基板処理装置
【課題】ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させ、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させる。
【解決手段】多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、処理室内と連通するプラズマ発生室と、処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、処理室内を排気する排気ラインと、を備える。
【解決手段】多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、処理室内と連通するプラズマ発生室と、処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、処理室内を排気する排気ラインと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、種類の異なる複数種の処理ガスを基板の表面に交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法による基板処理工程が実施される場合がある。かかる基板処理工程では、例えば、基板を収容した処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後に処理室内を排気する工程と、処理室内に第2の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後に処理室内を排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返す。近年、基板への熱投入量を低減させるため、ALD法による基板処理工程において、プラズマにより生成させた活性種(ラジカルとも呼ぶ)やイオンを基板表面に供給する場合がある。
【特許文献1】特開2004−289166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ALD法を実施する従来の基板処理装置では、プラズマ発生位置と基板との距離が離れているため、基板表面に供給される活性種やイオンの密度を、基板面内に亘って均一にすることが困難であり、基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。また、プラズマ発生位置にて発生させた活性種やイオンが、基板に到達する前に失活したり電気的に中性化したりしてしまう場合があり、基板表面に供給される活性種やイオンの量が減少し、基板処理速度が低下してしまう場合があった。
【0004】
そこで本発明は、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させ、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる基板処理装置によれば、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させ、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、参考までに、従来の基板処理装置(バッチ式プラズマ処理装置)の処理炉の構成を、図10及び図11を用いて説明する。
【0008】
図10及び図11に示すように、従来の処理炉は、反応管としてのプロセスチューブ7’と、プロセスチューブ7’の内壁面に沿うように垂直に設けられた一対の保護管8’とを有している。プロセスチューブ7’内には、基板としてのウエハ6’を水平姿勢で多段に支持する基板支持具としてのボート3’が収納されている。保護管8’の下方端部は、プロセスチューブ7’の外側に向けてプロセスチューブ7’の側壁を貫通している。一対の保護管8’内には、高周波電源13’に接続された一対の電極9’が保護管8’の下方端部からそれぞれ挿入されている。プロセスチューブ7’の内壁には、プラズマ発生室10’を形成する桶型状の隔壁11’が、一対の保護管8’を気密に取り囲むように設置されている。隔壁11’には、プロセスチューブ7’内に収容されたウエハ6間の領域に向くように、複数の吹出口12’が配列されている。
【0009】
そして、プラズマ発生室10’内に処理ガスが供給されるとともに、一対の電力9’に対して高周波電力が供給されると、プラズマ発生室10’内にプラズマが形成され、プラズマ発生室10’内に供給された処理ガスが活性化されて電気的に中性な活性種(ラジカル)やイオンが生成される。そして、生成された活性種やイオンが吹出口12’から吹き出し、プロセスチューブ7’内に収容されたウエハ6間の領域に供給され、ウエハ6’の表面を処理するように構成されている。
【0010】
しかしながら、上述した従来の基板処理装置では、プラズマ発生室10’(プラズマ発生位置)とウエハ6’(基板)との距離が離れている。そのため、ウエハ6’表面に供給される活性種やイオンの密度をウエハ6’面内で均一にすることが困難であり、基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。また、プラズマ発生室10’にて発生させた活性種やイオンが、基板に到達する前に失活したり電気的に中性化したりしてしまう場合があり、ウエハ6’表面に供給される活性種やイオンの密度が低下し、基板処理速度が低下してしまう場合があった。
【0011】
そこで発明者等は、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させるとともに、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させる方法について鋭意検討を行った。その結果、基板間の領域に電子線を供給して基板の近くでプラズマを発生させることにより、上述の課題を解決可能との知見を得るに至った。本発明は、発明者等が得たかかる知見を基になされた発明である。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
以下に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図9,図2,図1,図7を用いて説明する。図9は、本実施形態にかかる基板処理装置の全体構成図である。図2は、本実施形態にかかる基板処理装置の備える処理炉の縦断面図であり、図1は、図2に示す本実施形態にかかる処理炉のX−X断面図である。図7は、本実施形態にかかるガス供給ラインの配置例を示す処理炉の断面構成図である。
【0013】
図9に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は、ウエハ(基板)の搬送容器で
あるウエハカセットを搭載するカセットストッカ1と、基板保持具としてのボート3と、カセットストッカ1に搭載されたウエハカセットとボート3との間でウエハの移載を行うウエハ移載手段(移載機)2と、ボート3を処理炉5内外に搬送するボート昇降手段(ボートエレベータ)4と、加熱手段(ヒータ)を備えた処理炉5と、を備えている。
【0014】
(プロセスチューブ)
図1及び図2に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置の処理炉5は、反応管としてのプロセスチューブ7を有している。プロセスチューブ7は、例えば石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱材料から構成され、上端部が閉塞し下端部が開口した円筒形状に構成されている。プロセスチューブ7内には、基板としてのウエハ6を処理する処理室46が形成されている。処理室46内には、基板支持具としてのボート3が、ボート昇降手段4により搬入されるように構成されている。ボート3は、複数枚のウエハ6を、それぞれ水平姿勢で、かつ互いに中心を揃えた状態で上下方向に多段に支持するように構成されている。ボート3が処理室46内に搬入されると、プロセスチューブ7の下端部は気密に封止されるように構成されている。ボート3は、回転機構36の回転軸により下方から支持されている。回転機構36を作動させることにより、基板処理中に処理室46内でウエハ6を回転させることが可能なように構成されている。回転機構36の回転軸は、軸受けにより処理室46内の気密を保持したまま支持される。また、プロセスチューブ7の外周を囲うように、処理室46内のウエハ6表面を加熱するヒータ16が設けられている。
【0015】
(プラズマ発生室)
プロセスチューブ7の内壁には、上下方向に延びた隔壁11が設けられている。プロセスチューブ7の内壁と隔壁11とにより、処理室46内と連通するプラズマ発生室17が形成されている。隔壁11は、プロセスチューブ7と同心円状であってボート3に支持された各ウエハ6の外周に沿うように形成された断面円弧状の中心壁11aと、中心壁11aの端部とプロセスチューブ7の内壁とを接続する接続壁11bと、から構成されている。
