説明

排気還流装置およびこの排気還流装置が組み込まれた内燃機関の運転制御方法

【課題】従来の排気還流装置は、一時的に停止状態にある内燃機関の再始動時に所望量の排気を吸気通路へと還流させることができない。
【解決手段】一端が吸気通路26aに連通すると共に他端が排気通路35aに連通するEGR通路39aと、EGR通路の一端側に配されるEGR制御弁40と、EGR通路の他端側に配されてこれを開閉する開閉弁41と、エンジン10の運転状態に応じて排気の還流量を設定するEGR量設定部とを具えた本発明による内燃機関の排気還流装置36は、EGR制御弁および開閉弁を閉止することにより、これらの間のEGR通路に一時的に閉じ込められた排気に関する情報を取得する取得手段と、これにより取得された排気の情報に基づき、設定された排気の還流量が達成されるようにEGR制御弁の開度を設定するEGR弁開度設定部と、設定された開度となるようにEGR制御弁を駆動するEGR弁駆動部とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気の一部を吸気に加えることによってエミッション、つまり窒素酸化物の発生量を抑制できるようにした排気還流装置およびこの排気還流装置が組み込まれた内燃機関の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気通路内を流れる排気ガスの一部を吸気通路から燃焼室内に戻し、燃焼室内における混合気の燃焼温度を低下させることにより、排気ガス中に占める窒素酸化物の割合を低減させるようにしたEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気還流)装置が知られている。このEGR装置においては、両端が吸気通路と排気通路とに連通するEGR通路の途中にこのEGR通路を開閉し得るEGR制御弁を介装し、所定の運転領域にて排気ガスを吸気通路側へ還流させている。
【0003】
近年、排気の浄化に対する社会的要求が著しく高まっており、このような観点から車両が停止中の場合には内燃機関の作動を停止させ、燃料の無駄な消費を抑制すると同時に二酸化炭素の無駄な排出を防止する、いわゆるアイドルストップ制御も推進されている。しかしながら、このようなアイドルストップ制御における内燃機関の再始動時には、EGR通路には有効となる排気が介在していないため、特に始動の最初に燃料と共に燃焼室に供給される吸気に対し、排気を含ませることが困難である。
【0004】
このような問題を改善し得る技術が特許文献1にて提案されている。すなわち、アイドルストップ制御において、内燃機関の停止時にEGR通路にEGRガスを一時的に貯留しておき、内燃機関の再始動時、特に最初に供給される燃料が燃焼する初爆気筒に対し、EGRガスを吸気に加えて供給できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、EGR通路に一時的に貯留されるEGRガスは、内燃機関の停止直前の排気通路を流れていた排気の一部であるが、どの程度の量および圧力のEGRガスがEGR通路に閉じ込められていのるかを認識することができない。このため、内燃機関の再始動時に還流すべきEGRの量に対してEGR制御弁の開度をどの程度設定すればよいのかが不明となっている。結果として、再始動時における特に初爆以降の燃焼気筒において、狙い通りの正確なEGR制御を行うことが本質的にできない不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、内燃機関を一時的に停止してからこれを再始動させる際に、初爆気筒に対しても正確なEGR制御を行い得る排気還流装置およびこの排気還流装置が組み込まれた内燃機関の運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態は、一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、内燃機関から排出される排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路と、このEGR通路の一端側に配されて当該EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を制御するためのEGR制御弁と、前記EGR通路の他端側に配されて前記EGR通路を開閉するための開閉弁と、内燃機関の運転状態に応じて前記EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を設定するEGR量設定部とを具えた内燃機関の排気還流装置であって、前記EGR制御弁および前記開閉弁を閉止することによってこれらの間の前記EGR通路に一時的に閉じ込められた排気に関する情報を取得する取得手段と、前記EGR量設定部にて設定された排気の還流量が達成されるように、 前記取得手段により取得される排気の情報に基づいて前記EGR制御弁の開度を設定するEGR弁開度設定部と、このEGR弁開度設定部にて設定された開度となるように、前記EGR制御弁を駆動するEGR弁駆動部とを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、内燃機関に対する停止要求があった場合、まずEGR制御弁によってEGR通路を閉止する。次いで開閉弁を閉止し、吸気通路側の圧力と排気通路側の圧力との差圧に応じた排気をEGR制御弁と開閉弁との間のEGR通路に一時的に閉じ込めた後、内燃機関を停止する。取得手段は、EGR制御弁および開閉弁を閉止することによってこれらの間のEGR通路に一時的に閉じ込められた排気に関する情報を取得する。この状態で内燃機関に対する始動要求があった場合、内燃機関の運転状態に応じてEGR通路から吸気通路への排気の還流量がEGR量設定部にて設定される。また、これに対応するEGR制御弁の開度が取得手段により取得される排気の情報に基づいてEGR弁開度設定部にて設定される。そして、このEGR弁開度設定部にて設定された開度となるように、EGR弁駆動部がEGR制御弁を駆動し、EGR通路に閉じ込められていた排気が吸気通路に還流され、ここを流れる吸気と混合される。開閉弁はEGR制御弁の開弁後、一時的に貯留されていた排気の消費、つまり吸気通路への流出に伴って開弁状態へと切り替えられ、内燃機関に対する停止要求のあった以前の状態に戻る。
