることになる基板Wの上方には、さらに第2処理液供給ノズル17が配置されている。この第2処理液供給ノズル17は、基板Wのほぼ中心に向けて第2処理液を吐出するように配置されている。本実施形態では、第2処理液として純水が用いられている。第2処理液供給ノズル17には、第2処理液供給源としての純水供給源30からの純水が、第2処理液供給バルブ19および気体溶存ユニット18を介して供給されるようになっている。気体溶存ユニット18は、純水供給源30から供給され、一旦脱気した純水に、図示しない気体供給源からの気体(例えば、窒素ガス)を所定量溶存させる。これにより、気体溶存ユニット18から第2処理液供給ノズル17へ供給される純水は、気体を所定量溶存した気体溶存水となる。なお、この気体溶存ユニット18は、後述の制御装置4によって、第2処理液中に溶存される溶存気体量を所望の値に制御することが可能である。
【0040】
図3は、この基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置1は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置4を備えている。制御装置4は、回転駆動機構2、ドライバ回路3、気体溶存ユニット18および脱気ユニット24の動作を制御し、第1処理液供給バルブ21、第2処理液供給バルブ19および伝播液供給バルブ23の開閉を制御する。
【0041】
上述の基板処理装置1によって基板Wの処理が行われる際には、図示しない基板搬送手段によって、基板支持部材16上に基板Wが裏面(トランジスタなどの機能素子(デバイス)が形成されていない側の面)を下方に向けた状態で受け渡される。この状態で、伝播液供給バルブ23が開かれると、超音波振動板14の上面と、これに対向する基板Wの下面との間に伝播液膜25が形成される。なお、伝播液膜25の厚みは、基板支持部材16の高さを調節することによって調節される。また、第1処理液供給バルブ21および第2処理液供給バルブ19が開かれることによって、基板の上面(トランジスタなどの機能素子(デバイス)が形成されている側の面)に対して、第1処理液および第2処理液が供給され、後述のように基板Wの上面に第1液膜が形成され、その上層に第2液膜が形成される。この状態で、ドライバ回路3から超音波振動子14aに給電されることによって、超音波振動板14から超音波振動が第1および第2液膜に付与される。
【0042】
超音波振動が効率的に第1および第2液膜に付与されるためには、超音波振動が超音波振動板14、伝播液膜25、基板Wを効率的に透過する必要がある。ここで、超音波振動が超音波振動板14を透過するためには、超音波の周波数と超音波振動板14の上面の板厚が下記の条件式(1)を満たしていればよい。
【0043】
周波数(Hz)=音速(m/s)/板厚(m)×1/2 (1)
なお、音速は超音波振動板14の材質(本実施例では石英)によって決まる固有値である。
【0044】
本実施形態では、この条件式(1)を満たすように、超音波振動板14の板厚および超音波の周波数が設定される。たとえば、超音波の周波数が1MHzの場合は、超音波振動板14の板厚は約4mmに設定される。伝播液膜25、基板Wについても同様であり、条件式(1)の板厚は伝播液膜25および基板Wの厚みに相当し、音速はそれぞれの材質によって決まる固有値である。したがって、伝播液膜25の厚みおよび超音波振動の周波数が条件式(1)を満たすように調節されることによって、超音波振動が効率的に第1および第2液膜に付与される。伝播液膜25の厚みは基板支持部材16の高さによって調節される。超音波振動の周波数は、ドライバ回路3によって調節される。
【0045】
次に、この基板処理装置1による基板Wの処理動作を説明する。図4は、この基板処理装置1による基板Wの処理動作のフローチャートである。基板Wに対する処理を開始する前に、制御装置4は、回転駆動機構2を停止させて、スピンチャック10を停止状態にする。また、第1処理液供給バルブ21、第2処理液供給バルブ19、および伝播液供給バルブ23は全て閉じられている。そして、図示しない基板搬送手段によって、未処理の基板Wが基板支持部材16上に搬入される(ステップS1)。
【0046】
次に、制御装置4は、伝播液供給バルブ23、脱気ユニット24を制御して、伝播液供給ノズル15の吐出口15aから基板支持部材16に保持された基板Wの下面に向けて伝播液を供給させる(ステップS2)。これにより、基板Wの下面と超音波振動板14の間が伝播液で満たされることとなり、伝播液膜25が形成される。
【0047】
