説明

射出成形樹脂歯車の成形方法及び射出成形樹脂歯車

【課題】ウェルドラインを歯の歯先面に生じさせる。
【解決手段】インサート6をキャビティ22内の所定位置に収容した後、ピンポイントゲート26からウェブを形作るためのキャビティ部分32に溶融樹脂を射出する。そのキャビ部分32から歯を形作るキャビティ部分34へ向かう溶融樹脂の流れをキャビティ22内に出っ張る突起33によって絞り、ウェブ側のキャビティ部分32から歯側のキャビティ部分34へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、インサート6に形成した溶融樹脂誘導路でキャビティ22内の歯の歯底面40に対応する部分へ案内し、歯を形作るインサート6の外周面に樹脂を被覆すると共に、歯の歯先面にウェルドラインを形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にインサートを有する射出成形樹脂歯車の成形方法及びこの成形方法によって製造された射出成形樹脂歯車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[第1従来例]
従来、樹脂歯車は、動力伝達時に受ける負荷に応じて歯が撓み変形し、歯の異常摩耗を生じることがあるため、歯の芯部に鋼等のインサート(補強用芯材)を収容し、歯の剛性を高めることにより歯を変形しにくくし、歯の摩耗を軽減して、耐久性を向上させるようにしたものが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
[第2従来例]
また、樹脂歯車のうち、射出成形方法によって製造される射出成形樹脂歯車は、ピンポイントゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形する場合、ウェルドラインの端部が歯の歯元側の歯面に位置することがあり、最も大きな応力が作用する歯の歯元側の強度がウェルドラインによって設計強度よりも低下することがある。そこで、このような不具合の発生を防止するため、図15に示すように、ウェルドライン103が歯101の歯底102から径方向内方へ向かうように工夫した樹脂歯車100が開発された(特許文献1参照)。
【非特許文献1】塚本尚久著「動力伝達用プラスチック歯車の設計技術」技報堂出版、1987年3月30日、P.207〜208
【特許文献1】特開2005−22368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1従来例のように、インサートで歯の剛性を高めたとしても、インサートの外表面を覆う樹脂層のうち、歯の歯元側の歯面を形作る樹脂層にウェルドラインが位置していると、そのウェルドラインが位置する歯面の耐久性が著しく低下する。このような場合に、図15に示した第2従来技術を適用して、ウェルドライン103の位置を歯101の歯底102に生じさせようとしても、歯数がピンポイントゲート104の数の整数倍でないと、ウェルドライン104を歯101の歯元側の歯面105から歯底102側へ移動させることができないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、ピンポイントゲートの数や歯数に拘わらず、ウェルドラインを歯の歯先又は歯底に生じさせることができる射出成形樹脂歯車の成形方法、及び、その成形方法によって製造される射出成形樹脂歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法に関するものである。この射出成形樹脂歯車の成形方法において、(1)前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、(2)前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、(3)前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、(4)この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、前記インサートに形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯底面に対応する部分へ案内し、(5)前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯先面にウェルドラインを形成するようにした、ことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法に関するものである。この射出成形樹脂歯車の成形方法は、(1)前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、(2)前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、(3)前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、(4)この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、前記インサートに形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯先面に対応する部分へ案内し、(5)前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯底面にウェルドラインを形成するようにした、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法に関するものである。この射出成形樹脂歯車の成形方法において、前記インサートは、前記歯の形成位置に対応して、前記歯と同数配置されている。そして、この発明は、(1)前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、(2)前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、(3)前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、(4)この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、隣り合う前記インサート間に形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯底面に対応する部分へ案内し、(5)前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯先面にウェルドラインを形成するようにした、ことを特徴としている。
