説明

放射線センサおよび放射線画像撮影装置

【課題】可撓性を有する有機光電変換層を含む放射線センサおよびそれを使用した放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線センサは、入射する放射線を、少なくとも該放射線とは異なる波長域の電磁波に変換する蛍光体層50が設けられた第一の可撓性基板18と、電荷発生剤および55質量%〜75質量%のポリマーバインダを含有する電荷発生層44並びに電荷輸送層42を含み、前記電磁波を光電変換する有機光電変換層40と、前記有機光電変換層40で発生した電荷を読み出すための、蓄積容量30および薄膜トランジスタ20を含む電荷検出層60が設けられた第二の可撓性基板10と、前記有機光電変換層40と前記電荷検出層60との間に配置された高分子下引き層12と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線センサおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、X線等の放射線を人体に照射し、人体を透過した放射線の強度を検出することで人体内部の撮像を行う放射線センサが用いられている。このような放射線センサとして、人体を透過した放射線を一旦蛍光体に入射させて可視光に変換し、この可視光を電気信号に変換して外部に取り出す方式のものがある。
【0003】
このような放射線センサとして、例えばガドリニウムオキシサルファイドのような放射線に有感な蛍光体とポリマーバインダで構成された耐衝撃性の蛍光体層と、上部電極、下部電極、及び当該上下の電極間に配置され、前記蛍光体層に入射した放射線によって発する光を吸収して電荷に変換する有機光電変換層と、当該有機光電変換層で発生した電荷を画像検出用の画素ごとに読み出すための蓄積容量および薄膜トランジスタのユニットを含む電荷検出層を有する耐衝撃性基板とを有する放射線センサが知られている(特許文献1参照)。また、酸化亜鉛を含む酸化物半導体活性層を有する薄膜トランジスタは、低温で成膜できるので、プラスチック板やプラスチックフィルムなどの可撓性を有する絶縁性基板を使用することが可能である(特許文献2参照)。
【0004】
上記の放射線センサでは、蛍光体層を支持する可撓性基板と、電荷検出層を有する耐衝撃性基板を有するが、有機光電変換層については、依然として可撓性に乏しく、放射線センサを屈曲させてしまうと、撮像性能が劣化してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−172375号公報
【特許文献2】特開2006−165530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、可撓性を有する有機光電変換層を含む耐衝撃性の放射線センサおよびそれを使用した放射線画像撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の発明により解決される。
<1> 入射する放射線を、少なくとも該放射線とは異なる波長域の電磁波に変換する蛍光体層が設けられた第一の可撓性基板と、
電荷発生層並びに電荷輸送剤および55質量%〜75質量%のポリマーバインダを含有する電荷輸送層を含み、前記電磁波を光電変換する有機光電変換層と、
前記有機光電変換層で発生した電荷を読み出すための、蓄積容量および薄膜トランジスタを含む電荷検出層が設けられた第二の可撓性基板と、
前記有機光電変換層と前記電荷検出層との間に配置された高分子下引き層と、
を有する放射線センサ。
【0008】
<2> 前記電荷輸送層が、1μm〜5μmの厚さを有する<1>に記載の放射線センサ。
<3> 前記高分子下引き層が金属アルコキシドを加水分解および縮合して得られるゾルゲル膜である<1>または<2>に記載の放射線センサ。
<4> 前記金属アルコキシドがアルコキシシラン、アルコキシチタンおよびアルコキシジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである<3>に記載の放射線センサ。
【0009】
<5> 前記蛍光体層が放射線の照射により500nm〜600nmの範囲に最大ピーク波長を有する光に変換する蛍光体を含む<1>〜<4>のいずれかに記載の放射線センサ。
<6> 前記蛍光体が沃化セシウムまたはガドリニウムオキシサルファイドである<5>に記載の放射線センサ。
【0010】
<7> 前記電荷輸送層が、60質量%〜70質量%の該ポリマーバインダを含む<1>〜<6>のいずれかに記載の放射線センサ。
【0011】
<8> 前記電荷輸送層に含まれる該ポリマーバインダがポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、スチレンのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、ポリスルホンからなる群から選ばれた少なくとも一つである<1>〜<7>のいずれかに記載の放射線センサ。
<9> 前記電荷発生剤がアントアントロンである<1>〜<8>のいずれかに記載の放射線センサ。
<10> 前記薄膜トランジスタが酸化物半導体活性層を含む<1>〜<9>のいずれかに記載の放射線センサ。
<11> 前記酸化物半導体活性層がIn、GaおよびZnのうちの少なくとも一つを含む酸化物半導体活性層である<10>に記載の放射線センサ。
<12> 前記酸化物半導体活性層がIn、GaおよびZnを含む酸化物半導体活性層である<11>に記載の放射線センサ。
<13> 前記高分子下引き層が0.05μm〜0.2μmの厚さを有する<1>〜<12>のいずれかに記載の放射線センサ。
