説明

樹脂組成物、接着剤層、及びそれらを用いて作製した半導体装置

【課題】塗布作業性に優れ、かつ銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性に優れた樹脂組成物を提供し、該樹脂組成物を使用することで高温リフロー処理後でも剥離のない高信頼性の半導体装置を提供することである。
【解決手段】導電性粒子(A)、熱硬化性樹脂(B)、スルフィド結合を有する化合物がスルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)、及びスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)を含むことを特徴とする樹脂組成物、接着剤層、並びに該樹脂組成物を使用して作製したことを特徴とする半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、接着剤層、及びそれらを半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の大容量化、高速処理化、微細配線化などに伴い半導体装置作動中に発生する熱の問題が顕著になってきており、半導体装置から熱を逃がす、いわゆるサーマルマネージメントがますます重要な課題となってきている。このため半導体装置にヒートシンク、ヒートスプレッダーといった放熱部材を取り付ける方法などが一般的に採用されているが、一方で放熱部材を接着する材料自体の熱伝導率もより高いものとすることが望まれてきている。
【0003】
また、半導体装置の形態についても検討がなされており、半導体素子そのものを金属製のヒートスプレッダーに接着したもの(例えば特許文献1、2)、サーマルビアなどの放熱機構を有する有機基板などに接着したもの(例えば特許文献3)、さらには金属リードフレームを使用する半導体装置においてもダイパッド(半導体素子を接着する部分)の裏面がパッケージ裏面に露出するようにしたもの、露出はしないがリードフレーム自体を通って熱を拡散させるようにしたものなどが採用されている。
これらの場合に半導体素子を接着する材料は熱伝導率だけでなく各界面において良好な塗布作業性が求められ、ボイド、剥離など熱拡散を悪化させる要因は排除される必要がある。
【0004】
一方、環境対応の一環として半導体装置からの鉛撤廃が進められている中、基板実装時に使用する半田も鉛フリー半田が使用されるため、錫−鉛半田の場合よりリフロー温度を高くする必要がある。高温でのリフロー処理は半導体装置内部のストレスを増加させるため、リフロー中に半導体装置中に剥離ひいてはクラックが発生しやすくなる。
【0005】
このため、半導体素子をリードフレームなどの支持体に接着する目的で使用されるダイアタッチペーストやヒートスプレッダーなどの放熱部材の接着に用いられる接着用材料に対しても高温リフロー処理後でも剥離の生じないものが要求され、例えば低弾性率化を図ることにより耐リフロー性を向上させようという試み(例えば特許文献4)や、接着力向上による試み(例えば特許文献5)がなされてきた。
【0006】
一般に弾性率を低下させると応力緩和特性が向上するが、特に高温での接着特性に劣る傾向があり、また接着力は被着体表面の影響を強く受け、例えば銀メッキ表面に対して良好な接着特性を示す接着用材料は銅表面に対する接着特性が劣るなど多種多様の表面に対して良好な接着特性、ひいては耐リフロー性を示すものが強く望まれている。
【特許文献1】特開2003−204019号公報
【特許文献2】特開平10−64928号公報
【特許文献3】特開平11−330322号公報
【特許文献4】特開2007−258317号公報
【特許文献5】特開2007−258317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塗布作業性に優れ、銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性に優れた樹脂組成物、該樹脂組成物を加熱することで得られる接着剤層、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いることで高温リフロー処理後でも剥離の生じない高信頼性の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、導電性粒子(A)、熱硬化性樹脂(B)、スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)、及びスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)を含むことを特徴とする。
前記化合物(C2)は、芳香族環を含まない化合物であることができる。
前記化合物(C2)は、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物であることができる。
前記化合物(C1)と前記化合物(C2)の配合比は (C1)/(C2)=1/9〜9/1であることができる。
本発明の接着剤層は、前述の樹脂組成物を加熱することにより得られることを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前述の樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、塗布作業性に優れ、銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性に優れる。そのため、該樹脂組成物を加熱して得られた接着剤層は高温リフロー処理後でも剥離のない高信頼性のものである。また該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製した半導体装置は高温リフロー処理後でも接着剤層の剥離のない高信頼性のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、導電性粒子、熱硬化性樹脂、スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物、及びスルフィド結合と水酸基を有する化合物を含む樹脂組成物であって、塗布作業性に優れ、銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性に優れるものである。これは銅表面、銀メッキ表面など種々の表面に対する接着特性に優れるものである。