次に、制御装置4は、回転駆動機構2を制御して、スピンチャック10の回転を開始させる(ステップS3)。また、制御装置4は、第1処理液供給バルブ21、第2処理液供給バルブ19および気体溶存ユニット18を制御して、第1処理液供給ノズル20および第2処理液供給ノズル20から回転中の基板Wの中心位置に向けてHFEおよび気体溶存水を供給させる(ステップS4)。この際、気体溶存水に溶存される気体の溶存量は、気体溶存ユニット18と制御装置4によって所望の値に制御されている。基板Wの中心位置に供給されたHFEおよび気体溶存水は、基板Wの回転による遠心力により基板Wの周縁部に向けて拡がり、基板Wの上面全体に供給される。
【0048】
基板Wの上面全体にHFEおよび気体溶存水が供給された後、制御装置4は回転駆動機構2を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS5)。これにより、基板Wの上面全域には、HFEおよび気体溶存水の混合液がパドル(液盛り)された状態となる。この状態で、基板Wを所定時間静止させる。HFEは純水に対して不溶性であり、かつ純水よりも比重が大きいため、基板W上のHFEおよび気体溶存水は、時間が経過するにつれて、基板W上で分離し、下層にHFEの液膜(第1液膜)が形成され、上層に気体溶存水の液膜(第2液膜)が形成される(ステップS6)。その後、制御装置4は、回転駆動機構2を制御して、基板Wを低速(基板W上のHFEおよび気体溶存水の液膜がくずれない程度の速度で、たとえば10〜20rpm)で回転させる(ステップS7)。
【0049】
次に、制御装置4は、ドライバ回路3を制御することにより、超音波振動板14から超音波振動を発生させる。前述の通り、超音波振動板14で発生した超音波振動は、伝播液膜25、基板Wを透過して第1液膜(HFE)および第2液膜(気体溶存水)に付与される(ステップS8)。なお、伝播液膜25は、脱気ユニット24によって脱気された純水であるため、超音波振動が付与されても伝播液膜25中で気泡が発生することはなく、効率的に超音波振動を透過させることができる。また、伝播液膜は、前述の通り、超音波振動を効率的に透過させる厚みに設定されているため、超音波振動板14から発生した超音波振動は効率的に第1液膜(HFE)および第2液膜(気体溶存水)に付与される。このように、超音波振動が所定時間付与されることによって、基板Wの上面の洗浄処理が行われる。この洗浄処理のメカニズムの詳細については後述する。
【0050】
超音波振動付与工程(ステップS8)が終了した後、制御装置4は、伝播液供給バルブ23を制御して伝播液の供給を停止させ、回転駆動機構2を制御して、基板Wを高速回転させる(ステップS9)。これにより、基板Wの上面の第1液膜(HFE)、第2液膜(気体溶存水)、および基板W下面の伝播液膜が振り切られる。
【0051】
その後、基板Wの上面の中心位置に第2処理液供給ノズル17からリンス液(たとえば純水)が供給されることにより、リンス処理が行われる(ステップS10)。なお、基板Wへのリンス液の供給は、気体溶存ユニット18を動作させることなく、第2処理液供給ノズル17から純水を供給させる構成でもよいし、別途、リンス処理に用いる純水を供給するためのリンスノズルを設けて、このリンスノズルから純水を供給させる構成としてもよい。
【0052】
リンス処理が終了した後、制御装置4は、回転駆動機構2を制御して、基板Wを高速で回転させることにより、振り切り乾燥を行う(ステップS11)。その後、図示しない基板搬送手段によって、基板支持部材16に保持された基板Wが搬出される(ステップS12)。
【0053】
ここで、ステップS8における洗浄処理のメカニズムについて図5を用いて説明する。図5は、ステップS8における基板W表面に形成されている液膜の状態を図解的に表した図である。ステップS8では図5(a)に示すように、超音波振動板14および基板Wの下面との間には伝播液膜25が形成されており、基板Wの上面には第1液膜としてHFEの液膜が形成され、さらにその上層に第2液膜として気体溶存水の液膜が形成された状態となっている。この状態で、超音波振動板14から超音波振動が発せられると、超音波振動は、伝播液膜25、基板Wを透過してHFEおよび気体溶存水に付与される。
【0054】
気体溶存水に超音波振動が付与されると、図5(b)に示すように、気体溶存水中の圧力が減少することにより気体溶存水中に微小気泡が形成される。そして、この微小気泡が膨張・圧縮を繰り返すことにより気泡が成長し、その成長気泡が圧壊(瞬間的に気泡が消滅する現象)する。すなわち、キャビテーションが発生する。この成長気泡が圧壊するときに生じる衝撃エネルギーが基板Wの表面に作用することによって、パーティクルが除去されるといった物理洗浄効果が得られる。ここで、気体溶存水の下層にはHFEの液膜が存在している。したがって、気体溶存水で発生したキャビテーションによる衝撃エネルギーは、基板Wの上面に到達する前に、HFEの液膜によって緩和される。なお、HFEは気体溶存水よりも溶存気体量が少なく、その液中にほとんど気体が溶存していないため、超音波振動が付与されてもほとんどキャビテーションが発生することはない。したがって、HFEの液膜が存在することによって、キャビテーションによる衝撃エネルギーにより基板Wにダメージが発生してしまうことを抑制しつつ、基板Wの表面の洗浄処理を行うことができる。