【0012】
<14> 前記第一の可撓性基板および前記第二の可撓性基板の少なくとも一方が、薄ガラスとプラスチックフィルムとの複合基板である<1>〜<13>のいずれかに記載の放射線センサ。
<15> 放射線照射装置と、
<1>〜<14>のいずれかに記載の放射線センサと、
該放射線センサの電荷検出層で検出された画素単位の電荷情報を蓄積するメモリとを有する放射線画像撮影装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可撓性を有する有機光電変換層を含む耐衝撃性の放射線センサおよびそれを使用した放射線画像撮影装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による放射線センサの一実施態様に係る1画素分の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による放射線センサの一実施態様に係る放射線センサの1画素分の構成を概略的に示した断面図である。図1の放射線センサ1において、撮影対象の被検体への放射線照射に伴って、当該被検体を透過した放射線を光に変換する蛍光体層50は、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような第一の可撓性基板18の一方の表面上に設けられている。
【0016】
また、第二の可撓性基板10の一方の表面上には、蓄積容量30および薄膜トランジスタ20を含む電荷検出層60を有する。蓄積容量30は、蓄積容量上部電極34と、蓄積容量下部電極32と、これらの電極間にある誘電体層14(この誘電体層14は、絶縁膜としても機能する。)によって構成される。また、薄膜トランジスタ20は、ソース電極24と、蓄積容量上部電極34に接続するドレイン電極26と、これらのソース電極24とドレイン電極26との間にある酸化物半導体活性層(チャネル層)28と、酸化物半導体活性層28を覆うように形成された保護層29と、絶縁膜として機能する誘電体層14を介して酸化物半導体活性層28に対向する位置にあるゲート電極22とを有する。
【0017】
電荷検出層60上には、第一層間絶縁膜38を有し、この第一層間絶縁膜38は蓄積容量上部電極34上にコンタクトホール39を有する。そして、第一層間絶縁膜38上には、電荷収集電極36を有し、この電荷収集電極36は、蓄積容量上部電極34とコンタクトホール39において、電気的に接続されている。
【0018】
電荷収集電極36上には、高分子下引き層12を介して、電荷発生層44と電荷輸送層42を含む有機光電変換層40およびバイアス電極46を、この順で有している。
そして、バイアス電極46と前記蛍光体層50とが対向するように第二層間絶縁膜16を介して重畳されている。
【0019】
本発明に係る放射線センサ1においては、上記電荷輸送層42が電荷輸送剤および55質量%〜75質量%のポリマーバインダを含有している点、および高分子下引き層12を有している点に、技術構成上の特徴を有している。これにより、電荷輸送層42が可撓性を有するとともに、高分子下引き層12が介在することで、有機光電変換層40の剥離が生じにくくなる。そのため、放射線センサ1が屈曲しても、撮像性能が劣化してしまうことがなくなる。
【0020】
以下、本発明に係る放射線センサに使用される各構成について、順を追って詳しく説明する。
【0021】
<第一の可撓性基板>
第一の可撓性基板18としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックをフィルム状に成膜したプラスチックフィルムまたはプラスチック板を好ましいものとして挙げることができる。また、薄いガラス膜とプラスチックフィルムとを張り合わせた複合フィルムまたは複合板、金属板も挙げられる。第一の可撓性基板の厚さは、例えば50μm〜200μmの範囲から選ばれる。
【0022】
<蛍光体層>
蛍光体層50は、蛍光体をポリマーバインダ溶液中に分散させた塗布液を準備し、この塗布液をドクターブレードコート等により第一の可撓性基板18上に塗布し、乾燥して形成する。
蛍光体としては、放射線の照射を受けると、当該放射線とは異なる波長域の電磁波を発するもの、より好ましくは、最大ピーク波長が500nm〜600nmの範囲にある光を発光するものが好ましい。このような蛍光体として、ガドリニウムオキシサルファイド、沃化セシウムが挙げられる。ガドリニウムオキシサルファイドは、テルビウム等を含有するものが好ましい。また、沃化セシウムは、タリウムを添加したものが好ましい。
【0023】
ポリマーバインダとしては、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等が挙げられる。
蛍光体とポリマーバインダの比率は、前者:後者の質量比が50:50〜90:10の範囲から選ばれることが感度と鮮鋭度を維持するという理由から好ましい。
蛍光体層50の厚さは、50μm〜600μmの範囲から選択される。
【0024】
<第二の可撓性基板>
第二の可撓性基板10としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、全芳香族ポリアミド、ポリイミド等のプラスチックの基板、上記のようなプラスチックのフィルム上に、例えば0.03mm〜0.2mmの範囲の厚さの薄ガラス層を有する複合基板、絶縁層を設けた金属基板等を用いることができる。これらの内、プラスチックの基板または上記複合基板を使用すれば、軽量かつ落下等による衝撃を受けても機能に支障をきたさない堅牢性を保持するセンサが得られるので、特に好ましい。
