導電性領域形成方法、導電性領域形成装置、導電性金属領域堆積制御装置及びバイアス機構
【課題】 基板の第1部分に導電性領域を形成する方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、パルス変調電気バイアスの下で実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに第1部分を露出させる工程を含む。本方法は、FCVA(フィルタ処理陰極真空アーク)法を用いて、フィルタリングされたイオンビームを生成し、高アスペクト比のバイアおよびトレンチにおいてもコンフォーマルな金属コーティングの形成を可能にする。また本方法は、バイアおよびトレンチを充填した導電性配線の形成も可能にする。実施の形態は、銅イオンの堆積に関する。基板に金属を堆積する適応FCVA装置および基板に衝突するイオンビームを制御する制御装置も、開示される。制御装置は、既存のフィルタリングされたイオンビーム源内に組み込むのに適している。
【解決手段】 本方法は、パルス変調電気バイアスの下で実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに第1部分を露出させる工程を含む。本方法は、FCVA(フィルタ処理陰極真空アーク)法を用いて、フィルタリングされたイオンビームを生成し、高アスペクト比のバイアおよびトレンチにおいてもコンフォーマルな金属コーティングの形成を可能にする。また本方法は、バイアおよびトレンチを充填した導電性配線の形成も可能にする。実施の形態は、銅イオンの堆積に関する。基板に金属を堆積する適応FCVA装置および基板に衝突するイオンビームを制御する制御装置も、開示される。制御装置は、既存のフィルタリングされたイオンビーム源内に組み込むのに適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相堆積法、好ましくはFCVA(フィルタ処理陰極真空アーク)法を用いた基板への材料薄膜の堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス、特に半導体産業では、配線材料としてのアルミニウムの使用が減少している。銅が好ましい配線材料となりつつある。アルミニウムの使用は、アルミニウムの比較的高い抵抗率(2.65×10−6Ω・cm)およびエレクトロマイグレーションという2つの主要な理由により、段階的に削減されつつある。
【0003】
アルミニウムに代わる銅の使用は、抵抗率およびエレクトロマイグレーションの問題を両方ともある程度克服する。銅の抵抗率(1.67×10−6Ω・cm)は、アルミニウムより低く、また銅のほうが質量が大きく且つ融点が高い(Alの660℃に対して1085℃)。そのため、銅は、エレクトロマイグレーションの影響を受けにくい。その結果、銅配線がアルミニウム配線に代わった場合に、ある集積密度において、より高い電流密度を許容できる。
【0004】
1980年代に、集積回路におけるパーツの典型的なサイズは、ミクロンのオーダ(〜1μm)であった。当時の装置は、アルミニウム合金メタライゼーションの単一層または二重層のいずれかを備えていた。パーツのサイズが比較的大きいことは、低抵抗のアルミニウムからコンタクトを形成し得ること、および導電層間に形成される導電コネクタが、十分に広いので、スパッタリングされたアルミニウムを用いたカバレッジを可能としていることを意味していた(このような導電コネクタは普通「バイア」と呼ばれる)。
【0005】
最近では、傾向は、より小さいパーツサイズ(2001年時点で0.13ミクロン)および多層メタライゼーションに向かっている。銅メタライゼーションは、好ましいメタライゼーションとして、アルミニウムに取って代わってきている。銅の実現可能な代替物は、銀である。
【0006】
層数の増加(論理チップでは8層に達する)は、幅がますます小さくなっているバイアの信頼性をさらに圧迫している。孔(トレンチまたはバイア)のアスペクト比が、大きくなる傾向がある。ここで、アスペクト比は、孔の最も狭い幅に対するその孔の深さの比として定義される。最も顕著な信頼性要求は、下層の金属層にあることが多い。そこでは、ピッチおよびアスペクト比の条件が最も要求の厳しいものとなるからである。
【0007】
しかし、銅は、完璧な材料ではなく、高い拡散速度を有するため、誘電体基板上に銅層を直接堆積するのは実用的でない。例えば、シリコンやSiO2などの基板への銅の拡散は、ディープレベルの欠陥や金属配線間の電気リークを生じることがあり、少なくとも基板の抵抗率を低下させる。通常、拡散バリア層が、銅が堆積されることになる領域にわたって堆積され、これによって、銅粒子による基板の特性の劣化が防止される。バリア層において用いられる材料は、一般的に耐熱金属またはその窒化物であり、例えばTa(N)、Ti(N)、W(N)、またはこれらの材料の組合せからなる多重層である。
【0008】
完全金属層の選択された部分をエッチングする(減算型金属エッチングパターン形成法)のではなく、好ましいパターン形成方法は、いわゆるダマシンパターン形成プロセスである。バイアや金属線パターンは、誘電体層内にエッチングされる。次に、これらのエッチングされた孔に銅が充填される。両タイプの孔を同一堆積工程中に充填する場合、このパターン形成プロセスをデュアルダマシンプロセスという。
【0009】
従来、集積回路基板への銅の堆積は、図1Aに例示するような複数の工程からなる。まず、基板上に拡散バリアを設ける(102)。次に、一般にドライプロセス(例えば化学気相成長法(CVD)やスパッタリング)を用いて、バリアの上に銅の薄いシード層を形成する(104)。シード層をコンフォーマルに被覆するために、無電解銅めっき法がしばしば使用される(108)。無電解銅めっき(しばしば硫酸銅を含むイオン性溶液からの)を行うためには、その前に、堆積用基板を触媒表面(金、白金またはパラジウム)によって活性化しなければならない(106)。活性化プロセス106の間、HF、HCl、および酢酸のような毒性の強い試薬を含む触媒の前駆体の溶液に基板を曝し、触媒活性化層が基板に沈殿する。活性化後、無電解法を用いて基板はめっきされる(108)。次に、「ウェット」プロセスの電解銅めっき法(ECP)で、補強導電性シード層を使用する(110)。過剰の銅堆積物を除去するため、化学機械研磨法(CMP)として知られるプロセスを使用する(112)。通常、これは、研磨パッドをスラリー化合物とともに使用することを含む。したがって、CMPは、基板および金属への相当の機械的ストレスを伴う。
【0010】
材料薄膜は、エレクトロニクスから光学および冶金コーティングに至るまでの多数の技術においてますます使用されている。理想的には、薄膜の機能特性は、バルク材料の機能特性以上でなければならない。これらの特性は、堆積プロセスで使用されるパラメータによって概ね決まる。しかし、最終用途が何であろうとも、すべての種類の薄膜において望ましい特性がある。このような特性としては、基板への良好な接着、再現性ならびに十分な機械的強度および硬度がある。最終用途によっては、さらなる制約が課される。例えば、光学フィルムの場合には良好な光学特性、耐摩耗層の場合には高い微小硬度、そして耐腐食コーティングの場合は稠密な無孔性フィルムである。
【0011】
銅のコンフォーマルな薄膜シード層の形成は、基板内のトレンチまたはバイアの充填に適用する場合、特に重大である(図1B参照)。理解されるように、コンフォーマルとは専門用語である。コンフォーマルなコーティングは、表面の輪郭(すなわち、垂直、水平または斜め)にかかわらず基板表面を一様に被覆するコーティングである。
【0012】
現在、半導体産業は、さまざまな真空被覆プロセスを使用しているが、真空被覆プロセスは、物理気相成長法(PVD)および(プラズマ強化)化学気相成長法((PE)CVD)の2種類に大別される。両方の堆積法とも、比較的高温が必要なこと、およびしばしば毒性の原料を試用し、また副生成物が生成されることを特徴とする。
【0013】
PVDプロセスは、主として蒸着およびスパッタリングからなる。真空蒸着は、比較的単純なプロセスであって、真空チャンバ、真空ポンプシステム、電源および加熱素子、及び部品をソースの上方に配置するための取付具を備えるシステムを含む。熱は、より高価な電子ビーム法によって発生させてもよい。
【0014】
スパッタリングは、周知の多目的の薄膜堆積プロセスである。材料は、ソース(ターゲット)から基板上にスパッタリングされる。このプロセスは、一部真空環境で多くの種類の材料を生成する。蒸着に比べて、スパッタリングは、基板への接着が良好で且つより稠密なフィルムを生成する。また、スパッタリングは、スケールアップが容易である。
【0015】
従来のマグネトロンスパッタリングは、電子と気体原子との間のエネルギ衝突からのイオン化の効率が低く、中性粒子が高い割合で残る。ウェハ表面およびトレンチに到達するコーティング種のほとんどが、電離しておらず、また、好ましい方向を持っていない(すなわち、スパッタリングされた中性粒子の速度分布は、実質的に等方性である)。到達角およびエネルギの幅広い分布は、コーティング種がトレンチ壁の上部を優先的に被覆し(いわゆるオーバーハング)、トレンチの底部やトレンチ壁の下部に到達する材料は、わずかであるようなシード層堆積パターンを生じる(図2A参照)。
【0016】
今日の半導体産業は、誘導結合プラズマ(ICP)を利用したマグネトロンスパッタリングの一種を採用している。電磁コイルをプラズマ中に埋没させ、RF信号をコイルに印加することにより、スパッタリングされた中性粒子の大部分を電離させる二次プラズマを生成する。
【0017】
ICP利用法は、従来のマグネトロンスパッタリング堆積法に比べて、入射コーティング種のイオン化率および指向性を向上させようとするものである。ICP法は、より狭い到達角分布を形成し、これがディープコンタクトホールの底部の被覆を改善する。トレンチ床コーティングおよびオーバーハングは、減少するが、依然として存在する(図2B参照)。
【0018】
CVDプロセスは、比較的高い蒸気圧の気体の分解を用いて稠密な構造部品やコーティングを形成する方法である。堆積すべき材料の気体状化合物が、熱反応/堆積が起こる基板表面に輸送される。そして、反応の副生成物が、システムから排出される。このプロセスは、高純度コーティングを生成でき、複雑な物体を被覆するための良好なコンフォーマルプロセスである。しかし、プロセス温度は、通常、高温(200〜1000℃)である。ほとんど例外なく、前駆体は、腐食性、吸湿性、及び毒性があり、また、空気に対して敏感である。このため、CVDプロセスは、一般に閉鎖システムで実行される。
【0019】
CVDおよびPVDフィルムの品質は、相当改善の余地があり、代替プロセスが、継続的に開発されている。一代替法として、近年、陰極アーク堆積プロセスが、従来技術よりもはるかに高いイオン化を生じる能力のゆえに多くの注目を集めている。この方法を用いると、接着がより良好でより高密度のフィルムが得られる。この方法は、通常、機械工具に耐摩耗コーティングを施すために使用される。しかし、プロセスに伴う比較的大きく通常は中性のマルチアトムクラスタ(しばしばマクロ粒子と呼ばれる)の相当の分布が、その有用性を制限する。マクロ粒子は、陰極アーク法を用いて堆積されたフィルム中に光学顕微鏡下で見える特徴的な粒子である。
【0020】
過去数年来、フィルタ処理陰極真空アーク(FCVA)と呼ばれる新しい堆積システムが開発されている。その名称が示唆するように、FCVAは、プラズマとともに運搬されるマクロ粒子の数を実質的に減少させるフィルタリング工程を含むことにより、テトラヘドラルアモルファスカーボン(ta−C)およびAl2O3フィルムを含む高品質のコーティングおよびフィルムの生成を容易にする。堆積中、中性原子およびマクロ粒子を有するプラズマビームが、陰極真空アークプロセスによって陰極アークスポットから放出される。そして、不要なマクロ粒子および中性粒子は、交差電磁場によってフィルタリングされて除去される。十分に画定したエネルギ範囲内のイオンのみが基板に到達することが可能となる。この方法により、すべての用途の一般的要求、すなわち、堆積したフィルムが基板に良好に接着し、予測可能で再現性のある良好な特性を有するという要求を満たす高品質フィルムを生成できる。