【0016】
隔壁11の中心壁11aには、電子(電子線24)を吹き出す複数の吹出口12が設けられている。吹出口12は、プロセスチューブ7内にて上下方向に多段に支持されたウエハ6間に電子線(電子ビーム)を噴出するように構成されている。吹出口12は、ボート3に支持されたウエハ6の中心方向に向くように、また隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、上下方向に等間隔でそれぞれ配列されている。なお、吹出口12は、ウエハ6の中心方向に向く場合に限らず、ウエハ6の中心から多少ずれた方向に向くように構成されていてもよい。処理室46とプラズマ発生室17とは、吹出口12を介して連通している。隔壁11は、吹出口12を除いて、処理室46とプラズマ発生室17とを気密に区画している。
【0017】
(ガス供給ライン)
本実施形態にかかる処理炉5は、処理室46内に第1の処理ガスとしての例えばSiH2Cl2ガス(以下、原料ガスAとも呼ぶ)を供給する第1処理ガス供給ラインと、処理室46内に第2の処理ガスとしての例えばNH3ガス(以下、反応ガスBとも呼ぶ)を供給する第2処理ガス供給ラインと、プラズマ発生室17内に第3の処理ガスとしてのHeガス(以下、電子源ガスCとも呼ぶ)を供給する第3処理ガス供給ラインと、を備えている。
【0018】
第1処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通するガス
導入ポート37aを介して、図7に示す第1供給ノズル33に接続されている。また、第2処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通するガス導入ポ
ート37bを介して、図7に示す第2供給ノズル34に接続されている。また、第3処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通する図示しないガス導入ポートを介して、図7に示す第3供給ノズル35に接続されている。従って、第1供給ノズル33は、第1処理ガス供給ラインから供給される原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を、プラズマ発生室17内ではなく処理室5内に直接供給するように構成されている。第2供給ノズル34は、第2処理ガス供給ラインから供給される原料ガスB(NH3ガス)を、プラズマ発生室17内ではなく処理室5内に直接供給するように構成されている。第3供給ノズル35は、第3処理ガス供給ラインから供給される電子源ガスC(Heガス)を、処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給するように構成されている。
【0019】
なお、第1供給ノズル33、及び第2供給ノズル34には、ウエハ6の中心方向に向くように、そして、隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、複数のガス供給口がそれぞれ設けられていることが好ましい。また、第3供給ノズル35には、プロセスチューブ7の内壁と後述するグリッド電極19との間の領域に向くように、そして、隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、複数のガス供給口が設けられていることが好ましい。
【0020】
また、プラズマ発生室17内にパージガスを供給する図示しないパージガス供給ラインをさらに備えることが好ましい。かかる場合、パージガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通する図示しないガス導入ポートを介して、図示しないパージガス供給ノズルに接続される。パージガス供給ノズルは、パージガス供給ラインから供給されるパージガスを、処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給するように構成されることが好ましい。なお、パージガスは、Heガス、Arガス、N2ガス等の他の不活性ガスを用いることが可能である。また、パージガス供給ラインは、かかる実施形態に限定されず、第3処理ガス供給ラインと一体に設けられていてもよい。すなわち、上述の第3処理ガス供給ラインが、プラズマ発生室17内にパージガスを供給するパージガス供給ラインとしても機能するように構成されていてもよい。
【0021】
(プラズマ発生装置)
プロセスチューブ7の外周側であってプラズマ発生室17に対応する位置には、金属や炭素等の通電性物質からなる一対の電極22を備えた誘導結合型プラズマ(ICP:Inductivity Coupled Plasma)源が配置されている。また、電極22とプロセスチューブ7との間には、金属製のシールド23が配設されている。一対の電極22の両端には、高周波電源13がそれぞれ接続されている。電極22、シールド23、及び高周波電源13により、第3の処理ガスとしての電子源ガスC(Heガス)が供給されたプラズマ発生室17内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置が構成されている。
【0022】
(電子源供給装置)
プラズマ発生室17の中には、上下に延びた平板状のグリッド電極(バイアス電極)19と、同様に上下に延びた平板状のアノード電極(加速電極)20とが設けられている。グリッド電極19とアノード電極20とは互いの主面が平行に対向するように設けられている。グリッド電極19はプロセスチューブ7の内壁に対向するように設けられ、アノード電極20は隔壁の中心壁11aと対向するようにそれぞれ設けられている。また、グリッド電極19とアノード電極20との間に、同様に上下に延びた平板状の中間電極(制御電極)29が設けられている。
【0023】
グリッド電極19には直流電源21の陰極側に接続されており、アノード電極20には直流電源21の陽極側が接続されている。また、中間電極29には、直流電源31の陽極側が接続されている。直流電源21の陽極側及び直流電源31の陰極側はそれぞれ接地さ
れている。すなわち、グリッド電極19はマイナス電位、中間電極29はプラス電位、アノード電極20はゼロ電位となるように構成されている。
【0024】
グリッド電極19、中間電極29、及びアノード電極20には、図3に示すように、吹出口12に対応する位置であって互いに同心円状になるように、電子通過孔19a,29a,20aがそれぞれ複数設けられている。
【0025】
グリッド電極19、アノード電極20、中間電極29、直流電源21、及び直流電源31により、プラズマ発生室17内にて発生させた電子源プラズマから電子を集束させつつ抽出し、電子線24を生成し、処理室46内のウエハ6間の領域に照射する電子源供給装置が構成される。
【0026】
(排気ライン)
プロセスチューブ7の側壁であってプラズマ発生室17が設けられている側と反対側には、処理室46内の雰囲気を排気する開口である排気口32が設けられている。排気口32には、真空ポンプ38が設けられた図示しない排気ラインが接続されている。
【0027】
(2)基板処理装置の動作
続いて、ALD法により窒化シリコン(SiN)膜を成膜する本実施形態にかかる基板処理装置の動作について、前述の図の他に、特に、図3、図4〜図6、図8を用いて説明する。図3は、本実施形態にかかる反応寄与プラズマの発生メカニズムを説明する概略図である。図4〜図6は、図3の要部拡大図である。図8は、本実施形態にかかるガスの供給シーケンスを示す概略図である。尚、以下の動作における各構成の制御は、制御手段としてのコントローラ50が行う。
【0028】
まず、処理対象のウエハ6を収容したウエハカセットを、カセットストッカ1に格納する。そして、ウエハ移載手段2により、カセットストッカ1に搭載されたウエハカセットからボート3へと処理対象のウエハ6を移載する。そして、処理対象のウエハ6を支持するボート3をボート昇降手段4により処理炉5内に搬入し、処理室46内を気密に封止する(ローディング工程)。
【0029】
その後、真空ポンプ38を作動させ、処理室46内を所定の圧力まで減圧する。そして、回転機構36を作動(回転)させてウエハ6を回転させつつ、ヒータ16により処理室46内のウエハ6の表面を加熱する(減圧及び昇温工程)。
【0030】
(工程1)
そして、図8に示すように、第1処理ガス供給ライン(第1供給ノズル33)より、ウエハ6を収容した処理室46内に第1の処理ガスとしての原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を供給して、ウエハ6表面と反応させる(工程1)。その結果、ウエハ6の表面に原料ガスA(SiH2Cl2ガス)のガス分子が吸着する。
【0031】