【0009】
請求項4は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法に関するものである。この射出成形樹脂歯車の成形方法において、前記インサートは、隣り合う前記歯に跨るようにして、前記歯と同数配置されている。そして、本発明は、(1)前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、(2)前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、(3)前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、(4)この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、隣り合う前記インサート間に形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯先面に対応する部分へ案内し、(5)前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯底面にウェルドラインを形成するようにした、ことを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られた射出成形樹脂歯車に関するものである。この発明において、前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成されている。また、前記インサートには、前記インサートの歯先側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成されている。また、前記インサートの外表側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯底面に位置する部分には、ウェルドラインが形成されている。
【0011】
請求項6の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車に関するものである。この発明において、前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成されている。また、前記インサートには、前記インサートの歯底側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成されている。また、前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯先面に位置する部分には、ウェルドラインが形成されている。
【0012】
請求項7の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車に関するものである。この発明において、前記インサートは、前記歯の形成位置に対応して、前記歯と同数配置されている。また、前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成されている。また、隣り合う前記インサート間には、歯底側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成されている。また、前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯先面に位置する部分には、ウェルドラインが形成されたている。
【0013】
請求項8の発明は、ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車に関するものである。この発明において、前記インサートは、隣り合う前記歯に跨るようにして、前記歯と同数配置されている。また、前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成されている。また、隣り合う前記インサート間には、歯先側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成されている。また、前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯底面に位置する部分には、ウェルドラインが形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、歯に生じるウェルドラインは、動力伝達時における応力が作用し難い歯先面又は歯底面に生じることになり、動力伝達時に最も大きな応力が作用する歯元側歯面に生じることがないため、歯面の耐久性を高めることができ、射出成形樹脂歯車の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
【0016】
[第1実施形態]
図1乃至図2は、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1を示すものである。このうち、図1(a)は射出成形樹脂歯車1の正面図(一方の側面側から見た図)であり、図1(b)は図1(a)のX1−X1線に沿って切断して示す断面図である。また、図2は、図1(a)のX2−X2線に沿って切断した射出成形樹脂歯車1の断面図である。
【0017】
(射出成形樹脂歯車の構造)
図1乃至図2に示すように、本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、回転中心部に軸穴2を備えたほぼ円筒形状のボス3が形成され、このボス3の中心軸線CLに沿った中央位置にボス3の外周面から径方向外方へ向かって延びる円板状のウェブ4が形成され、このウェブ4の外周端に歯部5が形成されている。そして、本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、インサート6以外が樹脂材料(例えば、ポリフタルアミド、ポリアミド66,ポリアミド46、ポリアミド9T、PPS、LCP、PEEK、PES等)で形成されている。なお、樹脂材料としては、繊維強化樹脂材料(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、各種ウィスカ等)を使用するようにしてもよい。