【0010】
本発明の第1の形態による内燃機関の排気還流装置において、取得手段によって取得される排気の情報がEGR制御弁と開閉弁との間のEGR通路に閉じ込められた排気の圧力に関する情報であってよい。この場合、EGR通路の一端に連通する吸気通路の圧力を検出する吸気圧センサーをさらに具え、EGR弁開度設定部がEGR量設定部にて設定された排気の還流量と、吸気圧センサーにより検出される吸気圧と、取得手段により取得される排気の圧力に関する情報とに基づいてEGR制御弁の開度を設定するものであってよい。
【0011】
EGR通路に導かれる排気の圧力を上昇させるための排気昇圧手段をさらに具えることができる。
【0012】
本発明の第2の形態は、一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、内燃機関から排出される排気の一部を吸気通路に還流するためのEGR通路と、このEGR通路の一端側に配されて当該EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を制御するためのEGR制御弁と、前記EGR通路の他端側に配されて前記EGR通路を開閉するための開閉弁とを有する排気還流装置が組み込まれた内燃機関の運転制御方法であって、前記内燃機関の停止要求に従って前記EGR制御弁を閉止した後、前記開閉弁を閉止して前記内燃機関から排出される排気の一部を前記EGR制御弁と前記開閉弁との間の前記EGR通路に一時的に閉じ込めた状態にて前記内燃機関を停止させるステップと、前記EGR制御弁と前記開閉弁との間の前記EGR通路に保持された排気に関する情報を取得するステップと、内燃機関の停止要求後に内燃機関の始動要求があった場合、内燃機関をモータリングさせるステップと、内燃機関の運転状態に応じて前記EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を設定するステップと、設定された排気の還流量が達成されるように、取得した排気に関する情報に基づいて前記EGR制御弁の開度を設定するステップと、前記EGR通路に保持された排気に関する情報に基づき、前記EGR制御弁の開度を設定するステップと、設定された開度に前記EGR制御弁を開いて前記EGR通路に一時的に貯留された排気を前記吸気通路に還流させてモータリング中の内燃機関に供給するステップと、排気を含む吸気が導かれるモータリング中の内燃機関の燃焼室に燃料を供給して内燃機関を始動させるステップと、内燃機関が始動した後に内燃機関のモータリングを終了すると共に前記開閉弁を開放状態に切り換えるステップとを具えたことを特徴とする内燃機関の運転制御方法にある。
【0013】
本発明の第2の形態による内燃機関の運転制御方法において、内燃機関を停止させるステップが、内燃機関の停止要求があった場合に排気通路を流れる排気の圧力を上昇させるステップと、排気の圧力を上昇させた後にEGR制御弁を閉止するステップとを含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の内燃機関の排気還流装置によると、EGR制御弁と開閉弁との間のEGR通路に閉じ込めた排気に関する情報を取得する取得手段を具えているので、設定された排気の還流量が達成されるようにEGR制御弁の開度を正確に設定することができる。
【0015】
取得手段によって取得される排気の情報がEGR制御弁と開閉弁との間のEGR通路に閉じ込められた排気の圧力に関する情報の場合、EGR制御弁の開度を容易に設定することができる。特に、EGR通路の一端に連通する吸気通路の圧力を検出する吸気圧センサーをさらに具えた場合、これによって検出される吸気圧に応じてEGR制御弁の開度をより正確に設定することができる。
【0016】
EGR通路に導かれる排気の圧力を上昇させるための排気昇圧手段をさらに具えた場合、EGR制御弁と開閉弁との間のEGR通路により多量の排気を高圧で一時的に閉じ込めることができる。
【0017】
本発明の内燃機関の運転制御方法によると、EGR通路に一時的に閉じ込められた排気に関する情報に基づいてEGR制御弁の開度を設定するようにしたので、内燃機関を再始動させる際に初爆気筒から正確なEGR制御を行うことができる。
【0018】
内燃機関を停止させるステップが内燃機関の停止要求があった場合に排気通路を流れる排気の圧力を上昇させた後にEGR制御弁を閉止するステップを含む場合、より高圧の排気をEGR通路に閉じ込めておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による排気還流装置を圧縮点火方式の内燃機関に応用した一実施形態の概念図である。
【図2】図1に示した実施形態における制御ブロック図である。
【図3】大気圧に対するEGR通路に閉じ込められた排気の圧力比と、EGR通路からの排気の漏洩率との関係を表すマップである。
【図4】時間と外気温とEGR通路からの放熱量との関係を表すマップである。
【図5】エンジン回転速度と燃料噴射量とEGR量との関係を表すマップである。
【図6】吸気圧に対するEGR通路に閉じ込められた排気の圧力比と、EGR量と、EGR制御弁の開度との関係を表すマップである。
【図7】図1に示した実施形態における排気還流装置の制御の流れを模式的に示すフローチャートである。
