説明

検査方法及び検査装置

【課題】微小な欠陥を検出するために、照明光量を大きくすると、ウェハにダメージを負わせ、感度向上を妨げている。一方、検出範囲を空間的に小さくすると、欠陥以外による散乱光を排除する事ができ、高感度に検出する事ができ、さらに、検出範囲を小さくすることによる検査時間の増大するという課題がある。
【解決手段】本発明の特徴は、試料を移動する搬送系と、試料へ線状照明光を照射する照射光学系と、前記試料の高さを測定する高さ検出系と、複数の画素を有する検出器を備える検出光学系と、前記検出光学系の検出結果を用いて前記試料の異物又は欠陥を検査する処理部と、前記試料の高さを制御する制御部と、を有し前記制御部は、前記高さ検出系の測定結果を用いて、前記線状照明光の変動量が前記画素の大きさよりも小さくなるように、前記試料の高さを制御することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置,検査方法及びそれらに用いるプログラムに関し、例えば、半導体ウェハ上の微小な異物や欠陥を検出する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や薄膜基板などの製造ラインにおいて、製品の歩留まりを維持・向上するために、半導体基板や薄膜基板などの表面に存在する欠陥の検査が行われている。このような表面検査装置においては、試料表面に照明光を集光して照射し、表面ラフネスや欠陥によって散乱する光を検出する技術がある。検出範囲を空間的に分割するために、複数画素センサを用いる特開2005−3447号公報などの技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−3447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面検査装置において複数画素センサを用いると、検出範囲の範囲を分割することができるので、高感度化に有効である。しかし、複数画素センサを用いた場合、被検査表面の高さが変動すると、照明スポットの位置ズレと検出光学系の焦点ズレによって本来検出すべき範囲ではない箇所を検出するという課題や、欠陥位置精度が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、試料の高さを検出できる光学系を有し、その結果に基づいて、試料表面位置を調節しながら検査し、欠陥の位置精度の悪化や、照明・検出光学系のピントのずれを防ぐという機能を有する。
【0006】
本発明の第2の特徴は、試料を全面吸着できるだけの広さをもつステージにおいて、試料高さを安定化させ、そのための試料の受入れ機構を有することにある。
【0007】
本発明の第3の特徴は、試料を移動する搬送系と、試料へ線状照明光を照射する照射光学系と、前記試料の高さを測定する高さ検出系と、複数の画素を有する検出器を備える検出光学系と、前記検出光学系の検出結果を用いて前記試料の異物又は欠陥を検査する処理部と、前記試料の高さを制御する制御部と、を有し前記制御部は、前記高さ検出系の測定結果を用いて、前記線状照明光の変動量が前記画素の大きさよりも小さくなるように、前記試料の高さを制御することにある。
【0008】
本発明の第4の特徴は、前記搬送系は回転し、前記高さ検出系は、前記照射光学系が前記線状照明光を照射した位置の前周の位置の高さを検出することにある。
【0009】
本発明の第5の特徴は、前記制御部は、前記変動量が前記画素の大きさよりも小さくなる時間間隔で、前記変動量を補正することにある。
【0010】
本発明の第6の特徴は、前記搬送系は、前記試料の高さを変えるボールネジ機構を有することにある。
【0011】
本発明の第7の特徴は、前記搬送系は、裏面非接触型ステージを有することにある。
【0012】
本発明の第8の特徴は、前記搬送系は、裏面吸着型ステージを有し、前記裏面吸着型ステージは、前記裏面吸着型ステージの外周部に配置された前記試料受入機構を有することにある。