【0018】
歯部5は、リム7と、リム7の外周側に形成された複数の歯8とで構成され、その内部に補強用の芯材として機能するインサート6が入れられている。この歯部5の芯材としてのインサート6は、アルミニウム,鉄などの金属、セラミックス、焼結合金等の合成樹脂材料よりも高剛性の材料で形成されている。そして、このインサート6は、リング状のリム7を形作るリング状基部10と、このリング状基部10の外周側に出っ張るように複数形成された凸部11と、リング状基部10の一方の側面10aから出っ張るように周方向に沿って所定の間隔で(本実施形態の場合には120°毎の等間隔で)3箇所形成された位置決め用突起12と、からなっている。この凸部11が歯8の内部にインサートされる。また、このインサート6には、凸部11間の谷底13(歯底側端部)と内周面14(径方向内方端部)とを半径方向に接続する溶融樹脂誘導路15が両側面10a,10b側に歯数分だけ等間隔に形成されている。なお、このインサートに形成される溶融樹脂誘導路15は、断面が略矩形形状のスリットであり、スリット幅寸法W1及びスリット深さ寸法D1が溶融樹脂材料,ピッチ円直径,歯幅寸法等に応じて最適の値に決定される。例えば、ピッチ円直径が30mm、モジュールが1.0,歯幅寸法が5mmの射出成形樹脂歯車においては、W1=0.7mm,D1=1.5mmとしている。
【0019】
そして、インサート6は、両側面(一方の側面10aと他方の側面10b)間の寸法L1が歯幅寸法となるように形成され、両側面10a,10bが外部に露出するようになっており、内周面14側が樹脂P1で覆われ(樹脂層P1)、外周面17側が樹脂で覆われ(樹脂層P2)、これら内周面14側の樹脂P1と外周面17側の樹脂層P2が溶融樹脂誘導路15内の樹脂P3で一体に接続されている。
【0020】
インサート6の位置決め用突起12は、射出成形用の金型20に形成された位置決め用凹部21に係合されるものであり、インサート6を金型20のキャビティ22内の所定位置に位置決めする機能を有している(図3参照)。なお、このインサート6の位置決め用突起12は、使用する上で邪魔になる場合(例えば、他の隣接する部品と干渉する虞があるような場合)、射出成形後に切り落とすようになっている。また、インサート6の位置決め用突起12は、インサート6のうちで歯8から最も遠いインサート6の内周面14寄りの位置に3箇所形成されているが、これに限られず、インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めできる限り、2箇所でもよく、また、4箇所以上形成するようにしてもよい。
【0021】
歯8は、インサート6の外周面17(凸部11と凸部11間の谷底13の外表面)が所定厚さの樹脂層P2で覆われることによって所望の形状に形作られている。
【0022】
ウェブ4は、ボス3とリム7の間に位置しており、その一方の側面7a側(リング状基部10の一方の側面10aと同じ側)の同一円周上に等間隔で3個のゲート痕23(ピンポイントゲート26を切り離した痕)が形成されている。そして、ウェブ4のゲート痕23の径方向外方側で且つリム7よりも径方向内方の位置には、リム7の内周面7cと同心円のリング状の溝(肉抜き部)24を形成することにより肉厚を薄くした薄肉部25が形成されている。この薄肉部25は、射出成形時における溶融樹脂の流れを制御する(ピンポイントゲート26から歯部5へ向かう径方向外方への溶融樹脂の流れの速度を略均一化又は減速する)ためのものであり、ウェブ4の厚さTに対して0.6Tの寸法で、且つ、径方向寸法が1.5mm程度に形成されている。
【0023】
(射出成形樹脂歯車の金型構造)
図3は、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1を成形する金型20の構造を示す図である。
【0024】
この図3に示すように、金型20は、第1金型(固定型)27と、この第1金型27に突き当てられた状態から分離できるようになっている第2金型(可動型)28と、軸穴2を形成するための軸型30と、を備えている(図2参照)。そして、第1金型27と第2金型28の突き合わせ部にはキャビティ22が形成されている。
【0025】
キャビティ22は、図1乃至図2の射出成形樹脂歯車1を形作るための空間であり、溶融樹脂がピンポイントゲート26からその内部に射出されるようになっている。また、キャビティ22を形作る第1金型27側の内面には、インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めするための位置決め用凹部(位置決め穴)21がインサート6の位置決め用突起12に対応して3箇所形成されており、この位置決め用凹部21にインサート6の位置決め用突起12が挿入されるようになっている。なお、位置決め用突起12は丸棒状であり、位置決め用凹部21は丸棒状の位置決め用突起12が微小な隙間をもって嵌り込む丸穴である。
【0026】
第1金型27のウェブ4を形成するためのキャビティ部分32には、ピンポイントゲート26がキャビティ22の中心軸線CLと同心の円周上に位置するように等間隔で3箇所形成されている。また、第1金型27のウェブ4を形成するためのキャビティ部分32であって、且つ、ピンポイントゲート26よりも径方向外方側の位置には、キャビテイ22内に出っ張るリング状の突起33がキャビティ22の中心軸線CLと同心に第2金型28側に向かって出っ張るように形成されている。
【0027】
(射出成形樹脂歯車の成形方法)
図1乃至図2に示す本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、図3に示した金型20を使用して射出成形される。なお、この射出成形樹脂歯車1の射出成形方法は、図4(射出成形樹脂歯車1の歯部5を部分的に拡大して示す図)及び図5(繊維強化樹脂を使用した射出成形樹脂歯車1の歯部5を一部拡大して示す図)を適宜参照しつつ説明する。
【0028】