本発明の接着剤層は、該樹脂組成物を加熱することにより得られるものであって、高温リフロー処理後でも剥離が生じない高信頼性のものである。
本発明の半導体装置は、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製したものであって、高温リフロー処理後でも剥離の生じない高信頼性のものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いる導電性粒子(A)は、導電性を示す粒子であれば使用可能であり、金属粒子、金属粉、カーボン粒子、導電性の物質で表面をコートした粒子などが挙げられる。好ましい金属粒子または金属粉としては銀、金、白金、パラジウムなどの貴金属粒子または貴金属粉、銅、銅合金、ニッケル、アルミニウムなどの非貴金属粒子または非貴金属粉が挙げられ、好ましいカーボン粒子としては高温で熱処理したフェノール粒子、カーボンブラック、カーボンの短繊維などが挙げられ、好ましい導電性の物質で表面をコートした粒子としてはスチレン/ジビニルベンゼン、アクリル酸エステルなどのモノマーを重合することで得られる粒子、ポリウレタン粒子、シリコーン粒子、ポリシルセスシロキサン粒子、シリカ粒子などの表面に金メッキ、銀メッキなどを施したものが挙げられる。形状はフレーク状、球状、樹脂状、針状、繊維状など特に限定されない。
【0012】
樹脂組成物を使用する際にはノズルを使用して吐出する場合があるので、ノズル詰まりを防ぐために平均粒径は30μm以下が好ましく、ナトリウム、塩素などのイオン性の不純物が少ないことが好ましい。
熱伝導性の向上の観点から特に好ましい導電性粒子(A)は銀粉である。ここで銀粉とは純銀又は銀合金の粉末であり、銀合金としては銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などである。銀粉が好ましいのは良好な導電性、熱伝導性を有する上に酸化されにくく加工性にも優れるからである。
【0013】
通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能で、好ましい粒径としては平均粒径が0.5μm以上、30μm以下である。より好ましい平均粒径は0.5μm以上、10μm以下である。下限値未満では樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、上限値を超えると上述のようにディスペンス時にノズル詰まりの原因となる場合があるからである。電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。形状はフレーク状、球状など特に限定されないが、好ましくはフレーク状のものである。添加量は、通常樹脂組成物中70重量%以上、95重量%以下が好ましい。銀粉の割合がこれより少ない場合には熱伝導性が悪化し、これより多い場合には樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるためである。また必要に応じ10nm以上、100nm以下の金属粉を併用することも好ましく、インジウム、錫などを成分に含む低融点金属を併用することも熱伝導性が向上するので好ましい。
【0014】
本発明に用いる熱硬化性樹脂(B)とは、加熱により3次元的網目構造を形成する樹脂である。この熱硬化性樹脂は(B)は、特に限定されるものではないが、液状樹脂組成物を形成する材料であることが好ましく、室温で液状であることが望ましい。例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。本発明の樹脂組成物では、上記熱硬化性樹脂(B)の硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤なども含んでいても何ら問題ない。
【0015】
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有する化合物であり、加熱により−NCO基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4'−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0016】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種または2種以上混合して用いることができる。シアネート樹脂とエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂を併用することも可能である。
【0017】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であり、加熱によりグリシジル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましいが、これはグリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられるがこれらに限定されるわけではなく、また樹脂組成物として室温で液状である必要があるので、単独でまたは混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を使用する。
【0018】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。
ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。
【0019】