酸素、水分の透過を抑制するため、電荷検出層60が形成される側の第二の可撓性基板10の表面全体に、図示しないSiON膜等のバリア層が形成されていることが好ましい。
第二の可撓性基板10の厚さは、強度および可撓性の観点から、例えば50μm〜200μmの範囲とされることが好ましい。
【0025】
第二の可撓性基板10の電荷検出層60が形成される側とは反対側の表面(以下、「第二の可撓性基板10の裏面」とも言う。)に、少なくとも波長400nm〜460nmの範囲の光を遮断または吸収する遮光層を有していても良い。この遮光層は、第二の可撓性基板10の裏面側から酸化物半導体活性層28に入射する400nm〜460nmの範囲の光を遮断またはその強度を低下させるので、この光による薄膜トランジスタの動作の不安定化が防止される。
遮光層としては、カーボンブラックもしくは少なくとも400nm〜460nmの範囲の光を吸収する染料または顔料を含むポリマーバインダ層が挙げられる。
【0026】
<蓄積容量下部電極およびゲート電極>
蓄積容量下部電極32およびゲート電極22として使用される材料には、例えば、Al、Mo、Cr、Ta、Ti、Au、Ag等の金属、Al−Nd、APC等の合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
蓄積容量下部電極32およびゲート電極22の厚みは、何れについても、例えば10nm以上1000nm以下、より好ましくは30nm以上300nm以下とされる。
【0027】
第二の可撓性基板10上に、蓄積容量下部電極32とゲート電極22を形成するには、上記のような電極に使用される材料を、第二の可撓性基板10上に、例えば、スパッタ成膜し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって各電極32,22に応じた位置及び形状となるようにパターニングする。
【0028】
<誘電体層>
次に、ゲート電極22および蓄積容量下部電極32上に、絶縁膜としても機能する誘電体層14を形成する。
誘電体層14に使用される材料としては、二酸化シリコンのような無機酸化物、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂等のような有機高分子化合物が挙げられる。
誘電体層14は、使用される材料に応じて、適切な方法で形成される。例えば二酸化シリコンのような無機酸化物の場合には、スパッタリングにより成膜することが好ましい。他方、アクリル樹脂、ノボラック樹脂のような有機高分子化合物の場合には、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法などの公知の方法によって形成される。有機高分子化合物を使用した場合には、その上に更にスパッタリング、CVD法等によってSiO膜を、例えば20nmの厚みに成膜することが好ましい。
誘電体層14の厚さは、50nm〜500nmの範囲とされることが、蓄積容量30の誘電体層として、また薄膜トランジスタ20の絶縁膜として機能の観点から好ましい。
【0029】
<ソース・ドレイン電極及び蓄積容量上部電極>
次に、誘電体層14上に、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」とも言う。)20のソース電極24およびドレイン電極26と、蓄積容量(以下、「キャパシタ」とも言う。)30の蓄積容量上部電極34を形成する。
ソース電極24、ドレイン電極26、蓄積容量(以下、「キャパシタ」とも言う。)30の蓄積容量上部電極34を構成する材料としては、In−ZnO(以下、「IZO」とも言う。)、ITO,Mo、Alなどが挙げられる。
ソース電極24、ドレイン電極26、および蓄積容量上部電極34は、前述の蓄積容量下部電極32とゲート電極22を形成する場合と同様に、例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、所定の位置および形状にIZO(In−ZnO)膜を形成する。このとき、TFT20のドレイン電極26とキャパシタ30の上部電極34とが電気的に接続するようにパターニングを行う。各電極24,26,34の厚みは、10nm〜1000nmの範囲とされることが好ましい。
【0030】
<酸化物半導体活性層>
ソース電極24およびドレイン電極26の上には、これら二つの電極に跨るように、酸化物半導体活性層28が形成される。
酸化物半導体活性層28は、例えばIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体、好ましくは非晶質酸化物半導体により形成する。非晶質酸化物半導体は、スパッタリングにより低温で成膜可能であるので、第二の可撓性基板10として、プラスチックの基板を使用することができるという利点がある。酸化物半導体としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO(以下、「IGZO」とも言う。)がより好ましい。
【0031】
上記のようなIn−Ga−Zn−O系非晶質酸化物半導体からなる酸化物半導体活性層であれば、スパッタリングによって低温で成膜することができる。形成すべき各酸化物半導体活性層28に応じて、フォトリソグラフィおよびエッチングによってIn−Ga−Zn−O系非晶質酸化物半導体の膜をパターニングしてもよいし、形成すべき酸化物半導体活性層28に対応した貫通孔を有するマスクを介して所定の位置及び形状に酸化物半導体活性層28を形成してもよい。酸化物半導体活性層28の厚みは、10nm〜50nmの範囲とされることがチャネルに良好な電気伝導性が発生するという理由から好ましい。
【0032】