すなわち、図3に示した金型20において、先ず、第2金型28を第1金型27から分離し、キャビティ22を大気開放する(型開きをする)。次に、第1金型27に形成された位置決め用凹部21にインサート6の位置決め用突起12を挿入し、インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めした状態で取り付ける。次に、第2金型28を第1金型27に重ね合わせ(型合わせし)、ピンポイントゲート26から溶融樹脂をキャビティ22内に射出する。
【0029】
ピンポイントゲート26からキャビテイ22内に射出された溶融樹脂は、ピンポイントゲート26からキャビテイ22内を放射状に流動していく。この際、キャビティ22内を流動する溶融樹脂は、キャビテイ22内の同一円周上に到達する時間がピンポイントゲート26からの距離に応じて異なる。すなわち、ピンポイントゲート26に近い位置には溶融樹脂が他部よりも早く到達し、ピンポイントゲート26から遠い位置には溶融樹脂が他部よりも遅く到達する。しかし、ピンポイントゲート26よりも径方向外方側の位置で且つリム7よりも径方向内方側のウェブ4を形作るキャビティ部分32には、リング状の突起33がキャビティ22内に出っ張っており、そのリング状の突起33がピンポイントゲート26から径方向外方側へ向かう溶融樹脂の流れを絞る(整える)ため、溶融樹脂の径方向外方へ向かう流れがリング状の突起33によって堰き止められ、リング状の突起33の径方向内方側のキャビティ22内に溶融樹脂が満たされた後、溶融樹脂がリング状の突起33を越えて径方向外方側へ放射状にほぼ同時に流動する(溶融樹脂の流れの径方向外方へ向かう速度が略均一化する)。そして、溶融樹脂がほぼ同時にインサート6の内周面14に到達する。この際、インサート6の両側面7a,7bがキャビティ22の内面に密接した状態であり、インサート6の径方向外方端側の空間(歯を形作るキャビティ部分)34が溶融樹脂誘導路15を介してのみインサート6の内周面14側と連通している(図1及び図2参照)。したがって、インサート6の内周面14に到達した溶融樹脂は、溶融樹脂誘導路15を介してインサート6の外周面17側の空間34に案内される。そして、隣り合う溶融樹脂誘導路15を流れる溶融樹脂の流動速度がほぼ同一であるため、インサート6の外周面17側の空間34に到達する時間もほぼ同時になり、インサート6の凸部11の外周面17側の空間34を流動する溶融樹脂の流れが歯先面35のほぼ中央部で合流する(図4参照)。その結果、インサート6の外周面17側に沿って樹脂層P2が形成され、歯形形状が所望精度に形作られる。そして、インサート6の外周面17側で歯形を形作る樹脂層P2は、溶融樹脂誘導路15内の樹脂P3を介してインサート6よりも径方向内方側に位置する樹脂層P1と一体に接続される。また、溶融樹脂の合流ライン(ウェルドライン36)が歯先面35のほぼ中央(歯先円に沿った歯先長さのはぼ中央)に形成される(図4参照)。
【0030】
キャビティ22内の溶融樹脂が冷却されて固まった後、第2金型28が第1金型27から分離され(離型され)、キャビティ22内の製品(射出成形樹脂歯車1)が取り出される。
【0031】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態によれば、歯8のウェルドライン36は、動力伝達時における応力が作用し難い歯先面35に生じることになり、動力伝達時に最も大きな応力が作用する歯元側歯面に生じることがないため、歯面37の耐久性を高めることができ、射出成形樹脂歯車1の長寿命化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態において、溶融樹脂が繊維強化樹脂(繊維で強化された樹脂)である場合には、図5に示すように、繊維38の方向が歯面37に倣った方向にほぼ揃うため、歯面37側の樹脂層P2の強度を効果的に高めることができる。
【0033】
[第2実施形態]
図6乃至図7は、本発明の第2実施形態に係る射出成形樹脂歯車1を示すものである。このうち、図6は、射出成形樹脂歯車1の正面図を示すものである。また、図7は、図6のX3−X3線に沿って切断して示す射出成形樹脂歯車1の断面図である。また、図8は、図6における歯5の要部拡大図である。また、図9は、繊維強化樹脂を使用した場合における図6の歯5に相当する部分の要部拡大図である。なお、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、インサート6の溶融樹脂誘導路15の形成位置が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1と相違するものの、他の基本的構造が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1と同一であるため、第1実施形態と重複することになる説明を省略して説明する。
【0034】
すなわち、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、インサート6の溶融樹脂誘導路15が凸部11の歯先側端部11aの中央(歯先面35に対応する部分であって、且つ、歯先円に沿った方向の中央に対応する部分)から内周面14(径方向内方端部)へ延びており、ピンポイントゲート26からキャビティ22内に射出された溶融樹脂がインサート6の溶融樹脂誘導路15を通過して各凸部11の歯先側端部11aの中央にほぼ同時に到達するようにし、インサート6の外周面17とキャビティ22の内面との空間34内を溶融樹脂が同一の速度で流動し、インサート6の凸部11,11間の谷底13(歯底に対応する部分)のほぼ中央(歯底円に沿った方向のほぼ中央)で合流してウェルドライン36が生じるように構成されている(図3及び図8参照)。
【0035】
このような本実施形態によれば、歯8のウェルドライン36は、動力伝達時における応力が作用し難い歯底面40に生じることになり、動力伝達時に最も大きな応力が作用する歯元側の歯面37に生じることがないため、歯面37の耐久性を高めることができ、射出成形樹脂歯車1の長寿命化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態において、溶融樹脂が繊維強化樹脂である場合には、図9に示すように、繊維38の方向が歯形形状に倣った方向であるため、歯面37の樹脂層P2の強度を効果的に高めることができる。