この際、パージガス供給ライン(パージガス供給ノズル)より、プラズマ発生室17内にパージガスを供給することが好ましい。これにより、第1処理ガス供給ラインより処理室46内に供給した原料ガスAがプラズマ発生室17内に進入してしまうことが抑制できる。なお、パージガスが処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給されることで、吹出口12を介してプラズマ発生室17内から処理室46内へと向かうパージガスの流れが生成され、あるいはプラズマ発生室17内の圧力が高まり、プラズマ発生室17内への原料ガスAの侵入を抑制できる。
【0032】
(工程2)
所定時間経過後、第1処理ガス供給ラインからの原料ガスAの供給を停止して、上述の排気ラインにより処理室46内を排気して、処理室46内を所定の圧力まで減圧する(工程2)。この際、プラズマ発生室17内にHeガス等のパージガスを供給するとともに、処理室46内へN2ガス等の不活性ガスを供給するようにすれば、プラズマ発生室17内及び処理室46内の残留雰囲気を排気する速度が更に高まる。
【0033】
(工程3)
そして、図8に示すように、第2処理ガス供給ライン(第2供給ノズル34)より処理室46内に第2の処理ガスとしての反応ガスB(NH3ガス)を供給するとともに、第3ガス供給ライン(第3供給ノズル35)よりプラズマ発生室17内に(第3の処理ガス)としての電子源ガスC(Heガス)を供給する。そして、以下に示すようにプラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、電子線供給装置により処理室46内のウエハ6間の領域に電子を照射して電子ビーム励起プラズマ(EBEP:Electron−Beam−Exited−Plasma)である反応寄与プラズマを発生させ、反応寄与プラズマによりウエハ6表面を処理する(工程3)。
【0034】
以下に、反応寄与プラズマの発生メカニズムを具体的に説明する。
【0035】
プラズマ発生室17内に電子源ガスC(Heガス)を供給した状態で、高周波電源13により電極22へ高周波電力を印加することにより、プラズマ発生室17内に電子源プラズマが発生した状態となる。図3に示すように、プラズマ発生室17内に発生した電子源プラズマ中には、電子源ガスC(Heガス)のガス分子の正イオン(図中C+と表す)25と電子(図中eと表す)26とが混在しており、全体として中性を保っている。
【0036】
そこで、直流電源21、及び直流電源31を作動させて、グリッド電極19、中間電極29、アノード電極20間にそれぞれ所定の電界を発生させる。その結果、電子源プラズマ中の電子26は、縦方向に多段に電子通過孔19aが形成されたグリッド電極19によって軌道修正を受けて集束され、さらに、グリッド電極19と同様に縦方向に多段に電子通過孔20aが形成されたアノード電極20に向かって加速されることで抽出される。加速された(抽出された)電子26は、電子線(電子ビーム)24となって隔壁11に多段に形成された吹出口12より射出され、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域に供給されている反応ガスB(NH3ガス)のガス分子(図中Bと表す)28に照射される。その結果、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域に反応寄与プラズマ(EBEP)が発生し、反応ガスB(NH3ガス)のガス分子28が励起されて活性種が生成されたり、イオン(図中B+と表す)27が生成されたりする。
【0037】
そして、ウエハ6表面に吸着している原料ガスAのガス分子と活性種が反応したり、該ガス分子とイオン(B+)27とが反応したりして、ウエハ6表面に窒化シリコン(SiN)膜が成膜される。
【0038】
なお、図3に示すように、ウエハ6の間の領域にて生成されたイオン(B+)27は、電気的に中性ではないため、電子線24とは逆方向30へ流れ、隔壁11に多段に形成された吹出口12を介してプラズマ発生室17内へと流れ込もうとする。しかしながら、グリッド電極19とアノード電極20との間に設置された中間電極29に対して直流電源31により正の電圧を印加することにより、イオン(B+)27は軌道修正を受け、ゼロ電位に設置されたアノード電極20へと吸収されることとなる。これにより、イオン(B+)27がプラズマ発生室17内へ流れ込んでグリッド電極19へ衝突してしまうことを抑制でき、グリッド電極19がスパッタリングされてしまうことを抑制でき、プラズマ発生室17内に電子源プラズマを安定して発生させることが可能となる。
【0039】
但し、上述のように中間電極29に電圧を印加することにより、プラズマ発生室17内の電子の軌道や加速度が影響を受けてしまう場合がある。そのため、中間電極29に印加する電圧値を所定の範囲内に制限する必要がある。なお、かかる範囲は実験的に求めることが可能である。
【0040】
(工程4)
その後、第2処理ガス供給ラインからの原料ガスAの供給を停止するとともに、第3処理ガス供給ラインからの電子源ガスC(Heガス)の供給を停止する。そして、上述の排気ラインにより処理室46内を排気して、処理室46内を所定の圧力まで減圧する(工程4)。この際、プラズマ発生室17内にHeガス等のパージガスを供給するとともに、処理室46内へN2ガス等の不活性ガスを供給するようにすれば、プラズマ発生室17内及び処理室46内を排気する速度が更に高まる。
【0041】
そして、上述の工程1〜工程4を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウエハ6表面に所定の膜厚のSiN膜を形成し、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。その後、処理済みのウエハ6を支持するボート3を処理室46内から搬出し、上述の手順とは逆の手順により、処理済みのウエハ6をボート3からカセットストッカ1内に移載して、次の処理工程へ搬送する。
【0042】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたはそれ以上の効果を奏する。
【0043】
本実施形態によれば、水平姿勢で支持されたウエハ6の正面(真上)から電子を照射するのではなく、ウエハ6の表面に沿う方向、例えば表面と平行から電子ビームを照射している。ウエハ6の正面(真上)から電子線24を照射しようとすれば、電子線24のビーム径を広げる必要があるため、レンズや電極等の部品が必要になり基板処理装置の構造が複雑になるばかりか、電子線24内の電子密度を均一にすることが困難になる。これに対し、本実施形態では、ウエハ6表面と平行に電子線24を照射しているので、そのような問題が少なく、ウエハ6の表面近傍の広い範囲で反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させることができ、ウエハ6表面に供給される活性種やイオン27の密度の面内均一性を向上させ、ウエハ6面内における基板処理の均一性を向上させることが可能となる。
【0044】
本実施形態によれば、基板処理中にウエハ6を回転させているので、ウエハ6の面内で均一に反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させることができ、ウエハ6表面に供給される活性種やイオン27の密度の面内均一性を向上させ、ウエハ6面内における基板処理の均一性を向上させることが可能となる。
【0045】
本実施形態によれば、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域にて反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させ、ウエハ6の直近で活性種やイオン27を生成させている。すなわち、活性種やイオン27の寿命が短い場合であっても、活性種やイオン27を生成領域とウエハ6との距離が近いことから、ウエハ6の表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能となり、基板処理の効率を向上させることが可能となる。
【0046】
本実施形態によれば、容量性結合型プラズマ(CCP)などで発生させた高エネルギープラズマにウエハ6が直接に晒されるわけではないので、ウエハ6自体がプラズマからダメージを受けることを抑制できる。
【0047】
本実施形態によれば、プラズマ発生室17では、電子26を取り出すためにだけプラズマ(電子源プラズマ)を発生させればよいので、高出力の高周波を印加する必要がなく、プロセスチューブ7を構成する石英壁などのスパッタリング量を低減できる。
【0048】
本実施形態によれば、プラズマ発生装置としてICP源を用いており、また、ICP源がプロセスチューブ7の外に設けられている。そのため、フィラメント(超高温の金属)を使用する場合と比べて、ICP源が処理室46内の汚染源には成り得ず、非常にクリーンである。