酸化物半導体活性層28上には、これを覆うように、保護層29を形成することが好ましい。これにより、大気中の水分による影響が抑えられるという利点が得られる。
保護層29としては、酸化ガリウム膜が好ましい。保護層29の厚みは、一般的には、10nm〜200nmの範囲とされる。
【0033】
ソース電極24およびドレイン電極26と、酸化物半導体活性層28は上下逆に形成してもよい。すなわち、酸化物半導体活性層28を形成した後、ソース電極24およびドレイン電極26を形成してもよい。
【0034】
<第一層間絶縁膜>
以上のようにして、蓄積容量30および薄膜トランジスタ20を設けて形成された電荷検出層60上には、第一層間絶縁膜38が形成される。
【0035】
第一層間絶縁膜38は、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法などの公知の方法によって、アクリル系またはメタクリル系の感光性樹脂溶液を電荷検出層60上に塗布および乾燥して感光性樹脂層を形成したのち、所定の位置に、コンタクトホール39が形成されるように露光し、現像処理してコンタクトホール39の位置の感光性樹脂を除去する。これにより、コンタクトホール39を有する第一層間絶縁膜38が電荷検出層60上に形成される。コンタクトホール39は、第一層間絶縁膜38の厚さ方向における蓄積容量上部電極34から最も遠い表面での直径が、例えば14μmであり、蓄積容量上部電極34へ向かって徐々に直径が小さくなるように形成される。
【0036】
感光性樹脂層の形成を、上記のように感光性樹脂溶液を塗布および乾燥して形成する代わりに、予め仮支持体上に感光性樹脂溶液を塗布および乾燥して感光性樹脂層を形成した転写材料を準備しておき、この転写材料の感光性樹脂層を電荷検出層60上に貼り付けてから仮支持体を剥離除去する、いわゆる転写方法により形成してもよい。この転写方法に使用される感光性樹脂の組成および転写材料として、例えば特開2002−131899号公報に記載されているものを使用しても良い。
【0037】
第一層間絶縁膜38の厚さは、1μm〜100μmの範囲から選ばれることが、電荷検出層60の凹凸が吸収される平坦化層として機能し、かつコンタクトホール39が良好に形成されるという点から好ましい。
【0038】
<電荷収集電極>
コンタクトホール39を有する第一層間絶縁膜38上には、電荷収集電極36が形成される。電荷収集電極36は、ITO、IZO、ITO、Mo、Alなどの材料を用いて、スパッタ成膜により形成される。電荷収集電極36は、コンタクトホール39において、蓄積容量上部電極34と電気的に接続される。
電荷収集電極36の厚さは、例えば10nm〜1000nmの範囲とされる。
【0039】
<高分子下引き層>
電荷収集電極36上には、高分子下引き層12が形成される。高分子下引き層12は、電荷収集電極36と、有機光電変換層40(とりわけ電荷発生層44)とを強固に接合する機能を有するものから選ばれることが好ましい。このような高分子下引き層12としては、アルコール可溶性ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン等の有機高分子ポリマーの溶剤溶液を塗布および乾燥して形成したもの、金属アルコキシドを加水分解および縮合して得られるゾルゲル膜が含まれる。特に後者のゾルゲル膜が好ましい。
【0040】
ゾルゲル膜の形成に使用される金属アルコキシドには、アルコキシシラン、アルコキシチタンおよびアルコキシジルコニウムが含まれ、これらの化合物は単独で使用されても、二種以上を組み合わせて使用されても良い。
アルコキシシランには、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が含まれる。
アルコキシチタンには、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタンまたはテトラブトキシチタン等が含まれる。
また、アルコキシジルコニウムには、テトラエトキシジルコン、テトライソプロポキシジルコン、テトラブトキシジルコン等が含まれる。
【0041】
金属アルコキシドの加水分解・縮合反応は、無溶媒中でも、溶媒中でも行うことができるが、成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。溶媒はシラン化合物と触媒とを溶解させるものが好ましい。また、溶媒を塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましい。
【0042】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0043】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどが挙げられる。
【0044】
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。加水分解・縮合反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1質量%〜90質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜70質量%の範囲である。
【0045】
金属アルコキシドの加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、蓚酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、有機酸および金属アルコキシドが好ましい。
【0046】