【0037】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る射出成形樹脂歯車1の正面図である。なお、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、インサート6の構成が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1と相違するものの、他の基本的構造が同一であるため、第1実施形態と重複することになる説明を省略して説明する。
【0038】
すなわち、本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、インサート6が各歯8に対応して歯数分だけ使用されており、各インサート6が第1実施形態におけるインサート6を溶融樹脂誘導路15で分割したような形状になっている。そして、本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、隣り合うインサート6,6間の隙間を溶融樹脂誘導路15とする構成になっている。なお、本実施形態において、各インサート6の一方の側面7aには、第1実施形態において説明した位置決め用突起12と同様の第1位置決め用突起41を形成すると共に、この第1位置決め用突起41よりも径方向外方側の位置に第2位置決め用突起42を形成してある。そして、このインサート6の第1位置決め用突起41及び第2位置決め用突起42を嵌合させる第1位置決め穴用凹部(図示せず)及び第2位置決め用凹部(図示せず)が第1金型27に形成され、各インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めすると共に、各インサート6が射出成形時のキャビティ22内の圧力で位置ズレを生じないようにしてある(図3参照)。
【0039】
このような本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、歯8のウェルドライン36は、動力伝達時における応力が作用し難い歯先面35に生じることになり、動力伝達時に最も大きな応力が作用する歯元側歯面37に生じることがないため、歯面37の耐久性を高めることができ、射出成形樹脂歯車1の長寿命化を図ることができる(図4参照)。
【0040】
なお、第2実施形態のインサート6も本実施形態と同様に、溶融樹脂誘導路15を境にして、各歯8と同数個に分割し、各インサート6,6間に溶融樹脂誘導路15を形成するようにしてもよい。この場合、1個のインサート6が、隣り合う歯8,8に略半分ずつ跨るように配置される(図6参照)。このように構成すれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4実施形態に係る射出成形樹脂歯車1の断面図であり、図2に対応する断面図である。本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、インサート6の位置決め用突起45の形状が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1の位置決め用突起12と相違するものの、他の基本的構造が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1と同一であるため、第1実施形態と重複することになる説明を省略して説明する。
【0042】
すなわち、本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、第1実施形態のインサート6の位置決め用突起12が形成された部分であって、且つ、隣り合う溶融樹脂誘導路15,15の間の一方の側面全体7aを、第1実施形態の位置決め用突起12に代え、図11中左側となる歯幅方向外方へ向けて出っ張らせて位置決め用突起45とし、その位置決め用突起45の内周面14及び一対の溶融樹脂誘導路15側の側面を第1金型27側に形成した位置決め用凹部(図示せず)に係合し、インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めした状態で配置するようになっている。このような構成の本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
[第5実施形態]
図12は、本発明の第5実施形態に係る射出成形樹脂歯車1の断面図であり、図2に対応する断面図である。本実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、インサート6の位置決め手段が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1のものと相違するものの、他の基本的構造が第1実施形態の射出成形樹脂歯車1と同一であるため、第1実施形態と重複することになる説明を省略して説明する。
【0044】
すなわち、本実施形態の射出成形樹脂歯車1は、第1実施形態のインサート6の位置決め用突起12が形成された部分を凹ませて位置決め用凹部50とし、その位置決め用凹部50を第1金型27に形成した位置決め用突起(図示せず)に嵌合し、インサート6をキャビティ22内の所定位置に位置決めした状態で配置するようになっている(図3参照)。このような構成の本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
[第6実施形態]
図13(a)は本発明の第6実施形態に係る射出成形樹脂歯車1の正面図であり、図13(b)は図13(a)のX5−X5線に沿って切断して示す断面図である。
【0046】
この図13に示すように、本実施形態の射出成形樹脂歯車1における溶融樹脂の流動制御用の溝55は、第1及び第2実施形態に係る射出成形樹脂歯車1における一定の溝深さのリング状の溝24に代え、ピンポイントゲート26の開口位置(ゲート痕23)の直近部56の溝深さを最も深くし、ピンポイントゲート26から周方向へ遠ざかるにしたがって溝深さを漸減し、隣り合うピンポイントゲート26,26のほぼ中間位置(径方向線57)又はその中間位置の近傍で切り上がる(溝深さがゼロとなる)ように形成し、ピンポイントゲート26からキャビティ22内に射出された後に径方向外方へ向かう溶融樹脂の流れを同一の円周上においてほぼ同一の流動速度となるように制御するようになっている(図3参照)。なお、本実施形態において、射出成形樹脂歯車1における溶融樹脂の流動制御用の溝55は、第1金型27のキャビティ22内に出っ張る突起形状を転写したものである。また、溝55の長さ(溝55の円周方向に沿った角度θ)は、射出条件,ピンポイントゲート26,26間の間隔,ピンポイントゲート26からの距離等に応じて最適の値が決定される。