【0055】
なお、気体溶存水で発生する衝撃エネルギーの大きさは、気体溶存水の液膜の厚み、気体の溶存量、超音波の周波数や強度を調節することによって制御することができる。また、基板Wに到達する衝撃エネルギーの大きさは、HFEの液膜の厚みを調節することによって制御することができる。ここで、液膜の厚みは、基板Wへの供給流量と基板Wの回転数を変えることによって調節することができ、気体溶存水中の溶存気体量は、溶存気体ユニットによって調節することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、スピンチャック10に保持された基板Wの上面に第1液膜としてHFEの液膜が形成され、さらにこの第1液膜を介在して第2液膜として気体溶存水の液膜が形成される。そして、この第1および第2液膜に対して超音波振動板14からの超音波振動が付与される。したがって、気体溶存水でのみ発生したキャビテーションによる衝撃エネルギーは、基板Wの表面に到達する前に、HFEの液膜によって緩和される。したがって、キャビテーションによる衝撃エネルギーは、基板Wの表面に形成されたデバイスパターンに直接作用しないため、パターンダメージが発生することを抑制することができる。したがって、基板Wの表面のダメージを抑制しつつ、基板Wの表面の洗浄処理を行うことができる。
【0057】
次に、この発明の第2実施形態を図6、図7および図8を参照して詳細に説明する。この図6および図7において、前述の図1〜図5に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図5と同一の参照符号を付してその説明を省略する。図6は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置100の概略構成を示す模式的な側面図である。図7は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態では、スピンチャックの構成と基板Wに超音波振動を付与する機構が第1実施形態とは異なる。
【0058】
基板処理装置100は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック200と、スピンチャック200に保持された基板Wの上面に第1処理液、第2処理液をそれぞれ供給する第1処理液供給ノズル20、第2処理液供給ノズル17と、基板Wの上面に超音波振動を付与する超音波振動付与機構300を備えている。また、スピンチャック200の周囲には、基板Wの上面に供給された処理液が基板W上から排出されるのを阻止するためのリング110が配置されている。
【0059】
スピンチャック200は、鉛直方向に延びる回転軸101と、この回転軸101の上端に取り付けられて、基板Wを水平な姿勢でその下面(裏面)を吸着して保持する吸着ベース102とを備えている。また、回転軸101は、モータ等を含む回転駆動機構109に連結されている。この回転駆動機構109によって回転軸101を鉛直軸線まわりに回転駆動することによって、吸着ベース102に基板Wを吸着保持させた状態で基板Wの中心を通る鉛直軸線まわりに基板Wを回転させることができる。回転駆動機構109は、制御装置4によって制御される(図7参照)。
【0060】
リング110は、側面が下端部から上端部に向けて径が徐々に大きくなるように曲面状とされた円筒状の部材である。リング110は、鉛直方向に沿う円筒状の内周面110aを有している。リング110は、スピンチャック200に保持された基板Wと同軸になるように水平姿勢でシリンダ103によって下方から支持されている。シリンダ103は、本体部103aと、本体部103aに対して進退するロッド103bとを有している。シリンダ103は、ロッド103bを2つの位置(上死点および下死点)の間で移動させることができる。この実施形態では、前記2つの位置でロッド103bを停止させることができ、中間位置でロッド103bを停止させることができないものがシリンダ103として用いられている。シリンダ103は、たとえば処理液に対する耐性を有する材料(たとえば合成樹脂)によって形成されている。したがって、処理液がシリンダ103に付着しても、シリンダ103が腐食等することが抑制または防止されている。
【0061】