【0049】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして原子量が小さいHe(原子量:4.0006)ガスを用いている。そのため、グリッド電極19のスパッタリング量を抑制でき、プラズマ発生室17内に安定してプラズマを発生させることができる。グリッド電極19がスパッタリングされるメカニズムを図4に示す。グリッド電極19はマイナス電位とされるため、工程3においてプラズマ発生室17内で発生した正イオン(C+)25は、グリッド電極19に向けて加速され、グリッド電極19表面に衝突し、グリッド電極19表面がスパッタリングされる場合がある。かかるスパッタリング量は、正イオン(C+)25の運動エネルギーに関係する。Arガスを電子源ガスCとして用いることとすれば、Arは原子量が39.95と比較的大きいため、グリッド電極19のスパッタリング量が増大してしまうことになる。本実施形態によれば、Heは原子量が4.0006と小さいため、かかる課題を回避することが可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして非反応性の希ガスであるHeガスを用いている。そのため、グリッド電極19等がケミカルエッチングされたり、表面改質されたりしてしまうことを抑制できる。これに対して、電子源ガスCとして例えばH2ガス等の反応性ガスを用いることとすれば、グリッド電極19等がケミカルエッチングされたり、表面改質されたりしてしまう場合がある。
【0051】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜に寄与する処理ガスではなく非反応性の希ガスであるHeガスを用いている。そのため、プラズマ発生室17内に膜が成膜されてしまうことを抑制でき、プラズマ発生室17内に安定的にプラズマを発生させることが可能となる。すなわち、工程1において処理室46内に第1の処理ガスとしての原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を供給すると、図5に示すように、プラズマ発生室17内には原料ガスAのガス分子(図中Aと表す)が進入してしまう場合がある。その状態で、電子源ガスCとして例えば反応ガスBに用いるNH3ガスを用い、これをプラズマ発生室17内に供給すると、図6に示すように、プラズマ発生室17内に侵入した原料ガスAのガス分子と、電子源ガスCとしてのNH3ガスのガス分子の正イオン(図中でC+と表す)とが反応し、SiN等の反応生成物Eがプラズマ発生室17内に堆積して成膜が生じてしまう場合がある。かかる場合、電子源プラズマの状態が変化してしまい、それにより反応寄与プラズマ(EBEP)の均一性や再現性が低下してしまう場合がある。本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜に寄与する処理ガスではなく非反応性の希ガスであるHeガスを用いているため、反応生成物Eが堆積せず、かかる課題を回避できる。
【0052】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜する膜種によらず、非反応性の希ガスであるHeガスを常に用いることとしている。仮に、電子源ガスCのガス種として成膜に寄与する処理ガスを用いることとすると、成膜する膜種を変更するたびに電子源ガスCのガス種が変更されることとなり、電子源プラズマや反応寄与プラズマ(EBEP)の状態が大きく変化し、基板処理の条件を都度調整してやる必要が生じてしまう。本実施形態によれば、成膜する膜種を変更したとしても、電子源ガスCとして常にHeガスを用いることから、電子源プラズマや反応寄与プラズマ(EBEP)の状態は変化しにくく、基板処理の条件を安定させることが可能となる。
【0053】
本実施形態によれば、工程1において、パージガス供給ライン(パージガス供給ノズル)より、プラズマ発生室17内にパージガスを供給することが出来る。これにより、第1
処理ガス供給ラインより処理室46内に供給した原料ガスAがプラズマ発生室17内に進入してしまうことが抑制され、プラズマ発生室17内に安定的にプラズマを発生させることが可能となる。例えば、パージガスが処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給されることで、吹出口12を介してプラズマ発生室17内から処理室46内へと向かうパージガスの流れが生成され、あるいはプラズマ発生室17内の圧力が高まり、プラズマ発生室17内への原料ガスAの侵入を抑制できる。
【0054】
<本発明の他の実施形態>
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変更して実施することが可能である。
【0055】
上述の実施形態ではSiN膜を成膜する場合について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されない。例えば、SiO膜、ナノハライド、メタル膜の成膜にも適用可能であり、プラズマを用いる基板処理である限り膜種を限定することなく適用可能である。また、プラズマを用いてH2活性種によりウエハ6上の自然酸化膜を除去する場合にも適用可能である。
【0056】
また、上述の実施形態では、プラズマ発生室17におけるプラズマ発生装置として、一例として高周波を印加することによるICP源を採用しているが、これに限定されない。例えば、電子サイクロトロン共鳴プラズマや、表面波プラズマなど、スパッタ作用を極力抑えたプラズマ発生方式であれば他の方式を用いたプラズマ発生装置を採用することも可能である。
【0057】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の好ましい態様を付記する。
【0058】
第1の態様は、
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する基板処理装置が提供される。
【0059】
好ましくは、前記第2の処理ガスはヘリウムガスである。
【0060】
好ましくは、前記第1処理ガス供給ラインから供給される前記第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給ノズルと、前記第2処理ガス供給ラインから供給される前記第2の処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給ノズルと、前記第3処理ガス供給ライン
から供給される前記第3の処理ガスを前記プラズマ発生室内に供給する第3供給ノズルと、を備える。
【0061】
好ましくは、前記プラズマ発生室内にパージガスを供給するパージガス供給ラインを備える。さらに好ましくは、前記パージガス供給ラインから供給される前記パージガスを前記プラズマ発生室内に供給するパージガスノズルを備える。
【0062】
好ましくは、記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させる工程と、
前記排気ラインより前記処理室内を排気する工程と、
前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する工程と、
前記排気ラインより前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図2に示す本発明の一実施形態にかかる処理炉のX−X断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の備える処理炉の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる反応寄与プラズマの発生メカニズムを説明する概略図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】図3の要部拡大図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるガス供給ラインの配置例を示す処理炉の断面構成図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるガス供給シーケンスを示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の全体構成図である。
【図10】従来の基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【図11】図10に示す従来の処理炉のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0064】
2 ウエハ移載手段
3 ボート(基板支持具)
5 処理炉
6 ウエハ(基板)
7 プロセスチューブ
17 プラズマ発生室
19 グリッド電極
20 アノード電極
24 電子線
32 排気口
33 第1供給ノズル
34 第2供給ノズル
35 第3供給ノズル
46 処理室