【0021】
従来のPVDおよびCVD法に比べて、FCVAは、十分に画定した調整可能なエネルギを有する100%イオン化したコーティング種を生成する。この方法は、他の方法によっては生成できないta−Cフィルムや高品質Al2O3フィルムのようなフィルムを生成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
銅でバイアおよびトレンチを充填または被覆することは、すべての周知の堆積法について問題を提起する。したがって、本発明の目的は、前述の問題を克服し、または少なくとも改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、基板の第1部分に導電性領域を形成する方法を提供する。この方法は、
パルス変調電気バイアス信号を発生する工程と、
バイアス信号を基板の近くに印加する工程と、
バイアス信号の作用により実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに第1部分を露出させる工程と
を含む。
【0024】
第2工程で印加されるバイアス信号は、基板の近傍の導体に印加してもよく、または基板自体に直接に印加してもよい。
【0025】
フィルタリングされたビームは、狭いエネルギ分布と、小さい範囲の入射角を有する。したがって最終工程は、基板の第1部分のトレンチまたはバイアが底部から上方へ充填され、確実に、側壁コーティングが実質的に一様になり、オーバーハングが減少する。
【0026】
金属イオンは、好ましくは銅イオンである。平均電離度は、約+2.5eが有効である。本方法は、銅層の接着、核生成および適合性の特性が、それぞれ従来の方法よりもはるかに改善されるという点で多くの利点を有する。さらに、パルス変調DC信号を用いてFCVAプロセスにバイアスをかけることは、銅堆積段階の少なくとも一部が省略可能であることを意味する。
【0027】
本発明により被覆可能な基板の例としては、ポリマ(液状エポキシまたは樹脂層)、シリコン、窒化シリコン、または二酸化シリコンがある。金属イオンの堆積に加えて、本発明は、バイアス信号における変調パターンの選択を通じて、堆積された表面の研磨やエッチングを可能にするように適応可能である。
【0028】
バイアス信号を生成する工程は、周波数、デューティサイクル、電圧および堆積時間を含む設定可能な信号特性を有する信号発生器を設ける工程と、堆積プログラムに従って信号特性を設定する工程とを含む。好ましくは、この工程は、複数の堆積プログラムが格納された堆積プログラムストアを設ける工程と、導電性領域を形成するために必要な堆積プログラムを決定する工程と、プログラムストアから予め決定された堆積プログラムにアクセスする工程と、予め決定された堆積プログラムに従って信号特性を設定する工程とをさらに含む。堆積プログラムは、フィードバックループによって提供することもできる。この場合、フィードバックループは、バイアス信号発生器に堆積ステータス情報をフィードバックする。
【0029】
本発明の方法は、再スパッタリングにより過剰な銅を除去する工程をさらに含む。
【0030】
好ましくは、プラズマビームは、基板の平面に実質的に直交する方向で基板に衝突するように平行光にされる。
【0031】
本発明は、さらに、基板の第1部分に導電性領域を形成する方法を提供する。この方法は、陰極ターゲットから正に帯電した金属イオンを含む実質的に純粋なプラズマビームを生成する工程と、ビームを基板に向けて第1平面内で20°以上の角度を有する第1湾曲部と第2平面内で20°以上の角度を有する第2湾曲部とを有するプラズマダクトを通して通過させ、これによって、ビームから不要な粒子をフィルタリングする工程と、パルス変調電気バイアスの下でフィルタリングされたビームに基板の第1部分を露出させる工程とを含む。
【0032】
パルス変調波パターンを使用してFCVAプロセスにおいて基板にバイアスをかけて銅粒子を堆積することによって、銅堆積プロセス工程の数が減少する(シード層を形成するための活性化/無電解めっきと電気めっきのプロセスとが、単一プロセスで置き換えられる)。
【0033】
一実施の形態では、FVCAの使用は、再スパッタリングによる過剰な銅の除去を可能にすることによって、最終CMP工程さえも完全に不要にする。この工程数の削減により設備投資が節約され、さらに重要なこととして、全体的にはるかに環境に優しいプロセスを提供する。
【0034】
別のバリア形成段階が、下にある基板内への銅の拡散を防ぐために必要であるが、FCVAを、バリア層を堆積するための代替法として使用することが可能である。このためには、バリア形成に好適なターゲット材料(例えばTa、TiまたはW(窒素とともに、および窒素なしで)を使用しなければならない。
【0035】
本発明は、さらに、基板の第1部分に導電性領域を形成する装置を提供する。この装置は、陰極ターゲットから正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成するプラズマ発生器と、2つの湾曲部を有して見通し線や単一の戻り経路を持たずにイオンビームから不要な粒子をフィルタリングするフィルタダクトと、このダクトを通って基板上へプラズマビームを操作するビーム制御機構と、フィルタリングされたプラズマビームにパルス変調電気バイアスを印加するビームバイアス機構とを備える。
【0036】
本発明は、現在のトレンチおよびバイアの規格に限定されない。FVCAプロセスは、次世代半導体用途で予想される、より狭い目標トレンチ幅に適用可能である。また、本発明は、銅の堆積に限定されず、前述のように、銀堆積にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して、本発明の例を詳細に説明する。
【0038】
真空中の陰極アークソースから発生する陽イオンを用いた薄膜形成が、ta−CやAl2O3のような硬質コーティングについて周知である。
【0039】
陰極アークは、アークだけによって生成される金属プラズマ内で維持され、不活性ガスの添加を必要としない真空放電の一形式である。陰極アークシステムで使用される電流は、28ボルト付近で通常100アンペアのオーダである。アークによって発生する金属蒸気の大部分が放電によって電離され、アーク電流の一部分は、正に帯電したイオンを含むプラズマビームとしてリークする。この部分が制御され、任意にフィルタリングされて、遠方の基板にコーティングを形成する。従来の堆積方法における粒子に比べて、これらの陽イオンのエネルギが高いことが、アーク蒸着法によって、高密度で高接着性のフィルムが形成される理由と考えられている。フィルタリングされたアーク蒸着による薄膜の形成については、P.J.マーチンによる「表面及びコーティング技術」第54/55巻(1992)第136−142頁に記述され、さらに「表面エンジニアリング」第9巻(1993),第1号、第51−57頁に記載されている。
【0040】
FCVAは、工業用途に必要とされる要求に対処する際に、他の陰極真空アークシステムに改良を加える。例えば、FCVAは、自動化され、容易に保守され、欠陥のない大被覆面積を生成できる。
【0041】
プラズマビームからマクロ粒子をフィルタリングすることにより、FCVAは、堆積されるコーティング中のマクロ粒子の存在による望ましくない副作用を取り除く。FCVA装置によって、当該分野で周知のコーティングを製造でき、その純度の向上によりコーティング特性を改善できる。
【0042】
FCVAによる銅またはアルミニウムの成膜は、堆積装置の慎重な配置を必要とする。陰極ターゲットは、実質的に水平に配置され、そこから陽イオンのプラズマビームが実質的に垂直に放出される。陰極ターゲットは、ガイドによって保持される。この配置により、陰極ターゲットは陰極アークの準備中に融解でき、故に、この構成は、銅やアルミニウムのような低融点ターゲットでの使用に適している。
【0043】
FCVA以前には、陰極アークソースは、低融点ターゲットとの使用には種々の理由により適さなかった。第1に、陰極アークソースのレイアウトにより、ターゲットは垂直に保持されたり、または水平に対してある角度で保持されることを余儀なくされるため、低融点ターゲットを使用した場合、ターゲットが融解して陰極ステーションから流れ出したり、ソースの壁や底に滴り落ちてしまうことがあった。第2に、溶けた陰極ターゲットからのマクロ粒子の生成は、固体陰極ターゲットからのものよりも多い。従来技術の装置は、低融点金属の許容可能な品質のコーティングを溶けた陰極から得られることを可能にするような十分に有効なマクロ粒子のフィルタを備えていなかった。
【0044】
FCVAでは、陽極は、好ましくは水冷され、陰極アークソースは、数分から数時間の時間にわたり長時間使用される。その結果、本装置を用いて、低融点陰極、特に銅陰極のコーティングを得ることができる。
【0045】
図3に示すFCVA装置は、国際特許出願WO96/26531にさらに詳細に記載されている。本発明の目的に対し、この装置について以下のように説明する。
【0046】
図3において、フィルタ処理陰極真空アーク装置300は、基板上に稠密かつクリーンな薄膜を成膜するために純粋なプラズマを生成する。プラズマは、消耗陰極302の表面上の陰極アークスポットから放出され、(バイアス電源304により生成される)放射状電場および(磁気コイル306により生成される)曲線状軸性磁場によって、正にバイアスされたダブル湾曲トロイダルダクト308を通り、被覆用真空チャンバ内の基板へと導かれる。陰極からプラズマとともに放出された不要なマクロ粒子は、取り外し可能セラミック製バッフル310、取り外し可能ステンレススチールベローズ312およびダブルベンドトロイダルダクト308のセットによって、効果的にフィルタリングされて除去される。
【0047】
ダクト314の出口において実質的にマクロ粒子のないクリーンなプラズマビームは、ビーム走査システム316、318によって1次元的に走査される。この走査ビームは、被覆用真空チャンバ内の回転基板ホルダと組み合わせて、大面積にわたり良好な一様性を有するフィルムを成膜できる。ここで、基板の温度は、例えば室温である。または、ビーム走査システム316、318は、2次元で一様な走査を行うように構成されてもよい。この代替走査システムは、静止ホルダまたは回転基板ホルダのいずれとともに組み合わせて設けることができる。後者の場合、基板の直径は30〜40cmを超えても良い。金属、半導体、プラスチック、セラミックおよびガラスのような種々の基板に対してDCまたはRFバイアスを使用することにより、所望のエネルギを有する成膜材料のイオンをプラズマビームから抽出させることが可能である。
【0048】
図4に、ダブル湾曲フィルタダクト320の第1端に配置されたターゲット材料からプラズマが発生する様子を概略的に示す。構成要素が図3の構成要素に対応する場合、同じ参照符号を使用する。
【0049】
陰極ターゲットは、陽極コイル320によって包囲されている。フィルタダクト308の長さ方向に沿った磁気コイル306は、フィルタコイル306と呼ばれ、放射状電場と組み合わせられて、所定エネルギ範囲外のエネルギを有するマクロ粒子やプラズマ粒子のような不要な汚染物をフィルタリングして除去する。
【0050】
フィルタダクト308から現れるプラズマの集団的挙動は、さらに3つのコイル、すなわち走査コイル318、集束コイル322、および拡大コイル324により誘導される磁場の影響を受ける。
【0051】
次に、磁場は、制御されて、実質的に完全に電離したプラズマを基板330へと案内する。追加のコイルが、入射イオンを制御するために設けられる。追加のコイルとしては、ホルダ拡大コイル326および(任意に)後方拡大コイル328がある。バイアス信号モジュール340が、基板330または基板ホルダ332に、パルス変調バイアス信号350を印加する。
【0052】
WO96/26531に記載されたFCVA装置では、陽イオンの堆積により基板に生じる静電荷を逃がすために、バイアスが基板ホルダ332に印加される。このバイアスは、パルス化も変調もされない。
【0053】