制御装置4は、シリンダ103を制御して(図7参照)、リング110がスピンチャック200に保持された基板Wの周囲に位置する上位置(図6において二点鎖線で示すリング110の位置)と、スピンチャック200に保持された基板Wよりも下方に位置する下位置(図6において実線で示すリング110の位置)との間で、リング110を鉛直方向に昇降させることができる。スピンチャック200に基板Wが保持された状態でリング110を上位置に移動させると、基板Wの周囲がリング110によって取り囲まれる。リング110の内周面110aの径は、基板Wの直径よりもわずかに大きくなるように設定されている。
【0062】
超音波振動付与機構300は、基板Wの回転範囲外に配置され、鉛直方向に延びる支柱107と、支柱107の上端に配置された回転軸107aに支持されて、スピンチャック200による基板Wの保持位置よりも上方で略水平に延びる揺動アーム106と、この揺動アーム106の先端部から下方に延びる支持部材105によって支持され、基板Wの上面に超音波振動を付与する超音波振動板104と、揺動アーム106を回転軸107aを中心として水平方向に揺動させる揺動駆動機構108とを備えている。超音波振動板104には超音波振動子(図示せず)が内蔵されており、この超音波振動子に給電して超音波振動を発生させるためのドライバ回路111が接続されている。揺動駆動機構108、ドライバ回路111は制御装置4によって制御される(図7参照)。
【0063】
超音波振動板104は、基板Wのほぼ半径分の長さを有する直方体の石英部材で構成されている。また、超音波振動板104は、その下面がスピンチャック200に保持された基板Wの上面よりも高く、かつ基板Wの上面に形成された液膜に接するような高さ位置に設けられている。制御装置4は、揺動アーム106を水平方向に揺動させることによって、回転軸107aを中心とした円弧状の軌跡に沿って超音波振動板104を水平移動させることができる。これにより、超音波振動板104は、スピンチャック200に保持された基板Wの上面に沿う方向に揺動する。
【0064】
次に、第2実施形態に係る基板処理装置100による基板Wの処理動作を説明する。図8は、この基板処理装置による基板Wの処理動作のフローチャートである。基板Wに対する処理を開始する前に、制御装置4は、回転駆動機構109を停止させて、スピンチャック200を停止状態にする。また、第1処理液供給バルブ21、第2処理液供給バルブ19は全て閉じられている。そして、図示しない基板搬送手段によって、未処理の基板Wが吸着ベース102上に搬入される(ステップS101)。
【0065】
次に、制御装置4は、シリンダ103を制御して、リング110をスピンチャック200に保持された基板Wの周囲に位置する上位置(図6において二点鎖線で示すリング110の位置)まで鉛直方向に上昇させる(ステップS102)。
【0066】
その後、制御装置4は、回転駆動機構109を制御して、スピンチャック200の回転を開始させる(ステップS103)。また、第1処理液供給バルブ21、第2処理液供給バルブ19および気体溶存ユニット18を制御して、第1処理液供給ノズル20および第2処理液供給ノズル17から回転中の基板Wの中心位置に向けてHFEおよび気体溶存水を供給させる(ステップS104)。この際、気体溶存水に溶存される気体の溶存量は、気体溶存ユニット18と制御装置4によって所望の値に制御されている。基板Wの中心位置に供給されたHFEおよび気体溶存水は、基板Wの回転による遠心力により基板Wの周縁部に向けて拡がり、基板Wの上面全体に供給される。ここで、基板Wの周囲にはリング110が配置されているため、基板Wの上面に供給されたHFEおよび気体溶存水は、基板Wの周端部から排出されずに基板Wの上面に留まり液膜を形成する。
【0067】
基板Wの上面全体にHFEおよび気体溶存水が供給された後、制御装置4は、回転駆動機構109を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS105)。これにより、基板Wの上面全域には、HFEおよび気体溶存水の混合液がパドル(液盛り)された状態となる。この状態で、基板Wを所定時間静止させる。HFEは純水に対して不溶性であり、かつ純水よりも比重が大きいため、基板W上のHFEおよび気体溶存水は、時間が経過するにつれて、基板W上で分離し、下層にHFEの液膜(第1液膜)が形成され、上層に気体溶存水の液膜(第2液膜)が形成される(ステップS106)。その後、制御装置4は、回転駆動機構109を制御して、基板Wを低速(基板W上のHFEおよび気体溶存水の液膜がくずれない程度の速度で、たとえば10〜20rpm)で回転させる(ステップS107)。
【0068】
