説明

変位計測方法とその装置

【課題】
光干渉を用いた変位計測装置において、プローブ光路と参照光路とが空間的に分離して
いるため、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じた場合
、両光路間で光路差が変動し、測定誤差となってしまう。
【解決手段】
プローブ光の光軸と参照光の光軸を外乱の影響を受けない距離まで近接させて、プロー
ブ光を対象物に、参照光を参照面に各々照射し、その反射光同士を干渉させ、生じた干渉
光から対象物の変位量を求める

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉を用いて対象物の変位を計測する方法とその装置に係り、特にレーザ
光を対象物に照射し、その反射光を参照光と干渉させ、得られた干渉信号から対象物の変
位量を計測する変位計測方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の変位量あるいは移動量を計測する方法として、光干渉を用いる方法が広く知ら
れている(Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030)。その一例を図10に示す。
【0003】
図10に示す干渉計において、レーザヘッド301からは、偏光方向が互いに直交し、
かつ両者の光周波数が20MHz異なる2周波直交偏光ビーム302が出射される。この
ビームは偏光ビームスプリッタ303により、2つの偏光成分に分離される。S偏光ビー
ム303は偏光ビームスプリッタ303で反射された後、直角プリズム304で反射され
、参照光として偏光ビームスプリッタ303に入射する。P偏光ビーム305は偏光ビー
ムスプリッタ303を透過し、測定対象物400上に載置された直角プリズム306で反
射され、偏光ビームスプリッタ303に入射する。両反射ビームは偏光ビームスプリッタ
303で合成され、両反射ビームの偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板3
07を透過後ヘテロダイン干渉する。
【0004】
このヘテロダイン干渉光は光電変換素子308で受光され電気信号309に変換される
。このヘテロダイン干渉信号309の周波数fは、測定対象物400の移動速度Vに応
じたドップラーシフト周波数が加わり、(数1)で与えられる。
【0005】
=f±NV/λ ・・・ (数1)
ここで、f=20MHzである。λはレーザ光の波長である。また、N=2、4、・・
・で、光路の往復回数により決まる定数であり、図10の場合、N=2である。一方、レ
ーザヘッド301からは、参照信号としてf=20MHzのビート信号310が出力さ
れている。
【0006】
測定されたヘテロダイン干渉信号309及び参照信号310は位相検出回路311に入
力され、両信号間の位相差から測定対象物400の移動速度V及び移動量400dが求め
られ、移動量出力信号312として出力される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Meas. Sci. Technol., 9 (1998), 1024-1030
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10に示す干渉計においては、プローブ光路、即ちプローブ光であるP偏光ビーム3
05が通過する光路と参照光であるS偏光ビーム303が通過する参照光路とが空間的に
分離しているため、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生
じた場合、両光路間で光路差が変動し、これがナノメートルオーダの測定誤差となってし
まう。将来の45nmノードや32nmノード対応の半導体微細パターン製造用露光装置
やパターン寸法測定装置のステージ、あるいは局所的なキャラクタリゼーションに用いら
れるプローブ顕微鏡のプローブ位置制御にはサブナノメートルオーダ以下の位置決め精度
が要求されており、図10に示す従来技術では、この要求に応えることができない。温度
、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する方法も考えられうるが、装置コス
ト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決して、対象物の変位量や移動量を安定に計測可能な変位
計測方法とその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、光源からの光を第1の光と第2の光に分離し、第1の光の光軸と第2の光
の光軸とを近接させて第1の光を移動可能な対象物に照射し、第2の光を参照面に照射す
ることにより、対象物からの反射光と参照面からの反射光とを干渉させてその干渉光から
前記対象物の移動量を求める際に、外乱の影響を受けることなく高精度に対象物の移動量
を求めることを可能にした。
【0011】
また、本発明では、第1の光の光軸と第2の光の光軸とを近接させる際に、第1の光の
光軸と第2の光の光軸の周囲の媒体の物性変化が第1の光の光軸と第2の光の光軸に等し
く作用する距離として設定することにより、外乱の影響が2つの光に等しく作用して相殺
させることとなり、外乱の影響を受けることなく高精度に対象物の移動量を求めることを
可能にした。
【0012】
また、本発明では、第1の光の光軸と第2の光の光軸とを近接させる際に、第1の光の
光軸と第2の光の光軸とを一致させることにより、外乱の影響が2つの光に等しく作用し
て相殺させることとなり、外乱の影響を受けることなく高精度に対象物の移動量を求める
ことを可能にした。
【0013】
また、本発明では、参照面を回折格子で構成することにより、第1の光の光軸と第2の
光の光軸とを一致させることが可能となり、外乱の影響が2つの光に等しく作用し相殺さ
れることとなり、外乱の影響を受けることなく高精度に対象物の移動量を求めることが可
能となる。
【0014】
また、本発明は、光源からの光を第1の光と第2の光に分離し、第1の光の光軸と第2
の光の光軸とを近接させて第1の光を対象物の表面に照射し、第2の光を参照面に照射す
ることにより、対象物の表面からの反射光と参照面からの反射光とを干渉させてその干渉
光から前記対象物の表面の形状を求める際に、外乱の影響を受けることなく高精度に対象
物の表面形状を求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布あるいは機械振動といっ
た外乱の影響が、プローブ光(第1の光)と参照光(第2の光)に等しく作用するので、
2つの光が干渉した際に上記外乱の影響を相殺することが可能となる。この結果、空気揺