本発明によれば、バイアス信号モジュール340は、DCパルス発生器を含む。他の実施の形態では、基板に印加されるバイアス信号350は、両極性にパルス化されたり、またはRF変調されている。図6に示すように、バイアス信号350は、通常20〜200kHzの範囲の周波数602と、20〜95%の間のデューティサイクルとを有する負のバイアスである。したがって、パルス持続時間604は、マイクロ秒(μs)のオーダである。ピーク電圧(−V)606は、この図では一定値であるが、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)の制御の下で変化させてもよい。
【0054】
図5は、パルス変調バイアス信号350を生成するバイアス信号モジュール340を示す。適切なパルス発生器モジュール506は、DC電源552(1000Vオーダのピーク電圧を有する)、スイッチング回路554(通常はトランジスタから構成される)およびPLC550を備える。電源552は、DC信号をパルス発生器506の出力部にスイッチング回路554経由で出力する。PLC550は、電源552およびスイッチング回路554の両方に結合され、スイッチング回路554が出力信号をスイッチングすべき周波数およびデューティサイクルを規定する。また、PLC550は、電源552に対して、動作すべきピーク電圧値を指示する。PLC550の出力に従って、電源552により生成されるピーク電圧(−V)は、所定数の周波数サイクルにわたり変動することも可能である(ピーク電圧は、50V程度またはそれ以上であってもよい)。
【0055】
PLC550自体は、コンピュータなどの処理装置504によって制御される。処理装置504は、各々が必要な電源およびスイッチング回路の設定に対応するコマンドのシーケンスを出力する。処理装置504は、ユーザ508による直接の制御の下にあってもよい。しかし、PLCコマンドの適当なプログラムのライブラリ502を構築することも有利であることが分かっている。これらのプログラムから、変調された出力信号パターン、例えば図7Aのステップパターン、図7Bの鋸歯状パターンおよび図7Cの半正弦波パターンが得られる。
【0056】
プログラムのライブラリ502は、電子データベースに格納され、処理装置504によってアクセスされる。あるプログラム、すなわちパターンの「レシピ」が、処理装置504によってPLC550に適用されると、例えば、基板上の銅薄膜の形成や高アスペクト比のトレンチまたはバイアの充填のような、基板上における特定の堆積効果を達成する。各プログラムは、例えばピーク電圧、デューティサイクルおよび周波数といった動作パラメータの値のいくつかの表として構築してもよい。各動作パラメータごとに、表は、一連の時刻t1,t2,...,tnでのそのパラメータの必要な値を含む。したがって、各プログラム(レシピ)は、所定の堆積期間Tの間の任意の時刻に要求される各パラメータの値を規定する。実行すべきプログラムの選択も、ユーザが直接制御してもよく、ユーザは、所望の堆積効果に応じてプログラムを選択する。或いは、プログラムの実行は、自動化することもできる。
【0057】
ライブラリ502に格納されるプログラムは、相異なる波形パターンに対応する。この波形パターンは、入射プラズマビームの特性に対して対応する効果を有する。その結果であるプラズマビーム特性の例としては、以下のものがある。
トレンチまたは基板表面のいずれかへ衝突する時のイオンエネルギ、
堆積と再スパッタリングの速度の比、
トレンチ充填の特性(すなわち、到達イオンが、オーバーハングもしくはコンフォーマルなコーティングを形成するか、それとも実際に「ボトムアップ式」にトレンチを充填するか)、
コーティングの一様性および厚さ。
【0058】
前述のように、重要な動作パラメータとしては、電圧レベル、波形形状および周波数、デューティサイクル、ならびに堆積時間がある。最小電圧および最大電圧は、両方とも重要なパラメータである。その値の範囲は、接地レベルと1000ボルトの間であり、大抵は、フローティングと300ボルトの間の範囲である。本発明の好ましい実施の形態は、100V〜300Vの範囲の電圧で動作する。いずれの波形パターンにおいても、複数の異なる所定の電圧設定点がある(例えば図7Bの鋸歯状パターンを参照のこと)。
【0059】
デューティサイクルは、20%〜95%まで変化するが、典型的には、70%と90%の間の範囲内の値が選択される。パルス周波数の好ましい範囲は、20kHzと200kHzとの間であり、大抵は、50kHz〜100kHzの周波数である。包絡線(すなわち変調)波形の周波数は、0.1〜1000Hzの範囲である。
【0060】
図8〜図10は、ホルダバイアス電位の増大の効果を示す。各図において、バイアス電位350の効果が、基板ホルダ332によって保持される基板330上に形成されるバイアについて示されている。
【0061】
図8A〜図8Cは、基板ホルダがバイアスをかけられておらずフローティング電位を有する場合に、バイア内に銅層が形成される様子の時間変化を示している(図8Aが最初)。この系列の最後の図では、バイアのネック部がほとんどつぼまっていることが分かる。これは、電子部品においてオーバーハングにつながるボイドを形成するため望ましくない。バイアの残りの部分のコーティングは、業界で一般に要求される厚さを有する可能性がない。
【0062】
図9Aおよび9Bは、180ボルトの基板バイアス(周波数は50kHz、デューティサイクルは85%)の効果を示している。最初は、堆積効果が優先し、バイアのネック部分が顕著に狭まっている。バイアスは、銅材料の再スパッタリングを促進する。再スパッタリングは、入射材料が前に被覆された材料に接着しないことと考えられている。再スパッタリングは、入射材料が基板上の材料と同一種である場合に最も効率的である。露出を継続すると、図9Bに示す分布パターンが得られる。ここで、スパッタリングおよび堆積の効果が結合して、満足なネックプロファイルならびに十分な厚さの側壁および底部の充填が得られる。
【0063】
図10は、再び高いバイアス電圧(220ボルト)で再スパッタリングした効果を示している。この場合も、周波数およびデューティサイクルは、図9に示すバイアスプロファイルの場合と同様、50kHzおよび85%である。さらにいっそう高いバイアス電圧を使用することにより、堆積効果は、再スパッタリングよりも相対的に弱くなり、バイアのネック部分は、ほとんど狭まらなくなる。再スパッタリングは、コーティングの必要な厚さがバイアの側壁および底部に行われることを保証する。
【0064】
図9および10における状態は、バイアス条件を調整することによるコーティングプロファイルの整形の様子を示している。異なる表面条件やバイアアスペクト比が、異なるバイアス機構を必要とするかもしれない。したがって、主要な条件に適したバイアスプロファイルのライブラリを構築することが重要である。
【0065】
適当な変調パターンのライブラリを用いると、高アスペクト比のトレンチが、図11Aに示すように側壁シード層で被覆されたり、または図11Bに示すように完全に充填されることが可能である。図11Aおよび11Bは、同一周波数を有するが動作時間が異なるパルスを示している。図11Bは、図11Aよりも実質的に長い時間の動作の結果である。パルス数の増加が、再スパッタリングを促進し、したがって、孔の充填を促進することが分かる。バイアス電圧の動作周波数自体は、ピーク電圧およびデューティサイクルと同様に変えることが可能である。
【0066】
基板面積が増大すると、イオンビームの入射角は、垂直入射から実質的に外れる。例えば、直径30cmの基板の端に銅を配置する時、入射角は、75度まで減少することがある。入射角は、主に磁力線の方向によって規定される。
【0067】
図12は、補償なしのコイル配置における磁場の挙動を示す。このコイル配置における磁力線は、基板からある距離で発散し始める。入射イオンビーム中のイオンは、発散する磁力線に実質的に束縛(トラップ)されるので、実質的に磁力線に平行に移動する。
【0068】
プラズマビームは、FCVA装置によって生成されるので、ビームは、実質的に全部電離する。中性粒子がないため、実質的にビーム全体が、発散する磁力線によってトラップされる。
【0069】
バイアの充填に対する実際の入射角の影響を図13に示す。ここで、バイアの右側面は、バイアの右側の縁の陰になっているため、陰になっている側面上の材料の堆積が薄くなる。磁力線は、右上から左下に向かっている。すなわち、入射方向は実質的に力線に平行である。
【0070】
銅のコンフォーマルな堆積を保証するためには、基板表面における磁力線は、基板の外側の端であっても基板表面の平面に垂直であることが理想的である。したがって、本発明のもう1つの概念では、プラズマビームを導くためにコリメータコイルが追加される。これらのコイル、特に拡大コイル324、ホルダ拡大コイル326および後方拡大コイル328が、図4に示され、詳細に図14に示されている。拡大コイルは、好ましくは、信頼性のある動作を保証するために水冷される。
【0071】
拡大コイル324、ホルダ拡大コイル326および後方拡大コイル328に流す電流を制御することによって、理想的な場のプロファイルをより正確に近似することができる。プラズマビームは、磁力線によって閉じ込められ、基板平面に実質的に直交する方向で基板に衝突する。高アスペクト比のバイアであってもコンフォーマルに充填または被覆され、「シャドーイング」効果は認められない。
【0072】
動作時に、拡大コイル電流は、FCVAソースの出口から基板へ向かう磁場を誘導するように予め設定される。銅イオンの堆積の場合、これは、Cuイオンが基板表面で狭い入射角の範囲を有することを保証する。典型的な場の強さの範囲は20〜100mTである。一般的には、拡大コイルの電流は堆積中に調整しないが、この電流は必要な時に調整してもよい。拡大コイルによる磁場は、通常電気的バイアスとは独立している。
【0073】
プラズマビームは、完全に電離しているので、ビームは、磁力線によって決められる直交入射角にトラップされる。結果としてビームは、平行にされて狭くなり、側壁上にさらに基板表面全体にわたって一様なコーティングを形成する。
【0074】
図15は、垂直に入射する平行にされたイオンビームを用いて形成されたコーティングを示す。要求通りに、コーティングは、バイアの両側面で厚さが等しい。
【0075】
コリメータコイルと基板に印加されるバイアス電圧とが協働して、既に基板上にある銅の再スパッタリングを促進する。十分な再スパッタリングが過剰な銅を除去し、故に、CMP112(図1参照)は実質的に不要になる。
【0076】
FCVA技術は、従来のプロセスフローのさらにもう1つの工程の代わりの役割を果た。もう一度図1Aを参照すると、プロセスフローの一番最初の工程は、バリア層の堆積(102)による基板の準備である。前述したように、この層は、通常CVDまたはPVDを用いて形成される。同一の(銅堆積)FCVA装置またはTa、TiもしくはW(窒素とともに、および窒素なしで)をターゲット材料とする第2の専用のFCVA装置のいずれかを使用すれば、FCVA技術を、既存のバリア層堆積プロセス(CVDまたはPVDのいずれか)の代わりに使用することができる。
【0077】
変調パルスバイアス信号源の代わりとして、バイアス信号モジュール340(図4参照)は、RF発生器を含んでもよい。その場合、バイアス信号はRF変調される。RFバイアス信号モジュール340は、さらに、堆積プログラムのデータベースおよびマッチングネットワークに結合した処理装置を備える。RFデータベース内のプログラムは、例えばRF電力設定および必要な全堆積時間などのRF動作に必要なパラメータに相当する。RF発生器は、PLCを含み、処理装置は、必要なパラメータ設定をPLCに送る。信号は、これらのパラメータ設定に従ってRF発生器により生成され、その出力がマッチングネットワーク経由で基板に印加される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】銅成膜の従来プロセスを示す図である。
【図1B】バイアの充填に適用した場合の図1Aのプロセスの各段階を示す図である。
【図2A】従来のマグネトロンスパッタリングから得られる堆積パターンを示す図である。