有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0047】
加水分解/縮合反応は、通常、金属アルコキシドの加水分解性基1モルに対して0.3モル〜2モル、好ましくは0.5モル〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25℃〜100℃で、撹拌することにより行われる。
加水分解性基がアルコキシドであり触媒が有機酸である場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができ、金属アルコキシドのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0モル〜2モル、好ましくは0モル〜1.5モル、より好ましくは、0モル〜1モル、特に好ましくは、0モル〜0.5モルである。アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
【0048】
触媒の使用量は、触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には全加水分解性基に対して0.01モル%〜10モル%、好ましくは0.1モル%〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して1〜500モル%、好ましくは10モル%〜200モル%であり、より好ましくは20ル%〜200モル%であり、更に好ましくは50モル%〜150モル%であり、特に好ましくは50モル%〜120モル%である。反応は25℃〜100℃で撹拌することにより行われるがシラン化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0049】
以上のようにして、金属アルコキシドの加水分解物またはその部分縮合物(以下、これらを「ゾル組成物」ということがある)が得られる。
このゾル組成物を電荷収集電極36および第一層間絶縁膜38上に塗布し、ゲル化してゲル状組成物とする。このようにして、当該ゲル状組成物を含有する高分子下引き層12が形成される。
【0050】
上記塗布方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレーコート、スピンコート等、種々の方法を適用することができる。
【0051】
ゾル組成物のゲル化は、種々の方法を適用することができる。例えば、100℃〜250℃、好ましくは、120℃〜200℃で加熱する熱処理をすることが好ましい。
【0052】
高分子下引き層12の厚さは、0.02μm〜1μmの範囲から選ばれることが、電荷収集電極36と有機光電変換層40、特に電荷発生層44とを強固に接着させ、かつ有機光電変換層40の可撓性を低下させない、かつ電荷蓄積を防止し、感度の繰り返し安定性を向上するという点から好ましい。高分子下引き層12の厚さは、0.05μm〜0.2μmの範囲から選ばれることが更に好ましい。
【0053】
<有機光電変換層>
高分子下引き層12上には、有機光電変換層40が形成される。有機光電変換層40は、電荷発生層44と電荷輸送層42とを含む。
【0054】
<電荷発生層>
電荷発生層44は、高分子下引き層12上に形成されることが好ましい。
電荷発生層44は、電荷発生剤とポリマーバインダとを構成成分として含有する。電荷発生剤としては、例えば金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン染料またはフタロシアニン顔料、ナフタロシアニン染料またはナフタロシアニン顔料、インジゴ染料、キナクリドン染料、アントラキノン染料、例えばジブロモアントアントロンのようなアントアントロン染料、ペリレン染料、例えばモノアゾ染料、ビスアゾ染料、トリスアゾ染料などのアゾ染料、シアニン染料等が挙げられる。
【0055】
電荷発生剤は、蛍光体層50に使用された蛍光体の種類に応じて選択されることが好ましい。具体的には、上記蛍光体が放射線の照射を受けて発光する電磁波を吸収するもの、更に好ましくは、上記の発光する電磁波の最大ピーク波長との差が50nm以内の波長に最大吸収波長を有する電荷発生剤から選ばれる。例えば、蛍光体としてガドリニウムオキシサルファイドまたは沃化セシウムを使用した場合には、これらの蛍光体が放射線の照射により550nmの最大ピーク波長を有する電磁波を発光するので、電荷発生剤としては、400nm〜600nmの範囲の光を吸収するジブロモアントアントロン顔料、560nmに吸収ピーク波長を有するキナクリドンが使用される。
【0056】
電荷発生層44に使用されるポリマーバインダとしては、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0057】
電荷発生剤とポリマーバインダの比率は、前者:後者の質量比で80:20〜20:80の範囲から選ばれることが感度安定性と経時安定性の両立という理由から好ましい。より好ましくは、45:55〜25:75の範囲から選ばれる。
ポリマーバインダの溶剤に溶解した溶液中に電荷発生剤を分散させた分散液を準備し、これを高分子下引き層12上にスピンコートし、乾燥(ベークとも言う。)して溶剤を蒸発させて電荷発生層44が形成される。
電荷発生層44の厚さは、0.1μm〜0.5μmの範囲から選択されることが良好な感度を得るという理由から好ましい。
【0058】
<電荷輸送層>
電荷輸送層42は、電荷輸送剤およびポリマーバインダを構成成分として含有する。本発明に係る放射線センサにおいては、電荷輸送層42が55質量%〜75質量%のポリマーバインダ含有する点に構成上の一つの特徴を有している。
【0059】