50 コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、種類の異なる複数種の処理ガスを基板の表面に交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法による基板処理工程が実施される場合がある。かかる基板処理工程では、例えば、基板を収容した処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後に処理室内を排気する工程と、処理室内に第2の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後に処理室内を排気する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返す。近年、基板への熱投入量を低減させるため、ALD法による基板処理工程において、プラズマにより生成させた活性種(ラジカルとも呼ぶ)やイオンを基板表面に供給する場合がある。
【特許文献1】特開2004−289166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ALD法を実施する従来の基板処理装置では、プラズマ発生位置と基板との距離が離れているため、基板表面に供給される活性種やイオンの密度を、基板面内に亘って均一にすることが困難であり、基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。また、プラズマ発生位置にて発生させた活性種やイオンが、基板に到達する前に失活したり電気的に中性化したりしてしまう場合があり、基板表面に供給される活性種やイオンの量が減少し、基板処理速度が低下してしまう場合があった。
【0004】
そこで本発明は、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させ、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる基板処理装置によれば、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させ、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、参考までに、従来の基板処理装置(バッチ式プラズマ処理装置)の処理炉の構成を、図10及び図11を用いて説明する。
【0008】
図10及び図11に示すように、従来の処理炉は、反応管としてのプロセスチューブ7’と、プロセスチューブ7’の内壁面に沿うように垂直に設けられた一対の保護管8’とを有している。プロセスチューブ7’内には、基板としてのウエハ6’を水平姿勢で多段に支持する基板支持具としてのボート3’が収納されている。保護管8’の下方端部は、プロセスチューブ7’の外側に向けてプロセスチューブ7’の側壁を貫通している。一対の保護管8’内には、高周波電源13’に接続された一対の電極9’が保護管8’の下方端部からそれぞれ挿入されている。プロセスチューブ7’の内壁には、プラズマ発生室10’を形成する桶型状の隔壁11’が、一対の保護管8’を気密に取り囲むように設置されている。隔壁11’には、プロセスチューブ7’内に収容されたウエハ6間の領域に向くように、複数の吹出口12’が配列されている。
【0009】
そして、プラズマ発生室10’内に処理ガスが供給されるとともに、一対の電力9’に対して高周波電力が供給されると、プラズマ発生室10’内にプラズマが形成され、プラズマ発生室10’内に供給された処理ガスが活性化されて電気的に中性な活性種(ラジカル)やイオンが生成される。そして、生成された活性種やイオンが吹出口12’から吹き出し、プロセスチューブ7’内に収容されたウエハ6間の領域に供給され、ウエハ6’の表面を処理するように構成されている。
【0010】
しかしながら、上述した従来の基板処理装置では、プラズマ発生室10’(プラズマ発生位置)とウエハ6’(基板)との距離が離れている。そのため、ウエハ6’表面に供給される活性種やイオンの密度をウエハ6’面内で均一にすることが困難であり、基板処理の均一性が低下してしまう場合があった。また、プラズマ発生室10’にて発生させた活性種やイオンが、基板に到達する前に失活したり電気的に中性化したりしてしまう場合があり、ウエハ6’表面に供給される活性種やイオンの密度が低下し、基板処理速度が低下してしまう場合があった。
【0011】
そこで発明者等は、ALD法による基板処理工程を実施する際に、基板表面に供給される活性種やイオンの密度の面内均一性を向上させるとともに、基板表面に供給される活性種やイオンの量を増加させる方法について鋭意検討を行った。その結果、基板間の領域に電子線を供給して基板の近くでプラズマを発生させることにより、上述の課題を解決可能との知見を得るに至った。本発明は、発明者等が得たかかる知見を基になされた発明である。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
以下に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図9,図2,図1,図7を用いて説明する。図9は、本実施形態にかかる基板処理装置の全体構成図である。図2は、本実施形態にかかる基板処理装置の備える処理炉の縦断面図であり、図1は、図2に示す本実施形態にかかる処理炉のX−X断面図である。図7は、本実施形態にかかるガス供給ラインの配置例を示す処理炉の断面構成図である。
【0013】
図9に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は、ウエハ(基板)の搬送容器で
あるウエハカセットを搭載するカセットストッカ1と、基板保持具としてのボート3と、カセットストッカ1に搭載されたウエハカセットとボート3との間でウエハの移載を行うウエハ移載手段(移載機)2と、ボート3を処理炉5内外に搬送するボート昇降手段(ボートエレベータ)4と、加熱手段(ヒータ)を備えた処理炉5と、を備えている。
【0014】
(プロセスチューブ)
図1及び図2に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置の処理炉5は、反応管としてのプロセスチューブ7を有している。プロセスチューブ7は、例えば石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱材料から構成され、上端部が閉塞し下端部が開口した円筒形状に構成されている。プロセスチューブ7内には、基板としてのウエハ6を処理する処理室46が形成されている。処理室46内には、基板支持具としてのボート3が、ボート昇降手段4により搬入されるように構成されている。ボート3は、複数枚のウエハ6を、それぞれ水平姿勢で、かつ互いに中心を揃えた状態で上下方向に多段に支持するように構成されている。ボート3が処理室46内に搬入されると、プロセスチューブ7の下端部は気密に封止されるように構成されている。ボート3は、回転機構36の回転軸により下方から支持されている。回転機構36を作動させることにより、基板処理中に処理室46内でウエハ6を回転させることが可能なように構成されている。回転機構36の回転軸は、軸受けにより処理室46内の気密を保持したまま支持される。また、プロセスチューブ7の外周を囲うように、処理室46内のウエハ6表面を加熱するヒータ16が設けられている。
【0015】
(プラズマ発生室)
プロセスチューブ7の内壁には、上下方向に延びた隔壁11が設けられている。プロセスチューブ7の内壁と隔壁11とにより、処理室46内と連通するプラズマ発生室17が形成されている。隔壁11は、プロセスチューブ7と同心円状であってボート3に支持された各ウエハ6の外周に沿うように形成された断面円弧状の中心壁11aと、中心壁11aの端部とプロセスチューブ7の内壁とを接続する接続壁11bと、から構成されている。
【0016】
隔壁11の中心壁11aには、電子(電子線24)を吹き出す複数の吹出口12が設けられている。吹出口12は、プロセスチューブ7内にて上下方向に多段に支持されたウエハ6間に電子線(電子ビーム)を噴出するように構成されている。吹出口12は、ボート3に支持されたウエハ6の中心方向に向くように、また隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、上下方向に等間隔でそれぞれ配列されている。なお、吹出口12は、ウエハ6の中心方向に向く場合に限らず、ウエハ6の中心から多少ずれた方向に向くように構成されていてもよい。処理室46とプラズマ発生室17とは、吹出口12を介して連通している。隔壁11は、吹出口12を除いて、処理室46とプラズマ発生室17とを気密に区画している。
【0017】
(ガス供給ライン)
本実施形態にかかる処理炉5は、処理室46内に第1の処理ガスとしての例えばSiH2Cl2ガス(以下、原料ガスAとも呼ぶ)を供給する第1処理ガス供給ラインと、処理室46内に第2の処理ガスとしての例えばNH3ガス(以下、反応ガスBとも呼ぶ)を供給する第2処理ガス供給ラインと、プラズマ発生室17内に第3の処理ガスとしてのHeガス(以下、電子源ガスCとも呼ぶ)を供給する第3処理ガス供給ラインと、を備えている。
【0018】