【図2B】従来のイオン利用スパッタリングから得られる堆積パターンを示す図である。
【図3】フィルタリングされたプラズマビームを生成するFCVA気相堆積装置を示す図である。
【図4】本発明による適応FCVA気相堆積装置を示す図である。
【図5】パルス変調バイアス信号を生成するバイアス信号モジュールのコンポーネントを示す図である。
【図6】ピーク電圧一定のDCパルスパターンを示す図である。
【図7A】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図7B】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図7C】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図8】フローティングバイアスのみによる、高アスペクト比バイアにおける銅の堆積の時間変化を示す図である。
【図9】本発明による180ボルトの基板バイアスの効果を示す図である。
【図10】本発明による220ボルトの基板バイアスの効果を示す図である。
【図11A】第1パルス変調バイアス信号を用いた側壁シード層コーティングの形成を示す図である。
【図11B】第2パルス変調バイアス信号を用いたトレンチの充填を示す図である。
【図12】非コリメートコイル構成における磁力線の方向を示す図である。
【図13】「シャドーイング」の証拠を示す不均一に充填されたバイアを示す図である。
【図14】コリメートコイル構成における磁力線の方向を示す図である。
【図15】図14のコリメートコイル構成を用いて均一に充填されたバイアを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相堆積法、好ましくはFCVA(フィルタ処理陰極真空アーク)法を用いた基板への材料薄膜の堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス、特に半導体産業では、配線材料としてのアルミニウムの使用が減少している。銅が好ましい配線材料となりつつある。アルミニウムの使用は、アルミニウムの比較的高い抵抗率(2.65×10−6Ω・cm)およびエレクトロマイグレーションという2つの主要な理由により、段階的に削減されつつある。
【0003】
アルミニウムに代わる銅の使用は、抵抗率およびエレクトロマイグレーションの問題を両方ともある程度克服する。銅の抵抗率(1.67×10−6Ω・cm)は、アルミニウムより低く、また銅のほうが質量が大きく且つ融点が高い(Alの660℃に対して1085℃)。そのため、銅は、エレクトロマイグレーションの影響を受けにくい。その結果、銅配線がアルミニウム配線に代わった場合に、ある集積密度において、より高い電流密度を許容できる。
【0004】
1980年代に、集積回路におけるパーツの典型的なサイズは、ミクロンのオーダ(〜1μm)であった。当時の装置は、アルミニウム合金メタライゼーションの単一層または二重層のいずれかを備えていた。パーツのサイズが比較的大きいことは、低抵抗のアルミニウムからコンタクトを形成し得ること、および導電層間に形成される導電コネクタが、十分に広いので、スパッタリングされたアルミニウムを用いたカバレッジを可能としていることを意味していた(このような導電コネクタは普通「バイア」と呼ばれる)。
【0005】
最近では、傾向は、より小さいパーツサイズ(2001年時点で0.13ミクロン)および多層メタライゼーションに向かっている。銅メタライゼーションは、好ましいメタライゼーションとして、アルミニウムに取って代わってきている。銅の実現可能な代替物は、銀である。
【0006】
層数の増加(論理チップでは8層に達する)は、幅がますます小さくなっているバイアの信頼性をさらに圧迫している。孔(トレンチまたはバイア)のアスペクト比が、大きくなる傾向がある。ここで、アスペクト比は、孔の最も狭い幅に対するその孔の深さの比として定義される。最も顕著な信頼性要求は、下層の金属層にあることが多い。そこでは、ピッチおよびアスペクト比の条件が最も要求の厳しいものとなるからである。
【0007】
しかし、銅は、完璧な材料ではなく、高い拡散速度を有するため、誘電体基板上に銅層を直接堆積するのは実用的でない。例えば、シリコンやSiO2などの基板への銅の拡散は、ディープレベルの欠陥や金属配線間の電気リークを生じることがあり、少なくとも基板の抵抗率を低下させる。通常、拡散バリア層が、銅が堆積されることになる領域にわたって堆積され、これによって、銅粒子による基板の特性の劣化が防止される。バリア層において用いられる材料は、一般的に耐熱金属またはその窒化物であり、例えばTa(N)、Ti(N)、W(N)、またはこれらの材料の組合せからなる多重層である。
【0008】
完全金属層の選択された部分をエッチングする(減算型金属エッチングパターン形成法)のではなく、好ましいパターン形成方法は、いわゆるダマシンパターン形成プロセスである。バイアや金属線パターンは、誘電体層内にエッチングされる。次に、これらのエッチングされた孔に銅が充填される。両タイプの孔を同一堆積工程中に充填する場合、このパターン形成プロセスをデュアルダマシンプロセスという。
【0009】
従来、集積回路基板への銅の堆積は、図1Aに例示するような複数の工程からなる。まず、基板上に拡散バリアを設ける(102)。次に、一般にドライプロセス(例えば化学気相成長法(CVD)やスパッタリング)を用いて、バリアの上に銅の薄いシード層を形成する(104)。シード層をコンフォーマルに被覆するために、無電解銅めっき法がしばしば使用される(108)。無電解銅めっき(しばしば硫酸銅を含むイオン性溶液からの)を行うためには、その前に、堆積用基板を触媒表面(金、白金またはパラジウム)によって活性化しなければならない(106)。活性化プロセス106の間、HF、HCl、および酢酸のような毒性の強い試薬を含む触媒の前駆体の溶液に基板を曝し、触媒活性化層が基板に沈殿する。活性化後、無電解法を用いて基板はめっきされる(108)。次に、「ウェット」プロセスの電解銅めっき法(ECP)で、補強導電性シード層を使用する(110)。過剰の銅堆積物を除去するため、化学機械研磨法(CMP)として知られるプロセスを使用する(112)。通常、これは、研磨パッドをスラリー化合物とともに使用することを含む。したがって、CMPは、基板および金属への相当の機械的ストレスを伴う。
【0010】
材料薄膜は、エレクトロニクスから光学および冶金コーティングに至るまでの多数の技術においてますます使用されている。理想的には、薄膜の機能特性は、バルク材料の機能特性以上でなければならない。これらの特性は、堆積プロセスで使用されるパラメータによって概ね決まる。しかし、最終用途が何であろうとも、すべての種類の薄膜において望ましい特性がある。このような特性としては、基板への良好な接着、再現性ならびに十分な機械的強度および硬度がある。最終用途によっては、さらなる制約が課される。例えば、光学フィルムの場合には良好な光学特性、耐摩耗層の場合には高い微小硬度、そして耐腐食コーティングの場合は稠密な無孔性フィルムである。
【0011】
銅のコンフォーマルな薄膜シード層の形成は、基板内のトレンチまたはバイアの充填に適用する場合、特に重大である(図1B参照)。理解されるように、コンフォーマルとは専門用語である。コンフォーマルなコーティングは、表面の輪郭(すなわち、垂直、水平または斜め)にかかわらず基板表面を一様に被覆するコーティングである。
【0012】
現在、半導体産業は、さまざまな真空被覆プロセスを使用しているが、真空被覆プロセスは、物理気相成長法(PVD)および(プラズマ強化)化学気相成長法((PE)CVD)の2種類に大別される。両方の堆積法とも、比較的高温が必要なこと、およびしばしば毒性の原料を試用し、また副生成物が生成されることを特徴とする。
【0013】
PVDプロセスは、主として蒸着およびスパッタリングからなる。真空蒸着は、比較的単純なプロセスであって、真空チャンバ、真空ポンプシステム、電源および加熱素子、及び部品をソースの上方に配置するための取付具を備えるシステムを含む。熱は、より高価な電子ビーム法によって発生させてもよい。
【0014】
スパッタリングは、周知の多目的の薄膜堆積プロセスである。材料は、ソース(ターゲット)から基板上にスパッタリングされる。このプロセスは、一部真空環境で多くの種類の材料を生成する。蒸着に比べて、スパッタリングは、基板への接着が良好で且つより稠密なフィルムを生成する。また、スパッタリングは、スケールアップが容易である。
【0015】
従来のマグネトロンスパッタリングは、電子と気体原子との間のエネルギ衝突からのイオン化の効率が低く、中性粒子が高い割合で残る。ウェハ表面およびトレンチに到達するコーティング種のほとんどが、電離しておらず、また、好ましい方向を持っていない(すなわち、スパッタリングされた中性粒子の速度分布は、実質的に等方性である)。到達角およびエネルギの幅広い分布は、コーティング種がトレンチ壁の上部を優先的に被覆し(いわゆるオーバーハング)、トレンチの底部やトレンチ壁の下部に到達する材料は、わずかであるようなシード層堆積パターンを生じる(図2A参照)。
【0016】
今日の半導体産業は、誘導結合プラズマ(ICP)を利用したマグネトロンスパッタリングの一種を採用している。電磁コイルをプラズマ中に埋没させ、RF信号をコイルに印加することにより、スパッタリングされた中性粒子の大部分を電離させる二次プラズマを生成する。
【0017】
ICP利用法は、従来のマグネトロンスパッタリング堆積法に比べて、入射コーティング種のイオン化率および指向性を向上させようとするものである。ICP法は、より狭い到達角分布を形成し、これがディープコンタクトホールの底部の被覆を改善する。トレンチ床コーティングおよびオーバーハングは、減少するが、依然として存在する(図2B参照)。
【0018】
CVDプロセスは、比較的高い蒸気圧の気体の分解を用いて稠密な構造部品やコーティングを形成する方法である。堆積すべき材料の気体状化合物が、熱反応/堆積が起こる基板表面に輸送される。そして、反応の副生成物が、システムから排出される。このプロセスは、高純度コーティングを生成でき、複雑な物体を被覆するための良好なコンフォーマルプロセスである。しかし、プロセス温度は、通常、高温(200〜1000℃)である。ほとんど例外なく、前駆体は、腐食性、吸湿性、及び毒性があり、また、空気に対して敏感である。このため、CVDプロセスは、一般に閉鎖システムで実行される。
【0019】
CVDおよびPVDフィルムの品質は、相当改善の余地があり、代替プロセスが、継続的に開発されている。一代替法として、近年、陰極アーク堆積プロセスが、従来技術よりもはるかに高いイオン化を生じる能力のゆえに多くの注目を集めている。この方法を用いると、接着がより良好でより高密度のフィルムが得られる。この方法は、通常、機械工具に耐摩耗コーティングを施すために使用される。しかし、プロセスに伴う比較的大きく通常は中性のマルチアトムクラスタ(しばしばマクロ粒子と呼ばれる)の相当の分布が、その有用性を制限する。マクロ粒子は、陰極アーク法を用いて堆積されたフィルム中に光学顕微鏡下で見える特徴的な粒子である。
【0020】
過去数年来、フィルタ処理陰極真空アーク(FCVA)と呼ばれる新しい堆積システムが開発されている。その名称が示唆するように、FCVAは、プラズマとともに運搬されるマクロ粒子の数を実質的に減少させるフィルタリング工程を含むことにより、テトラヘドラルアモルファスカーボン(ta−C)およびAl2O3フィルムを含む高品質のコーティングおよびフィルムの生成を容易にする。堆積中、中性原子およびマクロ粒子を有するプラズマビームが、陰極真空アークプロセスによって陰極アークスポットから放出される。そして、不要なマクロ粒子および中性粒子は、交差電磁場によってフィルタリングされて除去される。十分に画定したエネルギ範囲内のイオンのみが基板に到達することが可能となる。この方法により、すべての用途の一般的要求、すなわち、堆積したフィルムが基板に良好に接着し、予測可能で再現性のある良好な特性を有するという要求を満たす高品質フィルムを生成できる。
【0021】