次に、制御装置4は、揺動駆動機構108を制御することにより、揺動アーム106を揺動させて、超音波振動板104の下面を基板Wの上面に形成された第2液膜(気体溶存水)に接液させる。そして、ドライバ回路111を制御することにより、超音波振動板104から超音波振動を発生させて、第2液膜(すなわち気体溶存水)に対して超音波振動を付与させる。また、揺動アーム106を揺動させることにより、超音波振動板104を回転軸107aを中心とした円弧状の軌跡に沿って揺動させる(ステップS108)。これにより、基板Wの上面全域に対して、超音波振動を付与することができる。また、超音波振動板104を揺動させることにより、基板Wの回転中心付近に集中的に超音波振動が付与されることが防止される。このように、超音波振動が所定時間第1および第2液膜に付与されることにより、第1実施形態と同様の洗浄メカニズムにより、基板Wの上面全域に対して洗浄処理を行うことができる。また、この実施形態では、第2液膜に超音波振動板104を接触させることにより、超音波振動板104から第2液膜に超音波振動を直接付与することができるため、超音波振動を第2液膜に効率的に付与することができる。
【0069】
超音波振動付与工程(ステップS108)が終了した後、制御装置4は、シリンダ103を制御して、リング110をスピンチャック200に保持された基板Wよりも下方に位置する下位置(図6において実線で示すリング110の位置)まで下降させる(ステップS109)。
【0070】
その後、制御装置4は回転駆動機構109を制御して、基板Wを高速回転させる(ステップS110)。これにより、基板W上の第1液膜(HFE)および第2液膜(気体溶存水)が振り切られる。
【0071】
その後、基板Wの上面の中心位置に第2処理液供給ノズル17からリンス液(たとえば純水)が供給されることにより、リンス処理が行われる(ステップS111)。なお、基板Wへのリンス液の供給は、気体溶存ユニット18を動作させることなく、第2処理液供給ノズル17から純水を供給させる構成でもよいし、別途、リンス処理に用いる純水を供給するためのリンスノズルを設けて、リンスノズルから純水を供給させる構成としてもよい。
【0072】
リンス処理が終了した後、制御装置4は、回転駆動機構109を制御して、基板Wを高速で回転させることにより、振り切り乾燥を行う(ステップS112)。その後、図示しない基板搬送手段によって基板Wが搬出される(ステップS113)。
【0073】
このように、第2実施形態では、基板Wの上面に超音波振動板104が配置されて、超音波振動板104を第2液膜に接液させることにより、超音波振動が第2液膜に付与される。したがって、第1実施形態のように、超音波振動が伝播液膜、基板Wを透過することなく、直接第2液膜に付与されるので、超音波振動板104から発せられた超音波振動が効率的に第2液膜に付与される。
【0074】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の第1、第2実施形態では超音波振動付与工程(ステップS8、S108)が終了して、基板Wを高速回転させた後、純水によるリンス処理(ステップS10、S111)を行わせているが、リンス処理は必ずしも行われなくてもよい。
【0075】
また、前述の第1、第2実施形態では、第1液膜および第2液膜を形成する工程(ステップS6、S106)において、基板Wの上面に第1処理液および第2処理液が同時に供給されているが、第1処理液と第2処理液は順に基板Wに供給されてもよい。すなわち、まず、第2処理液である気体溶存水が基板W上面全域に供給された後に第1処理液であるHFEが基板Wに供給されるようにしてもよい。また、その逆で先にHFEが基板Wの上面全域に供給された後に気体溶存水が供給されてもよい。
【0076】
また、前述の第2実施形態では、基板Wの半径分の長さを有する直方体形状の超音波振動板104が用いられているが、超音波振動板104の形状は基板Wの直径分の長さを有する直方体形状であってもよいし、基板Wの上面に対向する下面が基板Wの回転中心から拡がるような扇形を有する扇形状のものであってもよい。また、基板Wとほぼ同一径を有する円板形状のものであってもよい。この場合は超音波振動板を基板W上で揺動させなくても基板Wの上面全域に超音波振動を付与することができる。
【0077】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、100 基板処理装置
2、109 回転駆動機構
3、111 ドライバ回路
4 制御装置
10、200 スピンチャック
11、101 回転軸
12 ベース部材
13 堰部材
14、104 超音波振動板
14a 超音波振動子
15 伝播液供給ノズル
15a 吐出口
16 基板支持部材
17 第2処理液供給ノズル
18 気体溶存ユニット
19 第2処理液供給バルブ
20 第1処理液供給ノズル
21 第1処理液供給バルブ
22 HFE供給源
23 伝播液供給バルブ
24 脱気ユニット
25 伝播液膜
30 純水供給源