【図8】図7に示した実施形態におけるEGRガス状態量取得のサブルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による排気還流装置を圧縮点火方式の内燃機関に応用した実施形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、本発明の適用対象となるものに要求される特性に応じてその構成を自由に変更することが可能である。例えば、ガソリンやアルコールまたはLNG(液化天然ガス)などを燃料としてこれを点火プラグにて着火させる火花点火方式の内燃機関に対しても本発明は有効である。
【0021】
本実施形態におけるエンジンシステムの概念を図1に示し、このエンジンシステムにおける制御ブロックを図2に示す。すなわち、本実施形態におけるエンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室12内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火方式の多気筒内燃機関である。しかしながら、単気筒の内燃機関であっても本発明を適用し得ることは言うまでもない。
【0022】
燃焼室12にそれぞれ臨む吸気ポート13および排気ポート14が形成されたシリンダーヘッド15には、可変動弁機構16(図2参照)と、先の燃料噴射弁11とが組み込まれている。
【0023】
本実施形態における可変動弁機構16は、吸気ポート13を開閉する吸気弁17および排気ポート14を開閉する排気弁18を含み、エンジン10の運転状態に応じて吸気弁17および排気弁18の開閉タイミングを変更し得るものである。この可変動弁機構16は、エンジン10の運転中に油圧やアクチュエーターなどを用いて吸排気弁17,18の開閉時期を変更し得るものであればよく、周知のものを採用することが可能である。本発明の排気昇圧手段として利用することも可能な可変動弁機構16は、ECU(Electronic Control Unit)19の吸排気弁開閉時期変更部20にてその開閉時期を早めたり、逆に遅めたりすることができるようになっている。この吸排気弁開閉時期変更部20は、ECU19の運転状態判定部21にて判定される車両の運転状態に基づき、吸排気弁開閉時期設定部22にて設定される吸排気弁17,18の開閉時期となるように、可変動弁機構16を駆動する。なお、このような可変動弁機構16に代えて吸気弁17および排気弁18の開閉タイミングが固定された動弁機構を採用することも可能である。
【0024】
燃料噴射弁11は、これら吸気弁17および排気弁18に挟まれるように燃焼室12の上端中央に臨んで配されている。本実施形態における燃料噴射弁11は、燃料である軽油を圧縮行程の終了直前、つまりピストン23の圧縮上死点直前にのみ燃焼室12内に直接噴射する直噴単噴射型式のものである。しかしながら、この圧縮行程での燃料噴射に加え、より均一な混合気を形成するために吸気行程の途中においてにも噴射する多噴射型式のものや、吸気ポート13内に噴射するポート噴射形式のものなどを採用することも可能である。
【0025】
燃料噴射弁11から燃焼室12内に供給される燃料の量および噴射タイミングは、運転者によるアクセルペダル24の踏み込み量を含む車両の運転状態に基づいてECU19により制御される。アクセルペダル24の踏み込み量は、アクセル開度センサー25により検出され、その検出情報がECU19に出力される。
【0026】
吸気ポート13に連通するようにシリンダーヘッド15に連結されて吸気ポート13と共に吸気通路26aを画成する吸気管26の途中には、吸気通路26aの開度を調整するためのスロットル弁27が組み込まれている。このスロットル弁27の開度は、アクセルペダル24の踏み込み量などを含む車両の運転状態に基づき、ECU19によりスロットルアクチュエーター28を介して制御される。
【0027】
ピストン23が往復動するシリンダーブロック29には、水温センサー30と、クランク角センサー31とが取り付けられている。水温センサー30は、燃焼室12を囲むようにシリンダーブロック29に形成された水ジャケット32内を流れる冷却水の温度を検出してこれをECU19に出力する。クランク角センサー31は、連接棒33を介してピストン23が連結されるクランク軸34の回転位相、つまりクランク角を検出してこれをECU19に出力する。ECU19は、水温センサー30からの情報に基づいて暖機運転の必要性の有無などを把握する一方、クランク角センサー31からの情報に基づいてクランク軸34の回転位相やエンジン回転数を実時間で把握する。
【0028】
エンジン10には、排気通路35a内を流れる排気の一部を吸気通路26aに導くEGR装置36と、排気タービン式過給機37と、排気浄化装置38とが組み込まれている。
【0029】
排気中の窒素酸化物の低減や燃費の向上を企図したEGR装置36は、EGR通路39aを画成するEGR管39と、このEGR管39に相隔てて設けられるEGR制御弁40および開閉弁41と、熱交換器42とを具えている。EGR管39は、排気ポート14と共に排気通路35aを画成する排気管35に一端が連通すると共に他端が上述したスロットル弁27とこのスロットル弁27よりも下流側に配されたサージタンク43との間の吸気管26内に連通している。吸気管26とEGR管39との接続部分に近接してEGR管39の一端側に配され、ECU19によりその作動が制御されるEGR制御弁40は、車両の運転状態に基づき、EGR通路39aから吸気通路26aへと還流される排気の流量を制御する。排気管35とEGR管39との接続部分側に配される開閉弁41は、EGR通路39aを単純に開閉するためのものであり、ECU19によってその開閉動作が制御される。本実施形態では、閉止したEGR制御弁40と開閉弁41とで仕切られるEGR通路39aの容積がエンジン10の排気量とほぼ同じになるように、EGR制御弁40と開閉弁41との間隔およびこれらの間のEGR通路39aの内径が適切に設定されている。EGR通路39aに流入する排気の温度を低減させるための熱交換器42は、EGR管39の他端側、つまり排気管35およびEGR管39の接続部分と開閉弁41との間に位置するEGR管39の途中に配されている。この熱交換器42には、シリンダーブロック29に形成された水ジャケット32を流れる冷却水が導かれ、高温の排気を効率よく冷却することによって、EGR通路39aに導かれるEGRガスの充填効率を高める。