第1処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通するガス
導入ポート37aを介して、図7に示す第1供給ノズル33に接続されている。また、第2処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通するガス導入ポ
ート37bを介して、図7に示す第2供給ノズル34に接続されている。また、第3処理ガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通する図示しないガス導入ポートを介して、図7に示す第3供給ノズル35に接続されている。従って、第1供給ノズル33は、第1処理ガス供給ラインから供給される原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を、プラズマ発生室17内ではなく処理室5内に直接供給するように構成されている。第2供給ノズル34は、第2処理ガス供給ラインから供給される原料ガスB(NH3ガス)を、プラズマ発生室17内ではなく処理室5内に直接供給するように構成されている。第3供給ノズル35は、第3処理ガス供給ラインから供給される電子源ガスC(Heガス)を、処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給するように構成されている。
【0019】
なお、第1供給ノズル33、及び第2供給ノズル34には、ウエハ6の中心方向に向くように、そして、隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、複数のガス供給口がそれぞれ設けられていることが好ましい。また、第3供給ノズル35には、プロセスチューブ7の内壁と後述するグリッド電極19との間の領域に向くように、そして、隣接するウエハ6間の領域の高さ位置に対応するように、複数のガス供給口が設けられていることが好ましい。
【0020】
また、プラズマ発生室17内にパージガスを供給する図示しないパージガス供給ラインをさらに備えることが好ましい。かかる場合、パージガス供給ラインの下流側端部は、プロセスチューブ7の側壁を貫通する図示しないガス導入ポートを介して、図示しないパージガス供給ノズルに接続される。パージガス供給ノズルは、パージガス供給ラインから供給されるパージガスを、処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給するように構成されることが好ましい。なお、パージガスは、Heガス、Arガス、N2ガス等の他の不活性ガスを用いることが可能である。また、パージガス供給ラインは、かかる実施形態に限定されず、第3処理ガス供給ラインと一体に設けられていてもよい。すなわち、上述の第3処理ガス供給ラインが、プラズマ発生室17内にパージガスを供給するパージガス供給ラインとしても機能するように構成されていてもよい。
【0021】
(プラズマ発生装置)
プロセスチューブ7の外周側であってプラズマ発生室17に対応する位置には、金属や炭素等の通電性物質からなる一対の電極22を備えた誘導結合型プラズマ(ICP:Inductivity Coupled Plasma)源が配置されている。また、電極22とプロセスチューブ7との間には、金属製のシールド23が配設されている。一対の電極22の両端には、高周波電源13がそれぞれ接続されている。電極22、シールド23、及び高周波電源13により、第3の処理ガスとしての電子源ガスC(Heガス)が供給されたプラズマ発生室17内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置が構成されている。
【0022】
(電子源供給装置)
プラズマ発生室17の中には、上下に延びた平板状のグリッド電極(バイアス電極)19と、同様に上下に延びた平板状のアノード電極(加速電極)20とが設けられている。グリッド電極19とアノード電極20とは互いの主面が平行に対向するように設けられている。グリッド電極19はプロセスチューブ7の内壁に対向するように設けられ、アノード電極20は隔壁の中心壁11aと対向するようにそれぞれ設けられている。また、グリッド電極19とアノード電極20との間に、同様に上下に延びた平板状の中間電極(制御電極)29が設けられている。
【0023】
グリッド電極19には直流電源21の陰極側に接続されており、アノード電極20には直流電源21の陽極側が接続されている。また、中間電極29には、直流電源31の陽極側が接続されている。直流電源21の陽極側及び直流電源31の陰極側はそれぞれ接地さ
れている。すなわち、グリッド電極19はマイナス電位、中間電極29はプラス電位、アノード電極20はゼロ電位となるように構成されている。
【0024】
グリッド電極19、中間電極29、及びアノード電極20には、図3に示すように、吹出口12に対応する位置であって互いに同心円状になるように、電子通過孔19a,29a,20aがそれぞれ複数設けられている。
【0025】
グリッド電極19、アノード電極20、中間電極29、直流電源21、及び直流電源31により、プラズマ発生室17内にて発生させた電子源プラズマから電子を集束させつつ抽出し、電子線24を生成し、処理室46内のウエハ6間の領域に照射する電子源供給装置が構成される。
【0026】
(排気ライン)
プロセスチューブ7の側壁であってプラズマ発生室17が設けられている側と反対側には、処理室46内の雰囲気を排気する開口である排気口32が設けられている。排気口32には、真空ポンプ38が設けられた図示しない排気ラインが接続されている。
【0027】
(2)基板処理装置の動作
続いて、ALD法により窒化シリコン(SiN)膜を成膜する本実施形態にかかる基板処理装置の動作について、前述の図の他に、特に、図3、図4〜図6、図8を用いて説明する。図3は、本実施形態にかかる反応寄与プラズマの発生メカニズムを説明する概略図である。図4〜図6は、図3の要部拡大図である。図8は、本実施形態にかかるガスの供給シーケンスを示す概略図である。尚、以下の動作における各構成の制御は、制御手段としてのコントローラ50が行う。
【0028】
まず、処理対象のウエハ6を収容したウエハカセットを、カセットストッカ1に格納する。そして、ウエハ移載手段2により、カセットストッカ1に搭載されたウエハカセットからボート3へと処理対象のウエハ6を移載する。そして、処理対象のウエハ6を支持するボート3をボート昇降手段4により処理炉5内に搬入し、処理室46内を気密に封止する(ローディング工程)。
【0029】
その後、真空ポンプ38を作動させ、処理室46内を所定の圧力まで減圧する。そして、回転機構36を作動(回転)させてウエハ6を回転させつつ、ヒータ16により処理室46内のウエハ6の表面を加熱する(減圧及び昇温工程)。
【0030】
(工程1)
そして、図8に示すように、第1処理ガス供給ライン(第1供給ノズル33)より、ウエハ6を収容した処理室46内に第1の処理ガスとしての原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を供給して、ウエハ6表面と反応させる(工程1)。その結果、ウエハ6の表面に原料ガスA(SiH2Cl2ガス)のガス分子が吸着する。
【0031】
この際、パージガス供給ライン(パージガス供給ノズル)より、プラズマ発生室17内にパージガスを供給することが好ましい。これにより、第1処理ガス供給ラインより処理室46内に供給した原料ガスAがプラズマ発生室17内に進入してしまうことが抑制できる。なお、パージガスが処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給されることで、吹出口12を介してプラズマ発生室17内から処理室46内へと向かうパージガスの流れが生成され、あるいはプラズマ発生室17内の圧力が高まり、プラズマ発生室17内への原料ガスAの侵入を抑制できる。
【0032】
(工程2)
所定時間経過後、第1処理ガス供給ラインからの原料ガスAの供給を停止して、上述の排気ラインにより処理室46内を排気して、処理室46内を所定の圧力まで減圧する(工程2)。この際、プラズマ発生室17内にHeガス等のパージガスを供給するとともに、処理室46内へN2ガス等の不活性ガスを供給するようにすれば、プラズマ発生室17内及び処理室46内の残留雰囲気を排気する速度が更に高まる。
【0033】
(工程3)
そして、図8に示すように、第2処理ガス供給ライン(第2供給ノズル34)より処理室46内に第2の処理ガスとしての反応ガスB(NH3ガス)を供給するとともに、第3ガス供給ライン(第3供給ノズル35)よりプラズマ発生室17内に(第3の処理ガス)としての電子源ガスC(Heガス)を供給する。そして、以下に示すようにプラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、電子線供給装置により処理室46内のウエハ6間の領域に電子を照射して電子ビーム励起プラズマ(EBEP:Electron−Beam−Exited−Plasma)である反応寄与プラズマを発生させ、反応寄与プラズマによりウエハ6表面を処理する(工程3)。