従来のPVDおよびCVD法に比べて、FCVAは、十分に画定した調整可能なエネルギを有する100%イオン化したコーティング種を生成する。この方法は、他の方法によっては生成できないta−Cフィルムや高品質Al2O3フィルムのようなフィルムを生成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
銅でバイアおよびトレンチを充填または被覆することは、すべての周知の堆積法について問題を提起する。したがって、本発明の目的は、前述の問題を克服し、または少なくとも改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、基板の第1部分に導電性領域を形成する方法を提供する。この方法は、
パルス変調電気バイアス信号を発生する工程と、
バイアス信号を基板の近くに印加する工程と、
バイアス信号の作用により実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに第1部分を露出させる工程と
を含む。
【0024】
第2工程で印加されるバイアス信号は、基板の近傍の導体に印加してもよく、または基板自体に直接に印加してもよい。
【0025】
フィルタリングされたビームは、狭いエネルギ分布と、小さい範囲の入射角を有する。したがって最終工程は、基板の第1部分のトレンチまたはバイアが底部から上方へ充填され、確実に、側壁コーティングが実質的に一様になり、オーバーハングが減少する。
【0026】
金属イオンは、好ましくは銅イオンである。平均電離度は、約+2.5eが有効である。本方法は、銅層の接着、核生成および適合性の特性が、それぞれ従来の方法よりもはるかに改善されるという点で多くの利点を有する。さらに、パルス変調DC信号を用いてFCVAプロセスにバイアスをかけることは、銅堆積段階の少なくとも一部が省略可能であることを意味する。
【0027】
本発明により被覆可能な基板の例としては、ポリマ(液状エポキシまたは樹脂層)、シリコン、窒化シリコン、または二酸化シリコンがある。金属イオンの堆積に加えて、本発明は、バイアス信号における変調パターンの選択を通じて、堆積された表面の研磨やエッチングを可能にするように適応可能である。
【0028】
バイアス信号を生成する工程は、周波数、デューティサイクル、電圧および堆積時間を含む設定可能な信号特性を有する信号発生器を設ける工程と、堆積プログラムに従って信号特性を設定する工程とを含む。好ましくは、この工程は、複数の堆積プログラムが格納された堆積プログラムストアを設ける工程と、導電性領域を形成するために必要な堆積プログラムを決定する工程と、プログラムストアから予め決定された堆積プログラムにアクセスする工程と、予め決定された堆積プログラムに従って信号特性を設定する工程とをさらに含む。堆積プログラムは、フィードバックループによって提供することもできる。この場合、フィードバックループは、バイアス信号発生器に堆積ステータス情報をフィードバックする。
【0029】
本発明の方法は、再スパッタリングにより過剰な銅を除去する工程をさらに含む。
【0030】
好ましくは、プラズマビームは、基板の平面に実質的に直交する方向で基板に衝突するように平行光にされる。
【0031】
本発明は、さらに、基板の第1部分に導電性領域を形成する方法を提供する。この方法は、陰極ターゲットから正に帯電した金属イオンを含む実質的に純粋なプラズマビームを生成する工程と、ビームを基板に向けて第1平面内で20°以上の角度を有する第1湾曲部と第2平面内で20°以上の角度を有する第2湾曲部とを有するプラズマダクトを通して通過させ、これによって、ビームから不要な粒子をフィルタリングする工程と、パルス変調電気バイアスの下でフィルタリングされたビームに基板の第1部分を露出させる工程とを含む。
【0032】
パルス変調波パターンを使用してFCVAプロセスにおいて基板にバイアスをかけて銅粒子を堆積することによって、銅堆積プロセス工程の数が減少する(シード層を形成するための活性化/無電解めっきと電気めっきのプロセスとが、単一プロセスで置き換えられる)。
【0033】
一実施の形態では、FVCAの使用は、再スパッタリングによる過剰な銅の除去を可能にすることによって、最終CMP工程さえも完全に不要にする。この工程数の削減により設備投資が節約され、さらに重要なこととして、全体的にはるかに環境に優しいプロセスを提供する。
【0034】
別のバリア形成段階が、下にある基板内への銅の拡散を防ぐために必要であるが、FCVAを、バリア層を堆積するための代替法として使用することが可能である。このためには、バリア形成に好適なターゲット材料(例えばTa、TiまたはW(窒素とともに、および窒素なしで)を使用しなければならない。
【0035】
本発明は、さらに、基板の第1部分に導電性領域を形成する装置を提供する。この装置は、陰極ターゲットから正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成するプラズマ発生器と、2つの湾曲部を有して見通し線や単一の戻り経路を持たずにイオンビームから不要な粒子をフィルタリングするフィルタダクトと、このダクトを通って基板上へプラズマビームを操作するビーム制御機構と、フィルタリングされたプラズマビームにパルス変調電気バイアスを印加するビームバイアス機構とを備える。
【0036】
本発明は、現在のトレンチおよびバイアの規格に限定されない。FVCAプロセスは、次世代半導体用途で予想される、より狭い目標トレンチ幅に適用可能である。また、本発明は、銅の堆積に限定されず、前述のように、銀堆積にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して、本発明の例を詳細に説明する。
【0038】
真空中の陰極アークソースから発生する陽イオンを用いた薄膜形成が、ta−CやAl2O3のような硬質コーティングについて周知である。
【0039】
陰極アークは、アークだけによって生成される金属プラズマ内で維持され、不活性ガスの添加を必要としない真空放電の一形式である。陰極アークシステムで使用される電流は、28ボルト付近で通常100アンペアのオーダである。アークによって発生する金属蒸気の大部分が放電によって電離され、アーク電流の一部分は、正に帯電したイオンを含むプラズマビームとしてリークする。この部分が制御され、任意にフィルタリングされて、遠方の基板にコーティングを形成する。従来の堆積方法における粒子に比べて、これらの陽イオンのエネルギが高いことが、アーク蒸着法によって、高密度で高接着性のフィルムが形成される理由と考えられている。フィルタリングされたアーク蒸着による薄膜の形成については、P.J.マーチンによる「表面及びコーティング技術」第54/55巻(1992)第136−142頁に記述され、さらに「表面エンジニアリング」第9巻(1993),第1号、第51−57頁に記載されている。
【0040】
FCVAは、工業用途に必要とされる要求に対処する際に、他の陰極真空アークシステムに改良を加える。例えば、FCVAは、自動化され、容易に保守され、欠陥のない大被覆面積を生成できる。
【0041】
プラズマビームからマクロ粒子をフィルタリングすることにより、FCVAは、堆積されるコーティング中のマクロ粒子の存在による望ましくない副作用を取り除く。FCVA装置によって、当該分野で周知のコーティングを製造でき、その純度の向上によりコーティング特性を改善できる。
【0042】
FCVAによる銅またはアルミニウムの成膜は、堆積装置の慎重な配置を必要とする。陰極ターゲットは、実質的に水平に配置され、そこから陽イオンのプラズマビームが実質的に垂直に放出される。陰極ターゲットは、ガイドによって保持される。この配置により、陰極ターゲットは陰極アークの準備中に融解でき、故に、この構成は、銅やアルミニウムのような低融点ターゲットでの使用に適している。
【0043】
FCVA以前には、陰極アークソースは、低融点ターゲットとの使用には種々の理由により適さなかった。第1に、陰極アークソースのレイアウトにより、ターゲットは垂直に保持されたり、または水平に対してある角度で保持されることを余儀なくされるため、低融点ターゲットを使用した場合、ターゲットが融解して陰極ステーションから流れ出したり、ソースの壁や底に滴り落ちてしまうことがあった。第2に、溶けた陰極ターゲットからのマクロ粒子の生成は、固体陰極ターゲットからのものよりも多い。従来技術の装置は、低融点金属の許容可能な品質のコーティングを溶けた陰極から得られることを可能にするような十分に有効なマクロ粒子のフィルタを備えていなかった。
【0044】
FCVAでは、陽極は、好ましくは水冷され、陰極アークソースは、数分から数時間の時間にわたり長時間使用される。その結果、本装置を用いて、低融点陰極、特に銅陰極のコーティングを得ることができる。
【0045】
図3に示すFCVA装置は、国際特許出願WO96/26531にさらに詳細に記載されている。本発明の目的に対し、この装置について以下のように説明する。
【0046】
図3において、フィルタ処理陰極真空アーク装置300は、基板上に稠密かつクリーンな薄膜を成膜するために純粋なプラズマを生成する。プラズマは、消耗陰極302の表面上の陰極アークスポットから放出され、(バイアス電源304により生成される)放射状電場および(磁気コイル306により生成される)曲線状軸性磁場によって、正にバイアスされたダブル湾曲トロイダルダクト308を通り、被覆用真空チャンバ内の基板へと導かれる。陰極からプラズマとともに放出された不要なマクロ粒子は、取り外し可能セラミック製バッフル310、取り外し可能ステンレススチールベローズ312およびダブルベンドトロイダルダクト308のセットによって、効果的にフィルタリングされて除去される。
【0047】
ダクト314の出口において実質的にマクロ粒子のないクリーンなプラズマビームは、ビーム走査システム316、318によって1次元的に走査される。この走査ビームは、被覆用真空チャンバ内の回転基板ホルダと組み合わせて、大面積にわたり良好な一様性を有するフィルムを成膜できる。ここで、基板の温度は、例えば室温である。または、ビーム走査システム316、318は、2次元で一様な走査を行うように構成されてもよい。この代替走査システムは、静止ホルダまたは回転基板ホルダのいずれとともに組み合わせて設けることができる。後者の場合、基板の直径は30〜40cmを超えても良い。金属、半導体、プラスチック、セラミックおよびガラスのような種々の基板に対してDCまたはRFバイアスを使用することにより、所望のエネルギを有する成膜材料のイオンをプラズマビームから抽出させることが可能である。
【0048】
図4に、ダブル湾曲フィルタダクト320の第1端に配置されたターゲット材料からプラズマが発生する様子を概略的に示す。構成要素が図3の構成要素に対応する場合、同じ参照符号を使用する。
【0049】
陰極ターゲットは、陽極コイル320によって包囲されている。フィルタダクト308の長さ方向に沿った磁気コイル306は、フィルタコイル306と呼ばれ、放射状電場と組み合わせられて、所定エネルギ範囲外のエネルギを有するマクロ粒子やプラズマ粒子のような不要な汚染物をフィルタリングして除去する。
【0050】
フィルタダクト308から現れるプラズマの集団的挙動は、さらに3つのコイル、すなわち走査コイル318、集束コイル322、および拡大コイル324により誘導される磁場の影響を受ける。
【0051】
次に、磁場は、制御されて、実質的に完全に電離したプラズマを基板330へと案内する。追加のコイルが、入射イオンを制御するために設けられる。追加のコイルとしては、ホルダ拡大コイル326および(任意に)後方拡大コイル328がある。バイアス信号モジュール340が、基板330または基板ホルダ332に、パルス変調バイアス信号350を印加する。
【0052】
WO96/26531に記載されたFCVA装置では、陽イオンの堆積により基板に生じる静電荷を逃がすために、バイアスが基板ホルダ332に印加される。このバイアスは、パルス化も変調もされない。
【0053】