フェノール樹脂としては1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物であり、1分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の場合には架橋構造をとることができないため硬化物特性が悪化し使用できない。また1分子内のフェノール性水酸基数は2つ以上であれば使用可能であるが、好ましいフェノール性水酸基の数は2〜5である。これより多い場合には分子量が大きくなりすぎるので導電性ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つまたは3つである。このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィンまたはテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系化合物及びその塩類などが挙げられるが、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物などのイミダゾール化合物が好適に用いられる。なかでも特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。
【0021】
ラジカル重合性のアクリル樹脂とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。(メタ)アクリロイル基は分子内に1つ以上有する必要があるが、2つ以上含まれていることが好ましい。
特に好ましいアクリル樹脂は分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体で(メタ)アクリル基を有する化合物である。
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0022】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシ基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート、水酸基と反応する場合には(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応することにより得ることが可能である。
ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることも可能である。
ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることが可能である。
【0023】
必要により以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0024】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0025】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。
【0026】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0027】
本発明では、スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)と、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)を含むことを特徴とする。化合物(C1)と化合物(C2)を同時に使用することで、銅表面への接着力と銀メッキ表面への接着力の両立が可能となるからである。
例えば化合物(C1)は金属表面との密着力向上効果があることは公知であり、被着体が銀メッキ表面の場合、Ni−Pdメッキ表面の場合には良好な接着力を示すようになるが、被着体表面が銅の場合には接着力は向上するものの、その効果は十分ではなく、さらに銅表面への接着力を向上させるとトレードオフとして銀メッキ表面との接着力が低下するなど、銅表面への接着力と銀メッキ表面への接着力の両立は困難であった。
ここで化合物(C1)と化合物(C2)を併用することで化合物(C1)の特徴である銀メッキ表面への高接着特性を維持しつつ、銅表面への接着力を大幅に向上させることが可能となり、被着体が銅表面の場合でも、銀メッキ表面の場合と同様に信頼性の高い接着剤層を得ることが可能となった。
【0028】
化合物(C1)はスルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物であり、少なくとも1つのスルフィド結合及び少なくとも1つのアルコキシシリル基を有し、スルフィド結合が1〜8の範囲で繰り返しているものが好ましい。またアルコキシシリル基とはSi原子にメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、その他のアルキルエーテル基から選ばれる少なくとも1種の官能基が1〜3個結合したものであり、反応性の観点からメトキシ基またはエトキシ基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。同様に反応性の観点からSi原子に結合している官能基は2個または3個が好ましく、最も好ましいのは3個の場合である。
化合物(C1)は少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するが、より好ましいのはアルコキシシリル基が2つの場合である。このような化合物としてはビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。これら化合物はスルフィド結合の繰り返し数に分布があり、例えばビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィドとは高速液体クロマトグラムなどにて測定して得られた平均スルフィド結合数が約4の化合物である。
【0029】
化合物(C1)は熱硬化性樹脂(B)に対し、0.01重量%以上、10重量%以下含まれることが好ましい。より好ましい範囲は0.05重量%以上、5重量%以下であり、特に好ましいのは0.5重量%以上、5重量%以下である。上記範囲内であれば良好な接着力が得られるためである。
【0030】