電荷輸送剤としては、正孔輸送物質として知られているものが使用される。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、電荷発生剤として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であれば、電荷輸送剤として用いることができる。
【0060】
電荷輸送層42に使用されるポリマーバインダとしては、例えばポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、スチレンのホモポリマーまたは他の共重合性モノマー、例えばアクリロニトリルなど、とのコポリマー、ポリスルホン等が挙げられる。
【0061】
電荷輸送層42は、ポリマーバインダを55質量%〜75質量%含有する。その結果、電荷輸送層42が可撓性を保持し、前述の高分子下引き層12とも相俟って、本発明による放射線センサが屈曲しても、有機光電変換層40が電荷収集電極36から剥離することが防止され、光電変換特性が低下しない。
上記ポリマーバインダの量が55質量%より少なくなると、電荷輸送層の可撓性が不十分となり、このような電荷輸送層を有する放射線センサが屈曲すると、光電変換特性が劣化して支障が生ずるようになる。他方、上記ポリマーバインダの量が75質量%より多くなると、電荷輸送層中を電荷が移動する時間が長くなりすぎて、放射線センサとしての性能が不十分なものとなってしまう。
【0062】
電荷輸送層42に含まれるポリマーバインダの量は、好ましくは60質量%〜70質量%とされる。
電荷輸送層42は、電荷輸送剤とポリマーバインダを溶剤に溶解した溶液を準備し、これを電荷発生層44上に、例えばディップコート、スピンコート等により塗布し、ベークして溶剤を蒸発させることにより形成される。
【0063】
電荷輸送層42の厚さは、1μm〜5μmの範囲から選択されることが電荷輸送層42中の電荷の移動に長時間を要することがなくなるという理由から好ましい。電荷輸送層42の厚さは、1.5μm〜3.5μmの範囲から選択されることが更に好ましい。
以上により、有機光電変換層40が形成される。
【0064】
<バイアス電極>
有機光電変換層40上には、バイアス電極46が形成される。バイアス電極46を構成する材料としては、前述の蛍光体層50が放射線の照射を受けて発光する電磁波の少なくとも一部、より好ましくは最大ピーク波長の光を透過するものから選ばれる。具体的には、IZO、ITOなどが挙げられる。
【0065】
バイアス電極46の厚さは、一般的には40nm〜200nmの範囲とされる。
【0066】
バイアス電極46上には、前述の第一の可撓性基板18上に形成された蛍光体層50と、第二層間絶縁膜16を介して、重畳・接合されて、本発明による放射線センサが得られる。
<第二層間絶縁膜>
第二層間絶縁膜16は、前述の第一層間絶縁膜38の場合と同様にして、感光性樹脂を使用して形成される。但し、第二層間絶縁膜においては、コンタクトホールの形成は不要である。感光性樹脂の使用に代えて、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂等の高分子ポリマーの溶剤の溶液を準備し、これをバイアス電極46上に塗布し、乾燥して第二層間絶縁膜16を形成したもの、または、予め仮支持体上に形成された高分子ポリマーの層をバイアス電極46上に転写することにより、第二層間絶縁膜16を形成したものであっても良い。更に、透明な接着層を有する両面接着テープの当該接着層を第二層間絶縁膜16に使用してもよい。
【0067】
第二層間絶縁膜16の厚さは、例えば10μm〜30μmの範囲から選ばれる。
【0068】
本発明による放射線センサは、被写体を透過した放射線が蛍光体層50に入射され、この蛍光体層50で放射線とは異なる波長域の電磁波に変換される。この変換された電磁波は、有機光電変換層40で電荷に変換される。有機光電変換層40で変換された電荷は、バイアス電極46と電荷収集電極36との間で与えられた電圧差によって移動し、電荷収集電極36に集められ、電荷収集電極36と電気的に接続している蓄積容量上部電極34と、蓄積容量下部電極32と、これらの電極間にある誘電体層14によって構成される蓄積容量30に蓄えられる。
【0069】
電荷検出層60は、二次元方向に広がる図示しない多数の画素単位を含み、各画素単位は蓄積容量30および薄膜トランジスタ20を含んでいる。蓄積容量30に蓄えられた電荷は、薄膜トランジスタ20により読み出される。
蓄積容量上部電極34とドレイン電極26は電気的に接続されているので、ゲート電極22の入力信号で薄膜トランジスタ20をオン状態とすることによって、ソース電極24から蓄積容量30に蓄積された電荷が取り出される。このように照射された電磁波によって生成した電荷量を画素ごとに検出して、例えば半導体メモリにデータとして保存される。半導体メモリに保存されたデータは、電気信号として出力することで、被写体全体の撮像を得ることができる。
【0070】
本発明による放射線センサによれば、有機光電変換層40、特にその電荷輸送層42がポリマーバインダを55質量%〜75質量%含有する。その結果、電荷輸送層42が可撓性を保持し、前述の高分子下引き層12とも相俟って、本発明による放射線センサが屈曲しても、光電変換特性が低下しない。
特に、薄膜トランジスタ20の活性層28として、In、GaおよびZnのうちの少なくとも一つを含む酸化物半導体活性層、より好ましくはIn、GaおよびZnを含む酸化物半導体活性層を使用する場合には、スパッタリングにより低温で成膜可能であるということに伴って、第二の可撓性基板としてポリイミドのようなプラスチック基板を使用することが可能となる。