本発明によれば、バイアス信号モジュール340は、DCパルス発生器を含む。他の実施の形態では、基板に印加されるバイアス信号350は、両極性にパルス化されたり、またはRF変調されている。図6に示すように、バイアス信号350は、通常20〜200kHzの範囲の周波数602と、20〜95%の間のデューティサイクルとを有する負のバイアスである。したがって、パルス持続時間604は、マイクロ秒(μs)のオーダである。ピーク電圧(−V)606は、この図では一定値であるが、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)の制御の下で変化させてもよい。
【0054】
図5は、パルス変調バイアス信号350を生成するバイアス信号モジュール340を示す。適切なパルス発生器モジュール506は、DC電源552(1000Vオーダのピーク電圧を有する)、スイッチング回路554(通常はトランジスタから構成される)およびPLC550を備える。電源552は、DC信号をパルス発生器506の出力部にスイッチング回路554経由で出力する。PLC550は、電源552およびスイッチング回路554の両方に結合され、スイッチング回路554が出力信号をスイッチングすべき周波数およびデューティサイクルを規定する。また、PLC550は、電源552に対して、動作すべきピーク電圧値を指示する。PLC550の出力に従って、電源552により生成されるピーク電圧(−V)は、所定数の周波数サイクルにわたり変動することも可能である(ピーク電圧は、50V程度またはそれ以上であってもよい)。
【0055】
PLC550自体は、コンピュータなどの処理装置504によって制御される。処理装置504は、各々が必要な電源およびスイッチング回路の設定に対応するコマンドのシーケンスを出力する。処理装置504は、ユーザ508による直接の制御の下にあってもよい。しかし、PLCコマンドの適当なプログラムのライブラリ502を構築することも有利であることが分かっている。これらのプログラムから、変調された出力信号パターン、例えば図7Aのステップパターン、図7Bの鋸歯状パターンおよび図7Cの半正弦波パターンが得られる。
【0056】
プログラムのライブラリ502は、電子データベースに格納され、処理装置504によってアクセスされる。あるプログラム、すなわちパターンの「レシピ」が、処理装置504によってPLC550に適用されると、例えば、基板上の銅薄膜の形成や高アスペクト比のトレンチまたはバイアの充填のような、基板上における特定の堆積効果を達成する。各プログラムは、例えばピーク電圧、デューティサイクルおよび周波数といった動作パラメータの値のいくつかの表として構築してもよい。各動作パラメータごとに、表は、一連の時刻t1,t2,...,tnでのそのパラメータの必要な値を含む。したがって、各プログラム(レシピ)は、所定の堆積期間Tの間の任意の時刻に要求される各パラメータの値を規定する。実行すべきプログラムの選択も、ユーザが直接制御してもよく、ユーザは、所望の堆積効果に応じてプログラムを選択する。或いは、プログラムの実行は、自動化することもできる。
【0057】
ライブラリ502に格納されるプログラムは、相異なる波形パターンに対応する。この波形パターンは、入射プラズマビームの特性に対して対応する効果を有する。その結果であるプラズマビーム特性の例としては、以下のものがある。
トレンチまたは基板表面のいずれかへ衝突する時のイオンエネルギ、
堆積と再スパッタリングの速度の比、
トレンチ充填の特性(すなわち、到達イオンが、オーバーハングもしくはコンフォーマルなコーティングを形成するか、それとも実際に「ボトムアップ式」にトレンチを充填するか)、
コーティングの一様性および厚さ。
【0058】
前述のように、重要な動作パラメータとしては、電圧レベル、波形形状および周波数、デューティサイクル、ならびに堆積時間がある。最小電圧および最大電圧は、両方とも重要なパラメータである。その値の範囲は、接地レベルと1000ボルトの間であり、大抵は、フローティングと300ボルトの間の範囲である。本発明の好ましい実施の形態は、100V〜300Vの範囲の電圧で動作する。いずれの波形パターンにおいても、複数の異なる所定の電圧設定点がある(例えば図7Bの鋸歯状パターンを参照のこと)。
【0059】
デューティサイクルは、20%〜95%まで変化するが、典型的には、70%と90%の間の範囲内の値が選択される。パルス周波数の好ましい範囲は、20kHzと200kHzとの間であり、大抵は、50kHz〜100kHzの周波数である。包絡線(すなわち変調)波形の周波数は、0.1〜1000Hzの範囲である。
【0060】
図8〜図10は、ホルダバイアス電位の増大の効果を示す。各図において、バイアス電位350の効果が、基板ホルダ332によって保持される基板330上に形成されるバイアについて示されている。
【0061】
図8A〜図8Cは、基板ホルダがバイアスをかけられておらずフローティング電位を有する場合に、バイア内に銅層が形成される様子の時間変化を示している(図8Aが最初)。この系列の最後の図では、バイアのネック部がほとんどつぼまっていることが分かる。これは、電子部品においてオーバーハングにつながるボイドを形成するため望ましくない。バイアの残りの部分のコーティングは、業界で一般に要求される厚さを有する可能性がない。
【0062】
図9Aおよび9Bは、180ボルトの基板バイアス(周波数は50kHz、デューティサイクルは85%)の効果を示している。最初は、堆積効果が優先し、バイアのネック部分が顕著に狭まっている。バイアスは、銅材料の再スパッタリングを促進する。再スパッタリングは、入射材料が前に被覆された材料に接着しないことと考えられている。再スパッタリングは、入射材料が基板上の材料と同一種である場合に最も効率的である。露出を継続すると、図9Bに示す分布パターンが得られる。ここで、スパッタリングおよび堆積の効果が結合して、満足なネックプロファイルならびに十分な厚さの側壁および底部の充填が得られる。
【0063】
図10は、再び高いバイアス電圧(220ボルト)で再スパッタリングした効果を示している。この場合も、周波数およびデューティサイクルは、図9に示すバイアスプロファイルの場合と同様、50kHzおよび85%である。さらにいっそう高いバイアス電圧を使用することにより、堆積効果は、再スパッタリングよりも相対的に弱くなり、バイアのネック部分は、ほとんど狭まらなくなる。再スパッタリングは、コーティングの必要な厚さがバイアの側壁および底部に行われることを保証する。
【0064】
図9および10における状態は、バイアス条件を調整することによるコーティングプロファイルの整形の様子を示している。異なる表面条件やバイアアスペクト比が、異なるバイアス機構を必要とするかもしれない。したがって、主要な条件に適したバイアスプロファイルのライブラリを構築することが重要である。
【0065】
適当な変調パターンのライブラリを用いると、高アスペクト比のトレンチが、図11Aに示すように側壁シード層で被覆されたり、または図11Bに示すように完全に充填されることが可能である。図11Aおよび11Bは、同一周波数を有するが動作時間が異なるパルスを示している。図11Bは、図11Aよりも実質的に長い時間の動作の結果である。パルス数の増加が、再スパッタリングを促進し、したがって、孔の充填を促進することが分かる。バイアス電圧の動作周波数自体は、ピーク電圧およびデューティサイクルと同様に変えることが可能である。
【0066】
基板面積が増大すると、イオンビームの入射角は、垂直入射から実質的に外れる。例えば、直径30cmの基板の端に銅を配置する時、入射角は、75度まで減少することがある。入射角は、主に磁力線の方向によって規定される。
【0067】
図12は、補償なしのコイル配置における磁場の挙動を示す。このコイル配置における磁力線は、基板からある距離で発散し始める。入射イオンビーム中のイオンは、発散する磁力線に実質的に束縛(トラップ)されるので、実質的に磁力線に平行に移動する。
【0068】
プラズマビームは、FCVA装置によって生成されるので、ビームは、実質的に全部電離する。中性粒子がないため、実質的にビーム全体が、発散する磁力線によってトラップされる。
【0069】
バイアの充填に対する実際の入射角の影響を図13に示す。ここで、バイアの右側面は、バイアの右側の縁の陰になっているため、陰になっている側面上の材料の堆積が薄くなる。磁力線は、右上から左下に向かっている。すなわち、入射方向は実質的に力線に平行である。
【0070】
銅のコンフォーマルな堆積を保証するためには、基板表面における磁力線は、基板の外側の端であっても基板表面の平面に垂直であることが理想的である。したがって、本発明のもう1つの概念では、プラズマビームを導くためにコリメータコイルが追加される。これらのコイル、特に拡大コイル324、ホルダ拡大コイル326および後方拡大コイル328が、図4に示され、詳細に図14に示されている。拡大コイルは、好ましくは、信頼性のある動作を保証するために水冷される。
【0071】
拡大コイル324、ホルダ拡大コイル326および後方拡大コイル328に流す電流を制御することによって、理想的な場のプロファイルをより正確に近似することができる。プラズマビームは、磁力線によって閉じ込められ、基板平面に実質的に直交する方向で基板に衝突する。高アスペクト比のバイアであってもコンフォーマルに充填または被覆され、「シャドーイング」効果は認められない。
【0072】
動作時に、拡大コイル電流は、FCVAソースの出口から基板へ向かう磁場を誘導するように予め設定される。銅イオンの堆積の場合、これは、Cuイオンが基板表面で狭い入射角の範囲を有することを保証する。典型的な場の強さの範囲は20〜100mTである。一般的には、拡大コイルの電流は堆積中に調整しないが、この電流は必要な時に調整してもよい。拡大コイルによる磁場は、通常電気的バイアスとは独立している。
【0073】
プラズマビームは、完全に電離しているので、ビームは、磁力線によって決められる直交入射角にトラップされる。結果としてビームは、平行にされて狭くなり、側壁上にさらに基板表面全体にわたって一様なコーティングを形成する。
【0074】
図15は、垂直に入射する平行にされたイオンビームを用いて形成されたコーティングを示す。要求通りに、コーティングは、バイアの両側面で厚さが等しい。
【0075】
コリメータコイルと基板に印加されるバイアス電圧とが協働して、既に基板上にある銅の再スパッタリングを促進する。十分な再スパッタリングが過剰な銅を除去し、故に、CMP112(図1参照)は実質的に不要になる。
【0076】
FCVA技術は、従来のプロセスフローのさらにもう1つの工程の代わりの役割を果た。もう一度図1Aを参照すると、プロセスフローの一番最初の工程は、バリア層の堆積(102)による基板の準備である。前述したように、この層は、通常CVDまたはPVDを用いて形成される。同一の(銅堆積)FCVA装置またはTa、TiもしくはW(窒素とともに、および窒素なしで)をターゲット材料とする第2の専用のFCVA装置のいずれかを使用すれば、FCVA技術を、既存のバリア層堆積プロセス(CVDまたはPVDのいずれか)の代わりに使用することができる。
【0077】
変調パルスバイアス信号源の代わりとして、バイアス信号モジュール340(図4参照)は、RF発生器を含んでもよい。その場合、バイアス信号はRF変調される。RFバイアス信号モジュール340は、さらに、堆積プログラムのデータベースおよびマッチングネットワークに結合した処理装置を備える。RFデータベース内のプログラムは、例えばRF電力設定および必要な全堆積時間などのRF動作に必要なパラメータに相当する。RF発生器は、PLCを含み、処理装置は、必要なパラメータ設定をPLCに送る。信号は、これらのパラメータ設定に従ってRF発生器により生成され、その出力がマッチングネットワーク経由で基板に印加される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】銅成膜の従来プロセスを示す図である。
【図1B】バイアの充填に適用した場合の図1Aのプロセスの各段階を示す図である。
【図2A】従来のマグネトロンスパッタリングから得られる堆積パターンを示す図である。
【図2B】従来のイオン利用スパッタリングから得られる堆積パターンを示す図である。