化合物(C2)はスルフィド結合と水酸基を有する化合物であり、少なくとも1つのスルフィド結合及び少なくとも1つの水酸基を有するものである。化合物(C2)は、前述した化合物(C1)と併用することで特に銅表面への接着力が向上するものとなる。このような化合物としては、芳香族環を含まない化合物として2,2’−ジチオジエタノール、チオビス(ジエチレングリコール)、チオビス(ヘキサエチレングリコール)、チオビス(ペンタデカグリセロール)、チオビス(イコサエチレングリコール)、チオビス(ペンタコンタエチレングリコール)、4,10−ジオキサ−7−チアトリデカン−2,12−ジオール、チオジグリセリン、チオビス(トリグリセリン)、2,2’−チオジブタノールビス(オクタエチレングリコールペンタグリセロール)エーテル、チオビス(ドデカエチレングリコール)、ジチオビス(ヘンテトラコンタエチレングリコール)、ジチオビス(イコサエチレングリコールペンタプロピレングリコール)、ジチオビス(トリグリセロール)、ジチオビス(デカグリセロール)、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、2,5−ビス(2−ヒドロキシエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、5,5−ビス(ヒドロキシエチルチオメチル)−3−チオ−1−ヘキサノール、5,5−ビス(ヒドロキシエチルチオメチル)−3−チオ−1−ヘプタノール、トリス(ヒドロキシエチルチオメチル)メタン、2−メチルチオエタノール、1,3−プロパンジチオールビス(デカエチレングリコール)チオエーテル、1,4−ブタンジチオールビス(ペンタデカグリセロール)チオエーテル、1,3−ジチオグリセロールビス(ペンタエチレングリコール)チオエーテル、1,2−エタンジチオールビス(ペンタ(1−エチル)エチレングリコール)チオエーテル、1,3−ジチオグリセロールビス(ジ(1−エチル)エチレングリコール)チオエーテル、2−メルカプトエチルスルフィドビス(ヘキサトリアコンタエチレングリコール)、2−メルカプトエチルエーテルビス(ジエチレングリコール)、チオジグリセロールテトラ(デカエチレングリコール)エーテル、ジエチレングリコールモノメチルチオエーテル、デカグリセロールモノ(6−メチルチオヘキシル)チオエーテル、ペンタデカエチレングリコールモノ((アセチルメチル)チオエチル)チオエーテル、1,2−エタンジオール−ω−(グリシジル)チオエーテル−ω′−イコサエチレングリコールチオエーテル、ヘキサデカエチレングリコールモノ(2−メチルチオエチル)チオエーテル、イコサエチレングリコールモノメチルチオエーテル、ドデカエチレングリコールビス(2−ヒドロキシエチル)チオエーテル、ペンタトリアコンタエチレングリコールモノ(2−n−ブチルジチオエチル)ジチオエーテル、4,8,12−トリチアペンタデカン−1,2,6,10,14,15−ヘキサオール、イコサグリセロールモノ(2−エチルチオエチル)チオエーテル、トリアコンタエチレングリコールモノ(2−メチルチオエチル)チオエーテル、トリデカエチレングリコールモノメチルチオエーテル、1,2−エタンジチオールビス(イコサエチレングリコール)チオエーテル、ジチオビス(ペンタデカエチレングリコール)、チオジメタノール、ジチオジメタノール、3,3’−チオジプロパノール、3,3’−ジチオジプロパノール、4,4’−チオジブタノール、4,4’−ジチオジブタノール、5,5’−チオジペンタノール、5,5’−ジチオジペンタノール、6,6’−チオジヘキサノール、6,6’−ジチオジヘキサノール、2−エチルチオエタノール、2−プロピルチオエタノールなどが挙げられ、芳香族環を含む化合物としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)ベンゼン、4,4’−ビス(4−(ヒドロキシエチルチオ)フェニル)スルフィド、2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゼン、(2−ヒドロキシエチルチオメチル)ベンゼン、(2−ヒドロキシエチルチオエチル)ベンゼン、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)ナフタレン、1,4−ブタンジオール−ω−((2−ベンジルオキシ−1−メチル)エチル)チオエーテル−ω′−(デカプロピレングリコールオクタコンタエチレングリコール)チオエーテル、1,2−エタンジオール−ω−(4−メトキシベンジル)チオエーテル−ω′−(ペンタコンタエチレングリコール)チオエーテルなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても構わない。
【0031】
なお、本発明では、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)が芳香族環を含まない化合物であることが好ましい。芳香族環を含まない化合物とすることにより、特に銅表面への接着特性が良好になるためである。
また、この芳香族環を含まない化合物のなかでも特に好ましいものはスルフィド結合と水酸基を2個有する化合物であり、具体的には2,2’−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物である。これらの化合物を採用することでさらに銅表面への接着特性が良好になる。
【0032】
スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)は、熱硬化性樹脂(B)に対し0.01重量%以上、10重量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは0.1重量%以上、5重量%以下であり、特に好ましいのは0.5重量%以上、2重量%以下である。この範囲内であれば目的とする銅表面への接着特性の向上が得られるからである。
【0033】
スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)とスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)の配合比は、特に限定するものではないが、その配合比は(C1)/(C2))=1/9〜9/1であることが好ましい。より好ましくは、(C1)/(C2)=1/1〜8/2である。この範囲内であれば目的とする銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性を効果的に向上させることができる。(C1)/(C2)が、下限値を下回ると、銀メッキ表面に対する接着特性が維持できない場合があり、上限値を越えると銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつも、銅表面に対する接着特性を効果的に向上させることができない場合があるからである。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などであり、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0036】
本発明の接着剤層は、上記得られた樹脂組成物を例えばリードフレームや基板などの支持体の所定の部位に塗布し、半導体素子搭載後加熱することにより得ることができる。また基板に半田接合し封止したフリップチップの所定の位置に塗布し放熱部材搭載後、加熱することにより得ることができる。
このとき接着剤層の厚みについてはとくに制限を受けるものではないが、塗布作業性、及び銀メッキ表面に対する接着特性と銅表面に対する接着特性とのバランスを考慮すると、5μm以上、100μm以下、好ましくは10μm以上、50μm以下であるのが望ましい。特に好ましいのは10μm以上、30μm以下である。下限値未満では接着特性が悪化する場合があり、上限値を超えるとでは接着剤層の厚み制御が困難になり銀メッキ表面に対する接着特性と銅表面に対する接着特性とのバランスが安定しない場合があるからである。
【0037】
本発明の半導体装置を作製する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームや基板などの支持体、または放熱部材の所定の部位に本発明の樹脂組成物をディスペンス塗布した後、チップなどの半導体素子をマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に本発明の樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドといった放熱部品を搭載し加熱硬化するなどといった使用方法も可能である。
【実施例】
【0038】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。配合割合は重量部で示す。
[実施例1]
導電性粒子(A)として平均粒径8μm、最大粒径30μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)を、熱硬化性樹脂(B)としてポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシメチルメタクリレートとの反応により得られたウレタンジメタクリレート化合物(分子量約1600、以下化合物B1)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製、CHDMMA、以下化合物B6)、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)製、ライトエステルHO−MS、以下化合物B7)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1,6HX、以下化合物B8)、ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解温度:126℃、以下重合開始剤)を、スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)としてビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス4、以下化合物C11)を、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)として3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール(試薬、以下化合物C21)を、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下化合物Z1)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2〜9]
以下の化合物を使用した。
ポリテトラメチレングリコールとマレイミド化酢酸の反応により得られたビスマレイミド化合物(分子量580、以下化合物B2)、シクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルとポリプロピレングリコールとの反応により得られたジアリルエステル化合物(分子量1000、ただし原料として用いたシクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルを約15%含む、以下化合物B3)、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(=3/1(重量比))と炭酸ジメチルの反応により得られたポリカーボネートジオールとメチルメタクリレートの反応により得られたポリカーボネートジメタクリレート化合物(分子量1000、以下化合物B4)、酸価108mgKOH/gで分子量4600のアクリルオリゴマーと2−ヒドロキシメタクリレート/ブチルアルコール(=1/2(モル比))との反応により得られたメタクリル化アクリルオリゴマー(分子量5000、以下化合物B5)、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルビスフェノールA(エポキシ当量180、常温で液体、以下化合物B9)、クレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185、以下化合物B10)、ビスフェノールF(大日本インキ工業(株)製、DIC−BPF、水酸基当量100、以下化合物B11)、ジシアンジアミド(以下化合物B12)、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物(四国化成工業(株)製、キュアゾール2MZ−A、以下化合物B13)、化合物(C1)としてビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス2A、以下化合物C12)、化合物(C2)として3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール(試薬、以下化合物C22)。