【0034】
以下に、反応寄与プラズマの発生メカニズムを具体的に説明する。
【0035】
プラズマ発生室17内に電子源ガスC(Heガス)を供給した状態で、高周波電源13により電極22へ高周波電力を印加することにより、プラズマ発生室17内に電子源プラズマが発生した状態となる。図3に示すように、プラズマ発生室17内に発生した電子源プラズマ中には、電子源ガスC(Heガス)のガス分子の正イオン(図中C+と表す)25と電子(図中eと表す)26とが混在しており、全体として中性を保っている。
【0036】
そこで、直流電源21、及び直流電源31を作動させて、グリッド電極19、中間電極29、アノード電極20間にそれぞれ所定の電界を発生させる。その結果、電子源プラズマ中の電子26は、縦方向に多段に電子通過孔19aが形成されたグリッド電極19によって軌道修正を受けて集束され、さらに、グリッド電極19と同様に縦方向に多段に電子通過孔20aが形成されたアノード電極20に向かって加速されることで抽出される。加速された(抽出された)電子26は、電子線(電子ビーム)24となって隔壁11に多段に形成された吹出口12より射出され、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域に供給されている反応ガスB(NH3ガス)のガス分子(図中Bと表す)28に照射される。その結果、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域に反応寄与プラズマ(EBEP)が発生し、反応ガスB(NH3ガス)のガス分子28が励起されて活性種が生成されたり、イオン(図中B+と表す)27が生成されたりする。
【0037】
そして、ウエハ6表面に吸着している原料ガスAのガス分子と活性種が反応したり、該ガス分子とイオン(B+)27とが反応したりして、ウエハ6表面に窒化シリコン(SiN)膜が成膜される。
【0038】
なお、図3に示すように、ウエハ6の間の領域にて生成されたイオン(B+)27は、電気的に中性ではないため、電子線24とは逆方向30へ流れ、隔壁11に多段に形成された吹出口12を介してプラズマ発生室17内へと流れ込もうとする。しかしながら、グリッド電極19とアノード電極20との間に設置された中間電極29に対して直流電源31により正の電圧を印加することにより、イオン(B+)27は軌道修正を受け、ゼロ電位に設置されたアノード電極20へと吸収されることとなる。これにより、イオン(B+)27がプラズマ発生室17内へ流れ込んでグリッド電極19へ衝突してしまうことを抑制でき、グリッド電極19がスパッタリングされてしまうことを抑制でき、プラズマ発生室17内に電子源プラズマを安定して発生させることが可能となる。
【0039】
但し、上述のように中間電極29に電圧を印加することにより、プラズマ発生室17内の電子の軌道や加速度が影響を受けてしまう場合がある。そのため、中間電極29に印加する電圧値を所定の範囲内に制限する必要がある。なお、かかる範囲は実験的に求めることが可能である。
【0040】
(工程4)
その後、第2処理ガス供給ラインからの原料ガスAの供給を停止するとともに、第3処理ガス供給ラインからの電子源ガスC(Heガス)の供給を停止する。そして、上述の排気ラインにより処理室46内を排気して、処理室46内を所定の圧力まで減圧する(工程4)。この際、プラズマ発生室17内にHeガス等のパージガスを供給するとともに、処理室46内へN2ガス等の不活性ガスを供給するようにすれば、プラズマ発生室17内及び処理室46内を排気する速度が更に高まる。
【0041】
そして、上述の工程1〜工程4を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウエハ6表面に所定の膜厚のSiN膜を形成し、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。その後、処理済みのウエハ6を支持するボート3を処理室46内から搬出し、上述の手順とは逆の手順により、処理済みのウエハ6をボート3からカセットストッカ1内に移載して、次の処理工程へ搬送する。
【0042】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたはそれ以上の効果を奏する。
【0043】
本実施形態によれば、水平姿勢で支持されたウエハ6の正面(真上)から電子を照射するのではなく、ウエハ6の表面に沿う方向、例えば表面と平行から電子ビームを照射している。ウエハ6の正面(真上)から電子線24を照射しようとすれば、電子線24のビーム径を広げる必要があるため、レンズや電極等の部品が必要になり基板処理装置の構造が複雑になるばかりか、電子線24内の電子密度を均一にすることが困難になる。これに対し、本実施形態では、ウエハ6表面と平行に電子線24を照射しているので、そのような問題が少なく、ウエハ6の表面近傍の広い範囲で反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させることができ、ウエハ6表面に供給される活性種やイオン27の密度の面内均一性を向上させ、ウエハ6面内における基板処理の均一性を向上させることが可能となる。
【0044】
本実施形態によれば、基板処理中にウエハ6を回転させているので、ウエハ6の面内で均一に反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させることができ、ウエハ6表面に供給される活性種やイオン27の密度の面内均一性を向上させ、ウエハ6面内における基板処理の均一性を向上させることが可能となる。
【0045】
本実施形態によれば、ボート3に支持されるウエハ6の間の領域にて反応寄与プラズマ(EBEP)を発生させ、ウエハ6の直近で活性種やイオン27を生成させている。すなわち、活性種やイオン27の寿命が短い場合であっても、活性種やイオン27を生成領域とウエハ6との距離が近いことから、ウエハ6の表面に供給される活性種やイオンの量を増加させることが可能となり、基板処理の効率を向上させることが可能となる。
【0046】
本実施形態によれば、容量性結合型プラズマ(CCP)などで発生させた高エネルギープラズマにウエハ6が直接に晒されるわけではないので、ウエハ6自体がプラズマからダメージを受けることを抑制できる。
【0047】
本実施形態によれば、プラズマ発生室17では、電子26を取り出すためにだけプラズマ(電子源プラズマ)を発生させればよいので、高出力の高周波を印加する必要がなく、プロセスチューブ7を構成する石英壁などのスパッタリング量を低減できる。
【0048】
本実施形態によれば、プラズマ発生装置としてICP源を用いており、また、ICP源がプロセスチューブ7の外に設けられている。そのため、フィラメント(超高温の金属)を使用する場合と比べて、ICP源が処理室46内の汚染源には成り得ず、非常にクリーンである。
【0049】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして原子量が小さいHe(原子量:4.0006)ガスを用いている。そのため、グリッド電極19のスパッタリング量を抑制でき、プラズマ発生室17内に安定してプラズマを発生させることができる。グリッド電極19がスパッタリングされるメカニズムを図4に示す。グリッド電極19はマイナス電位とされるため、工程3においてプラズマ発生室17内で発生した正イオン(C+)25は、グリッド電極19に向けて加速され、グリッド電極19表面に衝突し、グリッド電極19表面がスパッタリングされる場合がある。かかるスパッタリング量は、正イオン(C+)25の運動エネルギーに関係する。Arガスを電子源ガスCとして用いることとすれば、Arは原子量が39.95と比較的大きいため、グリッド電極19のスパッタリング量が増大してしまうことになる。本実施形態によれば、Heは原子量が4.0006と小さいため、かかる課題を回避することが可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして非反応性の希ガスであるHeガスを用いている。そのため、グリッド電極19等がケミカルエッチングされたり、表面改質されたりしてしまうことを抑制できる。これに対して、電子源ガスCとして例えばH2ガス等の反応性ガスを用いることとすれば、グリッド電極19等がケミカルエッチングされたり、表面改質されたりしてしまう場合がある。