【図3】フィルタリングされたプラズマビームを生成するFCVA気相堆積装置を示す図である。
【図4】本発明による適応FCVA気相堆積装置を示す図である。
【図5】パルス変調バイアス信号を生成するバイアス信号モジュールのコンポーネントを示す図である。
【図6】ピーク電圧一定のDCパルスパターンを示す図である。
【図7A】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図7B】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図7C】本発明による堆積プログラムに対応する変調パターンを示す図である。
【図8】フローティングバイアスのみによる、高アスペクト比バイアにおける銅の堆積の時間変化を示す図である。
【図9】本発明による180ボルトの基板バイアスの効果を示す図である。
【図10】本発明による220ボルトの基板バイアスの効果を示す図である。
【図11A】第1パルス変調バイアス信号を用いた側壁シード層コーティングの形成を示す図である。
【図11B】第2パルス変調バイアス信号を用いたトレンチの充填を示す図である。
【図12】非コリメートコイル構成における磁力線の方向を示す図である。
【図13】「シャドーイング」の証拠を示す不均一に充填されたバイアを示す図である。
【図14】コリメートコイル構成における磁力線の方向を示す図である。
【図15】図14のコリメートコイル構成を用いて均一に充填されたバイアを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1部分に導電性領域を形成する方法であって、
パルス変調電気バイアス信号を生成する工程と、
前記基板の近くに前記バイアス信号を印加する工程と、
前記第1部分を前記バイアス信号の影響下で実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに露出させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属イオンは、銅イオンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅イオンの平均電離度は、約+2.5eであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パルス変調電気バイアス信号は、20〜200kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50〜100kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50kHzの周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パルス変調電気バイアス信号は、20〜95パーセントの範囲のデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パルス変調電気バイアス信号は、70〜90パーセントの範囲のデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パルス変調電気バイアス信号は、85パーセントのデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50Vより大きいピーク電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パルス変調電気バイアス信号は、120V以上のピーク電圧を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス変調電気バイアス信号は、220V以上のピーク電圧を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パルス変調電気バイアス信号は、接地レベルから300Vまでの範囲の電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記パルス変調電気バイアス信号は、100V〜300Vまでの範囲の電圧を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バイアス信号を生成する工程は、
設定可能な信号特性を有する信号発生器を提供する工程と、
信号発生器を設ける工程と、
堆積プログラムに従って前記信号特性を設定する工程と
を含み、
前記信号特性は、周波数、デューティサイクル、ピーク電圧および堆積時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記バイアス信号を生成する工程は、
複数の堆積プログラムが格納された堆積プログラムストアを提供する工程と、
前記導電性領域を形成するために必要なプログラムを前記堆積プログラムから決定する工程と、
前記プログラムストアから前記予め決定された堆積プログラムにアクセスする工程と、
前記予め決定された堆積プログラムに従って前記信号特性を設定する工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積プログラムは、フィードバックループによって形成され、前記フィードバックループは、堆積ステータス情報を前記バイアス信号発生器にフィードバックすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
再スパッタリングにより過剰な銅を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項19】
プラズマを平行にしてプラズマが前記基板の面に実質的に直交する方向で前記基板に衝突させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
基板の第1部分に導電性領域を形成する方法であって、
陰極ターゲットから正に帯電した金属イオンを含む実質的に純粋なプラズマビームを生成する工程と、
第1平面内で20°以上の角度を有する第1湾曲部および第2平面内で20°以上の角度を有する第2湾曲部を有するプラズマダクトを通して前記基板へ向けて前記ビームを通過させて、前記ビームから不要な粒子をフィルタリングする工程と、
パルス変調電気バイアスの下で前記フィルタリングされたビームに前記基板の前記第1部分を露出させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
基板の第1部分に導電性領域を形成する装置であって、
陰極ターゲットから正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成するプラズマ発生器と、
内部を通過する見通し線および単一の戻り経路を持たない2つの湾曲部を有すると共に、前記イオンビームから不要な粒子をフィルタリングするフィルタダクトと、
前記ダクトを通って前記基板上へ前記プラズマビームを制御するビーム制御機構と、
パルス変調電気バイアスを前記フィルタリングされたプラズマビームに印加するビームバイアス機構と
を有することを特徴とする装置。
【請求項22】
前記基板を前記フィルタリングされたプラズマビーム中に保持する基板ホルダをさらに備え、
前記バイアス機構は、陽イオンの堆積により前記基板に生じる静電荷を逃がすと共に、入射イオンのエネルギが所定エネルギ範囲内に確実に入るように動作することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記ターゲットは、銅からなり、
前記基板の前記第1部分に銅の層を堆積することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
真空チャンバをさらに有し、
前記プラズマ発生器は、前記チャンバ内に配置されて、使用時に前記ターゲットにてアークを生成し、故に正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成し、
前記ターゲットから離れたところにある基板と、
前記ターゲットから前記ダクトを通って前記基板へ陽イオンを移動させる手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記ビーム制御機構は、前記プラズマダクトの少なくとも一部を包囲する磁気コイル構成を含むことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記ダクトは、非磁性の取り外し可能なバッファライナで裏打ちされていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記ビーム制御機構は、ライナバイアス機構を含み、故に電気バイアスが前記ライナに印加され、前記ライナバイアスは10V〜50Vの範囲内で変調されていることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記ダクトの前記2つの湾曲部は、第1平面内の第1湾曲部および第2平面内の第2湾曲部を備え、前記第1および第2平面は異なることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記第1平面と第2平面の間に少なくとも20度の角度があることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プラズマビームからのマクロ粒子の除去に実質的に適した二重湾曲トロイダルダクトを含むフィルタパスを備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項31】
前記バイアス機構は、処理装置およびパルス発生器モジュールを備え、
前記パルス発生器モジュールは、前記パルス変調電気バイアスを前記処理装置の制御下で生成することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記パルス発生器モジュールは、プログラマブルロジック装置、電源およびスイッチング回路を含み、前記スイッチング回路は、前記プログラマブルロジック装置によって制御され、
前記電源の出力は、前記スイッチング回路経由で前記基板に結合され、
前記プログラマブルロジック装置は、前記電源および前記スイッチング回路の両方の動作を制御することを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
金属堆積を制御する装置であって、複数の電磁コイルおよびコイル制御装置を備え、
前記電磁コイルは、使用時に、正に帯電した金属イオンを含むプラズマビームを基板へ導き、
前記コイル制御装置は、前記コイルに流れる電流を制御して前記プラズマビームを平行にして、前記プラズマビームを前記基板の面に実質的に直交する方向で前記基板に確実に衝突させることを特徴とする装置。
【請求項34】
変調パルス電気バイアスをフィルタリングされたプラズマビームに印加するビームバイアス機構であって、
変調パルスバイアス信号を生成する発生器モジュールと、
所定変調に対応するコマンドを前記発生器モジュールに供給する処理装置と、
を備え、
前記発生器モジュールは、DCバイアス信号を生成し、前記DC信号を、パルスDC信号を生成するためにスイッチングし、前記パルスDC信号に所定変調をかけて変調パルス電気バイアスを生成し、
前記処理装置は、前記パルスDC信号にかけるべき変調を選択し、前記変調を行う順番を決定することによって、前記発生器モジュールの動作を制御し、故に、前記バイアス機構は、前記プラズマビーム内に所定の集団的挙動を誘導することを特徴とするビームバイアス機構。
【請求項35】
前記発生器モジュールは、プログラマブルロジック装置、電源およびスイッチング回路を含み、前記電源および前記スイッチング回路は、両方とも前記プログラマブルロジック装置によって制御され、前記電源の出力は、前記スイッチング回路経由で基板に結合され、前記処理装置は、前記プログラマブルロジック装置の動作を制御し、故に前記パルスバイアス信号にかけられる変調を制御することを特徴とする請求項34に記載のビームバイアス機構。
【請求項1】
基板の第1部分に導電性領域を形成する方法であって、