これらの中から選択した化合物を表1のように配合し、実施例1と同様に3本ロールを用いて混練し、脱泡することで樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1〜3]
表1に示す割合で配合し実施例1と同様に樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0041】
評価方法
・塗布作業性:表1に示す樹脂組成物を用いて、15×15×0.5mmのシリコンチップを銅ヒートスプレッダー(25×25×2mm、被着面は銅表面)にマウントし、175℃オーブンにて30分硬化した。硬化後の濡れ広がり性の様子を超音波探傷装置(反射型)にて測定し塗布作業性の指標とした。濡れ面積が90%以上のものを合格とした。
【0042】
・耐温度サイクル性:塗布作業性試験で作製した試験片を125℃4時間乾燥した後、温度サイクル処理(−65℃←→150℃、100サイクル)を行った。処理後の剥離の様子を超音波探傷装置(反射型)にて測定した。剥離が進展した面積が10%以下のものを合格とした。
・耐リフロー性(1):表1に示す樹脂組成物を用いて下記のリードフレームにシリコンチップをマウントしオーブン中175℃30分間硬化し接着した。マウントはダイボンダー(ASM社製)を用い、樹脂組成物塗布直後に塗布厚みが約25μmになるように調整して行った。樹脂組成物硬化後のリードフレームを封止材料(スミコンEME−G700H、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を85℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。剥離面積の単位は%である。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。
半導体装置:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:銀メッキした銅フレーム(被着部分が銀メッキ)
チップサイズ:6×6mm
・耐リフロー性(2):使用するリードフレームとして銀リングメッキした銅フレーム(被着部分が銅表面)を使用した以外は耐リフロー性(1)と同様にして半導体装置を作製し剥離の測定を行った。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように実施例1〜9に示す樹脂組成物は15×15mmという大きなチップを搭載した場合でも十分な濡れ面積を得ることができる塗布作業性に優れるもので、温度サイクル試験後でも剥離の進展がなく、被着部分が銀メッキ表面であるリードフレームを使用した場合にも、銅表面であるリードフレームを使用した場合でも良好な耐リフロー性を示すことが確認できた。
これに対し本発明を逸脱する比較例1に示す樹脂組成物は、塗布作業性は良好であるが、化合物(C1)及び化合物(C2)を含まないため接着特性に劣り、耐温度サイクル試験及び耐リフロー試験において顕著な剥離の進展が見られた。比較例2に示す樹脂組成物は、塗布作業性は良好であるが、化合物(C1)を含まないため接着特性に劣り、耐リフロー試験において顕著な剥離の進展が見られた。比較例3に示す樹脂組成物は、塗布作業性は良好であるが、化合物(C2)を含まないため銅表面に対する接着特性に劣り、耐温度サイクル試験及び銀リングメッキ銅フレーム(被着部分が銅表面)を用いた耐リフロー試験において顕著な剥離の進展が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の樹脂組成物は、塗布作業性に優れ、かつ銀メッキ表面に対する接着特性を維持しつつ、銅表面に対する接着特性に優れるため、ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製した半導体装置は高温リフロー処理後でも剥離のない高信頼性のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子(A)、熱硬化性樹脂(B)、スルフィド結合とアルコキシシリル基を有する化合物(C1)、及びスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C2)を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(C2)が、芳香族環を含まない化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(C2)が、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(C1)と前記化合物(C2)の配合比が (C1)/(C2)=1/9〜9/1である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を加熱することにより得られることを特徴とする接着剤層。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製したことを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2009−209246(P2009−209246A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52849(P2008−52849)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】