従って、放射線センサ全体が可撓性を有するようになり、放射線センサが屈曲しても、光電変換特性の劣化が生じない。よって、耐衝撃性、堅牢成と動作安定性を両立させた放射線センサが得られる。
【0071】
また、放射線センサを組み立てる際、特に前述のバイアス電極46上に、前述の第一の可撓性基板18上に形成された蛍光体層50と、第二層間絶縁膜16を介して、重畳・接合させる際に、有機光電変換層40に機械的な応力(例えば、剥離、熱、衝撃など)が加わることを完全には避けることができない。そのため、場合によっては光電変換特性が低下した放射線センサとなってしまうことがあったが、本発明による放射線センサにおいては、有機光電変換層40の厚さの大きな割合を占める電荷輸送層42がポリマーバインダを55質量%〜75質量%含有し、電荷輸送層42が可撓性を保持している。そのため、放射線センサの組み立て時に、有機光電変換層40に機械的な応力が加わっても光電変換特性が低下することはなく、常に光電変換特性が一定品質以上の放射線センサが得られる。
【0072】
本発明による放射線センサは、軽量薄型のカセッテ内に放射線センサを内蔵させる場合に大きな利点に繋がる。特に、第二の可撓性基板10としてポリイミドのようなプラスチック基板を使用すれば、カセットを誤って落下させて、放射線センサが衝撃を受けても、機能に支障をきたさない堅牢性を保持させることができる。このようなカセッテの構造としては、例えば特開2009−80103号公報に記載されているものが含まれる。
【0073】
本発明による放射線センサを用いた放射線画像撮影装置は、放射線照射装置と、上記の放射線センサと、当該放射線センサの電荷検出層で検出された画素単位の電荷情報を蓄積するメモリを含む。
メモリに蓄積された放射線画像に関する電荷情報は、必要に応じて画像処理が施されてから画像メモリに記憶される。画像メモリに記憶された、画像処理された放射線画像情報は、表示装置により制御されて、その表示部に可視画像として表示される。
【実施例】
【0074】
以下、本発明に係る放射線センサとその製造方法の一具体例を説明する。
[実施例1]
厚さ0.15mmの薄ガラスと厚さ0.1mmのPENを貼り合わせた第二の可撓性基板10上に、Moを40nmの厚さにスパッタ成膜し、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングでパターニングして、ゲート電極22および蓄積容量下部電極32を形成した。
この上に、二酸化ケイ素を200nmの厚さにスパッタ成膜し、絶縁膜を兼ねた誘電体層14を形成した。
【0075】
次に、IZOを酸素導入なしで200nmの厚さにスパッタ成膜し、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングでパターンニングし、ソース電極24およびドレイン電極26および蓄積容量上部電極34を形成した。ソース電極24およびドレイン電極26が互いに対向するエッジは、25°のテーパ角となるようにした。
IGZOを10nmの厚さにスパッタ成膜し、フォトリソグラフィおよびウェットエッチングでパターンニングし、活性層28を形成した。
アモルファスGaを10nmの厚さにスパッタ成膜し、活性層28を覆う領域のみ残して保護層29とした。
【0076】
アクリル樹脂からなる第一層間絶縁膜38を塗布し、前記蓄積容量上部電極34の上にコンタクトホール39を形成した。その上に、IZOを40nmの厚さに成膜、パターンニングし、電荷収集電極36を形成した。
【0077】
高分子下引き層12を形成するための塗布液として、アルコール可溶性ポリアミドを電荷収集電極36上に厚さが0.1μmになるように塗布し、乾燥して高分子下引き層12を形成した。
電荷発生層44用の塗布液として、ジブロモアントアントロン顔料とポリビニルブチラール樹脂を前者:後者の質量比が50:50の量でシクロヘキサノンに添加、分散させたものを用いた。スピンコーティングにより塗布し、厚さ0.1μmの電荷発生層44を形成した。
【0078】
電荷輸送剤としてのN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミンを3.5gとポリカーボネート(分子量:約35000〜40000)6.5gをメチレンクロリド35gに溶解して、電荷発生層44上にディップコートによって塗布し電荷輸送層42を形成した。100℃で1時間乾燥後、膜厚を測定すると2μmであった。
電荷輸送層42上にIZOを40nmの厚さに成膜して、バイアス電極46を形成した。
経時変化を加速するために、100℃で1時間の高温保管を行った。
【0079】
KODAK社蛍光体シートである、KODAK Lanex Regular(GaS:Tb 380μm)を準備し、
この蛍光体層50と上記のバイアス電極46とをアクリル系両面接着テープの接着層(厚さは20μm)介して貼り付けて、本発明による放射線センサを製造した。
【0080】
なお、第二の可撓性基板10の裏面には、厚さ0.1mmのカーボン板を貼りあわせて、波長400nm〜460nmの光に対する遮光性を持たせた。
この放射線センサは、高さ1mから床の上に落下させても、放射線センサとしての性能は維持されていた。また、この放射線センサを曲率100mmで折り曲げたが、同じく放射線センサとしての性能は維持されていることを確認した。
【0081】
[比較例1]
実施例1と同様にして、但し、電荷輸送層42に含まれるポリカーボネートの含有量が50質量%となるようにして、放射線センサを作成した。この放射線センサは、高さmから床の上に落下させても、放射線センサとしての性能は維持されていたが、曲率100mmで折り曲げると、画像データの一部に欠落が生じるようになり、放射線センサとしては使用できなかった。