【0013】
本発明の第9の特徴は、前記試料受入機構は上下に動くことにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、複数画素センサを有する表面検査装置において、常に試料表面位置を照明・検出光学系のピントの位置に補正することができ、高感度の検査が行え、かつ、欠陥位置精度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る表面検査装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係る検出器位置の一例である。
【図3】本発明の一実施例に係る検出光学系の第二例の概略図である。
【図4】本発明の一実施例に係る検出部回路概略図である。
【図5】本発明の一実施例に係る検査範囲と試料表面位置の第一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る検査範囲と試料表面位置の第二例を示す図である。
【図7】本発明の一実施例に係る試料表面上の検査範囲と高さ測定位置を示す図である。
【図8】本発明の一実施例に係る検査工程のフローチャート図である。
【図9】本発明の一実施例に係る高さ制御用の機構部を示す図である。
【図10】本発明の第二例に係る表面検査装置の概略図である。
【図11】従来技術の試料受け渡し方法を示す図である。
【図12】本発明の第二例に係るウェハ受け渡し方法を示す図である。
【図13】本発明の第三例に係る表面検査装置の概略図である。
【図14】本発明の第三例に係る検出光学系の概略図である。
【図15】本発明の第三例に係るマルチアノード光電子増倍管の感度調整方法の一例を示す図である。
【図16】本発明の第三例に係るマルチアノード光電子増倍管の感度調整方法の第二例を示す図である。
【図17】本発明の第三例に係るマルチアノード光電子増倍管のチャンネルごとの印加電圧依存性を示す図である。
【図18】本発明の第三例に係るマルチアノード光電子増倍管の印加電圧依存性を示す図である。
【図19】本発明の第三例に係るマルチアノード光電子増倍管の感度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて発明の実施例を説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施例の形態に関わる表面検査装置の概略図である。図1に示すように、裏面非接触型試料ステージ101,ステージ駆動部102,照明光源103,散乱光を検出する複数画素センサ104,信号処理部105,全体制御部106,制御部107,情報表示部108,入力操作部109,記憶部110等を備えている。ステージ駆動部102は、回転軸を中心に裏面非接触型試料ステージ101を回転させる回転駆動部111,垂直方向に移動する垂直駆動部112,試料の径方向に移動させるスライド駆動部113を備えている。試料高さを計測するために、検査用の照明光源103とは別に、高さ測定用光源114と高さ測定用検出器115を有する。
【0018】
照明光源103から照明光を試料100に照射し、試料表面上または表面近傍内部に存在する異物や欠陥、及び試料表面で、散乱,回折、又は反射された光を検出光学系116により捕集し、複数画素センサ104上に結像して検出する。照明光源103とは、レーザ,LED,ランプである。LEDを用いる場合は、試料表面に集光したとき、色むらが課題となるため、途中にレンズを通し、焦点位置にピンホールを設置して色むらの影響が少ない箇所だけを取り出すのが望ましい。裏面非接触型試料ステージ101は、ウェハ等の試料100を支持しており、裏面非接触型試料ステージ101を回転駆動部111により回転させつつスライド駆動部113によって水平に移動させることで、相対的に照明光が試料100上を渦巻状に走査する。したがって、試料表面の凹凸によって散乱される光は連続的,欠陥による散乱光はパルス的に発生し、連続的に発生する光のショットノイズが、表面検査装置のノイズ成分となる。また、本発明では回転及び並進ステージを用いて説明しているが、2軸の並進ステージでもよい。