【0051】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜に寄与する処理ガスではなく非反応性の希ガスであるHeガスを用いている。そのため、プラズマ発生室17内に膜が成膜されてしまうことを抑制でき、プラズマ発生室17内に安定的にプラズマを発生させることが可能となる。すなわち、工程1において処理室46内に第1の処理ガスとしての原料ガスA(SiH2Cl2ガス)を供給すると、図5に示すように、プラズマ発生室17内には原料ガスAのガス分子(図中Aと表す)が進入してしまう場合がある。その状態で、電子源ガスCとして例えば反応ガスBに用いるNH3ガスを用い、これをプラズマ発生室17内に供給すると、図6に示すように、プラズマ発生室17内に侵入した原料ガスAのガス分子と、電子源ガスCとしてのNH3ガスのガス分子の正イオン(図中でC+と表す)とが反応し、SiN等の反応生成物Eがプラズマ発生室17内に堆積して成膜が生じてしまう場合がある。かかる場合、電子源プラズマの状態が変化してしまい、それにより反応寄与プラズマ(EBEP)の均一性や再現性が低下してしまう場合がある。本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜に寄与する処理ガスではなく非反応性の希ガスであるHeガスを用いているため、反応生成物Eが堆積せず、かかる課題を回避できる。
【0052】
本実施形態によれば、電子源ガスCとして、成膜する膜種によらず、非反応性の希ガスであるHeガスを常に用いることとしている。仮に、電子源ガスCのガス種として成膜に寄与する処理ガスを用いることとすると、成膜する膜種を変更するたびに電子源ガスCのガス種が変更されることとなり、電子源プラズマや反応寄与プラズマ(EBEP)の状態が大きく変化し、基板処理の条件を都度調整してやる必要が生じてしまう。本実施形態によれば、成膜する膜種を変更したとしても、電子源ガスCとして常にHeガスを用いることから、電子源プラズマや反応寄与プラズマ(EBEP)の状態は変化しにくく、基板処理の条件を安定させることが可能となる。
【0053】
本実施形態によれば、工程1において、パージガス供給ライン(パージガス供給ノズル)より、プラズマ発生室17内にパージガスを供給することが出来る。これにより、第1
処理ガス供給ラインより処理室46内に供給した原料ガスAがプラズマ発生室17内に進入してしまうことが抑制され、プラズマ発生室17内に安定的にプラズマを発生させることが可能となる。例えば、パージガスが処理室5内ではなくプラズマ発生室17内に直接供給されることで、吹出口12を介してプラズマ発生室17内から処理室46内へと向かうパージガスの流れが生成され、あるいはプラズマ発生室17内の圧力が高まり、プラズマ発生室17内への原料ガスAの侵入を抑制できる。
【0054】
<本発明の他の実施形態>
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変更して実施することが可能である。
【0055】
上述の実施形態ではSiN膜を成膜する場合について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されない。例えば、SiO膜、ナノハライド、メタル膜の成膜にも適用可能であり、プラズマを用いる基板処理である限り膜種を限定することなく適用可能である。また、プラズマを用いてH2活性種によりウエハ6上の自然酸化膜を除去する場合にも適用可能である。
【0056】
また、上述の実施形態では、プラズマ発生室17におけるプラズマ発生装置として、一例として高周波を印加することによるICP源を採用しているが、これに限定されない。例えば、電子サイクロトロン共鳴プラズマや、表面波プラズマなど、スパッタ作用を極力抑えたプラズマ発生方式であれば他の方式を用いたプラズマ発生装置を採用することも可能である。
【0057】
<本発明の好ましい態様>
以下に本発明の好ましい態様を付記する。
【0058】
第1の態様は、
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する基板処理装置が提供される。
【0059】
好ましくは、前記第2の処理ガスはヘリウムガスである。
【0060】
好ましくは、前記第1処理ガス供給ラインから供給される前記第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1供給ノズルと、前記第2処理ガス供給ラインから供給される前記第2の処理ガスを前記処理室内に供給する第2供給ノズルと、前記第3処理ガス供給ライン
から供給される前記第3の処理ガスを前記プラズマ発生室内に供給する第3供給ノズルと、を備える。
【0061】
好ましくは、前記プラズマ発生室内にパージガスを供給するパージガス供給ラインを備える。さらに好ましくは、前記パージガス供給ラインから供給される前記パージガスを前記プラズマ発生室内に供給するパージガスノズルを備える。
【0062】
好ましくは、記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させる工程と、
前記排気ラインより前記処理室内を排気する工程と、
前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する工程と、
前記排気ラインより前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図2に示す本発明の一実施形態にかかる処理炉のX−X断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の備える処理炉の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる反応寄与プラズマの発生メカニズムを説明する概略図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】図3の要部拡大図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるガス供給ラインの配置例を示す処理炉の断面構成図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるガス供給シーケンスを示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の全体構成図である。
【図10】従来の基板処理装置の処理炉の縦断面図である。
【図11】図10に示す従来の処理炉のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0064】
2 ウエハ移載手段
3 ボート(基板支持具)
5 処理炉
6 ウエハ(基板)
7 プロセスチューブ
17 プラズマ発生室
19 グリッド電極
20 アノード電極
24 電子線
32 排気口
33 第1供給ノズル
34 第2供給ノズル
35 第3供給ノズル
46 処理室
50 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、
前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2の処理ガスはヘリウムガスである
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項1】
多段に積載された複数の基板を収納する処理室と、
前記処理室内と連通するプラズマ発生室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給する第3処理ガス供給ラインと、
第3の処理ガスが供給された前記プラズマ発生室内に電子源プラズマを発生させるプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生室内にて発生させた電子源プラズマから電子を抽出して前記処理室内の基板間の領域に照射する電子線供給装置と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を備え、
前記第1処理ガス供給ラインより前記処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面と反応させた後、前記排気ラインより前記処理室内を排気し、
前記第2処理ガス供給ラインより前記処理室内に第2の処理ガスを供給するとともに、前記第3ガス供給ラインより前記プラズマ発生室内に第3の処理ガスを供給し、前記プラズマ発生装置により電子源プラズマを発生させ、前記電子線供給装置により前記処理室内の基板間の領域に電子を照射して反応寄与プラズマを発生させ、前記反応寄与プラズマにより基板表面を処理する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2の処理ガスはヘリウムガスである
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−283794(P2009−283794A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136074(P2008−136074)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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