らぎや機械振動といった外乱の影響を受けることなく、サブナノメートルオーダ以下の精
度で干渉光から安定かつ高精度に対象物の変位量や移動量を求めることが可能となる。
【0016】
また、上記共通光路形干渉計を構成することにより変位計測装置を小さくすることがで
き、測定対象物周辺のスペースが小さい場合にも本装置の適用が可能となる。
【0017】
更に、温度、湿度、機械振動といった環境要因を高精度に制御する必要が無いため、装
置コスト、装置サイズ、使い勝手の面で、経済的効果が著しく向上するという効果も有す
る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1における変位計測装置の装置構成、光源ユニットの構成、2周波直交偏光ビーム及び偏光板の偏光方向を示す概略図である。
【図2】本発明における参照ミラーの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例2における、2周波He−Neレーザを用いた光源ユニットの構成と2周波直交偏光ビームの偏光方向を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例3における、光源ユニットから出射された2周波直交偏光ビームを偏波面保存ファイバにより干渉計ユニットに伝送する変位計測装置の装置構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例4における、複屈折プリズムを用いて参照光を生成する変位計測装置の装置構成を示す概略図である。
【図6】本発明の実施例5における、偏光ビームスプリッタと反射ミラーを用いて参照光を生成する変位計測装置の装置構成を示す概略図である。
【図7】本発明の実施例6における、プローブ光が1/4波長板とターゲットミラーとの間の光路を4往復する変位計測装置の装置構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施例7における、ホモダイン共通光路形干渉計を基本系とする変位計測装置の装置構成と光源ユニットの構成を示す概略図である。
【図9】本発明の実施例8における、ホモダイン共通光路形干渉計を基本系とする変位計測装置の装置構成を示す概略図である。
【図10】従来の光干渉を用いた変位計測装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、図により説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例を図1に基づいて説明する。本実施例の変位計測装置は、図1(a
)に示すように、光源ユニット2、干渉計ユニット3及び位相検出ユニット18から成る
。図1(b)に示すように、光源ユニット2においては、直線偏光レーザ光源21(例え
ば波長632.8nmの周波数安定化He−Neレーザ)からの直線偏光ビーム22を4
5°の偏光方向で偏光ビームスプリッタ23に入射させ、2つの偏光成分に分離する。P
偏光ビーム24は偏光ビームスプリッタ23を透過し、周波数fで駆動される音響光学
変調素子25(AOM:Acousto−Optic Modulator)により、光
周波数がfだけシフトする。
【0021】
一方、S偏光ビーム28は偏光ビームスプリッタ23で反射され、周波数f+f
駆動される音響光学変調素子29より、光周波数がf+fシフトする。ここで、f
は例えば100kHzから数10MHzである。P偏光ビーム24及びS偏光ビーム28
は各々ミラー26及び26’で反射された後、偏光ビームスプリッタ27で合成された後
、ミラー26”で反射されて、光源ユニット2から2周波直交偏光ビーム4として出射さ
れる。図1(c)中の24Pが2周波直交偏光ビーム4のP偏光ビーム24の偏光方向を
、28SがS偏光ビーム28の偏光方向を示している。
【0022】
2周波直交偏光ビーム4は干渉計ユニット3に入射し、非偏光ビームスプリッタ5によ
り、2つの光路に分離される。非偏光ビームスプリッタ5により反射された2周波直交偏
光ビーム6は、図1(c)の破線7aで示すように両偏光方向に対し45°方向に偏光角
を有する偏光板7を透過することによりヘテロダイン干渉する。このヘテロダイン干渉光
はホトダイオード等の光電変換素子8で受光されビート周波数fの電気信号9に変換さ
れ、参照信号として用いられる。一方、非偏光ビームスプリッタ5を透過した2周波直交
偏光ビーム10は、参照ミラー11に入射する。参照ミラー11は、図2に示すように、
合成石英基板11b上にAl等の金属材料で回折格子11gが形成された構成となってい
る。
【0023】
このような回折格子は、図中に示すように、2周波直交偏光ビーム10のうち、回折格
子の長手方向と平行なS偏光成分28Sは反射し、直交するP偏光成分24Pははそのま
ま透過する、いわゆる偏光素子(Wire Grid Polarizer)としての性
質を示す。本実施例の場合、回折格子11gのピッチは144nm、線幅は65nm、高
さは165nmとした。参照ミラー11で反射されたS偏光ビーム10rは参照光として
用いる。透過したP偏光ビーム10mはプローブ光として用いる。
【0024】
P偏光ビーム10mは1/4波長板12を透過した後円偏光となり、測定対象物1上に
載置されたターゲットミラー13で反射され、再び1/4波長板12を透過後S偏光とな
り、参照ミラー11で反射され、1/4波長板12を透過後円偏光としてターゲットミラ
ー13で反射され、1/4波長板12を透過後P偏光となり、参照ミラー11を透過する
。即ち、プローブ光10mは参照ミラー11とターゲットミラー13との間の光路を2往
復することになり、測定対象物1の移動量1dを2倍に拡大して検出することになる。
【0025】
参照ミラー11で反射されたS偏光ビーム10rと透過したP偏光ビーム10mは、2
周波直交偏光ビーム14として非偏光ビームスプリッタ5で反射される。この2周波直交
偏光ビーム14は、図1(c)の破線15aで示すように両偏光方向に対し45°方向に
偏光角を有する偏光板15を透過することによりヘテロダイン干渉する。このヘテロダイ
ン干渉光はホトダイオード等の光電変換素子16で受光され、電気信号17に変換される
。このヘテロダイン干渉信号17の周波数fは、測定対象物1の移動速度Vに応じたド
ップラーシフト周波数が加わり、(数1)で与えられる。
【0026】
(数1)において、N=4である。測定されたヘテロダイン干渉信号I(t)17及び
光電変換素子8で得られた参照信号9は位相検出ユニット18に入力され、両信号間の位
相差から測定対象物1の移動速度V及び移動量1dが求められ、移動量信号19として出
力される。位相検出ユニット18は、例えばロックインアンプ等が使用可能である。ヘテ
ロダイン干渉信号I(t)17は(数2)で与えられる。
【0027】