【0019】
図2は本発明の一実施例に係る照明スポットと検出光学系の位置関係を示した図である。図1ではひとつの複数画素センサを図示したが、図2のように検出器の数に限定はなく、それぞれ照明スポット202からの方位角Φ及び、仰角χの少なくとも一方が異なるように二つ以上の検出器が配置されていれば良い。また、検出光学系は、図1のような直線系の結像系や、図3に示すように、散乱光の第一の実像を第一結像光学系301により回折格子303上に結像させ、第二の結像光学系302によって複数画素センサ104c上に拡大して結像させてもよい。
【0020】
図4は、本発明の一実施例に係る検出部回路概略図である。発生した散乱光を複数画素センサ104で検出し、信号処理部105において、BPF(バンドパスフィルタ402),LPF(ローパスフィルタ405)を通過し、それぞれ高周波成分と低周波成分とに分離する。各信号を増幅器403,406によって他のチャンネルと感度をそろえるように補正し、アナログ/デジタル変換器404a,404bでデジタル変換してコンピュータの記憶部407に記憶する。センサの感度バラツキが存在する時は、増幅器401を使って、信号強度を補正してもよい。
【0021】
表面検査装置において、微小な異物を検出するための主な手法は、入射光量を増大させて、異物から発生する散乱光量を増大させるか、検査時間を増大させて散乱光を積算するか、本発明のように複数画素センサを用いて、ノイズ成分を減少させるかである。入射光量を増大させると試料表面を温度上昇させダメージを負わせるという問題がある。そこで、本発明では、検査時間を保持したままで微小異物を検出するために、複数画素センサを用いる。複数画素センサを用いると、検出範囲を空間的に分割して測定できるため、試料表面の凹凸によって散乱される光を減少させ、より微小な欠陥を検出することができる。本発明において複数画素センサ104とは、マルチアノードの光電子増倍管,アバランシェフォトダイオードアレイ,CCDリニアセンサ,EM−CCD(Electron Multiplying CCD),EB−CCD(Electron Bombardment CCD),MCPと光ファイバをカップリングしたイメージインテンシファイヤ(Image intensified)とCCDやTDIカメラを組み合わせた撮像系などである。
【0022】
図5は本発明の一実施例に係る検出範囲と試料表面位置を示す図であり、複数画素センサの各チャンネルの位置を試料表面上に対応させた図である。照明光501を試料表面503に照射する。このとき、検査中に試料の支持方式による変動や試料自身のうねりによって、試料表面503よりΔzだけずれた理想位置504に変動にすることがある。その場合、図5(a)に示すように、検査すべき位置に照明光が照射されず、Δrだけずれた位置からの散乱光を検出する。従来技術のように、複数画素センサではなく、光電子増倍管のようなシングルチャンネルの検出器を用いる場合は、検出領域に対しての変動量Δrが十分小さいため問題にはならない。一方、本発明のように複数画素センサを用いて画素サイズを小さくした場合は、検出領域が1チャンネル以上ずれてしまい、検出すべき位置を検出できないという課題がある。
【0023】
図5(b)を用いて、検出器光学系の光軸が紙面に対して垂直方向にあるとき、つまり、図2における第一検出光学系203の位置にあるときの補正方法を説明する。図5(a)と図5(b)は、照明スポットにおけるy軸方向の断面図である。常に試料表面503近傍に試料表面が位置するように、試料高さを調整する。そこで、検査範囲の変動量Δrが1画素以内に収まるためには、試料ステージに対して垂直方向のステージの位置精度は、
【0024】
【数1】