【0030】
排気タービン式過給機(以下、単に過給機と記述する)33は、排気通路35aを流れる排気の運動エネルギーを利用して燃焼室12への過給を行い、吸気の充填効率を高めるためのものである。この過給機37は、コンプレッサー37aとこのコンプレッサー37aと一体に回転するタービン37bとで主要部が構成された可変ノズルベーン式ターボ過給機である。コンプレッサー37aは、スロットル弁27よりも上流側に位置する吸気管26の途中に組み込まれている。タービン37bは、排気ポート14に連通するようにシリンダーヘッド15に連結された排気管35の途中に組み込まれている。本実施形態におけるタービン37bは、車両の運転状態に基づき、ECU19によりベーンアクチュエーター44(図2参照)を介して開度が制御される図示しない可変ノズルベーン(以下、単に可変ベーンと記述する)を具えている。つまり、ベーンアクチュエーター44を作動して可変ベーンの開度を変更することにより、排気の運動エネルギーの利用効率を変え、結果として吸気の充填効率を変更することができる。本実施形態では、この過給機37のタービン37bの可変ベーンおよびベーンアクチュエーター44を本発明における排気昇圧手段として利用することができる。このような過給機37としては、エンジン10の運転中に油圧やアクチュエーターなどを用いて可変ベーンの開度を変更し得るものであればよく、周知のものを採用することが可能である。
【0031】
なお、高温の排気にさらされるタービン37b側からの伝熱によりコンプレッサー37aを介して加熱される吸気温を低下させるため、コンプレッサー37aとサージタンク43との間の吸気通路26aの途中には、インタークーラー45が組み込まれている。また、過給器のコンプレッサー37aよりも上流側の吸気管26には、ここの吸気通路26aを流れる吸気の流量を検出してこれをECU19に出力するエアーフローメーター46が設けられている。
【0032】
燃焼室12内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置38は、過給機37のタービン37bよりも下流側の排気通路35aを画成する排気管35の途中に配されている。本実施形態における排気浄化装置38は、少なくとも酸化触媒コンバーター38aを有するが、DPF(Diesel Particulate Filter)や、NOX触媒などの他の触媒コンバーターを追加することも可能である。
【0033】
従って、EGR通路39aを介して吸気通路26a内に還流される排気ガスと共に燃焼室12内に供給される吸気は、燃料噴射弁11から燃焼室12内に噴射される燃料と混合気を形成する。そして、ピストン23の圧縮上死点直前にて自然着火して燃焼し、これによって生成する排気ガスが排気浄化装置38を通って排気管35から大気中に排出される。この場合、吸気中に含まれるCO2によって混合気の燃焼温度が低下するため、混合気の燃焼に伴って生成する窒素酸化物の量が抑制されることとなる。
【0034】
ここで、車両の運転中にエンジン停止要求があった場合、EGR通路39aに高圧のEGRガスを一時的に蓄えておき、燃料噴射弁11からの燃料の供給を停止し、その後、エンジン始動要求があるまでエンジン10を停止する。エンジン始動要求があった場合、再び燃料噴射弁11からエンジン10の燃焼室12に燃料を供給するが、この時、EGR制御弁40を開弁してEGR通路39aに蓄えられていたEGRガスを吸気通路26aの吸気に加える。これにより、エンジン再始動の初爆時からEGR制御が行われるようにする。なお、本発明における「エンジン停止要求」とは、車両のアイドリング運転状態のように、エンジン10の運転中にアクセルペダル24の踏み込み量が0かつ車速が0となった場合を言う。また、本発明における「エンジン始動要求」とは、「エンジン停止要求」によってエンジン10を停止した状態から、運転者が車両の発進のためにアクセルペダル24が踏み込まれた場合を言う。
【0035】
ECU19は、予め設定されたプログラムに従って円滑なエンジン10の運転がなされるように、燃料噴射弁11,可変動弁機構16,スロットル弁27,EGR制御弁40,可変ベーン,開閉弁41などの作動を制御する。このため、上述したセンサー25,30,31およびエアーフローメーター46の他に、大気圧センサー47,外気温センサー48,吸気圧センサー49,排気圧センサー50、排気温センサー51などからの検出情報がECU19に入力される。本実施形態における吸気圧センサー49は、EGR通路39aの一端部との接続部分よりも下流側の吸気通路26aを流れる吸気の圧力PIを検出する。また排気圧センサー50および排気温センサー51は、EGR通路39aの他端部との接続部分よりも上流側の排気通路35aを流れる排気の圧力PEおよび温度TEをそれぞれ検出する。ECU19は、これらの検出情報に基づき、エンジン10およびこのエンジン10が搭載される車両の運転状態を把握する。本実施形態におけるECU19は、運転状態判定部21と、吸排気弁開閉時期変更部20と、吸排気弁開閉時期設定部22と、始動モーター駆動部52と、スロットル開度設定部53と、スロットル弁駆動部54と、燃料噴射設定部55と、燃料噴射弁駆動部56と、ベーン開度設定部57と、ベーン駆動部58と、EGRガス状態量取得部59と、EGR量設定部60と、EGR弁開度設定部61と、EGR弁駆動部62と、開閉弁駆動部63とを具えている。
【0036】
運転状態判定部21は、上述したセンサー25,30,31,47〜51,エアーフローメーター46などからの検出情報に基づいて車両およびエンジン10の運転状態を把握する。つまり、この運転状態判定部21ではエンジン停止要求やエンジン始動要求の有無なども併せて判定される。