パルス変調電気バイアス信号を生成する工程と、
前記基板の近くに前記バイアス信号を印加する工程と、
前記第1部分を前記バイアス信号の影響下で実質的に完全に電離した金属イオンのフィルタリングされたビームに露出させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属イオンは、銅イオンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅イオンの平均電離度は、約+2.5eであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パルス変調電気バイアス信号は、20〜200kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50〜100kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50kHzの周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パルス変調電気バイアス信号は、20〜95パーセントの範囲のデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パルス変調電気バイアス信号は、70〜90パーセントの範囲のデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パルス変調電気バイアス信号は、85パーセントのデューティサイクルを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パルス変調電気バイアス信号は、50Vより大きいピーク電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記パルス変調電気バイアス信号は、120V以上のピーク電圧を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パルス変調電気バイアス信号は、220V以上のピーク電圧を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パルス変調電気バイアス信号は、接地レベルから300Vまでの範囲の電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記パルス変調電気バイアス信号は、100V〜300Vまでの範囲の電圧を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バイアス信号を生成する工程は、
設定可能な信号特性を有する信号発生器を提供する工程と、
信号発生器を設ける工程と、
堆積プログラムに従って前記信号特性を設定する工程と
を含み、
前記信号特性は、周波数、デューティサイクル、ピーク電圧および堆積時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記バイアス信号を生成する工程は、
複数の堆積プログラムが格納された堆積プログラムストアを提供する工程と、
前記導電性領域を形成するために必要なプログラムを前記堆積プログラムから決定する工程と、
前記プログラムストアから前記予め決定された堆積プログラムにアクセスする工程と、
前記予め決定された堆積プログラムに従って前記信号特性を設定する工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積プログラムは、フィードバックループによって形成され、前記フィードバックループは、堆積ステータス情報を前記バイアス信号発生器にフィードバックすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
再スパッタリングにより過剰な銅を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項19】
プラズマを平行にしてプラズマが前記基板の面に実質的に直交する方向で前記基板に衝突させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
基板の第1部分に導電性領域を形成する方法であって、
陰極ターゲットから正に帯電した金属イオンを含む実質的に純粋なプラズマビームを生成する工程と、
第1平面内で20°以上の角度を有する第1湾曲部および第2平面内で20°以上の角度を有する第2湾曲部を有するプラズマダクトを通して前記基板へ向けて前記ビームを通過させて、前記ビームから不要な粒子をフィルタリングする工程と、
パルス変調電気バイアスの下で前記フィルタリングされたビームに前記基板の前記第1部分を露出させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
基板の第1部分に導電性領域を形成する装置であって、
陰極ターゲットから正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成するプラズマ発生器と、
内部を通過する見通し線および単一の戻り経路を持たない2つの湾曲部を有すると共に、前記イオンビームから不要な粒子をフィルタリングするフィルタダクトと、
前記ダクトを通って前記基板上へ前記プラズマビームを制御するビーム制御機構と、
パルス変調電気バイアスを前記フィルタリングされたプラズマビームに印加するビームバイアス機構と
を有することを特徴とする装置。
【請求項22】
前記基板を前記フィルタリングされたプラズマビーム中に保持する基板ホルダをさらに備え、
前記バイアス機構は、陽イオンの堆積により前記基板に生じる静電荷を逃がすと共に、入射イオンのエネルギが所定エネルギ範囲内に確実に入るように動作することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記ターゲットは、銅からなり、
前記基板の前記第1部分に銅の層を堆積することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
真空チャンバをさらに有し、
前記プラズマ発生器は、前記チャンバ内に配置されて、使用時に前記ターゲットにてアークを生成し、故に正に帯電したイオンを含むプラズマビームを生成し、
前記ターゲットから離れたところにある基板と、
前記ターゲットから前記ダクトを通って前記基板へ陽イオンを移動させる手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記ビーム制御機構は、前記プラズマダクトの少なくとも一部を包囲する磁気コイル構成を含むことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記ダクトは、非磁性の取り外し可能なバッファライナで裏打ちされていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記ビーム制御機構は、ライナバイアス機構を含み、故に電気バイアスが前記ライナに印加され、前記ライナバイアスは10V〜50Vの範囲内で変調されていることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記ダクトの前記2つの湾曲部は、第1平面内の第1湾曲部および第2平面内の第2湾曲部を備え、前記第1および第2平面は異なることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記第1平面と第2平面の間に少なくとも20度の角度があることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プラズマビームからのマクロ粒子の除去に実質的に適した二重湾曲トロイダルダクトを含むフィルタパスを備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項31】
前記バイアス機構は、処理装置およびパルス発生器モジュールを備え、
前記パルス発生器モジュールは、前記パルス変調電気バイアスを前記処理装置の制御下で生成することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項32】
前記パルス発生器モジュールは、プログラマブルロジック装置、電源およびスイッチング回路を含み、前記スイッチング回路は、前記プログラマブルロジック装置によって制御され、
前記電源の出力は、前記スイッチング回路経由で前記基板に結合され、
前記プログラマブルロジック装置は、前記電源および前記スイッチング回路の両方の動作を制御することを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
金属堆積を制御する装置であって、複数の電磁コイルおよびコイル制御装置を備え、
前記電磁コイルは、使用時に、正に帯電した金属イオンを含むプラズマビームを基板へ導き、
前記コイル制御装置は、前記コイルに流れる電流を制御して前記プラズマビームを平行にして、前記プラズマビームを前記基板の面に実質的に直交する方向で前記基板に確実に衝突させることを特徴とする装置。
【請求項34】
変調パルス電気バイアスをフィルタリングされたプラズマビームに印加するビームバイアス機構であって、
変調パルスバイアス信号を生成する発生器モジュールと、
所定変調に対応するコマンドを前記発生器モジュールに供給する処理装置と、
を備え、
前記発生器モジュールは、DCバイアス信号を生成し、前記DC信号を、パルスDC信号を生成するためにスイッチングし、前記パルスDC信号に所定変調をかけて変調パルス電気バイアスを生成し、
前記処理装置は、前記パルスDC信号にかけるべき変調を選択し、前記変調を行う順番を決定することによって、前記発生器モジュールの動作を制御し、故に、前記バイアス機構は、前記プラズマビーム内に所定の集団的挙動を誘導することを特徴とするビームバイアス機構。
【請求項35】
前記発生器モジュールは、プログラマブルロジック装置、電源およびスイッチング回路を含み、前記電源および前記スイッチング回路は、両方とも前記プログラマブルロジック装置によって制御され、前記電源の出力は、前記スイッチング回路経由で基板に結合され、前記処理装置は、前記プログラマブルロジック装置の動作を制御し、故に前記パルスバイアス信号にかけられる変調を制御することを特徴とする請求項34に記載のビームバイアス機構。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−95205(P2008−95205A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329921(P2007−329921)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【分割の表示】特願2004−3619(P2004−3619)の分割
【原出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【出願人】(504013214)ナノフィルム テクノロジーズ インターナショナル ピーティーイー リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NANOFILM TECHNOLOGIES INTERNATIONAL PTE LTD
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【分割の表示】特願2004−3619(P2004−3619)の分割
【原出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【出願人】(504013214)ナノフィルム テクノロジーズ インターナショナル ピーティーイー リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NANOFILM TECHNOLOGIES INTERNATIONAL PTE LTD
【Fターム(参考)】
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