が必要である。φは照明光の入射角、pは試料表面上における複数画素センサ1チャンネルの大きさである。また、試料表面の異物位置精度を向上させるために、p以下の量で径方向に試料を移動させて加算することがある。その場合には、垂直方向のステージの位置精度は径方向の移動量をp/n,(n=1,2,3,4・・・・)とすると
【0025】
【数2】


を満たす必要がある。
【0026】
次に、検出光学系のピントのずれに関して説明する。図5(c)は図5(b)におけるx軸方向の断面図であり、照明光は紙面に垂直の方向から照明している。試料高さがΔz変動すると、検出範囲がΔwずれる。したがって、垂直方向のステージの位置精度は検出光学系の焦点深度をdとすると、
【0027】
【数3】


かつ
【0028】
【数4】


を同時に満たさなければならない。
【0029】
一方、図6(a)を用いて検出器光学系の光軸が紙面に対して斜め上方にあるとき、つまり図2における第二検出光学系204の位置にあるときの補正方法を説明する。図6に示すように、試料表面の位置がz軸の負の方向にずれると、照明光学系の焦点位置は、前述の第一検出光学系203と同様に考える事ができるので
【0030】
【数5】


または
【0031】
【数6】


を満たす必要がある。一方、検出光学系のピントでずれに関しては、検出領域は、y軸の負の方向及びx軸の負の方向にずれる。したがって
【0032】
【数7】


かつ
【0033】
【数8】


を満たす必要がある。また、この場合も焦点深度をd′(=dcosψ)とすると
【0034】
【数9】


を満たさなければならない。また、散乱光の検出効率を増加させるために、検出光学系のNAを大きくかつ短波長化をすると、焦点深度dが短くなるため、より試料表面の位置精度が必要となる。
【0035】
図7は試料表面上の検査範囲と高さ測定位置を示す図である。本実施例では、光学式のレーザ変位センサを用いている。図7(a)において、試料表面を検査するための検査用照明スポット702の近傍に、高さ測定用光源114の光を照射し(高さ測定用照明スポット701)、その反射光を高さ測定用検出器115で検出する。高さ測定用検出器115は、受光レンズと複数画素センサや位置検出素子(PSD:Position Sensitive Device)などを用いる。試料表面の高さが変動すると、高さ検出器に入射する光の位置がずれる。複数画素センサを用いる場合は、各チャンネルの信号量のバランスから変動量を換算し、位置検出素子では、光電変換された電荷が抵抗層(P層)を通り、両端にある電極から電流として取り出し、その電流量の比率から試料表面の変動量を換算する。高さ測定用照明スポット701の位置は、照明スポット位置における試料表面の高さが変わらない範囲であればよく、例えば、図7に示すように、検査用照明スポット702の前周位置でも良い。
【0036】
図7(b)は回転角に対する試料表面高さの変動を示している。黒丸は試料表面高さの補正を行うポイントである。図7(b)にあるように、測定ポイント間内では、数式1〜9を満たすような時間間隔で高さ補正をしなければならない。
【0037】
図8は試料表面の高さを補正しながら検査する方式のフローチャートである。まず、ウェハをセットし、高さ測定用光源114による試料表面の高さ測定を行う。所望の位置に試料表面の位置を試料ステージの垂直駆動部112を使って移動させる。試料を回転駆動部によって回転させ、スライド駆動部によってスライドさせながら、照明光を試料に照射して散乱光を発生させ、散乱光を検出する。一方、検査中に高さセンサによって照明スポット近傍の高さを測定し、逐次、Δz分を垂直駆動制御部に送り、垂直駆動部により試料表面を数式1〜4または数式5〜9を満たす位置に制御する。
【0038】
図9は垂直駆動方法の一例として、ボールネジを使用した方式を示した図である。ボールネジ方式は安価で扱いやすいという特徴を持つ。スライド駆動部907上のスライドステージ908にボールネジ904を回転させるモータ部905を固定し、回転駆動部にボールネジ904のナット906を固定する。試料表面検査用の照明光901の焦点スポット近傍に高さ計測用レーザ光902を照射する。検出器により、試料表面高さの変動値Δzを算出し、高さ制御部909へデータを送る。高さ制御部909は、試料表面位置の補正に必要なモータのステッピング数を換算し、モータ制御部910に転送し、試料表面の高さを補正する。
【0039】
図10は本発明の第二例に係る表面検査装置の概略図である。図10では試料ステージが、図1の裏面非接触型試料ステージ101ではなく、全面裏吸着型試料ステージ121aになっている。従来技術においては、裏面吸着領域は試料裏面の一部を固定しているが、試料100の非吸着領域では、試料表面高さの変動量が大きい。そこで、試料の裏面全体を全面裏吸着型試料ステージ121aで吸着して、試料を固定している。この場合も上記と同様に垂直駆動部112と制御部107によって試料表面高さを調節する事ができる。裏面非接触型ステージと比較すると、高さ変動量が少ないため、高さ補正回数が少ないという効果もある。