I(t)=I+I
+2(I・I1/2cos(2πfBt±2πNVt/λ) ・・・ (数2)
ここで、Iはプローブ光の検出強度、Iは参照光の検出強度、nは空気の屈折率、
λはレーザ光22の波長である。位相検出ユニット18からは、(数2)のcos成分の
中の第2項:±2πNVt/λが位相信号として出力される。例えば、位相信号がπ/1
800の場合、移動量1d=0.044nmとなる。
【0028】
図1から明らかなように、ターゲットミラー13に向かうプローブ光10mと参照光1
0rの2つのビームは、光源ユニット2から出射されて干渉計ユニット3に入射し、参照
ミラー11に至るまで、更に参照ミラー11から光電変換素子16で受光されるに至るま
で、完全に同一の光路を通る。即ち、共通光路形干渉計の構成となる。従って、仮に光路
中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、
これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれら外乱
の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。唯一、参照ミラー11とター
ゲットミラー13との間の光路においてプローブ光10mのみが存在するが、例えば、プ
ローブ顕微鏡等のストロークは高々数百ミクロン程度であるので、参照ミラー11とター
ゲットミラー13との間隙は1mm以下に設定することが可能であり、このような微小間
隙での外乱の影響は無視できる。
【0029】
また、図1(b)に示す光源ユニット2では、直交する2つの偏光ビーム24、28が
別光路を通る構成となっており、両光路間に外乱の影響が重畳する可能性がある。しかし
、仮に外乱の影響がのったとしても、その影響は測定されたヘテロダイン干渉光と参照光
の両方に等しくのるため、位相検出ユニット18において両者の位相差を検出する際に相
殺される。
【0030】
本実施例の干渉計の構成により、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制
御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートルからピコ
メートルの精度で安定に計測することが可能である。本実施例では、参照ミラーとして金
属回折格子(Wire Grid Polarizer)を用いることにより、2周波直
交偏光ビームのうち一方の偏光ビームからプローブ光を、他方の偏光ビームから参照光を
同軸上に生成することが可能となり、共通光路形ヘテロダイン干渉計を構成することがで
きるものである。
【実施例2】
【0031】
第1の実施例では、2周波直交偏光ビーム4を生成するために、図1(b)に示すように
、2つの偏光ビームスプリッタ23、27と2つの音響光学変調素子25、29を用いた
が、第2の実施例では、上記した第1の実施例において図1(b)に示した光源ユニット
2の代わりに図3(a)に示すように、光源ユニット2’に2周波He−Neレーザ31
(2本の縦モード発振を有するデュアルモードレーザ)を用いる。得られる2周波直交偏
光ビーム32の偏光方向は、図3(b)中の32P及び32Sに示す通りであり、一例と
して640MHz程度のビート信号が得られる。干渉計ユニット3及び位相検出ユニット
18の構成と機能は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。本実施例によれば
、第1の実施例と同様、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制御すること
なく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートルからピコメートルの
精度で安定に計測することが可能である。
【実施例3】
【0032】
次に本発明の第3の実施例として、光源ユニット2から出射された2周波直交偏光ビーム
4、32を偏波面保存ファイバにより干渉計ユニット3に伝送する変位計測装置について
、図4により説明する。2周波直交偏光ビーム4、32は、偏光ビームスプリッタ41に
より、P偏光ビーム42とS偏光ビーム45に分離される。P偏光ビーム42は集光レン
ズ43により偏波面保存ファイバ44の入射端面44aに集光され、直線偏光を維持した
まま伝送される。偏波面保存ファイバ44の出射端面44bから出射したP偏光ビームは
コリメーティングレンズ46で平行ビームとなり、偏光ビームスプリッタ41を透過する
。同様にS偏光ビーム45は集光レンズ43’により偏波面保存ファイバ44’の入射端面44’aに集光され、直線偏光を維持したまま伝送される。
【0033】
偏波面保存ファイバ44’の出射端面44’bから出射したS偏光ビームはコリメーティングレンズ46’で平行ビームとなり、偏光ビームスプリッタ41で反射される。P偏光ビームとS偏光ビームは合成されて再び2周波直交偏光ビーム48となり、干渉計ユニット3に入射する。干渉計ユニット3及び位相検出ユニット18の構成と機能は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
なお、本実施例において、光源2の代わりに、第2の実施例で説明した光源2’を用いてもよい。
【0035】
本実施例によれば、第1の実施例と同様、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高
精度に制御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートル
からピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。また、光源ユニット2を干
渉計ユニット3から分離して編波面保存ファイバ44及び44'で接続することにより遠
方に配置し、測定対象物1の近傍には干渉計ユニット3のみが配置されるので、測定対象
物1の近傍にスペースが無い場合にも適用できるという利点がある。
【実施例4】
【0036】
次に本発明の第4の実施例として、複屈折プリズムを用いて参照光を生成する方法につい
て、図5により説明する。本実施例の変位計測装置では、光源ユニット2及び位相検出ユ
ニット18の基本構成とその機能は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
また、本実施例においても、光源2の代わりに、第2の実施例で説明した光源2’を用い
てもよい。
【0037】
以下では、参照光の生成方法と干渉計ユニット503についてのみ説明する。非偏光ビ
ームスプリッタ5を透過した2周波直交偏光ビーム10のうちS偏光ビーム10brは、
複屈折特性を示す光学材料51と51’、例えば方解石を2枚張り合わせた複屈折プリズ