[実施例2]
実施例1と同様にして、但し、電荷輸送層42に含まれるポリカーボネートの含有量が75質量%となるようにして、放射線センサを作成した。この放射線センサは、高さ1mから床の上に落下させても、放射線センサとしての性能は維持されて、曲率100mmで折り曲げても、同じく放射線センサとしての性能は維持されていたが、高線量(80kVp、300mR)で照射を続ける(10ショット、30秒間隔)と、感度低下量が実施例1に対し×2悪化した。
[実施例3]
実施例1と同様にして、但し、電荷輸送層42に含まれるポリカーボネートの含有量が55質量%となるようにして、放射線センサを作成した。この放射線センサは、高さ1mから床の上に落下させても、放射線センサとしての性能は維持されて、曲率100mmで折り曲げても、同じく放射線センサとしての性能は維持されていたが、曲率50mmで繰り返し曲げ試験を10000回繰り返した場合、実施例1よりも画像データの欠損が×2多かった。
【符号の説明】
【0082】
10 第二の可撓性基板
12 高分子下引き層
14 誘電体層
16 第二層間絶縁膜
18 第一の可撓性基板
20 薄膜トランジスタ
22 ゲート電極
24 ソース電極
26 ドレイン電極
28 酸化物半導体活性層
30 蓄積容量
32 蓄積容量下部電極
34 蓄積容量上部電極
36 電荷収集電極
40 有機光電変換層
42 電荷輸送層
44 電荷発生層
46 バイアス電極
50 蛍光体層
60 電荷検出層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する放射線を、少なくとも該放射線とは異なる波長域の電磁波に変換する蛍光体層が設けられた第一の可撓性基板と、
電荷発生層並びに電荷輸送剤および55質量%〜75質量%のポリマーバインダを含有する電荷輸送層を含み、前記電磁波を光電変換する有機光電変換層と、
前記有機光電変換層で発生した電荷を読み出すための、蓄積容量および薄膜トランジスタを含む電荷検出層が設けられた第二の可撓性基板と、
前記有機光電変換層と前記電荷検出層との間に配置された高分子下引き層と、
を有する放射線センサ。
【請求項2】
前記電荷輸送層が、1μm〜5μmの厚さを有する請求項1に記載の放射線センサ。
【請求項3】
前記高分子下引き層が金属アルコキシドを加水分解および縮合して得られるゾルゲル膜である請求項1または請求項2に記載の放射線センサ。
【請求項4】
前記金属アルコキシドがアルコキシシラン、アルコキシチタンおよびアルコキシジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである請求項3に記載の放射線センサ。
【請求項5】
前記蛍光体層が放射線の照射により500nm〜600nmの範囲に最大ピーク波長を有する光に変換する蛍光体を含む請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項6】
前記蛍光体が沃化セシウムまたはガドリニウムオキシサルファイドである請求項5に記載の放射線センサ。
【請求項7】
前記電荷輸送層が、60質量%〜70質量%の該ポリマーバインダを含む請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項8】
前記電荷輸送層に含まれる該ポリマーバインダがポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、スチレンのホモポリマーまたは他の共重合性モノマーとのコポリマー、ポリスルホンからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項9】
前記電荷発生剤がアントアントロンである請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタが酸化物半導体活性層を含む請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項11】
前記酸化物半導体活性層がIn、GaおよびZnのうちの少なくとも一つを含む酸化物半導体活性層である請求項10に記載の放射線センサ。
【請求項12】
前記酸化物半導体活性層がIn、GaおよびZnを含む酸化物半導体活性層である請求項11に記載の放射線センサ。
【請求項13】
前記高分子下引き層が0.05μm〜0.2μmの厚さを有する請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項14】
前記第一の可撓性基板および前記第二の可撓性基板の少なくとも一方が、薄ガラスとプラスチックフィルムとの複合基板である請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の放射線センサ。
【請求項15】
放射線照射装置と、
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の放射線センサと、
該放射線センサの電荷検出層で検出された画素単位の電荷情報を蓄積するメモリとを有する放射線画像撮影装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−114229(P2011−114229A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270511(P2009−270511)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】