【0037】
吸排気弁開閉時期設定部22は、先の運転状態判定部21による車両およびエンジン10の運転状態に基づき、あらかじめ設定された最適な吸排気弁17,18の開閉時期を設定し、この情報を吸排気弁開閉時期変更部20に出力する。吸排気弁開閉時期変更部20は、吸排気弁開閉時期設定部22にて設定された吸排気弁17,18の開閉時期となるように、可変動弁機構16を駆動する。
【0038】
始動モーター駆動部52は、図示しないイグニッションキースイッチのオン信号や先のエンジン始動要求に基づき、クランク軸34に図示しない継手を介して接続するエンジン始動モーター64(図2参照)の作動を制御する。エンジン始動モーター64は、エンジン10のモータリングを行う。
【0039】
スロットル開度設定部53は、アクセル開度センサー25によって検出されるアクセルペダル24の踏み込み量や車両の運転状態に基づき、あらかじめ設定された最適なスロットル開度を設定する。スロットル弁駆動部54は、スロットルアクチュエーター28を介してこのスロットル開度設定部53にて設定された開度にスロットル弁27を制御する。なお、本実施形態においてエンジン停止要求があった場合、吸気通路26aを流れる吸気圧と排気通路35aを流れる排気圧との差圧をできるだけ大きくし、より高圧の排気がEGR通路39aに流入するように、スロットル弁27が閉じられるようになっている。
【0040】
燃料噴射設定部55は、アクセル開度センサー25からの検出信号に基づいてエンジン10の駆動トルク、つまり燃料噴射弁11からの燃料の噴射量とその噴射時期とを設定する。燃料噴射弁駆動部56は、この燃料噴射設定部55にて設定された燃料噴射量に対応した燃料が設定された噴射時期に噴射されるように燃料噴射弁11を駆動する。
【0041】
エンジン10を搭載した車両が予め設定されたEGR運転領域にあることをECU19の運転状態判定部21が判定した場合、EGR量設定部60は、この時の車両の運転状態に応じて燃焼室12内に還流すべきEGR量を設定する。このEGR量設定部60には、エンジン回転速度と燃料噴射量とEGR量との関係をあらかじめ規定した図5に示すようなマップが記憶されており、従ってEGR量設定部60には燃料噴射設定部55にて設定された燃料噴射量に関する情報が入力される。このEGR量設定部60にて設定されたEGR量は、EGR弁開度設定部61に出力される。
【0042】
EGR弁開度設定部61には、吸気圧PIに対するEGR通路39aの排気圧Peg(通常は排気通路35aを流れる排気圧PE)の割合、つまりPeg/PIと、EGR量と、EGR制御弁40の開度との関係を規定した図6に示すようなマップが記憶されている。EGR弁開度設定部61は、吸気圧PIに対するEGRガスの圧力Peg(または排気圧PE)の割合と、EGR量設定部60にて設定されたEGR量とに基づき、EGR制御弁40の開度を設定し、これをEGR弁駆動部62に出力する。EGR弁駆動部62は、EGR弁開度設定部61にて設定された開度にEGR制御弁40を制御してEGR量設定部60にて設定された排気の還流量を達成する。また、それ以外の場合は基本的にEGR通路39aを塞ぐように閉じた状態に保持する。エンジン停止要求があった場合にもEGR制御弁40は閉止状態に保持される。
【0043】
EGRガス状態量取得部59は、EGR制御弁40と開閉弁41との間のEGR通路39aに閉じ込められた排気、つまりEGRガスの状態、本実施形態ではEGRガスの圧力Pegを取得し、これをEGR弁開度設定部61に出力する。より具体的には、開閉弁41を閉止した時点の排気圧PEおよび排気温TEを排気圧センサー50および排気温センサー51からの情報により取得する。開閉弁41を閉止してからEGR制御弁40を開弁するまでの時間が短い場合、この検出情報をそのまま利用する。しかしながら、EGR制御弁40を開弁するまでの時間が比較的長い場合、EGR制御弁40および開閉弁41からのEGRガスの漏洩およびEGR管39からの放熱により、EGRガスの圧力Pegおよび温度Tegが時間の経過と共に低下する。このため、EGRガス状態取得部59においては、開閉弁41を閉止してからの時間をカウントしてEGR通路39aに閉じ込めたEGRガスの圧力Pegおよび温度Tegの変化を予測して連続的に更新するようにしている。本実施形態におけるEGRガス状態取得部59は、大気圧Paに対するEGRガスの圧力Pegの割合と、EGR通路39aからのEGRガスの漏洩率との関係を規定した図3に示すようなマップを記憶している。また、開閉弁41を閉止してからの時間と、EGR管39からの放熱量と、外気温Taとの関係を規定した図4に示すようなマップも記憶している。EGRガス状態取得部59は、これらのマップとEGR管39の比熱や気体の状態方程式などを利用してEGRガスの圧力Pegを更新する。
【0044】
ベーン開度設定部57は、エンジン回転速度や車両の運転状態に基づいて過給機37のタービン37bのベーン開度を設定する。ベーン駆動部58は、このベーン開度設定部57にて設定されたベーン開度となるように、ベーンアクチュエーター44を介して可変ベーンを駆動する。なお、エンジン停止要求があった場合には可変ベーンの開度が最少に絞られ、過給機37のタービン37bよりも上流側の排気通路35aの排気圧が高められ、これにより高圧の排気をEGR通路39aへ導くことができる。
【0045】
開閉弁駆動部63は、先のエンジン停止要求やエンジン始動要求に基づき、あらかじめ設定されたプログラムに従って開閉弁41の開閉を制御する。より具体的には、EGR制御弁40を閉弁してから一定時間後に開閉弁41を閉止するが、この閉止時期はエンジン10からの排気流量がEGR制御弁40を閉弁してからエンジン10の排気量に達した時点を想定している。また、エンジン始動要求に基づいてEGR制御弁40に対するEGR制御を開始してから一定時間後に開閉弁41を全開状態に切り換えるが、この切り換え時期も全気筒での燃料の燃焼が完了した時点を想定している。