ム50により、その光軸が概ね200μm平行シフトし、誘電体多層膜で構成された反射
ミラー52で反射された後、参照光として元の光軸を戻っていく。一方、P偏光ビーム1
0bmは複屈折プリズム50をそのまま透過し、プローブ光としてターゲットミラー13
で反射された後、元の光軸を戻り、参照光10brと合成され、2周波直交偏光ビーム1
4として非偏光ビームスプリッタ5で反射される。この2周波直交偏光ビーム14は、第
1の実施例と同様、図1(c)の破線15aで示すように両偏光方向に対し45°方向に
偏光角を有する偏光板15を透過することによりヘテロダイン干渉する。このヘテロダイ
ン干渉光は光電変換素子16で受光され、電気信号67に変換される。以降の動作、信号
処理は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
図5から明らかなように、ターゲットミラー13に向かうプローブ光10bmと参照光
10brの2つのビームは、光源ユニット2から出射されて干渉計ユニット503に入射
し、複屈折プリズム50の入射面に至るまで、更に複屈折プリズム50の入射面から光電
変換素子16で受光されるに至るまで、完全に同一の光路を通る。即ち、共通光路形干渉
計の構成となる。従って、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あ
るいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、
両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受け
ない。唯一、複屈折プリズム50の入射面とターゲットミラー13との間の光路において
プローブ光10bmのみが存在するが、例えば、プローブ顕微鏡等のストロークは高々数
百ミクロン程度であるので、複屈折プリズム50の入射面とターゲットミラー13との間
隙は数mm以下に設定することが可能であり、このような微小間隙での外乱の影響は無視
できる。
【0039】
従って、本実施例によれば、第1の実施例と同様、温度、湿度、音響振動といった環境
因子を高精度に制御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノ
メートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。本実施例では、複
屈折プリズム50と反射ミラー52を用いることにより、2周波直交偏光ビームのうち一
方の偏光ビームからプローブ光を、他方の偏光ビームから参照光をほぼ同軸上に生成する
ことが可能となり、共通光路形ヘテロダイン干渉計を構成することができるものである。
【実施例5】
【0040】
次に本発明の第5の実施例として、偏光ビームスプリッタと反射ミラーを用いて参照光を
生成する方法について、図6により説明する。本実施例の変位計測装置では、光源ユニッ
ト2及び位相検出ユニット18の基本構成とその機能は第1の実施例と同様であるので、
説明を省略する。また、本実施例において、光源2の代わりに、第2の実施例で説明した
光源2’を用いてもよい。
【0041】
以下では、参照光の生成方法と干渉計ユニット603についてのみ説明する。光源ユニ
ット2から出射された2周波直交偏光ビーム4のうちおよそ4%が、ビームスプリッタ6
1(透過率96%、反射率4%)で反射され、反射された2周波直交偏光ビーム62は図
1(c)の破線7aで示すように両偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板7
を透過することによりヘテロダイン干渉する。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子8
で受光されビート周波数fの電気信号69に変換され、参照信号として用いられる。
【0042】
一方、ビームスプリッタ61を透過した2周波直交偏光ビーム63は、偏光ビームスプ
リッタ60によりS偏光ビーム64とP偏光ビ−ム65に分離される。S偏光ビーム64
は1/4波長板12’透過後円偏光となり、誘電体多層膜で構成された反射ミラー66で
反射された後、再び1/4波長板12’透過後P偏光となり、参照光として元の光軸を戻
り偏光ビームスプリッタ60を透過する。
【0043】
P偏光ビーム65は1/4波長板12”透過後円偏光となり、プローブ光としてターゲ
ットミラー13で反射された後、再び1/波長4板12”透過後S偏光となり、元の光軸
を戻り偏光ビームスプリッタ60で反射される。2つの戻り光は合成されて2周波直交偏
光ビーム67となり、第1の実施例と同様、図1(c)の破線15aで示すように両偏光
方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板15を透過することによりヘテロダイン干
渉する。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子16で受光され、電気信号68に変換さ
れる。以降の動作、信号処理は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
図6から明らかなように、ターゲットミラー13に向かうプローブ光65と参照光64
の2つのビームは、光源ユニット2から出射されて干渉計ユニット603に入射し、偏光
ビームスプリッタ60内のみを透過する。空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、
あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすと考
えられ、両ビームが干渉した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影
響を受けにくい。唯一、1/4波長板12”とターゲットミラー13との間の光路におい
てプローブ光65は空気中を通過するが、例えば、プローブ顕微鏡等のストロークは高々
数百ミクロン程度であるので、1/4波長板12”とターゲットミラー13との間隙は1
mm以下に設定することが可能であり、このような微小間隙での外乱の影響は無視できる
。従って、本実施例によれば、第1の実施例と同様、温度、湿度、音響振動といった環境
因子を高精度に制御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノ
メートルからピコメートルの精度で安定に計測することが可能である。
【実施例6】
【0045】
次に本発明の第6の実施例として、プローブ光が1/4波長板とターゲットミラーとの間
の光路を4往復する場合について、図7により説明する。本実施例の変位計測装置では、