【0047】
このような構成の本実施形態によれば、第1及び第2実施形態と同様に、歯8のウェルドライン36は、動力伝達時における応力が作用し難い歯先面35又は歯底面40に生じることになり、動力伝達時に最も大きな応力が作用する歯元側歯面37に生じることがないため、歯面37の耐久性を高めることができ、射出成形樹脂歯車1の長寿命化を図ることができる。
【0048】
[その他の実施形態]
第1実施形態に係る射出成形樹脂歯車1は、ウェブ4の一方の側面10a側に溝24が形成されるようになっているが(図1及び図2参照)、これに限られず、ウェブ4の他方の側面10b側に溝24を形成するか(図14(a)参照)、又はウェブ4の両側面10a,10b側に溝24,24を形成するようにしてもよい(図14(b)参照)。
【0049】
また、第1及び第2実施形態の射出成形樹脂歯車1は、インサート6が単体であるが、複数ブロックとなるように、インサート6を周方向に分割(例えば、2分割、3分割又は4分割)するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形樹脂歯車を示すものである。(a)は射出成形樹脂歯車の正面図(一方の側面側から見た図)であり、(b)は(a)のX1−X1線に沿って切断して示す断面図である。
【図2】図1(a)のX2−X2線に沿って切断した射出成形樹脂歯車の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形樹脂歯車を成形するために使用する金型の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形樹脂歯車の歯部を部分的に拡大して示す図である。
【図5】繊維強化樹脂を使用した第1実施形態に係る射出成形樹脂歯車の歯部を一部拡大して示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る射出成形樹脂歯車の正面図である。
【図7】図6のX3−X3線に沿って切断して示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る射出成形樹脂歯車の歯部を部分的に拡大して示す図である。
【図9】繊維強化樹脂を使用した第2実施形態に係る射出成形樹脂歯車の歯部を一部拡大して示す図である。
【図10】(a)は本発明の第3実施形態に係る射出成形樹脂歯車の正面図であり、(b)は(a)のX4−X4線に沿って切断して示す断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る射出成形樹脂歯車の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る射出成形樹脂歯車の断面図である。
【図13】(a)は本発明の第6実施形態に係る射出成形樹脂歯車の正面図であり、(b)は(a)のX5−X5線に沿って切断して示す断面図である。
【図14】(a)は本発明のその他の実施形態における第1例を示す射出成形樹脂歯車の断面図であり、(b)は本発明のその他の実施形態における第2例を示す射出成形樹脂歯車の断面図である。
【図15】本発明の第2従来例を示す樹脂歯車の正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1……射出成形樹脂歯車、4……ウェブ、6……インサート、8……歯、11a……歯先側端部、13……谷底(歯底側端部)、14……内周面(径方向内方側端部)、15……溶融樹脂誘導路、17……外周面、22……キャビティ、23……ゲート痕(ピンポイントゲートの切り離し痕)、25……薄肉部、26……ピンポイントゲート、32……ウェブを形作るキャビティ部分、33……突起、34……空間(歯を形作るキャビティ部分)、35……歯先面、36……ウェルドライン、40……歯底面、P2……被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法において、
前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、
前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、
前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、
この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、前記インサートに形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯底面に対応する部分へ案内し、
前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯先面にウェルドラインを形成するようにした、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車の成形方法。
【請求項2】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法において、
前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、
前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、
前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、
この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、前記インサートに形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯先面に対応する部分へ案内し、