【0046】
このような本実施形態におけるエンジン10の運転制御、特にEGR制御に関する手順は、図7および図8に示すフローチャートに従って行われる。すなわち、まずS10のステップにて水温センサー30によって検出されるエンジン10の冷却水温TWが閾値TR以上であるか否かを判定し、エンジン10の冷却水温TWが閾値TR以上となるまでこのS10のステップが繰り返される。エンジン10が燃焼の安定しない暖機状態にある場合、EGR制御に移行することは望ましくないので、この閾値TRはEGR制御を円滑に行うことができる冷却水温の最低値であり、一般的には80℃前後に設定される。
【0047】
S10のステップにて冷却水温TWが閾値TR以上である、すなわちEGR制御を円滑に行うことができると判断した場合には、S11のステップに移行してエンジン停止要求があるか否かを判定する。ここで、エンジン停止要求がないと判断した場合には、S10のステップに戻って上述の判断が繰り返される。
【0048】
S11のステップにてエンジン停止要求があると判断した場合には、S12のステップに移行して可変ベーンおよびスロットル弁27の開度を最少に絞る。これにより、タービン37bよりも上流側の排気通路35aの排気圧を一時的に上昇させ、高圧となった排気をEGR通路39aに流入させる。また、エンジン10の燃焼室に12に導かれる吸気圧とエンジン10の燃焼室12から排出される排気圧との差圧をできるだけ大きくすることにより、さらに大量の排気が効率よくEGR通路39aに送り込まれるようにする。
【0049】
次いで、S13のステップにてEGR制御弁40を閉止すると共に第1タイマーのカウントアップを開始し、S14のステップにて第1タイマーのカウント値Cn1があらかじめ設定された閾値CR1に達したか否かを判定する。そして、このS14のステップにて第1タイマーのカウント値Cn1が閾値CR1に達するまで、S12,S13のステップが繰り返される。この閾値CR1は、EGR制御弁40を閉止してからEGR通路39aにエンジン10の排気量に相当するEGRガスが送り込まれるような時間間隔に対応するものである。従って、S14のステップにて第1タイマーのカウント値Cn1が閾値CR1に達した、すなわちエンジン10の排気量に相当する量の排気がEGR通路39aに導かれたと判断した場合には、S15のステップに移行する。ここでは、開閉弁41を閉止すると共に燃料噴射弁11からの燃料噴射を停止してエンジン10を一時的に停止させ、さらに第1タイマーのカウント値Cn1を0にリセットする。
【0050】
上述した操作により、EGR制御弁40と開閉弁41との間のEGR通路39aに貯留されるEGRガスは、熱交換器42から隔離された状態となる。このため、本実施形態ではEGR制御弁40と開閉弁41との間のEGR通路39aに蓄えられたEGRガスに含まれる水分が凝縮してEGR管39の内壁に水滴となって付着するような不具合を防止することができる。
【0051】
しかる後、S16のステップに移行してEGR通路39aに閉じ込められた排気、つまりEGRガスの状態変化を推定するために第2タイマーのカウントアップを開始し、S17のステップにてEGRガス状態量の取得を行う。
【0052】
このS17のサブルーチンの詳細が図8に示されている。すなわち、S170のステップにて第2タイマーのカウント値Cn2があらかじめ設定された閾値CR2以上であるか否かが判定される。この閾値CR2は、開閉弁41を閉止してからEGR通路39aに閉じ込められたEGRガスの温度や圧力がほとんど変化を生じないような時間間隔に対応するものである。従って、開閉弁41を閉止した直後、すなわちS170のステップにて第2タイマーのカウント値Cn2が閾値CR2未満であると判断した場合には、排気温センサー51により検出される排気温TEをS171のステップにてEGRガスの温度Tegとして取得する。また、排気圧センサー50により検出される排気圧PEをS172のステップにてEGRガスの圧力Pegとして取得する。
【0053】
一方、S170のステップにて第2タイマーのカウント値Cn2が閾値CR2以上であると判断した場合には、S173のステップに移行してEGR通路39aに閉じ込められたEGRガスの漏洩率を図3のマップから取得する。また、S174のステップにてEGR通路39aに閉じ込められたEGRガスの放熱量を図4のマップから取得する。そして、S175のステップにてEGRガスの温度Tegを取得された放熱量に基づいて算出する。さらにS176のステップにて気体の状態方程式を利用してEGRガスの圧力Pegを算出する。
【0054】
このようにして、S17のステップにてEGRガス状態量を取得した後、S18のステップに移行してエンジン始動フラグがセットされているか否かを判定する。最初はエンジン始動フラグがセットされていないので、S19のステップに移行してエンジン始動要求があるか否かを判定し、エンジン始動要求があるまでS17およびS18のステップが繰り返される。なお、S17のステップにて取得されるEGRガスの圧力Pegは、後述するように開閉弁41が全開状態に戻されるまで繰り返し更新されることとなる。
【0055】
S19のステップにてエンジン始動要求があると判断した場合には、S20のステップに移行してエンジン始動フラグをセットした後、S21のステップにて目標とするEGR量を図5のマップから取得する。次いで、S22のステップにてEGR制御弁開度を図6のマップから取得し、EGR制御弁の開度を取得したEGR制御弁開度となるように、S23のステップにてEGR弁駆動部62がEGR制御弁40を駆動する。そして、S24のステップにてモーター駆動フラグがセットされているか否かを判定するが、最初はセットされていないので、S25のステップに移行してエンジン始動モーター64を駆動してモータリングを行う。また、同時にモーター駆動フラグをセットし、S26のステップにて第3タイマーのカウントアップを開始し、S27のステップにてこれがあらかじめ設定した閾値Cn3以上であるか否かが判定される。この閾値Cn3は、EGR制御弁40を開弁し、EGR通路39aから吸気通路26aに還流した排気がここを流れる吸気と共にエンジン10の燃焼室12に流入するまでの時間に対応するものである。従って、EGR制御弁40を開始してからタイマーのカウント値Cnが閾値CR3に達するまで、タイマーのカウントアップを行うS27のステップが繰り返される。