102 吸着ベース
103 シリンダ
103a 本体部
103b ロッド
105 支持部材
106 揺動アーム
107 支柱
108 揺動駆動機構
110 リング
110a 内周面
300 超音波振動付与機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に対して第1処理液を供給し、基板の表面に第1液膜を形成する第1液膜形成手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に対して前記第1処理液とは異なる処理液であり、前記第1処理液よりも溶存気体量が多い第2処理液を供給し、前記第1液膜を介在させて基板の表面に第2液膜を形成する第2液膜形成手段と、
前記第1および第2液膜に対して、超音波振動を付与する超音波振動付与手段と、
を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2処理液に対して気体を溶存させる気体溶存手段と、
前記気体溶存手段による前記第2処理液中への溶存気体量を制御する制御手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1処理液は前記第2処理液に対して不溶性であり、かつ前記第2処理液よりも比重が大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1液膜形成手段および前記第2液膜形成手段は、基板の表面に前記第1処理液および前記第2処理液を供給した後、所定時間経過させることにより、前記第1処理液および前記第2処理液を比重の差で分離させることによって、基板の表面に前記第1液膜および前記第2液膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記超音波振動付与手段は、前記第1および第2液膜が形成された基板の表面の反対側に設けられ、
前記超音波振動付与手段が設けられた側の基板の表面に、前記超音波振動付与手段による超音波振動が付与される伝播液膜を形成する伝播液膜形成手段をさらに含み、
前記超音波振動付与手段により付与された超音波振動は、前記伝播液膜および基板を透過して前記第1および第2液膜に付与されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を水平に保持する基板保持工程と、
前記基板保持工程で保持された基板に対して第1処理液を供給し、基板の表面に第1液膜を形成する第1液膜形成工程と、
前記基板保持工程で保持された基板に対して前記第1処理液とは異なる処理液であり、前記第1処理液よりも溶存気体量が多い第2処理液を供給し、前記第1液膜を介在させて基板の表面に第2液膜を形成する第2液膜形成工程と、
前記第1および第2液膜に対して、超音波振動を付与する超音波振動付与工程と、
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記第2処理液に対して気体を溶存させる気体溶存工程と、
前記気体溶存工程において前記第2処理液への溶存気体量を制御する制御工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1処理液は前記第2処理液に対して不溶性であり、かつ前記第2処理液よりも比重が大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1液膜形成工程および前記第2液膜形成工程は、基板の表面に前記第1処理液および前記第2処理液を供給した後、所定時間経過させることにより、前記第1処理液および前記第2処理液を比重の差で分離させることによって、基板の表面に前記第1液膜および前記第2液膜を形成することを特徴とする請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
第1および第2液膜が形成された基板の表面の反対側の基板の表面に、超音波振動を伝播する伝播液膜を形成する伝播液膜形成工程をさらに含み、
前記超音波振動付与工程は、超音波振動が前記伝播液膜に対して付与され、前記超音波振動は前記伝播液膜および基板を透過して前記第1および第2液膜に付与されることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の基板処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−77144(P2011−77144A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224735(P2009−224735)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】