光源ユニット2及び位相検出ユニット18の基本構成とその機能は第1の実施例と同様で
あるので、説明を省略する。また、本実施例において、光源2の代わりに、第2の実施例
で説明した光源2’を用いてもよい。
【0046】
以下では、干渉計ユニット703についてのみ説明する。光源ユニット2から出射され
た2周波直交偏光ビーム4または32は干渉計ユニット703に入射し、ミラー71で反
射された後、非偏光ビームスプリッタ70により2つの光路に分離される。非偏光ビーム
スプリッタ70を透過した2周波直交偏光ビーム72は、図1(c)の破線7aで示すよ
うに両偏光方向に対し45°方向に偏光角を有する偏光板7を透過することによりヘテロ
ダイン干渉する。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子8で受光されビート周波数f
の電気信号79に変換され、参照信号として用いられる。
【0047】
一方、非偏光ビームスプリッタ70で反射された2周波直交偏光ビーム73は、参照ミ
ラー11に入射する。参照ミラー11は、第1の実施例と同様、図2に示すように、合成
石英基板11b上にAl等の金属材料で回折格子が形成された構成となっており、その機
能は第1の実施例と全く同一であり、偏光素子(Wire Grid Polarize
r)として機能する。参照ミラー11で反射されたS偏光ビーム10rは参照光として非
偏光ビームスプリッタ70を透過し、反射面70m及び70nで反射された後、再び非偏
光ビームスプリッタ70を透過し、参照ミラー11で反射された後、非偏光ビームスプリ
ッタ70で反射される。
【0048】
一方、参照ミラー11を透過したP偏光ビーム10mはプローブ光として用いる。P偏
光ビーム10mは1/4波長板12を透過した後円偏光となり、ターゲットミラー13で
反射され、再び1/4波長板12を透過後S偏光となり、参照ミラー11で反射され、1
/4波長板12を透過後円偏光としてターゲットミラー13で反射され、1/4波長板1
2を透過後P偏光となり、参照ミラー11を透過する。
【0049】
このP偏光ビーム10mは参照光と同一の光路を通り、非偏光ビームスプリッタ70を
透過し、反射面70m及び70nで反射された後、再び非偏光ビームスプリッタ70を透
過し、再度1/4波長板12を透過した後円偏光となり、ターゲットミラー13で反射さ
れ、再び1/4波長板12を透過後S偏光となり、参照ミラー11で反射され、1/4波
長板12を透過後円偏光としてターゲットミラー13で反射され、1/4波長板12を透
過後P偏光となり、参照ミラー11を透過する。即ち、プローブ光10mは参照ミラー1
1とターゲットミラー13との間の光路を4往復することになり、測定対象物1の移動量
1dを4倍に拡大して検出することになる。
【0050】
このP偏光ビーム10mは参照光であるS偏光ビーム10rと合成されて2周波直交偏
光ビーム74となり、非偏光ビームスプリッタ70で反射された後、ミラー71で反射さ
れる。2周波直交偏光ビーム74は、図1(c)の破線15aで示すように両偏光方向に
対し45°方向に偏光角を有する偏光板15を透過することによりヘテロダイン干渉する
。このヘテロダイン干渉光は光電変換素子16で受光され、電気信号77に変換される。
以降の動作、信号処理は第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
図7から明らかなように、第1の実施例と同様、ターゲットミラー13に向かうプロー
ブ光10mと参照光10rの2つのビームは、光源ユニット2から出射されて干渉計ユニ
ット703に入射し、参照ミラー11に至るまで、更に参照ミラー11から光電変換素子
16で受光されるに至るまで、完全に同一の光路を通る。即ち、共通光路形干渉計の構成
となる。
【0052】
従って、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動
が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉
した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。唯一、参
照ミラー11とターゲットミラー13との間の光路においてプローブ光10mのみが存在
するが、例えば、プローブ顕微鏡等のストロークは高々数百ミクロン程度であるので、参
照ミラー11とターゲットミラー13との間隙は1mm以下に設定することが可能であり
、このような微小間隙での外乱の影響は無視できる。
【0053】
また、図1(b)に示す光源ユニット2では、直交する2つの偏光ビーム24、28が
別光路を通る構成となっており、両光路間に外乱の影響が重畳する可能性がある。しかし
、仮に外乱の影響がのったとしても、その影響は測定されたヘテロダイン干渉光と参照光
の両方に等しくのるため、位相検出ユニット18において両者の位相差を検出する際に相
殺される。
【0054】
本実施例の干渉計の構成により、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制
御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートルからピコ
メートルの精度で安定に計測することが可能である。本実施例では、参照ミラーとして金
属回折格子(Wire Grid Polarizer)を用いることにより、2周波直
交偏光ビームのうち一方の偏光ビームからプローブ光を、他方の偏光ビームから参照光を
同軸上に生成することが可能となり、共通光路形ヘテロダイン干渉計を構成することがで
きるものである。更に、本実施例では、プローブ光10mが参照ミラー11とターゲット
ミラー13との間の光路を4往復することになり、測定対象物1の移動量1dを4倍に拡
大して検出することになり、第1の実施例に対し2倍の変位計測感度が得られる。
【実施例7】
【0055】
第1から第6の実施例はいずれもヘテロダイン共通光路形干渉計を基本系としているが、
次に本発明の第7の実施例として、ホモダイン共通光路形干渉計を基本系とする場合につ
いて、図8により説明する。本実施例の変位計測装置は、図8(a)に示すように、光源
ユニット802、干渉計ユニット803及び変位検出ユニット102から成る。図8(b
)に示すように、光源ユニット802においては、直線偏光レーザ821(例えば波長6
32.8nmの周波数安定化He−Neレーザ)からの出射ビーム822を45°の偏光
方向で偏光ビームスプリッタ823に入射し、2つの偏光成分、P偏光ビーム824とS
偏光ビーム828とに分離する。P偏光ビーム824は偏光ビームスプリッタ823を透
過し、S偏光ビーム828は偏光ビームスプリッタ823で反射され、各々ミラー826
、826’で反射された後、偏光ビームスプリッタ827で合成された、ミラー826”