【0040】
図11は、従来技術の裏面吸着方式における試料の受入れ方法を示している。U字型搬送用アーム122b使って試料100を検査装置内の従来方式裏面吸着型試料ステージ121bの上方に搬送する(図11(a))。U字型搬送用アーム122bを降下させ試料100をステージ上に置く(図11(b))。このとき、U字型搬送用アーム122bは、従来方式裏面吸着型試料ステージ121bに接触はしていない。そのままU字型搬送用アーム122bのみを降下させて引き抜く(図11(c))。図11のような従来技術では、従来方式裏面吸着型試料ステージ121bを全面裏吸着型試料ステージ121aに変更すると試料の従来の受け渡し方法ではU字型搬送用アーム122bと従来方式裏面吸着型試料ステージ121aが接触するという課題がある。
【0041】
図12は、本発明の裏面全面吸着方式における試料の受入れ方法を示している。図12(a),(b)に示すように、U字型搬送用アーム122aを使って試料100を検査装置内の全面裏吸着型試料ステージ121aの上方に搬送する。U字型搬送用アーム122aを降下させ試料100をステージ上の試料支え123に置き、U字型搬送用アーム122aのみを引き抜く。試料支え123は、全面裏吸着型試料ステージ121aの貫通穴を通って突き出しており、回転駆動部111に固定されており、モータ124によって上下させる事ができる。その後、試料支え123を降下させて、試料を全面裏吸着型試料ステージ121a上に置く。このとき、試料の位置ズレが起こらないように真空ライン126から空気を引きながら試料を降下させる。
【0042】
図13は本発明の第三例に係る表面検査装置の概略図である。複数画素センサとして、特にマルチアノード光電子増倍管131を用いる場合について説明する。図14は、検査装置の検出光学系の概略図である。照明スポット141から発生した散乱光は検出レンズ系143により集光され光電子増倍管の光電変換面上に結像される。図14に示すようにマルチアノード光電子増倍管131には各チャンネル間に光を検出できない領域(以下、不感体と記す)146が存在する。この課題を解決するために、検出器前方にマイクロアレイレンズ144を配置し、全ての散乱光がマルチアノード光電子増倍管131によって検出できる。
【0043】
マルチアノードの光電子増倍管を用いる際、チャンネル間の感度差や複数のマルチアノードの光電子増倍管を用いたときの感度の個体差が存在しており、補正しなければならない。本発明では、予め各マルチアノード光電子増倍管における各チャンネルの増幅率の平均値比から、各光電子増倍管に印加する電圧を決め、複数のマルチアノード光電子増倍管の感度個体差を補正する。さらに、各チャンネル間の感度差を補正するために、各チャンネルの出力電流を電気回路において増幅器により補正する。
【0044】
図15は複数のマルチアノード光電子増倍管の印加電圧特性を調査するための感度調整ユニットである。図15に示すように、検査用の照明光とは別に感度調整用光源152により、一定の光量をマルチアノード光電子増倍管131に照射する。このとき感度調整光源はレーザ光源やLD,LEDである。光源の波長は検査装置における照明光源103の波長に近い方が望ましい。マルチアノード光電子増倍管131で光電変換された信号は、それぞれ増幅器154で増幅され、アナログ/デジタル変換器155を通り、信号記憶部156に各チャンネルの信号量をそれぞれ記録する。マルチアノード光電子増倍管131は印加電圧用電源157により高電圧を印加する。この印加電圧の大きさにより光電子増倍管の増幅率が決まる。
【0045】
図16に示すように、前述の感度調整ユニットを表面検査装置に設置してもよい。照明系の光をシャッター166で閉じ、別の感度調整用光源162から光を光ファイバ164を用いてマルチアノード光電子増倍管131まで導く。このとき光は一つのチャンネルに照射できるようにしておく。さらに、光ファイバ134の終端はリニアステージ165に設置し、移動させる事で全てのチャンネルに光を導入する事ができる。また、一定期間ごとに、この感度調整ユニットを使って感度の経時変化を補正する。
【0046】
感度補正の具体的な方法を説明する。図17はマルチアノード光電子増倍管の各チャンネルにおける、信号の印加電圧特性を示している。各チャンネルにおける増幅率は異なる。これら各チャンネルの印加電圧に対する信号の平均値を算出し、図17に示すように、平均曲線を決定する。複数のマルチアノード光電子増倍管を検査装置に用いる場合は、各光電子増倍管における平均曲線を図18のように求める。ある一定の光量を入射した時に、理想値として出力信号Iを得るためには印加電圧Vが必要であるとすると、各光電子増倍管ではそれぞれ
【0047】
【数10】