【0056】
このようにして、S27のステップにてタイマーのカウント値Cnが閾値CR3以上である、すなわち排気を含む吸気がエンジン10の燃焼室12に達したと判断した場合には、S28のステップに移行して燃料の噴射が行われる。これにより、モータリング中のエンジン10の再始動が始まるので、このS25のステップではエンジン始動モーター64の作動を停止させ、第3タイマーのカウント値Cn3を0にリセットする。
【0057】
そして、S29のステップにて排気通路35aの排気圧PEがEGR通路39aの圧力Peg以上であるか否かを判定する。ここで、排気通路35aの排気圧PEがEGR通路39aの圧力Peg未満であると判断した場合、S17のステップに移行して再びEGR通路39aに閉じ込められている残りのEGRガスの状態量を更新し、S18,S21〜S24,S28のステップを繰り返す。S29のステップにて排気通路35aの排気圧PEがEGR通路39aの圧力Peg以上である、すなわち開閉弁41を開弁した場合に新たな排気がEGR通路39aに導くことができると判断した場合には、S30のステップに移行する。このS30のステップでは、開閉弁41を開放状態に切り換えて新たな排気をEGR通路39aに導くと共に第2タイマーのカウント値Cn2を0にリセットし、さらにエンジン始動フラグおよびモーター駆動フラグをそれぞれリセットする。これにより、車両の運転状態に応じた通常のEGR制御をEGR制御弁40によって行い、また、タービン37bの可変ベーンの開度を全閉状態から車両の運転状態に応じた通常の制御へと移行させる。
【0058】
このように、エンジン10の再始動要求に基づき、エンジン10を再び運転状態に移行させる際に、EGR通路39aに閉じ込めたEGRガスの状態を把握することにより、要求されるEGR量に応じた適正なEGR制御弁40の開度を正確に設定することができる。この結果、初爆の気筒から確実にEGR制御が可能となり、窒素酸化物の量をさらに少なくすることができる。
【0059】
上述した可変ベーンを具えた過給機37に代えて可変動弁機構16を本発明における排気昇圧手段として利用したり、これらを同時に本発明における排気昇圧手段として併用することも可能である。この場合、吸排気弁開閉時期設定部22は、エンジン停止要求に基づいてエンジン10から排出される排気圧が上昇するように、排気弁18の開弁時期が早まるような設定を行う。吸排気弁開閉時期変更部20は、排気弁18の開弁時期が吸排気弁開閉時期設定部22にて設定された時期となるように、可変動弁機構16を駆動する。
【0060】
なお、エンジン停止要求があるような車両の運転状態において排気弁18の開弁時期を進角すると、トルク変動が発生して乗員に違和感を与える可能性がある。このような不具合が危惧される場合には、排気弁18の進角処理と同時にスロットル弁27の開度を僅かに増大および/または燃料噴射弁11からの燃料噴射量を僅かに増大させることが有効である。また、可変動弁機構16や可変ベーンを具えた過給機37以外の排気昇圧手段として、次のようなものも採用することができよう。すなわち、排気通路35aとEGR通路39aの他端との連通部分よりも下流側の排気通路35aの通路断面積を一時的に絞ることが可能な絞り弁と、これを駆動するためのアクチュエーターとを具えたものを提示することができる。その一例として、特開2010−242617号公報に開示されたものが知られている。また、これと同様な機構が組み込まれた排気ブレーキ装置を流用することもできる。
【0061】
エンジン停止要求が出力される運転状態においては、エンジン10が常にほぼ一定の運転状態となっていることから、上述した実施形態では開閉弁41の閉弁タイミングをEGR制御弁40の閉弁時期から一定時間後となるように、タイマー制御を行っている。しかしながら、排気昇圧手段によって排気圧を上昇させた後、排気通路35aからEGR通路39aに流入する排気流量を推定し、開閉弁41の閉弁タイミングを制御するようにしてもよい。より具体的には、エンジン停止要求があった場合、排気昇圧手段によって排気圧を上昇させてEGR制御弁40がEGR通路39aを閉止した後、エンジン10から排出されてEGR通路39aに蓄えられるEGRガスの量、つまり排気流量を連続的に算出する。そして、この排気流量の積算値がエンジン10の排気量に達した時点で開閉弁41を閉弁する。
【0062】
上述した実施形態においては、EGRガス状態量取得部59にて一時的にEGR通路に閉じ込められる排気の圧力および温度を推定するようにしたが、この部分に圧力センサーおよび温度センサーを組み付けるようにしてもよい。この場合、図3および図4に示すようなマップを用いずともEGR通路39aに閉じ込められた排気の圧力Pegおよび温度Tegを正確に把握することができる。
【0063】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0064】
10 エンジン
11 燃料噴射弁
12 燃焼室
13 吸気ポート
14 排気ポート
15 シリンダーヘッド
16 可変動弁機構
17 吸気弁
18 排気弁
19 ECU
20 吸排気弁開閉時期変更部
21 運転状態判定部
22 吸排気弁開閉時期設定部
23 ピストン
24 アクセルペダル
25 アクセル開度センサー
26 吸気管
26a 吸気通路
27 スロットル弁
28 スロットルアクチュエーター
29 シリンダーブロック