で反射されて、直交偏光ビーム881として出射される。
【0056】
即ち、本実施例では、第1の実施例のように、直交偏光ビームに対し光周波数シフトは
与えない。図1(c)中の24Pが直交偏光ビーム4のP偏光ビーム824の偏光方向を
、28SがS偏光ビーム828の偏光方向を示している。
【0057】
図8(a)に示すように、直交偏光ビーム881は干渉計ユニット803に入射する。
干渉計ユニット803において、非偏光ビームスプリッタ805を透過した直交偏光ビー
ム882は参照ミラー811に入射する。参照ミラー811は、第1の実施例と同様、図
2に示すように、合成石英基板11b上にAl等の金属材料で回折格子が形成された構成
となっており、その機能は第1の実施例と全く同一であり、偏光素子(Wire Gri
d Polarizer)として機能する。
【0058】
参照ミラー811で反射されたS偏光ビーム10rは参照光として用いる。透過したP
偏光ビーム10mはプローブ光として用いる。P偏光ビーム10mは1/4波長板812
を透過した後円偏光となり、ターゲットミラー13で反射され、再び1/4波長板812
を透過後S偏光となり、参照ミラー811で反射され、1/4波長板812を透過後円偏
光としてターゲットミラー13で反射され、1/4波長板812を透過後P偏光となり、
参照ミラー811を透過する。即ち、プローブ光10mは参照ミラー811とターゲット
ミラー13との間の光路を2往復することになり、測定対象物1の移動量1dを2倍に拡
大して検出することになる。
【0059】
参照ミラー811で反射されたS偏光ビーム10rと透過したP偏光ビーム10mは合
成されて、直交偏光ビーム883として非偏光ビームスプリッタ805で反射される。こ
の直交偏光ビーム883は1/2波長板884を透過後偏光方向が45°回転し、非偏光
ビームスプリッタ885で2つのビームに分離される。非偏光ビームスプリッタ885で
反射された直交偏光ビーム886は偏光ビームスプリッタ887に入射し、互いに位相が
180°シフトした2つのホモダイン干渉光888及び890に分離される。ホモダイン
干渉光888はホトダイオード等の光電変換素子889で受光され、電気信号92に変換
される。位相が180°シフトしたホモダイン干渉光890は光電変換素子891で受光
され、電気信号93に変換される。
【0060】
非偏光ビームスプリッタ885を透過した直交偏光ビーム894は1/4波長板895
透過後±90°の位相差が付加されて、偏光ビームスプリッタ887に入射し、更に互い
に位相が180°シフトした2つのホモダイン干渉光896及び898に分離される。ホ
モダイン干渉光896はホトダイオード等の光電変換素子897で受光され、電気信号1
00に変換される。位相が180°シフトしたホモダイン干渉光898は光電変換素子8
99で受光され、電気信号101に変換される。
【0061】
4つのホモダイン干渉信号92、93、100、101は各々(数3)〜(数6)で与
えられる。
【0062】
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ) ・・・(数3)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+π)
=I+I−2(I・I1/2cos(4πnD/λ) ・・・(数4)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+π/2)
=I+I−2(I・I1/2sin(4πnD/λ) ・・・(数5)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+3π/2)
=I+I+2(I・I1/2sin(4πnD/λ) ・・・(数6)
ここで、Iはプローブ光の検出強度、Iは参照光の検出強度、nは空気の屈折率、D
は測定対象物1の移動量1d、λはレーザ光822の波長である。変位検出ユニット10
2では、(数3)〜(数6)より(数7)に基づいて、測定対象物1の移動量Dが算出さ
れて、移動量信号103として出力される。
【0063】
D=(λ/4πn)tan−1{(I−I)/(I−I)} ・・・(数7)
図8(a)から明らかなように、ターゲットミラー13に向かうプローブ光10mと参
照光10rの2つのビームは、光源ユニット802から出射されて干渉計ユニット803
に入射し、参照ミラー811に至るまで、更に参照ミラー811から光電変換素子889
、891、897、899で受光されるに至るまで、完全に同一の光路を通る。即ち、共
通光路形干渉計の構成となる。
【0064】
従って、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動
が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉
した際にこれら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。唯一、参
照ミラー811とターゲットミラー13との間の光路においてプローブ光10mのみが存
在するが、例えば、プローブ顕微鏡等のストロークは高々数百ミクロン程度であるので、
参照ミラー811とターゲットミラー13との間隙は1mm以下に設定することが可能で
あり、このような微小間隙での外乱の影響は無視できる。また、図8(b)に示す光源ユ
ニット802では、直交する2つの偏光ビーム824、828が別光路を通る構成となっ
ており、両光路間に外乱の影響が重畳する可能性がある。しかし、仮に外乱の影響がのっ
たとしても、その影響は測定された4つのホモダイン干渉光に等しくのるため、変位検出
ユニット102における(数7)の処理において相殺される。
【0065】
本実施例の干渉計の構成により、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制
御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートルからピコ
メートルの精度で安定に計測することが可能である。本実施例では、参照ミラーとして金
属回折格子(Wire Grid Polarizer)を用いることにより、直交偏光
ビームのうち一方の偏光ビームからプローブ光を、他方の偏光ビームから参照光を同軸上
に生成することが可能となり、共通光路形ホモダイン干渉計を構成することができるもの
である。
【実施例8】
【0066】
次に本発明の第8の実施例として、第7の実施例と同様ホモダイン干渉計を基本系とする
場合について、図9により説明する。本実施例の変位計測装置は、第7の実施例と同様、
光源ユニット802、干渉計ユニット903及び変位検出ユニット102から成るが、光