前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯底面にウェルドラインを形成するようにした、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車の成形方法。
【請求項3】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法において、
前記インサートは、前記歯の形成位置に対応して、前記歯と同数配置され、
前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、
前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、
前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、
この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、隣り合う前記インサート間に形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯底面に対応する部分へ案内し、
前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯先面にウェルドラインを形成するようにした、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車の成形方法。
【請求項4】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより形作られる射出成形樹脂歯車の成形方法において、
前記インサートは、隣り合う前記歯に跨るようにして、前記歯と同数配置され、
前記インサートをキャビティ内の所定位置に収容した後、
前記キャビティのうちの前記ウェブを形作るための部分に開口するピンポイントゲートから前記キャビティ内に溶融樹脂を射出し、
前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れを前記キャビティ内に出っ張る突起によって絞り、前記キャビティ内の前記ピンポイントゲートに対応する部分から前記キャビティ内の前記歯を形作る部分へ向かう溶融樹脂の流れの流動速度を略均一化し、
この流動速度が略均一化した溶融樹脂の流れを、隣り合う前記インサート間に形成した溶融樹脂誘導路で前記キャビティ内の前記歯の歯先面に対応する部分へ案内し、
前記歯を形作る前記インサートの外周側に形成された凸部に樹脂を被覆すると共に、前記歯の歯底面にウェルドラインを形成するようにした、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車の成形方法。
【請求項5】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車において、
前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成され、
前記インサートには、前記インサートの歯底側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成され、
前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯先面に位置する部分には、ウェルドラインが形成された、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車。
【請求項6】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車において、
前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成され、
前記インサートには、前記インサートの歯先側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成され、
前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯底面に位置する部分には、ウェルドラインが形成された、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車。
【請求項7】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車において、
前記インサートは、前記歯の形成位置に対応して、前記歯と同数配置され、
前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成され、
隣り合う前記インサート間には、歯底側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成され、
前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯先面に位置する部分には、ウェルドラインが形成された、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車。
【請求項8】
ウェブの外周側に位置する複数の歯が、インサートの外周面に樹脂を被覆することにより樹脂層が形作られた射出成形樹脂歯車において、
前記インサートは、隣り合う前記歯に跨るようにして、前記歯と同数配置され、
前記ウェブのピンポイントゲート切り離し痕よりも径方向外方側には、前記ウェブの肉厚を前記ウェブの他部よりも薄くした薄肉部が形成され、
隣り合う前記インサート間には、歯先側端部から径方向内方端部まで延びる溶融樹脂誘導路が形成され、
前記インサートの外周側に形成された凸部に被覆された前記樹脂層の前記歯の歯底面に位置する部分には、ウェルドラインが形成された、
ことを特徴とする射出成形樹脂歯車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−154463(P2009−154463A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337045(P2007−337045)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】