30 水温センサー
31 クランク角センサー
32 水ジャケット
33 連接棒
34 クランク軸
35 排気管
35a 排気通路
36 EGR装置
37 排気タービン式過給機
37a コンプレッサー
37b タービン
38 排気浄化装置
38a 酸化触媒コンバーター
39 EGR管
39a EGR通路
40 EGR制御弁
41 開閉弁
42 熱交換器
43 サージタンク
44 ベーンアクチュエーター
45 インタークーラー
46 エアーフローメーター
47 大気圧センサー
48 外気温センサー
49 吸気圧センサー
50 排気圧センサー
51 排気温センサー
52 始動モーター駆動部
53 スロットル開度設定部
54 スロットル弁駆動部
55 燃料噴射設定部
56 燃料噴射弁駆動部
57 ベーン開度設定部
58 ベーン駆動部
59 EGRガス状態量取得部
60 EGR量設定部
61 EGR弁開度設定部
62 EGR弁駆動部
63 開閉弁駆動部
64 エンジン始動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、内燃機関から排出される排気の一部を吸気通路に還流させるためのEGR通路と、
このEGR通路の一端側に配されて当該EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を制御するためのEGR制御弁と、
前記EGR通路の他端側に配されて前記EGR通路を開閉するための開閉弁と、
内燃機関の運転状態に応じて前記EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を設定するEGR量設定部と
を具えた内燃機関の排気還流装置であって、
前記EGR制御弁および前記開閉弁を閉止することによってこれらの間の前記EGR通路に一時的に閉じ込められた排気に関する情報を取得する取得手段と、
前記EGR量設定部にて設定された排気の還流量が達成されるように、前記取得手段により取得される排気の情報に基づいて前記EGR制御弁の開度を設定するEGR弁開度設定部と、
このEGR弁開度設定部にて設定された開度となるように、前記EGR制御弁を駆動するEGR弁駆動部と
を具えたことを特徴とする内燃機関の排気還流装置。
【請求項2】
前記取得手段によって取得される排気の情報が前記EGR制御弁と前記開閉弁との間の前記EGR通路に閉じ込められた排気の圧力に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項3】
前記EGR通路の一端に連通する前記吸気通路の圧力を検出する吸気圧センサーをさらに具え、前記EGR弁開度設定部は、前記EGR量設定部にて設定された排気の還流量と、前記吸気圧センサーにより検出される吸気圧と、前記取得手段により取得される排気の圧力に関する情報とに基づき、前記EGR制御弁の開度を設定することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項4】
前記EGR通路に導かれる排気の圧力を上昇させるための排気昇圧手段をさらに具えたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項5】
一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、内燃機関から排出される排気の一部を吸気通路に還流するためのEGR通路と、このEGR通路の一端側に配されて当該EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を制御するためのEGR制御弁と、前記EGR通路の他端側に配されて前記EGR通路を開閉するための開閉弁とを有する排気還流装置が組み込まれた内燃機関の運転制御方法であって、
前記内燃機関の停止要求に従って前記EGR制御弁を閉止した後、前記開閉弁を閉止して前記内燃機関から排出される排気の一部を前記EGR制御弁と前記開閉弁との間の前記EGR通路に一時的に閉じ込めた状態にて前記内燃機関を停止させるステップと、
前記EGR制御弁と前記開閉弁との間の前記EGR通路に保持された排気に関する情報を取得するステップと、
内燃機関の停止要求後に内燃機関の始動要求があった場合、内燃機関をモータリングさせるステップと、
内燃機関の運転状態に応じて前記EGR通路から前記吸気通路への排気の還流量を設定するステップと、
設定された排気の還流量が達成されるように、取得した排気に関する情報に基づいて前記EGR制御弁の開度を設定するステップと、
前記EGR通路に保持された排気に関する情報に基づき、前記EGR制御弁の開度を設定するステップと、
設定された開度に前記EGR制御弁を開いて前記EGR通路に一時的に貯留された排気を前記吸気通路に還流させてモータリング中の内燃機関に供給するステップと、
排気を含む吸気が導かれるモータリング中の内燃機関の燃焼室に燃料を供給して内燃機関を始動させるステップと、
内燃機関が始動した後に内燃機関のモータリングを終了すると共に前記開閉弁を開放状態に切り換えるステップと
を具えたことを特徴とする内燃機関の運転制御方法。
【請求項6】
前記内燃機関を停止させるステップは、前記内燃機関の停止要求があった場合に排気通路を流れる排気の圧力を上昇させるステップと、排気の圧力を上昇させた後に前記EGR制御弁を閉止するステップとを含むことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の運転制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−167546(P2012−167546A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26437(P2011−26437)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】