源ユニット802及び変位検出ユニット102の構成と機能は第7の実施例と同一である
ので、説明を省略する。光源ユニット802から出射された直交偏光ビーム881は干渉
計ユニット903に入射する。干渉計ユニット903において、非偏光ビームスプリッタ
905を透過した直交偏光ビーム982は参照ミラー911に入射する。参照ミラー91
1は、第1の実施例の参照ミラー11と同様、図2に示すように、合成石英基板11b上
にAl等の金属材料で回折格子が形成された構成となっており、その機能は第1の実施例
と全く同一であり、偏光素子(Wire Grid Polarizer)として機能す
る。参照ミラー911で反射されたS偏光ビーム10rは参照光として用いる。
【0067】
透過したP偏光ビーム10mはプローブ光として用いる。P偏光ビーム10mは1/4
波長板912を透過した後円偏光となり、ターゲットミラー13で反射され、再び1/4
波長板912を透過後S偏光となり、参照ミラー911で反射され、1/4波長板912
を透過後円偏光としてターゲットミラー13で反射され、1/4波長板912を透過後P
偏光となり、参照ミラー911を透過する。即ち、プローブ光10mは参照ミラー911
とターゲットミラー13との間の光路を2往復することになり、測定対象物1の移動量1
dを2倍に拡大して検出することになる。参照ミラー911で反射されたS偏光ビーム1
0rと透過したP偏光ビーム10mは合成されて、直交偏光ビーム983として非偏光ビ
ームスプリッタ905で反射される。この直交偏光ビーム983はビームエキスパンダ2
01で拡大される。
【0068】
この拡大ビーム202はDOE203(Diffractive Optical E
lement:回折光学素子)により4つの直交偏光ビーム204、205、206、2
07に分割され、複屈折材料で構成された位相シフトマスク208に入射する。この位相
シフトマスク208は、4つの直交偏光ビーム204〜207に対応した4つの領域20
8a、208b、208c、208dに分割されており、各領域を透過する互いに直交す
る偏光ビームの間に、0°、90°、180°、270°の位相シフトを与える。位相シ
フトが与えられた4つの直交偏光ビームは、更に両偏光方向に対し45°方向に偏光角を
有する偏光板209を透過することによりホモダイン干渉する。
【0069】
4つのホモダイン干渉光210〜213は4分割された光電変換素子214で受光され
、電気信号215〜218に変換される。4つのホモダイン干渉信号215〜218は、
第7の実施例と同様、各々(数3)〜(数6)で与えられる。変位検出ユニット102で
は、(数3)〜(数6)より(数7)に基づいて、測定対象物1の移動量Dが算出されて
、移動量信号103として出力される。
【0070】
図9から明らかなように、ターゲットミラー13に向かうプローブ光10mと参照光1
0rの2つのビームは、光源ユニット902から出射されて干渉計ユニット903に入射
し、参照ミラー911に至るまで、更に参照ミラー911から光電変換素子214で受光
されるに至るまで、同じ光路を通る。即ち、共通光路形干渉計の構成となる。従って、仮
に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとし
ても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれ
ら外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。唯一、参照ミラー91
1とターゲットミラー13との間の光路においてプローブ光10mのみが存在するが、例
えば、プローブ顕微鏡等のストロークは高々数百ミクロン程度であるので、参照ミラー9
11とターゲットミラー13との間隙は1mm以下に設定することが可能であり、このよ
うな微小間隙での外乱の影響は無視できる。
【0071】
本実施例の干渉計の構成により、温度、湿度、音響振動といった環境因子を高精度に制
御することなく、測定対象物1の移動速度V及び移動量1dをサブナノメートルからピコ
メートルの精度で安定に計測することが可能である。本実施例では、参照ミラーとして金
属回折格子(Wire Grid Polarizer)を用いることにより、直交偏光
ビームのうち一方の偏光ビームからプローブ光を、他方の偏光ビームから参照光を同軸上
に生成することが可能となり、共通光路形ホモダイン干渉計を構成することができるもの
である。また、本実施例では、位相シフトされた4つの干渉光の生成に、DOE203と
平面状の位相シフトマスク208を用いているため、干渉計ユニット3の構成が簡素化さ
れてより安定性が増し、更に寸法が小さくなるという利点がある。従って、測定対象物1
の周辺にスペースが無い場合でも適用可能である。
【0072】
以上、本発明の実施例を、測定対象物1の移動量1dを計測する場合を例にとり説明し
た。測定対象物1としては、半導体露光装置や検査装置等のステージ等、プローブ顕微鏡
のプローブあるいは測定試料搭載ステージ等、また加工用の工具(バイト等)が想定され
る。更に、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、例えばターゲットミラー
13を除去し、対象物1表面にプローブ光10mを直接照射し、プローブ光10mに対し
直交する方向に対象物1を移動させつつ測定を行えば、対象物1表面の微小な凹凸をサブ
ナノメートルからピコメートルの分解能で高精度に計測することも可能である。この場合
の対象物としては、磁気ディスク表面や磁気ヘッド浮上面の面粗さ、マイクロレンズ等の
MEMS(Micro−Electro−Mechanical Systems)部品
等が考えられる。また、参照ミラー11と対象物1との間に集光レンズを挿入すれば、面
内空間分解能もサブミクロンオーダに達する。
【0073】
また、本発明の第3の実施例を、第4〜第8の実施例に組み合わせうることも自明であ
る。
【符号の説明】
【0074】
1、400・・・測定対象物 2、2’、802・・・光源ユニット 3、503、
603、703、803、903・・・干渉計ユニット 5、85・・・非偏光ビーム
スプリッタ 7、15、209、307・・・偏光板 8、16、89、91、97
、99、214、308・・・光電変換素子 11・・・参照ミラー 11b・
・・合成石英基板 11g・・・回折格子 12、95・・・1/4波長板 13
・・・ターゲットミラー 18・・・位相検出ユニット 21・・・直線偏光レーザ
23、27、41、87、303・・・偏光ビームスプリッタ 25、29・・・
音響光学変調素子 31・・・2周波He−Neレーザ 44・・・偏波面保存ファ
イバ 50・・・複屈折プリズム 51・・・複屈折材料 52、66・・・反射