になるようなV1,V2を求める。一般に光電子増倍管のゲインは印加電圧Vのkn乗に比例し、kは0.7〜0.8の値をとり、nは光電子増倍管のダイノードの段数、aは比例係数である。ダイノードとは光電子増倍管内の増幅用の電極である。また、kはダイノードの材質や形状に起因する値である。さらに、V1,V2は数式11のように
【0048】
【数11】


補正値Pによって高電圧を印加して、感度補正を行う。また、チャンネル間の信号の調整には、電気回路の増幅器154でそれぞれ調整する。
【0049】
マルチアノード光電子増倍管を長期間にわたって使用する場合、各チャンネルのダイノードの劣化により、図19に示すように増幅率が落ちる。そこで、定期的に既知の粒径の粒子が塗布されている試料の検査や、前述した感度補正ユニットを使用して信号を取得して、パラメータPの値を変動させて所望の信号量を得られるようにする。また、このパラメータPがある閾値を超えたところで警告表示処理を行い、光電子増倍管の交換時期を知らせる。
【0050】
本実施例は試料として半導体ウェハを用いて説明したが、この検査方法及び検査装置は、試料としてウェハには限定はせず、ハードディスクなどの基板の検査にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
100 試料
101 裏面非接触型試料ステージ
102 ステージ駆動部
103 照明光源
104,104a,104b,104c 複数画素センサ
105 信号処理部
106 全体制御部
107 制御部
108 情報表示部
109 入力操作部
110,407 記憶部
111 回転駆動部
112 垂直駆動部
113,907 スライド駆動部
114 高さ測定用光源
115 高さ測定用検出器
116 検出光学系
121a 全面裏吸着型試料ステージ
121b 従来方式裏面吸着型試料ステージ
122a,122b U字型搬送用アーム
123 試料支え
124 モータ
125 試料保持用支えスライド用ボールネジ
126 真空ライン
131 マルチアノード光電子増倍管
141,202 照明スポット
142 試料表面上におけるマルチアノード光電子増倍管の各チャンネル
143 検出レンズ系
144 マイクロアレイレンズ
146 不感体
151 感度調整光源用電源
152 感度調整用光源
153 集光用レンズ
154,401,403,406 増幅器
155,404a,404b アナログ/デジタル変換器
156 信号記憶部
157 印加電圧用電源
161 感度調整光源用電源
162 感度調整用光源
163 集光レンズ
164 光ファイバ
165 リニアステージ
166 シャッター
201,501 照明光
203 第一検出光学系
204 第二検出光学系
301 第一結像光学系
302 第二結像光学系
303 回折格子
402 バンドパスフィルタ
405 ローパスフィルタ
502 試料表面上における複数画素センサの各チャンネル
503 試料表面
504 理想位置
505 検出光学系光軸
601 照明スポット理想位置
602 試料表面位置が変動したときの照明スポット位置
603 検出領域理想位置
604 試料表面位置が変動したときの検出領域理想位置
701 高さ測定用照明スポット
702 検査用照明スポット
901 試料表面検査用の照明光
902 高さ計測用レーザ光
903 高さ計測用検出器
904 ボールネジ
905 モータ部
906 ナット
908 スライドステージ
909 高さ制御部
910 モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を移動する搬送系と、
試料へ線状照明光を照射する照射光学系と、
前記試料の高さを測定する高さ検出系と、
複数の画素を有する検出器を備える検出光学系と、
前記検出光学系の検出結果を用いて前記試料の異物又は欠陥を検査する処理部と、
前記試料の高さを制御する制御部と、を有し
前記制御部は、前記高さ検出系の測定結果を用いて、前記線状照明光の変動量が前記画素の大きさよりも小さくなるように、前記試料の高さを制御することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記搬送系は回転し、
前記高さ検出系は、前記照射光学系が前記線状照明光を照射した位置の前周の位置の高さを検出することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置において、
前記制御部は、前記変動量が前記画素の大きさよりも小さくなる時間間隔で、前記変動量を補正することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検査装置において、
前記搬送系は、前記試料の高さを変えるボールネジ機構を有することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置において、
前記搬送系は、裏面非接触型ステージを有することを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載の検査装置において、
前記搬送系は、裏面吸着型ステージを有し、
前記裏面吸着型ステージは、
前記裏面吸着型ステージの外周部に配置された前記試料受入機構を有することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、
前記試料受入機構は上下に動くことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−137678(P2011−137678A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296658(P2009−296658)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】