ミラー 60・・・偏光ビームスプリッタ 70・・・非偏光ビームスプリッタ
84・・・1/2波長板 102・・・変位検出ユニット 201・・・ビームエキ
スパンダ 203・・・DOE 208・・・位相シフトマスク 304、306
・・・直角プリズム 311・・・位相検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面上に格子が配列された格子状の偏光素子の前記第一の面に対して垂直方向から光
を照射し、
前記格子状の偏光素子を透過した第1の偏光状態の透過光を対象物に照射し前記対象物で
反射した第1の偏光状態の反射光と、前記格子状の偏光素子で反射した第2の偏光状態の
反射光と、を干渉させて干渉光を生じさせ、
前記干渉光に含まれている情報から前記対象物の変位情報を求めることを特徴とする変位
計測方法。
【請求項2】
光源からの光を格子状の偏光素子に照射し、
前記格子状の偏光素子を透過した第1の偏光状態の透過光を対象物に照射し前記対象物で
反射した第1の偏光状態の反射光と、前記格子状の偏光素子で反射した第2の偏光状態の
反射光と、を干渉させて干渉光を生じさせ、
前記干渉光に含まれている情報から前記対象物の変位情報を求める変位計測方法であって

前記格子状の偏光素子の格子は、前記光源からの光の入射方向に対して垂直方向に配列さ
れていることを特徴とする変位計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の変位計測方法であって、
前記第1の偏光状態の透過光の光軸と、前記第1の偏光状態の反射光の光軸と、前記第2
の偏光状態の反射光の光軸と、は同軸であることを特徴とする変位計測方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記格子状の偏光素子を透過した前記第1の偏光状態の透過光は、前記格子状偏光素子と
前記対象物との間を2往復した後、前記格子状の偏光素子を透過して、前記格子状の偏光
素子で反射した前記第2の偏光状態の反射光と干渉させることを特徴とする変位計測方法

【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記格子状の偏光素子は、回折格子で構成されることを特徴とする変位計測方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記格子状の偏光素子は、Wire Grid Polarizerで構成されることを
特徴とする変位計測方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記対象物で反射した前記第1の偏光状態の反射光と前記格子状の偏光素子で反射した前
記第2の偏光状態の反射光とを干渉させる方法は、ヘテロダイン干渉であることを特徴と
する変位計測方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記対象物で反射した前記第1の偏光状態の反射光と前記格子状の偏光素子で反射した前
記第2の偏光状態の反射光とを干渉させる方法は、ホモダイン干渉であることを特徴とす
る変位計測方法。
【請求項9】
光源と、
第一の面上に格子が配列された格子状の偏光素子と、
前記光源からの光を前記格子状の偏光素子の前記第一の面に対して垂直方向から照射する
照射手段と、
前記格子状の偏光素子を透過した第1の偏光状態の透過光を対象物に照射し前記対象物で
反射した第1の偏光状態の反射光と、前記格子状の偏光素子で反射した第2の偏光状態の
反射光と、を干渉させて干渉光を生じさせる干渉手段と、
前記干渉手段で生じさせた干渉光を検出して前記対象物の変位情報を求める変位情報抽出
手段と、
を備えたことを特徴とする変位計測装置。
【請求項10】
光源と、
格子状の偏光素子と、
前記光源からの光を前記格子状の偏光素子に照射する照射手段と、
前記格子状の偏光素子を透過した第1の偏光状態の透過光を対象物に照射し前記対象物で
反射した第1の偏光状態の反射光と、前記格子状の偏光素子で反射した第2の偏光状態の
反射光と、を干渉させて干渉光を生じさせる干渉手段と、
前記干渉手段で生じさせた干渉光を検出して前記対象物の変位情報を求める変位情報抽出
手段と、
を備え、
前記格子状の偏光素子の格子は、前記光源からの光の入射方向に対して垂直方向に配置さ
れていることを特徴とする変位計測装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の変位計測装置であって、
前記干渉手段は、前記第1の偏光状態の透過光の光軸と、前記第1の偏光状態の反射光の
光軸と、前記第2の偏光状態の反射光の光軸とが同軸となるように構成したものであるこ
とを特徴とする変位計測装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載の変位計測装置であって、
前記干渉手段は、前記格子状の偏光素子の一方の面側に配置した1/4波長板を有するこ
とを特徴とする変位計測装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載の変位計測装置であって、
前記格子状の偏光素子は、回折格子で構成されることを特徴とする変位計測装置。
【請求項14】
請求項9乃至12のいずれかに記載の変位計測装置であって、
前記格子状の偏光素子は、Wire Grid Polarizerで構成されることを
特徴とする変位計測装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれかに記載の変位計測装置であって、
前記干渉手段は、ヘテロダイン干渉計により、前記対象物で反射した前記第1の偏光状態
の反射光と前記格子状の偏光素子で反射した前記第2の偏光状態の反射光とを干渉させる
構成を有することを特徴とする変位計測装置。
【請求項16】
請求項9乃至16のいずれかに記載の変位計測方法であって、
前記干渉手段は、ホモダイン干渉計により、前記対象物で反射した前記第1の偏光状態の
反射光と前記格子状の偏光素子で反射した前記第2の偏光状態の反射光とを干渉させる構
成を有することを特徴とする変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53065(P2012−53065A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246068(P2011−246068)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2009−296689(P2009−296689)の分割
【原出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】